ひと口に園芸店といっても、今やさまざまなスタイルのショップがあります。それぞれの個性が色濃く反映されたこだわりの空間は、ガーデニングのセンスを磨ける最高の場所。今回は、美しい小花たちに包まれた癒しの空間「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」を訪ねました。

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花と緑で包まれた
絵葉書のような美しいショップ

大きな公園や図書館など、緑が多い閑静な地域にある「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」。アメリカンスタイルハウスと、ファサードを覆うピンク×白の可憐なつるバラが目印です。その愛らしい佇まいは、まるで洋書の1ページのよう。

ルーシーグレー
9台停められる広い駐車場から見た眺め。屋根に設けたドーバー窓や煙突が、のどかな異国情緒を漂わせている。※
ルーシーグレー

正面はリーフが美しい低木とつるバラの競演(写真は4月下旬撮影)。植物それぞれが、ほどよい存在感を放ちながら見事な調和をなしています。向かって左側はピンクのつるバラで、右側は白。ショップに入る前から、オーナーの杉山洋さんと真奈美さんご夫婦のセンスのよさが伺えます。

ルーシーグレーの白バラ
上方を覆う白いバラは、ロサ・バンクシアエ・ノルマリス(一重咲き・白モッコウバラの仲間)。花壇では赤みを帯びたコバノズイナが枝を広げて、どこかワイルドな雰囲気。
ロサ・バンクシアエ・ノルマリス
枝を旺盛に伸ばしながらもしなやかなバラが、軒下をふわりとやさしく飾る。「このバラは本当によく伸びて丈夫。モッコウバラの仲間だけどトゲがあるんですよ」と真奈美さん。

二人三脚で叶えた
ショップ

ルーシーグレイ

1991年にオープンした「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」。センスの良さとご夫婦の人柄のよさは多くのガーデナーの憧れで、遠方から目がけて来る人も少なくありません。

オーナーの杉山家はもともとナシ農家で、後継ぎであるご主人の洋さんはシクラメン栽培をスタート。けれどそれだけでは飽き足らず、ハウスの一角にギャラリー風の苗売り場を設置しました。そして、次なる構想を練っている最中に真奈美さんと出会い、洋さんは力強いパートナーを得たのです。

ルーシーグレイ
5月に入ると、フロントの左側はバラ‘ラベンダードリーム’や‘シャンプニーズ・ピンククラスター’が咲き、ピンクのラブリーなコーナーに。こちら側は木の看板を中心にして、宿根草やコンパクトに収まる低木で株元を彩っている。※

しばらくすると、ギャラリー風のショップでは手狭となったため、新たなショップに立て替えを計画。夫婦でどんな建物がいいかなどの検討を重ねた結果、デザイン面とコスト面の兼ね合いで、このアメリカンスタイルに決定。「本当はグレーの倉庫のような男前の建物にしたかったんですけどね、当時そのスタイルはちょっと早すぎましたね。でも、私は自然な草花が好きだから、それらになじみやすいアメリカンスタイルでも結果的にはよかったようです」と真奈美さん。柔軟な発想で、自身の世界観を見事に形にしていきます。

ルーシーグレイ
ブリキのジョーロを頭上にハンギング。古びた看板とともに、ノスタルジーな雰囲気を醸している。

ナチュラルにバラが咲く
サンプルガーデン

建物脇のアーチの奥に広がる小さな空間は、ショップをオープンさせてから最初にしつらえたサンプルガーデン。リーフの緑とバラの白でまとめられた、瑞々しいスモールガーデンです。長方形の自然石が敷き詰められた床面にバラが絡むパーゴラで構成した空間は、ロンドンの中庭のような佇まい。パーゴラの下に置かれたチェアに座わると涼やかで、居心地がとてもよい場所。

ルーシーグレイのガーデン
建物の奥に設けたアーチを覆いつくす、生育旺盛なロサ・バンクシアエ・ノルマリス。白バラ一色で魅せるロマンティックな風景。

はじめは園芸に興味がなく、洋さんの手伝いをしている程度だった真奈美さん。初歩的な草花の名前もわからないレベルだったとか。けれど、生命力あふれる植物の健気さや美しさに触れるにつれ、庭づくりの世界に強く引き込まれました。その頃ちょうど創刊されたガーデン雑誌の誌面を彩るイギリスの庭などにも魅了されたこともあり、真奈美さんのガーデニング熱は一気に加速。今の「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」の基礎が形づくられていきました。

ルーシーグレイのテラスガーデン
庭の壁面を覆うのは、ワイルドさと洗練を併せ持つツルアジサイとほんのりピンクのつるバラの‘マダム・アルフレッド・キャリエール’。パーゴラの柱に取り付けられたオーナメントがワンポイントに。
ルーシーグレイのオーナメント
自然な植栽にしっくりなじむ、ブロカントなどのアイテムがさりげなくあしらわれている。これも心地よさの秘訣。
ルーシーグレイの植栽
左上/数本ある白バラの内の1株‘マダム・アルフレッド・キャリエール’。
右上/淡いブルーの小花が清楚な、オンファロディス‘ニティダ’。比較的短命な宿根草。
左下/グリーンの植栽の中にしのばせたグレーのポット。この無造作感が◎。
右下/小さな花を下げる斑入り葉のナルコユリ。奥の花壇を涼やかに彩っている。

ナチュラルな庭づくりに
ぴったりな草花苗がたくさん

真奈美さんが夢中になって読んだ園芸雑誌や洋書などに出てくる花壇の花は、インパクトが強い花が多かったのですが、ショップで販売しているのは、楚々とした草姿やニュアンスのある透明感あふれる花がほとんど。生産農家だけに苗の状態も抜群です。

ルーシーグレイの花苗
そよ風に揺れるような主張しすぎない草花が花台に美しく並ぶ。
ルーシーグレイのリーフ類
ナチュラルガーデンで活躍するリーフや山野草もたくさん。
ルーシーグレイのコンテナ

ベランダなど小さな空間でも真似できそうなコーディネートが盛りだくさん。ブロカントとアジサイを飾った北欧の庭を思わせるシーンは、シック好きなガーデナーにたまらない組み合わせです。人気のアジサイは西洋種に加え、ヤマアジサイ、枝垂れる新品種など品揃えは豊富。

ルーシーグレイのコンテナ
ショップおすすめのコンテナは、小花が映えるコンパクトで悪目立ちしない器やアイアンバスケットなど。古びた感があるのがポイント。

見どころ満載
多彩なシーンで構成された庭

敷地内のガーデンには、ぬくもりあふれる手づくりの構造物やあしらいが点在。見どころがたくさんあるので、近隣に住む人の散歩コースにもなっているのだとか。

「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」にこんなにも人が訪れるようになったのは、ブログやSNSを始めたことがきっかけで、他店の人や生産者、お客様など多くの人との交流が生まれたことが大きく影響しているそう。「たくさんの人たちと知り合えて、みなさんの力を借りながらショップは成長してきたように思います。感謝でいっぱいですね」と真奈美さん。庭の構造物などを作る際にもいろいろな仲間が関わっているため、ガーデンは多彩な表情を見せています。

ルーシーグレイ
上・下左/ショップをオープンさせて早い段階で手づくりをして建てたという、洋さんお手製の小屋。(※上の写真)
下右/友人たちが作って、はるばる遠方から運んでくれた小屋。
ルーシーグレイの植栽
上3枚/ブロカントを上手に取り入れた魅力的なディスプレイが随所にちりばめられている。
下左/石畳のような園路は真奈美さんが自身で作った場所。
下中/ハウスで生産しているビオラ‘夜空のムコウ’の、庭での試し植え。
下右/こぼれダネで増えたシレネ・フロスククリ。
ルーシーグレイの温室
温室内に広がる、雨や寒さに弱い植物コーナー。頭上からハンギングが下がったりして、お宝を見つけ出すような楽しみが詰まっている。
ルーシーグレイの花苗
人気草花苗のストック置き場。最適な環境で管理できるのは生産者だからこそ。

ギャラリーのような
落ち着きのある屋内売り場

アメリカンハウスの中は、色を抑えた雑貨類が並ぶシックな空間。照明の明るさも抑えられているので落ち着いた雰囲気です。ここはまさに洋さんの目指していたギャラリーのような園芸店。暮らしのセンスアップにぴったりなアイテムが揃っています。

ルーシーグレイのディスプレイ
白×ダークブラウンを基調にグリーンを添えた、洗練されたディスプレイ。
ルーシーグレイのディスプレイ
ガラスやアイアンなどの雑貨類のほか、ガーデンツールや手袋、小さなコンテナもそろいます。コンテナは植物が映える、無彩色のものがほとんど。
ルーシーグレイのディスプレイ
ドライフラワーやリースなども販売。真似したくなるナチュラルなコーディネートであふれている。
植物活性剤‘土母’
有機栽培におすすめの植物活性剤「土母」。光合成細菌体という優良微生物で土の中で有益な微生物を増やし、土の状態をよくして植物の健やかな生育を促すといったもの。弱った植物もこれをかけると調子がよくなるのだとか。

北欧の暮らしをヒントにした
花屋が2020年秋にオープン!

敷地の一角にオープンした、ガーデニングコーナーとは趣が異なる切り花の店「Lucy Gray botanisk」。botaniskとはスウェーデン語で「植物」を意味しますが、ここでは切り花のみならず「植物のある暮らし」を提案。店内に並ぶ花は、外の売り場と同様、ナチュラルなものでいっぱいです。

Lucy Gray Botanisk
ショップ名が書かれたガラス窓が北欧の雰囲気を漂わせる、ショップの入り口。
ルーシーグレイボタニスク
シックな色調の空間のなかで、バラやシャクヤクなどのあでやかな花が、つややかに映えている。
Lucy Gray Botanisk
左/店のドアに飾られたドライのスワッグ。赤いバラの実が愛らしい。
右/カウンターに並ぶおしゃれなビンは、伊豆のバラ園で作られたバラジャム。春の薔薇のシーズンの時だけ販売している。
ルーシーグレイのブーケ
庭で摘んできた花を寄せたような、ナチュラルなブーケ。眺めているだけで癒やされる。
ルーシーグレイボタニスク
切り花売り場の奥のゾーンは、サロンのような空間。コロナ禍が終わったら、花で暮らしを彩るための、いろいろなことを学ぶワークショップを開く予定。
ルーシーグレイボタニスク
ナチュラルスタイルのドライフラワーのアレンジも販売。

植物の力で心癒やされる
ショップを目指して

花がある心地よい生活をトータル的に提案する「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」。「ここにいると癒やされるって言われることが一番嬉しいんです」という真奈美さんの目指すところは“癒やしの場所であること”。以前、お母さまを看病していたときに感じた病院の殺風景さや、闘病している友人が植物から大きな力をもらっている様子を目の当たりにしたことで、「現在、緩和医療学の中にどう植物が取り入れられているか」に興味を持ち始めました。

ルーシーグレイのミニブーケ
インテリアに彩りを添えるミニブーケ。ちょっとしたプレゼントに最適。

大学に再度入学して日本の福祉とターミナルケアについて勉強した真奈美さん。卒論で緩和医療の現場における園芸療法の取り組みについて調べると、現場で植物を取り入れる難しさを目の当たりにしました。これを機に自分自身のショップを癒やしの場として提供することに強く意識を置くようになり、「植物で花好きな人々を元気に──」という思いで夫婦ふたり、ショップを日々進化させています。

エプロンとバッグ
左/グレイッシュなカラーがおしゃれなリネンのエプロン。これから少しずつ洋服も増やす予定。
右/水彩画家・杉本理江子さんによる手描きのコットンバック。いろいろな絵柄が揃う。

杉山さんのイチオシはコレ!
HAWSのジョウロ

杉山さんのおすすめは、人気の英国HAWS社のウォータリングカン。大きなサイズもありますが、屋内や小さなベランダではこのコンパクトなものがぴったり。置きっぱなしでも飾っているように見えるのも◎。ステイホーム時だからこそジョウロにもこだわって、楽しく水やりをしてみませんか?

HAWSメタルインドアカン
HAWSメタルインドアカン1L。
HAWSのジョウロ
左/HAWSハンディーインドアカン 0.7L。
右/HAWSヘリテイジカン1L。

植物の瑞々しさとオーナー夫妻の飾らない人柄に癒やされるために、多くの人々が訪れる「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」。2021年9月現在、敷地の一角にエディブルプランツのポタジェなどの新しいコーナーを造作中です。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、小田急線・湘南台駅より徒歩約8分。

【GARDEN DATA】

Lucy Gray(ルーシーグレイ)

神奈川県藤沢市湘南台7-23-1
TEL:0466-45-6565

営業時間:10:00~17:00

定休日:水曜日

http://www.lucygray.net/intro.html

Credit

写真&文/井上園子
ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。

写真協力(※)/Lucy Gray

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