バラ咲く季節のバーチャルオープンガーデン〜バラのフォトコンテスト受賞の庭から〜
2020年春は、Stay Homeで各地のガーデン公開が自粛となりましたが、Garden Storyでは読者のみなさんに最盛期の自宅の庭を公開していただく企画「バーチャルオープンガーデン」を開催。今回は、昨年当サイトで行った「Instagramバラのフォトコンテスト」にて編集長賞を受賞した、愛知県の牧勝美さんのバラ咲く庭をご案内します。
目次
壁一面がバラ色に染まるゴージャスな写真投稿で受賞
2019年5月17日から6月9日まで、バラの開花シーズンに開催した【Instagram バラのフォトコンテスト2019】。“お気に入りのバラ”の写真をテーマに、約1万3,000件ご投稿いただいた中から、編集長賞を見事受賞したのは、つるバラの‘芽衣’が壁一面に無数に咲いて、bluemoon_cottageさんの喜びが画面から伝わってくる写真でした。
●受賞写真のご紹介記事はこちら
編集長賞の受賞を記念して、今年のバラの最盛期に編集部が取材に伺うお約束でしたが、緊急事態宣言により実現することが叶いませんでした。そこで、今回は、ご自身が撮影したお気に入りの写真と、昨年、今井秀治カメラマンが撮影した写真をお借りして、bluemoon_cottageさんこと牧勝美さんの庭づくりをご紹介いたします。
ピンクのバラ‘芽衣’が咲く景色づくり
フォトコンテストで受賞した写真に写っていたのは、“我が家のシンボル”という、つるバラの‘芽衣’が絡む建物です。現在、コテージと呼んでいるこの建物は、7年前に築50年の納屋を業者さんにリフォームしてもらったもの。
庭を訪れたお客さまが靴のまま入ることができる、おもてなしの場所として、また、レッスンの場として活用している、と牧さん。
「以前、この建物の周囲はアスファルトで地面が覆われていて、地植えができる場所がなかったんです。壁につるバラを絡めたら少しは華やかになるかなぁと思って、‘芽衣’を植えました。本当は、母屋につるバラを這わせてみたいという夢があったのですが、純和風の建築物の壁に釘を打つ勇気がなくて……。納屋なら気軽に打てるかな? と、主人に頼んでフェンスを壁に取り付けてもらいました」
この建物の周囲は風の通り道で、台風が来ると強風が吹き抜けるそう。風の被害を軽減するためにも、しっかりとつるを固定できるものが必要でした。壁に取り付けたフェンスは、コンクリートの基礎に使う資材のメッシュフェンス。年々伸びるつるを毎年丁寧に誘引し、植えてから数年で二面の壁を覆うほどのボリュームになりました。
このバラを選んだ理由は、どの位置で剪定しても花が咲くことから。バラ栽培の初心者だった頃に迎えた品種で、日頃の手入れには、木酢液とキトサンを散布。病気に悩まされることもなく、毎年たくさんの花が咲きます。
でも一昨年は、テッポウムシの被害にあって、何本も枝が枯れてしまったとか。
「今年は最盛期の70%位のボリュームではないでしょうか。昨年、もう1株‘芽衣’を隣に植えたので、来年はもう少しボリュームが出るかと思います」
庭づくりが日々の楽しみになるまで
牧さんがこのように庭づくりを始めたのは、結婚してこの家に嫁いだ1996年から。二世帯で暮らす母屋の周囲には、和の庭があり、その裏手の敷地なら使っていいよとお義父さまの許可をもらったことから植物を育て始めました。
「今、‘芽衣’が咲く建物があるエリアは、嫁いだ時は、地面はアスファルトで舗装されていました。他の場所も砂利だったので、チューリップやビオラなどを地植えしようとしても、固くて植え穴を掘るのが大変だったのを思い出します」
そのため最初の頃は、写真のように鉢植えで植物を楽しんでいました。でも年々、鉢植えだけでは満足ができなくなった牧さん。ご主人に頼んで花壇を作ってもらったのです。
「花壇といっても、敷地内の片隅に置いてあった余りものの御影石の柱で土止めをした簡単なもので、深くは掘らずに、上に少し土を足した程度のものでした」。
庭巡りやイベントで庭づくりのヒントを得る
植物をもっと知りたいという思いが日に日に膨らんでいった牧さん。2000年に知り合った寄せ植えの先生のレッスンを受けたり、バラが咲く庭を見学に行ったりしているうちに、年々庭のある生活が楽しくなっていきました。
「神奈川の横浜イングリッシュガーデンでは、こんなに密植してもバラは育つんだというカルチャーショックを受けました。茨城にある坂野ガーデンでは、雄大な庭のロケーションに感動しましたし、昨年訪問した埼玉のガーデンカフェ・グリーンローズでは、バラやクレマチスがたくさん植えてあって、我が家にもまだまだたくさん植えられるというヒントをもらいました」。
各地のガーデンやイベントに足を運んで、植物やDIYのアイデアを得ながら、できるところは夫婦でコツコツと、時には部分的にプロに任せたりしながら、庭をつくり続けてきた牧さん。これまでご主人は、コテージ周辺のレンガ敷きや木材のフェンス、ガーデンシンク、パーゴラ付きのフェンスなど、数々のDIYで庭づくりに協力してくれました。また、念願のコテージを「ユ・メ・ミ ファクトリー」に依頼したりして、敷地のあちこちに見所が増えていったのです。
家庭菜園から秘密の花園へ、約3年でリニューアル
現在、秘密の花園と呼んでいる敷地奥のスペースは、もとはお義父さまが果樹を植えたり家庭菜園を楽しんでいた場所でした。
「義父が亡くなった後、家庭菜園として管理し続けるのはとても大変で、真夏の草取りは苦痛でした。なので、自分が楽しめる庭につくり替えようと思い立って、バラやクレマチス、宿根草を植え始めました」。
まずは、草取りのための足場になるようにと敷石の小径を何本か作って、メンテナンスしやすくデザインしました。また、バラやクレマチスを立体的に育てられるよう、ご主人にメッシュフェンスの仕切り壁を建ててもらうなどして、骨格を作っていきました。
「‘芽衣’が咲くコテージガーデンの半分以上は、業者の方に助けていただいたので、秘密の花園は、できるだけお金をかけずに、主人と2人、DIYで頑張るつもり。今もつくり続けています」
こうして、自宅の敷地を少しずつ庭に変えていった牧さん。現在は、バラや紫陽花が100株以上、クレマチスも50株以上育っています。
「バラの剪定や和の庭の草取りは主人に手伝ってもらい、和の庭の樹木の剪定は庭師さんにお願いしています。その他のエリアは、ほとんど私一人の作業です。暑さ寒さでくたびれたり、台風対策など、いろいろ大変なことも時にはありますが、こうして四季折々の風景を楽しめる庭を目指して頑張っていられるのは、日々庭から癒やしをもらっているからかなぁ」と牧さん。
外出自粛時に庭で過ごした時間
牧さんは、これまで毎年オープンガーデンを開催して花好きな方に楽しんでいただいてきましたが、今年はこの状況下のため、オープンガーデンは中止に。その分、インスタグラムに日々咲き進む庭の写真や動画を多数投稿して、庭仲間たちと花が咲く喜びを共有することができたといいます。
「秘密の花園を本格的に植栽し始めて今年で3年目になりました。今年はバラやクレマチスの株が充実して、フェンスいっぱいに花が咲いたのに、その景色を皆さんに楽しんでいただけなかったのは本当に残念です。でも、インスタグラムを通じて大勢の方に私の投稿を楽しんでいただけたのは、庭づくりの励みになりました」。
今回、この取材のために、牧さんには過去の写真や今年撮影した多くの写真を見せていただきました。取材を終えて、牧さんは、こう話してくれました。
「編集長賞をいただいたお陰で、自分の庭づくりの歴史をじっくり振り返ることができました。これまでの頑張りと庭への思いが再確認でき、これからも大切につくり続けようと改めて力が湧いてきたように思います。来年はぜひ、我が家のバラシーズンを、ここで楽しんでいただけますように」。
来年こそ、最盛期の庭で牧さんに会えることをガーデンストーリー編集部も楽しみにしています。
●牧さんのバラ咲く庭や秘密の花園の動画もご覧ください。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
写真協力/今井秀治、牧 勝美
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