ガーデニングシーズン到来! 参考にしたいベテランガーデナーの春の庭仕事アイデア

Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Niemela, Brigitte
春、植物たちが一斉に成長を始めるガーデニングシーズンの到来です。暖かな日が増え、新芽が伸び始めたり、日々景色が変化して庭に出るのも楽しい季節ですね。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんのガーデンも、春の庭へと模様替え。最近チャレンジした庭仕事がラクになる新しい方法や家庭菜園の収穫、虫との付き合い、ちょっとモヤモヤしたエピソードもレポートします。
目次
重労働な庭作業は手助けを借りて

3月に入ると、春のエネルギーが爆発するかのように、庭では草花が一気に動き始めます。あらゆる場所でそれぞれ植物が成長を始め、日当たりが悪く気温の上がらないコーナーも、ほかの場所から少し遅れて春模様になります。ガーデニングシーズンの幕開けです。
今年は、ナチュラルガーデンのコーナーをつくることを心に決めていました。そのために、庭の整備を手伝ってくれる方を雇ったのですが、これが大正解。庭づくりの際に一人では作業が進まないと悩んでいる方は、ぜひ選択肢として考えてみてください。私の場合は、いつも気持ちよくガーデンを手伝ってくれる友人からの推薦だったので、すぐにアポイントを取ることができました。作業の前に、まずは下見から。ガーデンの状態や作業内容を確認することで、実際の作業日に効率よく進められる大切な準備です。

作業自体は半日だけでしたが、手入れしきれず雑草がはびこっていたエリアを丸ごと掘り返し、成果は十分! 数年かけてしっかり根を張り、はびこった雑草たちは、私の車では運び出しきれないほどでしたし、一人ではこの重労働はとてもできなかったでしょう。取り除いた雑草は、45リットルの袋6つ分ほど。普段は自然のままに任せることが多いのですが、この雑草取りに関しては、実際3年前にはやっておくべき仕事でした!
庭の手伝いに来てくれた青年は、この雑草の山も白黒の真新しい軽トラに載せて持っていてくれました。素晴らしく有能で、とても助かりました。作業が終わる頃には2人ともヘトヘトで腰が痛くなっていましたが、庭仕事は大いに捗ったので、心地よい疲労感。笑顔が絶えない、あっという間の時間でした。
2度目の作業で、よりさっぱりと

この素敵な経験に味を占め、もう一度手伝いをお願いして、レモンバームやアイリス、ペパーミントが生い茂っている場所を整理してもらうことに。大株に育ったアイリスは、そろそろ掘り上げて株分けし、植え直す必要がありましたし、茂りすぎたレモンバームもコンパクトにしたかったのです。しかもヤブカラシまでどこからかやってきて、太い根を伸ばしていました。ヤブカラシは勢いが強く、侵略的で手のかかる雑草です。これらの作業は、一人ではなかなか進みません。手伝ってくれる人がいると、作業効率がぐっと上がりますよ。

こうした庭作業の間、コンポストの中では虫をほとんど見かけませんでした。まだ寒すぎたのかもしれませんね。でも、あたりを見回すと、乾燥した雑草を積み上げた場所では、テントウムシや黒っぽい甲虫、緑のバッタなどがすでに動き回っています。虫たちにとって、寒風や強い日差し、雨や雪をしのげるこうしたシェルターはとても重要になります。
庭でトラブル発生
このように、私はガーデンでは虫たちが暮らせる場所を大切にするようにしています。しかし、それが先日思わぬトラブルに。ちょっとモヤモヤした体験談をお話ししましょう。
庭作業をしているとき、小さな息子さんを連れた男性が、隣の駐輪場に自転車を停めました。挨拶をした後、彼は駐輪場に面した場所に植えてある植物を見ながら、息子さんに「これがカマキリの卵だよ」と教えていました。
ここまではよかったのですが、しばらくして枝が折れる音がするので見に行ってみると、なんと手を入れたばかりのガーデンに入って枝を折り取っていました。心の中では思わず「ドロボー!」と叫んでしまいましたが、なるべく気持ちを落ち着かせて、何をしているのか尋ねたところ、悪びれもせず、アブラムシ対策としてエダマメ畑に置くカマキリの卵を探しているのだとの答えが。
ここは私有地の庭で、なるべく自然を守り、昆虫たちが生息できる環境に整えているので、枝を折ったり何かを持ち帰る前に一声かけてほしかったと伝えたところ、謝罪もなく会話を明後日の方向へ転がし、どこから来たのか、とか、ここに住んでいるのか、などと質問してきました。

ひょっとすると私が細かいことを気にしすぎているのかもしれません。しかし、子どもたちに園芸や、自然や虫の大切さを示したりしてきた身として、大人がこのような振る舞いをすることにとても悲しくなりました。「立ち入り禁止」や「植物や虫を持ち帰らないで」の掲示を出そうかと考えたぐらいですが、「〇〇禁止」の掲示は好きではないので、結局、今まで同様に個人の良識を願うことにしました。
昨夏、なぜこんなに虫が少ないのだろうと疑問に思っていたのですが、もしかしたらこんなことにも一因があったのかも。こういう人はごく一部だと思いますが、ガーデンを見る際は、マナーを守って楽しみたいものですね。
春の庭の喜び

多少のトラブルはありつつも、春のガーデンは日々喜びを与えてくれます。香りのよい白いスイセンやムスカリがいろいろな場所でまとまって咲き始め、近所全体を活気づけています。レンギョウの黄色い花も咲き始めました。レンギョウは葉が出る前に開花するので、より鮮やかに見えます。白、黄色、そしてふっくりしたサクラのつぼみの桜色と、春の色が出揃ってきました。

家庭菜園もシーズンが到来。2月末には新しく耕したエリアにジャガイモを植えたのですが、3週間が経って、ほんの3cmほどの新芽を見せてくれています。アスパラガスも芽吹き始めました。毎年ホワイトアスパラガスを育てていますが、ベストタイミングで収穫するのは難しく、いつも上部が紫に色づいた色付きアスパラガスになってしまいます。

最近ではノラボウやからし菜など、いろいろな種類の菜の花が開花期を迎えています。食卓に並べても春の味が楽しめますし、ヒトだけでなくミツバチたちにとっても春のごちそうの始まり。菜の花のつぼみは、1カ月以上にわたって美味しい胡麻和えの材料にもなってくれました。ドイツでは全く知られていない料理です。
ドイツでは、菜の花を見てもそのつぼみを食べようという考えは浮かばず、どちらかと言えば種子から採れる菜種油をイメージします。ミツバチが好む花なので、いずれ収穫できるハチミツを思い浮かべる人も多いですね。

虫たちにやさしいガーデンを

ミツバチといえば、ドイツでは常にホットな話題の人気者。ガーデナーは開花が早く、長く咲いてミツバチに食料や花粉を提供する「ビーフレンドリー」な花を植えるように意識しています。企業によるコンペで、こうした「ビーフレンドリー」なガーデンエリアをつくって申請すると、補助金が得られるときもありますよ。そのほか、チョウに優しいバタフライガーデンも人気ですし、昆虫の繁殖を助けるプログラムもさまざまあります。特にスーパーマーケットではこうした昆虫に優しいガーデンを推奨する企画をよく行っていますが、時に銀行やホームセンターが開催することも。ホームセンターの場合は、バルコニーやガーデンで必要な商品を買ってもらえるので、まさにWin-Winの企画ですね。

昆虫の生息を助けるため、バルコニーや庭の一部を彼らのためのスペースにしてみてはいかがでしょうか。虫ギライの人も多いですが、虫たちに対してもっと寛容になると、環境にもやさしいのはもちろん、いろいろな姿を見せて暮らしに元気を与えてくれますよ。
Credit
話 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -

エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
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