バラの時期にたくさんのガーデンファンが訪れる、愛知県日進市にある牧勝美さんのプライベートガーデン。コテージの壁面に華やかに咲き広がるピンクの房咲きのバラ‘芽衣’が咲き終わると、約150株のアジサイに主役がバトンタッチします。 多種多様なアジサイとアンティーク雑貨の美しいコーディネートや、秋まで色の変化を楽しめる品種、さらにはドライフラワーを使ったインテリアまで。アジサイの魅力をとことん味わう、牧さんの素敵なガーデンライフをご紹介します。
目次
華やかなバラが終わった後は、リーフ×アジサイでシックな空間に


ウッディなコテージにピンクのバラが咲き、毎年多くのガーデンファンが訪れる牧勝美さんの庭。春が過ぎると一気にしっとりとした趣に代わります。ガーデンの敷地は、エントランス+メインガーデンに一番奥の回遊ガーデン、そしてそれらをつなぐ、細い小道と、大きく分けられます。

ガーデン全体に点在するアジサイは150株ほどありますが、最初にたくさんのアジサイが出迎えてくれるのは、奥へとつなぐ細長い小道。ご主人につくってもらったミニパーゴラや壁など白い什器に、多種多様のアジサイの花がみずみずしく映えています。

ここの空間はスペースが限られているので、ヤマアジサイなどの比較的コンパクトな品種を多用。花色に加え、株丈や葉色の違いで巧みに変化をつけ、ブルーのグラデーションで見せながら、美しく通路を彩っています。こんもりと地植えの花壇のように見えますが、すべて鉢植えだというから驚きです。夏場は1時間かけて水やりをするのだとか。

砂糖菓子のような愛らしい品種もあり、白いウォールに配したオーナメントと愛らしくマッチしています。「見た目がおしゃれで、きれいな色を長く楽しめること、雑貨とも相性がよく、和洋どちらの空間になじみやすいことが、アジサイの大きな魅力なんです」と牧さん。

コンテナを並べた側に対して向かい側には、自然石を積んでレイズドベッドを設け、変化のある風景をしつらえています。花壇もあまり広くないので、コンパクトに収まるガクアジサイを植栽。濃ブルーの星形の花を咲かせるガクアジサイなら、見た目の圧迫感も感じさせません。牧さんはこのレイズドベッドとコンテナに挟まれた通路を“アジサイの小径”と名付けました。

この時季も訪れる人がたくさんいるので、花をつけすぎた株は花をカットし、バードバスに浮かべてロマンティックにコーディネート。背後にはアイアンフェンスに斑入りのつる植物を絡ませて、シックな彩りを添えています。この小径は、基本的にアジサイとリーフでまとめた都会的な雰囲気にまとめられています。
【アジサイの小径に咲くアジサイ】




趣をがらりと変えて、奥のエリアはワイルドに楽しむ場所に

アジサイの小径を抜けると、古いアトリエ、旧菜園エリアの順にたどり着きます。ここにもアジサイが点在し、訪れた人を静かに迎えてくれます。

雑貨が大好きだという牧さん。アイアンやワイヤーなどの無機質なアイテムを植物とうまく合わせ、アジサイのみずみずしさとの対比が生まれています。特にアトリエの前には、たくさんのオーナメントが飾られ、思わず近くによって眺めたくなる場所にしつらえられています。


イギリスの片田舎の風を感じる庭のはじまりはアジサイから

イギリスが大好きな牧さん。学生の頃に6週間ほどイギリスにホームステイをし、社会に出てから再度訪れて、花が美しい街並みやイギリス人の温かい人柄にひかれたのがきっかけでした。それからしばらくして子育ても落ち着いたことから、我が家にもイギリスのようなワンシーンを作ろうと一念発起。キッチンから見える小さな空間に、京都府の「ユ・メ・ミファクトリー」に小屋をつくってもらいました。

それからご主人の手を借りながらフェンスを立ててレンガを敷設。当時バラは苦手意識があったため、甘茶やピンクのアジサイを傍らに植え、イギリスの片田舎の雰囲気が漂う小さな空間が出来上がりました。牧さんのガーデンストーリーはそこから始まり、今ではすっかりバラも増え、たくさんの人々に喜んでもらえるガーデンへと成長しました。

畑だったスペースもバラとアジサイの庭にチェンジ!

今から11年前まで、敷地の一番奥の敷地には柑橘類が点在するお義父さまの畑がありました。お義父さまが畑を引退してからも、牧さんはそこでしばらく野菜を育てていましたが、広すぎて手に負えなくなったため、ガーデンに改修することを決定。回遊できるようにぐるりと園路を設け、そのまわりにバラとアジサイ、宿根草を植え、柑橘類も楽しみながら季節の花を楽しめる場所に生まれ変わらせました。

アジサイの花がこんなにもきれいに咲いていますが、特別肥料は施していないのだとか。「バラには寒肥えのみ施していますが、それを横からもらっているんだと思います。あとは様子を見ながらですね」と牧さん。

ここでもアーチやベンチを配し、大好きな雑貨類をディスプレイ。広い空間ではワイルドに枝葉を広げるアジサイたちと、絶妙なバランスでシーンを彩っています。
【雑貨と魅せるアジサイが咲くシーン】



【回遊できる旧畑のガーデンに咲くアジサイ】



「あれは何?」秋の庭で視線を独占する、移ろいゆく秋色アジサイ

柑橘類の谷間に植わっている、近年人気の「秋色アジサイ」は牧さんのお気に入り。通常のアジサイは開花後、夏には茶色く退色しますが、この秋色アジサイ ‘マジカルレボリューション’は、初夏の開花から晩秋に至るまで、花色が変化して観賞期間がとても長い珍しいアジサイです。
【牧さんの庭の秋色アジサイの移ろう様子】

みずみずしい透明感のある初夏から、夏になって青色が退色して緑になり、夜温が下がってくると赤色に変化。晩秋になると赤みが黒みを帯びて、葉色も黄色になっていくので、秋の庭の表情を深めるのに活躍してくれるおしゃれプランツといえます。「6月頃の花には気にも留めない方が多いですが、秋になると赤花が目を引くようになり、『あれは?』と聞かれることが多くなります」と牧さん。

育て方は一般的なアジサイと同じで、地植えでは大して水をやりませんが、鉢植えではしっかりと水をやるようにしています。ただ、違うのは剪定のタイミング。一般的なアジサイの剪定は花後すぐに上から2節ぐらいのところでカットしますが、秋色アジサイは、秋まで色づいたガクを楽しむため、初夏の花後の剪定は行いません。

秋色アジサイは晩秋の花後に花をカットするので、やや草丈が高くなります。ですから、株の何割かを短く剪定して株をなるべく低く保つようにします。地植えの場合は枝数が多いので、多少花をつけない枝があってもボリュームには大して響きません。様子を見ながら、開花の本数や株の高さを調整していきます。
隣家の人たちも眺めて楽しめる!
日当たり抜群の裏の斜面にもアジサイがたくさん

敷地の西側にある日当たり抜群斜面は、隣の敷地からも見える場所なので、生い茂っていた笹などを伐採して、アジサイを草花と併せて植栽しています。斜面の上のほうは水が流れて乾燥しやすいので、アメリカ原産のアジサイをメインで植栽。水が流れてきやすい下のほうには、一般的な日本のアジサイを植えています。これで水やりの必要はありません。牧さんはここを“紫陽花の丘”と呼んでいます。


【紫陽花の丘に咲くアジサイ】



アジサイはクラフト素材としても幅広く楽しめます

バラ‘芽衣’がつたう古い小屋の中は、腰高まで張ったレンガに白い漆喰風の壁、そしてマントルピース風の棚と、さながらイギリスのコテージ。棚の上などのあちらこちらで、アジサイのドライが空間の雰囲気を高めています。


ドライにしたアジサイは、花のボリュームをそのまま生かして花束のように花瓶に入れているだけで絵になります。また、押し花にして絵画的に飾ったり、キャンドルに閉じ込めたりと、幅広く使えるクラフト素材。咲いていたころの思い出も一緒に、いつまでも眺めていたいインテリアとして重宝しています。
植物を愛し、人と繋がる。幸せ時間を生み出す牧さんのガーデン

バラもアジサイも、植物最後の時までを慈しみながら、庭づくりを楽しんでいる牧さん。「こだわった品種もあるけど、園芸店で値下げされた品種名がわからないものもたくさん植わっているんですよ。」と、肩の力を入れすぎずに向き合う姿勢が、心地よさを生み出しています。バラと同様、昔から好きな植物の一つで、地元の花でもあるアジサイを少しずつ集めて育てること13年。いつも大好きなイギリスを感じながら、ガーデン好きの人々との交流の場として活用できる、幸せ時間を生み出すガーデンです。
写真提供(*)/牧勝美
Credit
取材&文 / 井上園子 - ライター/エディター -
いのうえ・そのこ/ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。ガーデニング以外の他分野のPR等にも携わる。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
写真(*以外) / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中!
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