都立公園を新たな花の魅力で彩る「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」は秋の彩り
新しい発想を生かした花壇デザインを競うコンテスト「東京パークガーデンアワード」。第2回のコンテストは、都立神代植物公園(調布市深大寺)を舞台に一般公開がスタートしています。ここでは、5つのコンテストガーデンの様子や見頃の植物を月々ご紹介。11月の最終審査発表まで成長していく植物と季節のガーデン風景をお見逃しなく。
目次
日々成長するコンテストガーデンは「神代植物公園」正門手前プロムナード[無料区域]で毎日見学可能
第1回の都立代々木公園での開催に続き、第2回の舞台は、武蔵野の面影が残る都立神代植物公園。広大な敷地を有する園内には、四季折々に咲き継ぐ10万本もの花木のコレクションに加え、ばら園や貴重な植物が育つ大温室などがあり、歴史ある植物公園として知られています。第2回のコンテスト会場は、公園の正門手前のプロムナード[無料区域]。書類審査を通過した5名の入賞者がそれぞれ約70㎡のスペースにガーデンを制作し、3回の審査を経て11月にグランプリが決定します。
第2回コンテストのテーマは「武蔵野の“くさはら”」
今回のコンテストのテーマは「武蔵野の“くさはら”」です。 かつて、ここ調布市を含む武蔵野エリアは見渡す限りの原野でした。ススキやハギなどが背を超えるまでに茂り、視界を遮る 山や木もなく、野から出た月が野に沈む、月見の名所としても知られていました。そんな背景に現代的な解釈を加えることで、挑戦者であるガーデナーたちは、豊かな色彩も取り入れながら新しい風景=ガーデンを制作しています。
第1回に引き続き、“持続可能なロングライフ・ローメンテナンス”であることが「東京パークガーデンアワード」の外せないルールです。丈夫で長生きする宿根草を中心に選び、季節ごとの植え替えをせず、四季ごとに花の彩りがあることが求められています。今回の植栽は、1名ごとに北側(日向)と南側(日陰)の異なる環境に花壇を制作するのも特徴です。2023年12月上旬にはそれぞれの区画で1回目の作庭が完了。2024年2月下旬には、2回目の作庭日が設けられ、切り戻しなどのメンテナンスや追加の植栽など、花壇のブラッシュアップ作業が行われました。5つのエリアがそれぞれ日増しに彩りがあふれる4月は『ショーアップ審査』を、梅雨空の7月中旬には『サステナブル審査』が行われました。
【第2回 東京パークガーデンアワード in 神代植物園 最終審査までのスケジュール】
【審査基準】公園の景観と調和していること/公園利用者が美しいと感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること(ロングライフ) /メンテナンスがしやすいこと(ローメンテナンス)/デザイナー独自の提案ができていること/総合評価 ※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。
Pick up 月々の植物の様子
9月の植物の様子
ルドベキア‘タカオ’(Aエリア日向)、ペニセタム‘ルーメンゴールド’(Aエリア日向)、モミジアオイ(Bエリア日向)、アスター‘トワイライト’(Cエリア日陰)
ムラサキシキブ(Cエリア日陰)、ユーパトリウム‘グリーンフェザー’(Dエリア日陰)、シュウメイギク(Eエリア日陰)、ツリガネニンジン(Eエリア日陰)
8月の植物の様子
左から/リグラリア‘ミッドナイトレディ’(Aエリア日陰)、ルエリア‘パープルシャワー’(Bエリア日向)、オミナエシ(Bエリア日向)、バーノニア’クリニタ’(Cエリア日向)
左から/カノコユリ(Cエリア日向)、オトコエシ(Dエリア日向)、ユーパトリウム‘ベイビージョー’(Dエリア日向)、トウテイラン(Eエリア日陰)
7月の植物の様子
左から/ミソハギ(Aエリア日向)、ヤマユリ‘オーラタムゴールドバンド’(Aエリア日陰)、ツルバギア(Bエリア日陰)、エキノプス‘プラチナムブルー’(Cエリア日陰)
左から/アンジェリカ‘エボニー’(Cエリア日陰)、ヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’(Dエリア日向)、シキンカラマツ(Eエリア日向・日陰)、シラヤマギク(Eエリア日向)
6月の植物の様子
左から/カンパニュラ・ラプンクロイデス(Aエリア日陰)、トリテレイア‘ルディ’ と ‘クイーンファビオラ’ (Bエリア日向)、ヤマアジサイ‘藍姫’(Bエリア日陰)、エキナセア・プレーリーブレイズグリーン(Cエリア日向)
左から/シャスタデージー(Cエリア日陰)、アリウム‘レッドモヒカン’(Dエリア日向)、アガスターシェ‘ビーリシャスピンク(Dエリア日向)、コオニユリ(Eエリア日向)
5月の植物の様子
左から/ツツジ ホンコンエンシス(Aエリア日陰)/ダッチアイリス(Bエリア日向)/バイカウツギ(Cエリア日向)/ゲラニウム‘ジョンソンズブルー’(Cエリア日陰)
左から/オーニソガラム・アラビカム(Dエリア日向)/アリウム‘パープルセンセーション’(Dエリア日陰)/ミツバシモツケ(Eエリア日向)/チョウジソウ(Eエリア日陰)
4月の植物の様子
左から/カマッシア・ライヒトリニー(Aエリア日向)/スイセン‘タリア’(Aエリア日向)/ヒマラヤユキノシタ(Bエリア日向)/チュューリップ‘クルシアナシンシア’(Bエリア日向)
左から/ゲラニウム’チュベロサム’(Cエリア日陰)/リクニス‘フロスククリ’(Cエリア日向・日陰)/ラナンキュラス ラックスシリーズ(Dエリア日向・日陰)/シラー・シビリカ(Eエリア日陰)
3月の植物の様子
左から/バイモユリ(Aエリア日陰)/クロッカス‘ホワイトウェルパープル’(A・Cエリア日向)/スイセン‘イエローセイルボート’(Bエリア日向)/チューリップ‘アルバコエルレアオクラータ’(Cエリア日向)
左から/クリスマスローズ(Cエリア日陰)/ベロニカ‘オックスフォードブルー’(Dエリア日向)/原種チューリップ・トルケスタニカ(Eエリア日向)/フクジュソウ(Eエリア日陰)
2月の植物の様子
左から/リナリア・プルプレア(Aエリア日向)/ヤブラン’シルバードラゴン’(Aエリア日陰)/スイセン‘ペーパーホワイト’(Bエリア日向) /メリアンサス・マヨール(Bエリア日陰)
左から/カレックス・ペンデュラ(Cエリア日陰) /ツワブキ(Dエリア日陰) /ディアネラ・ブルーストリーム(Eエリア日陰) /タマシダ(Eエリア日陰)
1月の植物の様子
左から/カラスバセンリョウ(Aエリア日陰)/黒葉スミレ(Bエリア日陰)/ホトトギス(Bエリア日陰) /アシズリノジギク(Cエリア日陰)
左から/シュウメイギク(アネモネ‘ホノリージョバート’)(Cエリア日向) /リョウメンシダ(Dエリア日陰) /タイニーパンパ( Dエリア日向) /カタクリ(Eエリア日向)
全国から選ばれた5人のガーデンコンセプト
「持続可能なロングライフ・ローメンテナンス」をテーマに、各ガーデナーが提案するガーデンコンセプトは、5人5様。それぞれが目指す庭のコンセプトや図面、植物リストの一部をご紹介します。
コンテストガーデンA
Grasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜
古橋 麻美
(東京都)
信州大学農学部森林科学科卒業。英国Writtle CollegeとSir Harold Hillier Gardensにて園芸・ガーデニングを3年間学ぶ。帰国後は造園会社にて商業施設などのガーデン管理や花壇デザインに従事。独立後もガーデナーとして庭のメンテナンスを中心に、植栽デザインと施工のほかワークショップも行う。
【作品のテーマ・制作意図】
武蔵野のくさはらを表現するにあたり、オーナメンタルグラスとカラーリーフ、特徴的な葉を持つ植物をメインにしたガーデンをつくってみたいと思いました。「グラスガーデン」は馴染みが薄かったり、地味にとらえられたりすることもあるかと思いますが、宿根草に加え、球根植物も多用し華やかさをプラスすることで、多くの方に楽しんでいただけるガーデンを目指しています。
【主な植物リスト】
〇北側(日向)
グラス類…イトススキ/カラマグロスティス/ペニセタム/パニカム/モリニア など
季節の花…アガスターシェ/フロックス/ルドベキア/アガパンサス など
和の花…キキョウ/オミナエシ/フジバカマ類/ヤブカンゾウ/ヒオウギ など
球根…ユリ類/スイセン/カマッシア/ダッチアイリス/アリウム など
〇南側(日陰)
グラス・葉物類…フウチソウ/ベニチガヤ/ギボウシ類/クジャクシダ/クサソテツ など
季節の花…アスチルベ/プルモナリア/ティアレラ/ムラサキツユクサ など
和の花…イカリソウ/ヤマブキショウマ/シュウメイギク/チョウジソウ/ミヤコワスレ など
球根…ユリ類/スイセン/コルチカム など
コンテストガーデンA 月々の変化
9月の様子
9月に入ると黄×ピンクの花々とグラスのボリュームが半々となりました。ルドベキア‘タカオ’やミソハギの鮮やかな花が、落ち着いたトーンの中で輝くように咲いて見えます。数本枯れ始めた株もありますが、さまざまな形のグラスの穂によく馴染み、情趣あふれる風景が生まれています。
真夏のダメージがなく、気持ちよい眺めが楽しめるリーフガーデン。整然と立ち並ぶアスチルベの穂はややかたい印象ですが、風をはらんだベニチガヤやフウチソウが点在していることで硬軟のバランスをキープ。オトコエシと共にガーデンが軽やかに見えます。
8月の様子
先月に続き旺盛に花々が群れ咲き、草丈のあるグラス類が加わってきたことで、ぐっと野趣に富んできました。グラス類の中でも特に、エラグロスティス・スペクタビリスのエアリーな穂が株と株の間を埋め、カラマグロスティス ‘カールフォースター’が背後を目隠しし、花々の引き立て役として効果を発揮しています。
瑞々しかった春~夏の花々は終わりを迎え、ひと足早く秋を感じる風景となりました。この時期は、オレンジがかった黄花のリグラリア‘ミッドナイトレディ’や深紅のペルシカリア ‘ブラックフィールド’の濃厚な花色が、植栽に深みを与えています。
7月の様子
野趣あふれたガーデンは、花真っ盛り。バーベナ・ボナリエンシスやミソハギなどの花が奔放に広がり、隣り合う植物がうまく交わりながら、それぞれの美しさを発揮しています。一角では、ピンク×黄の色彩の中に、カノコユリ‘ブラックビューティー’の濃ワイン色がスパイスを効かせて、花壇の存在感をより一層高めています。
清楚さと華やかさをもたらしていたヤマユリが上旬で咲き終わり、下旬からはリーフで魅せる時期となりました。フウチソウなどのグラスが細いラインを、リグラリアやホスタの葉が広い面を描き、色や形が異なるリーフ類の対比の妙が楽しめます。株張りが大きく旺盛に伸びる日向の花壇とは対照的に、日陰の花壇は、花色は控えめながら、全体的にまとまりを感じさせます。
6月の様子
6月の庭で最も目を引くのは右前面のコーナーで盛りを迎えるフロックス‘ブルーパラダイス’。植わるのは1カ所のみですが、同じ花色のバーベナ・ボナリエンシスで背景を埋めることで、まとまりと見応えが生まれています。後半になるとアリウム‘丹頂’とヒオウギが開花。濃いワインレッドと反対色となる黄花が、ガーデン全体のピリリとしたスパイス的存在となっています。
ピンクのアスチルベ‘タケッティスペルバ’や‘ビジョンズインピンク’、そしてカンパニュラ・ラプンクロイデスの花穂があちこちで上がり、縦のラインを強調したデザインが楽しめます。後方ではホスタやリグラリアなどのカラーリーフが明るさや陰影を生み出し、植栽の表情に深みを与えています。
5月の様子
すらりと伸びて高くなった草丈が、初夏の風に揺られながらワイルドなうねりを見せています。中旬になるとリナリア・プルプレアやバーベナ・ボナリエンシス、フロックス‘ブルーパラダイス’、ペンステモン‘ダークタワーズ’ の花が一斉に開花。後方ではカラマグロスティス‘カールフォスター’がブルーグリーンの花穂を上げ、ガーデンは青みを帯びたピンクに色づきました。
ティアレアやムラサキツユクサ‘スイートケイト’、アスチルベなどの、明るくやわらかい葉色が美しいガーデンを構成。上旬はピンクの花を咲かせるツツジ ホンコンエンシスがアクセントになり、下旬になるとリーガルリリーの大輪花が開花して、初夏到来のインパクトを高めています。ホスタやリグラリアなどの葉物がガーデンに落ち着いた印象を与えるなか、手前ではルズラ・ニベアが幻想的な風景を描いています。
4月の様子
4月前半に咲いていた白や黄色のスイセンが中旬には終わり、後方のブルーのカマッシア‘ライヒトリニー’にバトンタッチ。スラリと伸びる花穂が乱立するように広がり、この時季らしい勢いを見せています。まだ花をつけていないその他の宿根草も、形の異なるリーフをこんもりと茂らせ、共演する様子も見どころです。
4月上旬はコンパクトなスイセン‘ベビームーン’が主役で、緑が少なく素朴な風景でしたが、中旬には白いスイセン‘タリア’とプルモナリア‘トレビファウンテン’が咲き始め、ぐっと華やさが増してきました。また、手前ではイカリソウやティアレアの小さい花が咲き、デザイナーがイメージする‘春の森の景色’が表現されています。
3月の様子
日向のエリアでは、上旬はクロッカス‘ホワイトウェルパープル’が彩りを添えるものの、表土がまだ寂しい印象でしたが、後半になると随所に散らしたスイセン‘ベビームーン’の明るい黄花が咲いて、春らしさがぐんとアップ。一方、数か所に植わる銅葉のペンステモン‘ダークワーズ’のダークカラーが引き締め役となり、アイリス類の細い葉が青々と伸び始め、空間を埋めています。
日陰のエリアでは、上旬はカレックスや銅葉のティアレラ‘ピンクスカイロケット’の葉の間から球根の芽色が確認できる程度でしたが、下旬になると日なたと同じスイセン‘ベビームーン’が開花をスタート。まとめて数か所に植えられた小さなシラー・ミスクトスケンコアナも満開を迎え、原生地の林床のような風景を描いています。奥の方ではユリがニョキリと芽を上げ始め、穏やかながらも秘めたパワーを感じさせています。
2月の様子
日向のエリアでは、リナリア・プルプレアの銀葉やペンステモン‘ダークワーズ’の紫の葉がアクセントになって、パニカムやペニセタムの枯れ色の葉が風に揺れています。地際をよく見ると小さな芽が伸び始めています。日陰のエリアでは、イカリソウやティアレラの赤紫の葉が寒さに耐え、花壇の奥では、ヤブラン’シルバードラゴン’が細葉を伸ばして明るい彩りになっています。日向・日陰とも後方に剪定枝で形作ったバイオネストが備えられ、メンテナンス時に出た枯葉などが入れられています。
1月の様子
コンテストガーデンB
花鳥風月 命巡る草はら
メイガーデンズ 柵山 直之
(三重県)
三重県鈴鹿山脈の麓菰野町で自宅の庭をつくり、東海地区を中心に造園業として各種庭づくりに携わっています。大型施設などの造園設計・現場監督業務を経て、現在は個人邸を中心に作庭しています。本業の傍らガーデニング講座の講師やイベント企画運営、舞台美術や創作活動など幅広く活動しています。長野県松本市出身。
【作品のテーマ・制作意図】
ガーデンの美しさは緑量や花の色目や形状だけで測れるものでなく、空や光や風や生きもの全ての関わり合い、生命の尊さを感じることでガーデンがより輝いて見えます。ガーデンに長く根付いて、地域に馴染む風景、生態系の一部になることを想定し、植えっ放しに耐えられる丈夫な品種を中心に、蜜源植物や、風や光の動きを反映しやすい植物を多く取り入れ、地味な在来種でも組合せや配置で奥行ある豊かな草はらの表現を目指します。
【主な植物リスト】
〇北側(日向)
フジバカマ/パニカム‘ブルージャイアント’/ノリウツギ‘ライムライト’/ヘリアンサス‘レモンクイーン’/パブティシア/キキョウ/アヤメ/バーベナ・ボナリエンシス/ダイアンサス・カルスシアノラム/ペニセタム・マクロウルム/ジャーマンアイリス/ルドベキア‘ゴールドスターム’/ヒオウギ(オレンジ花・キバナmix)/ペンステモン‘ハスカーレッド’/スティパ、カッコウセンノウ/ミニスイセン・ティタティタ(球根)/オミナエシ/ダッチアイリス(球根)/アリウム‘丹頂’(球根)/ミューレンベルギア・カピラリス/カマッシア(球根)/イトススキ/ロシアンセージ
〇南側(日陰)
ラナンキュラス‘ゴールドカップ’/カレックス・オメンシス・エバリロ/アジュガ/ベニシダ/フウロソウ/ツワブキ/ユキノシタ/ジャノヒゲ/ヤブラン/ハナニラ(球根)/スイセン各種(球根)/フリチラリア(球根)/ペンステモン/ホタルブクロ/ヒヨドリバナ/アスチルベ/カレックス/アガパンサス(青花・白花mix)/クサソテツ/ヤツデ/スミレ/セキショウ
コンテストガーデンB 月々の変化
9月の様子
上旬までは8月に続いて明るい黄色が目をひく風景でしたが、下旬になると深みのある色味に変化し始めました。青花のルエリア‘パープルシャワー’が鮮やかに開花を進め、後方では、パニカム‘ブルージャイアント’やバーベナ・ボナリエンシスが爽やかに空間を埋め、ライムグリーンのノリウツギの花穂がオーナメンタルな存在感を発揮しています。
瑞々しかった風景も下旬になると、少し色みに深みが増し始めました。通路沿いの右角ではグラス類のディスカンプシア‘ゴールドタウ’とカレックス・フラジェリフェア‘キウイ’が、メリアンサス・マヨールと共にワイルドに葉や穂を展開。それとは対照的に花壇の左右手前ではピンクのツルバギアの花が愛らしい彩りをプラス。コントラストの妙が楽しめます。
8月の様子
オミナエシやヒオウギ、ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’、ヘリアンサス‘レモンクイーン’の黄花がメインの季節を迎えています。ルドベキアの黒い花心が、ペンステモン‘ハスカーレッド’の茶褐色の枯れ穂に呼応。紫花のルエリア‘パープルシャワー’が、きりりとした大人っぽいアクセントとなり、対比的な美しい配色が絵画的な印象を与えています。
ジャノヒゲやヤブランなどのグラウンドカバーが地面をみっちりと覆い、猛暑期間であっても、以前からの瑞々しさを維持しています。ディスカンプシア‘ゴールドタウ’やカレックスなどのグラス類が涼しげな動きをもたらし、静と動のコントラストを強調。のどかな風景が広がっています。
7月の様子
ルドベキア‘ゴールドスターム’やヒオウギ、オミナエシ、コレオプシス‘レッドシフト’などたくさんの黄色い花があちらこちらで開花し、パワーあふれる夏の植栽を演出。やわらかい穂のペニセタム・ビロサムやペニセタム・マクロウルムがふわりとした動きをもたらして、花壇全体に強弱をつけています。
アジサイ‘アナベル’が明るさを、ツルバギアが愛らしさをプラスしています。下旬になるとアジサイに代わって、メリアンサス・マヨールが数々の葉を広げ、彫刻的な造形で特異な雰囲気を醸し出します。ともすると唐突感が出てしまいそうですが、その手前でさらさらとした穂を上げるディスカンプシア‘ゴールドタウ’が配されていることで、ナチュラルなガーデンにまとまりを持たせています。
6月の様子
春の見せ場だったアイリスに代わり、涼しげなブルーの花を咲かせるトリテレイア‘クイーンファビオラ’が咲き始めました。後半になるとルドベキア‘ゴールドスターム’の黄色い花が鮮やかさをプラス。青×黄にアリウム‘丹頂’やダイアンサス・カルスシアノラムの濃いピンクが寄り添い、色彩豊かな風景となりました。
青々としたヤブラン、ジャノヒゲが広がる野原のような植栽に、2種のアジサイが開花し、立体感をもたらしています。手前に咲くヤマアジサイ‘藍姫’の青花と後方で咲くアジサイ‘アナベル’の白花が、涼やかな彩りをプラス。中央を横断する溝は、小道のような雰囲気を維持しています。
5月の様子
春のガーデンは数種のアイリスが主役で、上旬はアヤメや各色(青・黄・白)のダッチアイリス、ジャーマンアイリスが随所で咲き乱れていました。主役と混ざり咲いていたダイアンサス・カルスシアノラムは、中旬になるとペンステモン‘ハスカーレッド’とともに、主役級の存在感を発揮。背後ではパブディシア トワイライトが開花し、シモツケのライム葉と共にガーデンに奥行きを感じさせています。
一面に咲いていた黒葉スミレが終わり、ヤブランやジャノヒゲが広がる草原のような風景に。そこに清らかな華を添え続けているのは、白いレースのような花を咲かせるオルラヤ。絶妙な透け感とふわふわとした草姿が、風の動きをもたらし、素朴な野草の雰囲気があります。中旬には、ガーデン中央に植わるヤマアジサイ 藍姫が咲き始め、オモトやツワブキとともに、どことなく和の雰囲気を漂わせています。
4月の様子
線状の葉を持つアイリスなどが溝に沿って多数立ち上がり、緑と花のコントラストによって花壇のデザインが際立ってきました。上旬に咲いていたスイセンは咲き終わり、中旬にはカッコンセンノウやシラー・ペルビアナのブルーがアクセントに。アイリスのつぼみもぐんぐんと膨らんできているので、一斉に咲く5月は風景が一変すると予感させます。
上旬はリュウノヒゲと黒葉スミレが春の庭の骨格となって、スイセン・テタテートがアクセントとして効果的に見えていましたが、中旬になると前方で淡い黄色のミニチューリップが開花。差し色としての役割も担いながら、黒葉スミレの紫との反対色で彩りにコントラストをつけます。また、ペンステモンやオルラヤが大きくなりはじめ、立体感が出てきました。
3月の様子
日向のエリアでは、上旬はカットバックしたグラスのドーム型のフォルムが目立っていましたが、下旬になるとアイリスの細い葉やペニセタム・マクロウルムの緑が瑞々しく展開。黄色いスイセン‘イエローセイルボート’やチューリップ‘シルベストリス’が、あちこちでにぎやかさを放っています。また、中央を渡る溝に沿って植物が並ぶ規則性が、気持ちの良さを感じさせます。
日陰のエリアは、上旬はノシランやリュウノヒゲ、ツワブキなど常緑のリーフ類+スミレの小花で覆われるのみでしたが、下旬になると黄花のスイセン‘ティタティタ’や、大輪のスイセン‘ラスベガス’、そのまわりには青花のムスカリが開花をスタート。やわらかい花色が加わることで、春の訪れが少しずつ感じられるようになりました。
2月の様子
日向のエリアでは、イトススキやミューレンベルギア・カピラリスのダイナミックな枯れ姿がアクセントになりながら、等間隔に植る常緑アヤメやダッチアイリスの芽吹きが緑のアクセントになっています。奥では早くもスイセン‘ペーパーホワイト’が咲き始めました。日陰のエリアでは、ツワブキや黒葉スミレ、ヤブラン、メリアンサス・マヨール、ヤツデなど、さまざまな常緑の葉が花壇に彩りを添えています。
1月の様子
コンテストガーデンC
草原は、やがて森へ還る。
吉野 ひろき
(京都府)
庭花 niwahana landscapes kyoto代表。植物が好き。森が好き。「お庭の数だけ、大切な物語がある。」をキャッチフレーズに、心に響くどこか懐かしいナチュラルガーデンを、設計デザインから施工まで手がけています。また、庭づくりの傍らで、地域の小学校や寺院などで、森の授業や森づくりの指導などの活動もしています。
【作品のテーマ・制作意図】
森では、様々な木々が壮絶な生存競争を繰り広げています。しかしそれは草原もまた同じ。草原は生命力に溢れる草花たちの戦いの場です。そしてやがて、草原の中から樹木が芽生え、最終的には森へと遷移していきます。私は、草原から森へと還るこのはじまりの瞬間を、美しくもドラマティックに演出したいと思いました。ここは、森が好きなガーデンデザイナーが解釈し表現したペレニアルガーデンです。
【主な植物リスト】
〇北側(日向)
グラス類:アオチカラシバ/エラグロスティス‘スペクタビリス’/カレックス‘フェニックスグリーン’/スティパ‘テヌイッシマ’/ディスカンプシア‘ゴールドタウ’ など
球根類:コオニユリ/カノコユリ/スノーフレーク/ハナニラ(イフェイオン)‘ジェシー’/原種系チューリップ ‘アルバコエルレアオクラータ’/クロッカス‘ホワイトウェルパープル’/アリウム‘カメレオン’/アリウム‘グレースフルビューティー’ など
宿根草:ノカンゾウ/アヤメ/ミソハギ/ウツボグサ/シュウメイギク/チョウジソウ/ワレモコウ/フジバカマ/ハゴロモフジバカマ/オミナエシ/ノコンギク‘夕映え’/アスター‘アポロ’/シオン‘ジンダイ’/エキナセア‘パープレア’/エキナセア‘ロッキートップ’/ルドベキア‘ヘンリーアイラーズ’/セントーレア‘ニグラ’/オルレア(一年草)/ガウラ‘クールブリーズ’/ペルシカリア‘ブラックフィールド’/フロックス‘フジヤマ’ など
低木類:ガマズミ/バイカウツギ/コバノズイナ/テマリシモツケ など
〇南側(日陰)
グラス類:カレックス‘ペンデュラ’/カレックス‘テスタセア’/シマカンスゲ/ワイルドオーツ/フウチソウ など
球根類:ヒアシンソイデス‘ヒスパニカエクセルシオール’/シラー・シベリカ‘アルバ’/フリチラリア‘バイモユリ’/フリチラリア‘エルウィシー’/カマシア‘クシキー’/ゲラニウム‘チュベロサム’/コリダリス・ソリダ‘ベスエヴァンス’ など
宿根草:キチジョウソウ/ヤブラン/ギボウシ/オカトラノオ/ホタルブクロ/イカリソウ/ミツバシモツケ/クリスマスローズ/シュウメイギク/チョウジソウ/ハゴロモフジバカマ/ベニシダ/ニシキシダ/クサソテツ/アスター‘トワイライト’/アスター‘リトルカーロウ’/ワイルドチャービル/サラシナショウマ(シミシフーガ)‘ブルネット’/カラマツソウ(タリクトラム)‘ヒューイットダブル’/モウズイカ(バーバスカム)‘ビオレッタ’/ペンステモン‘ミスティカ’ など
低木類:ナツハゼ/ノリウツギ/ムラサキシキブ/ヤツデ‘スパイダーウェブ’/コバノズイナ など
コンテストガーデンC 月々の変化
9月の様子
どっしりとした株のフロックス‘フジヤマ’(オイランソウ)やルドベキア‘ブラックジャックゴールド’、アガスターシェ‘ブルーフォーチュン’が、左右・中央の3カ所で開花。そのまわりの空間をガウラやバーベナ・オフィシナリス‘バンプトン’などのふわりと広がる草花が美しく咲き乱れています。後方では、ガマズミの赤く色づいた実が静かに秋らしさをアピール。
ナツハゼやノリウツギなどの低木のまわりでフウチソウやワイルドオーツが流れるように葉や穂を揺らすさまは、いつまでも暑さが残る9月の風景に清涼感をプラス。後方ではノリウツギの枯れた花穂と共にムラサキシキブやアスター‘トワイライト’が繊細な初秋の風景を描いています。
8月の様子
押し寄せる大波のごとく茂っていた上旬。成長しすぎた植物がざっくりと刈り込まれた下旬は、それまでとはひと味異なる風景が楽しめるようになりました。この時期は、鮮やかな花色のバーノニア’クリニタ’やフロックス‘フジヤマ’(オイランソウ)、ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’が、まわりを牽引するように華やかに咲き誇っています。
日向エリアと同様に、下旬までに大胆な剪定が行われ、前側と後側の区分けがはっきり見えるようになりました。その効果で、ノリウツギの花房がアクセントとなり、中央でアガスターシェ’ブラックアダー’がどっしりとした安定感を強調。眺めていて心地よい風景が生み出されています。
7月の様子
7月に入ると花数は減ったものの、全体のボリュームはさらにアップ。宿根草に加えて数本の低木が植えられているガーデンは、ゆうに人の背丈を越し、迫りくるような迫力を感じさせます。それはまるで植物と虫の聖域。その旺盛に茂る植物を目の前にすれば、思わず奥へとかき分けて入って行きたくなる衝動に駆り立てられます。コオニユリに代わりカンゾウのオレンジ色がアクセントとなっています。
フウチソウやワイルドオーツなど、さらさらとした穂が風に揺れるさまが涼を感じさせます。下旬になると、ガーデン中央部にアンジェリカ‘エボニー’のシックな花穂が上がり、植栽に大人っぽい表情が見られるように。そのほか、白や淡いブルーなど楚々とした花が随所に咲きはじめ、小さな変化を見つける楽しさもあります。
6月の様子
前半は淡いトーンで優しい印象でしたが、中旬になると全体的に深みのあるトーンに変化。ガイラルディア‘グレープセンセーション’やエキナセアなどのキク科の花が、素朴ながらも賑やかさをプラスしています。また、オレンジ色のコオニユリがアクセントとなり、品の良さを保ちつつワイルドな風景となっています。
6月の主役はシャスタデージーとリクニス・コロナリアの白花。バリエーション豊富なリーフ類が旺盛に茂り、大きなうねりを見せていますが、中央に横断させた深めの溝がデザインを切り替え、ボリュームのある植栽をすっきりと見せています。
5月の様子
コバノズイナやバイカウツギ、アメリカテマリシモツケ‘サマーワイン’などの低木が開花の時期を迎えました。中旬になると草花は人の背丈を超えはじめ、溝の部分がけもの道のような雰囲気を醸しています。印象深いのは、ガーデン右側半分にたくさん植わるスティパ・テヌイッシマ(エンジェルヘアー)。風に吹かれて波のような動きを作り、どこかファンタスティックなシーンとなっています。
こんもりと茂る植栽の中で、随所で多種多様な姿の花が咲いているのが印象的です。手前ではゲラニウム‘ブームショコラッタ’やサルビア・ネモローサ‘スノーヒル’、ヒメケマンソウ、中央ではシャスターデージー‘スノードリフト’、脇・後方ではペンステモン・ミスティカ、シシリンシウム・ストリアタム、カマッシア・ライヒトリニー‘セミプレナ’などが開花し、見る人を飽きさせない初夏の植栽プランが楽しめます。
4月の様子
低木のガマズミが柔らかな葉を展開し始め、より立体的な風景に変化しています。中央の谷溝にはブルーの小花のベロニカ‘ウォーターペリーブルー’が咲き広がり、投げ込まれた木片と相まって野趣たっぷりに。後方ではフェスツカやフェンネルなどの茂みの中からアリウム・リグラムがつぼみを上げ、手前ではピンクのシャボンソウやシレネなどの花が下垂、幻想的な風景を描いています。
上旬はクロッカス‘ホワイトウェルパープル’とクリスマスローズのピンク色が主役となり、愛らしさを感じる風景でしたが、中旬になると全体的にボリュームが出て、ワイルドさを感じさせる風景に。リクニス’フロスククリ’やゲラニウム’チュベロサム’などの繊細な小花が存在しながら、季節が進むとヒメケマンソウやシラーカンパニュラータ、ワイルドチャービルが存在感を放ちはじめ、主役が次々と移り変わっています。
3月の様子
日向のエリアは、上旬はクロッカス‘ホワイトウェルパープル’が一番乗りで開花を謳歌していましたが、下旬ともなると原種のチューリップ‘アルバコエルレアオクラータ’やスノーフレークが群生するように開花。株姿をコンパクトに、かつ白花で統一することで、野趣あふれる早春の風景が実現しています。
日陰のエリアは、上旬の開花は数株あるクリスマスローズのみでしたが、下旬になると、クロッカス‘ホワイトウェルパープル’が加わり、楚々としながらも華やかさのある風景が見られるようになりました。クリスマスローズは花色や咲き方にバリエーションがあるので、うつむいて咲く花を一輪一輪見比べるのも一興です。
2月の様子
日向のエリアでは、敷き詰められた落ち葉や杉皮樹皮バークの間からシレネやガウラ、オルレア、サルビアなどが少しずつ緑を増やし、つんつんと球根の芽吹きも出始めています。日陰のエリアでは、細葉を放射状に伸ばすキチジョウソウが緑のラインを作り、小高い場所ではクリスマスローズが生き生きと茂っています。ひと際明るいライムグリーンの葉を茂らせているのは、ワイルドチャービル(ヤマニンジン)。
1月の様子
コンテストガーデンD
feeling garden ~伝え感じる武蔵野の新しい風景づくり~
藤井宏海
(福岡県)
西日本短期大学緑地環境学科を卒業。ランドスケープコンサルタントに入社し都市緑地の計画設計に従事。その後、フリーランスとなり「自然を楽しみ自然の魅力を伝える」ことをテーマに、ランドスケープやお庭の設計、宿根草を主体にまちに花と人の輪をひろげる「福岡市植物園ねづくプロジェクト」のスタッフとして活動する。
【作品のテーマ・制作意図】
人々の心に残る武蔵野の情景を骨格に、新たな要素を組み足して、これからの愛される武蔵野の風景を植物の魅力や武蔵野の風景を「伝え」「感じる」ことを軸に提案しました。武蔵野の草原を連想させるグラスをベースに、季節の流れの中で、さまざまな色や形の草花がガーデンを彩っていくような配置を心がけました。自然との距離が遠くなった現代で、このガーデンが少しでも自然と人とが寄り添うきっかけになればと思っています。
【主な植物リスト】
〇北側(日向)
イトススキ/カラマグロスティス/カレックス/ユーパトリウム ‘ベイビージョー’/ムギ/ソバ/ダンギク/ベルガモット/オミナエシ/ワレモコウ/ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’/エキナセア/バーベナ・ボナリエンシス/アリウム/チューリップ
〇南側(日陰)
カレックス/ギボウシ/ツワブキ/クサソテツ/アカンサス・モリス/バプティシア/ユーパトリウム’チョコレート’/ペルシカリア‘ファイヤーテール’/アジサイ‘アナベル’/オトコエシ/オミナエシ/カクトラノオ/ペンステモン/アリウム/チューリップ
コンテストガーデンD 月々の変化
9月の様子
無数の花を咲かせて元気いっぱいに存在感を発揮していたルドベキア‘ブラックジャックゴールド’の開花も落ち着きを見せてきました。花数が減った分、カレックス・テヌイクルミスのオレンジ味のあるブラウンが際立つようになり、イトススキの穂も上がり始めました。暑さが残るものの、一気に季節が進んでいます。
9月も引き続き瑞々しい風景を維持しつつ、全体的に深みのあるトーンに変化し始めました。依然ノリウツギとアジサイアナベルのライムグリーンの花穂がシーンに明るさをもたらし、そこにダークな枯れ穂をつけるペンステモン‘ダコタバーガンディ’がピリリとスパイスを効かせています。
8月の様子
メインカラーとなる赤×黄の中で、バーベナ・ボナリエンシスの紫ピンクやオトコエシなどの白花が加わって、植栽の表情がより変化に富んでいます。ススキ‘パープルフォール’やカラマグロスティス‘カールフォースター’など、随所で穂を伸ばす多様なグラス類が存在感を出し始めました。
ノリウツギとアジサイ‘アナベル’×リーフ類で織り成す夏の植栽は、ずっと瑞々しいシーンを提供。その中で、白花のオトコエシと赤花のペルシカリア‘ファイヤーテール’が、さりげないアクセントになっています。この時期は、花壇の後方でぐんぐん伸びているユーパトリウム‘グリーンフェザー’も見どころ。
7月の様子
色彩豊かな時期が過ぎ、トーンに落ち着きを見せる7月のガーデン。先月に引き続き、ヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’やルドベキア‘ブラックジャックゴールド’の鮮やかな花色が目を引いています。奥と両脇の草丈が高くなるように設計された花壇は、波のうねりのようなダイナミックな高低差を感じさせ、迫力と同時にリズム感も生み出しています。
瑞々しかったアジサイ‘アナベル’が下旬になるとくすみはじめ、グリーンのグラデーション×ダークカラーのシックな組み合わせが際立つようになりました。まるで大波が押し寄せてくるかのようなボリューム感で見る人を圧倒する植物群。手前に広がるシダ類は明るさと動きをもたらしながら、ワイルドさもプラス。艶やかな葉や雫をつける葉が輝き、雨も似合うガーデンです。
6月の様子
アキレア‘パイナップルマンゴー’やモナルダ(赤)、ヘレオプシス‘ブリーディングハーツ’など、ホットな彩りでまとめられた初夏の植栽。その中で、アガスターシェ‘クレイジーフォーチューン’やベロニカ・ロンギフォリアのブルーが爽やかなアクセントとなっています。ボルドー色のアリウム‘レッドモヒカン’の球体の花が、あちこちで浮遊するように顔を出しているのもユニーク。
盛りを迎えたアジサイ‘アナベル’。大きな白い花が植栽の背景となり、さまざまな色形のカラーリーフが各々の魅力を発揮しています。ツワブキやペンステモン‘ダコタバーガンディ’、アジュガなど、緑×ダークトーンを基調としたリーフ合わせの中に、リョウメンシダなどの明るいグリーンを入れ込むことで、コントラストを効かせています。また、白い小花を咲かせるニホンムラサキが株間を埋めているのも見どころ。
5月の様子
春の庭を牽引していたチューリップから、アリウム類にバトンタッチ。上旬は‘パープルセンセーション’、中旬は‘クリストフィー’ が主となり、それを支える花もラナンキュラス ラックスからアキレア‘パイナップルマンゴー’に移り変わりました。ポイントで植えたスティパ・テヌイッシマ(エンジェルヘアー)の輝きが、初夏の植栽をふんわりと支えています。
日向のガーデンと同様、チューリップが終わり、愛らしかった植栽はぐっと大人っぽい表情を見せ始めました。上旬は左側がラナンキュラス ラックスシリーズが間を埋めていましたが、中旬になると花が終わり、アリウム‘パープルセンセーション’や‘フォーロック’の開花がスタート。銅葉のアスチルベ‘ダークサイドオブザムーン’やペンステモン‘ダコタバーガンディ’が瑞々しい植栽を引き締めています。
4月の様子
上旬は、赤・白・オレンジのチューリップ×ラナンキュラス ラックスシリーズの愛らしいカラーリングから、赤とブラックに花色が移り変わり、きりりとした表情が加わりました。また、それらを引き立てるように淡い花色のアネモネの株がボリュームアップ。スラリと縦に伸びるムギが瑞々しいアクセントになって、春を謳歌する花々の競演が楽しめます。
上旬にはほとんど咲いていなかったチューリップが中旬には一斉に開花し、日向に少し遅れて春爛漫の風景に変化しました。低い場所ではアジュガが小さなブルーのつぼみを無数につけ、後方ではノリウツギ類が柔らかい葉を少しずつ展開。春の見せ場から次の見せ場へと移りゆく季節の流れが、そよ風にのってふんわりと感じられます。
3月の様子
日向のエリアは、上旬は最前列や溝の縁に咲くベロニカ‘オックスフォードブルー’の青い小花がナチュラルな彩りを添えていました。下旬になると、コンパクトなチューリップ‘スワラ’(赤)、‘ショーグン’(オレンジ)、‘ホワイトバレー’(白)がラナンキュラス‘ラックス’とともに咲き始め、一気に春本番のにぎやかさを演出。ムギやスティパ・テヌイッシマのやわらかい葉が、花の可憐さを一層引き立てています。
日陰のエリアは、上旬は冬から常緑性の濃い緑葉のリーフ類が青々と茂っているので、既に瑞々しい風景です。数センチほど芽が出始めていたチューリップの葉が、下旬になると20cmを超えるまでに成長。全体的にリーフの色にバリエーションが生まれ、変化のある表情になってきました。ポツンぽつんと植えられたラナンキュラス ラックスの赤や白い花が、アクセントになっています。
2月の様子
日向のエリアでは、スティパやカレックス、タイニーパンパ、セスレリアなどさまざまな細葉が風に揺れるなか、地際ではベロニカの銅葉やルドベキアなどが少しずつ葉を増やし、多数の球根類の芽も出始めています。日陰のエリアでは、アナベルの株元にアカンサスの鮮やかな葉が茂り、ツワブキやリョウメンシダなどの常緑の葉がリズミカルな彩りになっています。立ち上がる細葉や地面を這うように広がる丸葉など、フォルムの違いが楽しめます。
1月の様子
コンテストガーデンE
武蔵野の“これから”の原風景
清水一史
(東京都)
福井に生まれ、金沢で大学時代を過ごす。民間の不動産会社で都市再開発に伴う外構や公園、道路の整備に従事。三鷹市の鴨志田農園で完熟堆肥作りを学び、暮らしの中で出る生ごみから堆肥をつくること、土づくりや野菜栽培、植栽設計など屋外空間を彩り、暮らしていく術を日々実践中。
【作品のテーマ・制作意図】
世界的に”Climate Change(気候変動)”が叫ばれ、日本でも夏の猛暑、雨不足による水ストレスが植物を苦しめました。農業技術である完熟した堆肥をはじめ有機資材を使い、微生物に富み団粒構造を持つ土壌を作ることからはじめ、これまで武蔵野の草原風景を担ってきた在来植物を中心にガーデンを構成します。都市の暮らしの中でこぼれ落ちてきた技術、植物でこれからの武蔵野の風景を模索していきます。
【主な植物リスト】
〇北側(日向)
ヤマハギ/ミソハギ/オミナエシ/ノガリヤス/チカラシバ/フジバカマ/オトコエシ/コマツナギ/ワレモコウ/シラヤマギク/カワミドリ/フジアザミ/ノダケ/ヒヨドリバナ/キセワタ/マツムシソウ/クララ/オカトラノオ/ヤマホタルブクロ/ツルボ/キキョウ/アサマフウロ/タカノハススキ/ミスカンサス‘モーニングライト’/ミツバシモツケ/カタクリ/ムラサキ/カライトソウ/タムラソウなど
〇南側(日陰)
フクジュソウ/ヒトリシズカ/フタリシズカ/ツリガネニンジン/キバナノアキギリ/チダケサシ/シュウメイギク/クジャクシダ/ナチシダ/クサソテツ/ヒトツバ/ナキリスゲ/ゲンノショウコ/ナガボノシロワレモコウ/ヤグルマソウ/キョウガノコ/チョウジソウ/アキカラマツ/フシグロセンノウ/キリンソウ/エゴポディウム・バリエガータ/ツワブキ・アージェテリウム‘浮雲錦’など
コンテストガーデンE 月々の変化
9月の様子
成長期を終えてすっかり丈が高くなった植物によって、背景が見えなくなりました。9月の開花は小さなピンクの花をつけるコマツナギと白い小花をつけるキセワタ。花は少ないですが、初秋の風にそよぐ景色には、どこか郷愁を感じます。
日向の植栽とは異なる趣で、ダイナミックに株を広げる山野草。上旬にはシラヤマギクやトウテイラン、シュウメイギクが見頃を迎えました。下旬になると、ラインを描くイトススキやギザギザの葉を展開するナチシダなどが見せる“組み合わせの妙”がより分かりやすく楽しめます。
8月の様子
8月に入ると全体的に丈が高くなり、迫力のあるシーンが楽しめるようになりました。下旬になると花数は少し減りましたが、人の背丈ほどあるノダケやキセワタがつぼみや花をつけ始め、山野草をセレクトしているからこそのユニークな花が観賞できます。
シラヤマギクの白花が満開となり、つぼみをつけたヒヨドリバナやナチシダなどが量感たっぷりに枝葉を伸ばしています。一方、手前ではクールなトウテイランのシルバーリーフと青花が引き締め役となり、ひねりを効かせたデザイン性が植栽の表情を深めています。
7月の様子
ますます草丈が高くなり、見応えが出てきました。紫の穂をたくさん上げるカワミドリや、繊細な白花を咲かせるシラヤマギクによって爽やかな風景が楽しめる中、キキョウやタムラソウが可憐な彩りを加えています。先月に引き続きフジアザミが個性的な姿を見せ、道行く人の足を止めています。
上旬は、丈のあるシキンカラマツが控えめながらも目を引いていましたが、下旬になるとフシグロセンノウとオオバギボウシの花にバトンタッチ。鮮やかなオレンジ花が加わって、よりにぎやかになりました。中央から四方に向けて、リーフの緑のグラデーションが伸びやかに広がり、見る人に心地よさを与えています。
6月の様子
上旬は前面のホタルブクロや寺岡アザミがメインでしたが、中旬になるとシキンカラマツ、コマツナギ、シラヤマギクなどが開花。オレンジ色のコオニユリの花がポツンポツンと点在する様は野趣にあふれ、自然な風景を思わせています。右手前コーナーでは、彫刻的な形の花を咲かせているフジアザミが道行く人の目を引き、山野草ガーデンの奥深い世界へといざなっているようです。
つややかな緑のグラデーションの中央でピンクの花をつけるシキンカラマツが、楚々としながらもシンボリックな存在感を放っています。まわりにはシマイトススキやホスタなどが瑞々しく成長。スカビオサ‘ムーンダンス’の薄クリーム色の花を無数に上げる様子は、幻想的な雰囲気たっぷりです。
5月の様子
山野草たちの開花がスタートしました。前面ではほかの宿根草に先立ち、ヤマホタルブクロ‘アケボノ’や寺岡アザミ、ミツバシモツケが開花のピークを迎えています。中でも目を引くのが黄色い花をつける多肉質のキリンソウ。フジアザミの尖った葉とともに、ユニークな雰囲気を醸しています。植栽奥では、赤花のアストランティア‘ベニス’が彩りをプラス。
木漏れ日の下でやわらかな山野草が広げる姿は、林床を思わせます。上旬はチョウジソウが可憐な花を咲かせていましたが、中旬になるとミツバシモツケやタマガワホトトギスが開花。後方では、繊細な切れ込みが入るナチシダが瑞々しい野性味を放っています。
4月の様子
他よりも少し遅れて芽吹きはじめた山野草も、春の日差しに誘われて成長を進め、中旬になると繊細な葉をあちこちで展開させているのがわかります。花壇の前方で一番早く成長し、存在感を出していた寺岡アザミ。そこに追いつく勢いで、シキンカラマツやフジバカマが柔らかい葉を旺盛に茂らせます。武蔵野の野原を感じさせる瑞々しい風景が見られるようになりました。
日向のエリアと同じく、あちこちで芽吹きが進み、さまざまな葉が展開し始めています。白い華やかなスイセンと野趣のある小さな花を下げるスノーフレークが清楚な彩りをプラス。こちらでもシキンカラマツが茂り、日向との共演が予想できます。山野草の芽吹きの楚々としたたたずまい、繊細な葉の違いなどをじっくり眺められるのは、この季節ならではの楽しみ。
3月の様子
日向のエリアは、上旬はまだまだ表土が見える場所が多いですが、最前列に原種チューリップ・トルケスタニカが咲き始め、道行く人を楽しませています。下旬になると奥の方でシキンカラマツなどの葉が展開をスタート。ガーデンの前方コーナーでピンクのカタクリが愛らしい花の楚々とした姿が楽しめるようになりました。
日陰のエリアは、ガーデンの中央高台に植わる常緑のディアネラ‘ブルーストリーム’が中心となり、この時期のアクセントになっています。上旬にはまだ地上部に出てくる野草の数は少なかったのですが、下旬になるとガーデンのあちこちで各種の植物が成長を開始。野草は成長が遅いだけに、やっと顔をのぞかせる姿が見る人の心を和ませているよう。上旬に咲いていたフクジュソウは花後、繊細な葉を茂らせています。
2月の様子
日向のエリアでは、地上部が残されていたフジバカマなどの株元をよく見ると、新芽が吹き始めています。また、ところどころで原種チューリップの芽も確認できます。1月は小さかったノアザミ(寺岡アザミ)が地面を這うように葉を広げています。日陰のエリアでは、小高い場所でディアネラ・ブルーストリームが力強く葉を茂らせ、その背景にはタマシダやナキリスゲ、ヒトツバなどが緑の彩りとなっています。
1月の様子
第2回 東京パークガーデンアワードの入賞者によるオンライン座談会イベント開催
2024年8月6日(火)15:30〜オンラインで開催された「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」の入賞者5名による座談会では、自身の応募書類の紹介、植物の調達から造園、メンテナンス、コンテストに参加して得たことなどがたっぷり語られました。アーカイブ動画はYouTubeにて公開中。以下バナーよりご覧いただけます。
5つの花壇のコンセプトや作庭の詳しいレポートはこちらをチェック!
コンテストガーデンを見に行こう! Information
【news】 神代植物公園での東京パークガーデンアワード開催に伴い、園内の宿根草園のリニューアル、人にも環境にも優しいガーデン「JINDAIペレニアルガーデンプロジェクト」を市民のみなさんと進すすめていま す。3分の1がリニューアルを終え、こちらでもガーデンをお楽しみいただけます。プロジェクトの詳しい内容は こちらから! https://note.com/jindai_perennial
都立神代植物公園(正門手前プロムナード[無料区域])
所在地:東京都調布市深大寺元町5丁目31-10
https://www.tokyo-park.or.jp/jindai/
電話: 042-483-2300(神代植物公園サービスセンター)
開園時間:9:30〜17:00(入園は16:00まで)
休園日:月曜日(月曜日が祝日の場合、翌日が休園日、年末年始12/29~翌年1/1)
アクセス:京王線調布駅、JR中央線三鷹駅・吉祥寺駅からバス「神代植物公園前」下車すぐ。車の場合は、中央自動車道調布ICから約10分弱。
Credit
写真&文 / 井上園子 - ライター/エディター -
いのうえ・そのこ/ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』、近著に『簡単で素敵な寄せ植えづくり』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
撮影 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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