小川恭弘 -園芸研究家-
小川恭弘 -園芸研究家-の記事
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宿根草・多年草
【プロが伝授】観葉ベゴニア(根茎性ベゴニア)の育て方
観葉ベゴニア(根茎性ベゴニア)の基本情報 Photo/小川恭弘 植物名:観葉ベゴニア学名:Begonia英名:rex begonia、king begonia別名:根茎性ベゴニア、レックスベゴニア科名:シュウカイドウ科属名:シュウカイドウ(ベゴニア)属原産地:世界の熱帯、亜熱帯形態:常緑多年草 ベゴニアの仲間は、世界の熱帯から亜熱帯に約2,000種が分布しています。園芸植物として栽培される種類や品種が非常に多く、1,500以上もの園芸品種が知られています。 なかでも「観葉ベゴニア」というと、多肉質の根を持つ根茎性ベゴニアを指すことが多く、レックスベゴニアはベゴニア・レックスから作られた園芸種とされますが、根茎性ベゴニアの中に含まれる系統とされます。 他に茎が直立する木立性ベゴニアなどにも葉の美しい種類があります。現在はいろいろなベゴニアとの交配が進んで中間的な形質を持つ品種もあり、系統分けするのが難しくなっています。 家庭でも越冬は難しくなく、明るい日陰での栽培が適しているので、室内で育てるのに適した観葉植物と言えます。日本にもベゴニア協会があり、熱心な愛好者が観葉ベゴニアを栽培しています。入手できる品種も幅広くあるので、コレクションするのも楽しいでしょう。 観葉ベゴニア(根茎性ベゴニア)の特徴・性質 Bill Roque/Shutterstock.com 園芸分類:観葉植物開花時期:3~9月草丈:10~100cm耐寒性:弱い耐暑性:やや弱い花色:白、ピンク、黄色、オレンジ、複色 葉には卵形、心臓状、掌状葉などさまざまな形があり、渦巻き葉などのユニークな品種もあります。葉の色や模様もバリエーションが豊富で、多色の斑入り葉や派手な網目模様、渋いブラックリーフや妖艶な赤紫の葉、ベルベットの質感のある葉などがあります。レックスベゴニアにはメタリックな光沢のある葉が多く、非常にユニークです。 根茎性ベゴニアは、根茎が地面を這うように伸びる種類が多いです。他にも根茎が斜め、または直立したり、地中で伸びるものなどがあります。あまり目立ちませんが花も開花し、素朴な美しさがあります。 熱帯の森林の下層に自生する植物なので、直射日光を嫌います。暑さも嫌うので夏は生育を停止しますが、枯れるほど弱ることは少ないです。冬は室内で冬越しさせます。 観葉ベゴニア(根茎性ベゴニア)の仲間・品種 ベゴニア・マソニアナ Begonia masoniana untungsubagyo/Shutterstock.com 中国南東部、 ベトナム原産の根茎性ベゴニアです。葉の十字模様からアイアンクロスベゴニアの名があります。開花期は主に夏頃で、葉は大きく根茎は横によく伸びます。比較的丈夫で育てやすく、根茎性ベゴニアの中では流通量が多いです。 ベゴニア・ブレビリモサ Begonia brevirimosa nnattalli/Shutterstock.com ニューギニア原産の木立性ベゴニアで、強い光沢のある葉にピンクの斑が入ります。ピンクの花は春と秋に咲き、環境の変化を嫌います。 ベゴニア・ボウエレ(ボウエラエ) Begonia bowerae Elena Odareeva/Shutterstock.com メキシコ原産で、観葉ベゴニアの重要な交配親となった種類です。コンパクトにまとまる株姿のニグラマルガ(B. bowerae var. nigramarga )など、いくつかの変種があります。 レックスベゴニア Begonia Rex Cultorum popular business/Shutterstock.com ブータンからミャンマー原産のベゴニア・レックス(Begonia rex)をもとに作られた園芸種がレックスベゴニアとされます。葉色やサイズはさまざまで、数千種ほどの品種があります。太い根茎は横に伸びる品種が多いです。 レックスベゴニア ‘エスカルゴ’ Begonia 'Escargot' Real_life_photo/Shutterstock.com 渦を巻くような葉の形と模様が非常にユニークな人気品種です。 レックスベゴニア ‘メリークリスマス’ Begonia 'Merry Christmas' LM.photo/Shutterstock.com クリスマスを象徴するような色と模様が入った美しい葉が魅力的な品種です。あまり目立ちませんが、薄ピンク色の可愛い花も咲きます。 観葉ベゴニア(根茎性ベゴニア)の栽培12カ月カレンダー 植え替え適期:5~6月肥料:4~6月、9月中旬~10月入手時期:5~12月挿し芽時期:5~6月 観葉ベゴニア(根茎性ベゴニア)の栽培環境 Bozhena Melnyk/Shutterstock.com 適した環境・置き場所 強い直射日光を嫌い、日向では葉焼けします。1年を通して明るい日陰の場所を好むので、室内で育てるのには最適です。 湿度70%ほどの湿度の高い環境を好みます。透明なガラス容器などの中で育てるとよく育ちます。またサーキュレーターと加湿器があると、適度に空気が循環して湿度不足にならず、植物も元気に育つ環境になります。 エアコンやヒーターなど、冷暖房器具の近くやその風の当たる場所は避けてください。異常な温度変化や湿度不足により株が弱ります。 5月から10月は屋外でも育てることができます。ただし用土の過湿は嫌うので、雨と直射日光の当たらない軒下のような場所が適します。 生育温度 人間にとっても快適な温度と同様の15~25℃が生育に適しています。30℃以上の暑さも嫌うので、室内では温度の上昇しやすい窓周辺から離すとよいでしょう。 冬越し 寒さには弱く、関東地方では屋外での越冬はできません。屋外で栽培していた株は、11月までに室内に移動したほうがよいでしょう。レックスベゴニアは0℃近くの温度に耐える品種もありますが、葉を綺麗に保つには最低温度を5℃以上保つようにしてください。 観葉ベゴニア(根茎性ベゴニア)の育て方・日常の手入れ Sara Robledinos/Shutterstock.com 水やり 鉢内の表土が乾いてから必ず水やりしてください。過湿を嫌い、常に用土が湿っていると根腐れします。 冬は乾かし気味に水やりします。最低温度が低い場合は、できるだけ乾かし気味に管理してください。また水やりする時は、暖かい日の午前中に行ってください。 肥料 春の4〜6月に、3要素(チッ素・リン酸・カリウム)が等量の化成肥料か、液体肥料を10日に1回、規定量与えます。夏は暑がるので、肥料は与えません。 9月中旬〜10月に、3要素が等量の液体肥料を10日に1回、規定よりやや薄めの濃度で与えてください。生育の停止する冬は肥料を与えません。 病害虫 葉に白い粉をまぶしたような症状が出たら、それは、うどんこ病です。ベゴニアに発生しやすい病気で、ひどくなると全体に広がって葉が落ちます。梅雨時期など、湿度の高い期間に風通しの悪い場所で蒸れてしまうと発生します。見つけ次第早めに薬剤などで防除してください。あらかじめ殺菌剤を月に1回程度散布して予防するのも一案です。また梅雨時など湿度の高い時期は、葉を濡らさないように水やりするとよいでしょう。 手入れ 枯れ葉などは、こまめに取り去るようにしてください。そのままにしていると、灰色カビ病が発生しやすくなります。 観葉ベゴニア(根茎性ベゴニア)の植え付けと手入れ Kanurism/Shutterstock.com 植え替え 木立性ベゴニアは1~2年に1回、根茎性ベゴニアは根茎が鉢の縁まで伸びたら植え替えます。適期は5~6月です。根茎性ベゴニアは根が深く伸びないので、鉢は浅鉢が適します。浅鉢を使わない場合は、鉢底石を多めに入れて排水よくしてください。 大株にしたい場合は、古い土を3分の1程度くずし、一回り大きな鉢に植え替えます。大きくしたくない場合は、古い土を半分程度落とし、株を分けます。根茎の芽の部分が、鉢の中央になるように植えてください。 用土 水はけと通気性がよく、適度に水持ちのよい用土が適します。赤玉土5,ピートモス3,パーライト2などの用土が適します。 増やし方 Kulbir G/Shutterstock.com 5~6月に、葉柄(葉と茎の間の棒状の部分)ざしや根茎ざし、挿し芽などで増やすことができます。 葉柄ざしは葉柄をつけて葉を切り、バーミキュライトなどの清潔な用土に挿します。大きい葉は、周囲を切って小さくすると挿しやすいです。 根茎ざしは2~3節ごとに切り分け、バーミキュライトなどに軽く埋めます。葉が付いている場合は1枚程度付けたほうがよいですが、葉の周囲を切って小さくしたほうが安定します。 木立ベゴニアは葉芽のある茎を2~3節切って挿し穂とします。水挿しでもよく発根します。 観葉ベゴニア(根茎性ベゴニア)の栽培ポイント Victoria Sharratt/Shutterstock.com 直射日光に当てない 水やりは必ず用土の表面が乾いてから与える 過湿を嫌うが、湿度を好む 夏は肥料を与えず、涼しい場所に置くとよい 屋外では強い日光と雨に注意 以上のポイントに注意すれば、観葉ベゴニアの栽培は難しくありません。葉の美しさやユニークさは、観葉植物の中でも随一の素晴らしさです。葉を挿すだけでも根が出るので、様子を見ているだけでも楽しいでしょう。大株に仕立てて、玄関先の素敵なウェルカムプランツにするのもおすすめです。
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樹木
寒さに強いヤシで冬もリゾート風景を庭に作ろう
ヤシの基本情報 Anthony King Nature/Shutterstock.com ヤシ科の植物は、約180属2,600種が知られており、多くが熱帯・亜熱帯地域に分布します。 葉は掌状のものと、羽状のものがあり、分岐しない幹の先端部につきます。ごく一部の種類に分枝するヤシもあります。幹は単独で生育する種類と、株元近くから多くの幹が群生する種類に分かれます。カナリーヤシの仲間など雌雄異株の種類があり、雄株と雌株があります。 実はナツメヤシやココヤシのように食用にされたり、アブラヤシは油の原料になります。ヤシからは食品のほか、さまざまな製品が作られ、また多くの地域で平和や豊かさなどの象徴とされています。 観葉植物としては、小型のテーブルヤシやフェニックス・ロベレニー(ロベ)のほか、大型になるアレカヤシやココヤシも鉢植えがよく流通しているヤシ。熱帯のイメージを代表する植物ですが、寒さに強く関東地方でも屋外で栽培できる種類があります。 寒さに強いヤシの主な品種 TATIANA GRIAZNEVA/Shutterstock.com テーマパークなどの観光施設やショッピングモールなどの植栽に多く使われているように、寒さに強い種類は造園用としても人気があります。関東地方以西で地植えで越冬できる種類を6種、特徴と育て方とともにご紹介します。 カナリーヤシ Nick Pecker/Shutterstock.com 学名 Phoenix canariensis和名 カナリーヤシ英名 Canary Island date palm属名 ナツメヤシ属(フェニックス属)原産 カナリア諸島 高さ20mになる大型のヤシで、葉も大きく広がり、雄大な姿が魅力です。明るい日陰でも育ち、乾燥や過湿、あらゆる土壌に耐えるので、世界でも多く植えられています。 カナリーヤシの仲間は雌雄異株です。セネガルヤシ(P. reclinata)やナツメヤシ(P. dactylifera)も、造園用のヤシとして植えることができます。 家庭ではかなり広い庭がないと地植えできませんが、小株を鉢植えで育てることができます。 最低温度の目安はマイナス10℃です。関東地方でも多くの地域で植栽可能です。 育て方 Beekeepx/Shutterstock.com 日当たりと排水のよい場所を好みます。環境適応性が高いので、明るい日陰でも育ちます。小株は日向でも葉焼けしにくいです。 冬に根を切ると病気で枯れることがあります。地植えする場合は、花壇の近くなどには植えないほうがよいでしょう。 ヤタイヤシ(ココスヤシ) Alexander Denisenko/Shutterstock.com 学名 Butia和名 ヤタイヤシ英名 Yatay palm、Jelly palm属名 ブティア属原産 アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ 名前や分類に混乱が多いヤシです。ココスヤシの名でよく流通しますが、名前は以前にココス属に分類されていたことに由来します。よく似た同じ仲間のブラジルヤシ(Butia capitata)は現在の分類では誤称で、オドラタ(B. odorata)とされます。寒さに強いオドラタは変異が多く、国内でココスヤシ、またはヤタイヤシとされる種類はオドラタの可能性があります。 生育は遅く、樹高6mくらいの中型のヤシです。葉色は青緑色で、株によっては白みがかったような葉色で幅があります。古い葉柄は硬く、いつまでも残ります。 雌雄同株で、黄色からオレンジ色の実は芳香があり甘く、食用になります。ブラジルなどの原産地ではジュースやリキュール、アイスクリームなどに加工されます。 最低温度の目安はマイナス10℃です。関東地方でも多くの地域で植栽可能です。高温多湿を嫌い、沖縄などでの植栽には向きません。 育て方 Dinesh tulsiyahi/Shutterstock.com 日向から半日陰の排水のよい場所が適します。広い場所が確保できるならば、地植えしてもよいでしょう。大株でも移植が可能で、その場合、ユンボなどで掘り上げます。 小株は日向から明るい日陰に置くことができます。乾燥や直射日光に強く、初心者でも育てやすいです。 ワシントンヤシ 学名 Washingtonia filifera和名 ワシントンヤシ別名 オキナヤシ(翁椰子)、シラガヤシ(白髪椰子)英名 California fan palm属名 ワシントンヤシ属原産 カリフォルニア州、アリゾナ州、メキシコ北西部 カリフォルニアの乾燥地などに自生し、樹高30mまで生育することがある大型のヤシです。雄大な樹姿で性質が強く、世界の熱帯から温帯地域で広く植栽されます。国内でも道路沿いなどに列植され、観光名所となっています。雌雄同株で、実は原産地では食用とされました。 最低温度の目安は、マイナス10℃です。水はけが悪いと、耐寒性が弱くなります。 育て方 Pryimachuk Mariana/Shutterstock.com 日当たりと水はけのよい場所を好みます。半日陰から明るい日陰でも育ちます。小株は強い直射日光下で葉焼けしにくく、よく育ちます。 乾燥に比較的強いですが、用土の表面が乾いたら水やりしたほうがよく育ちます。 ビロウ Mauro Rodrigues/Shutterstock.com 学名 Livistona chinensis和名 ビロウ英名 Chinese fan palm属名 ビロウ属原産 日本南部、中国、台湾 海岸近くの地域に自生し、樹高15mまで大きくなります。掌状の葉が大きく広がり、先端部は細かく裂けて垂れ下がります。雌雄異株で、雄株と雌株があります。 沖縄では葉が実用品に加工されたり、若芽が食用されています。 最低温度の目安は、マイナス8℃~マイナス10℃です。成木は葉が傷んでも復活しやすいので、さらに低い温度に耐える可能性があります。 育て方 kaiwut niponkaew/Shutterstock.com 日当たりのよい場所を好みます。地植えすると長い主根を伸ばし、乾燥にも強いです。 小さい株を鉢植えで育てる場合は半日陰に置き、水を十分与えるようにしてください。株が小さい間は夏の直射日光で葉焼けすることがあり、水を多く与えることで成長が早くなります。 チャボトウジュロ Luziana5588/Shutterstock.com 学名 Chamaerops humilis和名 チャボトウジュロ(矮鶏唐棕櫚)英名 European fan palm属名 チャボトウジュロ属原産 地中海沿岸 高さ4mほどの小型のヤシで、雌雄異株です。荒涼とした岩場などに自生します。大きくならないので庭植えに最適です。トウジュロに似ていますが葉柄にトゲがあり、幹が複数集まって株立ちになります。 最低温度の目安は、マイナス12℃~マイナス15℃です。最も寒さ強いヤシの一つとされ、世界で広く植栽に使われています。 育て方 phM2019/Shutterstock.com 日向から半日陰の、水はけのよい場所が適します。夏の暑さや乾燥に非常に強いです。排水の悪い場所を嫌い、水のたまりやすい場所では根腐れします。小型で成長が遅いので、鉢植えに最適です。 シュロ Alexander Denisenko/Shutterstock.com 学名 Trachycarpus fortunei和名 シュロ(棕櫚)別名 ワジュロ(和棕櫚)英名 Chinese windmill palm属名 シュロ属原産 中国、ミャンマー 最低温度の目安はマイナス20℃で、最も寒さに強いヤシといわれます。日本でも東北や北海道の一部の地域で育てることができます。日本の南西部は自生地の可能性がありますが、過去に持ち込まれた株が帰化したものと考えられています。 雌雄異株で樹高10mになり、葉は熊手のような形で先端が垂れ下がります。幹の繊維層が厚くあり、シュロ縄など繊維利用のために古くから栽培されます。 生育は非常に遅く、手間がかかりません。苗は園芸店で流通することは少ないので、庭木などを主に扱う植木販売店か、ネットショップなどで入手するとよいでしょう。 栽培品種に矮性のトウジュロがあります。シュロに比べて葉が小さく、先端は垂れ下がりません。葉軸も短く、庭木としてシュロより観賞価値が高いとされています。 育て方 Samuel Petrovich/Shutterstock.com 肥沃で排水のよい土壌を好み、日向から明るい日陰で育ちます。小株は乾燥を避け、半日陰から明るい日陰で育てたほうがよいです。また小株は強い寒さで傷みやすいので、注意してください。 ヤシの育て方のポイント Liami/Shutterstock.com 幼苗は明るい日陰に置けるので、室内で育てるのもよいでしょう。暑さの心配のない11月から4月は、窓際の日当たりのよい場所で育ててください。夏の窓際の日向は異常な高温になりやすいので避けます。 小株は寒さに強くないので、冬は北風の当たらない場所に置いてください。発芽したばかりの苗は、室内で冬越しさせてください。 小株は屋外の風通しのよい場所でも夏に葉焼けすることがあります。コンクリートの上などに直接鉢を置くのは避け、水切れしても葉焼けします。葉焼けしやすいビロウやシュロは、夏の西日は避けたほうがよいです。 種子を入手した場合は、発芽まで時間がかかることがあります。種まきして半年程度かかることは珍しくなく、1年ほどかけて発芽することがあります。 ヤシの栽培に挑戦してみよう Dusan UHRIN/Shutterstock.com 耐寒性の強いヤシは、造園業界などで人気があります。大きく育って持て余した株は、造園業者に相談すれば買い取ってもらえる可能性が高いです。 豊かさの象徴であるヤシの鉢植えを庭やベランダなどに置くと、リゾートのような明るい雰囲気になることでしょう。意外と手間もかからないのも魅力的です。初心者でも育てやすいので、苗を入手して気軽に栽培に挑戦してみてください。
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観葉・インドアグリーン
アボカドを自宅で収穫! 短期収穫の裏技&実をならせる育て方
アボカドとは Krasula/Shutterstock.com 植物名:アボカド学名:Persea americana英名:avocado 、alligator pear和名:ワニナシ科名:クスノキ科属名:ワニナシ属原産地:中央アメリカ形態:常緑高木 脂質を多く含むことから「森のバター」という愛称でも呼ばれるアボカド。ビタミンやミネラルが豊富に含まれており、栄養価が最も高い果物とされます。美容効果も高く、高カロリーでも適量ならダイエットにもよいことから、女性からも非常に好まれているようです。 アボカドは、バナナやパイナップルの次に最も多く輸入される熱帯果実の一つ。日本で流通するアボカドの果実は、メキシコ産の「ハス」という品種がほとんどです。近年はペルーからの輸入も増え、2割程度を占めています。 anarociogf/Shutterstock.com 国産のアボカドは和歌山県や愛媛県、宮崎県で生産されています。出荷量が非常に増えていますが、全体に占める割合はまだごくわずかです。ただし国産のアボカドが高値で売れたりしているので、今後さらなる普及が見込まれています。 アボカドは高木に育ちますが、根は地表付近に浅く伸び、台風などの強風で倒れやすいです。また根は酸素不足になると枯れやすいです。風当たりの強い平坦地に植えると、大きく育って実を付ける頃に突然枯れてしまうことも珍しくありません。 葉は大きくたくさん付き、多くの水分を必要とします。特に梅雨明け後の夏の高温乾燥期に水不足を起こしやすいです。アボカドを地植えで育てる場合は、適地に植えることが非常に重要で、灌水設備があるのが望ましいです。 鉢での栽培のほうが排水や樹勢を制御しやすいですが、灌水設備の必要性が高いです。 アボカドの栽培12カ月カレンダー 開花時期:5〜6月収穫時期:11〜1月植え付け・植え替え:3月下旬〜4月、10月頃肥料:3月下旬〜4月、10月頃種まき:5月頃 アボカドの生育サイクル 秋遅くから初冬に花芽が分化し、冬に花芽を形成していきます。4月に温度が上がっていくにつれて花芽が成長し、5~6月に開花します。開花期頃から7月くらいまで新しい枝が伸びてきますが、新しい枝の成長が盛んな場合、結実した果実が落果しやすくなります。8~9月に果実がよく肥大しますが、乾燥させるとうまく肥大しません。収穫期は11月から1月です。 アボカドの受粉と品種 Michaela Warthen/Shutterstock.com アボカドは、同じ花でも午前と午後の活動で性別が変わり、2回開花します。アボカドの品種は開花習性によって、A・B2つのグループに分けられています。 【Aタイプ】 午前が雌で、午後が雄の活動をするタイプ メキシコーラ、メキシコーラグランデ、スチュワート、ウィンターメキシカン、ハス(寒さに強くない) 【Bタイプ】 午前が雄で、午後が雌の活動をするタイプ ベーコン、フェルテ、ズタノ 受粉させるには、AとBの2つの異なるタイプの品種を2株用意する必要があります。 寒さに強い品種を選ぶと暖地では路地栽培でき、鉢植えでも越冬が容易になります。上記のハス以外の品種は、寒さに強くマイナス4℃~マイナス6℃程度までの低温に耐えます。 アボカドの開花・結実までの期間 Vitalie B/Shutterstock.com 接ぎ木苗は高さが1m以内と大きくない株でも、購入してすぐに開花しやすいです。接ぎ木苗を購入して育てれば、最も早く確実に実がなります。 一方、種子から育てた実生苗は、開花させるのがまず第一の問題です。実生苗は、ある程度広いスペースで大きく育てないと開花しにくいです。温室等で加温すれば、実生からでも5~6年で結実させることは可能です。ただし親株とは形質が異なる果実になります。 関東地方南部や都心部など条件のよい場所では屋外で越冬しますが、開花まで10年以上かかることが多いでしょう。さらに結実させるには、受粉樹も必要です。 大きな木になり多くの花を咲かせるようになると、1本でも結実するようになります。1本の木の中でも開花習性に時差などが生じるので、花が多く咲くと結実する可能性が高くなります。 アボカドの鉢植え栽培 matunka/Shutterstock.com 最小限の栽培で少しの果実を収穫したい場合は、接ぎ木苗を2本用意して最終的に10号鉢程度の大きさで栽培してください。 多く収穫したい場合は、直径50cm、60ℓくらいの容量の鉢を使い、広いスペースが必要です。実生で果実を収穫したい場合も、同様の大きさの鉢を使って大きく育てます。水やりの労力が多くかかるので、自動灌水装置の設置をおすすめします。 アボカドの実生株を早く省スペースで開花・結実させる裏技 MINTED VasitChaya/Shutterstock.com 比較的入手容易な品種「ハス」の種子だけで開花結実させます。 まず5月に「ハス」の種子を播いて(土に埋めて)、実生苗を多く作ります。鉛筆程度の太さまで育った苗を台木として、同じ「ハス」の実生の枝を接ぎ木します。6~7月が接ぎ木の適期ですが、やや難しいので多くの苗を作ったほうがよいでしょう。 接ぎ木が成功すれば、大きく育てなくても早く開花します。同様の開花株を複数育てると、結実するようになります。ただしハスは寒さにあまり強くない品種なので、冬はビニールハウス内などで栽培するとよいでしょう。 違う品種の受粉樹を用意しなくても結実するのは、実生苗のため開花習性に変異が生じやすいことが考えられます。 アボカドの剪定・仕立て方 Alexandre Laprise/Shutterstock.com 全く剪定しないとあまり分枝しないことも多く、急速に背が高くなります。地植えした場合は、どんどん成長して2階建ての家を越える高さになってしまいます。 実生苗は、30cmくらい伸びたら枝先を切る摘心を行ってください。接ぎ木苗も購入したら直立した枝の摘心を行ってください。上方向に伸びる枝の摘心を繰り返すことで樹高を抑え、コンパクトな樹形にすることができます。 結実している場合、梅雨明け頃から伸びる新しい枝は、早めに摘心してください。そのままにすると栄養を取られ、果実が落ちる原因になります。 アボカドに適した環境・置き場所 Doikanoy/Shutterstock.com 鉢植えの置き場所 鉢植えは、日当たりがよく風が強く当たらない場所が適します。室内で冬越しさせた鉢植えは、4月下旬から11月までは、屋外の日向に置いてください。 地植えに適した場所 Theeraya Nanta/Shutterstock.com 根が酸素不足に弱いので、水没しない場所を選ぶことが重要です。10年育てて実を付け始めた株が、例年にない台風で1晩水没しただけで枯れた例などがあります。斜面や高台のような場所など、確実に水没しない場所に植えるようにしてください。 南面のゆるやかな傾斜地が理想的です。ただし傾斜地の上のほうは乾燥しやすく、水やりが必要になりやすいので注意してください。また強風や塩害に弱いので、周囲に防風林があるなど風当たりの弱い場所が適します。 木が大きくなってくると夏に乾燥しやすいので、灌水設備のある場所が望ましいです。 屋外で栽培できる地域 関東地方南部の海沿いの地域や都心部が、アボカドが屋外栽培できる北限とされます。ただし冬に花芽が枯死する場合もあるため、結実が安定しないことが多いです。温室で無加温栽培できるので、温室内の栽培のほうが結実させやすいでしょう。 アボカドの育て方・日常の手入れ Seplin1989/Shutterstock.com 水やり 春と秋は鉢土の表面が乾いたら水やりしますが、夏は毎日水やりしてください。また葉が多く茂った鉢植えは乾きやすく、より多くの水やりが必要になります。夏は1日2回の水やりが必要な場合も多いです。 受け皿に水を貯めるのは避けてください。根が酸素不足になって根が傷み、突然枯れる可能性が高くなります。 肥料 鉢植えは4月から10月に、3要素が等量の緩効性化成肥料などを規定量与えてください。 地植えした場合は、4月と10月に施肥してください。実が付くようになったら、7月にも肥料を与えてください。 植え替え 大きく育てるには、毎年春に一回りから二回り大きな鉢に植え替えてください。根が酸素不足に弱いので、急に大きな鉢に植え替えると生育が衰えやすいです。 用土は特に選ばないので、草花用の一般的な培養土で大丈夫です。水はけが悪い場合は、パーライトを1~3割足すとよいでしょう。 病害虫 生産地では病害虫は重要な問題ですが、日本では目立つ病害虫がありません。無農薬で栽培しやすいです。 温室栽培では害虫類の被害が発生します。カイガラムシやコナジラミ等の発生に注意してください。 冬越し 室内の日当たりのよい窓際のような場所に置いてください。室内に置けば、比較的容易に越冬します。 アボカドが屋外で越冬できる海沿いの暖かい地域や都心部でも、種まきから3年くらいまでの幼い株は屋外の冬の寒さで枯れやすいので、室内で冬越しさせたほうがよいでしょう。 アボカドの実をならせるポイント anarociogf/Shutterstock.com 異なる開花タイプの接ぎ木苗を2株用意する 根が確実に水没しないようにする 夏は水切れしやすい 摘心を繰り返して樹高を抑える 地植えは適地の選定が非常に重要 消費量が多く栄養価が高いアボカドは、今後日本での栽培が盛んになることが見込まれます。国内で生産された高品質なアボカドは、多くのアボカドファンが待望しています。アボカドを家庭で育てて実をならせるのも、やりがいのある挑戦になることでしょう。ぜひアボカドを育てて、樹上で実らせた美味しい果実を味わってください。
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観葉・インドアグリーン
ポインセチアの育て方 クリスマスシーズンが終わっても枯らさない栽培法
ポインセチアの基本情報 Yuliasis/Shutterstock.com 植物名:ポインセチア学名:Euphorbia pulcherrima英名:Poinsettia、Christmas Flower和名:ショウジョウボク(猩々木)科名:トウダイグサ科属名:ユーフォルビア属原産:メキシコ、グアテマラ形態:常緑性低木 ポインセチアは、クリスマスを演出する鉢花としても有名で、世界中で広く親しまれています。購入したばかりの鉢植えは茎が柔らかく草花のように見えますが、本来は樹高3~4mまで成長する低木です。 花のように見えるのは葉に由来する苞で、本来の花は花弁がなく、小さく目立ちません。 苞の色は最も一般的な赤色の他、品種改良によりピンクや白、クリーム色、黄色、オレンジなどが作られています。また複色や八重咲きのように見える品種があり、バリエーションが豊富です。 ポインセチアの特徴・性質 ioanna_alexa/Shutterstock.com 園芸分類:鉢花、観葉植物樹高:10~60cm耐寒性:弱い耐暑性:強い 改良された園芸品種に比較すると、原種は葉が細長いです。また、葉は柔らかく濃い緑色で、葉脈がやや目立ちます。 伸びたばかりの柔らかい枝は寒さに弱いですが、木質化すると丈夫になり、耐寒性も強くなります。また株が大きくなると、地下部や太く木質化した枝はマイナス4℃まで耐えます。宮崎県ではかつて地植えのポインセチアが多く見られる観光スポットがありました。 個性的な開花習性があるポインセチア Kwanbenz/Shutterstock.com 短日性で、昼の長さが12時間以下になる日が40~50日間続くと花芽を付けます。自然状態では10月下旬頃から花芽分化がはじまり、12月のクリスマスの頃に苞が美しく色づきます。ただし、夜間も明るい場所に置いていると花芽が分化しないので注意してください。 また短日処理により栽培された開花株は、10月頃から園芸店などに並び始めます。 ポインセチアの主な品種 ウインターローズ Amy Lutz/Shutterstock.com 苞がカールして八重咲きのバラのように見える、ユニークで美しい品種のシリーズです。赤色のほか、ピンクや白、ピンクと白の2色咲きなどもあります。 プリンセチア Khairil Azhar Junos/Shutterstock.com メキシコ南西部原産のコルナストラ(Euphorbia cornastra)との種間交配によって作られた品種のシリーズです。暑さ寒さにより強く丈夫で、育てやすいです。葉はやや細く、枝はしなやかで折れにくいです。豪華な八重咲きや斑入りなど、品種がバリエーション豊富なのも魅力的です。 ‘アイスパンチ’ Edita Medeina/Shutterstock.com 赤い苞に抜けるように白色が入る複色の人気品種です。暑さにやや弱く、夏の剪定は控えてください。 ポインセチアの栽培12カ月カレンダー 入手時期:10~12月植え替え適期:5~6月肥料:5~10月挿し木:5~6月 ポインセチアの栽培環境 Matyas Rehak/Shutterstock.com 適した環境・置き場所 日当たりのよい場所を好みます。日照不足になると草姿が乱れ、花付きも悪くなります。春から秋は、屋外の日向で育てるのが理想です。 株が小さい時は、夏の強い直射日光は避けたほうがよいでしょう。午前中だけ日光が当たる場所か、遮光ネットなどを利用して30~50%くらいの遮光下に置きます。 生育適温 18~21℃がポインセチアにとって最も快適な温度です。夏は用土が乾燥した状態なら暑さに耐えますが、過湿にすると根腐れします。ただし株が小さなうちは乾燥にも強くないので注意してください。 冬越し 購入したばかりの鉢植えは特に寒さに弱いので、10℃以上を保つようにしてください。茎が木質化した株は、5℃以上を保てば越冬します。また大きく育った株は0℃付近の低温で地上部が枯れても、来春に株元付近から新芽が出てきます。 ポインセチアの入手 Pixel-Shot/Shutterstock.com 株を選ぶポイント 下葉が枯れているものや株元がグラグラする株は避ける 葉にシミがあったり、縁が枯れている株は避ける 苞が黒ずんでいる株は観賞期間の終わりが近づいている 葉は硬くて張りがある 葉が多く、葉の大きさが揃っている 購入後の管理 日当たりのよい室内に置いてください。日陰に置くと株が弱って観賞期間が短くなります。また暖房器具の近くや風が当たる場所は避けてください。 購入したばかりの苞が色づいている株は乾燥に弱いです。鉢土の表面が乾いたら水やりしますが、完全に乾くと傷みます。適切なタイミングで水やりするために、観賞期間中は特にこまめに土の状態をチェックしてください。 株が傷んで葉が落葉した場合、茎がしっかりしていれば復活する可能性は高いです。室内の暖房の入る部屋に置き、乾かし気味に管理してください。 ポインセチアの育て方・日常の手入れ Maya Kruchankova/Shutterstock.com 水やり 5~10月は、鉢土の表面が乾いたら水やりしてください。乾燥には比較的強いですが、過湿には弱いです。常に用土を湿らせていると根腐れするので注意してください。 花後の2~3月は生育が止まるので、特に水を控えて管理します。 肥料 5~10月に、3要素が等量の緩効性化成肥料などを規定量与えてください。 病害虫 冬などに多湿にすると、灰色カビ病が発生しやすいです。水やりする際は、株に水をかけないようにしてください。 風通しの悪い室内では、オンシツコナジラミが発生することがあります。発生すると薬剤が効きにくく、防除が厄介です。あらかじめベストガードやアドマイヤーなどの粒剤を定期的に鉢土にまいて、予防に努めるとよいでしょう。また屋外の風通しのよい場所で育てるのがお勧めです。 ポインセチアの植え付けと手入れ pundapanda/Shutterstock.com 植替えと切り戻し 1~2年に1回、5~6月に植え替えと切り戻しを行ってください。 1~2回り大きな鉢に植え替える場合は、古い土を軽く落としてから新しい鉢に植え替えます。同時に間延びした枝を1/3程度残して切り戻すとよいでしょう。 大きくしたくない場合は、全体の枝を半分程度まで切り戻してください。古い土も半分から1/3程度落とし、同じサイズの鉢に植え替えます。 用土 清潔で水はけのよい用土が適します。市販の観葉植物用の培養土を利用してもよいでしょう。または赤玉土5、ピートモス3、パーライト2などを配合した用土を使います。 剪定 枝数が少ない場合は、7~8月まで枝先を切ってこんもりと茂るように仕立てます。大きくしたくない場合は、春に全体を半分程度までバッサリ切ってください。状態によっては葉が無い場合もありますが、大丈夫です。 また支柱を立てて枝を伸ばし、スタンダード仕立てにするのもおすすめです。主となる枝の途中から出る枝は切り、先端部分だけ茂らせるように仕立てます。また、株元と先端部分だけ茂らせる仕立て方もおすすめです。 ポインセチアの増やし方 lorenza62/Shutterstock.com 5~6月に挿し木で増やすことができます。枝を10~12cmほど切り、上の葉を2~3枚残して残りの葉を落とします。切り口から白い乳液がでるので、固まらないようによく水洗いしてから挿します。 パーライトとバーミキュライトを等分ずつ配合した用土や赤玉土小粒などの清潔な用土に挿し、風の当たらない明るい日陰に置きます。 水やりは挿し木後、1週間くらいは乾かさないようにしますが、その後は表土が乾いてから水やりしてください。水分が多すぎると挿し穂が腐りやすくなります。 1カ月くらいで発根するので、3号程度の鉢に1株ずつ鉢上げしてください。 ポインセチアの栽培ポイント Amy Lutz/Shutterstock.com 購入した鉢植えは10℃以上を保つ 花後は乾燥気味に 日向で育てる 夏は小~中株は遮光するとよい ポインセチアは、家庭でも十分育てられる低木です。大株に育つと見応え抜群で自慢の一株になります。茎が木質化すると丈夫になり、観賞できる期間が長くなります。ポインセチアはクリスマスだけの植物ではありません。冬の間ずっと楽しめるので、購入した株はぜひ枯らさずに大きく育ててみてください。
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【プロが解説】寒さに強いトロピカルプランツ8種 越冬の成功率アップのコツもご紹介!
トロピカルプランツを屋外で越冬させるには? TATIANA GRIAZNEVA/Shutterstock.com 熱帯原産の植物でも、寒さに強いものがあります。そのような種類を選べば、冬に室内へ移動しなくても屋外で越冬させることが可能です。寒さに強いとはいえ熱帯植物が屋外でも越冬できる第1の条件は、霜が降りにくい地域であること。また霜が少し降りる地域であっても、条件のよい場所を選び、防寒対策をすれば越冬できる可能性が高まります。 特に建物が密集している地域では、近年の温暖化の影響もあって、意外な場所で熱帯植物が越冬するケースが増えてきました。例えば関東地方では、南部の海沿いの地域や都心部などは屋外で越冬させやすく、南向きのマンションの高層階などでも越冬する可能性があります。 冬越しを成功させるポイント 最も重要なポイントは、置き場所や植える場所。建物の北側は、冬の冷たい北風により植物が傷むことが多いので、温度の下がりにくい南側を選びましょう。 また、寒さに強い種類であっても小苗は性質が弱く、屋外では枯れてしまうことが多いので、できるだけ大株を購入しましょう。 株周辺に藁などを厚く敷き詰めたり、不織布を全体にかけるなどの防寒対策も有効で、冬越しの成功率がかなり高まります。これらの冬越し成功のポイントを押さえたうえで、育ててほしいおすすめの種類をご紹介します。 ルリマツリ toxxiiccat/Shutterstock.com 学名 Plumbago auriculata和名 ルリマツリ英名 Cape Leadwort科名 イソマツ科属名 ルリマツリ属(プルンバゴ属)原産 南アフリカ 枝がよく伸びて垂れ下がり、爽やかな青色の花を春から秋まで長期間咲かせます。地植えすると枝葉が茂って横方向にもよく広がります。高い場所に植えると下垂する枝に多くの花を咲かせ、見応えがあります。周囲に広がらないように栽培するには、鉢植えで育てるか、あんどん支柱などに枝を誘引します。 最低温度の目安はマイナス5~マイナス7℃なので、関東でも多くの地域で越冬が可能です。軽い霜が降りる程度なら耐え、地上部が枯れても根は生存して春に芽が出てきます。 育て方 日当たりと水はけのよい場所が適します。半日陰でも花は咲きますが、枝葉が間のびして花付きが悪くなります。 鉢植えは、表土が乾いたら水やりします。枝葉がよく茂っている株は、夏の晴れた日は毎日水やりしてください。地植えの場合は、ほとんど水やりの必要はないでしょう。 肥料は、鉢植えの場合は、5〜10月に3要素が等量の緩効性化成肥料などを十分与えるようにしてください。 地植えの場合は根がよく発達するので、多く与える必要はありません。春の5~6月と、秋の9月の2回与えればよいでしょう。 ニオイバンマツリ tamu1500/Shutterstock.com 学名 Brunfelsia australis和名 ニオイバンマツリ英名 Yesterday-today-and-tomorrow別名 アメリカンンジャスミン科名 ナス科属名 バンマツリ属(ブルンフェルシア属)原産 ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ 紫から白に色変わりする花がユニークで、爽やかな芳香があります。春の満開時には株全体に花をたくさん咲かせ、その後は断続的に長期間花が楽しめます。地植えするとよく茂って背丈を越えるほど大きくなり、見応えがあります。 鉢花として流通してきましたが、寒さに強いことが徐々に知られるようになり、近年は庭木として植えられることが多くなっています。マイナス5℃程度までの耐寒性があり、関東地方以南の霜の降りない地域では屋外で越冬します。関東では、南部の海沿いの地域や都心部などで越冬しているのを確認されています。 育て方 日当たりがよく、湿り気のある土壌を好みます。水が溜まりやすい水はけの悪い場所や、風当たりの強い乾燥しがちな場所は避けてください。 地植えの場合、雨が長期間降らず、土壌が過度に乾燥しているときは水やりしてください。鉢植えは表土が乾いたら水やりしますが、夏の晴天時は毎日与えてください。また乾燥を避けるため、夏は西日の当たらない半日陰で管理したほうがよいでしょう。 花をよく咲かせるには、5〜10月の生育期間は肥料を十分与えるようにしてください。 エンジェルウィングジャスミン Cheryl Ann Meola/Shutterstock.com 学名 Jasminum laurifolium (Jasminum nitidum)和名 オオシロソケイ(大白素馨)英名 Angelwing Jasmine科名 モクセイ科属名 ソケイ属(ジャスミナム属)原産 ヒマラヤ、ネパール、インド、バングラデシュ、タイ、ミャンマー、中国 香りのよい花を咲かせるジャスミンの仲間は、多くの種類が園芸植物として育てられます。よく流通するハゴロモジャスミン(Jasminum polyanthum)のほか、エンジェルウィングジャスミンも寒さに強く、霜の降りにくい暖地では屋外で越冬します。 ヒマラヤから中国南部の広い地域が原産で、春から秋まで長期間花を咲かせます。繊細な美しさの白い花は、光沢のある濃い緑の葉との対比も鮮やかで美しいです。 最低温度の目安はマイナス5~マイナス7℃です。関東では南部の海沿いの地域や、都心部などの屋外でよく越冬しています。 ホワイトプリンセスの流通名で出回るソケイ(J. officinale)も開花期間が長く、同様に育てることができます。 育て方 日なたから半日陰で育てます。日なたではコンパクトな低木状に育ちます。半日陰ではつる性の性質が強くなり、6m程度まで枝がよく伸びます。 鉢植えは表土が乾いてから水やりしますが、夏の晴天時は毎日与えてください。地植えの場合は、夏に土壌が過度に乾燥したら水やりしてください。 花をよく咲かせるには、5~10月の生育期間はリン酸が多めの肥料を与えるようにしてください。 ハナチョウジ Kalambus/Shutterstock.com 学名 Russelia equisetiformis和名 ハナチョウジ(花丁字)英名 Firecracker Plant科名 オオバコ科属名 ハナチョウジ属(ラッセリア属)原産 メキシコ、グアテマラ 高さ2mほどになる常緑低木で、スギナのような枝葉に筒状の花をたくさん咲かせます。花色は定番の赤のほか、薄ピンクや白などがあります。四季咲き性で、生育期間の春から秋まで長期間花を咲かせます。暑さや乾燥、病害虫に強く、丈夫で育てやすいです。枝葉がよく茂って垂れ下がるので、吊り鉢にしても見応えがあります。 冬に乾燥気味に保てばマイナス5℃程度までの低温に耐え、地上部が枯れ込んでも春に芽が出てきます。 育て方 日当たりのよい場所を好みますが、半日陰でも開花します。 水やりは、鉢植えの場合は表土が乾いてから行います。夏に枝葉がよく茂っている鉢植えは、晴天時は毎日水やりしてください。地植えの場合は、根付けばほぼ水やりの必要はありません。土壌が過度に乾燥したら水やりしてください。 肥料は鉢植えの場合は、5~10月に、3要素が等量、またはリン酸が多めの緩効性化成肥料などを規定量与えます。地植えの場合は、5~6月と、9月の2回与えればよいでしょう。 ハナセンナ(アンデスの乙女) tamu1500/Shutterstock.com 学名 Senna corymbosa和名 ハナセンナ(花旃那)英名 Argentine senna科名 マメ科属名 センナ属(カッシア属)原産 アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイ 樹高2~3mになる低木です。アンデスの乙女という流通名で知られ、秋に黄色の花をたくさん咲かせます。大きく育たなくても花はよく咲くので、鉢植えの開花株が一般に出回ります。羽状の濃い緑色の葉は、夜間に閉じる性質があります。日光によく当てて育てれば、病害虫の被害もほとんどありません。地植えすると、放置気味でもよく育ちます。ただし枝葉が茂るので、年に1回以上は剪定するようにしてください。 最低温度の目安はマイナス5~マイナス8℃です。軽い霜が降りても耐えます。 同じ仲間のコバノセンナ(Senna pendula)も寒さに強く、同様に育てることができます。 育て方 日当たりと水はけのよい場所で育てます。土壌は比較的選びません。 鉢植えは、表土が乾いたら水やりします。地植えの場合は、ほぼ水やりしなくてもよいでしょう。 また、地植えの場合は肥料を施さなくてもよく育ちます。マメ科の植物は、根の共生菌により空気中のチッ素を利用しています。油かすなどのチッ素肥料を与えると、かえって花付きが悪くなって軟弱に育つので注意してください。鉢植えは、リン酸が多い骨粉などの肥料を春の5~6月に与えればよいでしょう。 大きくなりすぎたら、春の4月頃に50cmくらいの高さで切り戻してコンパクトに調整することも可能です。 コエビソウ Fabrizio Guarisco/Shutterstock.com 学名 Justicia brandegeeana和名 コエビソウ(小海老草)英名 Shrimp Plant科名 キツネノマゴ科属名 キツネノマゴ属原産 メキシコから中央アメリカ 連続開花性に優れる多年草で、重なりあった苞がエビのように見えるところから「小海老草」という名前がつきました。日当たりのよい場所ではよく分枝して、ブッシュ状の草姿になります。日照が不足気味の場所では枝がよく伸びて1m以上の高さになり、壁やほかの植物などに寄りかかるように生育します。深刻な病害虫もなく、丈夫で育てやすいです。花壇に植えてもよく、ユニークな姿で人目を引きます。 マイナス5℃程度までの低温に耐えます。室内で冬越しさせると、暖かい部屋では花が咲くことがあります。 近年は流通量が少なくなっていますが、長期間花が楽しめて育てやすいので、見直したいトロピカルプランツです。 育て方 日なた~半日陰の肥沃で湿り気のある土壌を好みます。乾燥を嫌うので、風当たりの強い場所は避けてください。明るい日陰でも花が咲きますが、あんどん支柱など支えが必要です。鉢植えは、夏は西日の当たらない半日陰に移動したほうがよいでしょう。 鉢植えの水やりは、春と秋は表土が乾いてから、夏は毎日与えます。 長期間花が咲くので、鉢植えでは肥料を十分与えるようにしてください。5~10月には、リン酸が多めの緩効性化成肥料などを規定量与えます。地植えした場合は5月と7月、9月に、様子を見ながら2~3回与えてください。 ランタナ Nuk2013/Shutterstock.com 学名 Lantana和名 七変化(しちへんげ:ランタナ・カマラ)英名 Common Lantana科名 クマツヅラ科属名 ランタナ属原産 熱帯アメリカ ランタナの仲間で栽培されているのは、低木状になるランタナ・カマラ(Lantana camara)と、匍匐(ほふく)性のコバノランタナ(L.montevidensis)、両種の交配種などです。また、一般にランタナと呼ばれているのは、ランタナ・カマラと交配種です。 これらは連続開花性が強く、暑さに負けずに春から秋まで花が咲き続けます。その丈夫さは、花壇苗の中でも最高レベルです。ただし繁殖力が強いため熱帯~亜熱帯地域では深刻な雑草となっています。種子のできない「ブルーミファイ」シリーズや、交配種の種子ができにくい品種などを植えれば、むやみに繁殖することはないでしょう。 マイナス5℃程度の耐寒性があり、軽い霜が降りるると地上部の大部分が枯れますが、根元付近は生き残ります。 育て方 日なた~半日陰が適します。土壌は比較的選ばず、よく育ちます。 鉢植えの水やりは、春と秋は表土が乾いてから、夏は毎日与えます。地植えは、夏に雨が降らずしおれてきたら水やりしてください。 鉢植えは5~10月に、リン酸が多めの緩効性化成肥料などを規定量与えます。地植えの場合は、5月と9月に与えればよいでしょう。 ピンクバナナ LakedemonPhoto/Shutterstock.com 学名 Musa velutina英名 Pink Banana、 Hairy Banana別名 アケビバナナ、ベルチナバナナ科名 バショウ科属名 バショウ属原産 インド 耐寒性のあるバナナの仲間で、高さは2mほどになります。みずみずしく大きな葉を広げる姿は、花がなくてもトロピカルムードの演出に最適です。ピンク色の花や実はユニークで美しく、多くの人の目を引き付けることでしょう。冬に地上部が枯れても、春には芽を出し、夏から秋にかけて花を咲かせて実を付けます。 果実はタネが非常に多いですが甘く、アケビのように食べることができます。熟すと裂けるので、鳥や虫などに食べられることが多いです。 育て方 日当たりがよく、肥沃で湿り気のある土壌を好みます。ただし雨が降った後などに水がたまるような場所は避けてください。また強風で傷みやすいので、吹きさらしのような風当たりの強い場所は避けてください。 地植えでも土壌が乾燥している場合は、水やりしたほうが早く育ちます。鉢植えは、春は表土が乾いてから、夏から秋は晴天時は毎日与えてください。 生育が早く旺盛なので、5~10月の生育期間は、骨粉入りの油かすや3要素が等量の化成肥料などを十分与えるようにしてください。 鉢植えで育てる場合は、入手したポット苗を6号鉢に植え替え、最終的に10~12号鉢くらいの鉢で育てます。 冬は株の周辺などに藁などを敷いて防寒対策をするとよいでしょう。 越冬するその他のトロピカルプランツ 今回ご紹介した8品種のほかにも、東京に似た気候の地域ならば屋外で越冬できる種類は、以下を参考にしてください。 ウキツリボク/ランタナとコバノランタナ/ミッキーマウスの木/ブーゲンビレア/シコンノボタン/ヤコウボク/エンジェルストランペット/トケイソウ/パッシフロラの園芸品種/ヘディキウム トロピカルプランツを屋外で育てるポイント Hakan Tanak/Shutterstock.com 冬の冷たい北風が当たる場所は避ける 敷き藁などの防寒対策が有効 建物の近くは温度が下がりにくい 大株は越冬しやすい ご紹介した植物は、地植えすれば放任気味でも育ち、花が長期間楽しめるものばかりです。冬越しして大きく育った株は、珍しくもあり、大いに人目を引く美しさです。あまり手間をかけずにトロピカル風のガーデニングを楽しめるので、ぜひ栽培に挑戦してみてください。
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樹木
夏花壇に人気! ランタナの育て方や特徴、種類、花言葉とは?
ランタナの基本情報 Ibenk_88/Shutterstock.com 植物名:ランタナ学名:Lantana camara英名:Lantana和名:七変化(しちへんげ)別名:ランタナ・カマラ科名:クマツヅラ科属名:シチヘンゲ属(ランタナ属)原産地:メキシコ、熱帯アメリカ形態:常緑性低木 ランタナは、クマツヅラ科シチヘンゲ属(ランタナ属)、立ち性~半つる性の常緑性低木。原産地はメキシコから熱帯アメリカにかけての地域で、近縁の種との交配種も含めてランタナといわれます。 日本における歴史としては、江戸時代末期に園芸植物として渡来したことが始まりです。繁殖形態は虫媒花であり、核果(種子)は風雨や鳥などの動物によって遠方に運ばれます。 ランタナの仲間は世界の熱帯から亜熱帯地域に約110種が広く分布します。多くの種類は、アメリカの熱帯から亜熱帯地域が原産地です。花の美しい種類もありますが、日本で一般に流通するのは匍匐性で花や葉が小さいコバノランタナだけです。 熱帯地域原産の植物の中でも、夏の暑さに特に強いのが特徴。真夏でも次から次へと開花し、庭を明るく彩る樹木です。一方で、冬の寒さには強くなく、-3~-5℃以下になる地域では、地植えでの越冬は厳しくなります。寒冷地では鉢栽培にして楽しむのがおすすめ。春先に地植えして開花を楽しみ、晩秋に鉢に植え替えて凍結しない暖かい場所に移動するという具合に、地植えと鉢上げを繰り返して一年を過ごしてもよいでしょう。 ランタナのライフサイクルは、以下の通りです。4月頃から新芽を出して枝葉を広げ、5〜10月まで開花。追肥を繰り返すと樹勢を保って絶えず花を咲かせ続け、長い期間開花を楽しめるのが、ランタナの魅力です。種類や品種によっては花がらを摘まずにそのままにしておくと、深い紺色の実になります。11月頃になると生育が止まるので、切り戻して冬支度をし、翌年に新芽が出るのを待ちます。 冬も温暖な地域では常緑性ですが、日本の厳しい冬の寒さに当たると落葉し、枝も枯れます。ただし、枯れてしまったと判断するのは早計です。軽い霜に当たる程度なら根元付近の幹が生き残り、4~5月の成育期を迎えると、また芽吹いてくることがあります。 ランタナの花や葉の特徴・開花時期 園芸分類:庭木開花時期:5〜10月樹高:30〜200cm耐寒性:やや弱い耐暑性:強い花色:オレンジ、黄色、赤、ピンク、白、複色 ランタナの開花時期は、5〜10月です。真夏に中休みをすることなく、絶え間なく咲き続けてくれます。花色は、オレンジ、黄色、赤、ピンク(赤紫)、白など大変多彩で、複色のものが多いです。品種によっては、花が咲き進むにしたがって黄色からオレンジに変わるもの、クリーム色からピンクに変化するものなどがあります。また、花が咲かない時期も庭を彩ってくれる、斑入り葉をもつ品種もあります。 ランタナの花は一つひとつは小さいのですが、花茎を伸ばした先に集まって、直径2〜3cmの球状になります。次から次へとつぼみを上げてくる多花性で、夏の季節にはたっぷりと咲く姿がガーデンの主役となるでしょう。 ランタナの樹高は30〜200cm。樹高の幅が広い理由は、人の背丈くらいまで高くなる立ち性タイプ、枝が地を這うようによく伸びる匍匐性タイプ、低い位置で比較的まとまって鉢栽培にも向くコンパクトタイプがあるからです。 ランタナの種類や品種によって樹形が異なるので、花壇の後方または前方に使いたいのか、鉢栽培にしたいのかなど、ガーデニングの用途やデザインによって選ぶとよいでしょう。 ランタナの名前の由来や花言葉 Stanley Ford/Shutterstock.com ランタナの名前の由来は、ラテン語で「曲げる」という意味の「lentare」から来ているという説が有力とされていますが、実際は定かではありません。しなるように生育する樹形に由来しているのかもしれませんね。日本では、「七変化」という別名があります。これはランタナ(カマラ種)の花が咲き進むにしたがって、色が変化するさまから名づけられたとされています。 ランタナの花言葉は、「厳格」「確かな計画」「協力」「合意」など。「厳格」「確かな計画」は、半年以上の長い期間にわたって絶え間なく咲き続けるため、堅実さをイメージさせることから。また、「協力」「合意」は、小さい花が集まって、より大きな花として魅せる咲き姿が由来しているようです。 ランタナの種類・品種 JAKKRIT SAELAO/Shutterstock.com ランタナの仲間は約110種あるとされていますが、ガーデニングで主に栽培されているのは、ランタナ・カマラとコバノランタナで、これらを交雑させた園芸品種なども多く出回っています。 ランタナ・カマラ Lantana camara ランタナ・カマラは樹高約2mの低木で、花色が変化していく特性があります。熱帯では、他の樹木などにもたれかかるように生育すると、6mまでの高さになることがあります。野生種に近い種類はトゲが目立ち、群落を形成すると人が容易に入れなくなります。 コバノランタナ Lantana montevidensis Quang nguyen vinh/Shutterstock.com ボリビア、ブラジルからアルゼンチンが原産のコバノランタナは、花や葉がランタナ・カマラより小さく、枝をつるのように伸ばして這うように伸びます。タネはほとんどできません。平坦な場所では地面を低く覆うように生育しますが、枝が壁や樹木などによりかかって上方向に伸びることもあります。花色は紫色と白色があり、カマラのようには変化しません。 ‘コンフェッティ’ Lantana camara ‘Confetti’ ayakka3/Shutterstock.com ピンクとイエローの2色咲きが華やかな、ランタナの園芸品種。立ち性で生育旺盛です。 ‘バリエガタ’ Lantana camara 'Variegata'(=L.camara 'Samantha' ) Gurcharan Singh/Shutterstock.com 葉に明るい黄緑色の斑が入ったカラーリーフが楽しめる、ランタナの園芸品種。樹形はドーム状で低くまとまりやすいです。黄色の花が咲き、タネはほとんどできません。 「スーパーランタナ」シリーズ 1株でこんもりと丸くまとまる樹形で多花性の「スーパーランタナ」シリーズ。ほのかに甘い爽やかな香りが楽しめる白い花弁のスーパーランタナ ムーンホワイトは、2018年のフラワー・オブ・ザ・イヤー最優秀賞に選ばれています。連続開花性に優れますがタネがほとんどできないため、花がら摘みの必要はないでしょう。 「ブルーミファイ」シリーズ 世界初のタネができない品種です。タネに栄養が取られないので、特に夏の連続開花性に優れます。樹形はドーム状で、コンパクトにまとまります。 ランタナに似た花 ヒメイワダレソウ ヒメイワダレソウ(リッピアとも呼ばれます)は、クマツヅラ科イワダレソウ属の外来種で、グラウンドカバープランツとして植栽されることもある多年草。日本では「生態系被害防止外来種リスト」に掲載されているため、栽培の際には適切な管理が必要です。匍匐性の品種やコバノランタナに似ていますが、花が非常に小さく葉もやや小さいです。 クラピア photo/3and garden 沖縄に自生するイワダレソウを品種改良した宿根草で、踏みつけにも耐える丈夫なグラウンドカバープランツとして人気です。ヒメイワダレソウは、タネが飛んで繁茂するのに対し、クラピアはタネをつくらないという特徴をもち、広がる範囲を人がコントロールすることができる環境に配慮した日本生まれの植物としても近年注目されています。よく似たヒメイワダレソウと同じく、花や葉が小さいです。 バーベナ Kabar/Shutterstock.com 種類や品種によって葉の形がかなり違いがありますが、宿根性のバーベナ、花手毬シリーズなどの品種がよく似ています。花手毬は、ランタナにないカラフルな単色の花色があり、茎が木質化せず葉や茎が濃い緑色で柔らかい印象です。 ランタナを植えてはいけないといわれる理由とは? La Su/Shutterstock.com ランタナは、じつのところ自生している熱帯地方では「植えてはいけない」といわれている植物なんです。こんなに可愛いのに、どうして!? 繁茂しすぎてしまう恐れがある 1つ目の理由は、ランタナが自生地では爆発的に繁殖し続けてしまうほど生命力が旺盛だということ。世界の侵略的外来種ワースト100に選ばれており、日本においては、生態系に被害を及ぼす恐れがある外来生物として、環境省が作成する「生態系被害防止外来種リスト」に掲載されており、小笠原や沖縄など、一部地域では野生化していると言われています。 日本でも年々温暖化が進んでいるため、自生地である熱帯地域で繁殖が問題になっているように、注意が必要になってくる可能性があります。 冬に霜が降りにくい関東南部の地域でも、こぼれ種で増えることが多くなっています。増えすぎないように花がら摘みをすると労力がかかり、繁茂しすぎないように剪定を繰り返すと開花数も減ってしまいます。近年はコンパクトで結実しない品種がよく流通するので、こうした品種を育てれば問題ないでしょう。 毒性がある 2つ目の理由は、ランタナのタネには「ランタナン」と呼ばれる毒が含まれていること。食べると、下痢や呼吸困難、最悪の場合は死に至る可能性もあります。幼い子どもがいる家庭では、口にすることのないよう注意しましょう。 トゲがあるので注意 「植えてはいけない」といわれるほどの理由ではないかもしれませんが、こぼれ種で増えたようなランタナには、茎や葉に細かなトゲがある場合があり、素手で触ると痛みを感じる恐れがあります。手入れをする際にはガーデニンググローブを着用するか、一般的に流通しているトゲのない品種を育てるとよいでしょう。 ランタナの栽培12カ月カレンダー 開花時期:5〜10月植え替え適期:5〜9月肥料:5〜10月植え付け時期:4〜10月(梅雨時期と真夏を除く) ランタナの栽培環境 pangcom/Shutterstock.com 日当たり・置き場所 【日当たり/屋外】水はけがよく日当たりのよい場所が最適ですが、半日陰の環境でも生育可能。ただし、日当たりがよいほうが花つきがよく、木も間延びせずにがっしりと締まって旺盛に枝葉を伸ばします。 【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。 【置き場所】ランタナはあまり寒さに強くないため、寒風を避けた霜が降りない場所で育てましょう。関東南部以北や寒冷地では鉢栽培にして楽しむのがおすすめ。冬も温暖な地域では、増え広がりすぎてしまうことがあります。タネがつかない品種を育てるようにしましょう。 耐寒性・耐暑性 夏の暑さに大変強いのが特徴。真夏でも次から次へと開花し、庭を明るく彩る樹木です。一方で、冬の強い寒さには耐えないので、-5℃以下になる地域では、地植えでの越冬は厳しくなります。 ランタナの育て方のポイント 用土 DedovStock/Shutterstock.com 【地植え】 まず、一年を通して日当たり、風通しのよい場所を選びましょう。植え付けの2〜3週間前に、直径、深さともに50cm程度の穴を掘ります。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきましょう。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。 【鉢植え】 草花などに広く使える、一般的な培養土を利用すると手軽です。または、赤玉土小粒7:腐葉土3を混ぜた用土などを使います。 水やり cam3957/Shutterstock.com 【地植え】 植え付け後2~3週間は、表土が乾いたら水やりしてください。乾燥には比較的強いので、根付けばその後水やりしなくても育ちます。ただし真夏に晴天が続いて葉がしおれてきたら、水やりするとよいでしょう。 真夏は昼間に水やりすると水の温度が上がり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。 【鉢植え】 日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりが必要な場合があります。 真夏は昼間に水やりすると水の温度が上がり、株が弱ってしまうので、朝夕の涼しい時間帯に行うことが大切です。冬は生育が止まるので、控えめにして管理します。 肥料 Vaakim/Shutterstock.com 【地植え】 5月と9月の年に2回を目安に、緩効性化成肥料を株周りにまいて土に混ぜ込みます。 【鉢植え】 5〜10月に3要素が等量、またはリン酸が多めの緩効性化成肥料を規定量与えてください。 夏の開花期間中は、液肥に切り替えるのもおすすめです。暑さが厳しい時は化成肥料は濃度が濃くなりやすいので、液体肥料のほうが安全です。開花を促すリン酸を多めに配合した液体肥料を10日に1回を目安に与えると、次々に花を咲かせてくれます。ただし真夏は液体肥料の倍率を通常の半分程度に控えて与えてください。 注意する病害虫 病害虫の心配はほとんどなく、手がかかりません。 ランタナの詳しい育て方 苗の選び方 苗を購入するときは、ヒョロヒョロと徒長したものや病害虫の痕があるもの、葉が黄色くなっているものを避け、葉の色つやのよい苗を選びましょう。また、ポットを触ってみて、根でカチカチになっていないか(根詰まりしていないか)どうかも確認するとよいでしょう。 植え付け J-Amethyst Photography/Shutterstock.com 【地植え】 土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って植え付けます。最後にたっぷりと水を与えます。 【鉢植え】 ポット鉢を入手した場合は5~6号鉢に植替え、最終的に8~10号鉢に植えます。用意した鉢の底穴が1つしかない場合は鉢底ネットを敷き、草花用の培養土を半分くらいまで入れます。 苗をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。 花がら摘み Ketut Mahendri/Shutterstock.com 開花期間中、終わった花がらは、まめに摘み取りましょう。花びらは自然に落ちやすいのですが、タネをつけると株がエネルギーを消耗し、花数が少なくなるので、株の勢いを保って次々と咲かせるためにも一手間かけてください。終わりかけた花や、すでに花びらを散らして綿棒のような状態になったものを、花茎の根元から切り取りましょう。終わった花がらを放置せずに、まめに整理して株周りを清潔に保つことで、病気の発生を予防することにもつながります。 種まき 種まきで増やすことは可能ですが、雑草化するためおすすめしません。また、種子で増やした場合の株はトゲができて花付きが悪く、枝が伸びすぎて扱いにくくなる可能性が高いというデメリットがあります。 剪定・切り戻し RapunzielStock/Shutterstock.com ランタナの剪定適期は、生育期間中の4〜11月です。樹勢が強く旺盛に枝葉を伸ばすので、定期的に切り戻したり、透かしたりして、広がりすぎないように樹形をコントロールすることが大切です。 樹形が乱れてきたら、ドーム状になるように草丈の半分くらいまで切り戻しましょう。すると枝数が増えて再び盛り返し、花数も多くなります。樹形が乱れるごとに切り戻しを繰り返すとよいでしょう。開花が終わったら、再び切り戻して冬越しを。 植え替え Jorge Moro/Shutterstock.com 【地植え】 一度植え付けたら、植え替えは不要です。 【鉢植え】 植え替えの適期は5〜9月です。生育旺盛で根詰まりしやすいので、1〜2年に1回は植え替えます。 植え替えの前には水やりを控えて、鉢内の土を乾燥させておきましょう。鉢から株を取り出し、根鉢を少しずつ崩していきます。不要な根を切り取り、1/3くらいまでを目安に根鉢を小さくしましょう。これ以上大きくしたくない場合は同じ鉢に、もう少し大きくしたい場合は二回りくらい大きな鉢に植え替えます。手順は「植え付け」の項目を参考にしてください。 増やし方(種まき、株分け、挿し木、挿し芽、葉挿し、分球など) Bakusova/Shutterstock.com 挿し木(挿し芽)の適期は5〜9月。春に伸びた若くて勢いのある枝を選んで切り取ります。市販の園芸用の培養土を育苗用トレイなどに入れて、採取した枝葉を挿しておきます。直射日光の当たらない明るい場所で、水切れしないように管理を。発根したら黒ポットなどに植え替えて育成します。大きく育ったら、植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、採取した株のクローンになることです。 種子で増やすのは、前述のようにおすすめしません。 夏越し 鉢植えの場合、真夏は水切れに注意し、晴れた日は毎日水やりしましょう。鉢底から水がよく流れ出るまで、たっぷり水を与えます。小株や根詰まり気味の株、枝葉がよく茂った株などは、朝夕2回の水やりが必要なことが多いです。 地植えの場合は基本的には自然にまかせて問題ありませんが、晴天が続いて乾燥しすぎる場合は、水やりをして補いましょう。 冬越し 冬は落葉し地上部の多くは枯れたような状態になるものの、関東以西では霜が降りない環境で冬越しできる場合があります。不織布などで寒風を避けるカバーをかけたり、落ち葉を被せるなどすると冬越しの成功率は上がります。 寒さの厳しい地域では、霜が降りる前の10月中に鉢上げし、室内で0℃以上を保てば越冬します。鉢上げする際は通常より小さめの鉢を使用し、腐葉土などの有機物を入れずに赤玉土小粒などで植えてください。 カラフルで可憐な花を咲かせるランタナを庭やベランダで育てよう! ninekrai/Shutterstock.com ランタナは寒さには弱い一方で真夏が大好き。旺盛に生育して初夏から秋までたっぷりと花を咲かせる陽気な元気娘です。近年はタネがつかないので花が長く咲き続け、コンパクトにまとまる魅力的な品種が登場しています。地植えだけでなく、鉢植えや寄せ植え、ハンギングリースなどに取り入れてカラフルな彩りを楽しむのもおすすめ。ぜひ庭に迎えて、華やかに咲く姿を堪能してはいかがでしょうか。
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宿根草・多年草
【プロが解説】魅力的なトロピカルフラワー「ジンジャーリリー(ホワイトジンジャー)」の育て方
ジンジャーリリーの基本情報 tamu1500/Shutterstock.com 植物名:ジンジャーリリー学名:Hedychium coronarium英名:Garland Lily別名:ホワイトジンジャー、バタフライジンジャー和名:ハナシュクシャ(花縮砂)科名:ショウガ科属名:ヘディキウム属原産地:熱帯アジア分類:常緑多年草(球根植物) ジンジャーリリーは、ショウガ科ヘディキウム属の常緑多年草。原産地は、熱帯アジアです。ショウガのような株姿で、高さ2mにもなる大型の球根植物です。丈夫で育てやすく、夏~秋に香りのよい白い花を枝先に咲かせます。株全体にショウガのような香りもありますが、根は食用とはされません。 地植えすると植えっぱなしで手間もかからず、毎年開花します。寒さには強いので、関東以西の地域では屋外でも地上部は枯れますが越冬します。また冬に室内の温かい場所で管理すれば一年中常緑で、花期も長くなります。 日本には、江戸時代末期に薬用植物として渡来しました。現在は観賞用に栽培されるほか、切り花にも利用されています。 繁殖力が強く、世界の熱帯地域で広く野生化しています。キューバやニカラグアでは国花とされ、中国では花から香料を取るために商用栽培されています。 ハワイでは多く植えられて親しまれており、香りのよい花は結婚式のレイにも利用されます。またその香りは非常にポピュラーで香料としてよく使われ、知る人ぞ知るハワイを代表する花です。 ジンジャーリリーの仲間 ヘディキウム属はインド、東南アジア、マダガスカルなどに70~80種が分布します。カラフルな花を咲かせる品種が多くあります。 キバナシュクシャ Hedychium gardnerianum LifeCollectionPhotography/Shutterstock.com インド、ネパール原産で高さ2.5mほどになり、カヒリジンジャーの英名があります。茎は太く花序の長さは30~45㎝に達し、この仲間で最も豪華な花を咲かせます。白や赤などの花色があります。 ベニバナシュクシャ Hedychium coccineum Luiz Franco/Shutterstock.com インド、チベット原産で、花色は朱赤やオレンジ、黄などがあります。 ジンジャーリリーに適した環境・植え付け 1NANCY AYUMI KUNIHIRO/Shutterstock.com 地植えする場所、鉢の置き場所は? 肥沃で湿り気の多い土壌を好みます。熱帯では森の中や川沿い、湿地帯などで多く群生します。 日なたから明るい日陰で育てることができますが、乾燥は嫌います。ただし水が溜まりやすい排水の悪い場所は避けてください。 半日陰の湿り気の多い場所に地植えすると、放置気味でも花が咲きよく育ちます。日なたの庭などでは水不足になりやすいですが、水やりすればよく花を咲かせます。明るい日陰でも育ちますが、間のびした株姿になり、花付きも悪くなります。 地植えの植え付け Anshann/Shutterstock.com 春に球根が出回りますので、それを入手して植え付けます。 直径・深さともに40~50cmの穴を掘り、堆肥1㎏に草花用の肥料を1握り半(75g)程度混ぜて埋め戻します。5月以降(最低温度10℃以上が目安)に、球根を10cmの深さで植え付けます。浅く植えると乾燥して生育が悪くなるので注意してください。大きく育つので、株間は80cm程度あけるようにしてください。 鉢植えの植え付け 鉢植えで育てる場合は、6~7号鉢に球根を植え付けてください。夏に根詰まりしたら最終的に10号鉢に植え替えます。 用土 肥沃な土壌を好みます。有機質が多ければ比較的土壌を選びません。草花に広く使える一般的な培養土でよいでしょう。 ジンジャーリリーの育て方・日常の手入れ Jack Hong/Shutterstock.com 水やり 乾燥を嫌います。春は株も小さく温度も低いので、鉢植えの表土が乾いてから与えます。夏から秋にかけては、晴れの日は毎日与えてください。 日なたに地植えした場合は、1週間くらい雨が降らなかったら水やりしてください。 肥料 5~10月に、3要素(N:窒素、P:リン酸、K:カリ)が等量の緩効性化成肥料などを規定量与えてください。 地植えでは骨粉入り油かすなどを2カ月に1回与えるとよく育ちます。 病害虫 発生は少なく、ひどい被害はほとんどありません。 冬越し 地上部は枯れますが、屋外で植えっぱなしにしてもよく越冬します。冬に敷き藁などで霜よけすると、越冬しやすくなります。 ジンジャーリリーの手入れ作業 Ricardo de Paula Ferreira/Shutterstock.com 植え替え 前年度から育てている鉢植えは根の発育が旺盛なので、4~5月に毎年植え替えます。根茎が鉢いっぱいになっている場合が多いので、半分から1/3程度に株分けして同じサイズの鉢に植えてください。株分けしない場合は、2回りほど大きな鉢に植え替えてください。 剪定・手入れ 花が咲き終わり、全体が枯れかかった茎は根元から切ってください。見た目がすっきりとよくなり、日当たりや風通しも改善されます。 増やし方 Anshann/Shutterstock.com 株分けで増やします。春の植え付け前に、芽が2~3個付くように気をつけながら根茎を切り分けます。切り分けたら、2~3日は日陰に置いて断面を乾燥させてから植えましょう。 ジンジャーリリーを育てて熱帯気分を楽しもう Anshann, Phylicia Halcyon/Shutterstock.com ハワイを代表する花、ジンジャーリリー。庭に植えれば放置気味の管理でも毎年花が咲きます。鉢植えも根詰まりに注意すれば容易に育てることができます。美しく香りのよい花を咲かせて、自宅でトロピカルムードを味わってください。
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宿根草・多年草
パイナップルは家庭で育つ! クラウン挿し栽培で果実を収穫
パイナップルの基本情報 asharkyu/Shutterstock.com 植物名:パイナップル学名:Ananas comosus英名:pineapple別名:パインアップル、パインナップル漢名:菠蘿(はら、ポーロ)、鳳梨(ほうり、オンライ、フォンリー)科名:パイナップル科属名:アナナス属原産地:熱帯アメリカ分類:常緑多年草 パイナップルは、パイナップル科アナナス属の常緑多年草。原産地は熱帯アメリカです。熱帯を代表する果実ですが、家庭で育てて結実させるのも難しくありません。果実の上についた冠芽(かんが)、またはクラウンとも呼ばれる葉芽を使えば、早くて2年で結実します。葉が40枚くらい付いたら花芽を付けるとされます。株元付近から出てくる大きな吸芽を植えれば、翌年に結実します。 Tigra517/Shutterstock.com 生育適温は20~30℃とやや高めですが、土壌が乾燥した状態なら一時的にはかなりの低温に耐えます。ただし株がひどくダメージを受けるので、冬は室内の暖かい場所で越冬させましょう。 パイナップルは地上で生育しますが、着生植物の特徴が多くあります。根はあまり発達しないので、台風などの強風で倒れやすいです。また乾燥に強く、やせた土壌でも育ちます。葉の付け根からも水分を吸収するので、肥料を葉面散布すると効果的です。 観葉植物としては温度の適応範囲が広く、乾燥や日照不足にも耐えるので、比較的育てやすいです。葉の先端は鋭いので、気になる人はハサミで切って丸めると安心です。 パイナップルの花 Arthur C.C. Hsieh/Shutterstock.com 小花が多く集まり、互いの境界は癒着して1つの集合体となっています。小花は単為結実して小さな果実(小果)へと変わります。パイナップルの果実は小果が集まった集合果で、下方から上部へと順に熟していきます。そのため果実の下の部分のほうが甘いです。 台湾や沖縄産のスナックパインは、小果を手でちぎって食べることができます。スナック感覚で食べられることが名前の由来です。 パイナップルの仲間 ミニパイン Ananas comosusvar.microstachys (= Ananas nanus ) Akhmad Kusairi el Aksa/Shutterstock.com 花パインの名でも呼ばれる、観賞用のごく小さな果実がなるパイナップルです。切り花の材料としてよく使われますが、鉢植えの流通は少ないです。 ‘バリエガツス’ Ananas comosus ‘Variegatus’ Poetra.RH/Shutterstock.com 葉に斑が入った観賞価値の高い品種ですが、鉢植えはあまり流通していません。果実は美味しく食べることができます。 パイナップルの果実について New Africa/Shutterstock.com 一般に販売されているパイナップルはフィリピン産がほとんどを占めますが、ほかに台湾やインドネシア、コスタリカなどからも輸入されます。 日本でも沖縄の北部や石垣島で栽培が盛んです。最も一般的な品種のスムースカイエンのほか、ピーチパインやゴールドバレルなどの品種が生産されています。 果肉はタンパク質分解酵素のブロメラインを含み、肉を柔らかくする効果が知られています。他に疲労回復に効果があるビタミンB1や、マンガン、カリウムなどのミネラルが多く含まれています。 匂いが強かったり、柔らかいものは早く食べるようにしてください。未熟な果実は、口の中が荒れる場合があるので注意してください。 パイナップルの苗作り「クラウン挿しの方法」 栽培適期は5月から10月です。それ以外の季節は温度不足で根が伸びず失敗しやすいですが、保温に配慮すれば成功しやすくなります。 用意するもの できるだけ綺麗な外観のクラウンを用意してください。芯が抜けているものもよくあるので、注意してください。 鉢は4~5号サイズがよいでしょう。鉢穴が1つの場合は、鉢底ネットも必要です。用土は鹿沼土を使います。 撮影/小川恭弘 クラウンの準備 厚手の手袋をしてクラウンと果実をしっかり持ち、回転させるとクラウンが綺麗に抜けます。熟していないと固いので注意してください。 クラウンの下の部分の葉を2~3周ほど剥がして除去します。小さい根が既に出てきている場合が多いです。 植え付け前の準備として、クラウンの下部の葉を2~3周ほど剥がして除去した様子。撮影/小川恭弘 鉢に植え付け 4~5号の鉢に鹿沼土で植えますが、安定が悪い場合は支柱を立ててください。 作業後は、風の当たらない室内などの明るい日陰で管理してください。新しい葉が伸び始めたら日なたに置きますが、夏は半日陰で管理してください。 水挿し 根が出揃うまでの1~2カ月、水挿しで育てるのもおすすめです。根が次々出てくる様子を観察できます。 置き場は室内の明るい日陰が適します。1~2カ月後に鹿沼土を入れた鉢に、2~3週間風の当たらない明るい日陰に置いてください。室内に置いて乾燥する場合は、葉水を与えると葉の付け根から水分を吸収します。その後は日なたに置きますが、夏は半日陰で管理してください。 秋から冬に水挿し栽培した場合は、日光が当たる窓辺か明るい日陰に置き、最低10℃以上を保つようにしてください。鹿沼土に植えるのは、春になったら行ってください。 撮影/小川恭弘 パイナップルの詳しい育て方 Len sha/Shutterstock.com 適した環境・置き場所 よい果実を収穫するには、できるだけ日光に当てて育ててください。5~10月は屋外に出し、日なたで育てます。ただし32℃以上になると葉焼けなどの高温障害が出るので、夏の猛暑時は半日陰に移動するか、遮光ネットを張ってください。 気温が15℃以下になると生育が衰え、10℃くらいになると生育が止まります。 果実が大きくなってくると風で容易に倒れます。転倒対策を必ず行ってください。 水やり 鉢土の表面が乾いたら水やりします。根は過湿を嫌うので、水のやりすぎに注意してください。 多肉植物のように乾燥には耐えます。ただし水を控えると結実まで時間がかかり、果実も小さくなります。 肥料 5~10月に、3要素が等量の緩効性化成肥料などを規定量与えてください。肥料不足でも収穫が遅くなり、果実が小さくなります。1,000~2,000倍に薄めた液体肥料を1カ月に2~3回、葉面散布するのも効果的です。 手入れ 下の部分の葉が枯れてきますが、そのままだと長期間見苦しく、カビの発生原因にもなります。安全のために手袋をして、早めに付け根付近からハサミなどで切ってください。 植え替え 1~2年間隔で4~7月に大きな鉢に植え替えます。まず6~7号鉢に植え替え、最終的に8~10号鉢に植えてください。 用土 pH5.5~6.0の弱酸性で水はけのよい用土が適します。アルカリ性の用土は微量元素欠乏症を起こし、衰弱して枯れてしまいます。鹿沼土7、酸度調整済ピートモス3などの用土を使います。 冬越し i-am-helen/Shutterstock.com 乾燥させれば0℃近い低温にも耐えますが、葉はひどく傷みやすくなります。葉を美しく保ち、よい果実を収穫するには、最低温度を10℃以上に保つようにしてください。居間のような暖房の入る部屋の、日当たりのよい窓辺付近に置きます。冷え込みが厳しいときは部屋の中央付近に移動したり、夜間に段ボール箱を被せるなど保温に配慮してください。 収穫 mikeledray/Shutterstock.com 花が咲く時期は不定で、花後120~130日で収穫します。 果実の生育には22℃以上の温度が望ましく、平均気温が22℃を下回ると酸っぱく甘味のない果実になります。 5~6月頃に花が咲くと、美味しい果実になりやすいです。秋に花芽が付いた場合は温度不足で果実が生育しないので、収穫には可能な限り保温することが重要です。 パイナップルを育てて目で舌で南国気分を見味わおう! sunabesyou/Shutterstock.com 手軽なクラウン挿しから育てられるパイナップル。多肉植物のような株姿も魅力で、育てた人の特権ともいえる完熟の果実も味わうことができます。まずはクラウンを水挿ししてみるのもよいでしょう。根が出てくる様子が楽しいので、ぜひ挑戦してみてください。
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観葉・インドアグリーン
スパティフィラムの育て方や特徴、ユニークな楽しみ方もご紹介!
スパティフィラムの基本情報 Georgina198/Shutterstock.com 植物名:スパティフィラム学名:Spathiphyllum英名:peace lily和名:ササウチワ(笹団扇)その他の名前:スパシフィラム科名:サトイモ科属名:ササウチワ属(スパティフィラム属)原産地:熱帯アメリカ分類:多年草(常緑) スパティフィラムは水芭蕉を連想させる白い花が特徴の多年草で、条件がよいと一年中開花を続けます。耐陰性が強く、寒さにも弱くない、比較的丈夫で育てやすい植物です。小~中サイズの鉢植えが販売されており、室内で楽しむ定番の観葉植物として広く親しまれています。 スパティフィラムの花や葉の特徴 MR.PRAWET THADTHIAM/Shutterstock.com 園芸分類:観葉植物開花時期:5~10月草丈:30~80cm耐寒性:弱い耐暑性:強い花色:白 白い花のように見えるのは、葉に由来する仏炎苞(ぶつえんほう)です。本来の花は、中央の棒状の部分(肉穂花序/にくすいかじょ)に多数つきますが、目立ちません。大きく艶のある葉はギボウシのように地際から広がり、優雅な雰囲気になります。 スパティフィラムの名前の由来と花言葉 Alsu Kanyusheva/Shutterstock.com スパティフィラムの名前は、ギリシャ語で仏炎苞を意味するSpatheと、葉を意味するphyllonが由来になっています。 スパティフィラムの花言葉はいくつかありますが、そのうちの一つが、優雅で上品な印象から付けられたといわれている「上品な淑女」です。また、白く清らかな姿から付けられたとされる「清らかな心」や、「清々しい日々」、「包み込む愛」、「清純な心」、「爽快」などがあります。いずれも清楚で上品な女性をイメージさせる言葉であることから、大切な人への贈り物にも最適です。 スパティフィラムの品種 Creative by Nature/shutterstock.com 日本で作出された‘メリー’や‘ミニメリー’がよく流通しているほか、葉に白い斑が入る品種‘ドミノ’や‘ダイアモンド’なども人気があります。また草丈2mもの大型になる‘センセーション’やその斑入りの品種などもあります。 スパティフィラムの栽培12か月カレンダー 開花時期:5~10月植え付け・植え替え:4~6月肥料: 鉢植えの場合は4月中旬~10月、庭植えの場合は5~10月 スパティフィラムの生育サイクルは、春~初秋(4~10月)までが生育期になり、秋から初春(11~3月)は休眠期に当たります。休眠期は水やりを含め、あまり手を入れ過ぎないようにして、肥料や植え替えなどは生育期に、株の様子を見ながら行うようにしましょう。 スパティフィラムの栽培環境 Mikhail Gnatkovskiy/Shutterstock.com 日当たり・置き場所 スパティフィラムの葉は直射日光に当たると葉焼けを起こします。ベランダなどの屋外で栽培する場合は、日向に放置せず、他の植物の陰になる場所を選んだり、遮光ネットを使用するなど、直射日光が当たらない半日陰や日陰などがよいでしょう。 屋内の場合も、日差しが強い場所は避け、摺りガラスやカーテン越しの窓際などの半日陰がおすすめです。ただし、暗すぎると花が咲きにくくなり、風に当たると葉が傷むことがあります。また、高温多湿には強いものの、寒さには弱いので、冬は室内でも室温が低くなりすぎない場所に置くようにしましょう。 耐寒性・耐暑性 スパティフィラムは暑さには強いものの、寒さには弱いため、8~15℃以上の環境で栽培する必要があります。5℃以下になると生育しないうえ、株が傷むため、屋外で栽培している場合、冬になったら屋内に入れるようにしましょう。 スパティフィラムの育て方のポイント 用土 用土は観葉植物用の培養土のほか、草花用の培養土でもよいでしょう。自分で配合する場合は、赤玉土(小粒)7:ピートモス 3 :パーライト 1 などの割合で混ぜるとよいでしょう。 水やり Ludmila Kapustkina/Shutterstock.com 湿り気のある土壌を好みます。基本的には用土の表面が乾いてから水やりしますが、夏の乾燥が激しい時期は水切れに注意。やや根詰まり気味の株や購入したばかりの鉢植えは、夏の晴天が続くときなどは毎朝与えてください。また鉢を池や水がめなどに漬けたまま育てる腰水栽培も可能で、水やりの手間が省けておすすめです。 肥料 肥料が不足すると花も少なくなるので、4~10月に肥料が切れないように注意。鉢花用の液体肥料を週に1回、水やり代わりに、またはリン酸がやや多めの緩効性化成肥料を規定量与えてください。 注意する病害虫 病害虫の発生は少ない植物ですが、室内で育てていると乾燥気味になり、ハダニが発生することがあります。こまめに霧吹きをして湿度を保つか、戸外に出すと予防できます。 葉が密生して風通しが悪いとカイガラムシが発生します。いったん発生すると薬剤が効きにくく厄介なので、混み合っている根元から切って間引き、カイガラムシはブラシなどでこすり落としてください。そのうえで薬剤散布をして防除するとよいでしょう。 スパティフィラムの詳しい育て方 植え付け・植え替え Svetlana Khutornaia/Shutterstock.com 成長が早く根づまりしやすいので、1~2年ごとに植え替えてください。用土は観葉植物用の培養土のほか、草花用の培養土でもよいでしょう。自分で配合する場合は、赤玉土(小粒)7:ピートモス 3 :パーライト 1 などの割合で混ぜるとよいでしょう。 日頃の手入れ BAZA Production/Shutterstock.com 花が終わるにつれて、仏炎苞が緑色に変化していきます。早めに根元から花茎を切ったほうが繰り返し、よく開花します。 冬越し stock_studio/Shutterstock.com 成株を乾かし気味に管理すれば、最低0℃近くまでの寒さに耐えますが、葉はひどく傷みます。葉を傷めることなく冬越しするには、最低温度を8℃以上に保つようにしてください。 11月までに室内に移動し、水の与えすぎに注意しながら管理しましょう。戸外に出す場合は、5月に移動するとよいでしょう。 増やし方 Tatiana Foxy/Shutterstock.com 5~7月に、株分けで増やすことができます。根詰まり気味の株は2~3株にナイフなどで切り分け、同じ大きさの鉢に植え付けます。株を細かく分けると生育が鈍り、花も長期間咲かなくなるので注意してください。 また、株分けと同時に、外側の古い葉や傷んだ葉を2~3割間引くように切り、風通しよくするとよいでしょう。 スパティフィラムのユニークな育て方 soohyun kim/Shutterstock.com スパティフィラムは、ハイドロボールやセラミスなどの資材を使った水耕栽培にも適した観葉植物です。ただし根の成長が旺盛で、比較的早く容器いっぱいに根詰まりしてしまうので注意してください。 一方、スパティフィラムは根だけでなく葉が水に大部分浸かっても問題ありません。容器と水だけで育てる水挿し栽培がおすすめです。水が日光で高温にならないように配慮しつつ明るい日陰に置けば、花も咲きます。一番労力がかかる水やりの手間も大幅に省けるでしょう。 スパティフィラムのお悩みQ&A Q:花をよく咲かせたいが、どのように日光に当てたらよいか分からない A:夏が一番葉焼けしやすいので、温度が上昇するにつれて暗い場所に移しますが、葉焼けしない範囲で可能な限り明るい場所に置くことが大切です。一日の中では朝のほうが葉焼けしにくいので、目安としては、冬は午前中だけ日光が当たる場所に。春には、暖かくなるにつれて朝だけ日光が当たる場所か、薄いカーテン越しの日光に当てるようにします。夏は直射日光が当たらない明るい日陰、または北側の窓の側などがよいでしょう。 また風通しのよい場所のほうが葉焼けしにくいので、5~10月までは戸外で栽培したほうがよいでしょう。 Q:冬に午前中だけ日光が当たる窓辺に置いたが、葉焼けした。その原因は? A:葉焼けは、気温が高いと起こりやすくなります。セントラルヒーティングなど、冬でも薄着で過ごせるほど暖房を強めに入れている室内では葉焼けする可能性が高いです。直射日光は避け、レースのカーテン越しの日光に当てるようにしてください。また急に暗い場所から移動しても葉焼けします。1カ月くらいかけて徐々に日光に慣らしてください。 Q:株分け後、葉がしおれ気味で元気がありません。 A:古い用土をきれいに落とし、根も整理した場合、葉もかなり減らさないと根とのバランスが取れず、葉がしおれて水不足の状態になります。根を切って取り除いたら、同じ割合で葉も減らすようにしてください。また初心者は、細かく分けすぎると失敗しやすいので注意してください。 丈夫で白い可憐な花が魅力のスパティフィラムを育てよう! lidian Neeleman/Shutterstock.com スパティフィラムの育て方5つのポイントは、 直射日光で葉焼けしやすい 暗すぎると花が咲かない 肥料切れと根詰まりに注意 腰水栽培が可能 冬は室内で越冬 以上のポイントを把握していれば、スパティフィラムは丈夫で育てやすい植物です。観葉植物として長く人気を維持しているのも、育てやすさが大きな理由でしょう。またスパティフィラムならではの水挿し栽培など、ユニークな育て方もできます。ぜひ5つのポイントを覚えて、美しい花と葉を楽しんでください。
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樹木
「プルメリア」の鉢植えの育て方&イチ推し品種をプロが解説
プルメリアの基本情報 植物名:プルメリア学名:Plumeria sp.またはPlumeria cv.英名:Plumeria和名:プルメリアその他の名前:テンプルツリー(Temple tree)、フランジパニ(Frangipani)、チャンパー(champa)科名:キョウチクトウ科属名:インドソケイ属(プルメリア属)原産地:熱帯アメリカ分類:常緑性または落葉性、低木または高木 プルメリア(Plumeria)は、キョウチクトウ科プルメリア属に分類され、熱帯アメリカ原産の常緑、または落葉性の花木です。高さは、50cm〜10m。過湿を嫌いますが、乾燥には強く、多肉植物に近い性質です。意外と手間いらずで長期間開花するので、世界の熱帯地域で広く栽培されています。 ‘インカゴールド’ 熱帯原産のプルメリアは、寒さに弱く戸外では越冬できません。ただし、室内に置いて断水すれば比較的容易に冬越しできます(詳しい育て方は後半で解説)。 温暖な沖縄では地植えで育てられますが、強風に弱く、台風が直撃すると大きく育ったプルメリアが根元から折れるなど甚大な被害を受けることがあります。そのため、沖縄などでは思ったほど植栽されていません。 Lungkit/Shutterstock.com 枝などを切ったときに出る白い乳液は毒性があり、服などに付くとシミになるので注意が必要です。もし肌に触れてしまった場合は、すぐに水で洗い流しましょう。 プルメリアにはたくさんの別名があります。ハワイではメリニ、その他の熱帯の国々ではフランジパニという名前も主流です。また、ラオスでは国花とされ、チャンパーと呼ばれています。東南アジアでは墓地やヒンズー教などの寺院に多く植えられることから、テンプルツリーの名もあります。 プルメリアの花や葉の特徴 園芸分類:熱帯花木開花時期:6~10月樹高:50cm~10m耐寒性:弱い(冬期は断水することで約0℃まで耐えられる)耐暑性:強い(世界の熱帯地域に広く分布)花色:白、黄、ピンク、赤、複色 プルメリアは、数枚の丸みを帯びた花弁が、中心から放射状に広がって咲く花です。 花弁の色はピンクや赤、黄などの単色があるほか、複数の色が入り混じった複色の花もよく見られます。花の中央が黄色で、外側に向かって白やピンクに変化するタイプが有名です。 なお、葉も花弁と同じく丸みがあり、細長い形をしています。 glenrichardphoto/Shutterstock.com プルメリアの花はフローラルな甘い香りがするのも魅力で、香水の原料にもなっています。また、ハワイをはじめ、タヒチやフィジーなど太平洋の島々では、プルメリアの花がレイにも使われています。 プルメリアの名前の由来と花言葉 Nikita M production/Shutterstock.com プルメリアの名前は、17世紀後半に活躍したフランスの植物学者シャルル・プリュミエから名付けられました。シャルル・プリュミエは何度も中南米を訪れ、多くの植物を発見しています。 またプルメリアの別名テンプルツリー(Temple tree)は、プルメリアが原産の熱帯地域で寺院に多く植えられていたことが由来です。 プルメリアは香り高く、優美な姿をしていることから、「情熱」「気品」などの花言葉があります。南国のイメージにちなんだ「陽だまり」という花言葉も有名です。 Phillip B. Espinasse/Shutterstock.com バカンスに多くの人が訪れるハワイでも、ポピュラーな花木であり、大切な人や客人に贈るレイ(花を輪状に編む首飾り)や髪飾りによく用いられています。アクセサリーのモチーフとしても人気です。 また、ハワイでは「Pua melia(プアメリア)」の名でも親しまれ、オアフ島のココクレーター植物園に、多くのプルメリアがコレクションされています。サボテンなど多肉植物がよく育つ乾燥気味の気候ですが、プルメリアも元気に育っています。花心付近が黄色い白花の栽培品種である‘シンガポール’は、街路樹としても多く植えられています。近年のハワイアンブームから、日本でもハワイをイメージさせる花としてプルメリアの人気が高まっているので、これからあちこちで見かける機会も増えそうです。 プルメリアの種類 SEEDA/shutterstock.com よく栽培されている品種は、インドソケイの和名があるプルメリア・ルブラ(P. rubra)とプルメリア・オブツサ(P. obtusa)です。またその園芸品種も多く栽培され、プルメリア専門のナーセリー(ジャングルジャックプルメリア https://www.junglejacksplumeria.com/)などで新しい品種も盛んに作られています。 プルメリア・オブツサ Plumeria obtusa Kruch Elizaveta/Shutterstock.com キューバ、ユカタン半島原産で、高さは4~6m。葉先が丸いことからマルバプルメリアの和名があります。常緑のプルメリアとされますが、強く乾燥させたり冬の低温下では落葉します。 セラダイン Plumeria ‘Celadine’ Meidiyanola Kartika/Shutterstock.com 葉先が尖る園芸品種で、白い花の中央に黄色が多く入ります。丈夫でハワイで多く栽培され、レイの材料によく使われます。 日本で育てるなら矮性品種がおすすめ 従来の品種は、枝が分枝せずに1m以上伸びて開花し、大株でも枝数が少なく毎年花が咲かない場合も珍しくありません。分枝性が悪い反面、枝がよく伸びるので、家庭で鉢植えとして手軽に楽しむには不向きな植物ともいえます。 近年は30cmほどの高さで開花する矮性品種や分枝性に優れる品種が登場しているので、家庭で育てるには、以下でご紹介する品種を選ぶとよいでしょう。よく分枝するので花もよく咲き、10号鉢以上の大株に仕立てると見応えがあります。また台風の到来が毎年予想されるので、矮性の品種なら強風による被害も少なくなります。じつは、プルメリアの花色はとてもバリエーションが多く、コレクションする楽しみもあり、プルメリアを集めたイベントも開催されているほどです。 プルメリア初心者でも鉢植えで育てやすく、美しい花が楽しめるおすすめの品種を2種ご紹介します。 ディヴァイン トロピカルムード満点の花は、グラデーションがかかる美しい色合いで、プルメリア栽培デビューにもおすすめです。丈夫で花付きがよく、育てやすい点でも人気の品種です。 ミニホワイト 花付きがよく、他の品種と比べても特に矮性でコンパクトに育つうえ、丈夫。この品種も、プルメリア栽培デビューにイチ推しの品種です。 プルメリアの栽培12か月カレンダー 開花時期:6〜10月植え付け・植え替え:5〜9月肥料:6〜10月(鉢物用の品種は7~10月、株を大きくしたい・大株に与える場合は5~10月)入手時期:5〜9月剪定:9~10月挿し木:4~8月 プルメリアの栽培環境 日当たり・置き場所 プルメリアを育てる時は、屋外・屋内いずれの場合も日当たりのいい場所がおすすめです。日光を十分に当てないと花が咲きづらくなる恐れがあります。 また、過湿に弱く根腐れを起こしやすいため、屋外に地植えする場合は水はけのいい場所を選びましょう。 プルメリアは茎が柔らかく、強い風で傷んでしまう恐れがあります。管理場所を選ぶ際は、風当たりにも注意してください。 プルメリアは日当たりや水はけ、温度管理が適切なら、地植え・鉢植えどちらでも育てられます。ただし、屋外に置く場合は気温の下がり過ぎに注意し、必要に応じて場所を変えなければなりません。 耐寒性・耐暑性 熱帯花木のプルメリアは暑さに強く、寒さに弱い植物です。 温度が0℃以下になることを避けるため、庭などに地植えしている場合は10~11月に掘り上げて暖かい場所に移動しましょう。冬場は水やりをやめて、0℃以上の環境で休眠状態にし、春になったら少しずつ水やりを再開します。 プルメリアの育て方のポイント norinori303/Shutterstock.com 用土 水はけのよい用土が適します。販売されている鉢植えは、水もちのよいピートモスを主体とした用土に植えられていることがあります。ピートモス主体の土では水分過剰になりやすく、初心者の場合、立ち枯れなどの病気や、冬越しの失敗などのトラブルが多くなります。 用土としては、多肉植物用の培養土が手軽でおすすめです。また、一般的な培養土を使いたい場合は、赤玉土中粒を3割程度足すとよいでしょう。 自分で配合する場合は、赤玉土小粒に腐葉土3割、川砂1割を配合した用土、また6~8号鉢以上は赤玉土中粒を使うのがおすすめです。水はけのよい用土を使うことが、失敗なく簡単に育てるための大きなポイントになります。 水やり 表土がしっかり乾いてから、たっぷり水やりしてください。よく乾燥する夏は、水やりの際に葉全体に水をかけるようにすると、ハダニなどの害虫の発生が防げます。 過湿にすると根腐れしやすく、また樹姿が徒長気味になって軟弱になり、花付きも悪くなります。 春から6月までは、特に過湿による根腐れや病気などのトラブルが発生しやすい時期です。水の与えすぎに十分注意し、5月はやや乾かし気味に管理したほうがよいでしょう。 肥料 大きく成長させて花をたくさん咲かせたい場合は、5~10月にリン酸分の多い化成肥料などを規定量か、やや少なめに与えてください。窒素肥料が多いと枝ばかり伸びて花が咲きにくくなります。 肥料を控え気味に育てると枝の成長が抑えられ、コンパクトで引き締まった樹姿になります。矮性品種なども、液体肥料を7〜10月に月1回のペースで、規定量を与えればよいでしょう。 <病害虫> 害虫の発生は少ないです。乾燥した場所では、ハダニが発生することがあります。水やりの際に勢いよく葉水すると、発生を防ぐ効果があります。 過湿にすると立ち枯れ病などが発生しやすくなります。梅雨時は、鉢を雨の当たらない場所に移動すると安心です。 春によく多発するのは、枝先が黒くなって枯れるブラックティップと呼ばれる症状です。大株は枝先が枯れるだけですが、小株はそのまま根元まで腐って枯れてしまうこともあります。プルメリア・オブツサとその系統に多く発生します。6月までは雨が当たらず、日当たりと風通しのよい場所に置くのが理想的です。 プルメリアの詳しい育て方 melissamn/Shutterstock.com 植え付け・植え替え 植え付け、植え替えの適期は5~9月。1~2年の間隔で植え替えをしますが、過湿を嫌うので、大きすぎる鉢を使わないようにしてください。大きめの鉢を使った場合は、鉢底石を多めに入れて水はけよく植えるようにしましょう。 強風対策 枝の先端部に葉が集中するので安定が悪く、鉢が倒れやすいです。茎が柔らかいので、倒れると折れてしまうこともあります。鉢転倒防止用のストッパーを使うか、柱など支えられる場所に枝を括りつけるとよいでしょう。 台風や暴風雨が予想される時は、前もって室内に避難させるのが確実に安心です。室内への移動ができない場合は、あらかじめ鉢を倒しておきます。そして、その上にシートなどを被せるとよいですが、中途半端に固定するとシートが飛んだりバタついたりして被害が拡大することがあるので注意してください。 剪定 分枝が少ないので、ほとんど必要ありません。むやみに剪定すると、長期間花が咲きにくくなります。大株になって枝が密集しすぎたら、軽くすかすように切るとよいでしょう。 伸びすぎて仕立て直したい場合は、株元から30~50cmの位置でバッサリと切り戻して大丈夫です。ただし、開花まで2~3年かかる場合が多いです。 冬越し 11月までに室内に移動してください。水やりの間隔をあけて徐々に減らし、葉が落ちたら断水します。 15℃以上を保つと落葉しませんが、冬に落葉することでさび病やハダニの発生を防ぐことができます。断水している間は、日光に当てる必要はありません。部屋の中央付近など、温度が下がりにくく温度変化の少ない場所が適します。床からの冷え込みが予想される場合は、発泡スチロールの中に入れたり、断熱シートなどで覆うとよいでしょう。 3月頃から室内の日光が当たる場所に置いてください。ただし急な冷え込みが予想される日は、窓から離れた部屋の中央付近に移動すると安心です。葉が3~4枚になり勢いよく成長を始めたら、水やりを再開します。はじめは表層を濡らす程度の量を与え、徐々に水やりを増やしていきます。 増やし方 faithie/Shutterstock.com 4~8月に、挿し木で簡単に増やすことができます。挿し木は、先端部の充実したやや木化した枝を使うと理想的です。20~30cmほどの長さに切り、日陰に置きます。2~3週間して、切り口に小さなコブのようなカルスができたら植え付けてください。温度が低い4月頃は、カルスができるまで時間がかかる場合があります。鉢は4~5号の深めの鉢(腰高鉢)などを使用し、用土は赤玉土小粒など、清潔で排水性のよいものが適します。 挿し木後に水やりし、その後は表土が乾燥してから水やりします。置き場所は、室内の明るい場所に。7~8月は、戸外の軒下など雨の当たらない涼しい場所がよいでしょう。 海外のお土産用プルメリアの枝に注意 ハワイまたは東南アジアからのプルメリアの苗や枝は、日本向けの検査証明書がないと国内に持ち込めません。これは、ミカンクロトゲコナジラミの日本への侵入を防ぐための措置です。お土産などの販売店で枝が売られていますが、気軽に土産として持ち帰らないように注意してください。 プルメリアを地植えする場合 Koko Hary/Shutterstock.com 5月から10月の期間限定ではありますが、庭などに地植えして育てることもできます。植え付ける際は、周囲より20~30㎝ほど高くしたレイズドベッドや畝などに植えると水はけがよく、立ち枯れや徒長を防げます。 植える場合、プルメリアの株は、中~大株を植えたほうが失敗が少ないでしょう。水やりの心配がなく手間いらずですが、強風に注意してください。台風が到来する場合は枝が折れる心配がありますが、少し掘り起こして寝かせると被害が防げます。 秋に掘り起こして鉢植えにする際は、赤玉土だけか、赤玉土にパーライトを3割程度混ぜた用土を使用するのがおすすめです。温度が低下していく時期の植え替えなので、腐葉土などの有機物を入れると根腐れする可能性が高くなります。 丈夫で手間いらず! プルメリアを咲かせて自宅でリゾート気分 ‘カリフォルニア・サン’ プルメリアは生命力が強く、手間いらずで丈夫な植物です。初心者で栽培に失敗している人は、通常のピートモスが多い水もちのよい培養土で大きめの鉢で育てている場合が多いようです。多肉植物のような花木と想定して、水はけのよい用土で育てて冬は断水すれば、意外と育てるのは簡単です。矮性の品種など種類を選べば花もよく咲きます。プルメリアの栽培にぜひ挑戦して、トロピカルな美しい花と甘い香りを身近に楽しんでください。