いのうえ・そのこ/ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。ガーデニング以外の他分野のPR等にも携わる。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
井上園子 -ライター/エディター-

いのうえ・そのこ/ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。ガーデニング以外の他分野のPR等にも携わる。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
井上園子 -ライター/エディター-の記事
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ガーデン&ショップ
都立公園を新たな花の魅力で彩る「第3回 東京パークガーデンアワード」都立砧公園 【3月開花スタート】
第3回コンテスト会場は「都立砧公園」 芝生が青々とした「みんなのひろば」をはじめ、バラ園、サイクリングコース、‘子供の森’などのエリアがある東京都立砧公園。秋にはイチョウなどの紅葉・黄葉が楽しめる。 2022年に代々木公園から始まった「東京パークガーデンアワード」。第2回の神代植物公園に続き、3回目となる今回は、成城学園、二子玉川など閑静な住宅街からほど近い場所にある都立砧公園(東京都世田谷区)が舞台です。芝生の広場と樹林で構成されたファミリーパークのほか、運動施設や遊具等が設置された広場が整備され、区民みんなに親しまれている公園でコンテストが繰り広げられます。 第3回のテーマは「みんなのガーデン」 今回のコンテストエリアは、‘みんなのひろば’前に広がるスペース。これから育っていく5つのガーデンは公園を訪れる多くの人の目を楽しませてくれることでしょう。 天気のよい休日には、家族連れがお弁当を広げる光景もあちこちで見られ、地域の住民をはじめ、多くの人々に親しまれている砧公園。‘みんなのひろば’前で開催される「第3回 東京パークガーデンアワード」のコンテストテーマは『みんなのガーデン』です。「東京パークガーデンアワード」の目指す“持続可能なロングライフ・ローメンテナンス”であることはもちろん、訪れる人々の五感を刺激し、誰もが見ていて楽しいと感じる要素を取り入れたガーデンであることが求められます。植栽のメインとなる宿根草は、丈夫で長生きすることから、季節ごとの植え替えは行わず、四季ごとに花の彩りがあることも期待されています。 第3回のコンテストガーデン コンテストガーデンが設けられた敷地の平面図。A〜Eの各面積は約40㎡ 。どのエリアでガーデンを制作するかは、2024年10月に抽選により決定しました。 各コンテストガーデンは、高さ40cmの枠に囲まれた中につくられました。子どもたちの目線にも近い高さで、かがまなくても、植物を身近に観賞できるのも今回の特徴です。3月の様子。 今回のガーデンでは、通路を挟んで対に設けられた2つ1組の花壇が5つ連なっています。隣接する‘みんなのひろば’や‘ねむのき広場’からコンテストエリア全体を眺めたり、花壇に挟まれた通路を歩きながら、左右に育つ植物を観賞したりするなど、さまざまな角度からガーデンを堪能することができます。 写真手前の北から奥の南に向けて、A・B・C・D・Eの順に花壇が並ぶ。3月の様子。※2025年3月下旬まで、園路の舗装工事のため、コンテストエリアは柵で囲まれています。 2024年12月に行われた第1回作庭。5つのガーデン制作に関わった皆さん。 【第3回 東京パークガーデンアワード in 砧公園 最終審査までのスケジュール】 コンテストに挑戦する5名の入賞者が1年を通してガーデン制作に挑む「東京パークガーデンアワード」。2024年12月中旬に、それぞれの区画で1回目の作庭が完了し、2025年2月下旬に2回目の作庭日が設けられています。その後、4月は春の見頃を迎えた観賞性を審査する『ショーアップ審査』、7月は梅雨を経て猛暑に向けた植栽と耐久性を審査する『サステナブル審査』、11月は秋の見ごろの鑑賞性と年間の管理状況を審査する『サステナブル審査』が行われ、グランプリが決定します。 以下、入賞者決定~審査結果発表までのスケジュール。 【審査基準】公園の景観と調和していること/公園利用者の関心が得られる工夫があること/公園利用者が心地よく感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること/メンテナンスがしやすいこと/テーマに即しており、デザイナー独自の提案ができていること/総合評価※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。 Pick up 月々の植物の様子 3月の植物の様子 スイセン‘テータテート’(Aエリア)、ブラックローズリーフレタス(Bエリア)、原種系チューリップ‘アルバ コエルレア オクラータ’(Cエリア)、プルモナリア‘ダイアナ クレア’(Cエリア) ユーフォルビア・リギダ(ガーデンD)、アザレアツバキ(ガーデンD)、ナルキッスス ‘ペーパーホワイト’(ガーデンE)、クロッカス ‘アードジェンク’(ガーデンE) 2月の植物の様子 シラー・シベリカ‘アルバ’(Aエリア)、シラー・ミシュチェンコアナ(Aエリア)、日本スイセン(Bエリア)、イタリアンパセリ(Cエリア) ローズマリー(Dエリア)、カレックス・オメンシス‘エヴァリロ’(Dエリア)、ナルキッスス カンタブリクス モノフィルス(Eエリア)、コルヌス ‘ケッセルリンギィ’(Eエリア) 1月の植物の様子 左から/ロータス ‘ブリムストーン・ライムゴールド’(Aエリア)、ワイルドストロベリー ‘ゴールデンアレキサンドリア’(Bエリア)、コトネアスター(Bエリア)、エリンジウム パンダニフォリウム ‘フィジックパープル’(Cエリア) 左から/庭人さんのビオラ(Cエリア)、モンタナハイマツ(Dエリア)、アロエ ストリアツラ(Eエリア)、ユッカ ‘ゴールデンスウォード’ (Eエリア) 全国から選ばれた入賞者5名のガーデンコンセプトと月々の様子 コンテストのテーマとルールをふまえて制作される5つのガーデン。それぞれのガーデナーが目指す庭を、作者の制作意図や図面、植物リストの一部を紹介しながら、月々の様子を撮影した写真とともにお伝えします。 コンテストガーデンAGathering of Bouquet 〜庭の花束〜 【作品のテーマ・制作意図】 皆さんの日常に癒やしや潤いを届けたいという願いを込め、プランツ・ギャザリングの視点で、ガーデンをひとつの大きなブーケに見立ててデザインを構成しました。動物たちが次の訪問者のために心遣いを残していく絵本から着想を得て、あらゆる世代の方が見て触れて、香りなどを楽しめるように、花の形や手触りがおもしろいものを用いた植栽計画をしています。ぜひ手に取って、お気に入りの植物を見つけてください。たくさんの感動や気づきが新たな会話を生み、笑顔になるシーンが増えますように。 【主な植物リスト】 宿根草:エキナセア‘マグナススーペリア’/ペンステモン‘ストリクタス’/アガパンサス‘ピッチュンホワイト’/クラスペディア‘ゴールドスティック’/オルレア・グランディフローラ‘ホワイトレース’ などグラス類:ペニセタム・ビロサム‘銀狐’/メリニス‘サバンナ’/ホルデューム・ジュバタム/カラマグロスティス・ブラキトリカ など低木:コルヌス・ステラピンク/ビルベリー‘ローザスブラッシュ’/ニシキギ・コンパクター/コバノズイナ など球根:チューリップ‘フレーミングピューリシマ’/レウコジャム‘スノーフレーク’/アリウム‘グレイスフルビューティ’ など コンテストガーデンA 月々の変化 3月の様子 2月から東側のガーデンの一角で咲き始めたシラー・ミシュチェンコアナが、黄色いスイセン‘テータテート’とともに、ガーデンのあちらこちらで咲き始めました。また、対の花壇それぞれに一株ずつ植わるユキヤナギが咲き始め、植栽に立体感が出始めています。 左上/林の中の一角を切り取ったような、自然味あふれるシーン。右上/早い時点から勢いよく葉を伸ばす、瑞々しいアリウムが植栽にインパクトを与えている。左下/奔放に枝を広げるユキヤナギがデザインに動きを出している。右下/あちらこちらから顔を出すシラー・ミシュチェンコアナ。先月より花穂が伸びて存在感が増している。 2月の様子 全体的に楚々とした植物で構成されているナチュラルなガーデン。枯れた花茎を残し、頭上から落ちるたくさんのマツの葉を味方につけることで、優しい野の趣が見事に表現されています。白花の2種の球根植物が、いち早く咲き始めました。 左上/クジャクアスターなどの株間で、ひっそりと白い花を咲かせているシラー・ミシュチェンコアナ。草丈2cmにも満たない極小の球根植物。 右上/清楚な彩りを添えるシラー・シベリカ‘アルバ’。原種ならではの繊細さが、ここにはよく似合う。 左下/マツ葉の布団の下から、いくつもの球根が一斉に芽吹き始めて。 右下/1月まで咲いていたアガスターシェ‘モレロ’の立ち枯れの姿が、野趣あふれるシーンを描いている。 1月の様子 2つの花壇の中央に据えられたバイオネストは、線の細い枝で組まれているので、まだ小さく幼い植物ともよく馴染み、オブジェのような存在感を放っています。昨年からちらほらと咲いている名残の花が、高さ20cm程に芽を成長させた球根とともに冬の庭に明るさをプラス。ガーデンの上に伸びるマツから落ちる影ともよく似合い、植栽をより自然な風景に見せています。 左上/クジャクアスターやアガスターシェ‘モレロ’の残花の彩りが、冷たい空気を温めているよう。 右上/ロゼット状に広がるアキレア‘カシス’の株の合間に、球根の芽がひょっこりと顔を出して。 左下/ビルベリー‘ローザスブラッシュ’の赤褐色の照り葉が、冬の光をきらきらと反射。 右下/成長を牽引するかのように球根類の芽が勢いよく伸びて、リズミカルで楽しげ。 12月の様子 コンテストガーデンA Gathering of Bouquet 〜庭の花束〜 12月下旬、作庭後の様子。 コンテストガーデンBCircle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜 【作品のテーマ・制作意図】 季節によってカラーリングが変化する植物や、実をつけて味わい深い風景を作ってくれる植物に集まる多様な生き物たち。そして各所に配置したサークルネストはそんな生き物たちの拠り所に。命の循環というキーワードをもとに植物だけではなく生きとし生けるものたちの集まる「庭」をテーマにデザインしました。人間だけに限らず、あらゆる生き物たち「みんな」にとっても楽しめる「命を感じられるガーデン」は「みんなのにわ」となり、命を循環させてゆきます。 【主な植物リスト】 宿根草:バプティシア‘ブルーベリーサンデー’/アガスターシェ‘ゴールデンジュビリー’ /糸葉丁子草/スタキス・オフィシナリス などグラス類:カレックス‘プレーリーファイア’/メリニス‘サバンナ’/ぺニセタム・オリエンターレ など低木:ブルーベリー/イチジク/紫式部 など球根:アリウム各種/チューリップ各種 など コンテストガーデンB 月々の変化 3月の様子 モコモコとしたバークのマルチングの中からさまざまな小球根が芽を出し、ちらほらと花を咲かせ始めました。先月から開花し始めたニホンスイセンは花数が増え、植栽にやさしい華やぎをもたらしています。ガーデンの手前の方では、シラー・シベリカ‘アルバ’やピンクやブルーのムスカリの愛らしい姿が見られるようになりました。 左上/素朴な風情あふれる植栽にニホンスイセンがよく似合っている。右上/2月下旬に植えられたダークカラーのレタス。茶色いカレックスをクッションにして、ワイルドストロベリー‘ゴールデンアレキサンドリア’との色の対比を効かせている。左下/花壇の縁でひょっこり顔を出すムスカリ‘ピンクサンライズ’。右下/イチゴの株の中から花を上げるムスカリ・アズレウム。 2月の様子 やわらかい新葉を芽吹かせる宿根草のグリーンが、冬の日差しにまぶしく輝き、春の訪れを感じさせています。一番乗りでスイセンが咲き始めましたが、その他にもたくさんの球根類が芽を出し始め、のどかな風景が広がっています。 左上/大株のユンカス・ブルーアローがまだ寂しい植栽にボリューム感を与えている。 右上/日本スイセンが開花し始め、ほんのりと華やぎ始めた。 左下/繊細な細葉を上げるアリウム・レッドモヒカンなどの球根類の芽吹き。 右下/青みがかったルー(ヘンルーダ)の葉が、イエロートーンの植栽のアクセントになっている。 1月の様子 ふかふかとした明るい色のマルチングの中に、瑞々しくやわらかい草花の株が点在する様子は、まさに春遠からじといった風景。やわらかい葉のグラス類が風を受けて花壇に動きを感じさせています。グリーンを残すギリア ‘レプタンサブルー’やシシリンチウム ‘ストリアタム’や黄葉のワイルドストロベリー ‘ゴールデンアレキサンドリア’が表土に明るさをもたらしています。S字状の溝部分に入れたトチノキの実やその殻が愛らしく、花壇の中にストーリーを感じさせます。 左上/ギリア‘レプタンサブルー’やシシリンチウム ‘ストリアタム’の明るいグリーンが、花壇に瑞々しい景観を作り出している。 右上/数カ所に設けたサークルネストが、愛らしい鳥の巣を思わせる。左下/冬の陽光に黄金色に輝く、黄葉のワイルドストロベリー ‘ゴールデンアレキサンドリア’とブラウンがかったカレックス ‘プレイリーファイアー’の取り合わせが美しい。 右下/赤い実をつけるコトネアスターのシルエットがユニーク。 12月の様子 コンテストガーデンB Circle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜 12月下旬、作庭後の様子。 コンテストガーデンCLadybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」 【作品のテーマ・制作意図】 砧公園で暮らす「小さな住人(虫たち)」がこのガーデンを訪れて住みやすいように生態系を意識した植栽のデザインをしています。植栽は、見る場所や角度によって印象が変わるように、カマキリなどの天敵が身を潜められるような複雑さが出るよう工夫しました。植物は、てんとう虫やカマキリの食料となるアブラムシなどが好む「バンカープランツ」や蝶やミツバチたちの蜜源となる植物を植えています。「小さな住人(虫たち)」の生活をそっとのぞき見ることができる場所を目指しています。ここでの小さな体験が、自分の身近な自然環境を考えるきっかけになってもらえたら嬉しいです。 【主な植物リスト】 バンカープランツ:へメロカリス/ユウスゲ/イタリアンパセリ など宿根草:モナルダ・ブリドブリアナ/エキナセア‘メローイエロー’/アスター‘オクトーバースカイ’ などグラス類:スキザキリウム‘ハハトンカ’/ぺニセタム・カシアン/パニカム‘シェナンドア’ など低木:キンカン/アロニア/コバノズイナ など球根:ダッチアイリス‘ブルーマジック’/カマシア/カノコユリ‘ブラックビューティー’ など コンテストガーデンC 月々の変化 3月の様子 2月下旬の作業でビオラと数種類の苗が加わったことで、宿根草や球根の花が咲くまでのガーデンは、よりにぎやかになりました。ビオラは楚々としながらもニュアンスのある品種を用いているので、デザインに深みを感じさせます。植栽の中をよく見ると、チューリップやアイリスが広がる中で、勢いよくフリチラリア‘オレンジビューティー’の新芽が上がり始めました。 左上/パープルのビオラが広がるエリアで、フリチラリア‘オレンジビューティー’がニョキリと芽を伸ばし始めた。右上/東側のガーデンの一角でひっそりと咲くプルモナリア‘ダイアナ クレア’。左下/ダッチアイリスの群植がユニークな景色を作る。右下/原生地を思わせる咲き姿の原種系チューリップ‘アルバ コエルレア オクラータ’。 2月の様子 なだらかな丘に咲くビオラの株が少しずつ大きく育ってきました。全体的には大きな変化はありませんが、よく見ると球根類の小さな芽があちらこちらに芽吹き始め、これから先の時期への期待が高まります。 左上/ビオラの花色やモナルダ・ブラドブリアナの紫葉、グラスの赤みが、このエリアのメインカラーとなっている。 右上/腐葉土をかぶり、葉をつけたまま越冬したアシズリノジギクが、ひっそりと顔をのぞかせて。 左下/愛らしい綿毛が、晩冬の風情を高めているツワブキ。 右下/枯木立のアロニアやコバノズイナの合間に芽を出しているのは、ダッチアイリス‘ブルーマジック’。 1月の様子 花壇の中は盛土された場所や溝が掘られた場所があることで全体に起伏があり、いくつもの丘が広がるような風景を思わせます。斜面に植わる落葉した数本の灌木と冬枯れの宿根草が沢沿いのようなシーンを連想させたり、ビオラが群植する様子がのびやかに広がる丘のようなシーンを感じさせたりするなど、さまざまな素朴な風景が展開。全体にのどかな雰囲気が漂っています。 左上/落葉したアロニアやノリウツギの数本の幹が、野趣のあるシーンを演出。 右上/長い花茎の先に残るツワブキの花が、侘びと力強さを感じさせる。 左下/丘の斜面に咲き群れるように広がるビオラたち。 右下/まだ厳しい寒さを物語るほかのエリアとは異なり、青々としたイタリアンパセリとエリンジウム パンダニフォリウム ‘フィジックパープル’が明るい透明感を添えている。 12月の様子 コンテストガーデンC Ladybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」 12月下旬、作庭後の様子。 コンテストガーデンDKINUTA “One Health” Garden 【作品のテーマ・制作意図】 ヒトの健康、生きものの健康、環境の保全を包括的な繋がりとして捉えるワンヘルス (One Health)の概念を軸に、それら3つの主体が密接に関わり合う「ワンヘルスガーデン」をつくります。土壌環境を改善し、植物や微生物を豊かに育て、鳥や虫などの地域の生きものを呼び込む。ガーデンの香りや触れ合いを通し、ヒトの健康と安らぎを生み出すガーデンをつくり、いろいろな生きものがやってくる「みんなのガーデン」を実現します。 【主な植物リスト】 宿根草(蜜源植物):ルドベキア/オミナエシ/モルダナ/アザミ/ガウラ/スミレ/チェリーセージ など宿根草(四季の移ろい):グラス類のフェスツカ/カレックス/イトススキ/フウチソウ/チカラシバ/レモングラス/ミューレンベルギア‘カピラリス’ など低木類(鳥類・昆虫類来訪):スモークツリー‘グレース’/ガマズミ/アロニア‘メラノカルパ’カラーリーフ:カラスバセンリョウ/カリステモン‘リトルジョン’/イリシウム‘フロリダサンシャイン’その他(季節の果実や葉):ビルベリー/コバノギンバイカ/レモンマートル コンテストガーデンD 月々の変化 3月の様子 冬の景色として残していたアスターやススキなどのシードヘッドを2月末の作業で切り戻し、すっきりとした風景となりました。ガーデン手前側のラムズイヤーやクリーピングタイムは茶色い葉が整理され、芽を出した球根類と共に、植栽の瑞々しさをアップ。茶~黄の色彩だった風景は、徐々に緑色の風景へと移ろいつつあります。 左上/つややかな緑が映えるチューリップの芽出し。右上/アザレアツバキが開花。褐色の葉がカラーリーフとして活躍し、イリシウムの黄葉やアカシアの銀葉との色の対比が楽しめる。左下/ラムズイヤー、クリーピングタイムが青々と成長し、ガーデンの色合いをグリーンに牽引。右下/ニョキリと伸びる茎の先に花をつけるユーフォルビア・リギダ。株元では新しい芽をたくさん確認。 2月の様子 冬の装いをした低木の下で、成長の早い宿根草や球根類が成長を始めています。ふわふわとした枯れ姿のノコンギクの株元には、新たな葉がびっしりと広がっています。マルチングに用いたナシのチップがキノコの菌糸と絡み合い、朽ちて土に馴染み始めました。 左上/ベルベット調の質感を持つベニバナミツマタのつぼみが日に日に膨らんでいる。 右上/まわりとの取り合わせで、朽ちた姿にも風情があるアメジストセージやフェスツカ・グラウカ。 左下/ひと足早く青々と成長しているバーベナ・ボナリエンシス。 右下/ラムズイヤーの傍らで芽吹く、赤い新芽のガウラ。奥には球根類がたくさん芽を出している。 1月の様子 落葉した灌木類と冬枯れしたススキやノコンギクなどの宿根草とのコンビネーションが、冬の日差しに反射し、きらめきのある風景を描いています。一方、常緑樹のモンタナハイマツやローズマリーの瑞々しくどっしりとした重量感が、花がないこの時期にも豊かな表情を見せてくれます。所々に配された菌糸を固めて作った平板をめくると、接地面から菌糸が広がっており、土中の微生物たちがぐんぐんと成長しているのが分かります。 左上/アーティチョークのギザギザとした葉で、空間に造形的な面白さをプラス。 右上/枯れ姿のノコンギクが風情たっぷり。フサアカシアなどの灌木同士を、ふんわりとつないでいる。 左下/赤みを帯びたユーフォルビアのユニークなフォルムが、植栽のデザインに動きをもたらしている。 右下/冬の間も楽しめる、モンタナハイマツ×テンジクスゲ×ツワブキの造形の異なる常緑植物の組み合わせ。 12月の様子 コンテストガーデンD KINUTA “One Health” Garden 12月下旬、作庭後の様子。 コンテストガーデンE「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ 【作品のテーマ・制作意図】 私は「みんなのガーデン」を、来園者だけでなく、花を訪れる虫、土壌菌類などの分解者、そして庭の先につながるこの生きた星「地球」の環境といった全ての「生あるもの」をつなげる庭と捉えました。温暖化する東京の気候に合った植物を差別なく組み合わせ、虫や菌たちによる循環系の形成、見るだけでなく庭づくりに参加もできる「みんなのガーデン」。「みんな」が共に助け合いながら、末長く幸せに暮らす世界、生命共存の尊さ・美しさを伝えたい。この想いが、この庭から未来へ・社会へ・地球へと広がっていけば、と考えています。 【主な植物リスト】 宿根草:マンガベ ‘マッチョモカ’/アムソニア ‘ストームクラウド’/アガパンサス ‘ブラックマジック’ /アネモネ トメントーサ/ジンジバー(ミョウガ)斑入り/イリス・エンサタ(ハナショウブ)‘バリエガータ’/パトリニア プンクティフローラ/タリクトラム ‘エリン’ /ユーフォルビア ‘ファイアーグロー’/ユーパトリウム ‘リトルレッド’ などグラス類:カラマグロスティス ‘カールフォースター’/モリニア ‘トランスペアレント’ /アンドロポゴン ‘ブラックホークス’ /スキザキリウム ‘ハハトンカ’ /コルタデリア ‘ミニパンパス’/メリニス ‘サバンナ’/ムーレンベルギア/スティパ/ホルデウム など低木:ネリウム(キョウチクトウ)‘ペティットサーモン’/コルヌス(サンゴミズキ)‘ケッセルリンギィ’/ロロペタルム (トキワマンサク) ‘黒雲’ /ブッドレア・ グロボサ など球根:ナルキッスス(スイセン)タリアなど数種/チューリップ(原種、園芸種含めて多品種)/アリウム (開花期をずらして数種)/イキシア・バビアナ・ワトソニアなどの南アフリカ原産種 など コンテストガーデンE 月々の変化 3月の様子 グラベル仕上げの地面で個性を放つ植物たち。それら一つひとつにフォーカスして楽しめるのは、地上部が少なく隙間があるこの時季ならではの見どころです。さまざまな芽が小さな景色を織り成す中、今春の一番手で花をつけているのはスイセンとクロッカスの2種。このガーデンでは真っ白い花が見られるのは春の初めだけで、これからカラフルに色づく植栽の静かなイントロダクションとして、清楚な彩りを添えています。 左上/世界の多種多様な植物が、健やかに成長できるよう配慮して植えられたガーデン。右上/ベタっと広がるアリウム ‘マイアミ’。アリウムだけでも大小・姿形さまざまに展開する多様な種類が用いられている。左下/透明感あふれるナルキッスス パピラケウス。右下/白花の外側の花弁が紫色のクロッカス ‘プリンスクラウス’。自然界で見られる“コロニー(群生)”のように、ぎゅっとまとめて植えている。 2月の様子 中央のニューサイランを軸にして渦を描くように設けられた花壇に、早くも植物たちが色形の異なる個性を見せ始めました。現在は、造形的なフォルムのアロエやエリンジウム ‘フィジックパープル’、黒葉のベルゲニア ‘レッドスタート’、ペンステモン ‘ダークタワーズ’などの植物が、他にリードして存在感を放っています。その間では小さな宿根草や球根が愛らしく芽を伸ばして。 左上/芽出しから独特な姿を見せるチューリップ ‘ジャイアントオレンジサンライズ’。 右上/葉の縁が赤く色づくチューリップ シルベストリスと黒みがかる繊細なダイアンサス カルスシアノルム、そしてベタっと大きめの葉を広げるフロミスなどが植わるエリア。どこを切り取っても組み合わせの妙が感じられる。 左下/ユッカの傍らに植わる、クルクルと渦を描く姿がユニークなアスフォデリネ ルテア。個性的だがブルーがかるやわらかい質感が、ユッカの強烈な雰囲気を和らげている。 右下/マットな革質の黒葉ならではの質感で存在感を放っているのはベルゲニア‘レッドスタート’。 1月の様子 化粧砂利のような明るい表土とアールを描く通路のデザインは、植物が小さなこの時期の大きな見せ場の一つとなっています。見下ろした風景はまるでノットガーデンのよう。常緑性のニューサイランやアロエなどのほかは、冬季落葉性の宿根草や低木類で、地上部がとても小さかったり枝のみだったりしますが、冬越しのロゼット葉の造形やカラーステムがとてもユニーク。それだけに、これからの成長と風景の変化も大きな見どころです。 左上/幹立ちして展開するアロエ ストリアツラと、カレックス ‘エヴァリロ’のライムイエローの葉が、植えたてのため不織布を被せて防寒養生中のベスコルネリアをやんわりと目隠し。右上/鹿沼土と軽石をブレンドした明るい表土をトキワマンサク ‘黒雲’の照りのある黒葉で引き締めている。左下/細い葉をふんわりと広げるルッセリア エキセティフォルミスやカレックス ‘プレイリーファイアー’、ロドコマ カペンシスに矮性のネリウム (キョウチクトウ) 、ネリウム ‘ペティットサーモン’を組み合わせた、植物の多様な面白さが感じられるシーン。右下/多くの植物が冬季落葉中のなか、放射状に葉を広げるエリンジウム ‘フィジックパープル’が、目を引くアクセントとして活躍しながら空間を埋めている。 12月の様子 コンテストガーデンE 「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ 12月下旬、作庭後の様子。 5つの花壇のコンセプトについて詳しいレポートはこちらをチェック! コンテストガーデンを見に行こう! Information 都立砧公園「みんなのひろば」前(※コンテスト花壇は2025年4月1日に一般公開される予定です。現在通路舗装工事のため立ち入りができなくなっておりますのでご注意ください) 所在地: 東京都世田谷区砧公園1-1電話: 03-3700-0414https://www.tokyo-park.or.jp/park/kinuta/index.html開園時間:常時開園※サービスセンター及び各施設は、年末年始は休業。営業時間等はサービスセンターへお問い合わせください。入園料:無料アクセス:東急田園都市線「用賀」から徒歩20分。または東急コーチバス(美術館行き)「美術館」下車/ 小田急線「千歳船橋」から東急バス(田園調布駅行き)「砧公園緑地入口」下車/小田急線「成城学園前駅」から東急バス(二子玉川駅行き)「区立総合運動場」下車駐車場:有料
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ガーデン
「第3回 東京パークガーデンアワード 砧公園」ガーデナー5名の2月の“庭づくり”をレポート
本格的な春到来前に行なわれた2月のメンテナンス作業 作庭日の2月下旬は、例年ほどの寒い日はなかったものの、吹きさらしの砧公園では最低気温がマイナスになることもありました。どこのガーデンも万全の策で無事に冬を乗り越えていましたが、自然が相手では思いもよらぬことが起きるもの。いくつかのガーデンで球根類が掘り起こされた跡が発見されました。そのイタズラは、周囲の大木に棲みつく都会のカラスたちによるものと判明。代々木・神代ではなかった事態です。 そこでガーデナーたちは、カラス対策として水糸や麻糸を植栽の上に張り巡らすなどの策を講じることになりました。それでも隙間から入り込むつわものも。植物が根を張るまでの辛抱です。 鳥よけが施されたガーデン。これも自然との共存のためのひと手間。 「第3回 東京パークガーデンアワード」【2月】第2回作庭 2回目となるコンテストガーデンの作庭は、12月の第1回作庭時に多くの作業を済ませたこともあり、半日~1日でほぼ作業が終わりました。順調に進んだそれぞれのガーデンの作庭の様子をご紹介します。 コンテストガーデンAGathering of Bouquet 〜庭の花束〜 ◆今回の作業◆ ①プランツタグをつける カラスが紙のタグを引っこ抜いてしまう前に、金属製の黒いプランツタグを設置する。 ②グラス類の切り戻し、枯れた葉の除去 グラス類の地上部をカット。取り除いた枯葉とグラス類は細かく切って、花壇の中央に設けたバイオネストに入れる。 ③新しい苗の追加植栽とバークの追加 カラスの被害を受けた苗は交換しながら、ポイントでフロックスを補植。マルチングが流出した箇所には、寒の戻りの対策としてマルチバークを追加する。 ④バイオネストの補強と中を攪拌 しなやかな細い枝を編み込みながらバイオネストを補強しつつ、細かく刻んだ発生材はおがくずと一緒に土としっかりと攪拌する。 ◆作業完了時のガーデンの様子◆ 草花を通じて、訪れる人々の優しい気持ちが連鎖するように願いを込めて、ラウンド型のブーケを模した配植計画と色彩計画で構成されています。子どもたちの目線の高さを意識して計画されているため、レイズドベッドの縁近くにはスイセンやシラーなどのコンパクトな球根類が咲き、多くの世代の目線から楽しめるように工夫されています。また、花壇中央に設けたバイオネストへと続く管理動線には小枝を用いており、里山の小路を連想させるような、どこか懐かしさを覚える風景が広がっています。 コンテストガーデンBCircle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜 ◆今回の作業◆ ①新しく苗を追加植栽、マルチングの調整 前回手に入らなかった植物を新たに植える。バークに埋まってしまっている小さな植物によく日が当たるように、多すぎるバークを取り除く。 ②枯れたグラス類の上部をカット 枯れたグラスの葉を取り除き、溝に入れる。まだ寒くなることも考えられるので、汚くなった枝葉除去は、次回以降のメンテナンスにまわす。 ③プランツタグを設置 植物名を刻印した木製のオリジナルプランツタグを各所に指す。 ◆作業完了時のガーデンの様子◆ 命の循環というキーワードをもとに植物だけではなく、生きとし生けるものたちの集まる「庭」をテーマにデザインされています。また、レタスなどの野菜類も加え、いままで携わっていたコミュニティー菜園をこの花壇に再現。宿根草の庭に収穫の要素が追加され、誰もが心浮き立つ風景が作られました。これからの時期、子どもたちが楽しめるオジギソウやニンジンのタネが、ガーデンの手前側に播かれる予定。新しい発想が盛り込まれています。 コンテストガーデンCLadybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」 ◆今回の作業◆ ①花がら摘み、球根の植え直し 美観のためと花期を伸ばす目的で、ビオラの花がらをしっかりと摘み取る。また、カラスに掘りかえされた球根を植え直す。 ②苗の追加 前回手に入らなかったクジャクアスターやベニチガヤなどの苗を新たに補植する。 輸入苗のエピメディウム(イカリソウ)。株が大きいので分割して植える。 ③バークチップを足す マルチングが減ってしまった場所に、バークチップを加える。 ◆作業完了時のガーデンの様子◆ 砧公園で暮らす「小さな住人(虫たち)」がこのガーデンを訪れて住みやすいように生態系を意識した植栽デザイン。見る場所や角度によって印象が変わるように、植栽に複雑さが施されています。花壇内の地面には高低差が設けられているので、これからさらにどの様な立体感が生まれてくるのか楽しみ。カラス除けに用いられた紫とオレンジ色の麻ヒモは英国のナッツシーン社のもの。色彩の少ない時期のガーデンに取り入れた色づかいが、心憎いこだわりを感じさせています。 コンテストガーデンDKINUTA “One Health” Garden ◆今回の作業◆ ①雑草取り ところどころに生えている雑草を抜いて袋に集め、花壇内に設けたバイオネストに投入。 ②新たなステップを配す オオヒラダケの菌床を固めて作ったステップを新たに数カ所配置。12月に配したものは、すでに朽ち始めていた。 ③切り戻し(グラス、低木など) ノコンギク(ホキヤマ)、ススキなどの枯れた不要な部分を地際から切り戻し、バイオネストに投入。 ④バイオネストの中を整える 当日発生したものも入れた状態。この後、米ヌカが手に入り次第、入れて混ぜ込む予定。 ◆作業完了時のガーデンの様子◆ ヒトの健康、生きものの健康、環境の保全を包括的な繋がりとして捉えるワンヘルス (One Health)の概念を軸に、土壌環境を改善し、植物や微生物を豊かに育て、鳥や虫などの地域の生きものを呼び込むガーデンです。植物は植えた当時からそれほど大きな成長は見られませんが、手触りや香りを楽しめる植物たちの“人の心に安らぎをもたらす”ための準備はすでに整えられており、土中の菌糸たちも旺盛に広がっています。 コンテストガーデンE「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ ◆今回の作業◆ ①除草、枯葉整理、切り戻し 冬季落葉で枯れた部分をすべて取り除いて春に向けての美観整理を行う。発生した切り枝葉は、通路の土に混ぜ込んでリサイクル。 ②球根の植えなおし、新たな苗の補植 カラスに掘り出された球根を植え戻し、春植え品種の追加や景観のボリューム・バランスを整えるための新たな苗と球根の補植を行う。 ③寒さ除けを一度取り外す 冬の植え付けだったため不織布をかけて初年度の寒さから保護養生していたマンガべ ‘マッチョモカ’。不織布を一度取り外し、傷んだ外葉を整理する。本種は寒い冬には外葉が枯れて半落葉状態になることがあるが、温暖期の新葉で株が更新される。秋までによく根を張らせることで本来の耐寒性が発揮でき2年目以降は防寒の必要はない。 ④通路に客土して地形の調整 土砂の流失を和らげるため、一度入れた土を取り除き、培養土と米ぬか酵素、砕いたトウガラシを混ぜ込んで戻して底上げを行い、花壇内の高低差を減らす。 ⑤剪定 花壇中央でアクセントになっているコルヌスは春の鮮やかなカラーリーフの芽吹きを促進するため、半数の枝を低い位置でカット。一部の枝は春先のボリューム維持のため、今回は長いまま残している。 ◆作業完了時のガーデンの様子◆ 人だけでなく虫や鳥、土壌菌類などの分解者、そして庭の先につながるこの生きた星「地球」の環境といった全ての「生あるもの」。みんなが共に助け合いながら、末長く幸せに暮らす世界、生命共存の尊さ・美しさを伝えたい――。そんな想いを、個性豊かな植物で独創的に表現。芽吹き前で植物の地上部は少ないですが、既にそれぞれが強く主張しあっています。ボランティアで集まったチームの知識と想いの共有と共感、そして連携が、このガーデンの隠れたコンセプトとなり、今回の課題(テーマ)につながっています。 コンテストガーデンを見に行こう! Information 都立砧公園「みんなのひろば」前(※コンテスト花壇は2025年4月1日に一般公開される予定です。現在通路舗装工事のため立ち入りが出来なくなっておりますのでご注意ください) 所在地: 東京都世田谷区砧公園1-1電話: 03-3700-0414https://www.tokyo-park.or.jp/park/kinuta/index.html開園時間:常時開園※サービスセンター及び各施設は、年末年始は休業。営業時間等はサービスセンターへお問い合わせ下さい。入園料:無料アクセス:東急田園都市線「用賀」から徒歩20分。または東急コーチバス(美術館行き)「美術館」下車/ 小田急線「千歳船橋」から東急バス(田園調布駅行き)「砧公園緑地入口」下車/小田急線「成城学園前駅」から東急バス(二子玉川駅行き)「区立総合運動場」下車駐車場:有料
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「第3回 東京パークガーデンアワード 砧公園」 ガーデナー5名の“庭づくり”をレポート!
第3回コンテスト会場の全貌 2022年からスタートし、画期的な試みとして注目を浴びている「東京パークガーデンアワード」。3回目となる今回は、多くの区民が訪れる都立砧公園。コンテスト会場は園内の子どもが遊べる‘みんなのひろば’前に設けられました。 サクラやケヤキなど落葉樹に囲まれた芝生エリアに設けられたコンテストガーデン。 コンテストガーデンの区画には、あらかじめ事務局にて「高さ40cmの木枠のレイズドベッドに客土された状態」の2対1組の花壇が5つ用意されました。ガーデナーは自身が表現したい植栽が健全に育つように、ガーデン制作時に土壌改良・施肥などをすることが可能です。 作庭が完了した12月下旬の様子。 ガーデン制作にあたり、デザイナーが踏まえておくこと デザイン・植物について ・ コンテストのテーマは「みんなのガーデン」とし、多年生植物をメインとしたガーデンを制作すること。 ・ 国内市場で流通している植物のみ使用可能(採取した植物は不可)。・ 公園内で爆発的に繁殖するおそれがある植物は使用不可。・ 主たる植物は多年生植物を使用すること。容易に制御が可能な草本類に近い木本類は使用可能(全ての植物は高さ2m以内に限る)。・ 構造物やガーデンオーナメント等の設置は不可。植物のみで構成すること。・ 発生材処理のためのバイオネストの設置は可能。来園者の安全を考慮した仕様とすること。 作庭の様子。 メンテナンスについて ・ 展示期間中(2024年12月~2025年12月末)は入賞者がメンテナンスをし、それ以降は事務局が管理。・ 補植は可能。・ 最低限植物の状態を保つ週1回程度の潅水は事務局が行う。・ 薬剤の散布は不可。自然素材の忌避剤の使用についても不可。・ ごみ(発生材含む)は持ち帰り、または自身のガーデン内のバイオネストで処理をすること。・ メンテナンスの計画を提出すること。 区画・土壌について ・ 会場の基礎土壌には、事務局にて準備した土を使用。・ ガーデン制作時に施肥など土壌改良が可能。 【審査基準】公園の景観と調和していること/公園利用者の関心が得られる工夫があること/公園利用者が心地よく感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること/メンテナンスがしやすいこと/テーマに即しており、デザイナー独自の提案ができていること/総合評価※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。 「第3回 東京パークガーデンアワード」【12月】第1回作庭 気鋭の5人がつくるガーデンは、さまざまな工夫が凝らされています。各ガーデナーの植え込みの様子をチェック。ガーデナーの経験値が頼りになる土壌づくりにも注目を! コンテストガーデンAGathering of Bouquet 〜庭の花束〜 保坂悠平さん率いる作庭メンバーの皆さん。 ◆使用資材◆ 土壌改良材:混合土穣(多孔質人工軽量土壌(エコロベース):バーク堆肥=7:3)マルチング:樹皮発酵堆肥(くつきバーク)その他:複合微生物資材(カルスNC)、トウガラシを粉砕したもの ◆土壌を整える◆ モグラ除けのために、トウガラシを砕いたものを花壇全体にまく。保水・排水がよい混合土穣(多孔質人工軽量土壌(エコロベース):バーク堆肥=7:3)を均等に撒き、耕運機でよく混ぜながら耕す。 デザインに基づいて溝や起伏を作り、溝に管理動線用途としてのステップ用丸太を埋め込む。 ◆造作物等を設置する◆ 直径1mほどのバイオネストをつくる。剪定した雑木の80cmほどの太い枝数本を、深さ約30cmまで埋まるように土に挿し込む。その後、柔らかくしなるカツラの細い枝などで編むように丸く囲んでいく。バイオネストには発酵を促進させるための複合微生物資材(カルスNC)を混入する。 ◆植え付け◆ 水糸を張ってグリッドを作り、デザインに基づいてゾーンを分けるラインをチョークの粉で引く。 宿根草の苗を一度配置してから植え付ける。 宿根草を植え付けた後、その間に球根を植え付ける。 ◆マルチング&その他仕上げ◆ 左/溝に埋めた丸太のまわりに、水や土が流れ込まないよう土壌を突き固める。右/表土を樹皮発酵堆肥(くつきバーク)でマルチングする。 左/丸太を埋めた溝の側面に沿って細い枝を埋め込み、見映えを兼ねた土留めを設ける。 右/黒いアルミ製のネームプレートに白色で植物名を書き込んだ札を設置。 【12月の作庭完了】 東側 西側 【メンテナンス時の発生材について】 バイオネストを設置することで、発生した植物発生材を運搬・処理する手間を省くことができます。作業したその場で、剪定枝などの発生材を組み合わせて土台にし、落ち葉や刈草などを投入することで継続的に堆肥にできる簡便さに優れています。一般的な堆肥づくりで行う切り返しなどは必要なく、気温や降雨の水分、昆虫や土壌動物、自然界の菌糸の活動により、ゆっくりと分解が進みます。 コンテストガーデンBCircle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜 世田谷bajicoポットラックガーデン 代表デザイナー 石野夕華さん率いる作庭メンバーの皆さん。 ◆使用資材◆ 土壌改良材:多孔質人口土壌(ビバソイル)、腐葉土、もみ殻くん炭、牛糞堆肥(お馬の堆肥)など排水確保材:竹炭、汚泥発酵肥料(タテヤマユーキ1号)、剪定枝葉(ササ、ケヤキ、オリーブ、マサキなど)マルチング:樹皮完発酵堆肥(くつきバーク)、杉皮マルチバーク(スリーダイヤ2号) ◆土壌を整える◆ 保水性や排水性を持たせるため多孔質人口土壌(ビバソイル)を混ぜ込んだ後、有機質が豊富な腐葉土、もみ殻くん炭、牛糞堆肥(お馬の堆肥)を載せてよく耕す。 溝を作り、竹炭、汚泥発酵肥料(タテヤマユーキ1号)を入れた後、剪定枝葉(ササ、ケヤキ、オリーブ、マサキなど)を横たわるように入れていく。 ところどころに通気孔を掘り、底に竹炭を入れる。その後、土が入り込まないようにするため、太い枝で外側を囲み、その内側には細い枝を渦巻き状に入れていく。 ◆植え付け◆ 中央に低木やニューサイランなどの大株を植えたあと、宿根草を植え込んでいく。 宿根草の苗を植え付けた後、球根を植え込む。 ◆マルチング&その他仕上げ◆ 左/最後に樹皮完発酵堆肥(くつきバーク)と杉皮マルチバーク(スリーダイヤ2号)で表土をマルチングする。さらに、溝部分に落ち葉を軽く化粧的に載せる。 【12月の作庭完了】 東側 西側 【メンテナンス時の発生材について】 高地と低地を区分けするように作ったS字型の窪み、「風のとおり道」には枝が漉き込んであり、水はけや植物の発根を促す効果に加え、ガーデン発生材を処理し、バイオネストのように堆肥を作るという機能も持ち合わせています。また、各所に配置した鳥の巣状の「サークルネスト」と名付けたものには、微生物や虫などの住処や餌場となる役目があります。 コンテストガーデンCLadybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」 小野雄大さん率いる作庭メンバーの皆さん。 【使用資材】 土壌改良材:真砂土、バーク堆肥(炭入りコンパ)、腐葉土、ゼオライト、もみ殻燻炭排水確保材:竹炭、剪定枝葉(サクラ、ケヤキ、クスなど)マルチング:樹皮ウッドチップ元肥:マグアンプ、微生物系肥料(タキアーゼS)その他:トウガラシ ◆土壌を整える◆ 左/全体に真砂土載せた後、溝を掘りながら、ざっくりとした起伏をつける。その後、モグラ除けのために粉砕したトウガラシを撒き、よく混ぜ込む。右/多孔質のゼオライトや有機質を補いつつ団粒構造を維持するバーク堆肥(炭入りコンパ)や腐葉土、もみ殻燻炭、肥料分のマグアンプと微生物系肥料(タキアーゼS)を加え、よく耕して最終的な地形をつくる。 溝には竹炭を入れたあと、ケヤキやサクラ、クスの剪定枝を敷く。 溝のところどころに通気孔を開け、砧公園内で発生したマサキの剪定枝を入れ込む。 ◆植え付け◆ まずは、低木やキンカンなどの樹木を植栽して骨格を形作る。 宿根草の苗を植えた後、球根を植え付けていく。 ◆マルチング&その他仕上げ◆ 植栽前に樹皮ウッドチップを溝以外に敷く。植栽後にも同様に植物の周りに撒く。 溝に沿って入れた枝をカバーするために、苗を植え付けた際にカットしたグラス類の穂を載せて見栄えをよくする。 【12月の作庭完了】 東側 西側 【メンテナンス時の発生材について】 作業通路とバイオネストを設置。作業通路は他の場所より一段低い地形で、水が流れ込みやすい場所で、湿度があるため菌糸類や微生物が繁殖しやすい環境です。手入れのたびに発生する抜いた草や間引いたものをそれらに入れ込みます。落ち葉や木の枝などの層が、昆虫などに住居や食料を提供。枝葉の堆積物は水や空気を土の中に取り入れたり蓄えたりするのにも役立ち、植物たちに必要な養分にもなります。 コンテストガーデンDKINUTA “One Health” Garden 合同会社百暮 代表デザイナー 高橋祐眞さん率いる作庭メンバーの皆さん。 【使用資材】 土壌改良材:多孔質資材を複数配合したオリジナルソイル、菌糸および菌床マルチング:多摩川梨の剪定枝のチップ(地元川崎の植木農家及び果樹農家から発生する農業副産物)肥料:発酵鶏糞 ◆土壌を整える◆ 左/土中の微生物多様性を高めるために、ガーデン全体に多孔質資材等を複数配合したオリジナルソイルを入れ、発酵鶏糞と共によく耕す。右/オオヒラタケのブロック状の菌床を崩して表土に軽く混ぜ込む。オオヒラタケは菌糸が広がるのが早いので、土壌病原菌の抑制や根の成長を促す効果が期待できる。 ◆造作物等を設置する◆ バイオネストをつくる。直径約50cm、深さ約40cmの穴を開け、その内側に沿って焼杉丸太を打ち込み、多孔質資材を底に敷く。その後、丸太の間をシラカシ等の剪定枝で編み込んで囲みをつくる。 ◆植え付け◆ 低木類から植えて骨格を固め、そのまわりに宿根草の苗を植え込んでいく。 ◆マルチング&その他仕上げ◆ 宿根草の植栽前に、多摩川梨の剪定枝を利用したウッドチップを撒いて表土をマルチングする。ナシの枝はやや硬めで、程よい粒の大きさを保っているため、見た目がよいだけでなく、水の浸透がよく水はねや風による飛散が少ないことが期待できる。 左/バイオネストにシルバーリーフの剪定枝をあしらい、より植栽になじませる。 右/オオヒラタケの菌床でつくったステップを、作業の足場用として設置。数カ月後には朽ちて、土壌改良としても機能する。 【12月の作庭完了】 東側 西側 【メンテナンス時の発生材について】 バイオネストを設置し、メンテナンスで発生する剪定枝や落ち葉などの堆肥化を促進します。また、バイオネストの地中を掘り下げて焼き杭を打ち、多孔質な改良材を入れ込んで土中の微生物多様性を高めることで分解速度を高めつつ、土壌改良効果も狙う「生態系のぬか床」の構築を目指します。 コンテストガーデンE「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ 太田敦雄さん率いる作庭メンバーの皆さん。 ◆使用資材◆ 土壌改良材:軽石、もみ殻燻炭、土の活力素(バイオマイスター)、シマミミズ入り堆肥マルチング:バイオマイスター(下地)、軽石、鹿沼土(仕上げ)元肥:発酵米糠肥料、海藻元肥、バットグアノその他:EFポリマー、トウガラシ ◆土壌を整える◆ 全体的に軽石を混ぜて耕した後に、もみ殻燻炭、土の活力素(バイオマイスター)を混ぜる。 左/モグラやコガネムシの幼虫を除ける目的で用いる砕いたトウガラシ、有機質を補う有機リン酸肥料(バットグアノ)、ミネラル分を補う海藻元肥を混ぜてよく耕し、溝をつくって起伏を作る。右/部分的にミミズ入り堆肥を投入(この部分にトウガラシは入れない)。 ◆植え付け◆ 左/水糸を張り、グリッドをつくる。 右/デザインに基づいて、白線を引いてゾーンを明確にする。 中央のニューサイランを軸に大株から植栽。ポット苗や球根の下には、保水効果がある生分解ポリマーを少量敷いて、成長するまでの冬場の根の乾燥を防ぐ。 宿根草の間に球根を植え込んでいく。 ◆マルチング&その他仕上げ◆ 株のまわりに土の活力素(バイオマイスター)を撒き、夏の蒸れ予防とコガネムシ忌避のために軽石と鹿沼土で仕上げのマルチングをする。 植栽作業完了後、カラスなどのいたずら防止のため、花壇の上に細い紐を張り巡らせて完了。 【12月の作庭完了】 東側 西側 【メンテナンス時の発生材について】 メンテナンスの作業性や植栽内の日照確保、風通し向上のために、エリアを分割する曲線通路を設けました。これは単なる通路ではなく、剪定で出た枝葉のゴミを細かく切って通路の土に埋め込み、それがまた土に還って植物の栄養として供給される「新たなゴミを極力出さない“リサイクル循環Path”」としても活用します。埋める剪定ゴミは分解菌豊富な肥料の働きによって堆肥化が促進され、より速やかな循環サイクルが形成されます。 コンテストガーデンを見に行こう! Information 都立砧公園「みんなのひろば」前(※コンテスト花壇は2025年4月1日に一般公開される予定です。現在通路舗装工事のため立ち入りが出来なくなっておりますのでご注意ください) 所在地: 東京都世田谷区砧公園1-1電話: 03-3700-0414https://www.tokyo-park.or.jp/park/kinuta/index.html開園時間:常時開園※サービスセンター及び各施設は、年末年始は休業。営業時間等はサービスセンターへお問い合わせ下さい。入園料:無料アクセス:東急田園都市線「用賀」から徒歩20分。または東急コーチバス(美術館行き)「美術館」下車/ 小田急線「千歳船橋」から東急バス(田園調布駅行き)「砧公園緑地入口」下車/小田急線「成城学園前駅」から東急バス(二子玉川駅行き)「区立総合運動場」下車駐車場:有料
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都立公園を花の魅力で彩る画期的コンテスト「第3回 東京パークガーデンアワード 砧公園」全国から選ばれた5人のガーデンコンセプト
第3回会場となる「都立砧公園」 芝生が青々としたみんなの広場をはじめ、バラ園、サイクリングコース、‘子供の森’などのエリアがある。秋にはイチョウなどの紅葉・黄葉が楽しめる。 今回のコンテストの舞台となる都立砧公園は、東京世田谷区の成城学園、二子玉川など閑静な住宅街からほど近い場所にあり、昭和32年4月1日に開園しました。総面積は約39万㎡と広く、戦時中は防空緑地、戦後は都営のゴルフ場として開放されていました。のちにその起伏のある地形を生かして、芝生の広場と樹林で構成されたファミリーパークのほか、運動施設や遊具等が設置された広場が整備され、区民みんなが楽しめる公園です。 コンテストのテーマは「みんなのガーデン」 今回のコンテストエリアの向かいに広がる、‘みんなのひろば’。これから育っていく5つのガーデンは多くの人の目を楽しませてくれることでしょう。 天気のよい休日には、家族連れがお弁当を広げる砧公園。‘みんなのひろば’前で開催される「第3回東京パークガーデンアワード」のコンテストテーマは『みんなのガーデン』です。宿根草をメインとして活用しながら、五感を刺激し、見ていて楽しいと感じる要素を取り入れ、ロングライフ・ローメンテナンスなガーデンが制作されます。多数の応募の中から審査を通過した5名の入賞者が作るのは、それぞれ約40㎡のスペース。土壌改良や植え付けなどの作庭は、2024年12月と2025年2月に行われます。その後、11月の最終審査まで、ガーデナーにより必要に応じてメンテナンスが行われ、3回の審査を経てグランプリが決定します。 「持続可能なロングライフ・ローメンテナンス」であることに加え、審査で見る重要なポイント 2024年に3回行われた「第2回 東京パークガーデンアワード神代植物公園」の審査の様子。2025年の審査員は、福岡孝則(東京農業大学地域環境科学部 教授) 正木 覚(環境デザイナー・まちなか緑化士養成講座 講師) 吉谷桂子(ガーデンデザイナー) 佐々木 珠(東京都建設局公園緑地部長)、植村敦子(公益財団法人東京都公園協会 常務理事) 第3回も「持続可能なロングライフ・ローメンテナンス」であることが外せないルール。丈夫で長生きする宿根草・球根植物(=多年草)を中心に季節ごとの植え替えをせず、季節の花が順繰りに咲かせられることが求められています。 ● 公園の景観と調和していること ● 公園利用者の関心が得られる工夫があること●公園利用者が心地よく感じられること● 植物が会場の環境に適応していること ● 造園技術が高いこと● 四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること● 「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること● メンテナンスがしやすいこと● テーマに即しており、デザイナー独自の提案ができていること ● 総合評価※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。審査は次の視点からも行われます。 昨夏はかつてない酷暑でしたが、昨今の異常気象を乗り切るために、暑さや乾燥に耐えるもの、繁茂しすぎないものの選定が重要となり、成長して倒れたり蒸れて病害虫が発生したりするなどのダメージを回避するための手入れのテクニックも判定されます。メンテナンスはガーデナーの申請によって行われるのが条件ですが、手入れの頻度(回数)も審査の対象となります。 第2回のガーデン内に設けられた堆肥ヤード(Dガーデン)。 また、手入れの際に発生した剪定枝などは、自身のガーデン内で堆肥化させるなどで処理・循環させる考慮も重要です。ゴミとして焼却すれば二酸化炭素が発生しますが、ガーデン内で微生物に分解されるような仕組みが整えられていれば、二酸化炭素を発生させずに、土壌内微生物を多様化させることができます。 全国から選ばれた5人のガーデンコンセプト どのエリアでガーデンを制作するかを決めるため2024年10月中旬に集合した5名のガーデナー。 コンテストのテーマとルールをふまえて制作するそれぞれのガーデンのコンセプトをご紹介します。 コンテストガーデンAGathering of Bouquet 〜庭の花束〜 【作品のテーマ・制作意図】 皆さんの日常に癒やしや潤いを届けたいという願いを込め、プランツ・ギャザリングの視点で、ガーデンをひとつの大きなブーケに見立ててデザインを構成しました。動物たちが次の訪問者のために心遣いを残していく絵本から着想を得て、あらゆる世代の方が見て触れて、香りなどを楽しめるように、花の形や手触りがおもしろいものを用いた植栽計画をしています。ぜひ手に取って、お気に入りの植物を見つけてください。たくさんの感動や気づきが新たな会話を生み、笑顔になるシーンが増えますように。 【植栽計画について】 フラワーデザインの花束を構成する際に考慮する「自然環境の中で成長している植生本来の姿や形を意識すること」を踏まえ、本計画では草花の形状が持つ役割と全体のバランスに気をつけながら配植計画を作成しました。春のガーデンは、ナチュラルなグリーンとパステルカラーの花を中心にして構成。初夏からぐんぐんと葉の旺盛さが増し、夏のガーデンでは花色が分かりやすい鮮やかな植物を中心に構成しました。晩夏から秋では、庭全体がシードヘッドとグラスが中心になり、ナチュラルの中にどこか秋の上品さを感じられるような植栽計画となっています。 【主な植物リスト】 宿根草:エキナセア‘マグナススーペリア’/ペンステモン‘ストリクタス’/アガパンサス‘ピッチュンホワイト’/クラスペディア‘ゴールドスティック’/オルレア・グランディフローラ‘ホワイトレース’ などグラス類:ペニセタム・ビロサム‘銀狐’/メリニス‘サバンナ’/ホルデューム・ジュバタム/カラマグロスティス・ブラキトリカ など低木:コルヌス・ステラピンク/ビルベリー‘ローザスブラッシュ’/ニシキギ・コンパクター/コバノズイナ など球根:チューリップ‘フレーミングピューリシマ’/レウコジャム‘スノーフレーク’/アリウム‘グレイスフルビューティ’ など コンテストガーデンBCircle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜 【作品のテーマ・制作意図】 季節によってカラーリングが変化する植物や、実をつけて味わい深い風景を作ってくれる植物に集まる多様な生き物たち。そして各所に配置したサークルネストはそんな生き物たちの拠り所に。命の循環というキーワードをもとに植物だけではなく生きとし生けるものたちの集まる「庭」をテーマにデザインしました。人間だけに限らず、あらゆる生き物たち「みんな」にとっても楽しめる「命を感じられるガーデン」は「みんなのにわ」となり、命を循環させてゆきます。 【植栽計画について】 互い違いに築山をつくり、背丈の高い植物を配置することにより奥の植栽を目隠しする効果を出しています。S字型に配置した窪みは水捌けだけではなく空気の通り道として。区切られた築山・フラットな部分それぞれにテーマカラーを設定して、その色の花を植栽。眺める場所によって違う印象の風景を作ります。植えるのは草木や花だけでなく、味覚や嗅覚でも楽しめる実のなるものやハーブなど。風や、季節、味わいや集まる命を感じられる庭。人間だけに限らず、生き物たちにとっても楽しめるようなガーデンを考えています。 【主な植物リスト】 宿根草:バプティシア‘ブルーベリーサンデー’/アガスター‘シェゴールデンジュビリー’ /糸葉丁子草/スタキス・オフィシナリス などグラス類:カレックス‘プレーリーファイア’/メリニス‘サバンナ’/ぺニセタム・オリエンターレ など低木:ブルーベリー/イチジク/紫式部 など球根:アリウム各種/チューリップ各種 など コンテストガーデンCLadybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」 【作品のテーマ・制作意図】 砧公園で暮らす「小さな住人(虫たち)」がこのガーデンを訪れて住みやすいように生態系を意識した植栽のデザインをしています。植栽は、見る場所や角度によって印象が変わるように、カマキリなどの天敵が身を潜められるような複雑さが出るよう工夫しました。植物は、てんとう虫やカマキリの食料となるアブラムシなどが好む「バンカープランツ」や蝶やミツバチたちの蜜源となる植物を植えています。「小さな住人(虫たち)」の生活をそっとのぞき見ることができる場所を目指しています。ここでの小さな体験が、自分の身近な自然環境を考えるきっかけになってもらえたら嬉しいです。 【植栽計画について】 ガーデンは、敷地に高低差をつけて作業通路と大型のグラスがあるブロック植栽で区切り、4つのマトリックスエリアで構成。1.西日や乾燥に強い植栽エリア、2と3.緩やかなミラーボーダーで蝶々やミツバチの蜜源になる植栽エリア、4.半日陰に強い植栽エリア、とそれぞれ特徴は異なります。見る場所や角度によって印象が変わり、より複雑に見えるような視覚効果があり、春から夏は花数が多くてにぎやかな植栽、秋はグラスをメインとした風情のある植栽となっています。 【主な植物リスト】 バンカープランツ:へメロカリス/ユウスゲ/イタリアンパセリ など宿根草:モナルダ・ブリドブリアナ/エキナセア‘メローイエロー’/アスター‘オクトーバースカイ’ などグラス類:スキザキリウム‘ハハトンカ’/ぺニセタム・カシアン/パニカム‘シェナンドア’ など低木:キンカン/アロニア/コバノズイナ など球根:ダッチアイリス‘ブルーマジック’/カマシア/カノコユリ‘ブラックビューティー’ など コンテストガーデンDKINUTA “One Health” Garden 【作品のテーマ・制作意図】 ヒトの健康、生きものの健康、環境の保全を包括的な繋がりとして捉えるワンヘルス (One Health)の概念を軸に、それら3つの主体が密接に関わり合う「ワンヘルスガーデン」をつくります。土壌環境を改善し、植物や微生物を豊かに育て、鳥や虫などの地域の生きものを呼び込む。ガーデンの香りや触れ合いを通し、ヒトの健康と安らぎを生み出すガーデンをつくり、いろいろな生きものがやってくる「みんなのガーデン」を実現します。 【植栽計画について】 みんなのワンヘルスガーデンにするために、植栽計画は見るだけでなく触れる、香るなど五感で楽しめるハーブやカラーリーフやクラフトの素材などを用い、植物に触れるための仕掛けを散りばめます。また、四季を通じて彩りのある品種やシードヘッドの美しいものも使用し、管理が容易で楽しみながら持続できるガーデンを作ります。 【主な植物リスト】 宿根草(蜜源植物):ルドベキア/オミナエシ/モルダナ/アザミ/ガウラ/スミレ/チェリーセージ など宿根草(四季の移ろい):グラス類のフェスツカ/カレックス/イトススキ/フウチソウ/チカラシバ/レモングラス/ミューレンベルギア’カピラリス’ など低木類(鳥類・昆虫類来訪):スモークツリー‘グレース’/ガマズミ/アロニア‘メラノカルパ'’カラーリーフ:カラスバセンリョウ/カリステモン‘リトルジョン’/イリシウム‘フロリダサンシャイン’その他(季節の果実や葉):ビルベリー/コバノギンバイカ/レモンマートル コンテストガーデンE「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ 【作品のテーマ・制作意図】 私は「みんなのガーデン」を、来園者だけでなく、花を訪れる虫、土壌菌類などの分解者、そして庭の先につながるこの生きた星「地球」の環境といった全ての「生あるもの」をつなげる庭と捉えました。温暖化する東京の気候に合った植物を差別なく組み合わせ、虫や菌たちによる循環系の形成、見るだけでなく庭づくりに参加もできる「みんなのガーデン」。「みんな」が共に助け合いながら、末長く幸せに暮らす世界、生命共存の尊さ・美しさを伝えたい。この想いが、この庭から未来へ・社会へ・地球へと広がっていけば、と考えています。 【植栽計画について】] 宿根草やカラーリーフの低木類、球根類を中心に、国籍や古今の流行、有名無名を問わず、植物の多様性や季節変化の諸相を楽しめるバラエティ豊かな植物選びで植栽を構成します。また、蜜蜂や蝶などの昆虫が好んで訪れる蜜源植物や香りのよい植物を積極的に使用し、植物の美観だけでなく、生物が共存する世界の美しさや、嗅覚や聴覚(葉ずれや虫の羽音)、味覚(蜜やハーブへの想像)、触覚(植物のテクスチャーからの連想や肌に触れる風が植物の動きを介して理解される)など、五感で楽しめる植栽表現を目指します。 【主な植物リスト】 宿根草:マンガベ ‘マッチョモカ’/アムソニア ‘ストームクラウド’/アガパンサス ‘ブラックマジック’ /アネモネ トメントーサ/ジンジバー(ミョウガ)斑入り/イリス・エンサタ(ハナショウブ)‘バリエガータ’/パトリニア プンクティフローラ/タリクトラム ‘エリン’ /ユーフォルビア ‘ファイアーグロー’/ユーパトリウム ‘リトルレッド’ などグラス類:カラマグロスティス ‘カールフォースター’/モリニア ‘トランスペアレント’ /アンドロポゴン ‘ブラックホークス’ /スキザキリウム ‘ハハトンカ’ /コルタデリア ‘ミニパンパス’/メリニス ‘サバンナ’/ムーレンベルギア/スティパ/ホルデウム など低木:ネリウム(キョウチクトウ)‘ペティットサーモン’/コルヌス(サンゴミズキ)‘ケッセルリンギィ’/ロロペタルム (トキワマンサク) ‘黒雲’ /ブッドレア・ グロボサ など球根:ナルキッスス(スイセン)タリアなど数種/チューリップ(原種、園芸種含めて多品種)/アリウム (開花期をずらして数種)/イキシア・バビアナ・ワトソニアなどの南アフリカ原産種 など コンテストガーデンを見に行こう! Information 都立砧公園「みんなのひろば」前(※コンテスト花壇は2025年4月1日に一般公開される予定です。現在通路舗装工事のため立ち入りが出来なくなっておりますのでご注意ください) 所在地: 東京都世田谷区砧公園1-1電話: 03-3700-0414https://www.tokyo-park.or.jp/park/kinuta/index.html開園時間:常時開園※サービスセンター及び各施設は、年末年始は休業。営業時間等はサービスセンターへお問い合わせ下さい。入園料:無料アクセス:東急田園都市線「用賀」から徒歩20分。または東急コーチバス(美術館行き)「美術館」下車/ 小田急線「千歳船橋」から東急バス(田園調布駅行き)「砧公園緑地入口」下車/小田急線「成城学園前駅」から東急バス(二子玉川駅行き)「区立総合運動場」下車駐車場:有料
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ガーデン&ショップ
「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」1年の取り組み
毎日見学者が訪れる第2回コンテスト会場は「神代植物公園」正門手前プロムナード[無料区域] コンテスト会場となった神代植物公園の正門手前プロムナード[無料区域]の1年間の景色の移り変わり(右上/4月 左下/7月 右下/11月)。入口付近に設置されたガーデンの案内板(左上)が目印。 第1回の都立代々木公園での開催に続き、第2回の舞台は、武蔵野の面影が残る都立神代植物公園。広大な敷地を有する園内には、四季折々に咲き継ぐ10万本もの花木のコレクションに加え、ばら園や貴重な植物が育つ大温室などがあり、歴史ある植物公園として知られています。第2回のコンテスト会場は、公園の正門手前のプロムナード[無料区域]。書類審査を通過した5名の入賞者がそれぞれ約70㎡のスペースにガーデンを制作し、3回の審査を経て2024年11月にグランプリが決定しました。 第2回コンテストのテーマは「武蔵野の“くさはら”」 5人が作庭した花壇は、プロムナード(公道)を挟んで向かい合う日向と日陰の2つのエリアに設けられました。日陰の花壇(写真手前側)は、常緑高木のシラカシが日を遮ります。11月の様子。 今回のコンテストのテーマは「武蔵野の“くさはら”」です。 かつて、ここ調布市を含む武蔵野エリアは見渡す限りの原野でした。ススキやハギなどが背を超えるまでに茂り、視界を遮る 山や木もなく、野から出た月が野に沈む、月見の名所としても知られていました。そんな背景に現代的な解釈を加えることで、挑戦者であるガーデナーたちは、豊かな色彩も取り入れながら新しい風景=ガーデンを制作しました。 コンテストガーデンが作られている敷地の平面図。A〜Eの各面積は約70㎡ 。どのエリアでガーデンを制作するかは、2023年11月に抽選により決定しました。 第1回に引き続き、“持続可能なロングライフ・ローメンテナンス”であることが「東京パークガーデンアワード」の外せないルールです。丈夫で長生きする宿根草を中心に選び、季節ごとの植え替えをせず、四季ごとに花の彩りがあることが求められています。今回の植栽は、1名ごとに北側(日向)と南側(日陰)の異なる環境に花壇を制作されたのも特徴でした。 2023年12月に行われた5つのガーデン制作に関わった皆さん。 【第2回 東京パークガーデンアワード in 神代植物園 最終審査までのスケジュール】 「東京パークガーデンアワード」は、5名の参加者決定から最終審査の結果発表まで1年かけて行われる、新しい試みのコンテストです。2023年12月上旬にはそれぞれの区画で1回目の作庭が完了。2024年2月下旬には、2回目の作庭日が設けられ、切り戻しなどのメンテナンスや追加の植栽など、花壇のブラッシュアップ作業が行われました。5つのエリアがそれぞれ日増しに彩りがあふれる4月は『ショーアップ審査』、梅雨空の7月中旬には『サステナブル審査』、11月上旬に秋の見ごろの鑑賞性と年間の管理状況を審査する『ファイナル審査』が行われました。酷暑を乗り越え、晩秋のガーデン風景へと移り変わったコンテスト会場をぜひご覧ください。 「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」すべての審査が終了しました! 審査員は以下の6名。福岡孝則(東京農業大学地域環境科学部 教授)、正木覚(環境デザイナー・まちなか緑化士養成講座 講師)、吉谷桂子(ガーデンデザイナー)、佐々木珠(東京都建設局公園緑地部長)、植村敦子(公益財団法人東京都公園協会 常務理事)、松井映樹(神代植物公園園長) 4月、7月、11月の3回の審査では、6名の審査委員による採点と協議により行われました。審査基準は、以下の項目です。【審査基準】公園の景観と調和していること/公園利用者が美しいと感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること(ロングライフ) /メンテナンスがしやすいこと(ローメンテナンス)/デザイナー独自の提案ができていること/総合評価 ※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。 「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」授賞式 2023年12月のガーデンの施工から約1年が経過し、3回目の審査となる『ファイナル審査』が2024年11月7日に行われ、入賞5作品の中より「グランプリ」、「準グランプリ」、「審査員特別賞」が決定。晴天の2024年11月24日、東京都江東区にある清澄庭園内の大正記念館にて授賞式が行われました。式典では、賞状とクリスタルメダルの贈呈、6名の審査員による講評、授賞者5名による喜びのコメントが発表され、参列者より大きな拍手が贈られました。 「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」の受賞者と審査員。 審査委員長の講評 審査委員長 福岡孝則さん(東京農業大学地域環境科学部 教授) パークガーデンというのはパブリックな場であり、私的な庭とは異なります。誰でも来ること、使うことができ、色々な方に体験していただけるのが最大の特徴かと思います。今年の「東京パークガーデンアワード」を通して感じたことをお伝えします。 東京パークガーデンアワードでは、植物の持っている美しさを単体の植物として見るだけではなく、植物全体で作る雰囲気やそのフィールドの色、テクスチャーや形などが見せる魅力を大いに感じることができました。成長前の春先などは、植物の下に設けられた小さな地形のアンジュレーションのつくる変化や水の動き、植物と地形でつくる全体のボリュームなどの細かい配慮からも作者の目的や意図を感じながら、審査しています。 私の専門はランドスケープアーキテクトなので、都市緑地などの屋外空間を計画設計するのが仕事で、植栽も含めた空間の全体像に重点をおいて考える傾向にありました。しかし今回改めて感じたことは、成長する過程のその瞬間瞬間にその植物を中心とした世界が輝いている瞬間があり、そこに感動があるということ。そして、ガーデンを訪れる人たちの実に多様で自由な感じ方、捉え方があることも強く感じました。パブリックガーデンは植物好きな人だけではなくて、多くの人に訴求していく必要があります。このような中で、出展者のみなさんが植物の形やテクスチャーで創意工夫を凝らし、繊細なものや明るいもの、そして渋いものなど、個性あふれるガーデンを創り出し、多くの人を惹きつけていました。私も含めて、改めて植物やガーデンの偉大さを考えさせられ、多くを学んだ審査となりました。 今年の夏は非常に暑かったですね。庭をつくる上で、サステナブルであることはとても大切なことです。一方で、「自然の下では、私たちで全てコントロールできず、思い通りにならないこともある」ということも学び、知る必要があります。日々、植物の状態を見たり、土の状態を学んだりして、その変化の中で自分たちが少しずつその土地に手を入れる感覚が大切だと考えます。今年は私の大学でも、研究室で設計に関わってきた食の庭プロジェクトで、土づくりからキャンパス内の庭や緑地のメンテナンスをするところまで取り組んでみました。ここでも意外な発見がありました。あれこれ試行錯誤しているうちに、いつもより学生同士のコミュニケーションが生まれていること。ガーデンづくりはサステナビリティを学ぶ実験場にもなると同時に、コミュニケーションが生まれるきっかけの場になるのです。夏の暑い日も、秋の心地よい日も、屋外で自然と向き合う時間をもつことで、新しい関係が生まれます。そう思うと、この東京パークガーデンアワードというのは、素晴らしい取り組みであり、まだ大きな可能性が隠されているといえるでしょう。 有名なガーデナーもランドスケープアーキテクトも、1人でできることは限られていると思います。ですから、皆さんがご自身が生活されている地域で、そしてチームでプラットフォームをつくっていただき、今回の東京パークガーデンアワードを基に日本中にパークガーデンが広がっていくような礎となって頂きたいと思います。また、ガーデンの技術とか、高い知識を持った公園管理者や造園技術者同志で切磋琢磨することも大事ですが、同時に、植物の育て方をまだ知らない人たちも含めて、いろんな人たちと関わりながら、このパークガーデンを広げていくということが大切だと感じております。 5名の授賞ガーデンと審査員講評 グランプリ コンテストガーデンAGrasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜 ⚫︎コンテストガーデンAの月々の変化は、こちらからご覧いただけます。 審査員講評 公園のエントランスにふさわしく、華やかさのある“のはら”でした。グラスや葉のテクスチャーの流れの中で、花が踊っているようにも感じられました。特に日陰の庭は植物の選定がしっかりしていて、多様な植物が秋まで乱れず、花後の姿も美しく見せていました。日向の庭は、混みあって見える時季もありましたが、流れを持たせたデザインコンセプトが秋にはしっかり生きてきました。シードヘッドもきれいに残り、キラキラしたグラスも印象的でした。全体に葉や花の色彩の対比が美しく計算されていて、光と風を感じさせてくれるステキな庭でした。 古橋 麻美さん コンテストを終えた受賞者のコメント 自身の今までの経験をうまく生かせたと思っています。当初、皆さんのプランを見たときにその素晴らしさに怖気づいたのですが、自身が長年メンテナンスをしている強みを生かし、きれいな庭に仕上げることができました。多くの人々に見て頂けるガーデンをつくりたいと長年思っていたので、1年間とても有意義な時間でした。 準グランプリ コンテストガーデンC草原は、やがて森へ還る。 ⚫︎コンテストガーデンCの月々の変化は、こちらからご覧いただけます。 審査員講評 「武蔵野の“くさはら”」というテーマに向き合う真摯な姿勢が伝わってきました。低木を植え、背景となるカシの木も利用し、限られた敷地で自然の景色をうまく表現していました。地形に起伏をもたせ、風の通り道も作り、「奥に何かあるのではないか」と草を分け入っていきたくなるような雰囲気を感じました。赤い実・ワイルドオーツ・ミズヒキなどとの出会いが楽しい一方、花壇手前に小花を枝垂れさせるなど、遠景も含めてバランスがよく、立体的で透明感のある景観になっていました。夏から秋にかけてやや繁りすぎ、地形のアンジュレーションなど細かな部分に目が届きにくくなる面もありましたが、「草原は、やがて森へ還る。」というタイトルに向き合った結果とも感じます。 吉野 ひろきさん コンテストを終えた受賞者のコメント 普段は個人邸をメインに、木を植えて森のような庭をつくっていますが、今回は宿根草メインということで当初はアウェー感があり、私自身にとって大きなチャレンジでした。思った通りには行かず失敗もありましたが、普段やっていることを表現できました。途中、審査員の厳しい言葉に一喜一憂しましたが、それをアドバイスとして捉えて、その後に生かすことができました。 審査員特別賞 コンテストガーデンE武蔵野の“これから”の原風景 ⚫︎コンテストガーデンEの月々の変化は、こちらからご覧いただけます。 審査員講評 日本の在来種を大胆に使って風通しよく配置していました。多様な葉の形やテクスチャーの違いが面白く、じっくり見ていたくなりました。草(くさ)感が強いので、花壇とは思われないかも…と心配してしまうくらいでしたが、緑から青色まで一年を通じて植物の葉の表情の変化が美しかったです。その辺の草っぱらだって、見ようによっては美しい! ということを気付かせてくれたともいえます。メンテナンスの回数を少なくする努力も見られ、日本における宿根草ガーデンの一つのスタイルとして、可能性を感じる庭でした。 清水 一史さん コンテストを終えた受賞者のコメント 都内の緑地をする仕事では、いつも『人々の背景になりそこに生き物がいること』を想像して計画していますが、よく言われるのが『在来種は地味』。今回、そんな在来種の魅力に焦点を当てた庭づくりは意義のある試みでした。ただコンセプトに寄りすぎたことで難しい点もありましたが、見に来てくれた人たちとの交流を通して、多くの学びを得ることができました。 入賞 コンテストガーデンB花鳥風月 命巡る草はら ⚫︎コンテストガーデンBの月々の変化は、こちらからご覧いただけます。 審査員講評 日向の庭は、草原の広々とした感じが伝わってきました。高さの違う植物を連ね、黄色の色あいにも強弱があって、見て楽しい華やかな庭になっていました。日陰の庭は近くで見ると、流れのような小道の周りに色々な花が咲いています。春から初夏にかけての優しい白、黄色系の花と多様な表情をもつグラスが作り出す世界は圧巻でした。グラウンドカバーにしている葉の微細なテクスチャーやグラデーションも美しかったです。ウィットに富んだ作り手のオリジナリティーを感じる庭でした。 メイガーデンズ 柵山 直之さん コンテストを終えた受賞者のコメント 今回『命巡る草はら』というコンセプトでしたが、一番の成果としては、1年で命の巡りが見られたということです。ツマグロヒョウモンの幼虫がたくさんついていて、数カ月後にはたくさんの成虫が飛び交う光景が見られました。人々の心を潤わせる街なかの楽園・パークガーデン。街の中にたくさんあったら、世の中が変わるのではと思います。 入賞 コンテストガーデンDfeeling garden ~伝え感じる武蔵野の新しい風景づくり~ ⚫︎コンテストガーデンDの月々の変化は、こちらからご覧いただけます。 審査員講評 季節の花がいつも咲いていて、多くの来園者を喜ばせてくれるすてきなガーデンでした。くさはらにポップなテイストを入れるというアイデアも秀逸で、日向の庭はゴージャスな植物のかたまりが連なり、春のチューリップなどが来園者をワクワクさせました。秋には多様なグラスの穂も美しく、ススキとアスター‛ジンダイ’の取り合わせがステキでした。日陰の庭は、グラウンドカバーも含めさまざまな色合いが混じりあい、光の明暗などデザインの狙いがよく伝わってきました。1年を通じてボリューミーでエネルギッシュ、色鮮やかな表情が印象的なガーデンでした。 藤井 宏海さん コンテストを終えた受賞者のコメント 私は中学3年生の時からこの仕事をしたいと思っており、いつも『笑顔になるような風景を作りたい』と考えてきました。今回はそれと併せて、小さい時に遊んだ草原などを基にデザインしました。庭を一から作って管理してみて、植物の成長の旺盛さに驚かされましたし、メンテナンスの大切さも改めて実感し、あらゆる視点で発見がありました。 Pick up 月々の植物の様子 11月の植物の様子 左から/サルビア‘ファイヤーセンセーション’(A日向エリア)、清澄白山菊(A日向エリア)、コレオプシス‘レッドシフト’(B日向エリア)、ミューレンベルギア・カピラリス(B日向エリア) 左から/ノコンギク‘夕映え’(C日向エリア)、バーベナ・オフィシナリス‘ハンプトン’(C日陰エリア)、シュウメイギク‘クイーンシャーロット’(D日陰エリア)、カライトソウ(E日向エリア) 10月の植物の様子 左から/ヒガンバナ(A日向エリア)、コルチカム(A日陰エリア)、ヘリアンサス‘レモンクイーン’(B日向エリア)、ホトトギス(B日陰エリア) 左から/アスター'アポロ'(C日向エリア)、アスター‘ジンダイ’(D日向エリア)、ヤマハギ(E日向エリア)、ノダケ(E日向エリア) 9月の植物の様子 ルドベキア‘タカオ’(Aエリア日向)、ペニセタム‘ルーメンゴールド’(Aエリア日向)、モミジアオイ(Bエリア日向)、アスター‘トワイライト’(Cエリア日陰) ムラサキシキブ(Cエリア日陰)、ユーパトリウム‘グリーンフェザー’(Dエリア日陰)、シュウメイギク(Eエリア日陰)、ツリガネニンジン(Eエリア日陰) 8月の植物の様子 左から/リグラリア‘ミッドナイトレディ’(Aエリア日陰)、ルエリア‘パープルシャワー’(Bエリア日向)、オミナエシ(Bエリア日向)、バーノニア'クリニタ'(Cエリア日向) 左から/カノコユリ(Cエリア日向)、オトコエシ(Dエリア日向)、ユーパトリウム‘ベイビージョー’(Dエリア日向)、トウテイラン(Eエリア日陰) 7月の植物の様子 左から/ミソハギ(Aエリア日向)、ヤマユリ‘オーラタムゴールドバンド’(Aエリア日陰)、ツルバギア(Bエリア日陰)、エキノプス‘プラチナムブルー’(Cエリア日陰) 左から/アンジェリカ‘エボニー’(Cエリア日陰)、ヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’(Dエリア日向)、シキンカラマツ(Eエリア日向・日陰)、シラヤマギク(Eエリア日向) 6月の植物の様子 左から/カンパニュラ・ラプンクロイデス(Aエリア日陰)、トリテレイア‘ルディ’ と ‘クイーンファビオラ’ (Bエリア日向)、ヤマアジサイ‘藍姫’(Bエリア日陰)、エキナセア‘プレーリーブレイズグリーン’(Cエリア日向) 左から/シャスタデージー(Cエリア日陰)、アリウム‘レッドモヒカン’(Dエリア日向)、アガスターシェ‘ビーリシャスピンク(Dエリア日向)、コオニユリ(Eエリア日向) 5月の植物の様子 左から/ツツジ ホンコンエンシス(Aエリア日陰)/ダッチアイリス(Bエリア日向)/バイカウツギ(Cエリア日向)/ゲラニウム‘ジョンソンズブルー’(Cエリア日陰) 左から/オーニソガラム・アラビカム(Dエリア日向)/アリウム‘パープルセンセーション’(Dエリア日陰)/ミツバシモツケ(Eエリア日向)/チョウジソウ(Eエリア日陰) 4月の植物の様子 左から/カマッシア・ライヒトリニー(Aエリア日向)/スイセン‘タリア’(Aエリア日向)/ヒマラヤユキノシタ(Bエリア日向)/チュューリップ‘クルシアナシンシア’(Bエリア日向) 左から/ゲラニウム'チュベロサム'(Cエリア日陰)/リクニス‘フロスククリ’(Cエリア日向・日陰)/ラナンキュラス ラックスシリーズ(Dエリア日向・日陰)/シラー・シビリカ(Eエリア日陰) 3月の植物の様子 左から/バイモユリ(Aエリア日陰)/クロッカス‘ホワイトウェルパープル’(A・Cエリア日向)/スイセン‘イエローセイルボート’(Bエリア日向)/チューリップ‘アルバコエルレアオクラータ’(Cエリア日向) 左から/クリスマスローズ(Cエリア日陰)/ベロニカ‘オックスフォードブルー’(Dエリア日向)/原種チューリップ・トルケスタニカ(Eエリア日向)/フクジュソウ(Eエリア日陰) 2月の植物の様子 左から/リナリア・プルプレア(Aエリア日向)/ヤブラン’シルバードラゴン’(Aエリア日陰)/スイセン‘ペーパーホワイト’(Bエリア日向) /メリアンサス・マヨール(Bエリア日陰) 左から/カレックス・ペンデュラ(Cエリア日陰) /ツワブキ(Dエリア日陰) /ディアネラ・ブルーストリーム(Eエリア日陰) /タマシダ(Eエリア日陰) 1月の植物の様子 左から/カラスバセンリョウ(Aエリア日陰)/黒葉スミレ(Bエリア日陰)/ホトトギス(Bエリア日陰) /アシズリノジギク(Cエリア日陰) 左から/シュウメイギク(アネモネ‘ホノリージョバート’)(Cエリア日向) /リョウメンシダ(Dエリア日陰) /タイニーパンパ( Dエリア日向) /カタクリ(Eエリア日向) 全国から選ばれた5人のガーデンコンセプト 「持続可能なロングライフ・ローメンテナンス」をテーマに、各ガーデナーが提案するガーデンコンセプトは、5人5様。それぞれが目指す庭のコンセプトや図面、植物リストの一部をご紹介します。 コンテストガーデンAGrasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜 【作品のテーマ・制作意図】武蔵野のくさはらを表現するにあたり、オーナメンタルグラスとカラーリーフ、特徴的な葉を持つ植物をメインにしたガーデンをつくってみたいと思いました。「グラスガーデン」は馴染みが薄かったり、地味にとらえられたりすることもあるかと思いますが、宿根草に加え、球根植物も多用し華やかさをプラスすることで、多くの方に楽しんでいただけるガーデンを目指しています。 【主な植物リスト】〇北側(日向)グラス類…イトススキ/カラマグロスティス/ペニセタム/パニカム/モリニア など季節の花…アガスターシェ/フロックス/ルドベキア/アガパンサス など和の花…キキョウ/オミナエシ/フジバカマ類/ヤブカンゾウ/ヒオウギ など球根…ユリ類/スイセン/カマッシア/ダッチアイリス/アリウム など〇南側(日陰)グラス・葉物類…フウチソウ/ベニチガヤ/ギボウシ類/クジャクシダ/クサソテツ など季節の花…アスチルベ/プルモナリア/ティアレラ/ムラサキツユクサ など和の花…イカリソウ/ヤマブキショウマ/シュウメイギク/チョウジソウ/ミヤコワスレ など球根…ユリ類/スイセン/コルチカム など コンテストガーデンA 月々の変化 11月の様子 【11月の日向エリア】 見応えたっぷりの、スパイク状に穂を伸ばすカラマグロスティス ‘カールフォースター’や空間を埋めるミスカンサス‘モーニングライト’、そして無数の花をつける清澄白山菊が晩秋の庭の見どころ。そのほか、暗赤色に色づくミソハギやペンステモン‘ダークタワーズ’のシックな葉色が風景に深みを添え、初夏から咲き続けているフロックス‘ブルーパラダイス’が華やかさを加えています。 【11月の日陰エリア】 カラーリーフとオーナメンタルなフォルムの植物が最後まで崩れることなく、季節の花とともに整然とした美しさをキープ。赤や茶色に染まる風景の中で、初夏から咲いているカンパニュラ・ラプンクロイデスやムラサキツユクサ‘スイートケイト’がちらほら名残の花をつけ、ヤマラッキョウの小さな花とともに、秋のひなびた風情を強めています。 10月の様子 【10月の日向エリア】 秋の陽に輝くたくさんのグラス類の中で、夏の名残りのルドベキアやフジバカマなどの花が美しく映えています。派手な印象を与えがちな黄×ピンクの組み合わせも、グラス類の絶妙な配分によって、落ち着きのあるナチュラル感を漂わせています。植栽の手前一角では、白いタマスダレとヒガンバナが瑞々しいアクセントを効かせています。 【10月の日陰エリア】 10月に入り花壇の手前側で人目を引いているのは、コルチカム(イヌサフラン)。透明感のあるピンクの花が、トーンの低い色彩の中で効果的なコントラストを生み出しています。暗くなりがちな後方では、オトコエシの白花やホスタの白斑が明るい印象を与えていることで奥行き感が高まり、花壇の見応えが増しています。 9月の様子 【9月の日向エリア】 9月に入ると黄×ピンクの花々とグラスのボリュームが半々となりました。ルドベキア‘タカオ’やミソハギの鮮やかな花が、落ち着いたトーンの中で輝くように咲いて見えます。数本枯れ始めた株もありますが、さまざまな形のグラスの穂によく馴染み、情趣あふれる風景が生まれています。 【9月の日陰エリア】 真夏のダメージがなく、気持ちよい眺めが楽しめるリーフガーデン。整然と立ち並ぶアスチルベの穂はややかたい印象ですが、風をはらんだベニチガヤやフウチソウが点在していることで硬軟のバランスをキープ。オトコエシと共にガーデンが軽やかに見えます。 8月の様子 【8月の日向エリア】 先月に続き旺盛に花々が群れ咲き、草丈のあるグラス類が加わってきたことで、ぐっと野趣に富んできました。グラス類の中でも特に、エラグロスティス・スペクタビリスのエアリーな穂が株と株の間を埋め、カラマグロスティス ‘カールフォースター’が背後を目隠しし、花々の引き立て役として効果を発揮しています。 【8月の日陰エリア】 瑞々しかった春~夏の花々は終わりを迎え、ひと足早く秋を感じる風景となりました。この時期は、オレンジがかった黄花のリグラリア‘ミッドナイトレディ’や深紅のペルシカリア ‘ブラックフィールド’の濃厚な花色が、植栽に深みを与えています。 7月の様子 【7月の日向エリア】 野趣あふれたガーデンは、花真っ盛り。バーベナ・ボナリエンシスやミソハギなどの花が奔放に広がり、隣り合う植物がうまく交わりながら、それぞれの美しさを発揮しています。一角では、ピンク×黄の色彩の中に、カノコユリ‘ブラックビューティー’の濃ワイン色がスパイスを効かせて、花壇の存在感をより一層高めています。 【7月の日陰エリア】 清楚さと華やかさをもたらしていたヤマユリが上旬で咲き終わり、下旬からはリーフで魅せる時期となりました。フウチソウなどのグラスが細いラインを、リグラリアやホスタの葉が広い面を描き、色や形が異なるリーフ類の対比の妙が楽しめます。株張りが大きく旺盛に伸びる日向の花壇とは対照的に、日陰の花壇は、花色は控えめながら、全体的にまとまりを感じさせます。 6月の様子 【6月の日向エリア】 6月の庭で最も目を引くのは右前面のコーナーで盛りを迎えるフロックス‘ブルーパラダイス’。植わるのは1カ所のみですが、同じ花色のバーベナ・ボナリエンシスで背景を埋めることで、まとまりと見応えが生まれています。後半になるとアリウム‘丹頂’とヒオウギが開花。濃いワインレッドと反対色となる黄花が、ガーデン全体のピリリとしたスパイス的存在となっています。 【6月の日陰エリア】 ピンクのアスチルベ‘タケッティスペルバ’や‘ビジョンズインピンク’、そしてカンパニュラ・ラプンクロイデスの花穂があちこちで上がり、縦のラインを強調したデザインが楽しめます。後方ではホスタやリグラリアなどのカラーリーフが明るさや陰影を生み出し、植栽の表情に深みを与えています。 5月の様子 【5月の日向エリア】 すらりと伸びて高くなった草丈が、初夏の風に揺られながらワイルドなうねりを見せています。中旬になるとリナリア・プルプレアやバーベナ・ボナリエンシス、フロックス‘ブルーパラダイス’、ペンステモン‘ダークタワーズ’ の花が一斉に開花。後方ではカラマグロスティス‘カールフォスター’がブルーグリーンの花穂を上げ、ガーデンは青みを帯びたピンクに色づきました。 【5月の日陰エリア】 ティアレアやムラサキツユクサ‘スイートケイト’、アスチルベなどの、明るくやわらかい葉色が美しいガーデンを構成。上旬はピンクの花を咲かせるツツジ ホンコンエンシスがアクセントになり、下旬になるとリーガルリリーの大輪花が開花して、初夏到来のインパクトを高めています。ホスタやリグラリアなどの葉物がガーデンに落ち着いた印象を与えるなか、手前ではルズラ・ニベアが幻想的な風景を描いています。 4月の様子 【4月の日向エリア】 4月前半に咲いていた白や黄色のスイセンが中旬には終わり、後方のブルーのカマッシア‘ライヒトリニー’にバトンタッチ。スラリと伸びる花穂が乱立するように広がり、この時季らしい勢いを見せています。まだ花をつけていないその他の宿根草も、形の異なるリーフをこんもりと茂らせ、共演する様子も見どころです。 【4月の日陰エリア】 4月上旬はコンパクトなスイセン‘ベビームーン’が主役で、緑が少なく素朴な風景でしたが、中旬には白いスイセン‘タリア’とプルモナリア‘トレビファウンテン’が咲き始め、ぐっと華やさが増してきました。また、手前ではイカリソウやティアレラの小さい花が咲き、デザイナーがイメージする‘春の森の景色’が表現されています。 3月の様子 【3月の日向エリア】 日向のエリアでは、上旬はクロッカス‘ホワイトウェルパープル’が彩りを添えるものの、表土がまだ寂しい印象でしたが、後半になると随所に散らしたスイセン‘ベビームーン’の明るい黄花が咲いて、春らしさがぐんとアップ。一方、数か所に植わる銅葉のペンステモン‘ダークワーズ’のダークカラーが引き締め役となり、アイリス類の細い葉が青々と伸び始め、空間を埋めています。 【3月の日陰エリア】 日陰のエリアでは、上旬はカレックスや銅葉のティアレラ‘ピンクスカイロケット’の葉の間から球根の芽色が確認できる程度でしたが、下旬になると日なたと同じスイセン‘ベビームーン’が開花をスタート。まとめて数か所に植えられた小さなシラー・ミスクトスケンコアナも満開を迎え、原生地の林床のような風景を描いています。奥の方ではユリがニョキリと芽を上げ始め、穏やかながらも秘めたパワーを感じさせています。 2月の様子 【2月上旬】 日向のエリアでは、リナリア・プルプレアの銀葉やペンステモン‘ダークワーズ’の紫の葉がアクセントになって、パニカムやペニセタムの枯れ色の葉が風に揺れています。地際をよく見ると小さな芽が伸び始めています。日陰のエリアでは、イカリソウやティアレラの赤紫の葉が寒さに耐え、花壇の奥では、ヤブラン’シルバードラゴン’が細葉を伸ばして明るい彩りになっています。日向・日陰とも後方に剪定枝で形作ったバイオネストが備えられ、メンテナンス時に出た枯葉などが入れられています。 1月の様子 「Grasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜」作庭後、1月の様子。 コンテストガーデンB花鳥風月 命巡る草はら 【作品のテーマ・制作意図】ガーデンの美しさは緑量や花の色目や形状だけで測れるものでなく、空や光や風や生きもの全ての関わり合い、生命の尊さを感じることでガーデンがより輝いて見えます。ガーデンに長く根付いて、地域に馴染む風景、生態系の一部になることを想定し、植えっ放しに耐えられる丈夫な品種を中心に、蜜源植物や、風や光の動きを反映しやすい植物を多く取り入れ、地味な在来種でも組合せや配置で奥行ある豊かな草はらの表現を目指します。 【主な植物リスト】〇北側(日向)フジバカマ/パニカム‘ブルージャイアント’/ノリウツギ‘ライムライト’/ヘリアンサス‘レモンクイーン’/パブティシア/キキョウ/アヤメ/バーベナ・ボナリエンシス/ダイアンサス・カルスシアノラム/ペニセタム・マクロウルム/ジャーマンアイリス/ルドベキア‘ゴールドスターム’/ヒオウギ(オレンジ花・キバナmix)/ペンステモン‘ハスカーレッド’/スティパ、カッコウセンノウ/ミニスイセン・ティタティタ(球根)/オミナエシ/ダッチアイリス(球根)/アリウム‘丹頂’(球根)/ミューレンベルギア・カピラリス/カマッシア(球根)/イトススキ/ロシアンセージ〇南側(日陰)ラナンキュラス‘ゴールドカップ’/カレックス・オメンシス・エバリロ/アジュガ/ベニシダ/フウロソウ/ツワブキ/ユキノシタ/ジャノヒゲ/ヤブラン/ハナニラ(球根)/スイセン各種(球根)/フリチラリア(球根)/ペンステモン/ホタルブクロ/ヒヨドリバナ/アスチルベ/カレックス/アガパンサス(青花・白花mix)/クサソテツ/ヤツデ/スミレ/セキショウ コンテストガーデンB 月々の変化 11月の様子 【11月の日向エリア】 黄×パープルの植栽が、秋からぐんぐんと美しい色彩を放ち始めました。下旬になるとシードヘッドが増え、ぐっと大人っぽい印象へと移り変わり、その朽ちた立ち姿は絵になる風景となっています。後方では、アスター‘ジンダイ’が見ごろを迎え、ミューレンベルギア・カピラリスやパニカム‘ブルージャイアント’のなかで、幻想的な景色を作っています。 【11月の日陰エリア】 日向と同様、秋にクライマックスを迎えたナチュラルガーデン。2種のホトトギスと清澄白山菊のピンクの落ち着いた彩りが、青々としたグラウンドカバーとのコントラストで、ひときわガーデンを引き立てます。今月目を引いているのが、明るさをもたらしているツワブキの黄色い花。ノリウツギの枯れた花穂との対比も見どころです。秋の小道を歩いているような雰囲気のある、愛らしい風景が広がっています。 10月の様子 【10月の日向エリア】 勢いよく成長する草丈のある植物が、秋空に向かって伸びるさまが爽やかで印象的です。ユニークな穂を揺らすペニセタム・ピロサム‘ギンギツネ’などのグラス類が、この時期ならではの黄×紫の艶やかな色彩を一層引き立てています。手前ではクリーム色のヒガンバナが開花しました。 【10月の日陰エリア】 先月のツルバキアからバトンを受け、今月はホトトギスが咲き始めました。右側端では、ディスカンプシア‘ゴールドタウ’の乾いた穂がふわふわと風に揺れています。野原のような風景に、可憐な彩りとオーナメンタルな植物がほんの少し加わっていることで、このガーデンの大きな魅力となっています。 9月の様子 【9月の日向エリア】 上旬までは8月に続いて明るい黄色が目をひく風景でしたが、下旬になると深みのある色味に変化し始めました。青花のルエリア‘パープルシャワー’が鮮やかに開花を進め、後方では、パニカム‘ブルージャイアント’やバーベナ・ボナリエンシスが爽やかに空間を埋め、ライムグリーンのノリウツギの花穂がオーナメンタルな存在感を発揮しています。 【9月の日陰エリア】 瑞々しかった風景も下旬になると、少し色みに深みが増し始めました。通路沿いの右角ではグラス類のディスカンプシア‘ゴールドタウ’とカレックス・フラジェリフェア‘キウイ’が、メリアンサス・マヨールと共にワイルドに葉や穂を展開。それとは対照的に花壇の左右手前ではピンクのツルバギアの花が愛らしい彩りをプラス。コントラストの妙が楽しめます。 8月の様子 【8月の日向エリア】 オミナエシやヒオウギ、ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’、ヘリアンサス‘レモンクイーン’の黄花がメインの季節を迎えています。ルドベキアの黒い花心が、ペンステモン‘ハスカーレッド’の茶褐色の枯れ穂に呼応。紫花のルエリア‘パープルシャワー’が、きりりとした大人っぽいアクセントとなり、対比的な美しい配色が絵画的な印象を与えています。 【8月の日陰エリア】 ジャノヒゲやヤブランなどのグラウンドカバーが地面をみっちりと覆い、猛暑期間であっても、以前からの瑞々しさを維持しています。ディスカンプシア‘ゴールドタウ’やカレックスなどのグラス類が涼しげな動きをもたらし、静と動のコントラストを強調。のどかな風景が広がっています。 7月の様子 【7月の日向エリア】 ルドベキア‘ゴールドスターム’やヒオウギ、オミナエシ、コレオプシス‘レッドシフト’などたくさんの黄色い花があちらこちらで開花し、パワーあふれる夏の植栽を演出。やわらかい穂のペニセタム・ビロサムやペニセタム・マクロウルムがふわりとした動きをもたらして、花壇全体に強弱をつけています。 【7月の日陰エリア】 アジサイ‘アナベル’が明るさを、ツルバギアが愛らしさをプラスしています。下旬になるとアジサイに代わって、メリアンサス・マヨールが数々の葉を広げ、彫刻的な造形で特異な雰囲気を醸し出します。ともすると唐突感が出てしまいそうですが、その手前でさらさらとした穂を上げるディスカンプシア‘ゴールドタウ’が配されていることで、ナチュラルなガーデンにまとまりを持たせています。 6月の様子 【6月の日向エリア】 春の見せ場だったアイリスに代わり、涼しげなブルーの花を咲かせるトリテレイア‘クイーンファビオラ’が咲き始めました。後半になるとルドベキア‘ゴールドスターム’の黄色い花が鮮やかさをプラス。青×黄にアリウム‘丹頂’やダイアンサス・カルスシアノラムの濃いピンクが寄り添い、色彩豊かな風景となりました。 【6月の日陰エリア】 青々としたヤブラン、ジャノヒゲが広がる野原のような植栽に、2種のアジサイが開花し、立体感をもたらしています。手前に咲くヤマアジサイ‘藍姫’の青花と後方で咲くアジサイ‘アナベル’の白花が、涼やかな彩りをプラス。中央を横断する溝は、小道のような雰囲気を維持しています。 5月の様子 【5月の日向エリア】 春のガーデンは数種のアイリスが主役で、上旬はアヤメや各色(青・黄・白)のダッチアイリス、ジャーマンアイリスが随所で咲き乱れていました。主役と混ざり咲いていたダイアンサス・カルスシアノラムは、中旬になるとペンステモン‘ハスカーレッド’とともに、主役級の存在感を発揮。背後ではパブディシア トワイライトが開花し、シモツケのライム葉と共にガーデンに奥行きを感じさせています。 【5月の日陰エリア】 一面に咲いていた黒葉スミレが終わり、ヤブランやジャノヒゲが広がる草原のような風景に。そこに清らかな華を添え続けているのは、白いレースのような花を咲かせるオルラヤ。絶妙な透け感とふわふわとした草姿が、風の動きをもたらし、素朴な野草の雰囲気があります。中旬には、ガーデン中央に植わるヤマアジサイ 藍姫が咲き始め、オモトやツワブキとともに、どことなく和の雰囲気を漂わせています。 4月の様子 【4月の日向エリア】 線状の葉を持つアイリスなどが溝に沿って多数立ち上がり、緑と花のコントラストによって花壇のデザインが際立ってきました。上旬に咲いていたスイセンは咲き終わり、中旬にはカッコンセンノウやシラー・ペルビアナのブルーがアクセントに。アイリスのつぼみもぐんぐんと膨らんできているので、一斉に咲く5月は風景が一変すると予感させます。 【4月の日陰エリア】 上旬はリュウノヒゲと黒葉スミレが春の庭の骨格となって、スイセン・テタテートがアクセントとして効果的に見えていましたが、中旬になると前方で淡い黄色のミニチューリップが開花。差し色としての役割も担いながら、黒葉スミレの紫との反対色で彩りにコントラストをつけます。また、ペンステモンやオルラヤが大きくなりはじめ、立体感が出てきました。 3月の様子 【3月の日向エリア】 日向のエリアでは、上旬はカットバックしたグラスのドーム型のフォルムが目立っていましたが、下旬になるとアイリスの細い葉やペニセタム・マクロウルムの緑が瑞々しく展開。黄色いスイセン‘イエローセイルボート’やチューリップ‘シルベストリス’が、あちこちでにぎやかさを放っています。また、中央を渡る溝に沿って植物が並ぶ規則性が、気持ちの良さを感じさせます。 【3月の日陰エリア】 日陰のエリアは、上旬はノシランやリュウノヒゲ、ツワブキなど常緑のリーフ類+スミレの小花で覆われるのみでしたが、下旬になると黄花のスイセン‘ティタティタ’や、大輪のスイセン‘ラスベガス’、そのまわりには青花のムスカリが開花をスタート。やわらかい花色が加わることで、春の訪れが少しずつ感じられるようになりました。 2月の様子 【2月上旬】 日向のエリアでは、イトススキやミューレンベルギア・カピラリスのダイナミックな枯れ姿がアクセントになりながら、等間隔に植る常緑アヤメやダッチアイリスの芽吹きが緑のアクセントになっています。奥では早くもスイセン‘ペーパーホワイト’が咲き始めました。日陰のエリアでは、ツワブキや黒葉スミレ、ヤブラン、メリアンサス・マヨール、ヤツデなど、さまざまな常緑の葉が花壇に彩りを添えています。 1月の様子 「花鳥風月 命巡る草はら」作庭後、1月の様子。 コンテストガーデンC草原は、やがて森へ還る。 【作品のテーマ・制作意図】森では、様々な木々が壮絶な生存競争を繰り広げています。しかしそれは草原もまた同じ。草原は生命力に溢れる草花たちの戦いの場です。そしてやがて、草原の中から樹木が芽生え、最終的には森へと遷移していきます。私は、草原から森へと還るこのはじまりの瞬間を、美しくもドラマティックに演出したいと思いました。ここは、森が好きなガーデンデザイナーが解釈し表現したペレニアルガーデンです。 【主な植物リスト】〇北側(日向)グラス類:アオチカラシバ/エラグロスティス‘スペクタビリス’/カレックス‘フェニックスグリーン’/スティパ‘テヌイッシマ’/ディスカンプシア‘ゴールドタウ’ など球根類:コオニユリ/カノコユリ/スノーフレーク/ハナニラ(イフェイオン)‘ジェシー’/原種系チューリップ ‘アルバコエルレアオクラータ’/クロッカス‘ホワイトウェルパープル’/アリウム‘カメレオン’/アリウム‘グレースフルビューティー’ など宿根草:ノカンゾウ/アヤメ/ミソハギ/ウツボグサ/シュウメイギク/チョウジソウ/ワレモコウ/フジバカマ/ハゴロモフジバカマ/オミナエシ/ノコンギク‘夕映え’/アスター‘アポロ’/シオン‘ジンダイ’/エキナセア‘パープレア’/エキナセア‘ロッキートップ’/ルドベキア‘ヘンリーアイラーズ’/セントーレア‘ニグラ’/オルレア(一年草)/ガウラ‘クールブリーズ’/ペルシカリア‘ブラックフィールド’/フロックス‘フジヤマ’ など低木類:ガマズミ/バイカウツギ/コバノズイナ/テマリシモツケ など 〇南側(日陰)グラス類:カレックス‘ペンデュラ’/カレックス‘テスタセア’/シマカンスゲ/ワイルドオーツ/フウチソウ など球根類:ヒアシンソイデス‘ヒスパニカエクセルシオール’/シラー・シベリカ‘アルバ’/フリチラリア‘バイモユリ’/フリチラリア‘エルウィシー’/カマシア‘クシキー’/ゲラニウム‘チュベロサム’/コリダリス・ソリダ‘ベスエヴァンス’ など宿根草:キチジョウソウ/ヤブラン/ギボウシ/オカトラノオ/ホタルブクロ/イカリソウ/ミツバシモツケ/クリスマスローズ/シュウメイギク/チョウジソウ/ハゴロモフジバカマ/ベニシダ/ニシキシダ/クサソテツ/アスター‘トワイライト’/アスター‘リトルカーロウ’/ワイルドチャービル/サラシナショウマ(シミシフーガ)‘ブルネット’/カラマツソウ(タリクトラム)‘ヒューイットダブル’/モウズイカ(バーバスカム)‘ビオレッタ’/ペンステモン‘ミスティカ’ など低木類:ナツハゼ/ノリウツギ/ムラサキシキブ/ヤツデ‘スパイダーウェブ’/コバノズイナ など コンテストガーデンC 月々の変化 11月の様子 【11月の日向エリア】 秋の代表格であるキク科のアスター‘夕映え’や、初夏から咲き続けるガイラルディア、ふわりと咲く花々が多様なグラスと渾然一体となり、晩秋の情緒たっぷりの風景となっています。先月に引き続き、ブラシのような穂を上げるアオチカラシバが、ランドマークのような存在感を発揮。反対側に植わるクランベ・マリティマとともに、オーナメンタルで面白味のあるアクセントとなって、見応えある景観をつくり出しています。 【11月の日陰エリア】 爽やかなピンクやブルーの小花が咲く植栽のなかで、赤く色づくナツハゼの紅葉が温かみを与えています。その傍らで秋風になびくワイルドオーツの乾ききった穂や、後方に植わるノリウツギの枯れた花穂が、自然の秋の美しさを引き立て、山の谷筋の風景を切り取ったような風情が楽しめます。 10月の様子 【10月の日向エリア】 今月に入り、ペニセタム(アオチカラシバ)のボリュームのある穂が勢いよく上がり、見事な存在感を放ち始めました。全体的に夏から咲き続けている花がより一層花数を増やし、たくさんの蝶が飛来しています。なかでも長期に渡りピンクの花をつけているガイラルディア‘グレープセンセーション’が道行く人の目を引いています。 【10月の日陰エリア】 手前のナツハゼが植わるゾーンとその向かいのノリウツギの植わるゾーンが、谷合に見立てた溝を挟んで見事に調和。アガスターシェ‘ブラックアダー’やアスター‘トワイライト’、ムラサキシキブの実などのブルートーンの彩りが、爽やかな秋の空気に美しく映えています。 9月の様子 【9月の日向エリア】 どっしりとした株のフロックス‘フジヤマ’(オイランソウ)やルドベキア‘ブラックジャックゴールド’、アガスターシェ‘ブルーフォーチュン’が、左右・中央の3カ所で開花。そのまわりの空間をガウラやバーベナ・オフィシナリス‘バンプトン’などのふわりと広がる草花が美しく咲き乱れています。後方では、ガマズミの赤く色づいた実が静かに秋らしさをアピール。 【9月の日陰エリア】 ナツハゼやノリウツギなどの低木のまわりでフウチソウやワイルドオーツが流れるように葉や穂を揺らすさまは、いつまでも暑さが残る9月の風景に清涼感をプラス。後方ではノリウツギの枯れた花穂と共にムラサキシキブやアスター‘トワイライト’が繊細な初秋の風景を描いています。 8月の様子 【8月の日向エリア】 押し寄せる大波のごとく茂っていた上旬。成長しすぎた植物がざっくりと刈り込まれた下旬は、それまでとはひと味異なる風景が楽しめるようになりました。この時期は、鮮やかな花色のバーノニア'クリニタ'やフロックス‘フジヤマ’(オイランソウ)、ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’が、まわりを牽引するように華やかに咲き誇っています。 【8月の日陰エリア】 日向エリアと同様に、下旬までに大胆な剪定が行われ、前側と後側の区分けがはっきり見えるようになりました。その効果で、ノリウツギの花房がアクセントとなり、中央でアガスターシェ'ブラックアダー'がどっしりとした安定感を強調。眺めていて心地よい風景が生み出されています。 7月の様子 【7月の日向エリア】 7月に入ると花数は減ったものの、全体のボリュームはさらにアップ。宿根草に加えて数本の低木が植えられているガーデンは、ゆうに人の背丈を越し、迫りくるような迫力を感じさせます。それはまるで植物と虫の聖域。その旺盛に茂る植物を目の前にすれば、思わず奥へとかき分けて入って行きたくなる衝動に駆り立てられます。コオニユリに代わりカンゾウのオレンジ色がアクセントとなっています。 【7月の日陰エリア】 フウチソウやワイルドオーツなど、さらさらとした穂が風に揺れるさまが涼を感じさせます。下旬になると、ガーデン中央部にアンジェリカ‘エボニー’のシックな花穂が上がり、植栽に大人っぽい表情が見られるように。そのほか、白や淡いブルーなど楚々とした花が随所に咲きはじめ、小さな変化を見つける楽しさもあります。 6月の様子 【6月の日向エリア】 前半は淡いトーンで優しい印象でしたが、中旬になると全体的に深みのあるトーンに変化。ガイラルディア‘グレープセンセーション’やエキナセアなどのキク科の花が、素朴ながらも賑やかさをプラスしています。また、オレンジ色のコオニユリがアクセントとなり、品の良さを保ちつつワイルドな風景となっています。 【6月の日陰エリア】 6月の主役はシャスタデージーとリクニス・コロナリアの白花。バリエーション豊富なリーフ類が旺盛に茂り、大きなうねりを見せていますが、中央に横断させた深めの溝がデザインを切り替え、ボリュームのある植栽をすっきりと見せています。 5月の様子 【5月の日向エリア】 コバノズイナやバイカウツギ、アメリカテマリシモツケ‘サマーワイン’などの低木が開花の時期を迎えました。中旬になると草花は人の背丈を超えはじめ、溝の部分がけもの道のような雰囲気を醸しています。印象深いのは、ガーデン右側半分にたくさん植わるスティパ・テヌイッシマ(エンジェルヘアー)。風に吹かれて波のような動きを作り、どこかファンタスティックなシーンとなっています。 【5月の日陰エリア】 こんもりと茂る植栽の中で、随所で多種多様な姿の花が咲いているのが印象的です。手前ではゲラニウム‘ブームショコラッタ’やサルビア・ネモローサ‘スノーヒル’、ヒメケマンソウ、中央ではシャスターデージー‘スノードリフト’、脇・後方ではペンステモン・ミスティカ、シシリンシウム・ストリアタム、カマッシア・ライヒトリニー‘セミプレナ’などが開花し、見る人を飽きさせない初夏の植栽プランが楽しめます。 4月の様子 【4月の日向エリア】 低木のガマズミが柔らかな葉を展開し始め、より立体的な風景に変化しています。中央の谷溝にはブルーの小花のベロニカ‘ウォーターペリーブルー’が咲き広がり、投げ込まれた木片と相まって野趣たっぷりに。後方ではフェスツカやフェンネルなどの茂みの中からアリウム・リグラムがつぼみを上げ、手前ではピンクのシャボンソウやシレネなどの花が下垂、幻想的な風景を描いています。 【4月の日陰エリア】 上旬はクロッカス‘ホワイトウェルパープル’とクリスマスローズのピンク色が主役となり、愛らしさを感じる風景でしたが、中旬になると全体的にボリュームが出て、ワイルドさを感じさせる風景に。リクニス'フロスククリ'やゲラニウム'チュベロサム'などの繊細な小花が存在しながら、季節が進むとヒメケマンソウやシラーカンパニュラータ、ワイルドチャービルが存在感を放ちはじめ、主役が次々と移り変わっています。 3月の様子 【3月の日向エリア】 日向のエリアは、上旬はクロッカス‘ホワイトウェルパープル’が一番乗りで開花を謳歌していましたが、下旬ともなると原種のチューリップ‘アルバコエルレアオクラータ’やスノーフレークが群生するように開花。株姿をコンパクトに、かつ白花で統一することで、野趣あふれる早春の風景が実現しています。 【3月の日陰エリア】 日陰のエリアは、上旬の開花は数株あるクリスマスローズのみでしたが、下旬になると、クロッカス‘ホワイトウェルパープル’が加わり、楚々としながらも華やかさのある風景が見られるようになりました。クリスマスローズは花色や咲き方にバリエーションがあるので、うつむいて咲く花を一輪一輪見比べるのも一興です。 2月の様子 【2月上旬】 日向のエリアでは、敷き詰められた落ち葉や杉皮樹皮バークの間からシレネやガウラ、オルレア、サルビアなどが少しずつ緑を増やし、つんつんと球根の芽吹きも出始めています。日陰のエリアでは、細葉を放射状に伸ばすキチジョウソウが緑のラインを作り、小高い場所ではクリスマスローズが生き生きと茂っています。ひと際明るいライムグリーンの葉を茂らせているのは、ワイルドチャービル(ヤマニンジン)。 1月の様子 「草原は、やがて森へ還る。」作庭後、1月の様子。 コンテストガーデンDfeeling garden ~伝え感じる武蔵野の新しい風景づくり~ 【作品のテーマ・制作意図】人々の心に残る武蔵野の情景を骨格に、新たな要素を組み足して、これからの愛される武蔵野の風景を植物の魅力や武蔵野の風景を「伝え」「感じる」ことを軸に提案しました。武蔵野の草原を連想させるグラスをベースに、季節の流れの中で、さまざまな色や形の草花がガーデンを彩っていくような配置を心がけました。自然との距離が遠くなった現代で、このガーデンが少しでも自然と人とが寄り添うきっかけになればと思っています。 【主な植物リスト】〇北側(日向)イトススキ/カラマグロスティス/カレックス/ユーパトリウム ‘ベイビージョー’/ムギ/ソバ/ダンギク/ベルガモット/オミナエシ/ワレモコウ/ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’/エキナセア/バーベナ・ボナリエンシス/アリウム/チューリップ 〇南側(日陰)カレックス/ギボウシ/ツワブキ/クサソテツ/アカンサス・モリス/バプティシア/ユーパトリウム’チョコレート’/ペルシカリア‘ファイヤーテール’/アジサイ‘アナベル’/オトコエシ/オミナエシ/カクトラノオ/ペンステモン/アリウム/チューリップ コンテストガーデンD 月々の変化 11月の様子 【11月の日向エリア】 ホットな雰囲気があったヘレオプシス‘ブリーディングハーツ’の花や銅葉の色に、ぐっと深みが増し始めました。ソバの花やイトススキ‘パープルフォール’、アスター‘ジンダイ’と相まって、若々しさやひなびた印象を併せ持つ、重層的な風景が広がっています。 【11月の日陰エリア】 アネモネ‘クイーンシャーロット’(シュウメイギク)の花が盛りを迎えた晩秋のガーデン。花色のピンクが一般的な品種よりもやや濃い花色のため、つややかなグリーンの植栽にあたたかい印象を与えています。また、こんもりとした葉群れにダークな色合いのペンステモン等のシードヘッドが混在し、変化を与えながら落ち着いた印象をもたらしています。 10月の様子 【10月の日向エリア】 夏から旺盛に咲いていたヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’やルドベキア‘ブラックジャックゴールド’の花の勢いが衰えていく一方で、後方のアスター‘ジンダイ’の花がピークを迎えました。イトススキの華奢な穂と相まって、やさしい雰囲気を紡いでいます。 【10月の日陰エリア】 先月から存在感を見せ始めたユーパトリウム‘グリーンフェザー’の丈がさらに高くなり、リーフで作る植栽の見応えを高めながら、背後を隠す独特な世界観を確立。線の細い葉が秋の陽光に透けて、きらめいています。また、ペンステモン‘ダコタバーガンディ’やアスチルベ‘ダークサイドオブザムーン’、アジュガなど銅葉のリーフ類が、植栽に深みを与えています。 9月の様子 【9月の日向エリア】 無数の花を咲かせて元気いっぱいに存在感を発揮していたルドベキア‘ブラックジャックゴールド’の開花も落ち着きを見せてきました。花数が減った分、カレックス・テヌイクルミスのオレンジ味のあるブラウンが際立つようになり、イトススキの穂も上がり始めました。暑さが残るものの、一気に季節が進んでいます。 【9月の日陰エリア】 9月も引き続き瑞々しい風景を維持しつつ、全体的に深みのあるトーンに変化し始めました。依然ノリウツギとアジサイアナベルのライムグリーンの花穂がシーンに明るさをもたらし、そこにダークな枯れ穂をつけるペンステモン‘ダコタバーガンディ’がピリリとスパイスを効かせています。 8月の様子 【8月の日向エリア】 メインカラーとなる赤×黄の中で、バーベナ・ボナリエンシスの紫ピンクやオトコエシなどの白花が加わって、植栽の表情がより変化に富んでいます。ススキ‘パープルフォール’やカラマグロスティス‘カールフォースター’など、随所で穂を伸ばす多様なグラス類が存在感を出し始めました。 【8月の日陰エリア】 ノリウツギとアジサイ‘アナベル’×リーフ類で織り成す夏の植栽は、ずっと瑞々しいシーンを提供。その中で、白花のオトコエシと赤花のペルシカリア‘ファイヤーテール’が、さりげないアクセントになっています。この時期は、花壇の後方でぐんぐん伸びているユーパトリウム‘グリーンフェザー’も見どころ。 7月の様子 【7月の日向エリア】 色彩豊かな時期が過ぎ、トーンに落ち着きを見せる7月のガーデン。先月に引き続き、ヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’やルドベキア‘ブラックジャックゴールド’の鮮やかな花色が目を引いています。奥と両脇の草丈が高くなるように設計された花壇は、波のうねりのようなダイナミックな高低差を感じさせ、迫力と同時にリズム感も生み出しています。 【7月の日陰エリア】 瑞々しかったアジサイ‘アナベル’が下旬になるとくすみはじめ、グリーンのグラデーション×ダークカラーのシックな組み合わせが際立つようになりました。まるで大波が押し寄せてくるかのようなボリューム感で見る人を圧倒する植物群。手前に広がるシダ類は明るさと動きをもたらしながら、ワイルドさもプラス。艶やかな葉や雫をつける葉が輝き、雨も似合うガーデンです。 6月の様子 【6月の日向エリア】 アキレア‘パイナップルマンゴー’やモナルダ(赤)、ヘレオプシス‘ブリーディングハーツ’など、ホットな彩りでまとめられた初夏の植栽。その中で、アガスターシェ‘クレイジーフォーチューン’やベロニカ・ロンギフォリアのブルーが爽やかなアクセントとなっています。ボルドー色のアリウム‘レッドモヒカン’の球体の花が、あちこちで浮遊するように顔を出しているのもユニーク。 【6月の日陰エリア】 盛りを迎えたアジサイ‘アナベル’。大きな白い花が植栽の背景となり、さまざまな色形のカラーリーフが各々の魅力を発揮しています。ツワブキやペンステモン‘ダコタバーガンディ’、アジュガなど、緑×ダークトーンを基調としたリーフ合わせの中に、リョウメンシダなどの明るいグリーンを入れ込むことで、コントラストを効かせています。また、白い小花を咲かせるニホンムラサキが株間を埋めているのも見どころ。 5月の様子 【5月の日向エリア】 春の庭を牽引していたチューリップから、アリウム類にバトンタッチ。上旬は‘パープルセンセーション’、中旬は‘クリストフィー’ が主となり、それを支える花もラナンキュラス ラックスからアキレア‘パイナップルマンゴー’に移り変わりました。ポイントで植えたスティパ・テヌイッシマ(エンジェルヘアー)の輝きが、初夏の植栽をふんわりと支えています。 【5月の日陰エリア】 日向のガーデンと同様、チューリップが終わり、愛らしかった植栽はぐっと大人っぽい表情を見せ始めました。上旬は左側がラナンキュラス ラックスシリーズが間を埋めていましたが、中旬になると花が終わり、アリウム‘パープルセンセーション’や‘フォーロック’の開花がスタート。銅葉のアスチルベ‘ダークサイドオブザムーン’やペンステモン‘ダコタバーガンディ’が瑞々しい植栽を引き締めています。 4月の様子 【4月の日向エリア】 上旬は、赤・白・オレンジのチューリップ×ラナンキュラス ラックスシリーズの愛らしいカラーリングから、赤とブラックに花色が移り変わり、きりりとした表情が加わりました。また、それらを引き立てるように淡い花色のアネモネの株がボリュームアップ。スラリと縦に伸びるムギが瑞々しいアクセントになって、春を謳歌する花々の競演が楽しめます。 【4月の日陰エリア】 上旬にはほとんど咲いていなかったチューリップが中旬には一斉に開花し、日向に少し遅れて春爛漫の風景に変化しました。低い場所ではアジュガが小さなブルーのつぼみを無数につけ、後方ではノリウツギ類が柔らかい葉を少しずつ展開。春の見せ場から次の見せ場へと移りゆく季節の流れが、そよ風にのってふんわりと感じられます。 3月の様子 【3月の日向エリア】 日向のエリアは、上旬は最前列や溝の縁に咲くベロニカ‘オックスフォードブルー’の青い小花がナチュラルな彩りを添えていました。下旬になると、コンパクトなチューリップ‘スワラ’(赤)、‘ショーグン’(オレンジ)、‘ホワイトバレー’(白)がラナンキュラス‘ラックス’とともに咲き始め、一気に春本番のにぎやかさを演出。ムギやスティパ・テヌイッシマのやわらかい葉が、花の可憐さを一層引き立てています。 【3月の日陰エリア】 日陰のエリアは、上旬は冬から常緑性の濃い緑葉のリーフ類が青々と茂っているので、既に瑞々しい風景です。数センチほど芽が出始めていたチューリップの葉が、下旬になると20cmを超えるまでに成長。全体的にリーフの色にバリエーションが生まれ、変化のある表情になってきました。ポツンぽつんと植えられたラナンキュラス ラックスの赤や白い花が、アクセントになっています。 2月の様子 【2月上旬】 日向のエリアでは、スティパやカレックス、タイニーパンパ、セスレリアなどさまざまな細葉が風に揺れるなか、地際ではベロニカの銅葉やルドベキアなどが少しずつ葉を増やし、多数の球根類の芽も出始めています。日陰のエリアでは、アナベルの株元にアカンサスの鮮やかな葉が茂り、ツワブキやリョウメンシダなどの常緑の葉がリズミカルな彩りになっています。立ち上がる細葉や地面を這うように広がる丸葉など、フォルムの違いが楽しめます。 1月の様子 「feeling garden ~伝え感じる武蔵野の新しい風景づくり~」作庭後、1月の様子。 コンテストガーデンE武蔵野の“これから”の原風景 【作品のテーマ・制作意図】世界的に"Climate Change(気候変動)"が叫ばれ、日本でも夏の猛暑、雨不足による水ストレスが植物を苦しめました。農業技術である完熟した堆肥をはじめ有機資材を使い、微生物に富み団粒構造を持つ土壌を作ることからはじめ、これまで武蔵野の草原風景を担ってきた在来植物を中心にガーデンを構成します。都市の暮らしの中でこぼれ落ちてきた技術、植物でこれからの武蔵野の風景を模索していきます。 【主な植物リスト】〇北側(日向)ヤマハギ/ミソハギ/オミナエシ/ノガリヤス/チカラシバ/フジバカマ/オトコエシ/コマツナギ/ワレモコウ/シラヤマギク/カワミドリ/フジアザミ/ノダケ/ヒヨドリバナ/キセワタ/マツムシソウ/クララ/オカトラノオ/ヤマホタルブクロ/ツルボ/キキョウ/アサマフウロ/タカノハススキ/ミスカンサス‘モーニングライト’/ミツバシモツケ/カタクリ/ムラサキ/カライトソウ/タムラソウなど 〇南側(日陰)フクジュソウ/ヒトリシズカ/フタリシズカ/ツリガネニンジン/キバナノアキギリ/チダケサシ/シュウメイギク/クジャクシダ/ナチシダ/クサソテツ/ヒトツバ/ナキリスゲ/ゲンノショウコ/ナガボノシロワレモコウ/ヤグルマソウ/キョウガノコ/チョウジソウ/アキカラマツ/フシグロセンノウ/キリンソウ/エゴポディウム・バリエガータ/ツワブキ・アージェテリウム‘浮雲錦’など コンテストガーデンE 月々の変化 11月の様子 【11月の日向エリア】 チカラシバの穂がさらに開き、赤みを帯びたイトススキとともに、秋風を強く感じさせるようになりました。ガーデンの隅ではこんもりと茂るヤマハギが、11月下旬もたくさんのピンクの花をつけています。植栽の奥をのぞき込むと、小さな小菊やコマツナギが最後の花を咲かせており、まさに晩秋の草むらといった味わいです。タムラソウのシードヘッドもユニーク。 【11月の日陰エリア】 ナチシダやイトシマススキが晩秋まで勢いよく茂り、どこか原始的な雰囲気を漂わせています。中央ではシキンカラマツやシラヤマギクの枯れ姿が荒涼とした風情を、それとは反対に奥ではエゴボディウム‘バリエガータ’やツワブキ・アージェテリウム‘浮雲錦’の一塊が、明緑色のホスタとともに明るいアクセントをつくり、デザイン性を感じさせます。 10月の様子 【10月の日向エリア】 ボリュームのある穂を上げるチカラシバが案内板の傍らでこんもりと広がり、訪れる人を出迎えているよう。初夏から咲いているキキョウやカライトソウ、秋の花のオトコエシやヤマハギが素朴な彩りを添え、この時期ならではの和の風情がたっぷり楽しめます。 【10月の日陰エリア】 奔放に広がるナチシダやヒヨドリバナなどのワイルドな趣と、シキンカラマツなど地上部が枯れ始めた植物のひなびた趣とが見事に調和し、深みのある表情を見せています。日向のエリアと同様に、チカラシバの赤みを帯びた穂がメリハリを生み、効果的なアクセントとなっています。 9月の様子 【9月の日向エリア】 成長期を終えてすっかり丈が高くなった植物によって、背景が見えなくなりました。9月の開花は小さなピンクの花をつけるコマツナギと白い小花をつけるキセワタ。花は少ないですが、初秋の風にそよぐ景色には、どこか郷愁を感じます。 【9月の日陰エリア】 日向の植栽とは異なる趣で、ダイナミックに株を広げる山野草。上旬にはシラヤマギクやトウテイラン、シュウメイギクが見頃を迎えました。下旬になると、ラインを描くイトススキやギザギザの葉を展開するナチシダなどが見せる“組み合わせの妙”がより分かりやすく楽しめます。 8月の様子 【8月の日向エリア】 8月に入ると全体的に丈が高くなり、迫力のあるシーンが楽しめるようになりました。下旬になると花数は少し減りましたが、人の背丈ほどあるノダケやキセワタがつぼみや花をつけ始め、山野草をセレクトしているからこそのユニークな花が観賞できます。 【8月の日陰エリア】 シラヤマギクの白花が満開となり、つぼみをつけたヒヨドリバナやナチシダなどが量感たっぷりに枝葉を伸ばしています。一方、手前ではクールなトウテイランのシルバーリーフと青花が引き締め役となり、ひねりを効かせたデザイン性が植栽の表情を深めています。 7月の様子 【7月の日向エリア】 ますます草丈が高くなり、見応えが出てきました。紫の穂をたくさん上げるカワミドリや、繊細な白花を咲かせるシラヤマギクによって爽やかな風景が楽しめる中、キキョウやタムラソウが可憐な彩りを加えています。先月に引き続きフジアザミが個性的な姿を見せ、道行く人の足を止めています。 【7月の日陰エリア】 上旬は、丈のあるシキンカラマツが控えめながらも目を引いていましたが、下旬になるとフシグロセンノウとオオバギボウシの花にバトンタッチ。鮮やかなオレンジ花が加わって、よりにぎやかになりました。中央から四方に向けて、リーフの緑のグラデーションが伸びやかに広がり、見る人に心地よさを与えています。 6月の様子 【6月の日向エリア】 上旬は前面のホタルブクロや寺岡アザミがメインでしたが、中旬になるとシキンカラマツ、コマツナギ、シラヤマギクなどが開花。オレンジ色のコオニユリの花がポツンポツンと点在する様は野趣にあふれ、自然な風景を思わせています。右手前コーナーでは、彫刻的な形の花を咲かせているフジアザミが道行く人の目を引き、山野草ガーデンの奥深い世界へといざなっているようです。 【6月の日陰エリア】 つややかな緑のグラデーションの中央でピンクの花をつけるシキンカラマツが、楚々としながらもシンボリックな存在感を放っています。まわりにはシマイトススキやホスタなどが瑞々しく成長。スカビオサ‘ムーンダンス’の薄クリーム色の花を無数に上げる様子は、幻想的な雰囲気たっぷりです。 5月の様子 【5月の日向エリア】 山野草たちの開花がスタートしました。前面ではほかの宿根草に先立ち、ヤマホタルブクロ‘アケボノ’や寺岡アザミ、ミツバシモツケが開花のピークを迎えています。中でも目を引くのが黄色い花をつける多肉質のキリンソウ。フジアザミの尖った葉とともに、ユニークな雰囲気を醸しています。植栽奥では、赤花のアストランティア‘ベニス’が彩りをプラス。 【5月の日陰エリア】 木漏れ日の下でやわらかな山野草が広げる姿は、林床を思わせます。上旬はチョウジソウが可憐な花を咲かせていましたが、中旬になるとミツバシモツケやタマガワホトトギスが開花。後方では、繊細な切れ込みが入るナチシダが瑞々しい野性味を放っています。 4月の様子 【4月の日向エリア】 他よりも少し遅れて芽吹きはじめた山野草も、春の日差しに誘われて成長を進め、中旬になると繊細な葉をあちこちで展開させているのがわかります。花壇の前方で一番早く成長し、存在感を出していた寺岡アザミ。そこに追いつく勢いで、シキンカラマツやフジバカマが柔らかい葉を旺盛に茂らせます。武蔵野の野原を感じさせる瑞々しい風景が見られるようになりました。 【4月の日陰エリア】 日向のエリアと同じく、あちこちで芽吹きが進み、さまざまな葉が展開し始めています。白い華やかなスイセンと野趣のある小さな花を下げるスノーフレークが清楚な彩りをプラス。こちらでもシキンカラマツが茂り、日向との共演が予想できます。山野草の芽吹きの楚々としたたたずまい、繊細な葉の違いなどをじっくり眺められるのは、この季節ならではの楽しみ。 3月の様子 【3月の日向エリア】 日向のエリアは、上旬はまだまだ表土が見える場所が多いですが、最前列に原種チューリップ・トルケスタニカが咲き始め、道行く人を楽しませています。下旬になると奥の方でシキンカラマツなどの葉が展開をスタート。ガーデンの前方コーナーでピンクのカタクリが愛らしい花の楚々とした姿が楽しめるようになりました。 【3月の日陰エリア】 日陰のエリアは、ガーデンの中央高台に植わる常緑のディアネラ‘ブルーストリーム’が中心となり、この時期のアクセントになっています。上旬にはまだ地上部に出てくる野草の数は少なかったのですが、下旬になるとガーデンのあちこちで各種の植物が成長を開始。野草は成長が遅いだけに、やっと顔をのぞかせる姿が見る人の心を和ませているよう。上旬に咲いていたフクジュソウは花後、繊細な葉を茂らせています。 2月の様子 【2月上旬】 日向のエリアでは、地上部が残されていたフジバカマなどの株元をよく見ると、新芽が吹き始めています。また、ところどころで原種チューリップの芽も確認できます。1月は小さかったノアザミ(寺岡アザミ)が地面を這うように葉を広げています。日陰のエリアでは、小高い場所でディアネラ・ブルーストリームが力強く葉を茂らせ、その背景にはタマシダやナキリスゲ、ヒトツバなどが緑の彩りとなっています。 1月の様子 「武蔵野の“これから”の原風景」作庭後、1月の様子。 第2回 東京パークガーデンアワードの入賞者によるオンライン座談会イベント開催 2024年8月6日(火)15:30〜オンラインで開催された「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」の入賞者5名による座談会では、自身の応募書類の紹介、植物の調達から造園、メンテナンス、コンテストに参加して得たことなどがたっぷり語られました。アーカイブ動画はYouTubeにて公開中。以下バナーよりご覧いただけます。 5つの花壇のコンセプトや作庭の詳しいレポートはこちらをチェック! コンテストガーデンを見に行こう! Information 神代植物公園での東京パークガーデンアワード開催に伴い、園内の宿根草園のリニューアル、人にも環境にも優しいガーデン「JINDAIペレニアルガーデンプロジェクト」を市民のみなさんと進すすめていま す。3分の1がリニューアルを終え、こちらでもガーデンをお楽しみいただけます。プロジェクトの詳しい内容は こちらから! https://note.com/jindai_perennial 都立神代植物公園(正門手前プロムナード[無料区域])所在地:東京都調布市深大寺元町5丁目31-10https://www.tokyo-park.or.jp/jindai/電話: 042-483-2300(神代植物公園サービスセンター)開園時間:9:30〜17:00(入園は16:00まで)休園日:月曜日(月曜日が祝日の場合、翌日が休園日、年末年始12/29~翌年1/1)アクセス:京王線調布駅、JR中央線三鷹駅・吉祥寺駅からバス「神代植物公園前」下車すぐ。車の場合は、中央自動車道調布ICから約10分弱。
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グランプリ決定!「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」の『ファイナル審査』を迎えた11月の庭と審査の様子をご紹介
年3回審査を行うガーデンコンテスト「東京パークガーデンアワード」 5人のガーデナーが手掛ける日向と日陰の2つのガーデン。最終的な結果が決まるまでに4・7・11月の3回に渡り審査が行われますが、ガーデンの施工から約1年が経過した今回は、最終回となる『ファイナル審査』です。審査日:2024年11月7日。 審査員は以下の6名。福岡孝則(東京農業大学地域環境科学部 教授)、正木覚(環境デザイナー・まちなか緑化士養成講座 講師)、吉谷桂子(ガーデンデザイナー)、佐々木珠(東京都建設局公園緑地部長)、植村敦子(公益財団法人東京都公園協会 常務理事)、松井映樹(神代植物公園園長) 事前に公表されているコンテスト審査基準 公園の景観と調和していること/公園利用者が美しいと感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること(ロングライフ) /メンテナンスがしやすいこと(ローメンテナンス)/デザイナー独自の提案ができていること/総合評価 ※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。 「ファイナル審査」は、秋の見ごろの観賞性と年間の管理状況を見る審査。これまで行われた審査は、春の見ごろの観賞性を見る4月の「ショーアップ審査」と、梅雨を経て猛暑に向けて植栽と耐久性を見る7月の「サステナブル審査」の2回です。 今回は「ファイナル審査」を含めた全3回の結果を踏まえ、「植物個々の特性・魅力がしっかり見せられていたか」、「葉や花の組み合わせがデザイン的に美しいか」、そして「今回のテーマ=武蔵野の“くさはら”、が表現されているか」などが総合的に審査され、最終的な評価として、グランプリ・準グランプリ・特別審査委員賞も決定しました。※年によって気象条件が変わるため、開花の時期がずれていても評価に影響しません。 11月の審査時期を迎えた5名の授賞ガーデンと一年の振り返りコメントをご紹介 コンテストガーデンA 【グランプリ】Grasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 ルドベキア ‘タカオ’、フロックス‘ブルーパラダイス’、清澄白山菊、サルビア‘ファイヤーセンセーション’ 【日陰のエリア】 開花期を迎えていた植物 シュウメイギク 【今回の庭づくりを振り返って】 日向・日陰どちらの庭も、イメージ図に近い形で育ってくれたので、思い描いていたものから大幅に離れることなく庭づくりができたと思います。日向はグラス類が多めの植栽で、私なりに「華やかさのあるくさはら」をつくりました。切り戻しで花数や株の大きさを調整することで、開花リレーをほぼ途切れることなく続かせることができました。日陰の庭に関しては、アスチルベのシードヘッドがきれいに残ってくれたため、花がない時期でも見どころを提供でき、1年を通して比較的ローメンテナンスですみました。 リーフやグラスで魅せるガーデンに見応えを出してくれたのは、季節感を演出してくれた球根植物。春先のクロッカス、スイセンとバイモ、秋のタマスダレやコルチカムは花が少ない時期に彩りを与え、初夏のアイリス、夏のユリが華やぎを添えてくれました。 病気や読みの甘さから一部枯れ込んだ部分もありましたが、日向と日陰それぞれの環境を活かした美しい庭を提案できました。 コンテストガーデンB 【入賞】花鳥風月 命巡る草はら 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 コレオプシス‘レッドシフト’、オミナエシ、アスター‘ジンダイ’、ルドベキア‘ゴールドスターム’、ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’、ルレリア‘パープルシャワー’、ノコンギク‘夕映え’、ミューレンベルギア・カピラリス 【日陰のエリア】 開花期を迎えていた植物 ホトトギス‘江戸の花’、ホトトギス‘松風’、清澄白山菊、青花フジバカマ、ノコンギク‘夕映え’、ツワブキ、ヒヨドリバナ 【今回の庭づくりを振り返って】 宿根草と球根による「イエロー&ブルー」のカラーコンビネーションを様々なパターンで年間通して計画通り表現することができました。開花が少ない時期はあったものの、途切れることなく何かしらの開花が見られました。また、蜜源や食草を意図的に取り入れたので、スミレに産卵するツマグロヒョウモンの幼虫が日陰の庭の黒葉スミレに何匹もおり、秋には成虫が飛んでいたので、タイトル通り命を巡らせることができました。 想像以上に生育旺盛で、イメージと異なる姿になったりしましたが、切り戻しや間引きなどメンテナンスで何とかカバー。品種ごとに、切り戻しをタイミングよく行うことで倒伏させず、開花を保ちながら株姿をコントロールできました。ほとんどの植物が、株が消えずに残っています。酷暑の夏でしたが、何年も先まで植えっぱなしでこのまま継続維持でき、生きものの住処にもなる、ロングライフ・ローメンテな庭を提示できたと思います。 コンテストガーデンC 【準グランプリ】草原は、やがて森へ還る。 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 アスター‘アポロ’、ガウラ‘クールブリーズ’、ガイラルディア‘グレープセンセーション’、ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’、エキナセア‘ファタルアトラクション’、ノコンギク‘夕映え’、ハゴロモフジバカマ、白花フジバカマ、アオチカラシバ、メリニス‘サバンナ’ 【日陰のエリア】 開花期を迎えていた植物 アガスターシェ‘ブラックアダー’、アスター‘アイデアル’、アスター‘リトルカーロウ’、ヒメケマンソウ、バーベナ‘・オフィシナリス‘ハンプトン’、ミズヒキ 【今回の庭づくりを振り返って】 土中での空気や水の流れ、微生物や菌類の活性化を考え、環境づくりに力を入れたので、想定外のこともありましたが、乾燥や高温等による枯損等もなく初期段階から順調に育ちました。 共通テーマ“武蔵野のくさはら”の私の解釈は、平地ではなく山を背景に広がりさまざまな草花が風に揺れる草原でしたが、今回、自分のタイトルからも関連づけて“武蔵野の森”とも解釈。優しくてノスタルジックで、ジブリ的な世界観をどこかに感じる景色をイメージしました。大小の起伏をつけることで奥行と立体感を出し、その環境に応じた適地適草(木)の配植をしたため、作為的に造られた感が少ない、連続性のあるナチュラルな風景を演出できました。日本在来種を要所に入れつつ多種多様なプランツを組み合わせ、植物たちのドラマティックな「競争」と「協奏」を表現しました。色彩や形重視のデザインプランティングというより、物語を感じる風景ガーデンとして見てほしいと思います。 コンテストガーデンD 【入賞】feeling garden ~伝え感じる武蔵野の新しい風景づくり~ 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 ヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’、アスター‘ジンダイ’、ダンギク、ソバ 【日陰のエリア】 開花期を迎えていた植物 シュウメイギク‘クイーンシャルロット’、ホスタ、ユーパトリウム‘チョコレート’ 【今回の庭づくりを振り返って】 温暖化する都市環境に耐えられる在来種と、日本の草原・里山の雰囲気をもったポップな印象を与える植物を組み合わせました。春~初夏にかけてかわいらしかったガーデンが、夏~秋にかけてだんだん落ち着き侘びていくよう、四季を通して移ろうように計画しています。アスター‘ジンダイ’や麦・蕎麦などで地域らしさを出して、植物に興味のない方や子供たちにも興味を持って見てもらえました。 虫や蝶などの生き物を呼ぶことができ、ガーデン内に生態系が生まれました。その反面、食害にあった植物がありましたが、真夏前に花をつけている株を含め切り戻したことで、株が大きなダメージを受けず秋まで宿根草の見栄えを保つことができ、三番花まで咲く種類もありました。とくに日陰側では、低木を骨格にしてツワブキやシダなどのオーナメンタルな宿根草を用いたことで、葉の形や色の重なりを表現できた上に、ローメンテナンスな管理ですみました。 コンテストガーデンE 【審査員特別賞】武蔵野の“これから”の原風景 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 ハギ、カライトソウ、タムラソウ、シラヤマギク、ヒヨドリバナ 【日陰のエリア】 開花期を迎えていた植物 キバナノアキギリ、ヒヨドリバナ 【今回の庭づくりを振り返って】 武蔵野の“くさはら”の昔の風景を取り入れ、そこに思いを馳せることで、過去と未来をつなぐ新たな視点を提案しました。都市緑化では生物多様性を意識し、都の「在来種選定ガイドライン」に基づいた植栽が数多く計画されていますが、草原のような景観はあまり重視されていないのが現状です。私の理想は、風景の中で目立つ存在ではなく、背景として人々や生き物が共存できる空間を作ることと、それらに愛着を持ちともに語らう人々が増えること。今回、日本の野草の魅力を語る場を設けられたことは、ひとつの成果だと捉えています。 コンセプトを重視して初めて育てる植物を多数導入したため、配置や密度の調整が難しく、イメージ通りの景観を作ることができなかった場所も多くありましたが、メンテナンスは月1回と、計画通りにローメンテナンスで管理できました。これからも東京の風景を模索し続けたいです。
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早くも猛暑に突入!「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」の『サステナブル審査』を迎えた5人の庭と審査の様子をご紹介
年3回審査を行うガーデンコンテスト「東京パークガーデンアワード」 5人のガーデナーが手掛ける日向と日陰の2つのガーデン。最終的な結果が決まるまでに4・7・11月の3回に渡り審査が行われますが、ガーデンの施工から8カ月ほどが経過した今回、第2回目となる『サステナブル審査』が行われました(梅雨を経て猛暑に向けた植栽と耐久性を審査します)。審査期間:2024年7月11日~17日。 審査員は以下の6名。福岡孝則(東京農業大学地域環境科学部 教授)、正木覚(環境デザイナー・まちなか緑化士養成講座 講師)、吉谷桂子(ガーデンデザイナー)、佐々木珠(東京都建設局公園緑地部長)、植村敦子(公益財団法人東京都公園協会 常務理事)、松井映樹(神代植物公園園長) 事前に公表されているコンテスト審査基準 公園の景観と調和していること/公園利用者が美しいと感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること(ロングライフ) /メンテナンスがしやすいこと(ローメンテナンス)/デザイナー独自の提案ができていること/総合評価 ※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。 今回の評価のポイントは主にガーデンの持久性で、「梅雨を経て、猛暑に向けた植栽がなされ、秋まで庭が維持されるような持久性が考えられているか」。しかし、単に猛暑に耐える庭であることだけが重要ではなく、「植物個々の特性・魅力がしっかり見せられているか」、「葉や花の組み合わせがデザイン的に美しいか」、そして「今回のテーマ=武蔵野の“くさはら”、が表現されているか」などの項目も含めて評価されています。※年によって気象条件が変わるため、開花の時期がずれていても評価に影響しません。※今回行われた審査結果の公表はありません。 7月の審査時期を迎えた5名のガーデンをご紹介 コンテストガーデンAGrasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜 【作品のテーマ・制作意図】 武蔵野のくさはらを表現するにあたり、オーナメンタルグラスとカラーリーフ、特徴的な葉を持つ植物をメインにしたガーデンをつくってみたいと思いました。「グラスガーデン」は馴染みが薄かったり、地味にとらえられたりすることもあるかと思いますが、宿根草に加え、球根植物も多用し華やかさをプラスすることで、多くの方に楽しんでいただけるガーデンを目指しています。 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 バーベナ・ボナリエンシス、ミソハギ、ルドベキア‘タカオ’、ヒオウギ'ゴーンウィズザウインド'、ユーパトリウム‘ベイビージョー’、カノコユリ‘ブラックビューティー’ 【日陰のエリア】 開花期を迎えていた植物 アジサイ‘アナベル’、ノリウツギ'シルバーダラー'、ノリウツギ'バニラストロベリー'、カンパニュラ・ラプンクロイデス、ホスタ‘ハルシオン’、シュウメイギク‘桃一重’ コンテストガーデンB花鳥風月 命巡る草はら 【作品のテーマ・制作意図】 ガーデンの美しさは緑量や花の色目や形状だけで測れるものでなく、空や光や風や生きもの全ての関わり合い、生命の尊さを感じることでガーデンがより輝いて見えます。ガーデンに長く根付いて、地域に馴染む風景、生態系の一部になることを想定し、植えっ放しに耐えられる丈夫な品種を中心に、蜜源植物や、風や光の動きを反映しやすい植物を多く取り入れ、地味な在来種でも組合せや配置で奥行ある豊かな草はらの表現を目指します。 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 ルドベキア‘ゴールドスターム’、ヒオウギ‘ゴーンウィズザウィンド’、オミナエシ、ルドベキア‘ブラックジャック・ゴールド’、コレオプシス‘レッドシフト’、バーベナ・ボナリエンシス、キキョウ、オトコエシ、ガウラ、ノリウツギ、ペニセタム・ビロサム‘ギンギツネ’、ペニセタム・マクロウルム、エラグロスティス・スペクタビリス 【日陰のエリア】 開花期を迎えていた植物 アジサイ‘アナベル’、ツルバキア、アガパンサス‘トルネード’、アガパンサス‘カーボネラ’、ヒヨドリバナ、ディスカンプシア‘ゴールドタウ’ コンテストガーデンC草原は、やがて森へ還る。 【作品のテーマ・制作意図】 森では、様々な木々が壮絶な生存競争を繰り広げています。しかしそれは草原もまた同じ。草原は生命力に溢れる草花たちの戦いの場です。そしてやがて、草原の中から樹木が芽生え、最終的には森へと遷移していきます。私は、草原から森へと還るこのはじまりの瞬間を、美しくもドラマティックに演出したいと思いました。ここは、森が好きなガーデンデザイナーが解釈し表現したペレニアルガーデンです。 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 バーベナ・ボナリエンシス、ノコンギク‘夕映え’、フロックス(オイランソウ)‘フジヤマ’、フロックス‘ブルーパラダイス’、ガイラルディア‘グレープセンセーション’、アガスターシェ‘ブルーフォーチュン’、ペルシカリア・ブラックフィールド、エキナセア・パープレア、エキナセア‘プレーリーブレイズグリーン’、オミナエシ、バーベナ‘バンプトン’、ゲラニウム‘タイニーモンスター’、アリウム‘ミレニアム’ 【日陰のエリア】 開花期を迎えていた植物 ノリウツギ、アンジェリカ‘エボニー’、アガスターシェ‘ブラックアダー’、エキノプス(ルリタマアザミ)、バーベナ‘バンプトン’、ホスタ、シャスタデージー コンテストガーデンDfeeling garden ~伝え感じる武蔵野の新しい風景づくり~ 【作品のテーマ・制作意図】 人々の心に残る武蔵野の情景を骨格に、新たな要素を組み足して、これからの愛される武蔵野の風景を植物の魅力や武蔵野の風景を「伝え」「感じる」ことを軸に提案しました。武蔵野の草原を連想させるグラスをベースに、季節の流れの中で、さまざまな色や形の草花がガーデンを彩っていくような配置を心がけました。自然との距離が遠くなった現代で、このガーデンが少しでも自然と人とが寄り添うきっかけになればと思っています。 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 バーベナ・ボナリエンシス、ヘレニウム‘サヒンズ・アーリー・フラワラー’、ヘリオプシス'ブリーディング・ハーツ’、アガスターシェ‘クレイジーフォーチュン’、アガスターシェ‘ビーリシャスピンク’、オミナエシ、モナルダ、ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’、オトコエシ、リアトリス 【日陰のエリア】 開花期を迎えていた植物 アジサイ‘アナベル’、ペルシカリア‘ファイヤーテール’、オトコエシ、オミナエシ コンテストガーデンE武蔵野の“これから”の原風景 【作品のテーマ・制作意図】 世界的に”Climate Change(気候変動)”が叫ばれ、日本でも夏の猛暑、雨不足による水ストレスが植物を苦しめました。農業技術である完熟した堆肥をはじめ有機資材を使い、微生物に富み団粒構造を持つ土壌を作ることからはじめ、これまで武蔵野の草原風景を担ってきた在来植物を中心にガーデンを構成します。都市の暮らしの中でこぼれ落ちてきた技術、植物でこれからの武蔵野の風景を模索していきます。 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 シラヤマギク、フジアザミ、カワミドリ、キキョウ、タムラソウ、シキンカラマツ 【日陰のエリア】 開花期を迎えていた植物 オオバギボウシ、フシグロセンノウ、シキンカラマツ、スカビオサ‘ムーンダンス’ 今回の「サステナブル審査」では審査員の評価が同じ傾向にあった前回の「ショーアップ審査」とは異なり、評価が分かれる結果となりました。これから迎える盛夏を乗り越え、3回目の「最終審査」まであと4カ月。プロたちの技術力と植物の生命力に目が離せません。庭作りスタートから月々見頃の植物と5名のガーデンを紹介する記事もご覧ください。 園内に新たにお目見えした「JINDAIペレニアルガーデン」 『東京パークガーデンアワード』開催の関連事業として、神代植物公園の園内にある「宿根草園」のリニューアルを市民協働で進める計画、「JINDAIペレニアルガーデンプロジェクト」がスタートしています。 新しい宿根草園の基本計画をつくられたのはガーデンデザイナーで「第2回 東京パークガーデンアワード」の審査員も務める吉谷桂子さん。 その計画をベースに市民が話し合い、実際に植栽をするワークショップが2023年9月から6回にわたって、行われました。「人にも環境にも優しいガーデン」というテーマのもと、ワークショップに参加した市民たちが、「どんな人がどんな時間を過ごせたらいいのか」宿根草園のイメージを膨らませるとともに、植物の配置についても検討をしました。 サクラやアジサイの群生と、芝生のエリアに囲まれた「宿根草園」。瑞々しい緑に宿根草の彩りがつややかに映える7月。 グランドデザインは吉谷さんが手がけた都立代々木公園の「the cloud」と同様、メンテナンスがしやすく景観になじみやすいクラウド(雲)型。ここは花壇を設ける面積が代々木公園よりもずっと広いので、一つひとつのエリアもぐっと広くなっています。 花壇が緑で覆われ、花も咲き始めた6月。 植栽は2023年秋と2024年春の2回。秋は、ワークショップの参加者35人が植物の選定、宿根草や球根類を植え付けました。春は、ワークショップの参加者がホスト役となって、一般参加者を迎え入れ、総勢130人で植栽しました。市民協働によるガーデンづくりには、園内に新しいモデルガーデンを作るだけでなく、「宿根草による環境にも人にも優しいガーデニングの普及啓発」や「市民交流の場づくり」に繋げていくという目的もあります。生きもの観察をしたり、宿根草園をバッグにイベントを行ったり、宿根草園に市民が関わることで、多様な魅力が生まれてくることを期待しています。 春の植え付け当日。総勢130人の大所帯にもかかわらず、素晴らしいチームワークで、スムーズに作業が進んだ。 「神代植物公園は花好きの方が多く来るイメージですが、幅広いさまざまな市民の方々が関わる機会があることで、もっと園を身近な存在に感じてもらえるようになればと考えています。市民といかに連携し、市民がいかに活躍していただけるか。その結果、多様な魅力を作り出し、利用者の増加につながればいいなと思います。公園を使い切る感じですね」と、東京都公園協会 公園事業部 公益推進課の服部睦子さん。2024年は宿根草のガーデンのお手入れとその背景を学ぶ講座が開講中で、受講生が環境に配慮したお手入れを実践しています。 実際に見ていこう「人にも環境にも優しいサステナブルなペレニアルガーデン」 ローメンテナンスでありながら、自然な風景が心地よい宿根草ガーデン。たくさんの生き物の棲み処となっているため農薬などを使わずに、多様性を大切にしながらガーデンを管理しています。「この土地にあった植物を選んで植えています。四季の移ろいを通じて植物が持つ美しさを感じていただきたい」と、神代植物公園 管理係長の斎藤亜理沙さん。 ここからは、植え付け後、開花の最盛期を迎えた7月のガーデンのガーデンを紹介します。 幾重にも植物が重なり、美しい風景を描いているガーデン。この時期はブルーがかったピンクの花が多く、やさしい色彩でまとめられています。 7月に見られる植物は、バーベナ・ボナリエンシスやフロックス、エキナセアなど。紫やピンク、黄色の花々が生き生きと咲き誇っています。 季節感あふれるやさしい表情で訪れる人を迎えてくれる「JINDAIペレニアルガーデン」。現在まだ植栽されていないエリアも残っており、今までとは異なる方向性で植栽する予定です。どんどん表情に深みを増していく宿根草園。ぜひ、コンテストガーデンと併せて訪れてみてください。 コンテストガーデン&宿根草園を見に行こう! Information 都立神代植物公園所在地:東京都調布市深大寺元町5丁目31-10https://www.tokyo-park.or.jp/jindai/電話: 042-483-2300(神代植物公園サービスセンター)開園時間:9:30〜17:00(入園は16:00まで)休園日:月曜日(月曜日が祝日の場合、翌日が休園日、年末年始12/29~翌年1/1)入園料:一般=500円、65歳以上=250円、中学生=200円(都内在住・在学の場合は無料)、小学生以下無料アクセス:京王線調布駅、JR中央線三鷹駅・吉祥寺駅からバス「神代植物公園前」下車すぐ。車の場合は、中央自動車道調布ICから約10分弱。
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【小さな庭実例】庭を輝かせるテクニック満載! バラに包まれる根本邸
コツコツと手づくりしながらつるバラの魅力を引き出した庭 東側の家の側面を活用しながら、南側の駐車スペースを含めた50㎡ほどの場所につくられた根本さんの庭。日陰になる部分以外はすべて白やピンクの淡い色のつるバラが覆い、芳しい香りが辺りを包んでいます。 南側の駐車スペース。ベンチがアイストップになっている。 もっとも目を引くのが、道路側の幅70cmほどの小さなスペースに咲く、ロサ・ムリガニー。庭を本格的につくり始めた9年ほど前に長尺仕立ての苗を植えたもので、今では見事な株に成長し、この庭のシンボル的な存在となっています。以前実店舗があったバラのお店「オークンバケット」の店先を彩っていた風景に憧れて、このバラを選んだそう。 大きなトゲをつけた太いつるは、建物の外壁に取り付けたワイヤーにしっかり結わえながら誘引。理想的なシーンをつくるために、毎年冬にすべてを取り外して誘引し直しています。「作業は脚立を少しずつずらしながら、3~4日かけて行います。昨年は窓の下にも誘引しましたが、今年はピンクのバラ‘ケルナーフローラ’をもっと大きく育てるために、窓の上にだけ誘引しました」と根本さん。ここの見栄えも考えて、今年は網戸も取り外しました。 腰高の花壇には木製フェンスを取り付けて、季節の草花を植えている。キャットミントは猫が好んで株の上に座ってしまうので、トゲトゲしたプラスチック製の猫よけを忍ばせている。 庭スペースは駐車スペースより60~70cmほど地面の高さが上がっており、シーンの切り替えには最適な構造です。駐車スペースの正面突き当たりには手作りのベンチを置き、背面のフェンスにはバラ‘レイニーブルー’をレイアウト。さらに庭への通路には小さな階段+アーチを設けてバラ‘ジャスミーナ’を誘引し、ロマンチックな空間を生み出しています。 バラの見頃は、早咲きと遅咲きの2部構成。前半の5月上旬は早咲きの‘レイニーブルー’の青みがかったピンクの花が群れ咲き、後半には‘ジャスミーナ’とロサ・ムリガニーにバトンタッチします。 ご主人と作ったベンチやフェンスと床面。 庭の骨格をなすバラの誘引や構造物はめぐみさんがデザインし、それをご主人の力を借りて形にしています。「じつは、主人は当初、あまり乗り気ではありませんでした。でも、近所の人に‘棟梁!’なんて言われたりして、徐々に楽しくやってくれるようになりました。DIYとは無縁だったのに、なぜかうまくまとめてくれるんですよ」と笑います。 バラのアーチの奥に隠れた中庭もご紹介!コーナー別にご紹介します 9年前に正社員だったのをパートに切り替え、時間にゆとりができた根本さん。以前は草花だけだった庭にバラを取り入れたことで、庭づくりを本格的に始動させました。 マイナーチェンジを繰り返し、ここまで魅力的に仕上がった根本さんのスモールガーデン。 外からは窺えない中庭エリアも併せ、素敵な場所をクローズアップしてご紹介します。 【アーチ】 見せ場の1つである‘ジャスミーナ’が覆うアーチ。ランプやお手製のステンドグラスのオーナメントを下げて、愛らしさをプラス。駐車スペースから奥へと視線を誘います。 左/ステンドグラスのオーナメントは陽の光を浴びるとキラキラと反射し、バラの魅力をさらに引き立てる。右/ヨークシャーテリアの愛犬カイくんも、豊かな花の香りが楽しめる庭が大好き。庭とともに育ってきた。 【アーチ奥の植栽コーナー】 アーチをくぐると、ナチュラルで繊細な草花が出迎えます。こぼれ種で増えたオルラヤと宿根したジギタリス、根本さんが種まきから育苗したオンファロデスやニゲラが咲き群れ、夢のような風景が広がります。 庭から駐車スペース方向の景色。ロサ・ムリガニーの白花と相まって、ノーブルな雰囲気に。 【勝手口まわり】 アーチをくぐって右手の勝手口まわりをDIYでカバーして、生活感を払拭。段差をなくすためにステップを作り、鉢物をレイアウトしました。さらにフェイクの窓や飾り棚を取り付け、早咲きのバラ‘ボニー’を誘引。淡いピンクやペパーミントグリーンにペイントし、どこか素朴でカントリーな雰囲気を醸し出しています。 扉の右側に設けた道具入れ。お手製のステンドグラスのパネルを取り付け、ハゴロモジャスミンを絡ませて雰囲気をアップ。手前に咲くバラは、コロコロとしたアンティークタッチの‘パシュミナ’。 【庭の板塀】 奥の白い板塀にはクレマチス‘グレイブタイ・ビューティー’や雑貨類をディスプレイして、見応えたっぷりに。手前にはバードバス+バラ‘グリーンアイス’の鉢を配して、立体感と奥行き感を出しています。 処分した衣装ダンスの扉内側についていた鏡を再利用、アンティーク加工を施し板塀に取り付けて。手前の草花が映り込み、奥行き感と透明感をプラスしている。 【ガーデンシェッド】 日当たりの悪い庭の隅は、2人で作った白いシェッドを設置。中庭のフォーカルポイントになっています。バラ‘サマースノー’が屋根部分を程よいボリュームでカバー。 左/‘サマースノー’がまだシェッドの側面までしか伸びていない、一昨年の様子。中/雑貨やドライフラワーが飾られた内部。肥料や薬剤もここに収納している。右/根本さんが作ったステンドグラスのパネルをはめ込んだ窓がアクセントに。 【日陰のエリアのパーゴラ】 南側の隣家との境目は、最も日が当たらない場所。ここにはガゼボ風パーゴラをつくって設置し、隣家を目隠ししています。パーゴラにもステンドグラスや棚を取り付け、雰囲気を高めました。旺盛に上部を覆うのは、秋に咲くクレマチスのセンニンソウ。「小鳥が多いので、毎年ピーナッツのリースを下げています。いつも全部食べてくれるんですよ」と根本さん。 2年前まではモッコウバラを絡ませていた場所。レンガを使った腰高のウォールと窓風ステンドグラスパネルが、光を採り入れつつ程よい目隠しに。 【テーブルまわり】 来客があったときは、中庭で花を眺めながらおもてなしをしています。通りからの視線をつるバラが遮ってくれるので、心おきなくでくつろぐことができ、会話も弾むそう。 脇の花が倒れてこないように、白いフェンスで囲んだり、細い棒で支柱を立てたり。 センスが光る手づくり&小物あしらいにもクローズアップ! ここでは、随所に見られる小技をご紹介。見逃せないシーンがたくさん。 ■ストーンワーク 敷く・並べる スモールガーデンでも、多様な石づかいで、飽きのこない風景を作ることができます。 シェッドの前は細長い石を並べ(左)、塀の前の細い園路にはピンコロ風の石を採用(右)。 以前敷いていた固まる砂を剥がしたときに残った塊がコッツウォルズストーンのような形をしていたので、それを並べて再利用。草花の軽やかさを維持しながらナチュラルな雰囲気に。 ■ディスプレイ あちこちのシーンにアクセントを作り、見応えを出しています。スモールガーデンに合わせて手作りしたアイテムがいっぱい。 左・中/スペースにピッタリのベンチはご主人と一緒に作ったもの。傍らにガーゴイルを配し、さながらイギリスの庭園のワンシーンのよう。 右/スタイロフォームを組み、ダークグレーにペイントして作った、石柱のような花台。 左/レンガをざっくりと積んで、上にコーンのオーナメントを。時間の経過を感じてもらえるように苔をのせています。 中/小さなバードバスで、水のきらめきをプラス。花がたくさんある時期は、摘んで浮かべて楽しみます。 右/ハート形のワイヤーにアイビーを誘引。「丈夫なので数年放ったらかしです」と根本さん。 ■フェンスで仕切る 小さな空間でもシーンの切り替えは必要。立体感を出すのにも有効です。 バラ‘レイニーブルー’が絡むフェンスの隣にアイアンフェンスを設置。透け感を維持するためには、程よく華奢なものが◎。 フェンスは飾ったり、植物を絡ませたりして、表情豊かに。 ■ペンキでエイジング加工 ガーデンの雰囲気に合わないものは「グレーに塗ってダークな色でほんのり汚れをつける」加工を自ら施し、空間に統一感を出しています。 アーチの下のフェンスにもエイジング加工を。根本さんが作ったステンシルのプレートがアクセントに。 板塀のニッチに飾ったキューピッドにもペイント。 左/にぎやかな色のガーデンピックの棒を取り外し、トップの小さな動物にペイントしたオーナメント。 右/セアノサスを植えるコンテナは大きいので、テラコッタなどでは重くなりますが、軽いプラスチック製のものを用いてペイントすることで、問題をクリア。 スモールガーデンを彩るバラ&クレマチス 根本さんの普段のお世話は、冬に寒肥で牛ふんや油粕、カリ有機肥料を施すのみで、お礼肥は様子を見て。消毒は2~3週間に1度行っています。庭を彩る美しいバラとクレマチスを一部ご紹介します。 まずはバラから。 左上から時計回りに、‘レイニーブルー’、‘ジャスミーナ’、 ‘アイスバーグ’、ロサ・ムリガニー。 左上から時計回りに、‘パシュミナ’、‘フランボワーズ・バニーユ’、‘ロマンティック・レース’、‘ブラン・ピエール・ドゥ・ロンサール’。 続いてクレマチスもご紹介。 左上から時計回りに、‘マリア・コーネリア’ 、‘マーガレット・ハント’、‘白万重’、‘ワーレンバーグ’。 左上から時計回りに、‘ロマンティカ’、‘シーボルディー’、 ‘カイウ’、‘篭口’。 種まきで増やした草花 変わった品種やお気に入りの植物は花後に種子を採り、播種してベランダで育苗。これなら絶やすことなく、デザインどおりの場所に咲かせることができます。 左上から時計回りに、ニゲラ‘アフリカンブライド’、ジギタリス・トロヤナ、ゲラニウム‘ビオコボ’、スカビオサ・オクロレウカ。 左上から時計回りに、ギリア・レプタンサ、ゲラニウム‘クラリッジドリュース’、シノグロッサム、シレネ‘ホワイトパンサー’。 とびきりのセンスとアイデアで、小さな空間をロマンチックなローズガーデンに仕上げている根本さん。何より手間を惜しまず丁寧に向き合う姿が、多くの人が憧れる魅力的な空間を生み出しているようです。二人三脚の庭は、これからも思い出を紡ぎながら進化を続けていきます。 2021年フォトコンテストで編集長賞を受賞 この投稿をInstagramで見る meme(@memeblossom)がシェアした投稿 受賞時にガーデンストーリーサイトでもご紹介した受賞写真は、‘ジャスミーナが咲くアーチ’でした。 うつむき加減に咲くつるバラの‘ジャスミーナ’は、少し遅咲きで、ほのかに香る品種のようですね。純白の‘アイスバーグ’や足元の小花たちによるロマンチックな色合いのコラボレーション。画面いっぱいの花々の風景に、吸い込まれるように見入ってしまう写真です。中央の木製ランタンと、その奥にちらりと向こうの風景が覗くことで奥行きが感じられて、他のエリアも拝見してみたいと思いました。副賞として来年春、編集部による取材をお約束させていただきました。ご主人と2人で庭づくりをされているそうです。「何度もくぐり抜けた」という花咲くアーチをくぐる日が楽しみです。 編集部コメントより ガーデンストーリーでは、今年も、フォトコンテストを開催中です。詳しくは、下記の記事をご覧ください。
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本格的な春到来! 「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」の『ショーアップ審査』を迎えた5人の庭と審査の様子をご紹介
年3回審査を行うガーデンコンテスト「東京パークガーデンアワード」 神代植物園の正門へ続くコンテストガーデンが、エントランスの景観と一体感をなす4月中旬。 5人のガーデナーが手掛ける日向と日陰の2つのガーデン。最終結果が決まるまでに4・7・11月の3回に渡って審査が行われますが、ガーデンの施工から約5カ月経過した今回、第1回目となる『ショーアップ審査』が行われました(春の見ごろを迎えたガーデンの観賞性を審査します)。審査期間:2024年4月11日~17日。 審査員は以下の6名。福岡孝則(東京農業大学地域環境科学部 教授)、正木覚(環境デザイナー・まちなか緑化士養成講座 講師)、吉谷桂子(ガーデンデザイナー)、佐々木珠(東京都建設局公園緑地部長)、植村敦子(公益財団法人東京都公園協会 常務理事)、松井映樹(神代植物公園園長) 事前に公表されているコンテスト審査基準 公園の景観と調和していること/公園利用者が美しいと感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること(ロングライフ) /メンテナンスがしやすいこと(ローメンテナンス)/デザイナー独自の提案ができていること/総合評価 ※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。 今回の評価のポイントは主にガーデンの観賞性で、「植物の春の美しさがしっかりと表現されているか」。しかし、単に華やかであることだけが重要ではなく、「植物個々の特性・魅力がしっかり見せられているか」、「葉や花の組み合わせがデザイン的に美しいか」、そして「今回のテーマ=武蔵野の“くさはら”、が表現されているか」などの項目も含めて評価されています。※年によって気象条件が変わるため、開花の時期がずれていても評価に影響しません。※今回行われた審査結果の公表はありません。 4月の審査時期を迎えた5名のガーデンをご紹介 コンテストガーデンAGrasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜 【作品のテーマ・制作意図】 武蔵野のくさはらを表現するにあたり、オーナメンタルグラスとカラーリーフ、特徴的な葉を持つ植物をメインにしたガーデンをつくってみたいと思いました。「グラスガーデン」は馴染みが薄かったり、地味にとらえられたりすることもあるかと思いますが、宿根草に加え、球根植物も多用し華やかさをプラスすることで、多くの方に楽しんでいただけるガーデンを目指しています。 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 カマッシア‘ライヒトリニー’ 【日陰エリア】 開花期を迎えていた植物 スイセン‘タリア’、プルモナリア‘トレビファウンテン’、イカリソウ’スルフレウム’、アネモネ・シルベストリスなど コンテストガーデンB花鳥風月 命巡る草はら 【作品のテーマ・制作意図】 ガーデンの美しさは緑量や花の色目や形状だけで測れるものでなく、空や光や風や生きもの全ての関わり合い、生命の尊さを感じることでガーデンがより輝いて見えます。ガーデンに長く根付いて、地域に馴染む風景、生態系の一部になることを想定し、植えっ放しに耐えられる丈夫な品種を中心に、蜜源植物や、風や光の動きを反映しやすい植物を多く取り入れ、地味な在来種でも組合せや配置で奥行ある豊かな草はらの表現を目指します。 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 カッコンセンノウ、シラー・ベルビアーナ カッコンセンノウ、シラー ベルビアーナ、カマッシア レイヒトリニー、スイセン ピピット 【日陰エリア】 開花期を迎えていた植物 ミニチューリップ ホンキートンク、ムスカリ アルメニアカムブルー、オルレア ホワイトレース、ビオラ ラブラドリカ、ムラサキサキゴケ、イフェイオン ジェシー、イフェイオン ウィズレーブルー、イフェイオン ホワイトスター コンテストガーデンC草原は、やがて森へ還る。 【作品のテーマ・制作意図】 森では、様々な木々が壮絶な生存競争を繰り広げています。しかしそれは草原もまた同じ。草原は生命力に溢れる草花たちの戦いの場です。そしてやがて、草原の中から樹木が芽生え、最終的には森へと遷移していきます。私は、草原から森へと還るこのはじまりの瞬間を、美しくもドラマティックに演出したいと思いました。ここは、森が好きなガーデンデザイナーが解釈し表現したペレニアルガーデンです。 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 ゲラニウム'サンギネウム・ストラータム'、サポナリア・オキモイデス(ロックソープワート)、シレネ・ユニフローラ‘シェルピンク’、アリウム・ニグラム、アリウム‘カメレオン’、オルラヤ、ベロニカ‘ウォーターペリーブルー’、クランベ・マリティマ、リクニス・フロスククリ(カッコウセンノウ)など 【日陰エリア】 開花期を迎えていた植物 イカリソウ、ゲラニウム‘タイニーモンスター’、フリチラリア・ペルシカ、アジュガ‘チョコレートチップ’ コンテストガーデンDfeeling garden ~伝え感じる武蔵野の新しい風景づくり~ 【作品のテーマ・制作意図】 人々の心に残る武蔵野の情景を骨格に、新たな要素を組み足して、これからの愛される武蔵野の風景を植物の魅力や武蔵野の風景を「伝え」「感じる」ことを軸に提案しました。武蔵野の草原を連想させるグラスをベースに、季節の流れの中で、さまざまな色や形の草花がガーデンを彩っていくような配置を心がけました。自然との距離が遠くなった現代で、このガーデンが少しでも自然と人とが寄り添うきっかけになればと思っています。 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 チューリップ‘クイーンオブナイト’、チューリップ‘コンチネンタル’、チューリップ‘ドールズメヌエット’、チューリップ‘ホワイトバレー’、チューリップ‘スワラ’、ラナンキュラス ラックスシリーズ 【日陰エリア】 開花期を迎えていた植物 チューリップ‘クイーンオブナイト’、チューリップ‘コンチネンタル’、チューリップ‘ドールズメヌエット’、チューリップ‘ホワイトバレー’、チューリップ‘スワラ’、チューリップ‘ヒルデ’、ラナンキュラス ラックスシリーズ、ムスカリ、アジュガ コンテストガーデンE武蔵野の“これから”の原風景 【作品のテーマ・制作意図】 世界的に”Climate Change(気候変動)”が叫ばれ、日本でも夏の猛暑、雨不足による水ストレスが植物を苦しめました。農業技術である完熟した堆肥をはじめ有機資材を使い、微生物に富み団粒構造を持つ土壌を作ることからはじめ、これまで武蔵野の草原風景を担ってきた在来植物を中心にガーデンを構成します。都市の暮らしの中でこぼれ落ちてきた技術、植物でこれからの武蔵野の風景を模索していきます。 【日向エリア】 開花期を迎えていた植物 ― 【日陰エリア】 開花期を迎えていた植物 スイセン‘トレサンブル’、シラー・シベリカ、スノーフレーク 次回の審査は7月、梅雨を経て猛暑に向けた植栽と耐久性を審査する『サステナブル審査』です。庭作りスタートから月々見頃の植物と5名のガーデンを紹介する記事もご覧ください。 コンテストガーデンを見に行こう! Information 都立神代植物公園(正門手前プロムナード[無料区域])所在地:東京都調布市深大寺元町5丁目31-10https://www.tokyo-park.or.jp/jindai/電話: 042-483-2300(神代植物公園サービスセンター)開園時間:9:30~17:00(入園は16:00まで)休園日:月曜日(月曜日が祝日の場合、翌日が休園日、年末年始12/29~翌年1/1)アクセス:京王線調布駅、JR中央線三鷹駅・吉祥寺駅からバス「神代植物公園前」下車すぐ。車の場合は、中央自動車道調布ICから約10分弱。
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「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」ガーデナー5名の2月の“庭づくり”をレポート!
「第2回 東京パークガーデンアワード」【2月末】第2回作庭 コンテストガーデンの入り口付近には案内板が設置されています。 12月上旬に第1回目の作庭がされたあと、コンテストガーデンのある東京では一度雪が数センチ積もる日があったものの、2月にはこの時期には珍しく25℃に達する暖かな日もありました。年を越し、本格的な春がやってくる前に行われた2月下旬2度目の作庭の様子をご紹介します。 コンテストガーデンAGrasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜 ◆今回の作業①除草 抜いた雑草類は花壇後方に設置したバイオネストに。比較的コンパクトなサイズで、鳥の巣のような形が愛らしい。 ②上部残った枯れた部分を切除 主にグラス類の地上部をカット。これもバイオネストにイン。 ③一部球根類の植え込み 1月に届き、家で保管していたユリの球根を植え込み。「芽が伸びてしまっていて、植え付けが遅すぎではないか心配」と古橋さん。 ◆2月下旬のガーデンの様子 ■日向(北側) マルチング材の杉皮バーク堆肥(ガーデンモス)をたっぷり使い表土が覆われていることで、ガーデン全体が明るくやわらかい印象です。リナリア・プルプレアがこんもりと葉を茂らせ、小球根のピンク色のクロッカス‘ホワイトウェルパープル’やスイセン‘ベビームーン’が彩りを添えるなど、一足早い春を迎えています。 ◆日陰(南側) 日向と同じグランドデザインですが、日陰の花壇の方がレベルの起伏がはっきりと浮かび上がっています。ベースの構造が確認できるのは冬の間だからこそ。まだ寒々しさが残っていますが、明るい黄緑葉のカレックス‘エバリロ’や銅葉のティアレラなどのリーフ類が色彩を添えつつ、シラー・ミスクトスケンコアナや、楚々としたバイモユリの花が愛らしさを放っています。 ◆こだわりのプランツタグ プランツタグといえば、イギリスなど海外の植物園で見かける「黒地に白文字」のイメージがあり、日本語による表記とともに学名も記載しています。神代で開催なので植物園らしさを出しつつ、外国の方にも楽しんでいただけるように設置しました。 コンテストガーデンB花鳥風月 命巡る草はら ◆今回の作業①不要な分の雑草取り 宿根草の根元で邪魔になる雑草のみを除去。現時点で愛らしいものや彩りが寂しい場所は残し、草原っぽさを演出している。 ②宿根草苗を追加植栽 アガパンサスやホトトギス、カレックスなど寒さに弱い植物を植栽。 ③カットバック グラス類の切り戻しやノリウツギの花がら取り。刈ったグラスの葉は細かく切ってマルチングとして活用。 ◆2月下旬のガーデンの様子 ■日向(北側) グラス類の枯れ葉の合間で、黄花のスイセン ‘イエローセイルボート’と白い房咲きのスイセン‘ペーパーホワイト’が明るい顔をのぞかせて、早春らしい風景が広がっています。また、宿根アイリスやスイセン類、カレックスの葉が描くアールのフォルムで、春の訪れに浮足立つようなリズミカルさが生まれて、素朴でナチュラルな雰囲気が漂っています。 ◆日陰(南側) 常緑のヤブランやツワブキが瑞々しく育ち、日向のガーデンとは全く異なるシーンが広がっています。中央を横断する作業用の通路には剪定枝やカットした枯れ葉が敷かれ、思わず歩きたくなる小道があるような風景に。青々とした風景の中でカレックス‘エヴァリロ’ (左)が、効果的な明るいアクセントになっています。通常鉢植えで楽しまれるオモトも今回植え付けられましたが、今後どのような効果をもたらすのか楽しみ。 ◆こだわりのプランツタグ 自然な草はらの空気感を壊さないように目立たない細長いプレートを選びました。鉄製で重みがあって何度も使用できます。裏には、学名も記載してあります。 コンテストガーデンC草原は、やがて森へ還る。 ◆今回の作業①雑草取り/溝に資材を投入 抜いた雑草は、小川のように蛇行して設けられた溝に入れる。溝内の腐植にタイムラグをつくるために枯れ枝・炭を溝に足す。 ②苗の追加/微調整 1回目に植えた植物の育ち具合を見ながら、位置を微調整する。 ③カットバック グラス類をメインに枯れた葉を切り戻し。カットした葉は溝に入れる。 ◆2月下旬のガーデンの様子 ■日向(北側) 起伏が大きく、溝となる部分には太い木片が投入され、ワイルドな雰囲気が漂っています。それに対し、溝の傾斜部分に春を告げるクロッカス‘ホワイトウェルパープル’が群れ咲いて、小球根の愛らしさが際立っています。花壇の手前側に植えたチューリップの原種‘アルバコエルレアオクラータ’が。あまり目立つ花ではありませんが、花が少ないこの持期に花を発見する楽しみを提供してくれています。 ◆日陰(南側) 低木はまだ葉を出していませんが、株元では常緑の植物たちが瑞々しく葉を展開。まだ深みのある緑葉が多い中で、ワイルドチャービル(下左)のライムグリーンの葉がひと際明るく存在感を発揮しています。可憐な花を下げるクリスマスローズ(下右)とともに、道行く人の目を引き、ところどころに差す光が林床を思わせています。 ◆こだわりのプランツタグ シンプルで見やすくて主張しすぎない、そして朽ちにくい素材のものとして、黒い金属板のタイプを採用。 コンテストガーデンDfeeling garden ~伝え感じる武蔵野の新しい風景づくり~ ◆今回の作業①雑草取り 除草したものは後方に設置したコンポストの片方に入れる。ある程度積み上がったら、開いている側に切り返し(かき混ぜて空気を取り込む作業)を行い、腐食を促す予定。 ②植物苗追加植栽 年内に入手できなかった植物を追加で植栽(ラナンキュラス・ラックスシリーズ、ユーパトリウム‘ベイビージョー’、ニホンムラサキなど)。福岡のちびっ子も上京して参加(下)。 ③切り戻し(グラス、低木など) アナベルなどの低木類は、生産者のレクチャーの元、花が咲く時期の樹高や花のつき方をイメージして切り戻しの高さを調整しながら剪定。グラス類の中でも、スティパとカレックスは、切り戻さず透かし剪定を行い、ボリュームを調整。剪定くずは雑草同様にコンポストに入れる。 ◆2月下旬のガーデンの様子 ■日向(北側) 細い溝で分けられたいくつかのゾーンに植え込みには、今か今かと待ちわびているさまざまな宿根草が確認できます。ガーデンの手前では、よく道端で見かけるオオイヌノフグリをイメージして、丈が低く華奢なベロニカ‘オックスフォードブルー’を植栽。のどかな風景を連想させています。チューリップがあちこちで芽を出しており、春本番にはぐっとにぎやかになることでしょう。 ◆日陰(南側) まだ枯れ木状態の落葉低木を背景に、一足早く宿根草や球根類が芽を出して成長を始めていいます。その陰陽の対比が、これからの競演を期待させています。また、大きく葉を広げるツワブキやリョウメンシダが、日向のガーデンとはひと味もふた味も異なるダイナミックな野趣を演出しています。 ◆こだわりのプランツタグ 間伐材を加工して作成し、日向・日陰、それぞれの雰囲気に合うように2タイプ用意。日向には木の無垢地に黒文字で、日陰には黒く塗った地に白文字で植物名を表記しています。又どちらもハンギングタイプで高さを出し、植物名が調べられるようQRコードをつけています。 コンテストガーデンE武蔵野の“これから”の原風景 ◆今回の作業①雑草取り/カットバック ススキやフジバカマなど地上に枯れた姿を残していた植物を切り戻し、春の芽吹きを促す。冬季には地上から姿を消す宿根草が大部分を占めており、それぞれの芽吹きを観察できるよう今回は雑草を抜く。 ②苗の補植 12月になかなか思い通りの株が手に入らなかった、クサソテツやフウチソウを植え付け。 ③バイオネスト設置 神代植物公園内で発生した剪定枝を材料にして、日向・日陰それぞれ異なる樹種の枝でガーデン後方に設置。枝のしなり方が違うので、作り方や仕上がりの見え方もやや異なっています。バイオネストの底には、植物ごみの減容、減量を促す自作の基材(モミガラ、落ち葉、コメヌカを発酵管理したもの)を敷き込んでおく。 ④マルチング 昨年末に、完熟バーク堆肥を3cmほどかぶせていましたたが、細かすぎて風で飛んでしまうこと、今後保湿効果が薄いことを懸念して、重みのある腐葉土を追加で2cmほど、全体にかぶせました。 ◆2月下旬のガーデンの様子 ■日向(北側) 選んだ野草類は成長速度が穏やかなものが多く、まだガーデンに大きな動きは見られないですが、土中の見えないところでは、確実に小さな芽は成長しています。部分的に成長が早い植物もあるので、それを見つける楽しい時間です。ガーデンの手前側では、ノアザミ(寺岡アザミ)と原種のチューリップ・トルケスタニカがほかより一足先に成長を進めていました。 ◆日陰(南側) 日陰側も主だった成長はまだまだのようですが、ガーデンの中央高台ではディアネラ‘ブルーストリーム’がオーナメンタルな存在感を放ち、背後ではタマシダがつややかな葉を広げています。また、多くの野草が眠るなか小さなフクジュソウが見頃を迎え、春の到来を告げていました。 ◆こだわりのプランツタグ 木材に植物名と学名をレーザー加工で記したオリジナルのプランツタグです。地域内での資源巡回を目指し、使用した木材は近所のオーダーメイド材木屋『ティンバークルー』で長く使っていなかったサクラ材を用いて製作しました。表記はシンプルに和名と学名のみにして、データを作成し、レーザープリンターで印刷しました。 コンテストガーデンを見に行こう! Information 東京都・神代植物公園を舞台に行われている「第2回 東京パークガーデンアワード」。5人のガーデンデザイナーが日向と日陰のガーデンづくりにチャレンジし、趣の異なる10のガーデンを観賞することができます。いつでも自由に見学可能。日々表情を変えていくプロによる植栽を見に、ぜひ訪れてください。 都立神代植物公園(正門手前プロムナード[無料区域])所在地:東京都調布市深大寺元町5丁目31-10https://www.tokyo-park.or.jp/jindai/電話: 042-483-2300(神代植物公園サービスセンター)開園時間:9:30~17:00(入園は16:00まで)休園日:月曜日(月曜日が祝日の場合、翌日が休園日、年末年始12/29~翌年1/1)アクセス:京王線調布駅、JR中央線三鷹駅・吉祥寺駅からバス「神代植物公園前」下車すぐ。車の場合は、中央自動車道調布ICから約10分弱。