春爛漫! 「第3回 東京パークガーデンアワード 砧公園」の『ショーアップ審査』を迎えた5人の庭と審査の様子をご紹介

木々が次々に芽吹き始め、八重ザクラが満開を迎えた砧公園。園内をやわらかな色彩と子どもたちのにぎやかな声が包み、穏やかな時間が流れています。そんなうららかな陽気が続く4月中旬の昼下がり、5人のガーデンの『ショーアップ審査』が行われました。作庭後、初となる審査。この日の様子をガーデンの様子と併せてご紹介します。
目次
年3回審査を行うガーデンコンテスト「東京パークガーデンアワード」

5人のガーデナーが、東と西に対になった2つの花壇を手掛けている今回のコンテスト。昨年、神代植物公園で開催された第2回アワードと同様、個性が際立つにぎやかなガーデンの誕生に、多くの人が関心を寄せています。
審査が行われるのは、4・7・11月の計3回。ガーデンの施工から約5カ月が経過した今回、第1回目となる『ショーアップ審査』が行われました(春の見ごろを迎えたガーデンの観賞性を審査します)。審査期間:2025年4月10日~16日。

審査員は以下の5名。福岡孝則(東京農業大学地域環境科学部 教授)、正木覚(環境デザイナー・まちなか緑化士養成講座講師)、吉谷桂子(ガーデンデザイナー)、本木一彦(東京都建設局公園緑地部長)、植村敦子(公益財団法人東京都公園協会 常務理事)
【コンテスト審査基準】公園の景観と調和していること/公園利用者の関心が得られる工夫があること/公園利用者が心地よく感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること/メンテナンスがしやすいこと/テーマに即しており、デザイナー独自の提案ができていること/総合評価
※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。

今回の評価のポイントは主に、植栽の春の美しさがしっかりと表現されているか=ガーデンの観賞性が重要。単に華やかであることだけが重要ではなく、「植物個々の特性・魅力がしっかり見せられているか」、「葉や花の組み合わせがデザイン的に美しいか」が求められます。
※年によって気象条件が変わるため、開花の時期がずれていても評価に影響しません。
※今回行われた審査結果の公表はありません。
4月のショーアップ審査を迎えた5名のガーデンをご紹介
コンテストガーデンA
Gathering of Bouquet 〜庭の花束〜

【作品のテーマ・制作意図】
皆さんの日常に癒やしや潤いを届けたいという願いを込め、プランツ・ギャザリングの視点で、ガーデンをひとつの大きなブーケに見立ててデザインを構成しました。動物たちが次の訪問者のために心遣いを残していく絵本から着想を得て、あらゆる世代の方が見て触れて、香りなどを楽しめるように、花の形や手触りがおもしろいものを用いた植栽計画をしています。ぜひ手に取って、お気に入りの植物を見つけてください。たくさんの感動や気づきが新たな会話を生み、笑顔になるシーンが増えますように。
【4月中旬(審査当日)の様子】

審査時の見どころ ナチュラリスティックな中にある、華やかさ。子どもの目線で見た時に、目の前に見上げるように迫るチューリップは圧巻。中央に据えられたバイオネストの造形美も見る人を楽しませる。

開花期を迎えていた植物 チューリップ‘フレーミングピューリシマ’、チューリップ‘パープルエレガンス’、チューリップ‘ガボタ’、スイセン‘タリア’、フロックス・ディバリカタ‘メイブリーズ’ オルラヤ、ナズナ(タラスピ・オファリム)、アイリス・モシナンテ、シラー・ヒアシンソイデス(イングリッシュブルーベル)、クナウティア・アルベンシス など。
コンテストガーデンB
Circle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜

【作品のテーマ・制作意図】
季節によってカラーリングが変化する植物や、実をつけて味わい深い風景を作ってくれる植物に集まる多様な生き物たち。そして各所に配置したサークルネストはそんな生き物たちの拠り所に。命の循環というキーワードをもとに植物だけではなく生きとし生けるものたちの集まる「庭」をテーマにデザインしました。人間だけに限らず、あらゆる生き物たち「みんな」にとっても楽しめる「命を感じられるガーデン」は「みんなのにわ」となり、命を循環させてゆきます。
【4月中旬(審査当日)の様子】

審査時の見どころ 自分の庭にも取り入れてみたくなる工夫があちこちに。ブルーベリーやイチゴ、ダークカラーのレタスといった食べられる植栽は、身近感があり、見ているうちに「おいしそう!」な雰囲気に。子どもと一緒に楽しめそうな、家族の物語が見えてきそうな花壇。

開花期を迎えていた植物 チューリップ‘バレリーナ’、チューリップ‘フレーミングピューリシマ’、チューリップ・ヒルデ、スイセン‘フォーチューン’、チューリップ‘エデュアルトペルガー’、ムスカリ・ラティフォリウム、アジュガ‘ディキシーチップ’、ブルーベリー など。
コンテストガーデンC
Ladybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」

【作品のテーマ・制作意図】
砧公園で暮らす「小さな住人(虫たち)」がこのガーデンを訪れて住みやすいように生態系を意識した植栽のデザインをしています。植栽は、見る場所や角度によって印象が変わるように、カマキリなどの天敵が身を潜められるような複雑さが出るよう工夫しました。植物は、てんとう虫やカマキリの食料となるアブラムシなどが好む「バンカープランツ」や蝶やミツバチたちの蜜源となる植物を植えています。「小さな住人(虫たち)」の生活をそっとのぞき見ることができる場所を目指しています。ここでの小さな体験が、自分の身近な自然環境を考えるきっかけになってもらえたら嬉しいです。
【4月中旬(審査当日)の様子】

審査時の見どころ 原種チューリップで魅せる、自然で美しい風景。決して盛り過ぎず、今の時期に相応しい優しく楽しい色彩が穏やかな空間を創り出します。それと同時に、テントウムシなどの小さな生きものたちの暮らしにもこだわる作家らしさが垣間見えます。

開花期を迎えていた植物 チューリップ‘ペパーミントスティック’、チューリップ・ヒルデ、スイセン・ジョンキル系、カマッシア・ライトヒトリニ‘カエルレア’、アリウム‘カメレオン’、ビオラ、ビオラ・ラブラドリカ、プルモナリア‘ダイアナクレア’、ゲウム・リバレ、ゲラニウム・ツベロサム、エピディウム など。
コンテストガーデンD
KINUTA “One Health” Garden

【作品のテーマ・制作意図】
ヒトの健康、生きものの健康、環境の保全を包括的な繋がりとして捉えるワンヘルス (One Health)の概念を軸に、それら3つの主体が密接に関わり合う「ワンヘルスガーデン」をつくります。土壌環境を改善し、植物や微生物を豊かに育て、鳥や虫などの地域の生きものを呼び込む。ガーデンの香りや触れ合いを通し、ヒトの健康と安らぎを生み出すガーデンをつくり、いろいろな生きものがやってくる「みんなのガーデン」を実現します。
【4月中旬(審査当日)の様子】

審査時の見どころ イキイキとした植物の間からひょっこり顔を出すキノコは、ツヤツヤでまるでアート作品のよう。そこに人々が集まって、じっくり見る仕掛けとなっています。植物たちが植わる地表にも命の循環が感じられる庭。

開花期を迎えていた植物 ハナニラ、フォサギラ‘ブルーシャトー’、ローズマリー、クナウティア・アルベンシス、ビルベリー、ベニバナミツマタ、チューリップ‘メンフィス’、チューリップ‘雪うさぎ’、チューリップ‘ブラックパーロット’ など。
コンテストガーデンE
「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ

【作品のテーマ・制作意図】
私は「みんなのガーデン」を、来園者だけでなく、花を訪れる虫、土壌菌類などの分解者、そして庭の先につながるこの生きた星「地球」の環境といった全ての「生あるもの」をつなげる庭と捉えました。温暖化する東京の気候に合った植物を差別なく組み合わせ、虫や菌たちによる循環系の形成、見るだけでなく庭づくりに参加もできる「みんなのガーデン」。「みんな」が共に助け合いながら、末長く幸せに暮らす世界、生命共存の尊さ・美しさを伝えたい。この想いが、この庭から未来へ・社会へ・地球へと広がっていけば、と考えています。
【4月中旬(審査当日)の様子】

審査時の見どころ 植物すべての個性が際立って見えるのは、高低のある植物がバランスよく配置され、ボリューム感をうまく引き出しているから。石をマルチングに入れたことで植物の色が一層引き立ち、色彩の設計に唸らされる。

開花期を迎えていた植物 チューリップ‘ラ・ベルエポック’、チューリップ‘ジャイアントオレンジサンライズ’、チューリップ‘ハッピーフィート’、チューリップ‘ホワイトバレイ、チューリップ‘バーニングフレイム’、ロロペタルム’黒雲’、ベロニカ‘ジョージアンブルー’、エスコルチア‘ピンク’、フリチラリア・ペルシカ、ラナンキュラス‘ラックス’ など。
5月25日(日)開催!「入賞者イベント」のお知らせ

第3回東京パークガーデンアワードの入賞ガーデナー5組によるガーデンイベントを5月25日(日)に開催します。入賞ガーデナーが案内する「ガーデンツアー」や「たねダンゴづくり」、「微生物観察ワークショップ」など、子どもから大人まで楽しめるガーデンイベントがいっぱい。ぜひご来園ください(雨天中止)。
■日 時:2025年5月25日(日)10:00~15:10(雨天中止)
■会 場:都立砧公園(東京都世田谷区砧)
コンテストガーデンエリア(みんなのひろば前)
■参加費用:無料
■中止連絡:雨天中止の場合は、イベント前日までに都立砧公園の公式X(旧Twitter)にてお知らせします。
コンテストガーデンを見に行こう! Information

都立砧公園「みんなのひろば」前
所在地: 東京都世田谷区砧公園1-1
電話: 03-3700-0414
https://www.tokyo-park.or.jp/park/kinuta/index.html
開園時間:常時開園
※サービスセンター及び各施設は、年末年始は休業。営業時間等はサービスセンターへお問い合わせください。
入園料:無料
アクセス:東急田園都市線「用賀」から徒歩20分。または東急コーチバス(美術館行き)「美術館」下車/ 小田急線「千歳船橋」から東急バス(田園調布駅行き)「砧公園緑地入口」下車/小田急線「成城学園前駅」から東急バス(二子玉川駅行き)「区立総合運動場」下車
駐車場:有料
Credit
写真&文 / 井上園子 - ライター/エディター -
いのうえ・そのこ/ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。ガーデニング以外の他分野のPR等にも携わる。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
撮影 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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