順調だったバジルが突然全滅…⁉︎ 近年急増する大敵『べと病』から株を守る4つの対策
Torgonskaya Tatiana/Shutterstock.com
ジェノベーゼソース作りなどで人気のハーブ、バジル。しかし近年、順調に育っていたバジルが「べと病」にかかり、すべての株が突然枯れてしまう被害が急増しています。
べと病は一度発病すると空気伝染であっという間に周囲の株まで全滅させてしまうため、事前の予防が何より重要です。この記事では、せっかく育てたバジルを守り抜くために知っておきたい「4つの対策(環境づくり・種選び・肥料・耐性品種)」を栽培のプロが分かりやすく解説します。
目次
バジルの基本情報

学名:Ocimum basilicum
英名:Basil、Common Basil、 Sweet Basil
和名:メボウキ(目箒)
科名:シソ科
属名:メボウキ属
原産地:アジアの熱帯から亜熱帯地域、北オーストラリア
園芸分類:ハーブ、野菜
形態:一年草
バジルは冬に枯れる一年草として扱われますが、熱帯や亜熱帯地域では短命な多年草です。品種が多くあり、またバジルの名がつく他の近縁種や交配種も多くあります。国内でバジルとして扱われるのは、主にスイートバジルやジェノベーゼバジルといわれる栽培品種です。茎や葉は明るい緑色で、茎はよく分枝して艶のある葉がよく茂ります。近年はタイ料理で使われるホーリーバジル(別名トゥルシー/Ocimum tenuiflorum)も人気があります。
バジルは葉が食用として主に利用されますが、花やつぼみも穂シソと同様に食べることができます。また種子(バジルシード)は水につけるだけでゼリー状に大きく膨らみ、タピオカのように食べることができます。健康やダイエットによい食品として、バジルシードも人気があります。
イタリア料理のほか、様々な料理に多く使われ、特にトマトやチーズを使った料理と相性がよいです。栄養豊富で健康によい効果も期待できます。イタリア料理で人気のジェノベーゼソースには多くのバジルが必要ですが、自宅で手作りする人も多いようです。
バジルの葉を食べるバッタ。Kokur/Shutterstock.com
バジルの育て方と病害虫

バジルの種子は手に入りやすく、ホームセンターや100円ショップなどで購入できます。比較的大きな種子なので扱いやすく、発芽率もよいです。畑に直接種まきしても失敗しにくく、育てやすいです。ジェノベーゼなどに使うには大量のバジルが必要ですが、春の4月中旬から5月に種まきすれば、たくさんのバジルを育てることができます。
日なたの適度に湿り気のある肥沃な場所を好みますが、夏の猛暑や乾燥にも強く、明るい日陰でも育ちます。環境適応性が高く、土壌もあまり選ばないので、初心者でも育てやすいハーブです。
ただし比較的自然が豊富な地域や場所では、葉がバッタなどに食害されることが多いです。また近年は畑などで大量に育てると、梅雨時や秋頃からべと病が発生してすべての株が枯れるケースが多くなってきています。
メボウキ(バジル)べと病(Basil downy mildew)とは
カビ(Peronospora belbahrii )が原因の病気で、2003年にイタリアで発見され、急速に世界中に広がりました。葉に黒っぽいしみができて黄化し、最終的に葉がすべて落ちて枯れます。また胞子が風で飛んで空気伝染するので、いったん発病すると急速に付近の株に伝染してすべての株が枯れてしまいます。薬剤を使用しても発病後は効果が低く、予防的に薬剤散布します。
多湿な環境を好むので、雨が多かったり、風通しが悪いと発生します。また、昼と夜の温度差が激しいと夜露が降りて、べと病が発生しやすくなります。発生しやすい時期は、花が多く咲き始めた夏の終わり頃から秋頃、または梅雨時です。
① 発生初期:一部の葉が黄化、または黒っぽいしみが見られる


② 葉の落葉が続いている状態

③ ほとんど葉が無くなった状態

べと病の対策

日当たりと風通し、水はけのよい環境で育てる
水はけのよくない場所では畝を作るか、周囲より土を高く盛った場所に植えます。また株間をあけて風通しのよい環境で育てましょう。枝葉があまり茂らないよう、適度に収穫を繰り返すのも効果的です。
こぼれ種から育てない
バジルは前年度のこぼれ種からよく発芽します。しかし、べと病は種子から感染するので、べと病が発生した場所でこぼれ種から芽が出た場合は処分してください。また前年度に病気が発生した場所も避けたほうがよいです。
亜リン酸肥料で防除
亜リン酸肥料を使うことでべと病の予防に効果があります。液体タイプの肥料でも効果があります。他の肥料より高価で入手がやや難しいので、ネット通販や専門の種苗店などの利用がおすすめです。
べと病に強い品種を選ぶ
イタリア語でチャンピオンの意味の「カンピオーネ(Campione)」は、べと病の耐性が強い品種として知られています。他にトキタ種苗作出の「TSGI−217」もべと病耐性が強いです。
べと病対策は、べと病に強い品種を植えるのが非常に効果的です。ただし、べと病は変異が激しく、耐性のある品種でもべと病が発生する可能性があります。他の方法と組み合わせてべと病に対処するようにしてください。
葉の食害

生育初期は、ナメクジの食害が問題になりやすいです。ナメクジ対策は、有機栽培にも使える天然成分由来の粉末の薬剤があります。株の周囲に薬剤の粉末をまくことで安全に防除できます。
バッタなどの昆虫は、一匹でも葉を多く食害します。可能な限り捕殺するとよいですが、捕殺では限界もあります。薬剤を使ってもバッタは移動が激しいので、防除が難しいです。また食べるものに薬剤を使うことに抵抗がある人も多いと思われます。
葉の食害対策

ネットをかける
鉢やプランター、地植えでも植栽数が少ない場合は、防虫ネットを全体にかけるのが効果的です。欠点としては、植栽数が多いと作業性が特に悪くなりやすく、収穫中にバッタが株の間に入ってしまうこともあります。
おとり植物と混植する
葉が柔らかい大葉青シソは、バジルよりもバッタに食害されやすいです。バジルとシソを交互、またはシソを点在させるように植えると、バッタはシソを食べることが多くなります。シソもバジルと同様に直まきして育てることができます。
バジルの室内栽培

徒長気味の株姿になりますが、室内の明るい日陰でもバジルを育てることができます。屋外の日なたより収穫量は減りやすいですが、清潔で葉を食害する害虫やべと病の心配もありません。ただし乾燥しやすい室内では、ハダニの発生に注意してください。こまめに葉に霧吹きで水をかけたり(葉水)、湿らせた軽石などを敷き詰めた広めの受け皿に上に鉢を置くことで発生を防ぐ効果があります。
窓際の直射日光が当たる場所に鉢植えを置くと、エアコンを切った不在時などに周囲が火傷するくらいの温度まで急上昇しがちです。北向きの窓際などに置くと適度に明るく、手間もかかりません。またはLED育成ライトを使用すると理想的な環境になります。
バジルの栽培ポイント

- べと病が発生すると全滅することが多い
- べと病には抵抗性のある品種を植えるのが効果的
- べと病は、さまざまな方法を組み合わせて予防する
- バッタなどの対策には防虫ネットやおとり植物の利用などがある
- 病害虫の少ない室内でも育てられるが、ハダニに注意
以上のポイントに注意すれば、バジルは非常に育てやすいハーブです。多くの植物に使える一般的な培養土でよく育ち、春に種まきすれば夏までに大きく育ちます。たくさん収穫できた場合は、乾燥させても保存ができます。バジルをたくさん育てて、豊かなハーバルライフを楽しんでください。
Credit
文 / 小川恭弘 - 園芸研究家 -

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