残暑も落ち着き、ほっと一安心。畑の野菜達も、真夏の勢いを弱めて落ち着きを取り戻しています。季節の変わり目で体調がいまいち、なんてこともあるかもしれません。「この時期には太陽のパワーをたっぷり浴びたトマトスープがおすすめ」と話すのは、神奈川県葉山で旬の野菜を育て、植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さん。アメリカでトマトスープに合わせる定番の相棒と言えば「グリルドチーズサンド」。今回は、庭のハーブの話とアメリカの国民食、トマトスープ&グリルドチーズサンドを教えていただきます。
目次
庭にあると嬉しいトマトとバジル、ハーブたち
残暑厳しい9月でした。82年ぶりに「最も遅い猛暑日」を記録した2024年の夏。厳しい残暑が続いているなぁ、と体感はありましたが、まさかこれほどまでに極端な暑さだったとは、ドヒャー。その暑さのせいなのか、はたまたアタシのせいなのか、神のみぞ知るですが、今年のミニトマト栽培は四苦八苦。本来トマトはあまり水を与えずに育てますが、今年は異様な暑さのために、そのさじ加減に頭を悩ませました。やっとの思いで収穫をしてみたら、どの実も酸味が強く、結局ほとんどのトマトはオーブンで焼き、オイルトマトになりました。
トマトは庭でも、ベランダのプランターでも育てられる気軽なお野菜です。小学生の頃、夏休みの宿題でなんとなーく育てた思い出があるかしら?
改めて思えば「手をかけたものが成長して、それを食べる」って、なんか! めちゃくちゃに心が躍りませんか?単調な毎日に飽き飽きした大人にこそ、じつは必要な体験なのかもしれません。
緑のトマトが赤く色づく瞬間、収穫したピーマンの重みを手に感じた瞬間、収穫したてのキュウリを暑い畑でかじった瞬間。育てた野菜を食すプロセスには、自然を賛美するような歓びと神聖さに溢れています。
季節の野菜とハーブ数種類を育て、それを料理することが、食いしん坊の私にとっては、なによりの「豊かさ」なのかもしれません。
秋もバジルは絶好調
春から秋にかけて、庭で育てていると便利なのがバジル。夏の料理に欠かせないハーブですが、品種によっては11月頃まで収穫が続きます。長く楽しむコツは、切り戻し&花を咲かせないこと。バジルはパスタやサラダ、サンドイッチに大活躍。庭へ出て必要な分だけ収穫すれば、気分はイタリアのマンマ♡ それだけでお料理上手な振る舞いができちゃう、ドラマティックな葉っぱなのです。
秋は真夏の暑さが一段落して、ハーブ達がイキイキとしてくるシーズンです。私の体感ですが、一番丈夫なのがこちらでも何度か紹介している「シナモンバジル」。
バジルの苗は秋口にも売られています。夏前の苗に比べたら、短い楽しみかもしれませんが、「秋の夜長」の楽しみに育ててみるのもおすすめです。
育てたバジルでカプレーゼを作り、とっておきのワインで一杯やる。くぅーっ‼︎ 最高の贅沢ではありませんか!
定番の組み合わせ「トマトスープ&グリルチーズサンド」
アメリカでは定番の「トマトスープ」。キャンベルのトマトスープ缶はアンディ・ウォーホルの最もアイコニックなモチーフの一つ。キャンベルだけではなく、その他のメーカーからも缶詰などが発売されており、アメリカ人に愛される定番スープです。
このトマトスープにグリルドチーズというサンドイッチを合わせるのが、何故か「おきまり」のコンビネーション。ツベコベ言わずに食べてみれば納得! チーズのコクと濃厚なトマトに香る酸味がベストマッチ。カリカリに焼けたチーズサンドを熱々のスープにディップすれば、オーマイガッ‼︎ お口の中に広がるパラダイスなのです。
グリルドチーズサンドは日本のおにぎりなのだ!
アメリカの定番サンドイッチ「グリルチーズサンド」、日本で言えば「おにぎり」のように手軽に作るもの。少し前の映画ですが、『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』のなかで主人公のシェフ、ジョン・ファヴロー演じるカール・キャスパーが、息子のためにササッとグリルドチーズサンドを作るシーンが印象的。
シンプルなパンに、数種のチーズをのせ、焼け具合を見ながら手際よく作っていく様子に心と胃袋が躍っちゃう。山盛りのチーズがとろけて、鉄板の上をひっくり返したサンドイッチが滑り、最後に包丁を入れた瞬間の「ザクッ!」っていう音。息子と何気ない会話をしながら、かぶりついたサンドイッチから、ビヨヨーン! と伸びるチーズのシズル感。その全てに日常の美しさを感じるシーンです。まだ見てない方はぜひ見て!
私たちがおにぎりの塩や具を、わざわざ量って作らないように、アメリカ人からしたらグリルチーズサンドの「レシピ」なんてナンセンスなのかもしれません。冷蔵庫と相談して適当にお好みの分量でお試しください。
シンプルなグリルドチーズサンド
材料はとっても簡単。パンとチーズとバターがあれば十分! 朝ご飯やおやつにも手軽に作れるメニューです。チーズをとろけさせて、カリカリに仕上げましょう。できれば、チーズは2〜3種類使うとベター。深いコクと複雑な風味で旨味が増し増し。今回はカンパーニュで作りましたが、食パンでも大丈夫。各家庭の「いつものパン」で作ってみてください。
■ 材料
- パン 2枚
- チーズ 多め ※2〜3種使うとさらに美味しいです
- バター たっぷり全面に塗れる量
■ 作り方
① パンの片面にしっかりとバターを塗る。
② フライパンを中火で温め、バターを塗った面を下にしてパンを1枚入れ、上にチーズをのせる。もう1枚のパンはバターを塗った面を上にしてパンを重ね、チーズを挟む。
③ フライ返しなどで押し付けながら焼き、色が付いたら2枚一緒にひっくり返し、反対側にも焼き色を付けて完成。
バターをパンの裏表両面に塗り、どちらの面もカリカリに仕上げる場合もあります。基本の具はチーズですが、好みで、ハーブやハム、トマトや玉ねぎの薄切りなどを挟んでも美味しいです。でも、やっぱり基本はチーズだけですけどね。
バジル&ガーリック香るローストトマトスープ
さて! 本日の主役スープを作りましょう。以前ご紹介したパスタソースと作り方はほぼ同じです。オイルで絡めて、オーブンで材料をいっぺんに焼いちゃうお手軽&お気楽なこの作り方は、汎用性も高く、ぜひ覚えていただきたい調理方法です。パスタソースやスープ、ピザなどにも大活躍です。
■ 材料
- トマト 約600g ※今回は中玉とミニトマトを使用
- 玉ねぎ 1玉 ※今回の玉ねぎは小さかったので2玉使用
- ニンニク 1玉
- ベジタブルブロス 約1カップ ※水にコンソメ小さじ2でも可
- オリーブオイル 大さじ2
- 砂糖 小さじ2
- ローズマリー 1枝
- バジル 数枚
- 塩 小さじ1
- 仕上げの塩・胡椒とオリーブオイル 各適量
■ 作り方
① トマトを適当な大きさに、玉ねぎは厚めのくし切りにする。
② ニンニクは上部をカットしてオリーブオイル(分量外)を回しかけ、アルミホイルで包む。
③ 耐熱皿に①を入れ、オリーブオイルと砂糖、塩、ローズマリーを加えよく混ぜてから、②をのせる。
④ 200℃に予熱したオーブンで45分焼く (焦げないように、15分ほどたったら水分を絡めるように混ぜる)。
⑤ 焼き上がったら少し冷まして、ローズマリーの固い茎を取り除く。ニンニクはホイルから取り出して、潰して中身を絞り出す。
⑥ 鍋に⑤をいれ、バジルとベジタブルブロスを加えてブレンダーやミキサーで撹拌し、温めて塩と胡椒で味を整える。
⑦ 器に注ぎ、オリーブオイル、胡椒をかけて、バジルを飾り完成。
パンをスープにディップしながら召し上がれ! ほらね、チーズのコク、濃厚なトマトと酸味がナイスコンビネーションでしょ。トマト栽培の最後、緑のトマトや割れや傷みのあるトマト、ぜーんぶ入れて作ってみてください。お好みで生クリームを足してもいいですねぇ。
料理は毎日のこと。楽しく美味しい時間を過ごしたいですよね。人間、最後に残るのは経験だけです。お金やものを持って川は渡れませんが、野菜やハーブを育てた経験はあの世で役立つかもしれません。特にナスとキュウリはお盆の時期に重宝されちゃうかも♡
Credit
写真&文 / ルーシー恩田
ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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