寄せ植えにして可愛いミセバヤ! 育て方のポイントや種類など
晩秋に咲く美しい花はもちろん、ぷくぷくとした葉姿が愛らしいミセバヤは、グラウンドカバーや寄せ植えなどに活躍する植物です。この記事では、種類が豊富で人気の高いミセバヤの特性や育て方について詳しくご紹介します。
目次
ミセバヤの特徴
ミセバヤはベンケイソウ科ムラサキベンケイソウ属の多年草。冬に落葉し、小さな芽をつけてそのまま休眠しますが、春の生育期を迎えると再び新芽を出して旺盛に生育します。一度植え付けると毎年開花する、息の長い植物です。
原産地は日本、中国などで、主に岩場に自生してきたとされています。暑さ寒さに強く、日本の気候によく馴染んで丈夫に育つ植物です。岩場に自生してきたこともあり、乾燥気味の土壌を好む性質を持っています。
ミセバヤの草丈は10〜60cm。茎葉が地際から多数出る株立ち状の草姿で、茎は直立せずにしなるようにして伸び、長くなると下垂していきます。厚みのある丸い葉が愛らしく、多肉植物としても愛されています。
ミセバヤの開花期は10〜11月で、花色はピンク。小さな花がまとまって頂部にドーム状に咲き、色の塊となって目に飛び込んでくるため、大変鮮やかです。また、秋が深まるとともに、葉が赤く紅葉する姿にも観賞価値があります。
ミセバヤの楽しみ方
ミセバヤは多肉質の丸い葉が美しく、寄せ植えなどに重宝される植物です。ハンギングバスケットやフラワースタンドに飾る寄せ植えなどでは、縁に植え付けると、枝垂れる葉が流れるような動きのある演出に一役買ってくれます。
また、もともと岩場などに自生してきた植物のため、乾燥した土壌を好む性質を生かし、ロックガーデンや傾斜地などの地植えにも向いています。
ミセバヤは種類が豊富!
ミセバヤは種類が豊富なことでも知られ、コレクションして選ぶ楽しみもありますよ! ここでは、ミセバヤの種類についてご紹介します。
ヒダカミセバヤ
北海道の日高〜釧路地方の海岸や山地の岩場に自生する近縁種。草丈は10〜20ほどで、葉色はやや青みが強く出ます。寒さと乾燥に強い性質です。ヒダカミセバヤとして流通しているものには、葉形が異なるものがありますが、産地によって多少の違いが出るようです。
カラフトミセバヤ
北海道の山地の岩場に自生してきた種類で、葉姿がコンパクトにまとまるのが特徴。葉色はグレーがかった青緑で、縁に切れ込みが入らず、可愛らしい表情を見せてくれます。葉にほんのりと赤がのる、赤葉の種類もあります。
エッチュウミセバヤ
富山県の固有種で、やや大きく成長するダイナミックさをもっています。オーバル形で多肉質の葉の縁に、うっすらとピンクがのるので、目を引く存在感も。寄せ植えに添えるカラーリーフとしても活躍します。
白雪ミセバヤ
青みがかった葉に白い粉が吹くため、名前の通りシルバーリーフとして重宝します。原産地は西アメリカで、草丈は5cm前後。他の種類に比べてゆっくりと生育し、小型なのが特徴。夏に黄色い花を咲かせます。
ミセバヤを育てるポイント
ここまで、ミセバヤの特徴や楽しみ方、種類などについてご紹介してきました。ここからはガーデニングの実践編として、ミセバヤの育て方のポイントを解説します。
日当たりや置き場所
【地植え】
ミセバヤは日当たり、風通しのよい場所を好みますが、半日陰の場所でも十分育ちます。
過湿を嫌うので、粘土質の土壌や水場に近くて低い場所など、水はけが悪くてジメジメとした環境は向きません。庭に植え付ける場合は、水はけのよい場所を選び、腐葉土や堆肥などの有機質資材をすき込んで、腐植質に富むふかふかとした土壌づくりをしておきましょう。
ミセバヤは、真夏に強い太陽の光を浴びると葉焼けすることがありますが、もともと暑さに強く季節が進めば回復するので、それほど神経質になる必要はないでしょう。冬の寒さには-3℃くらいまでは耐えるので、冬越しも容易です。
【鉢植え】
一年を通して日当たり、風通しのよい場所に置いて管理しますが、半日陰の場所でも生育します。多湿が苦手なので、雨が多くなる梅雨の時期は軒下などへ移動するのが無難。真夏に強い日差しを浴びると葉焼けすることがあるので、ベランダなど目にとまりやすい場所に置いている場合は、午前中のみ日が差す東側や半日陰の場所に移動するとよいでしょう。基本的には暑さにも寒さにも強いので、周年屋外で管理できます。
土
【地植え】
植え付ける1〜2週間前に、腐葉土や堆肥などの有機質資材と緩効性化成肥料を植え場所に投入し、よく耕してふかふかの土をつくっておくとよいでしょう。ミセバヤは過湿を嫌うため、粘土質の土壌など水はけが悪い場所には、川砂やパーライトなどの土壌改良資材を投入し、周囲より少し土を盛って高くし、水はけのよい環境にしておくとよいでしょう。事前に土づくりをしておくことで、分解が進んで土が熟成します。
【鉢植え】
山野草や多肉植物の栽培用に配合された、水はけのよい園芸用培養土を利用すると便利です。
植え付け・植え替え
ミセバヤの植え付け、植え替えの適期は、3月下旬〜4月です。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗よりも一回り大きな穴を掘って植え付けます。最後に、たっぷりと水やりします。
【鉢植え】
鉢の大きさは、入手した苗よりも1〜2回りほど大きい鉢を準備しましょう。また、ミセバヤは垂れ下がるようにして伸びるので、高さのあるコンテナスタンドや吊り鉢に飾るか、ハンギングバスケットの寄せ植えなどに利用するのがおすすめです。
用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。苗を鉢に仮置きして高さを決めたら、ポットから出し、軽く根鉢を崩して植え付けましょう。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
鉢栽培の場合、植え付けてから時間が経つと、成長とともに根が詰まって生育が悪くなってしまうので、1〜2年に1度を目安に植え替えましょう。植え替えの際は、それまでの鉢よりも大きな鉢を用意して株を大きくしてもよいですし、同じ鉢を用いて株のサイズをキープしてもかまいません。鉢から株を出したら、古い根を切り取って整理し、根鉢を徐々に崩してやや小さくしてから新しい土を入れて植え直します。
水やり
株が蒸れるのを防ぐために株全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水がすぐにぬるま湯になって株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。冬は十分気温が上がった真昼ごろに与えてください。夕方に水やりすると凍結の原因になり、株が弱るので避けましょう。
ミセバヤは多湿を嫌うので、水の与えすぎには注意します。バランスのよい水の管理が大切です。
【地植え】
しっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、水切れしないように管理しましょう。根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続いて乾燥するようなら、水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。とはいえ、ミセバヤは多湿を嫌うので与えすぎに注意し、気候や株の状態に適した水やりを心がけましょう。土の表面が白く乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えます。茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
肥料
【地植え】
●元肥
植え付け前の土づくりの際に、緩効性化成肥料を少量混ぜておきます。
●追肥
地植えの場合は、ほとんど不要です。ただし、株に勢いがないようであれば、液肥を与えて様子を見守ります。
【鉢植え】
●元肥
植え付けの際に、緩効性化成肥料を少量混ぜておきます。
●追肥
鉢栽培では土の量が限られており、水やりとともに肥料成分が少しずつ流れ出すので、定期的な追肥が必要です。ミセバヤの追肥の適期は4月下旬〜6月、9月下旬〜10月です。この期間に、月に2回を目安に液体肥料を施しましょう。
夏・冬の注意点
夏の注意点
真夏は強い日差しを直接浴び続けると、葉焼けをすることがあります。ベランダなど目の届きやすい場所で育てる場合は、半日陰の涼しい場所に移動してみずみずしい葉姿を保つとよいでしょう。
また、鉢栽培の場合は、真夏は高温によって乾燥しやすくなるので、他の植物と一緒に水やりをすることが多くなりますが、ミセバヤは多湿を嫌う性質があるので与えすぎに注意します。いつもじめじめとした状態にならないように、乾燥気味に管理してください。
冬の注意点
ミセバヤはライフサイクルの長い植物で、冬に落葉して休眠します。しかし枯れたわけではないので、鉢栽培では冬も水やりは必要です。とはいえ、常に湿った状態にすると根腐れするので、乾燥気味に管理することがポイント。表土が乾いて、さらに数日待ってから水やりをするという程度でよいでしょう。
ミセバヤの増やし方
ミセバヤは、株分けと挿し芽で容易に増やすことができます。ここでは、ミセバヤの増やし方についてご紹介します。
株分け
ミセバヤは、株分けをして増やすことができます。適期は、植え付け・植え替えと同じ3月下旬〜4月です。
ミセバヤが大株に育ったら、株を掘り上げて土を落とし、数芽をつけて根を切り分けます。その切り分けた株を植え直せば、その分だけ数も増えるというわけです。大株に育つと、存在感が大きくなりすぎて持て余してしまうことも。株を小分けにすることで、株が若返って再び勢いよく生育するメリットもあります。
挿し芽
挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと、発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。たくましい生命力ですね! 植物の中には挿し芽できないものもありますが、ミセバヤは容易に挿し芽で増やせます。
ミセバヤの挿し芽の適期は、5〜6月です。新しく伸びた茎を3節くらいつけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した茎(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を数枚取ります。育苗用トレイに新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。発根してしっかり育ったらポットに植え替えて育苗し、さらに十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
注意すべき病害虫
【病気】
ミセバヤは病気の心配はほとんどありませんが、多湿の環境下では軟腐病にかかることがあります。
軟腐病はジメジメとした環境で発生しやすい、細菌性の病気です。葉や茎などの傷口から侵入して発症します。病気が進行すると腐敗して悪臭が漂い、ほかの株にも蔓延してしまうので、発見次第抜き取って土ごと処分しましょう。水はけのよい環境づくりをし、風通しよく管理することが大切です。
【害虫】
ミセバヤの栽培で注意したい害虫は、アブラムシ、ナメクジなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
ナメクジは、花やつぼみ、新芽、新葉、果実などを食害します。体長は40〜50mmほどで、頭にツノが2つあり、茶色でぬらぬらとした粘液に覆われているのが特徴。昼間は鉢底や落ち葉の下などに潜んで姿を現しませんが、夜に活動します。植物に不快な粘液がついていたら、ナメクジの疑いがあるので、夜にパトロールして捕殺してください。不可能な場合は、ナメクジ用の駆除剤を利用して防除してもよいでしょう。多湿を好むので風通しをよくし、落ち葉などは整理して清潔に保っておきます。
寄せ植えにすると可愛いミセバヤを育ててみよう
古くから愛されてきたミセバヤは、寄せ植えの脇役に、ロックガーデンや傾斜地の彩りにとさまざまなシーンで活躍する植物です。種類も多様で選ぶ楽しみもあるミセバヤを庭やベランダに取り入れて、みずみずしい葉姿や秋の開花、晩秋の紅葉を楽しんではいかがでしょうか。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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