- TOP
- ガーデン&ショップ
-

バラ摘み&ローズウォーター作り体験【バラ好きさんの特別な旅】
八ヶ岳のセカンドハウスのご近所アサオカローズにて、ローズウォーターづくりに挑戦。早朝の涼しいうちに、八分咲きの花だけを手摘みしたあと、その日のうちに蒸溜してくれるといいます 。ローズウォーターづくりは初めて! どんな体験になるのか、興味深々です。まずはファームへ花摘みに行きます。 アサオカローズを主宰する浅岡正玄さんの「好きなのを選んでね!」という案内を受けて、「BALAhouse」で大きさデザインがさまざまに並んだカゴの中から好きなものを選びます。わたしはハンドルが一つの丸いカゴをセレクト。腕に下げて、ルンルン花摘みへ。ローズウォーター用に朝摘みするのは、八分咲きの開き切っていないバラです。 「きれいなバラを摘んでね!」とのアドバイスをもらって、一番美しい状態で咲いている八分咲きのバラを見つけては、軽く花を手で包んで、一つずつ花茎をチョキン。まだ咲ききっていないバラを何十輪と惜しげなく摘むという、なんとも贅沢な時間を過ごしました。本当は、つぼみを摘むのがベストなのだそうです。なぜなら、花が開くにつれ香りの成分がどんどん外へ逃げてしまうから。つぼみの状態が香りを一番蓄えているのだそうです。わたしには、まだ開いていない花を切ってしまうのがもったいなくて、ついつい愛らしく花開いた花をカゴに集めてしまいました。 そしてBALAhouseに戻って、いよいよカゴいっぱいに摘んだバラを使って、ローズウォーターづくりです! 今回使ったバラの品種は‘オーバーナイト・センセーション’。宇宙飛行士の向井千秋さんがスペースシャトル内で香りの実験に使ったバラとして有名になった、とても香り高い品種です。花の大きさは6㎝程度と手の平におさまるサイズで、開くと花びらの縁がクルンと反り返ってなんとも愛らしい花姿です。 ローズウォーターづくりに欠かせない水は、近くの秘密の場所にある湧き水を使います。この湧き水は、上流に農薬を使っている農家がない安全な湧き水だといいます。蒸留を始める直前に汲みに行くのもローズウォーターづくりの作業の一つです。木々を抜けるそよ風を頬に受けながら、汲んだ湧き水はひんやりしていて、真夏ということをひととき忘れさせてくれました。緑陰に満ちるマイナスイオンにも癒されましたよ。 カゴからもふわりと香りが漂う摘み立てのバラを、銅製のアランビックの蒸留釜に詰め込んだら、八ヶ岳の秘密の湧き水を注ぎ込みます。芳香蒸留器は、古代錬金術師が使用していたのと同じものだそう。じっくり、沸点にならない低温で数時間煮詰めていきます。蒸留器の中でバラの香りを含んだ水蒸気が水滴になり、一滴、一滴を集めたものがローズウォーターになります。この過程を思うと、ローズウォーターが高価なのも納得ですね。ちなみに、標高1,000mにあるアサオカローズでは沸点が98度くらいになります。浅岡正玄さんによる絶妙な火加減により何時間も煮詰めるのもおいしいローズウォーターづくりの秘訣です。 今回、この摘み取り体験をしたのは8月という真夏。東京では5月中旬がバラの最盛期なので、真夏にこんなにいい状態の香り高いバラを心ゆくまで摘み取れることは、貴重で幸せな体験になりました。アサオカローズで6月に咲いたダマスクローズで抽出したローズウォーターと‘オーバーナイト・センセーション’のローズウォーターの2種類を試飲させていただきました。無農薬のバラを使って、八ヶ岳の湧水でつくられたアサオカローズのローズウォーターは、海外のものとは違い、びっくりするほど香りが優しい。軽やかで爽やかな香りが、口いっぱいに広がります。 私が摘み取った朝摘みのローズウォーターは、蒸留後にスリムなガラスのボトルに詰められて、さらに香りがより良くなるようにと30日ほど寝かせたあと、自宅に届きました。ラベルには、摘み取った人の名前が刻まれています。世界でたった1本のわたしのローズウォーター。開けるのはちょっともったいないけれど、まずは飲料として味わってから、化粧水やリネンアロマ、お菓子づくりにと活躍しました。フタを開けるたびに、バラの香りに包まれたあの天空の花摘みの幸せな時間を思い出しました。 Information 「アサオカローズ」 天空のバラ摘み体験は8〜10月下旬。要予約 料金:7,800円 (アフタヌーンスコーンコースなどコースにより異なります) 〒399-0101長野県諏訪郡富士見町境230番地1 BALAhouseアサオカローズ Tel 0266-75-5882 http://www.asaoka-rose.com/ アクセス:中央高速自動車道、小渕沢I.C.から車で約10分 併せて読みたい ・バラの香りを閉じ込めたローズゼリーの作り方 ・日本に上陸! 中国医学理論が認定した美と健康の「食香バラ」 ・バラの季節を楽しむなら朝がベスト! 心身ともに癒される「バラの芳香浴」 Credit 写真&文/K
-
イギリス

憧れのイングリッシュガーデン コッツウォルズ地方へ旅する
湖水地方を後に、私たちが次に向かったのは、憧れのコッツウォルズ地方。ウィンダミア駅から電車を乗り継ぎ、チェルトナム・スパ駅に到着しました。そこからタクシーで宿泊先のあるアッパー・スローター村へ向かいます。 途中、車窓から見える可愛らしい石積みの家々、小高い丘が連なる長閑な田園風景は、おとぎの国に迷い込んだよう。高鳴る胸に何度も手を当てながら、景色に見とれました。小さな村々をいくつも通り過ぎ、いつの間にか、景色は見渡す限りの牧草地へと変わっていきました。車一台ほどの狭い一本道を、タクシーの運転手さんは猛スピードで走ります。 行けども行けども変わらない景色に、「本当に、こんな場所に宿泊先があるのかな」と、不安になった頃、ようやく「Upper Slaughter」という看板が見えました。 宿泊先は地図にも載っていない 小さな村Upper Slaughter それもそのはず、アッパー・スローター村は、地図にも載っていない小さな村なのです。そこからひと走りした先に、私たちの宿泊先「Lords of the Manor」がありました。門を入った途端、そこはまるで別世界。味わい深い蜂蜜色の重厚な建物は、辺りに点々と佇む素朴な民家や景色からは、違和感を感じてしまうほど、優美な風格を放っていました。 この「Lords of the Manor」は、17世紀の教区牧師の邸宅を利用した、広さ8エーカー(約9,700坪)の閑静な庭園と緑地に囲まれたマナーハウス。何年か前に雑誌で写真を見た時から、「いつか、もしコッツウォルズを訪れることがあったら、ここに宿泊したい」と、夢見ていました。 タクシーを降り建物の中に入ると、笑顔の素敵な若い女性が迎えてくれました。無事チェックインを済ませ案内された部屋は、美しい中庭が見える廊下を進んだ先の角部屋。イギリスらしい上品な内装と、清潔感あるバスタブ付きの浴室に感動しました。部屋の中に用意されていたエルダーフラワーのドリンクを飲み、暫し旅の疲れを癒やした後、庭園へ。 Lords of the Manorと絵画のような村の家々 広い庭園は、手入れの行き届いた青々とした芝生とキャットミントやサルビア、フウロソウ、オダマキなどのピンク色、さらには紫色のグラデーションのエレガントな植栽。まん丸のアリウムがリズミカルなアクセントになり、背景の蜂蜜色の建物が、それらをより引き立てています。 庭園の先は、白と黄色の可憐な野花が咲く緑地が広がり、顔の黒いコッツウォルズ羊がのんびりと草を食んでいました。聞こえてくるのは、彼らの「メェー」という鳴き声と、これまでに聞いたことのない美しい野鳥の声。そして、心地よい鐘の音だけでした。 その鐘の音に誘われてマナーハウスの敷地の外に出ると、近くに小さな教会がありました。教会の脇には細い小道があり、カウパセリという白い野花が満開。あまりに素敵な景色だったので、小道を下って行くと、アイ川という小川が流れていました。 浅瀬の透き通った水は、ひんやりと冷たく湧き水のよう。野鴨たちが、心地よさそうに泳いでいました。そして、川を渡った突き当たりの空き地の脇に、素敵な庭のある家が点々と並んでいました。不思議なことに、きちんとお手入れされているのに、全く人の気配がありません。まるで絵画のような美しい佇まいに引き込まれ、暫く動けなくなりました。 アイ川沿いのPublic footpath 散策の途中、思いがけず「Public footpath」と書かれた看板も見つけました。そう、イギリスで有名な「公衆が自由に歩ける自然歩道」です。嬉しくて、木製のゲートを開けて歩いてみることに。 アイ川沿いに続くフットパスは、まず、木々の間を縫うように進みます。きらきらと差し込む木漏れ日の中、聞こえるのは、清らかな川のせせらぎと青草を踏みしめる足音、そして野鳥たちの奏でる美しいメロディーだけ。歩きながら「このまま時が止まってしまえばいいのに…」と心の中で呟いていると、今まで味わったことのない感動と幸福感で胸がいっぱいになりました。 しばらく歩くと、緩やかな丘の上へ。そこから、何とLords of the Manorが見えました。その景色は、17世紀から変わっていないアッパー・スローター村の原風景のようでした。丘の上は牧草地になっていて、羊が何頭も放牧されています。彼らはとても穏やかで、近づいても全く気にする様子がありません。こんな場所で過ごせるなんて、なんて幸せな羊たちでしょう。 再び木製のゲートを開け、更に道を進むと、広い草原に出ました。そこは、黄色の野花が敷き詰められた花畑。私たちは「天国だね〜!」と、思わず両手を広げて叫びました。それほど美しい場所だったのです。天国の花畑を抜けると、お隣のロウアー・スローター村へ着きました。 後に解ったことですが、私たちが歩いたアッパー・スローター村からロウアー・スローター村までのフットパスは、あのチャールズ皇太子とダイアナ妃が、好んで何度か訪れた「ロイヤル・フットパス」だったようです。お二人と同じ景色を見て歩いていたなんて…。やっぱりここは、イギリスで数あるフットパスの中でも特別な場所だったのですね。今でも、あの時の感動が鮮明に甦ってきます。 Credit 写真&文/前田満見 高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。 Instagram cocoroba-garden
-
オーストラリア

オーストラリアの庭と住まい 土地の特性を活かす自然に寄り添う暮らし
緑も笑っている庭 ここは世界的なガーデンコンテストで数々の賞を受賞しているランドスケープデザイナー、ジム・フォガティ氏の自邸です。 庭はもちろん、自らデザインしたもの。 都市の水不足への配慮から大量の散水が必要になる芝生を敷き詰めることを止めたジムは、石張り貼りのテラスと通路以外の地面を様々な植物で美しくカバーすることにしました。 それが個性的な植物が織りなす豊かな風景になり、家族や訪れる人の目を楽しませ、また、水まきをしなくても、緑の葉で派手オーストラリア独特の強い日差しを遮り、地面を乾燥から守ることにもつながるからです。 もしここが平坦な緑の芝生だったら、あるいは、わずか数種類の植物を単調に並べただけの庭だったら、彼女はこんな素敵な笑顔になれたでしょうか? ジムのスタイル 世界的なランドスケープデザイナーであり、ガーデナーであるジム・フォガティ氏は、オーストラリア人らしい、自然でおおらかなデザインスタイルを持ち、イギリスで開催される由緒ある英国王立園芸協会主催のチェルシーフラワーショー2011でゴールドメダルを受賞するなど、世界各地のコンテストで数多くの賞を受けています。 ジムは「人と人が出会い、自然の中でリラックスして心を開き、有意義な時間を過ごす場所として、庭ほどふさわしいところはない」という信念を持って、今も第一線のデザイナーとして活躍しています。 建築と庭との調和 ジムの自宅は決して大きくありませんが、美しい緑と風のそよぎ、そして水の輝きで、訪れる人の心を豊かにしてくれる「モダンな最小限住宅」です。それに合わせるように、ガーデンも色とりどりの花を咲かせるのではなく、統一された葉の「色」とさまざまな「形」を楽しむものに仕上げました。 庭は、住宅に調和し単にそれを補うものであるのではなく、住まいの主役ともなって、人の心を開放する自然との共感の場となり、豊かな暮らしのステージとなる大切な存在だと考えるからです。 自然をそのまま楽しむシンプルさ 家族の時間を豊かにする庭 「これからはさらに多くの人が緑に親しみ、美しい自然がもっと愛されるようになるでしょう」とジム。 「人は自宅でもっと庭を楽しみ、それは暮らしの質を上げ、家族の時間を豊かにします。 それは決してお金では買えない価値なのです」。 庭は建物を建てた後の「敷地の余白」ではありません。庭こそがこれからの新しい住まいの価値を高めるのです。 楽しく暮らすためのエンターテインメント性 ジムのシンプルな住まいの奥には、スマートなプールもあります。光、風、緑、そして水が、住まいとそこで暮らす家族に大きなやすらぎを届けます。木々の間を抜け、水の上を渡る風の爽やかさ、さらに車を外に出せばガレージもエンターテイメントスペースとしてオージースタイルの立ち飲みが楽しめるバーカウンターになります。 そして人が歩いたり、車を止めると、爽やかな香りを発するレモンバームもゲストの訪れを楽しみに待っているのです。 design:Jim Fogarty ジム・フォガティー Photo: Ken Takagi, Jay Watson, Kenji Hotta 引用元:『HomeGarden&EXTERIOR vol.1』より


















