【ガーデナーの春の庭仕事】捨てるはずの剪定枝を活用する「エコな垣根」と失敗しない宿根草選び
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich
春の庭準備はお済みですか? ガーデニングシーズンの始まりとして、ガーデナーは庭仕事にも熱が入る季節。ドイツ出身のガーデンデザイナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんもその一人です。
今回は、エルフリーデさんが実践する不要な枝を活用・収納する伝統的な「ベンジェス・ヘッジ」の作り方から、フェニックス(カナリーヤシ)の冬越し実験の結果、旅先のオーストラリアで触れた植物体験のエピソードなどをお届け。初心者の方でも取り入れやすい宿根草や組み合わせアイデアもご紹介します。新しい一年のガーデニングを一緒にスタートしましょう!
目次
冬の終わりと春の訪れ

私の暮らす地域では、寒かった日々に終わりが見え、扉を開けると春の気配が色濃く感じられるようになりました。
「春」という言葉が持つイメージは、育った国や環境など、幼少期に触れた春の情景によって人さまざまです。それはきっと、私たちの心に永遠に刻まれていることでしょう。「春」は人それぞれであっても、春の訪れを喜ぶ気持ちはどの人にもあるものだと思います。
私の場合、ドイツで生まれ育ち、ほかのヨーロッパの地域にも行きましたが、それはあくまで休暇で訪れただけのこと。その後もいろいろな国の春を経験することができましたが、一番記憶に残っているのは、やはり両親の庭での景色です。毎日のように、目の前に広がる植物たちの記憶は、今でも鮮明です。
日本で過ごした数え切れないほどの年月を経て、私の故郷の記憶とほとんど並び、桜の季節、そしてさらに早い梅の季節にも感じられるようになりました。

いま私が暮らしている地域、そして私の心は、すでにバレンタインデー頃から春モード。気温が徐々に上昇する中、植え付け、植え替え、土の掘り返し、剪定、種まき……いろいろな庭作業を始めたくてうずうずしています。
さあ、新しいガーデンの1年を始めましょう!
春を告げる花々

私の故郷ドイツでは、春の花といえば、
- スノードロップ(白)
- クリスマスローズ(紫、白)
- チューリップ(オレンジ、紫、赤など)
- スイセン(黄のほか品種多数)
- ヒヤシンス(ピンク、青、白、紫)
- クロッカス(主に紫)
- エランティス(黄、とても早咲き)
- プシュキニア(白、青)
- シラー(主に青)
など。
これらの花々は、雪の間から顔を出したり、開花後に再び雪が降って雪に覆われたりすることもあります。また、日当たりのよい場所を好むチューリップ、ヒヤシンス、スイセンなどを除き、多くは落葉期の木々の足元など、明るい半日陰でもよく育ちます。
冷たい土の中から現れ、ほんの少しの日照で元気に育つ……こうした環境に咲く姿は、これらの植物の強さを物語っています。その年の初めのスノードロップを摘み取り、食卓の小さな花瓶に飾るのは、春を実感する大きな喜び。花もちもよく、場合によっては1週間ほど楽しめます。

春に花の咲く低木には、マンサク、レンギョウ、ウツギ、ガマズミ、ミズキ、そしてもちろん、桜の仲間のさまざまな品種があります。これらの枝を寒い時期に切り、室内で咲かせれば、リビングに春を運んできてくれる素敵なインテリアに。特にレンギョウはとても手入れが簡単です。

庭の花々の開花

寒い冬を乗り越えたものたちは驚くほど美しく、私のパーマカルチャーガーデンでは、黄色の菜の花が鮮やかに輝いています。この景色を見るため、秋にはさまざまな種類のアブラナ科の植物の種子を播いているのですが、それらが今、花を咲かせ、素晴らしい春の始まりを告げています。
玄関前のルッコラの鉢植えも花を咲かせ、彩りのない場所を明るくしてくれています。ここにある花はルッコラだけですが、寒さを乗り越えたカモミールがあり、新緑の葉が美しいコントラストを描きます。
ミツバチたちは黄色い花の周りを飛び回り、蜂蜜作りに必要な最初の蜜や花粉を集めています。
最初の庭仕事

この春の最初の仕事は、ベンジェス・ヘッジ(Benjes Hedge)を作ることでした。ベンジェス・ヘッジとは、剪定枝などを積み上げて作る垣根のこと。生け垣とは違い、生きていない枝を使うため、デッドウッド・ヘッジとも呼ばれます。

ベンジェス・ヘッジという名前は、ヘルマン・ベンジェス氏という造園家の名前に由来しています。1980年代に、田舎の農地では忘れられかけていたこの垣根を、再び庭に導入した人物です。
剪定枝や小枝、落ち葉などを重ねて作るエコロジカルなベンジェス・ヘッジは、強風から植物などを守るだけでなく、野生生物の生息地として生物多様性を豊かにする効果もあります。

基本的な作り方としては、丈夫な杭を地面に2列、50cmほどの間隔で打ち込み、下に大きな枝を、上に細い枝を入れていきます。メンテナンスも簡単で、新しい枝などの素材を重ねるだけ。庭の奥まった場所や木の下、あまり目につかない隅にもおすすめです。しばらくすれば、この垣根はつる植物のトレリスとして面白いアイキャッチャーになることでしょう。
ベンジェス・ヘッジにはたくさんの枝や素材が収められるので、設置後は庭がすっきり片付き、スペースも広く使えます。我が家の庭では、枯れ木などをすべてこの垣根に片付けてみたら、枝の山に隠されていたクリスマスローズが美しく咲いているのを見つけました。


何年も前に、ドイツでもこのようなベンジェス・ヘッジを作ったのですが、自然に少しずつ低くなっていくため、帰国するたびに新たに枯れ木を積み上げています。垣根には、ハリネズミやトカゲなどの庭の小さな生き物たちが棲みつき、生活の場所となっています。
豊かな植生に触れたオーストラリア旅行

今年の2月、私は最も寒い時期を暖かい場所で過ごす機会に恵まれました。数週間かけてオーストラリアを旅したのです。私にとって初めてのオーストラリアでは、ケアンズからゴールドコースト、ブリスベン、メルボルン、シドニーまで、東海岸を北から南まで縦断しました。特に印象的だったのは、奥地にあるウルル(エアーズロック)で、その豊かな植生に圧倒されました。

この国の気温や植物の多様さは素晴らしく、近年日本でもよく見られるようになったオーストラリア原産の植物も、その原生地でたくさん見ることができました。日本のツツジやアジサイのように、木生シダ、バンクシア、ブラシノキなどがオーストラリアではどれほど大きくなり、またどれほどあちこちで見られるのか、実際に見ても信じられないほどでした。

もう1つ印象に残ったのは、プルメリアです。
オーストラリアは、都市によっては、日本でも人気のハワイの島々、特にオアフ島などと多くの共通点が見られました。シドニーでは、オーストラリア原産ではないプルメリアを、「ザ・ロックス」と呼ばれる港近くの丘の上にある街並みで見かけました。ここが最初の入植地で、シドニーの発展の礎となりました。

「ザ・ロックス」の家々は石造りで非常に古く、家々の間を抜ける細い小道は、両側が石垣で囲まれた庭になっていることもあります。こうして守られた環境のおかげで微気候が生まれ、やや気難しい植物も生育できます。石垣と家々が密集しているため、風がほとんど吹かず、またエネルギーも空間も効率的に利用できます。ゴミが散乱しやすい汚れた隅やデッドスペースもほとんどありませんでした。
プルメリアはここだけでなく、公共の公園でもよく見かけました。
オーストラリアで見た植物たちは、特定の環境が周囲の植生に大きな影響を与えるという素晴らしいサンプルでした。
この経験からも、庭にエキゾチックな植物を導入する前に、置きたい場所について思い起こして分析することが非常に重要だと改めて実感します。バルコニー、ベランダ、玄関、庭など、それぞれの場所の条件は大きく異なるので、各場所に似合う植物を取り入れることが成功への近道です。
冬の植物の生育は今後の栽培のヒントに
一年で最も寒い時期が過ぎた直後の今の時期は、成功と失敗をメモしたり、よく覚えておくことが、今後の植物選びの際にとても役立ちます。
この冬、個人的な実験として、私の住む神奈川の湘南地域では大きなコンテナに植えたフェニックス(カナリーヤシ)は外で冬越しできるか試してみたのですが、今のところ失敗に終わりました。今までは毎年、冬の間はリビングに置いて無事に育っていましたが、今年は屋外の寒さにどれだけ耐えられるか試してみたかったのです。
コンテナは稲わらでたっぷりマルチングし、わらが強風で飛ばされないように木箱をかぶせました。しかしながら、2月に3週間ガーデンを離れた間、寒さと風の影響か、茶色がかった灰色の葉が混ざった状態になってしまいました。根と幹まで傷んでいないことを祈ります。

フェニックスがどこまで回復するのか、それとも完全に枯れてしまったのか、確認するには少なくともあと2カ月は待たなければなりません!
最近では、どこへ行くにも、近くの庭で育っているフェニックスの株をチェックしています。今のところ、どこも同じように、茶色く枯れたように見える葉が垂れ下がっているので、少し勇気づけられます。こうした実験は、フェニックスについてもっとよく知り、我が家の庭でよりうまく育てる方法を探る実践的な機会になります。
ガーデニングの始まりに、最盛期には美しい景色が楽しめるガーデンを訪ねてみるのもいいでしょう。今の季節でも、魅力的な植物の組み合わせや、地植えや鉢植えでの素敵な植栽を見ると、たくさんのインスピレーションが得られます。私が訪れた庭にも、枯れたように見える植物も多く見られました。
宿根草ガーデンの植物選び
最近、小さな玄関前エリアにオージープランツをたくさん植えるという新たなトレンドがブームになっています。これは素敵なディスプレイになりますが、どんな場所にも合うとは限りません。
そこで、丈夫で頼りがいがある宿根草(多年草)についても改めて考えてみましょう。

我が家のパーマカルチャーガーデンにあるペンステモンは、冬の間凍りついていても、その下には新芽が次の太陽光を待っています。
ヘメロカリスはすでに10cmほどの高さに成長しており、数カ月後には庭にたくさんの花と色彩をもたらしてくれるでしょう。ヘメロカリスは種類も色も豊富で、混色のものもあります。園芸カタログを眺めて、大小さまざまな花が咲く品種や、年に2回咲く二季咲きの品種などを眺めるのは楽しいものです。
アイリスもとても信頼できる宿根草。土壌条件やサイズ、色など、ほぼすべての人が理想の品種を手に入れることができるでしょう。我が家の庭でも、冬の間ほったらかしていた枯れ葉の下から、小さな新芽がもう顔をのぞかせています。

まだ花が咲いていない宿根草は、園芸店では販売されていないかもしれませんが、今はオンラインショップや園芸カタログで自分にぴったりの品種を探し、庭の新しい風景を作るには絶好のタイミング。宿根草ガーデンをつくる一番簡単な方法は、“宿根草のミックスボーダーセット”を使うことです。ナーセリーや通信販売会社によっては、こうしたセットを取り扱っているところがあります。滑り込みでの購入にも役立ちますが、まだ時間に余裕がある時期であれば、自分だけの“スペシャルセレクション”を見つけるのも楽しいですよ。例えば、5種類の宿根草を組み合わせ、その間に植える一年草や春に咲く球根類を考えてみてはいかがでしょう。
やせた土地でも育ち、地面を覆う背の低い植物の組み合わせの例としては、タイムとイベリス、その間に背の低いチューリップといったものがあります。あまり見かけない組み合わせですが、美しいコントラストを描きます。

ガーデンでのクリエイティビティは楽しむもの。失敗を恐れる必要はありません。もし一夏を通して楽しめるいくつかの組み合わせが見つかれば、大成功です。
ガーデニングは生涯にわたって続く学びでもありますね。
Credit
話 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -

エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
まとめ / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中!
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