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カメラマンが訪ねた感動の花の庭。千葉県八千代市のレストラン「貝殻亭」

カメラマンが訪ねた感動の花の庭。千葉県八千代市のレストラン「貝殻亭」

これまで長年、素敵な庭があると聞けばカメラを抱えて、北へ南へ出向いてきたカメラマンの今井秀治さん。カメラを向ける対象は、公共の庭から個人の庭、珍しい植物まで、全国各地でさまざまな感動の一瞬を捉えてきました。そんな今井カメラマンがお届けするガーデン訪問記。第33回は、ナニワイバラが咲き誇ることでも知られる千葉県八千代市勝田台にある「貝殻亭」。モッコウバラやサクライバラなど、大切に育てられてきたレストランのバラたちをご紹介します。

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38年ガーデナーによって守られてきたバラ

貝殻邸のナニワイバラ
4月23日の早朝6時、レストランの屋根一面を覆い、無数に花を咲かせるナニワイバラ。

今回ご紹介する庭は、毎年4月の後半になると、ナニワイバラが屋根一面を真っ白に覆い尽くすことで有名な、千葉県八千代市勝田台のレストラン「貝殻亭」です。この「貝殻亭リゾート」を運営する株式会社ジー・ピー・アイの代表取締役社長の岩﨑肇氏は、地元の佐倉バラ会の理事長。つまり、このレストランとバラは、深い絆で結ばれているのです。

有名な屋根のナニワイバラのほか、ケーキショップの壁にかかるモッコウバラ、2階のカフェの入り口に繋がる橋にはサクライバラと、「佐倉ミステリーローズ」ガーデン内には、ノバラや原種系のバラがいろいろ植えられています。

貝殻亭のサクライバラ
2017年、フェイスブックの知人の「貝殻亭のサクライバラ」の投稿が素晴らしかったので、翌日に撮影に行った時の写真。この頃は、今とは反対のガーデンカフェに向かって、左側に誘引されていた。

今月のストーリーの主役、屋根一面を覆うナニワイバラは、1984年に先代のオーナーが植えたもので、それ以来38年間、その時々のガーデナーさんたちによって大切に育てられてきました。

バラ仲間と会食や写真講座などで幾度も通う

ナニワイバラ
中国南部~台湾原産で早咲きのナニワイバラ(Rosa laevigata)。

僕がこのナニワイバラで有名なレストランを初めて知ったのは、多分25年くらい前のことだと思います。当時はすでに雑誌などでバラの撮影を始めていた頃。家内が、どなたからか、バラで有名なレストラン「貝殻亭」のことを聞いてきてくれて、「今度行ってみようか」なんて話をしたんだと思います。その時すぐに伺ったかどうかは覚えていませんが、その後、プライベートやオールドローズ関係の友人との食事会などで、数回伺ったことがあります。

 サクライバラ
サクライバラ Rosa Uchiyamada。日本(九州)に自生するバラで、桜の花に似ているのでこう呼ばれている。

また、一番思い出に残っているのは、2012年に2階のカフェスペースで「ガーデンサロントーク写真講座」をさせていただいたことです。当日はたくさんの知り合いやお客様に来ていただいて、スライドを使っての講座でした。その後はオシャレなランチを食べながらの質問タイムなど、楽しい時間を過ごしたことを覚えています。

ナニワイバラ
『美しく育てやすいバラ銘花図鑑』(日本文芸社刊)で紹介されたナニワイバラ。

その後も何回か雑誌やバラ図鑑用の写真の撮影などで伺って、ナニワイバラやサクライバラなどを撮らせていただいています。

最近では、3年前に河合伸志さんの著書『美しく育てやすいバラ銘花図鑑』の仕事で、夕方まで屋根一面に咲くナニワイバラの撮影をさせていただきました。

2021年の開花最盛期に早朝撮影

貝殻邸
屋根を覆うナニワイバラを、反対側のガーデンカフェにかかる橋の上から撮影。

今回の撮影は、4月23日の早朝に行いました。千葉市内の自宅から勝田台の「貝殻亭」までは約10km、午前4時半に家を出て5時前には到着しました。静まり返った駐車場に車を止めて、外に出て空を見上げると、青い空には雲一つなく、東側はもう明るくなり始めています。まずは、ナニワイバラの咲く屋根の正面に行ってみると、南東の方角を向いた屋根にはまだ朝陽が当たっておらず、ボンヤリとした光に包まれています。撮影を始めるまでにはまだ少し時間がありそうなので、もう一度駐車場側に戻って、別の撮影場所の確認をしました。

モッコウバラ
お洒落なショップの壁にナチュラルに枝垂れさせたモッコウバラ(Rosa banksiae)がとても可愛い。

ケーキショップの壁際のモッコウバラ、ガーデンに向かう階段を上って2階カフェに向かう橋の佐倉ミステリーローズ、そしてサクライバラの咲き具合をチェックして、再びナニワイバラが咲く側に戻りました。屋根のそばまで近寄ってみると、どの花もちょうど咲き出したところのようです。屋根全体のどこを見渡しても、咲き終わった花は一つもありません。今日は最高のコンディションの花を最高の朝の光で撮影できるぞと、思わず気合いが入りました。

日射しが強くなる前にアングルを決めて、光がよくなるのを待つことに。三脚を担いで右に行ってはファインダーを覗き、もう少し左かなぁとまた歩き……などしていると、画面の右側(東側)の屋根の先端に朝陽が差し、輝き始めました。こうなると、もう時間の問題。朝はあっという間に太陽が昇り、強い光が上から差し込んできます。花は反射板を使ったように真っ白になって質感も何もなくなってしまうし、花の影は真っ黒になって、とても撮影ができる状態ではなってしまいます。

朝日に輝くバラの美しい瞬間を撮る

佐倉堀田邸ミステリーローズ
「佐倉堀田邸ミステリーローズ」は、最後の佐倉藩主・堀田正倫が建てた邸に100年以上前から咲いていたバラ。11代当主が大正時代に帝国海軍次官としてヨーロッパに出張した際に持ち帰ったもので、すでにヨーロッパでは失われてしまった、世界的にも非常に貴重な品種。

シャッターを押すタイミングは、太陽が屋根を越えた瞬間に現れる魔法の光に包まれたほんの5~10分の間です。右は夜間用のライトのポールがギリギリ入らないようにアングルに注意して、左はナニワイバラの枝の先端までと決めました。あとは、朝の光が東側から屋根を越えてナニワイバラに沿って優しく差し込んでくるのを待つだけです。

まだ少し肌寒い中で待つこと5分くらいだったか……。朝日が屋根を越えた瞬間、あたり一面がふぁーっと明るくなって、ファインダーの中に見えるナニワイバラも輝き出しました。魔法の時間の優しい光に包まれた、カメラマンにとってとても幸せな時間の始まりです。あとは2、3分おきにシャッターを切って、光が強くなりすぎたところで撮影は終了。

佐倉ミステリーローズ
ガーデンカフェに向かう橋にかかる佐倉ミステリーローズ。いかにも古(いにしえ)のバラを思わせる。

ナニワイバラを撮り終えたら、急いで駐車場側に移動して、モッコウバラを。サクライバラは終わりかけていたので、佐倉ミステリーローズを撮って、7時過ぎに撮影はすべて終了しました。

取材協力/貝殻亭

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