素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪27 青森「OOLJEE(オールジイ)」
ひと口に園芸店といっても、今やさまざまなスタイルのショップがあります。それぞれの個性が色濃く反映されたこだわりの空間は、ガーデニングのセンスを磨ける最高の場所。今回は、北国の町のグリーンコンシェルジュ、「OOLJEE(オールジイ)」を訪ねました。
目次
北国の人々の暮らしに
植物でうるおいを提供
青森駅の目抜き通りから北に入ってすぐの場所にある、インドアグリーンのショップ「OOLJEE(オールジイ)」。ブティックのような佇まいは、以前トラッドシューズのショップが店を構えていたときの名残で、レンガ色の古い建物のレトロな雰囲気と相まって、マニッシュな風情が漂います。
開放されたドアの奥には、まるで温室のようなみずみずしい空間が広がり、ひしめくグリーンが来客を出迎えてくれます。「こんな寒いところに、こんなにたくさんの観葉植物があるなんて!」と思うほどの品揃えです。
これらはオーナーの葛西真澄さんが厳選したもので、ユニークな姿の多肉植物やインテリアの主役となる大型の観葉植物、ドライフラワーなどを揃え、多様な植物は青森の冷涼な気候の中で育てることを前提に選ばれています。
8㎡ほどの小さな空間には、丈夫に育つ大鉢からポット苗まで、多種多様なグリーンが並びます。店内は壁などのしつらえや什器にもこだわりが見られ、インドアグリーンのブティックといったおしゃれな雰囲気。好みの植物が見つかるだけでなく、飾り方も参考になります。店名の「OOLJEE(オールジイ)」とはアメリカ先住民の言葉で月や宇宙を意味するとか。植物とは直接的には関係ないのですが、葛西さんの感性に共鳴するワードを名前に選びました。
このショップがスタートしたのは、今から約5年前。「冬は長く、外は真っ白な世界が続くので、みんな雪に疲れてしまうんです」と葛西さん。だから、「家や職場に緑を置いて、ほっとする時間を過ごしてもらいたい」という強い思いで、この店をオープンさせたのです。
植物の知識は、すべて独学で得たもの。自然が豊かな地域で生まれ育ったせいか、子どもの頃から植物が好きで、栽培するという感覚は既に持っていました。とはいえ、オープン当初は失敗もありましたが、5年経った今ではそれらを糧に、ほとんどのインドアグリーンの特性を習得。扱う植物の種類も年々増えて、小さな空間に効率よく美しくレイアウトしています。
以前はホテルでマネージャーを務めていたこともある葛西さん。グリーンが人にもたらす効果をずっと肌で感じていました。しかしここ青森では、家屋によっては屋内でも十分な暖が取れないこともあり、グリーンの必要性もあまり求められておらず、ホームセンターの片隅で無難なものしか販売されていませんでした。それなら自分でその重要性や育て方、飾り方を発信しながら販売すればよいのでは…と考えたのです。
冬場は昼間、暖房を使っていますが、閉店後はコストや空気の乾燥を防ぐためにも暖房を切っているので、夜温が5℃程度まで下がってしまう店内。そんな厳しい環境に慣らしているから、お客様も安心して育てることができます。「最近のマンションは、気密性が抜群なので心配ないんですけど、古い一軒家などではやや厳しいんです。植物はそんな高額ではありませんが、存在としては大きいですからね。失敗はしてもらいたくありません」と葛西さん。
陽がふりそそぐ窓辺には、多肉植物やミニサボテン、クリプタンサスやネオレゲリアなどのアナナス類が並びます。鉄パイプに工事現場で見かけるようなライトを取り付け、異国情緒漂う中に異質なエッセンスを添えています。
「空間のベースは‘洋’ですが、什器、商品のスタイルは一つに決めていません。植物はどんなものにもなじみやすく、それがここにいると分かると思います」。味わいのある古道具や無機質なアイテムなどを、グリーンが見事につないでいます。
「OOLJEE」では店頭の販売だけでなく、店舗やモデルルーム、個人宅、オフィスなどのコーディネイトも手がけており、トータルコーディネイトはもちろん、1鉢からでも相談にのっています。また、メンテナンスや、イベント・撮影用などの短期レンタルも行っており、おしゃれなショップから次々に声がかかっています。
「植物を選ぶ一番のポイントは、ライフスタイルに合っているかどうか。世話に追われてしまっては楽しく共存できませんから。数株まとめて注文を受けた時は、水やりのタイミングが同じ植物をご提案するようにしています。事務所や店舗で育てる場合、メンテナンスのストレスで本業のモチベーションを落とさないようにしてもらわなくては」と葛西さん。
【素敵なコーナーにクローズアップ①】
グリーンそれぞれの魅力を引き立てるための工夫をご紹介します。
左/2段の小さなステップを使って、カウンター脇の空間を瑞々しく埋めて。青白いチランジアがワンポイント。
右/バスケットと陶製の鉢カバーで、リズミカルなシーンに。
左/ショップ中央の照明には、大きな黒いライトを用いて、きりりとスパイシーに。光に当たった葉の陰影が美しい。
右/「植物の栽培は、日当たりはもちろんですが、風通しがとても大切です」と葛西さん。天井に取り付けた小さなサーキュレーターが、空気の流れを生んでいる。
上/レジカウンターの奥を目隠しするために、つるを伸ばすグリーンをハンギングして。
下左/ブラックの鉢カバーも混ぜ込み、ハンギングの装飾性を高めて。
下右/市場から入荷したままの黄×黒のプラ鉢も、ここならおしゃれに見える。
【素敵なコーナーにクローズアップ②】
津軽地方に多いという古道具屋仲間たちから集めたアイテムを使った、おしゃれなシーンをご紹介します。
古びたウッドボックスを壁に取りつけた飾り棚。葛西さんが塗ったというグレーの壁にピッタリ。
レジのカウンター上で活躍するのは、工事の足場を使って作った棚と、何に使われていたのか分からない出所不明のアイアンの格子。
子ども用の小さなピアノを飾り台に。白黒の鍵盤がシーンに変化を生んでいる。
左/洋間で使われていたと思われる2脚のチェアも、カウンターまわりの雰囲気を高めている。
右/ダンディなコートが似合う洋服掛けには、チランジアをハンギング。
左/昔懐かしい足踏みミシンは、シーンの引き締め役に。
右/大工さんの使う脚立には、ステップに板を渡してスタンドに。
左/トランクをボックスの嵩上げに使用。革の取っ手が渋さをプラス。
右/おばあちゃんの台所にありそうな籠。テラコッタやグリーンとの相性抜群。
「OOLJEE(オールジイ)」葛西さんのイチオシはコレ!
育てやすいホヤ・カルノーサ コンパクタ
初心者さんが来て、育てやすいコンパクトなものを探しているときは、丈夫なホヤをおすすめしています。ホヤはつる性の低木で、日本の南部から熱帯アジア、オーストラリア、太平洋諸島などに多くの種類が分布しています。葉は多肉質で光沢があり、花はピンクの金平糖のようで可愛らしいんですよ。特にこのホヤ・カルノーサ コンパクタは、葉がクルクルとユニーク。つるを伸ばすので、枝垂れさせて楽しんで。
青森では数少ないインドアグリーンの店「OOLJEE(オールジイ)」。レトロな建物の小さな空間に津軽の古道具や工具を配し、たくさんの観葉植物になじませたディスプレイが魅力です。「寒いからとあきらめてほしくない」という思いで、販売時の説明だけでなく、そのあとのメンテナンスにも力を入れています。困ったことがあれば、アドバイスもしてくれる頼もしいショップで、
SNSなども丁寧に発信しています。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、青森駅から徒歩約8分。
【GARDEN DATA】
「OOLJEE(オールジイ)」
青森県青森市新町1-11-11
TEL :017 723 8808
営業時間:10:00~18:00(平日)、11:00~18:00(土日祝)
定休日:月曜日
Credit
写真&文/井上園子
ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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