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「第3回  東京パークガーデンアワード 砧公園」ガーデナー5名の2月の“庭づくり”をレポート

「第3回  東京パークガーデンアワード 砧公園」ガーデナー5名の2月の“庭づくり”をレポート

2024年12月中旬に行われた第1回作庭から約3カ月が経ち、4月の審査に向けて着々と植物の成長が見られる5つのコンテスト花壇。2月下旬に2回目となる作庭日が2日間設けられました。今回は、2カ月間のメンテナンス作業と、作庭の様子、ガーデナーたちの思いをご紹介します。

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本格的な春到来前に行なわれた2月のメンテナンス作業

作庭日の2月下旬は、例年ほどの寒い日はなかったものの、吹きさらしの砧公園では最低気温がマイナスになることもありました。どこのガーデンも万全の策で無事に冬を乗り越えていましたが、自然が相手では思いもよらぬことが起きるもの。いくつかのガーデンで球根類が掘り起こされた跡が発見されました。そのイタズラは、周囲の大木に棲みつく都会のカラスたちによるものと判明。代々木・神代ではなかった事態です。

そこでガーデナーたちは、カラス対策として水糸や麻糸を植栽の上に張り巡らすなどの策を講じることになりました。それでも隙間から入り込むつわものも。植物が根を張るまでの辛抱です。

鳥よけが施されたガーデン。これも自然との共存のためのひと手間。

「第3回  東京パークガーデンアワード」【2月】第2回作庭

2回目となるコンテストガーデンの作庭は、12月の第1回作庭時に多くの作業を済ませたこともあり、半日~1日でほぼ作業が終わりました。順調に進んだそれぞれのガーデンの作庭の様子をご紹介します。

コンテストガーデンA
Gathering of Bouquet 〜庭の花束〜

◆今回の作業◆

①プランツタグをつける

カラスが紙のタグを引っこ抜いてしまう前に、金属製の黒いプランツタグを設置する。

②グラス類の切り戻し、枯れた葉の除去

グラス類の地上部をカット。取り除いた枯葉とグラス類は細かく切って、花壇の中央に設けたバイオネストに入れる。

③新しい苗の追加植栽とバークの追加

カラスの被害を受けた苗は交換しながら、ポイントでフロックスを補植。マルチングが流出した箇所には、寒の戻りの対策としてマルチバークを追加する。

④バイオネストの補強と中を攪拌

しなやかな細い枝を編み込みながらバイオネストを補強しつつ、細かく刻んだ発生材はおがくずと一緒に土としっかりと攪拌する。

◆作業完了時のガーデンの様子◆

草花を通じて、訪れる人々の優しい気持ちが連鎖するように願いを込めて、ラウンド型のブーケを模した配植計画と色彩計画で構成されています。子どもたちの目線の高さを意識して計画されているため、レイズドベッドの縁近くにはスイセンやシラーなどのコンパクトな球根類が咲き、多くの世代の目線から楽しめるように工夫されています。また、花壇中央に設けたバイオネストへと続く管理動線には小枝を用いており、里山の小路を連想させるような、どこか懐かしさを覚える風景が広がっています。

【第2回作庭を終えて】

【第2回作庭を終えて】

12月に実施した1回目の植えつけから毎週足を運ぶたびに、花壇の細かな表情の変化を肌で感じます。まだ地上部からは見えない宿根草や球根の小さな蕾も多いですが、それらが次々に開花する姿を想像しながら作業するのはとても楽しく、砧公園でガーデナーとして携われる喜びを実感しています。

コンテストガーデンB
Circle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜

◆今回の作業◆

①新しく苗を追加植栽、マルチングの調整

前回手に入らなかった植物を新たに植える。バークに埋まってしまっている小さな植物によく日が当たるように、多すぎるバークを取り除く。

枯れたグラス類の上部をカット

枯れたグラスの葉を取り除き、溝に入れる。まだ寒くなることも考えられるので、汚くなった枝葉除去は、次回以降のメンテナンスにまわす。

③プランツタグを設置

植物名を刻印した木製のオリジナルプランツタグを各所に指す。

◆作業完了時のガーデンの様子◆

命の循環というキーワードをもとに植物だけではなく、生きとし生けるものたちの集まる「庭」をテーマにデザインされています。また、レタスなどの野菜類も加え、いままで携わっていたコミュニティー菜園をこの花壇に再現。宿根草の庭に収穫の要素が追加され、誰もが心浮き立つ風景が作られました。これからの時期、子どもたちが楽しめるオジギソウやニンジンのタネが、ガーデンの手前側に播かれる予定。新しい発想が盛り込まれています。

【第2回作庭を終えて】

【第2回作庭を終えて】

12月の作庭から植物たちもしっかりと根付き、たくさんの新芽も確認できて安心しています。 春は生命の息吹をより感じられる季節。野菜の種を仕込み、新たな苗も植えました。 カラス対策にチームカラーのピンクの糸を張ったり、メンバーで手作りしたプランツタグを設置したりしたのも見どころです。 来園者がこれから訪れる季節の景色を楽しんで愛でてくれたら嬉しいです。

コンテストガーデンC
Ladybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」

◆今回の作業◆

①花がら摘み、球根の植え直し

美観のためと花期を伸ばす目的で、ビオラの花がらをしっかりと摘み取る。また、カラスに掘りかえされた球根を植え直す。

②苗の追加

前回手に入らなかったクジャクアスターやベニチガヤなどの苗を新たに補植する。

輸入苗のエピメディウム(イカリソウ)。株が大きいので分割して植える。

③バークチップを足す

マルチングが減ってしまった場所に、バークチップを加える。

◆作業完了時のガーデンの様子◆

砧公園で暮らす「小さな住人(虫たち)」がこのガーデンを訪れて住みやすいように生態系を意識した植栽デザイン。見る場所や角度によって印象が変わるように、植栽に複雑さが施されています。花壇内の地面には高低差が設けられているので、これからさらにどの様な立体感が生まれてくるのか楽しみ。カラス除けに用いられた紫とオレンジ色の麻ヒモは英国のナッツシーン社のもの。色彩の少ない時期のガーデンに取り入れた色づかいが、心憎いこだわりを感じさせています。

【第2回作庭を終えて】

【第2回作庭を終えて】

第3回目を数える東京パークガーデンアワードの中で、ここまでカラスと鳩に悩まされる事は無かったのでは……と思う走り出しになりました。食べられてしまった球根、イタズラされて抜かれてしまった草花の苗。2回目の作業はそれを補植することが中心になりました。自然界のことですのでどうしようも無いのですが、4月のガーデンの様子は思い描いたより少し寂しい春を迎えるのかなと思います。それでも5月に入れば植物の成長の速さにてんてこ舞いになりそう。これからの草花の成長に期待します。

コンテストガーデンD
KINUTA “One Health” Garden

◆今回の作業◆

①雑草取り

ところどころに生えている雑草を抜いて袋に集め、花壇内に設けたバイオネストに投入。

②新たなステップを配す

オオヒラダケの菌床を固めて作ったステップを新たに数カ所配置。12月に配したものは、すでに朽ち始めていた。

切り戻し(グラス、低木など)

ノコンギク(ホキヤマ)、ススキなどの枯れた不要な部分を地際から切り戻し、バイオネストに投入。

バイオネストの中を整える

当日発生したものも入れた状態。この後、米ヌカが手に入り次第、入れて混ぜ込む予定。

◆作業完了時のガーデンの様子◆

ヒトの健康、生きものの健康、環境の保全を包括的な繋がりとして捉えるワンヘルス (One Health)の概念を軸に、土壌環境を改善し、植物や微生物を豊かに育て、鳥や虫などの地域の生きものを呼び込むガーデンです。植物は植えた当時からそれほど大きな成長は見られませんが、手触りや香りを楽しめる植物たちの“人の心に安らぎをもたらす”ための準備はすでに整えられており、土中の菌糸たちも旺盛に広がっています。

【第2回作庭を終えて】

【第2回作庭を終えて】

私たちのチームは現地でのセッション感とフィーリングを大切に作庭しました。エネルギーを溜め込んだ冬から、春の解放へ向けて全体を整理した今回。新芽の膨らみや花の蕾、菌糸たちの働きは春の足音が聞こえるようです。第2回の作庭を終え、これから始まる審査期間では“植物//動物”の新たなセッションがワンヘルスな庭を作ります!

コンテストガーデンE
「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ

◆今回の作業◆

①除草、枯葉整理、切り戻し

冬季落葉で枯れた部分をすべて取り除いて春に向けての美観整理を行う。発生した切り枝葉は、通路の土に混ぜ込んでリサイクル。

②球根の植えなおし、新たな苗の補植

カラスに掘り出された球根を植え戻し、春植え品種の追加や景観のボリューム・バランスを整えるための新たな苗と球根の補植を行う。

③寒さ除けを一度取り外す

冬の植え付けだったため不織布をかけて初年度の寒さから保護養生していたマンガべ ‘マッチョモカ’。不織布を一度取り外し、傷んだ外葉を整理する。本種は寒い冬には外葉が枯れて半落葉状態になることがあるが、温暖期の新葉で株が更新される。秋までによく根を張らせることで本来の耐寒性が発揮でき2年目以降は防寒の必要はない。

④通路に客土して地形の調整

土砂の流失を和らげるため、一度入れた土を取り除き、培養土と米ぬか酵素、砕いたトウガラシを混ぜ込んで戻して底上げを行い、花壇内の高低差を減らす。

⑤剪定

花壇中央でアクセントになっているコルヌスは春の鮮やかなカラーリーフの芽吹きを促進するため、半数の枝を低い位置でカット。一部の枝は春先のボリューム維持のため、今回は長いまま残している。

◆作業完了時のガーデンの様子◆

人だけでなく虫や鳥、土壌菌類などの分解者、そして庭の先につながるこの生きた星「地球」の環境といった全ての「生あるもの」。みんなが共に助け合いながら、末長く幸せに暮らす世界、生命共存の尊さ・美しさを伝えたい――。そんな想いを、個性豊かな植物で独創的に表現。芽吹き前で植物の地上部は少ないですが、既にそれぞれが強く主張しあっています。ボランティアで集まったチームの知識と想いの共有と共感、そして連携が、このガーデンの隠れたコンセプトとなり、今回の課題(テーマ)につながっています。

【第2回作庭を終えて】

【第2回作庭を終えて】

第1回作庭以降、数回のメンテで植物と庭の観察を続け、改善点を洗い出して第2回作庭へ。ボランティアチームの連帯も強まり、スムーズに作業が進みました。植物の成長だけでなく、この庭ではじめて集まったみんなが楽しく知識を深めつつ、コミュニティへと成長していることに深く感動しました。

コンテストガーデンを見に行こう! Information

都立砧公園「みんなのひろば」前
所在地: 東京都世田谷区砧公園1-1
電話: 03-3700-0414
https://www.tokyo-park.or.jp/park/kinuta/index.html
開園時間:常時開園
※サービスセンター及び各施設は、年末年始は休業。営業時間等はサービスセンターへお問い合わせ下さい。
入園料:無料
アクセス:東急田園都市線「用賀」から徒歩20分。または東急コーチバス(美術館行き)「美術館」下車/ 小田急線「千歳船橋」から東急バス(田園調布駅行き)「砧公園緑地入口」下車/小田急線「成城学園前駅」から東急バス(二子玉川駅行き)「区立総合運動場」下車
駐車場:有料

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