花がら摘みに剪定、収穫と様々なシーンで活躍する、園芸の三種の神器ともいうべきガーデニングツールの一つ、園芸バサミ。切れ味に優れていることはもちろんのこと、人間工学に基づき、手にフィットするなどの作業効率も十分考慮して作られています。今回は、そんな逸品を作る「小林製鋏(せいきょう)」の工場とショップを訪れました。

Print Friendly, PDF & Email

古くから育まれてきた
刃物文化とハサミ作り

カトラリーや包丁、ハサミなどの金属加工産地として有名な燕・三条市。このエリアは企業が多く「ものづくりの町」としても知られています。昔はよく五十嵐川の氾濫による大きな水害に遭い、生活苦を強いられてきた地域で、今から江戸時代初期に幕府より農民の副業として和釘作りが奨励されたことからこの産業が始まりました。時代の流れとともに燕市は洋食器、三条市は打ち刃物・金物と、それぞれ得意とするものを中心に発展していったのです。

小林製鋏

今回お伺いしたのは、三条でハサミを専門に製造する「小林製鋏」。工場は田園地帯のなかにある刃物・金物工場群に構えています。この会社は、昭和14年に東京・荒川区で医療器具や医療ハサミを製造する会社として創業。第二次世界大戦末期に実家のある三条に疎開し、鍛冶屋として再開。以来、果樹園芸農家向けのハサミ作りに力を注いできました。最近は、この会社が作る園芸用ハサミも注目を浴びています。

小林製鋏
1957年からスタートした小林製鋏のハサミブランドは‘越路’。この名前は、昔初代が通っていた東京へ向かう列車名からつけられた。

小林製鋏のハサミ作りの現場
工場から制作過程をレポート

小林製鋏

40~50種類ものハサミが日々作られている工場は天井が高く、ずらりと並ぶ機械には、10人ほどの熟練の職人が向かい、妥協のない作業に取り組んでいます。

小林製鋏

小林製鋏ではプレス型で作られる一般的な量産のハサミとは異なり、鋼を叩く鍛造によって作っています。叩いたり研いだりする加減は、すべて職人の‘感’が頼り。角度や時間、温度などの微妙な加減を熟練の感で調整しながら、鋭利な切れ味と強度を作り上げています。

小林製鋏のハサミ
これから研磨されるたくさんのハサミ(上)。最後の仕上げは、ハサミ職人歴45年のベテランが担当(下)。
小林製鋏のハサミ
ハサミのねじ部分になる箇所に穴をあける作業をしている女性の職人さん。一寸の狂いも許されない。
ハサミ作り

ハサミは、鋼の棒を丹念に「熱し、叩いて、冷やす」などの作業を繰り返し、ハサミの形に整えていきます。

ハサミ作り

組み立てられたハサミはクリップで吊り下げられ(上)、取っ手にビニールのカバーをつけるために赤い液体の中に浸されます(下)。ビニール部分が乾いたら完成です。

三代目社長の小林伸行さんが就任時に掲げた社是は‘森羅万象’。「伝統を継承し未来へ行き続けるために考え創造していくこと」、経営理念は「知恵を絞り現状よりも進化させ、お客様に新たな喜びと感動を与えること」、そして社訓は「水のように変化できる、行動・考え方を持つこと」。厳しい姿勢でハサミ作りと向き合う初代、先代のから学んだ歴史を受け継ぎながら、現代のスタイルのハサミ作りにも取り組んでいます。近年は、‘越路’のハサミが海外でも高く評価され、欧米などで需要が増えています。

小林製鋏
厳しい目で全体を見ながら商品もチェックし、高い品質維持に努める小林さん。真摯に仕事に向き合うまなざしがかっこいい。

‘越路’ブランドが買える
ショップがオープン!

令和3年春、工場裏のおしゃれな建物に小林製鋏のショップがオープンしました。‘越路’のハサミはホームセンターなどでも購入が可能ですが、種類が多くて違いが伝わりにくいのと、一般の方もハサミの違いを事前に確認できるように、アンテナショップとして設けられました。

小林製鋏のハサミショップ

4坪ほどの小さな売り場には、果樹園芸用のハサミがたくさん。それぞれの用途は異なり、ミカンやリンゴなどを間引く際に使用する「摘果ハサミ」や「新芽を切る芽切ハサミ」、「樹木の枝を切る剪定ハサミ」などなど多種多様。同じ果物でも産地によって木に含まれる水分量が異なるので、最適な刃の形は違ってくるのだとか。

小林製鋏のハサミショップ
小林製鋏のハサミ
左/果実のヘタのすぐ上にフィットするような設計の軸切用収穫ハサミ。
右/樹液が刃の間に溜まって切れ味が鈍らないように、刃の中央に溝がつけられている。
小林製鋏のハサミショップ

店内ディスプレイはとてもおしゃれで、ハサミはみな古い木箱に整然と並べられています。木箱は使い込まれた味わいを放っていますが、これはかつて工場で、油を塗った部品を入れていた箱を再利用したもの。赤いハンドルが美しく映えています。

小林製鋏のハサミショップ
木箱ありきで枠を作り、ギャラリーのように設えたショップ。小林さんのセンスのよさが伺える。

ショップの前には、手作りの小さなキッチンガーデンが設けられています。これは、小林さんが園芸用ハサミを研究するための実験場であるとともに、お客さまが切れ味を確認できる場でもあります。ここにも小林さんの強い探求心とていねいさが垣間見えます。

キッチンガーデン
キッチンガーデン
囲みの塀をつけた野菜コーナーでは、季節の野菜がていねいに仕立てられている(上・下左)。脚付きの木製トラッグでは、ハーブを栽培。赤葉のコルディリネがアクセントに(下右)。

【ガーデニングにおすすめのハサミ3選】

◆樹木の剪定に

剪定芽切鋏

「剪定芽切鋏」:剪定鋏もあるが、より細身でコンパクトにできていて女性におすすめ。
全長185mm・刃長50mm・重量約195g

◆草花・ハーブの刈り込みに

打物 葉刈鋏

「打物 葉刈鋏」:効率的な草花の刈り込みにおすすめ。刃についた溝により樹液がつきにくく、開閉がスムーズに行える。
全長225mm・刃長83mm・重量約230g

◆花の収穫に

収穫バサミ

左/「HARVESTER(ハーベスト)」:コンパクトで軽やかに使える本格派の収穫ハサミ。野菜やハーブの収穫や草花や盆栽の芽摘みに。
全長14.5mm・刃長70mm・重量約75g

右/「FLORIST(フラワーアレンジ)」:太いものもしっかり切れる小型の花ハサミ。太めの茎や枝の剪定に。
全長160mm・刃長80mm・重量約123g

これらの2つのアイテムは、女性でも使いやすく細かい作業がしやすいよう、コンパクトで繊細に仕上げられており、デザインはシンプルで洗練されています。

品質は前出のものと同様、職人が鍛造で仕上げており、強靭なコーティングをしてあるので錆びにくく切れ味抜群。家庭菜園での野菜やハーブの収穫、草花や盆栽の芽摘みなどにぴったりです。日本の職人技が光るおしゃれな雑貨などを扱う「中川政七商店」と協働のもので、「中川政七商店」のショップでも販売されています。

小林製鋏のハサミ

1本あると作業の効率がアップし、ガーデニングライフを充実させてくれる本格派のハサミ。丈夫であることはもちろんですが、ていねいに扱いたくなる気持ちも生まれるので、長く愛用できます。「ハサミは、料理で使う包丁のように、使ったら毎回中性洗剤で洗ってください。ときどき油をさすとサビが防げ、長く使えます」と小林さん。当サイトでご紹介した『「道の駅  」庭園の郷 保内』でも販売されています。ぜひお試しください。

【SHOP DATA】

小林製鋏株式会社 

〒955-0061 新潟県三条市林町1丁目15-21
TEL:0256-32-3583
営業時間:8:00~16:45

営業日:平日
https://www.koshiji-h.jp/

Credit

写真&文/井上園子
ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。

協力:加藤はと子(道の駅  庭園の郷保内)

Print Friendly, PDF & Email