素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪26 新潟『「道の駅」庭園の郷 保内』
ひと口に園芸店といっても、今やさまざまなスタイルのショップがあります。それぞれの個性が色濃く反映されたこだわりの空間は、ガーデニングのセンスを磨ける最高の場所。今回は、造園・植木・ガーデニングを楽しめる『「道の駅」庭園の郷 保内』を訪ねました。
目次
庭園・植木の文化の魅力を
発信する道の駅
新潟といえば日本有数の米どころ、三条といえば金物、そしてここ保内(ほない)は植木の産地として古くから発展してきました。そんな特徴を生かし、「見て、触れる」ことで、造園や植木、ガーデニングに親しみ、楽しむことができる道の駅として、地域の人々に愛されています。
『「道の駅」庭園の郷 保内』は、今から5年前の2016年にオープンし、翌年に道の駅として登録されました。地域の新鮮な特産物や野菜と並行して、植木や花苗、資材等を販売しています。
正面玄関を入って左側のエリアと屋外に設けられているのは、たくさんの植物と資材が並ぶ、園芸コーナー。明るい陽射しが入る建物内は、まるで温室のような雰囲気です。植物は地域の出荷業者が自信を持って納めたもので、こまめに苗をチェックしに来ていることもあり、常に生き生きと新鮮な状態で並んでいます。
大きなガラス張りのエリアの外は、季節の花や草木が並ぶ苗売り場。壁や屋根に使われた温かみのある木材や、やわらかな光のライトが、心地よい空間を演出しています。
大きくせり出した屋根の下は天候に左右されずに買い物ができ、ワークショップが定期的に開かれています。一番人気は寄せ植え講座で、用意された苗を植える初心者コースや、花を選ぶところから指導してくれるステップアップコースなど、お客様の要望に合わせて対応しています。
こだわりのガーデニングツールで
作業効率をアップさせよう
ここ三条市は隣の燕市と併せて日本最大の金属製品の生産地です。それだけに、ガーデニングツールがホームセンター以上に揃う資材コーナーは必見。初心者から専門家、そして子ども用まで、多種多様な金物のツールがずらりと並んでいます。
ここでは、三条の工場で作られた金物を厳選して紹介しています。たくさんあるなかでも特にガーデニング向けのこだわりアイテムは、初心者ガーデナーが手に取りやすいようにテーブルの上に並べられています。
刃物や農具、鋳物などのガーデニング資材の多くが、三条で作られています。花首や長い茎を支える支柱や、プランターをハンギングするためのフックなど、ガーデニングのお役立ちアイテムがたくさん。造園用の根巻きや幹巻き用の資材も並んでいるので、眺めているだけで楽しく、勉強にもなります。
ガーデニングライフをサポートしてくれるアイテムも充実しています。なかでも好評なのが、首を覆う布がついた色とりどりの作業帽。お手頃な値段なので、洗い替えやその時の気分に合わせてかぶれるよう、いくつか揃えてみても。頭を覆う部分は、麦わらと布地があります。お好みで選んで。
隣の加茂市は日本有数のニットの産地。ここでは、ガーデニング時にあると便利なものを扱っています。人気商品は、ふんわりと足首をカバーしてくれる足首ウォーマー(左)と、引き締め効果が高くてゴムがずれにくく、5本指で血行を促進する丈夫な靴下(右)。
ここのイチオシが、ビニールヒモを編んで作ったベトナム製のバスケット。ガーデニンググッズや野菜の買い出しなど、さまざまなシーンで使えます。洗えるのも嬉しいポイント。カラフルで大きさも数種類あるので、選ぶのに迷ってしまいそう。
ガーデニングライフの必需品からおしゃれな雑貨類まで、ホームセンターをしのぐ品揃えを誇る、驚きの道の駅です。
道の駅ならではの
おいしいものコーナー
天井が高く解放感にあふれる建物は、今年2021年初めに一部がリフォームされ、ますます買い物がしやすくなりました。ほかの道の駅同様、周辺の農家から出荷された旬の野菜をはじめ、ここでしか手に入らない地場農産物も並んでいます。
【ショップおすすめコーナー】
今年のリニューアルオープン時に設けられたのが、子どもたちを遊ばせながら、大人もくつろげるプレイスペース。子育て世代が楽しめるようにという配慮が、あちこちに盛り込まれています。
子どもたちに人気の、木箱を積んだジャングルジム。まわりの大きな植物は、プラントハンター・西畠清順氏が主宰する‘そら植物園’の提供で、異国情緒を漂わせながら展示販売されています。冬場は室内でも氷点下になることがある新潟ですが、ここでも丈夫に育つように、比較的耐寒性のある種類が、あらかじめ低温に慣らされて搬入されています。今後、西畠氏による海外の植木選びや演出法、現地の状況などについてのトークショーや講座などを催す予定もあります。
庭のことならなんでもお任せ!
頼もしい面子が勢ぞろい
建物の前には、広大な庭園と植物見本園が広がります。その広さは、なんと約30,000㎡。庭園には道の駅が提案する風景が広がり、見本園には保内の植木職人たちがすすめる植物や庭の提案がたっぷり盛り込まれています。
植木屋それぞれの持ちスペースでは、おすすめの植物を使いながら、独自の風景を作っています。ここに植えられているものは、根巻きやポット植えなので買うことができ、頼めば庭に植えてもらうことも可能。
上写真は、300年ほど前から大切に育てられてきた、‘保内五葉松’。葉が青白く光り、美しいグラデーションを見せることから、‘霜降り五葉松’とも呼ばれています。季節で微妙な葉色の移ろいが楽しめる‘保内五葉松’。一見の価値あり。
見本園の奥で、赤いパラソルが目を引くのは、道の駅自慢のイタリアンレストラン「パスタとピザの店・base(バーゼ)」。地元で採れた野菜をふんだんに使ったジャパニーズイタリアンレストランで、パスタ、ピザ、ラザニアなどのメニューがあります。
女性駅長とスタッフによる
庭の提案コーナーも注目
レストランのさらに奥に広がるのは、道の駅が提案するキッチンガーデンやキッズガーデン。「キッチンガーデンは、くまのプーさんに出てくるラビットの畑をイメージしているんです。キッズガーデンは、オランダのカラフルで楽しいガーデンを意識してつくっていますが、こちらは、まだこれから力を入れていく場所なんです」と、道の駅・駅長の加藤はと子さん。
加藤さんは、もともと三条市の産業振興のイベントを成功に導いたという、凄腕の女性駅長さん。パワフルでありながらも朗らかな人柄が魅力です。ガーデニングにも興味があり、オープン当初より就任している駅長職は、まさに適任。「対外的なことも多い仕事の合間に庭のことを考えています。庭づくりだけに専念したいぐらい、ガーデニングは気持ちがいいですね」と加藤さん。
ここは、「造園・植木の振興」だけでなく、「文化の交流の場・子育てを応援する場の提供」など、地域貢献を強く意識している注目度の高い道の駅。2019年、国土交通省により「地域活性化の拠点となり優れた役割を担う、‘重点道の駅’」に認定されました。
レストランの裏手にはレンタルスペース(和室)が。子ども連れの家族がここでゆっくりレストランの食事を楽しんだり、セミナーやワークショップを開催したり。さまざまな用途で利用できます。(1時間1部屋、500円〈税込〉、9~21時の間に利用可)。
「植物に親しみ、地元の食を味わう」をテーマに設立された『「道の駅」庭園の郷 保内』。幅広い年齢層がゆったりと楽しめる、ユニバーサルなスポットです。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、北陸自動車道・三条燕ICから約20分。JR信越本線「保内駅」から徒歩約20分。
【GARDEN DATA】
『「道の駅」庭園の郷 保内』
新潟県三条市下保内4035番地
TEL :0256-38-7276
営業時間:9:00~18:00
定休日:12月31日~1月2日(その他臨時休業あり)
写真協力(*)/庭園の郷 保内
Credit
写真&文/井上園子
ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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