カラフルな花色が多様に揃うプリムラ・ジュリアン。寒さに強く、草姿がコンパクトにまとまるので、冬から春にかけての寄せ植えなどで活躍します。この記事では、プリムラ・ジュリアンの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、品種、育て方のポイント、元気がない時の対処法などについてご紹介します。
目次
プリムラ・ジュリアンの基本情報
植物名:プリムラ・ジュリアン
学名:Primula Polyanthus Group
英名:Polyanthus primrose
和名:セイヨウサクラソウ
その他の名前:プリムラ・ポリアンサ
科名:サクラソウ科
属名:サクラソウ属(プリムラ属)
原産地:ヨーロッパ
分類:多年草(一年草扱い)
プリムラ・ジュリアンの学名は、Primula Polyanthus Group (プリムラ・ポリアンサス・グループ)。プリムラ・ポリアンサとコーカサス地方原産のプリムラ・ジュリエを交配し、日本で作出された品種群です。ジュリアンのほうがポリアンサより花が小さいのが見分けるポイントでしたが、近年は交配が進んでポリアンサとジュリアンの交配種もあり、見分けがつかなくなってきています。サクラソウ科サクラソウ属(プリムラ属)で、本来は多年草ですが、暑さに弱く日本の酷暑を乗り越えられないことが多いため、国内では一年草として扱われています。草丈は10~20cmです。
プリムラ・ジュリアンの花や葉の特徴
園芸分類:草花
開花時期:11〜4月
草丈:10〜20cm
耐寒性:弱い
耐暑性:やや弱い
花色:紫、黄色、オレンジ、赤、ピンク、青、紺など
プリムラ・ジュリアンの開花期は11月~翌年4月頃。花色は紫、黄色、オレンジ、赤、ピンク、青、紺など、ない色がないといわれるほどバラエティーに富んでいます。花姿も一重咲きや八重咲き、バラ咲きなどが揃い、選ぶ楽しみがある草花です。花つきがよく、最盛期には花で葉が見えないほどの咲き姿を楽しめるのが魅力です。また、花もちもよく、開花後長く楽しむことができます。草姿はロゼット状で、根元から葉を放射状に広げます。葉には皺があり、毛が生えています。
プリムラ・ジュリアンの名前の由来や花言葉
学名のPrimulaは、プリムラ・べリスという種が、ほかの花よりもひと足早い早春に咲くことから、ラテン語で「最初の」という意味のprimusが由来となっています。プリムラ・ジュリアンは、交配親のプリムラ・ジュリエとプリムラ・ポリアンサの名前の一部を合わせてつけられた園芸品種名です。
プリムラ・ジュリアンの花言葉は「青春の喜びと悲しみ」。寒さの厳しい冬に花を咲かせ、夏前に枯れることに由来します。
プリムラの代表的な種類
プリムラの仲間は500~600種もあるとされ、観賞価値の高いものが多いグループです。そんな多様なプリムラ属の中でも、ガーデニングでよく使われる代表的な種類をいくつかご紹介します。
プリムラ・マラコイデス
中国原産のマラコイデスは、ガクや葉の裏などに白い粉をつけるため、和名でケショウザクラ(化粧桜)とも呼ばれます。色はピンク、白、青紫、紫など。小さな花が段を作るようにたくさん開花します。耐寒性は強い一方、日本の高温多湿な夏に弱いことから、一年草として扱われます。
プリムラ・シネンシス
中国原産のシネンシスは、葉の裏側が赤みを帯びた銅葉となるのが特徴。色は赤、白、青などがあり、特にサクラのような花を咲かせるステラタ系の品種が人気です。冬の寒さにも夏の暑さにも強く、育てやすいプリムラです。
プリムラ・オブコニカ
オブコニカは、ほかのプリムラよりもやや大ぶりな花が、葉の間から伸びる茎に咲きます。ピンク、アプリコット、白など、淡く可愛らしい花色が多く揃います。耐陰性が強く、日当たりが悪い場所でも花を咲かせてくれます。かぶれを引き起こすプリミンというアルカロイドを多く含むので、お手入れの際には注意が必要。かぶれにくい園芸種も登場しています。和名はトキワザクラ(常盤桜)。
プリムラ・ブルガリス
庭植え向きの原種系プリムラで、別名はプリムローズ。ヨーロッパに自生し、明るいクリームイエローの花が一斉に咲く姿は、春を告げる目印のような存在として広く親しまれています。花や葉を食用にするエディブルフラワーとしても知られています。寒さ、暑さに強いく、湿気の多い場所は避けて水はけがよい日向に植えれば、植えっぱなしで育つ多年草です。
プリムラ・ジュリアンの栽培12カ月カレンダー
開花時期:11〜4月
植え付け:10月〜11月上旬
肥料:11〜4月
種まき:5〜6月、10月頃
プリムラ・ジュリアンの栽培環境
日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たり、風通しのよい場所を好みます。あまりに日当たりが悪いとヒョロヒョロと茎葉が間のびして軟弱な株になったり、花つきが悪くなったりするので注意しましょう。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】水はけ、水もちのよい環境を好みます。冷たい風が吹きつける場所を避けましょう。霜が降りる場所では株元にバークチップやワラを敷きつめ、マルチングを施しておきます。夏越しに挑戦する場合は、半日陰の涼しい場所に移動します。
耐寒性・耐暑性
寒さには強いですが、寒風には注意が必要。また、霜が降りる場所ではマルチングなどの防寒対策を施すとよいでしょう。暑さには弱いので、基本的には一年草扱いとなります。夏越しは難しいですが、チャレンジするなら半日陰の涼しい場所に移して、水やりを控えめにして管理します。
プリムラ・ジュリアンの育て方のポイント
用土
【地植え】
植え付けの約2週間前に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕しておきます。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の草花用培養土を利用すると手軽です。
水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面が乾いたのを見はからってから、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。生育期に入り、旺盛に茎葉を茂らせて花をたくさん咲かせるようになると、水を欲しがるようになるので水切れには注意してください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
肥料
【地植え・鉢植えともに】
植え付け時に元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。
開花期を迎えたら、月に1度を目安に緩効性化成肥料をばら撒き、スコップで軽く耕して土に馴染ませます。または、10日に1度を目安に液体肥料を与えてもよいでしょう。
夏越しにチャレンジする場合、夏場は肥料を与えないでください。鉢栽培で夏越しできたら、涼しくなった頃に液肥を与え、株を回復させます。
注意する病害虫
【病気】
プリムラ・ジュリアンが発症しやすい病気は、灰色かび病、うどんこ病などです。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほどで、多湿の環境下にて発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉やつぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放任するとどんどん広がるので注意。対処せずにそのままにしておくと光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
【害虫】
プリムラ・ジュリアンに発生しやすい害虫は、アブラムシ、ナメクジなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
ナメクジは花やつぼみ、新芽、新葉、果実などを食害します。体長は40〜50mmほどで、頭にツノが2つあり、茶色でぬらぬらとした粘液に覆われているのが特徴。昼間は鉢底や落ち葉の底などに潜んで姿を現しませんが、夜に活動します。植物に不快な粘液がついていたら、ナメクジの疑いがあるので夜にパトロールして捕殺してください。不可能な場合は、ナメクジ用の駆除剤を利用して防除してもよいでしょう。多湿を好むので風通しをよくし、落ち葉などは整理して清潔に保っておきます。
プリムラ・ジュリアンの詳しい育て方
苗の選び方
苗を選ぶ際のポイントは、株が大きく根や株元がしっかりしていること。幼くても節間が短くがっしりとまとまっており、ヒョロヒョロと間のびしていないものを選びましょう。また、葉の変色や病害虫の痕がなく、生き生きとした葉がたくさんついているものがおすすめです。
植え付け・植え替え
プリムラ・ジュリアンの植え付け適期は、10月〜11月上旬です。ただし、植え付け適期以外にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢をくずして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。複数の苗を植える場合は、10〜15㎝くらいの間隔を取っておきます。
プリムラ・ジュリアンは、日本の暑さに耐えられずに、ほとんどが夏前に枯死します。枯れたら抜き取って処分し、夏の花に切り替えましょう。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、5〜6号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。プリムラ・ジュリアンの苗を鉢の中に仮置きし、高さを決めたら、根鉢を軽くほぐし、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。大きな鉢にほかの植物と一緒に植え込んで、寄せ植えを作ってもOKです。
プリムラ・ジュリアンは暑さに弱く、夏前に枯死することがほとんどです。枯れたら抜き取って処分しましょう。または、涼しい半日陰などで夏越しすると、越年できることがあります。夏を乗り切れたら、秋に新しい培養土を使って植え直すとよいでしょう。
日常のお手入れ
プリムラ・ジュリアンは次々に花が咲くので、終わった花は摘み取りましょう。花首の下ではなく、花茎の元から切り取ってください。まめに傷んだ花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながります。また、いつまでも終わった花を残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。種子を採取したい場合は、開花が終わりそうな頃に花がら摘みをやめて、種子をつけさせましょう。
増やし方
プリムラ・ジュリアンは、種まき、株分けで増やすことができます。ここでは、それぞれの方法について解説します。
【種まき】
プリムラ・ジュリアンの発芽適温は15〜20℃くらい。種まきの適期は5〜6月か10月頃です。
プリムラ・ジュリアンの種子は大変小さいので、種まき用のセルトレイを準備してください。トレイに市販の培養土を入れて十分に湿らせ、1穴当たり数粒ずつまきます。プリムラ・ジュリアンは発芽に光を必要とする好光性種子のため、土をかぶせる必要はありません。タネが細かいので、浅く水を張った容器にセルトレイを置いて鉢底から給水させます。発芽までは涼しい場所に置き、乾燥しないように適度な水管理をしてください。
双葉が出揃ったら、弱々しい苗を間引いて1本立ちにしましょう。残す苗の根を傷めないように、株元を押さえて抜き取ってください。5〜6月頃にまいた場合は、夏越しの際に風通しのよい涼しい場所で管理し、暑い日は葉水を与えるとよいでしょう。10月頃にまいた場合は、日当たりがよく、風通しのよい場所で管理します。
本葉が4〜5枚出始めたら、セルトレイから鉢上げするタイミングです。3号の黒ポットに草花用の培養土を入れ、セルトレイから苗を抜き取って根鉢を崩さずにそのまま植え付けます。日当たり、風通しのよい場所で育苗しましょう。10月中旬〜下旬頃、根がまわるほどに十分育ったら、植えたい場所に定植します。
【株分け】
夏越しできたプリムラ・ジュリアンが大株に育っていたら、株分けして増やすことができます。株分けの適期は10月頃です。株を掘り上げて数芽ずつつけて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、同じ姿の株が増えていくというわけです。あまり小分けにすると弱るので注意してください。
プリムラ・ジュリアンを寄せ植えする際のポイント
寄せ植えとは、鉢やハンギングバスケットなどに異なる種類の植物を複数植え込み、ブーケのようにデザインする仕立て方のことをいいます。プリムラ・ジュリアンは草丈が低く、株幅もコンパクトにまとまるうえ、開花期間が長いので、寄せ植えの素材として人気です。冬に寄せ植えする時は、株間を詰めて植えるのがポイント。寒い時期はほとんど生育が止まるので、成長する余地を残すのではなく、少し間を詰めると土が見えずきれいに仕上がります。寄せ植えの素材には、開花期が同じビオラやパンジー、ハボタン、スイートアリッサムなどと相性がよいでしょう。花だけでなく、シロエギクなどのカラーリーフも添えるとセンスアップします。
プリムラ・ジュリアンの元気がないときの原因と対処法
プリムラ・ジュリアンがうまく育たない場合の原因は、いくつか考えられます。ここでは、それぞれの対処法についてご紹介します。
水切れした・水やりをしすぎた
プリムラ・ジュリアンに水やりを忘れたままにすると、茎葉がしんなりとすることがあります。気づいたらすぐに、たっぷりと水やりをすれば、ほとんどの場合は回復します。反対に、
水やりしすぎると根腐れを起こして株が弱ることがあるので注意しましょう。土が乾いてから水やりすることが基本で、乾きすぎたり、湿った状態が続いたりと、土壌の水分量の極端な変化を繰り返すのはタブー。乾きすぎず、湿りすぎず、適した水分管理が大切です。
寒さにあたった
プリムラ・ジュリアンは寒さに強いものの、霜や寒風にあたると弱ることがあります。特に購入したばかりの幼苗には注意したいもの。寒さが厳しい地域では冬は室内に取り込むのも選択肢の一つです。温暖地では戸外で管理できますが、霜があたらない場所に移動するか、表土をバークチップなどでマルチングをしておきます。
暑すぎる
日本の夏の高温多湿に弱く、5月頃から元気がなくなって、夏前には枯れることがほとんどです。夏越しさせるなら直射日光が当たらず、風通しがよく涼しい場所に置きましょう。地植えの場合は遮光するのも一案です。ただし、夏越しは手がかかるので、一年草と割り切って楽しむのもよいでしょう。
また、冬に室内に取り込んだ場合、暖かすぎる室内に置いている場合も元気がなくなります。暖房のない場所に移動するとよいでしょう。
プリムラ・ジュリアンの育て方のポイントを知ってきれいに咲かせよう
プリムラ・ジュリアンは人気の高い草花だけに品種改良も進み、毎年魅力的な新品種が登場しています。名花や流通量が少ないレアな品種をコレクションする楽しみもありますね。ぜひ庭やベランダに迎え入れてみてください。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
- リンク
記事をシェアする
新着記事
-
ガーデン
都立公園を新たな花の魅力で彩る「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」1年の取り組み
新しい発想を生かした花壇デザインを競うコンテスト「東京パークガーデンアワード」。第2回のコンテストは、都立神代植物公園(調布市深大寺)が舞台となり、2023年12月からコンテストガーデンが一般公開され、日…
-
園芸用品
【冬のうちに庭の悩みを一挙解決】生育、花つき、実つきを変える土壌資材とは⁈PR
庭づくりで最も多い「花が咲かない」、「実がつかない」といった生育不良。花であふれる景色や収穫を夢見て、時間をかけ、愛情もかけて手入れをしているのに、それが叶わないときは本当にガッカリするもの。でも大…
-
レシピ・料理
冬はこれでポカポカ! 自家製チリオイルで食べる、生姜たっぷり餃子
冬の到来と共に身体をあたためてくれる物が食べたくなりますね。温まる食材の代名詞と言えば「唐辛子」と「生姜」。香りが良く薬味としても大活躍で、薬効もある身体に嬉しいスパイスです。今回は採りたてのフレッ…