素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪29 鳥取「ラブリーガーデン」
ひと口に園芸店といっても、今やさまざまなスタイルのショップがあります。それぞれの個性が色濃く反映されたこだわりの空間は、ガーデニングのセンスを磨ける最高の場所。今回は、イギリスのエッセンスが香る「ラブリーガーデン」を訪ねました。
目次
イギリス風しつらいとバラが
訪れる人を魅了するショップ
米子駅と空港をつなぐ街道沿いに店を構える「ラブリーガーデン」。鮮やかなバラと草花が店先を彩っています。ここは、花の庭づくりでおなじみのガーデンデザイナー・安酸友昭さんのショップです。
店内には、自然な石積みの花壇やおしゃれなガーデンアイテムが散りばめられており、バラや草花と見事な調和を見せています。
「ラブリーガーデン」は2007年にオープンし、今年で15年目。安酸さんは大阪の園芸の専門学校で造園を学んだあと、地元の造園会社に入社。日本の作庭のノウハウや知識を深める中で、イギリスの庭の魅力を発見。本場の園芸を学ぶために退社し、思い切って留学しました。当初は英語も全く分からないところからのスタートでしたが、園芸と造園の知識がある安酸さんは次第に要領を得て、2年でイギリスのガーデニング技術者国家資格(NVQ)を取得。自身の店を開く夢を抱きながら帰国しました。
帰国後の2007年、庭づくりを請け負う「ラブリーガーデン」を設立。イギリスの資材を輸入する知人から材料を取り寄せながら、留学で吸収して磨いた知識と感性をフルに活用し、庭づくりをスタートさせたのです。その後、モデルガーデンのある実店舗を開くために、かねてから信頼していた知人のガーデナー・関聡子さんに声をかけ、二人三脚でショップをオープンさせました。
ラブリーとは「素敵な」「愛らしい」という意味。自分たちが‘素敵’と思ったものを揃えて、「お客様がラブリーな時間を過ごせる場になれば…」という思いが込められています。
安酸さんは2010年に、英国ドライストーンウォーリング協会認定の石積み技術の資格も取得します。これは、コッツウォルズストーンと呼ばれるハニーカラー(蜂蜜色)の石を、機械類を一切使わずに、ハンマーや石ノミで調整したり、モルタルなどの接着剤を使わずに手積みする技術で、強度に優れています。そんな技術を活用しながら、安酸さんらしくつくり上げたというモデルガーデン。米子の風土に合う草花を植えたナチュラルな花壇や、ぬくもりあふれる小屋が、訪れた人の目を楽しませています。
イギリス風の庭づくりで欠かせないのが、アンティークなどの古いアイテム。時間を経たような情趣のある演出が、庭の表情を深めています。
ロッジのような建物の前には、植栽花壇が設けられています。園路や花壇の立ち上がりに用いた自然石が用、季節の草花とともにナチュラルな風景を生み出しています。
このガーデンの見せ場の一つが、建物に面した大きな池。防水シートを敷いて作った人工の池とは思えない、自然な風景が広がっています。水は注いで循環させるのではなく、雨水をためるだけという自然まかせ。すぐにカエルやトンボが生息するようになり、今ではさまざまな生物の棲む完全な生態系・ビオトープが出来上がっています。
雨の日もゆっくり買い物できる
屋内には、花苗と雑貨がいっぱい
建物の中は、色とりどりの花苗売り場。安酸さんが選んだ花苗だけに、庭づくりや寄せ植えにピッタリのものばかり。屋根があるおかげで雨が当たらず状態も抜群で、悪天候の日でもゆっくり買い物ができます。
施工現場に出ていることが多い安酸さんを支えながらショップを守っているのは、草花とバラの知識が豊富な関さん。栽培法や寄せ植えの苗選びなど、分からないことがあったら親切にアドバイスしてくれます。
イギリス製の鉢をはじめ、ジョウロや手袋などの雑貨類も充実。おしゃれにガーデニングを楽しむのに必要なものが揃っています。
ショップ内のあちこちに置かれた寄せ植えにも注目。小花を使った繊細な花合わせを得意とするラブリーガーデンのアレンジは、どこに置いても主張しすぎず、ふんわり上品な雰囲気を湛えています。
庭づくりと併せて寄せ植え作りも依頼されることが多い「ラブリーガーデン」。飾りたい場所にピッタリのサイズと雰囲気のアレンジを作ってくれます(写真:面谷ひとみ邸)。
苗売り場で見つけた
素敵なバラたち
関さんがセレクトした育てやすい品種がずらりと並ぶバラ苗コーナー。取材時に咲いていた魅力的な品種をご紹介します。
左/‘ビアンヴニュ’(デルバール):H1.8m、超強香、四季咲き 、中大輪ロゼット咲き
中/‘ザビエル・フライシネッテ’(ギヨー):H0.8m、強香、返り咲き、中輪ロゼット咲き、丈夫
右/‘スピネル’(タンタウ社):H0.9m、微香、四季咲き、中輪ロゼット咲き
左/‘ストロベリーアイス’(デルバール): H1.4m、微香、四季咲き、中大輪丸弁咲き
中/‘シャリマー’(ロサオリエンティス):H1.3m、中香、四季咲き、中輪ロゼット咲き
右/‘シャルル・ドゥ・ミル’(オールドローズ):H1.5m、強香、一季咲き、中輪房咲き
左/‘マドモアゼル’(デルバール):H1.2m、微香、四季咲き、小中輪半八重房咲き、丈夫
中/‘サマードリーム’(フライヤーローゼス):H2.0m、微香、返り咲き、中輪カップ咲き
右/‘ペネロペイア’(ロサオリエンティス):H1.6m、強香、四季咲き、中輪波状弁咲き
左/‘ブリリアントピンク・アイスバーグ’(ウェザリー): H1.4m、微香、四季咲き、中輪弁半八重咲き、丈夫
中/‘舞妓’(禅ローズ):H0.3m、微香、四季咲き、小輪八重房咲き
右/‘クラシック・チュチュ’(ロサオリエンティス):H1.2m、中香、四季咲き、中輪波状弁咲き
左/‘キルケ’(ロサオリエンティス): H1.2m、強香、四季咲き、中輪ロゼット咲き
中/‘シャトー・ドゥ・シュベルニー’(デルバール):H1.5m、四季咲き、中輪カップ咲き、丈夫
右/‘モチーフ’(河本バラ園):H0.9~1.4m、微香、四季咲き、小輪半八重房咲き
左/‘クレディ・ミチュエル’(ドミニクマサド): H1.0m、中香、四季咲き、中輪カップ咲き
中/‘アントニオ・ガウディ’(井上謙二):H1.2m、微香、返り咲き、大輪カップ咲き、丈夫
右/‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’(オールドローズ):H6.0m、微香、一季咲き、小輪八重房咲き
左/‘アルテミス’(タンタウ):H1.8m、中香、四季咲き、中輪カップ房咲き
中/‘アリュマージュ’(ロサオリエンティス):H1.5~1.8m、微香、返り咲き、中輪波状弁咲き
右/‘バロン・ジロー・ド・ラン’(オールドローズ):H2.0m、中香、返り咲き、中大輪カップ咲き
英国風庭づくりならおまかせ!
日本の風土に合った庭づくり
イギリス留学で得た知識を無理なく日本の風土に取り込むには、日本での庭づくりの知識があってこそ。その強みを生かしつつ、自身のセンスを存分に発揮して、庭づくりをしています。
イギリスの資材だけでなく、日本の石なども使いながら、温かみのある庭づくりをしている安酸さん。お客様の予算やメンテナンスに割ける時間などを考慮しながら、必ず自分らしいアイデアを盛り込んで、庭をデザインしています。
安酸さんのイチオシ
ウィリアム・モリスの鉢
19世紀半ばにイギリスで興ったアーツ・アンド・クラフツ。その運動の指導者だったウィリアム・モリスのデザイン画が描かれたコンテナです。落ち着いた地色に、ブルーまたは濃緑の彩色。絵柄は3種類。「どんな植物ともなじみよく、より上品に見せてくれます」
庭づくりのプロと植物のプロがタッグを組んでスタートしたラブリーガーデン。2人でコツコツと店を育てながら、日々お客様の暮らしに彩りを添えています。バラの時期は、300株の苗が並びます。ぜひ訪れてみてください。アクセスはJR境線三本口駅から徒歩約10分。
【GARDEN DATA】
Lovely Garden(ラブリーガーデン)
鳥取県米子市両三柳839
TEL:0859-24-1500
営業時間:10:00~17:00
定休日:火曜日(祝日の場合は営業)
Credit
写真&文/井上園子
ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
写真/3and garden
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