ひと口に園芸店といっても、今やさまざまなスタイルのショップがあります。それぞれの個性が色濃く反映されたこだわりの空間は、ガーデニングのセンスを磨ける最高の場所。今回は、イギリスのエッセンスが香る「ラブリーガーデン」を訪ねました。

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イギリス風しつらいとバラが
訪れる人を魅了するショップ

米子駅と空港をつなぐ街道沿いに店を構える「ラブリーガーデン」。鮮やかなバラと草花が店先を彩っています。ここは、花の庭づくりでおなじみのガーデンデザイナー・安酸友昭さんのショップです。

ラブリーガーデン

店内には、自然な石積みの花壇やおしゃれなガーデンアイテムが散りばめられており、バラや草花とみごとな調和を見せています。

ラブリーガーデン
グレーにペイントした木製フェンスに誘引されたバラ‘ウォラトン’が、優雅な雰囲気。

「ラブリーガーデン」は2007年にオープンし、今年で15年目。安酸さんは大阪の園芸の専門学校で造園を学んだあと、地元の造園会社に入社。日本の作庭のノウハウ知識を深める中で、イギリスの庭の魅力を発見。本場の園芸を学ぶために会社を退社し、思い切って渡英留学しました。当初は英語も全くわからないところからのスタートでしたが、園芸と造園の知識がある安酸さんは次第に要領を得て、2年でイギリスのガーデニング技術者国家資格(NVQ)を取得。自身の店を開く夢を抱きながら帰国しました。

ラブリーガーデン
イギリス製のミラー付きパネルが、シーンのアイストップに。
ラブリーガーデン
木の壁を伝うロマンティックなつるバラ‘キャサリン・モーリー’と鋭い葉を持つユッカの組み合わせが、異国情緒を感じさせる。

帰国後の2007年、庭づくりを請け負う「ラブリーガーデン」を設立。イギリスの資材を輸入する知人から材料を取り寄せながら、イギリスで吸収して磨いた知識と感性をフルに活用し、庭づくりをスタートさせたのです。その後、モデルガーデンのある実店舗を開くために、信頼のおける知人のガーデナー・関聡子さんに声をかけ、二人三脚でショップをオープンさせました。

ラブリーガーデン
左/イギリス製のミラー付きパネル。鏡の反射が空間に明るさをもたらし、奥行きを感じさせる。
右/ユーフォルビア・ウルフェニーの造形的な植物や大きなコンテナづかいが、バラでいっぱいのコーナーをダイナミックに演出。

ラブリーとは「素敵な」や「愛らしい」という意味。自分たちが‘素敵’と思ったものを揃えて、「お客様がラブリーな時間を過ごせる場になれば…」という思いが込められています。

ラブリーガーデンのバラ
左/自然石を積んだウォールを大人っぽく見せているのは、バラ‘キャサリン・モーリー’とクレマチス‘エトワール・バイオレト’のコンビネーション。
右/濃ピンクのバラ‘ジョンクレア’が、シーンにあでやかさをプラス。

安酸さんは2010年に、イギリスで英国ドライストーンウォーリング協会認定の石積み技術の資格も取得します。この技術は、コッツウォルズストーンと呼ばれるハニーカラー(蜂蜜色)の石を、機械類をいっさい使わずに、ハンマーや石ノミで調整したり、モルタルなどの接着剤を使わずに手積みする石積みの工法で、強度に優れています。そんな技術を活用しながら、安酸さんらしくつくり上げたというサンプルガーデン。米子の風土に合った草花を植えるナチュラルな花壇やぬくもりあふれる小屋が、訪れた人の目を楽しませています。

ラブリーガーデンの小屋
庭の隅に大工さんの力を借りながら、自身で設計して建てたという愛らしい小屋。

イギリス風の庭づくりで欠かせないのが、アンティークなどの古いアイテム。時間を経たような情趣のある演出が、庭の表情を深めています。

ラブリーガーデン
左/アンティークレンガを敷いた園路。目地から生える雑草も味わいに。
中/園路脇の植栽にしのばせた古いウォータリングカンが、シーンのさりげないワンポイント。
右/店の隅にしつらえたレンガのウォールに白いアイアンを立てかけて、コーナーに明るさをプラス。

ロッジのような建物の前には、植栽花壇が設けられています。園路や花壇の立ち上がりには自然石が用いられており、季節の草花とともに、ナチュラルな風景を生み出しています。

ラブリーガーデンのカツラの木
ショップのシンボルツリーは小屋の前に配した、カツラの大木。秋になると美しく黄葉し、甘い香りを放つ。
ラブリーガーデンの庭
左/オオデマリやメギなどが繊細な草花と植わる花壇に、大きな石のステップを配した庭は、まるでイギリスの個人邸のよう。
右/庭の住人のように置くのが、オーナメントを生かすコツ。風雨にさらされ風化するコンクリート製がおすすめ。
ラブリーガーデンの池

ここのガーデンの見せ場の一つが、建物に面した大きな池。大きな防水シートを敷いて作った人工の池とは思えない、自然な風景が広がっています。水は注いで循環させるのではなく、雨水を貯めるだけの自然まかせ。すぐに、カエルやトンボなどさまざまな生物が生息するようになり、今では完全な生態系・ビオトープができ上っています。

ラブリーガーデンの池
左/夏に葉が半分白くなり、長い花穂を伸ばすハンゲショウ。
中/初夏に白い花を咲かせるオモダカ。
右/池の中にアクセントで入れた、ガラスの浮き球。

雨の日もゆっくり買い物できる
屋内には、花苗と雑貨がいっぱい

建物の中の売り場は、色とりどりの花苗売り場。庭づくりを専門とする安酸さんが選んだ花苗だけに、庭づくりや寄せ植えにピッタリの種類が選ばれています。屋根があるおかげで雨が当たらず状態も抜群で、悪天候の日でもゆっくり買い物ができます。

ラブリーガーデンの花苗

庭づくりで施工現場に出ていることが多い安酸さんに対し、ショップを守っているのは草花とバラの知識が豊富の関さん。栽培法や寄せ植えの苗選びなど、分からないことがあったら親切にアドバイスしてくれます。

ラブリーガーデンの花苗
雨が強い日は、花弁が落ちやすいバラを屋内に避難させて、美しい状態を保っている。手間を惜しまない努力が、「ラブリーガーデン」の魅力につながっている。

イギリス製の鉢をはじめとする、ジョーロや手袋などの雑貨類も充実。おしゃれにガーデニングを楽しむのに必要なものが揃っています。

ウィッチフォードの鉢
ガーデナーの憧れ、ウィッチフォードのコンテナも並んでいる。
ラブリーガーデンの小物類
小部屋の中には、こまごまとした雑貨類が並ぶ。奥の棚では猫の‘フジⅡ’が店番中。
ラブリーガーデンのグッズ
気分を上げてくれる、英国・ナッツシーン社のカラフルな麻ヒモや手袋などもずらり。

ショップ内のあちこちに置かれた寄せ植えにも注目を。小花を使った繊細な花合わせを得意とするラブリーガーデンのアレンジは、どこにおいても主張しすぎず、上品な雰囲気を放ってくれます。

ラブリーガーデンの寄せ植え
緑がかるグレイッシュなコンテナを用いた、グリーン×淡いパープルの大人っぽい寄せ植え。
ラブリーガーデンの寄せ植え

庭づくりと併せて寄せ植え作りも依頼されることが多く、お客様の飾りたい場所にピッタリのサイズと雰囲気のアレンジを作ってくれます(写真:面谷ひとみ邸)。

バラ売り場で見つけた
素敵なバラたち

関さんがセレクトした育てやすい品種がずらりと並ぶバラ苗コーナー。取材時に咲いていた魅力的な品種をご紹介します。

ラブリーガーデンのバラ
花の顔が分かりやすいよう、台の上に陳列している。
ラブリーガーデンのバラ

左/‘ビアンヴニュ’(デルバール):H1.8m、超強香、四季咲き 、中大輪ロゼット咲き
中/‘ザビエル・フライシネッテ’(ギヨー):H0.8m、強香、返り咲き、中輪ロゼット咲き、丈夫
右/‘スピネル’(タンタウ社):H0.9m、微香、四季咲き、中輪ロゼット咲き

ラブリーガーデンのバラ

左/‘ストロベリーアイス’(デルバール): H1.4m、微香、四季咲き、中大輪丸弁咲き
中/‘シャリマー’(ロサオリエンティス):H1.3m、中香、四季咲き、中輪ロゼット咲き
右/‘シャルル・ドゥ・ミル’(オールドローズ):H1.5m、強香、一季咲き、中輪房咲き

ラブリーガーデンのバラ

左/‘マドモアゼル’(デルバール):H1.2m、微香、四季咲き、小中輪半八重房咲き、丈夫
中/‘サマードリーム’(フライヤーローゼス):H2.0m、微香、返り咲き、中輪カップ咲き
右/‘ペネロペイア’(ロサオリエンティス):H1.6m、強香、四季咲き、中輪波状弁咲き

ラブリーガーデンのバラ

左/‘ブリリアントピンク・アイスバーグ’(ウェザリー): H1.4m、微香、四季咲き、中輪弁半八重咲き、丈夫
中/‘舞妓’(禅ローズ):H0.3m、微香、四季咲き、小輪八重房咲き
右/‘クラシック・チュチュ’(ロサオリエンティス):H1.2m、中香、四季咲き、中輪波状弁咲き

ラブリーガーデンのバラ

左/‘キルケ’(ロサオリエンティス): H1.2m、強香、四季咲き、中輪ロゼット咲き
中/‘シャトー・ドゥ・シュベルニー’(デルバール):H、四季咲き、中輪カップ咲き、丈夫
右/‘モチーフ’(河本バラ園):H0.9~1.4m、微香、四季咲き、小輪半八重房咲き

ラブリーガーデンのバラ

左/‘クレディ・ミチュエル’(ドミニクマサド): H1.0m、中香、四季咲き、中輪カップ咲き
中/‘アントニオ・ガウディ’(井上謙二):H1.2m、微香、返り咲き、大輪カップ咲き、丈夫
右/‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’(オールドローズ):H6.0m、微香、一季咲き、小輪八重房咲き

ラブリーガーデンのバラ

左/‘アルテミス’(タンタウ):H1.8m、中香、四季咲き、中輪カップ房咲き
中/‘アリュマージュ’(ロサオリエンティス):H1.5~1.8m、微香、返り咲き、中輪波状弁咲き
右/‘バロン・ジロー・ド・ラン’(オールドローズ):H2.0m、中香、返り咲き、中大輪カップ咲き

英国風庭づくりならおまかせ!
日本の風土に合った庭づくり

イギリス留学で得た知識を無理なく日本の風土に取り込むには、日本での庭づくりの知識があってこそ。その強みを生かしつつ、自身のセンスを存分に発揮して、庭づくりしています。

面谷クリニックの庭
安酸さんが手がけた『GARDEN STORY』でも紹介されている面谷クリニックの美しい庭。奥様でガーデニストの面谷ひとみさんと打ち合わせを重ねて、美しい庭ができ上った。

イギリスの資材だけでなく、日本の石なども使いながら、温かみのある庭づくりをしている安酸さん。お客様の予算やメンテナンスにさける時間などを考慮しながら、必ず安酸さんらしいアイデアを盛り込んで、庭をデザインしています。

ラブリーガーデン
バラのメンテナンスを依頼されることも多い安酸さん。「花の庭づくりには、想像の翼を広げて、庭づくりをするといいですね」。

安酸さんのイチオシ
ウィリアム・モリスの鉢

19世紀半ばにイギリスで興ったアーツ・アンド・クラフツ運動の指導者だったウィリアム・モリスのデザイン画が描かれたコンテナです。落ち着いた地色にブルーまたは濃緑の柄。絵柄は3種類。「どんな植物でもなじみよく、植物をより上品に見せてくれます」

ウィリアム・モリス柄の鉢

庭づくりのプロと植物のプロがタッグを組んでスタートしたラブリーガーデン。2人でコツコツと店を育てながら、日々お客さまの暮らしに彩りを添えています。バラの時期は、300株のバラ苗が並びます。ぜひ訪れてください。アクセスはJR境線三本口駅から徒歩約10分。

【GARDEN DATA】

Lovely Garden(ラブリーガーデン)

鳥取県米子市両三柳839
TEL:0859-24-1500

営業時間:10:00~17:00

定休日:火曜日(祝日の場合は営業)

https://www.lovely-garden.jp/

Credit

写真&文/井上園子
ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。

写真/3and garden

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