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- 実家の「庭じまい」でマンション12階へ。愛犬と植物たちが紡ぐ、小さな“空に近い庭”の物語
長年親しんだ大切な実家の庭。家族の暮らしの変化に合わせて「庭じまい」を決意。庭の植物たちが、マンションのベランダへ引っ越してきました。移植した植物の新芽の動きにハラハラし、鉢に紛れ込んだ“嬉しい居候”に驚く日々。12階という“空に近い庭”を舞台に、フラワー&フォトスタイリストの海野美規さんが愛犬あんと一緒に紡ぐ、ベランダガーデン奮闘記の始まりです。
目次
庭からベランダへ。小さく、空に近い庭

長年、実家の庭という大きなキャンバスで季節を描いてきましたが、両親の歩みに合わせ、その庭を畳むことになりました。

大きな枝垂れサクラの木漏れ日や、小さな畑や花壇の土の感触、みずみずしいアジサイやアメリカノリノキ‘アナベル’が育つ景色を手放すのは、とてもとても寂しい時間でもありました。でも、立ち止まってばかりはいられません。今は場所をマンションのベランダへと移し、数平米という限られた空間をどう楽しもうか、日々ワクワクしながら「新しい庭」を整えています。
緑がいっぱいではなくても、ベランダにはベランダの光があり、風があります。
シニアになった愛犬あんと共に、この小さな“空に近い庭”で、どんな風に植物と健やかに暮らしていこうかな。
庭から一緒に引っ越してきた植物は「絶対に絶やしたくない!」という思いで肩に力が入ります。
やっと出てきた‘アナベル’の芽を覗き込む毎日、ハラハラドキドキのベランダガーデニングの始まりです。
庭から託された植物たち

実家の庭を畳む際、どうしても諦めきれず、小さな鉢へと移し替えて連れてきた植物たちがあります。春の足音と共に咲いていた彼らは、今は私のベランダで新しい季節を迎えようとしています。
<庭からやってきた植物たち>

- 春を告げる球根組は、ムスカリ、ヒヤシンス、スイセン、スノードロップ
- 私が好きな植物組は、クリスマスローズ、ギボウシ(ホスタ)、ペパーミント、ブルーベリー、アメリカノリノキ‘アナベル’、スキミア
植え替え作業をしている最中も、「このクリスマスローズはあそこに植えてあったな」とか「このペパーミントはよく使ったな」などと、庭での思い出が次々と蘇ってきました。

面白いのは、移植した鉢の中から、思いがけない植物たちが次々と顔を出したことです。
球根の鉢からはいつの間にかセージやヨモギが芽吹いています。‘アナベル’の鉢からも、先日はムラサキツユクサが一輪咲きました。今までだったらあまり気に留めなかったけれど、ベランダで1輪咲くだけで、なんだか感動してしまうのです。

そんな新しい仲間たちを迎えたベランダには、以前から共に暮らしてきたローズマリー、オリーブ、そして、一足先に庭からやってきたギボウシたちがいます。

総勢これだけの植物たちが、今は狭いベランダでひしめき合っている状態。
「みんな、この新しい環境でうまくやっていけるかな?」と少しドキドキしますが、この鉢の中でどんな新しい景色が生まれるのか、毎日が宝探しのような気分です。
ベランダの環境

我が家のベランダは、マンションの12階。南西向きで、午前中はひっそりとしていますが、お昼を過ぎるとぐんぐんと陽が差し込み始めます。
冬の午後は暖房いらずの「ぽかぽか特等席」ですが、問題は夏。近年の猛暑を考えると、ここも植物にとっては過酷なサウナのような環境です。
さらに高層階ならではの「吹き抜ける強い風」も加わると、植物たちにとっては、まさに毎日の体力が試される場所と言えるかもしれません。
そして、もう一つの悩みが虫のこと。
「12階なら蚊も来ないし安心」と思っていたのは最初だけでした。油断していると、春先にはどこからともなくアブラムシの軍団がやってくるのです。パンジーやビオラを置いた途端、数日でびっしりと。
「一体、この高いところまでどうやって……?」
虫との攻防戦、これはなかなか手強そうです。
アメリカアジサイ‘アナベル’

今回の引っ越しで、庭からベランダへ連れてくるにあたり、「これだけは絶対に絶やしたくない!」と、一番気合を入れていたのが‘アナベル’です。
私は純白の‘アナベル’が大好きで、毎年大きく美しく咲いてくれるのを楽しみにしていました。


じつは以前にも、庭から株分けした‘アナベル’をベランダで育てたことがありました。2年間は美しい花を見せてくれたのですが、3年目の冬、不注意で水切れさせてしまった苦い経験があります。
だからこそ、今回は慎重に……と見守ってきましたが、メインの枝からは一向に芽吹く気配がなく、正直焦りました。そんな日々もあって、根元から小さな芽が顔を出してくれた時は、思わず声が出るほど嬉しかったです。

そこからは、ゆっくり、本当にゆっくりと葉を広げてくれました。6月後半の今、だいぶ葉は茂ってきましたが、残念ながら今年は花芽がつくことはなさそうです。

……と、ここで一つ、想定外なことが起こりました。
「‘アナベル’の葉が随分と立派に茂ってきたな」と目を細めていたのですが、よく見るとどうも様子が違います。なんと、鉢の半分を占領していたのは、猛烈な勢いで成長した「シソ」でした。

‘アナベル’の勢いを凌ぐ勢いで育ったこのシソ。私の大事な‘アナベル’の鉢の半分を占領しています。
‘アナベル’を救済すべく、シソは収穫をしたあと、抜こうか、短くカットしようか、迷っているところです。コンパニオンプランツになるなら、そのままにしておいてもよいのですが。そういうことでもないですよねぇ。
ベランダでの‘アナベル’栽培のコツ

大切な‘アナベル’を枯らさないために、これから予想される猛暑対策にできることをしていきましょう。
‘アナベル’は、アジサイ科アジサイ属(ハイドランジア属)の植物。アジサイの仲間であり、アメリカノリノキの園芸品種となります。
本来、とても栽培しやすい植物なので、ポイントを押さえてぜひ長く楽しみたいものです。
<日当たり>

‘アナベル’は日光を好む植物です。本来は「午前中は日なた、午後からは明るい日陰」が理想的だとか。しかし、我が家のベランダは真逆で、午前は日陰、午後から強い西日が直撃する環境です。
株分けのダメージに加えてこの「西日」も、今年花芽がつかなかった原因の1つかもしれません。今後は、増えていく鉢や棚を活用して「植物同士の影」を作るなど、自然な遮光を工夫してみようと思っています。

<水やり>
鉢植えの‘アナベル’は、地植えよりも水切れしやすくなるため注意が必要です。土の表面が乾いたタイミングで水やりしましょう。夏は1日2回、朝夕の水やりが必要になることもあります。朝、犬の散歩から帰ってきたら水やりを。そして真夏は、夕方の犬の散歩から戻ったら、ここでも水やりを。犬の散歩と水やりをセットにして習慣にしようと決めました。
反対に、休眠期に入る冬は水やりを控えめに。鉢土の表面が乾いてから2〜3日後、週に1~2回程度を目安にします。冬はうっかり忘れてしまうんですよね。これで水切れをして枯れてしまいます。与えすぎはNGですが、忘れないよう冬こそ丁寧に水やりを。
<マルチング>

この夏を乗り切るために、まずは株元を涼しく整えるところから始めます。
ベランダでの鉢管理に“マルチング”を取り入れようと考えています。
今は夏に向かって気温が上がり、ベランダの「西日」と「強風」が鉢の土をどんどん乾かします。土の乾燥を防ぎ、地温の上昇を抑えるためにマルチングは効果的です。
ベランダでマルチングをするときの主な注意点は、
- 蒸れさせないこと
- カビを発生させないこと
です。
それには「土が見え隠れする程度の薄めに敷くこと」と、「時々めくって、土の状態を確認すること」がポイント。厚くマルチングしすぎると蒸れてしまうことがあります。植物も人間と同じで、たまには足元を軽くして、深呼吸させてあげることが大切なようです。
【マルチング材】
マルチング材としては、バークチップ、ココヤシファイバー、小粒の軽石、腐葉土などがあります。
庭では、スイカなどを栽培するときに、ワラを使ってマルチングしていました。
ベランダでは、軽くて風が通りやすく見た目もきれいなので、ココヤシファイバーを選んでマルチングをしています。
始まったばかりのベランダガーデン

「庭がなくなって寂しい」という気持ちは、新しい芽が出るたびに、少しずつ「楽しみ」に塗り替えられていくようです。
ベランダガーデニングは、まだ始まったばかり。西日対策、乾燥対策、それから来春に向けてどんな花を植えようか、その前に秋の花も欲しいなと思いを巡らせたり。素敵なラティスやトレリス、植木鉢も揃えたいし、寒い日には愛犬あんと一緒にベランダへ出て、お茶を飲みながら日向ぼっこができるような、そんな小さなテーブルとチェアも置きたいな……。
やりたいことは尽きませんが、焦らずゆっくり、庭から託された命と一緒に、この小さなベランダガーデンを、私とあんの心地よい場所に育てていこうと思います。
さて、次回はさらに成長した植物たちの、ちょっと嬉しいご報告ができるといいなと思っています。

Credit
写真&文 / 海野美規 - フラワー&フォトスタイリスト -

うんの・みき/フラワー&フォトスタイリスト。ハーバルセラピスト。愛犬あんとの暮らしを通じて、動物のための自然療法を学ぶ。パリで『エコール・フランセーズ・ドゥ・デコラシオン・フローラル』に入門、ディプロムを取得。『アトリエ・サンク』の山本由美氏、『From Nature』の神田隆氏に師事。『草月流』師範。フランス、ハンガリー、シンガポールでの暮らしを経て、現在日本でパリスタイル・フラワーアレンジメントの教室『Petit Salon MILOU(プチ・サロン・ミロウ)』を主宰。
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