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英国の名園巡り イギリス南西部のエキゾチックな庭「トレングウェイントン・ガーデン」
120年前のこと、英国の慈善団体ナショナル・トラストは、開発で失われていく自然や、歴史ある建物や庭といった文化的遺産を守り、後世に残そうと、活動を始めました。多くのボランティアの力によって守り継がれる、その素晴らしい庭の数々を訪ねます。 世界中の植物が茂る庭 トレングウェイントンの屋敷と庭は、1817年、ジャマイカから帰郷した資産家のサー・ローズ・プライスによって整えられました。その後、1867年に、地元の実業家トーマス・サイモン・ブリソーの手に渡り、以来、1961年にナショナル・トラストに寄贈されるまで、ブリソー家で6代に渡って受け継がれてきました。12万㎡ほどの広い庭には、石塀に囲われたエリアと、小川に沿って小径を散策できるエリアがあります。 庭づくりに特に熱心だったのは、3代目のサー・エドワード・ブリソーです。20世紀前半、彼は、州内随一といわれた有能な庭師とともに、園内に小川を引いたり、世界各地の珍しい植物を集めたりして、庭園を充実させました。 5月になると、かつてプラントハンターが持ち帰った希少な品種を含むアザレアやロドデンドロンが、小径を鮮やかに彩り、甘い香りで満たします。 異国情緒あふれるツリー・ファーンの林 園内で最もエキゾチックな雰囲気が漂うのは、ツリー・ファーン(ディクソニア・アンタルティカ)の茂る林です。一見するとヤシの木のような、オーストラリア原産の大きなシダが、ひんやりとしてほの暗い、静かな世界をつくります。そこに明るさをもたらすべく植えられているのは、鮮やかな花色のツバキやロドデンドロン。他では見られない、ちょっと面白い取り合わせです。 花々に縁どられる小川の庭 こちらは、園内を流れる小川に沿ってつくられた、ストリーム・ガーデン。小川の流れは自然で、その昔に人工的につくられたとは信じられません。アメリカミズバショウ、ヤグルマソウ、ホスタ、シダ、ヘメロカリス、クロコスミアといった植物が植えられた、解放感のある水辺の景色が素敵です。 春から初夏にかけて、小川はさまざまな花に縁どられます。中でも目を引くのは、黄と赤紫の色鮮やかなカンデラブラ・プリムラ。燭台のようにすっと伸びた姿をして、小川のそばでよく育つプリムラです。 ノアの方舟を模したキッチン・ガーデン 石塀でぐるりと囲われ、傾斜のついた花壇のあるキッチン・ガーデンも見逃せません。この地所を最初に整えたサー・プライスは、いささかエキセントリックな信仰を持っていて、キッチン・ガーデンを、ノアの方舟の大きさ(およそ120×20m)に合わせてつくったと伝えられています。なかなかユニークな発想ですね。現在、このキッチン・ガーデンの一部は、地元の人々や小学生のコミュニティーガーデンとして使われています。 ペンザンス周辺には、海辺の断崖絶壁につくられた野外劇場ミナックシアターや、英国最西端となるランズエンドなど、ダイナミックな自然を感じられる観光スポットがあります。ぜひ周遊して、コーンウォールの旅を満喫してください。 取材協力 英国ナショナル・トラスト(英語) https://www.nationaltrust.org.uk/ ナショナル・トラスト(日本語) http://www.ntejc.jp/ Information 〈The National Trust〉Trengwainton Garden トレングウェイントン・ガーデン コーンウォール州ペンザンスへは、ロンドンから車で約6時間。電車では、ロンドン・パディントン駅からペンザンス駅まで約5時間。駅のバス・ステーションから庭園へは約20分、タクシーなら約10分。2月12日~10月29日の月~木と日に開園(10:30~17:00、屋敷は非公開)。 住所:Madron, near Penzance, Cornwall, TR20 8RZ 電話:+44 (0) 1736363148 https://www.nationaltrust.org.uk/trengwainton-garden Credit 文/萩尾 昌美 (Masami Hagio) ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。5年間のイギリス滞在中に、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するようになる。神奈川生まれ、早稲田大学第一文学部・英文学専修卒。
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イギリス

英国ナショナル・トラスト ウィンターガーデンの楽しみ
120年前のこと、英国の慈善団体ナショナル・トラストは、開発で失われていく自然や、歴史ある建物や庭といった文化的遺産を守り、後世に残そうと、活動を始めました。多くのボランティアの力によって守り継がれる、その素晴らしい庭の数々を訪ねます。 足元に咲く可憐な球根花 大木の根元に咲き広がるシクラメン・コウムは、冬の庭に明るさをもたらしてくれる貴重な存在。草丈10㎝程の小さなシクラメンで、多少の霜にも耐えられます。 氷の妖精みたいな小さなアイリスは、レティキュラータ種の‘キャスリン・ホジキン’。草丈12㎝程の可愛らしいアイリスで、晩冬から早春にかけて、スノードロップと同じ頃に花開きます。 うつむく純白の花を咲かせるスノードロップ。イギリスでは落葉樹の林に群生しているところも多々あり、春が近づいていることを真っ先に知らせる花として親しまれています。花姿が微妙に異なる、さまざまな園芸種も出ています。 寒さが生み出す芸術 霧氷に美しく縁取られたカエデの葉。冬ならではのアート作品です。 一面の霜に覆われる、早朝のキッチンガーデン。凍りつくケールが砂糖菓子のよう。 朝もやの中、濠の向こうに浮かぶスコットニー城。静寂に包まれたモノトーンの世界。 庭の人気者 ロビン 裸木の多い冬の庭では、餌を求めてやってくる小鳥の姿も見つけやすく、野鳥観察が楽しめます。赤い顔と丸みのある姿が愛らしいロビン(ヨーロッパコマドリ)は、物語に出てきたり、クリスマスカードのモチーフに描かれたりと、英国の人々に広く愛されています。 ロビンが止まっている低木は、ミズキの仲間、コルヌス・サングイネア‘ミッドウィンター・ファイヤー’。その名の通り、燃えるように鮮やかなオレンジ色の幹や枝が、彩りの少ない冬の庭のアクセントとして楽しまれています。 いかがでしたか、英国の冬の楽しみ。あなたの周りでも、冬ならではの庭景色を見つけてくださいね。 併せて読みたい ・上野ファームの庭便り「冬を楽しみ、冬を飾る」絵になるガーデンシーン ・庭で野鳥観察! 庭にバードフィーダーを置こう 取材協力 英国ナショナル・トラスト(英語) https://www.nationaltrust.org.uk/ ナショナル・トラスト(日本語) http://www.ntejc.jp/ Credit 文/萩尾 昌美 (Masami Hagio) ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。5年間のイギリス滞在中に、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するようになる。神奈川生まれ、早稲田大学第一文学部・英文学専修卒。
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イタリア式庭園の特徴が凝縮された「ヴィラ・カルロッタ」【世界のガーデンを探る旅5】
イタリア式庭園の特徴をすべて備えた「ヴィラ・カルロッタ」 北イタリアの庭園巡りも、いよいよこの庭が最後になります。イタリア式庭園の特徴であるテラス状になった植栽帯や、豊富な水と巧みな高低差を使った噴水、そして大理石彫刻の見事さ。さらには、どこにも負けない鮮やかな花の色。そのすべてが見られるのが「ヴィラ・カルロッタ」の庭です。 コモ湖を望むこのヴィラは、湖畔の入り口から正面を見上げると、フォーマルな佇まいの噴水と花壇の向こうにそびえ立つ白亜の邸宅が、緑の山を背景に威厳をたたえて我々訪問者を見下ろしているかのようです。 カルロッタ邸の歴史に関わった貴族たち ここは元々16世紀に絹貿易で財産を築いたクラリチ一族(Clerici family)のものでした。17世紀にミラノの銀行家ジョルジョー・クラリチ伯爵(Giorgio Clerici)の別荘として今の姿になり、その後19世紀にナポレオンの友人のジャン・バチスタ・ソンマリーヴァ伯爵(Gian Battista Sommariva)の手に渡り、庭を改修したり美術品を蒐集するなどしました。その後、この邸宅の名称になっているカルロッタの母親、マリアンネ公爵夫人の手に渡り、夫人の夫が広大な敷地内に植物園をつくりました。そして、結婚祝いに、このヴィラが娘のカルロッタにプレゼントされ、カルロッタ邸となったのです。この素晴らしいヴィラを贈られたカルロッタは、なんと23歳の若さで亡くなってしまいました。 何代もオーナーが変わりながら、7ヘクタールもの敷地の中には、カルロッタの父が世界中から集めた植物により植物園になったのですが、特に、日本のツツジやシャクナゲ、ツバキのコレクションは有名で、日本を思わせる竹林もあります。また、邸宅の中には数々の美術品も収蔵されていますが、なかでも、「ロミオとジュリエットの最後のキス」と題された18世紀末のロマン主義画家による作品が、近くの窓から見える湖の風景とも調和し、訪れる人にため息をつかせます。現在は、カルロッタ財団により運営、一般公開され、世界中から観光客が訪れています。 カルロッタ邸の敷地内をご案内します 外から見ると敷地内に高低差があることをあまり感じませんが、一歩中に入ると、前庭には十分な奥行きと広がりがあり、知らず知らずのうちに建物の足下までたどり着きます。そこから見上げるヴィラは白くそびえ立ち、その建物と庭の配置のすばらしい演出効果で、気がついた時は庭の中に吸い込まれているのです。 前庭から最上階のテラスまで登る左右対称につくられた階段には、白い大理石に映えるベゴニアとつるバラが咲き、そして上階の手すりにはアイビーゼラニウムが飾られています。植物のセレクトは、すべてイタリアンレッドです。 最上階からの絶景と庭の融合 テラスの最上階ではコモ湖を望み、遠くの山々が見渡せる絶景が待っています。ここにたどり着くまでに設けられている1段目のテラスと2段目のテラスが、最上階で待っている景色への期待感を徐々に高めてくれます。 まず前庭から階段を上り、最初のテラスに出ると、レモンやオレンジなどの柑橘類のトンネルが現れます。ここで一度周囲の眺望を消し去り、2段目のテラスに到着すると、背丈より高い赤いサルスベリで少し視界と明るさを取り戻します。さらに3段目の最上階へ到達すると、この庭の最高の絶景が目を楽しませてくれます。コモ湖の向こうには濃い緑の山々と蒼い空が広がり、手前に配置された1列の赤いハイビスカスの鉢植えが、それらを引き立てる心憎いまでの演出には、ただただ感心するばかりです。 お屋敷には美術品の数々 全体がパステルブルーに塗られた吹き抜けのメインホールに一歩入ると、真っ白な彫像やレリーフに目を奪われます。カノーヴァの彫刻をはじめ、さまざまな芸術品が当時のインテリアとともに鑑賞できるという贅沢なひとときも味わえます。 ヴィラの裏手にはまぶしい緑、そして振り返れば深い群青色のコモ湖と蒼い空が窓の外に広がっています。天井画や美術品に水面の反射光がさして、鑑賞するものすべてが輝いて見えます。 ヴィラの裏側にもかわいらしい花壇がありました。真っ白な大理石の砂利が緑の中に一際存在感を出しています。つげの生け垣のデザインもちょっとユーモラスで、ここでは赤に代わって優しいオレンジ色がアクセントに。園主のおもてなしの心が感じられます。 植物園の中の毛氈花壇では、寒い北風からヤシを守るように、背景にさまざまな高木や針葉樹の森が広がっています。緩やかな斜面には、ピンク、黄色、オレンジ、パープルとパッチワークのように夏の花が咲き、木々の緑と対比する花色の洪水が、不思議な迫力をつくり出しています。写真の右端に写っている人影と比べれば、この庭園のダイナミックなサイズ感がお分かりになると思います。 「ヴィラ カルロッタ」がある街、トレメッツォ 北イタリアの湖水地方の中でも美しいコモ湖を望む観光地、トレメッツォは豪華な邸宅が立ち並ぶことでも有名な場所です。かつて北イタリアはドイツ語圏(ドイツ、スイス、オーストリア)からの観光客が多かったのですが、今はアメリカンイングリッシュが聞かれ、英語がどこでも通じるので、安心して旅行ができます。 トレメッツォから少し離れた郊外の小さな村でも、広場には花に飾られた道標が出迎えてくれます。ルネッサンスから連綿と続いたイタリアの庭の歴史、宮殿からヴィラ、そして町の中へ。着実に、花のある豊かな暮らしの精神は引き継がれているようです。 ヨーロッパの富と文化の中心は、ルネッサンスの後、フランスの王族文化へと移っていきます。ルイ14世の命を受けたル・ノートルがイタリアを訪れ、そこから得たインスピレーションからベルサイユ宮殿の庭をデザインしていくというお話は、また次回にご紹介しましょう。
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イタリア

これぞイタリアの色づかい「ヴィラ・ターラント」【世界のガーデンを探る旅4】
世界中の植物が2,000種集まった 絶景も見逃せない植物園 今回ご紹介する「ヴィラ・ターラントVilla Taranto」は、世界中の植物約2,000種類が集められた植物園(Botanical Garden)として公開されています。一つずつの植物を観賞するばかりでなく、丘の上からは遠くに雪をいただくスイスアルプスが望める絶景や、真っ青で穏やかなマッジョーレ湖を望む丘もあり、一日ゆっくり景色も堪能しながら、贅沢な時間を過ごすことができる場所です。そして何といっても、ここイタリアでしか見ることのできない素晴らしい色づかいの花壇植栽が魅力です。 お気に入りの土地にガーデンをつくったMr.ネイル この庭は、20世紀の初めにスコットランド人のネイル・マックイーチャン(Neil McEacharn)によってつくられました。彼はお気に入りの土地だったマッジョーレ湖のほとりの古いヴィラを1931年に買い取り、世界中から植物を集めたのちに、この地に植物園を兼ねた壮大な庭をつくりました。それがこの庭園です。16ヘクタールの敷地内には、回遊式のイングリッシュガーデンスタイルをベースにした、世界有数の植物のコレクションがあります。フォーマルな庭をはじめ、噴水やさまざまなフラワーベッドなどがちりばめられ、園路の総延長は7㎞にも及びます。1939年、彼には跡取りがいなかったため、完成した植物園の中に自分を埋葬するという条件で、イタリア政府にすべて寄贈し、現在に至ります。彼は今もこの庭の中心にある花壇の中に眠り、庭を見守っています。 この庭をつくったネイル・マックイーチャンの碑を囲むように、ドーム状に花を咲かせているのは、黄色とオレンジのジニア。シンプルな植栽ですが、とても効果的で華やかです。 巨大なコニファーが並ぶエントランスからガーデン観賞スタート 両側に緑のグラデーションをつくるパイネータム(針葉樹園)のエリア「コニファーアレー」から、ガーデン散策がスタートします。ゆるやかな上り坂を進むと、森林浴をしているような清々しい気持ちになります。1930年代に植えられた樹木は、樹齢100年を超え、見上げるばかりの大木です。それぞれの種の持つ自然樹形や性質を比較しながら見ることができます。さまざまなコニファーの緑の株元を彩っているのは、カラフルなインパチェンスのボーダー花壇です。コニファーの緑の補色である赤いインパチェンスだけでなく、白やピンクを混ぜ合わせることにより、必要以上に鮮烈な印象になりがちな色の対比を和らげて、訪れた人を優しく迎えてくれます。 さらに進むと、夏の終わりのボーダー花壇のエリアに到着。手前には燃えるような黄色と赤のケイトウの花穂が眩しく輝き、陽射しの下で光り輝いています。芝の緑と空の青に対比する花色を選ぶのは、イタリアならではの組み合わせです。芝生はしっかり刈り込まれて、花壇のエッジが効いた、とても分かりやすいガーデンデザインです。 この庭で一番の見どころ 丘の上のフォーマルなテラスガーデン 丘の上に到着すると、テラス状になった敷地は、中央に水の流れを配し、左右対称のフラワーベッドになっています。遠くに山を望む素晴らしい借景の中、緑と赤の対比が目に飛び込んできます。ブロンズの少年が眺めているのは、屋敷の向こう、雪をいただくアルプスの山々でしょうか。 ガーデン全体が強烈なイタリアンカラーで、原色を対比させた配色の中に不思議な静寂感があります。イギリスのナチュラルな植物の組み合わせとはまったく違った、面で色構成されるイタリアの庭デザインは、ほかでは見ることのないものです。フラワーベッドの植物の使い方と配色は、日本のように夏が蒸し暑くなく、カラッとした気候の北イタリアならではの花風景。インパチェンスやケイトウが生き生きと育つ様子を見ると、日本でもこの派手な色づかいを試してみたくなります。 園路沿いには草丈2mにも育った赤やピンクのインパチェンスと、株元を引き締めるアゲラタムの紫。とても日本では考えられないボリュームです。 園内のあちこちに見られる花の植え込み。散策の途中でも飽きさせません。 ハス池の周りにも、対比する花色のサフィニアの鉢植えがアクセントに。 湖から8㎞離れた場所ですが、噴水はパイプで汲み上げた自然の水を使っています。 屋敷を引き立てる強烈な花色のバランス 屋敷の横には、赤一色だけのケイトウ花壇と芝生の対比。アクセントにスタンダード仕立てのバラが空中に浮かぶことで、芝の庭との間をつなぎます。これも、この庭独特のデザインの一つです。 今回、この庭を取り上げた理由は、現代のイタリアの庭の多くが、これほどにはイタリアンカラーを強調していないという物足りなさを感じたためです。造園の歴史から考えると、この庭は時代としては比較的新しいほうですが、それぞれのお国柄に合った植栽と配色は、当時も現在も同じ傾向にあると思います。造園の歴史は、イタリアルネッサンスのあと、フランスやイギリスへと移っていきます。次回はもう一つ、イタリアルネッサンスのヴィラをご紹介します。
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高知県

花の庭巡りならここ! 画家・モネが愛した庭を再現『北川村「モネの庭」マルモッタン』
印象派の画家、クロード・モネ。彼がフランスのジヴェルニーに移り住み、半生をかけて庭づくりに熱中したことは、ガーデナーの間ではお馴染みの話でしょう。花の庭や、睡蓮が艶やかに咲く水の庭をつくりだし、その景色をモチーフとして描いた作品も数多く残されています。大気と光を描きたいと願った画家ならではの、豊かな色彩感覚でつくられたガーデンを、日本でも見られるとしたら? そう、高知県の『北川村「モネの庭」マルモッタン』は、フランスの「モネの庭」を再現した庭です。モネの庭責任者(当時)ジルヴェール・ヴァエ氏の協力を得て、デザイン・植栽ともにモネの庭に基づいてつくられ、2000年に開園しました。世界各国から「モネの庭」をつくりたいというオファーがあるなか、唯一それを許された日本のモネの庭。北川村の熱意が伝わって本家を動かし実現できたという、モネへの敬意にあふれた庭園の景色は、一見の価値ありです。 「モネの精神を受け継ぐ庭」をコンセプトにモネの庭を再現 『北川村「モネの庭」マルモッタン』の園内総面積は11万㎡に及び、花の庭、水の庭、光の庭でゾーニングされ、約1,000種10万本の植物が息づいています。 花の庭では、3月下旬〜4月上旬にパンジー、ビオラ、チューリップ、リナリア、ポピーなど春の喜びであふれる景色が広がります。本家のモネの庭にならってアーチがトンネル状に配置されており、その足元には「画家のパレットのよう」と評される彩り豊かな混植花壇が。春は背丈が小さく可愛らしいパステルカラーでまとめられています。 4月上旬に見られる、チューリップとワスレナグサの混植花壇。本家モネの庭と同じ植栽にしている、春の象徴的な風景です。また、園内では、毎年チューリップが2万球ほど植栽され、3月下旬〜4月上旬に一番の見頃を迎えます。 2018年春には、イベント「チューリップ、チューリップ」を開催。例年より多く5万本のチューリップが開花する予定です。 現在『北川村「モネの庭」マルモッタン』の庭園管理責任者は、川上裕さん。「モネの精神を受け継ぐ庭」のコンセプトのもと、本家モネの庭の各エリアごとに決められている色彩に合わせ、植栽・デザインを維持しています。フランスのジヴェルニーと高知県では気候・風土・光量がまったく異なるため、苦労した部分も多いとか。「モネが日本に来ていたらどのような植栽をするだろう?」と想いを馳せ、本家の色ベースに基づいて日本に合った植栽をするなど、工夫を凝らして庭を維持しています。川上さんは本家モネの庭と交流を深めることにも尽力し、2015年にはフランスの芸術文化勲章シュヴァリエを受章しました。 睡蓮が浮かぶ水の庭では、モネの絵に入り込んだような錯覚に 日本に憧れを持っていたモネは、庭に太鼓橋を設け、睡蓮の咲く水の庭をつくりました。『北川村「モネの庭」マルモッタン』でも忠実に再現され、周りの木々や空、雲が映り込む水鏡の景色を楽しめます。夏の7〜9月頃は緑が濃くなり、睡蓮は最盛期を迎えます。赤、ピンク、白、黄色など色とりどりに200〜300もの花が咲き競うシーンは見事。水鏡、周りの木々の風景、太鼓橋、そして睡蓮……モネの絵画の中に入り込んだような錯覚を堪能できます。 実は睡蓮の季節の水鏡を維持するために、週に1度は池に入って増えすぎた葉の間引きや花がら摘みなどのメンテナンスに励んでいるのだそう。睡蓮の配置はモネの絵画をもとに決められ、細部に至るまで配慮の行き届いた風景をつくりだしているのです。 写真は6月下旬〜10月下旬頃まで開花する青い睡蓮の‘ウイリアム・ストーン’。モネが生きていた時に咲かせようとしたものの、熱帯性睡蓮のため夏でも涼しいフランスのジヴェルニーでは気候が合わず、咲かせることができなかった品種です。このモネが憧れた青い睡蓮は、本家モネの庭からの要望をかなえ、『北川村「モネの庭」マルモッタン』で見ることができます。きっとモネは天国で「私の庭に念願の青い睡蓮が咲いたぞ、絵を描かなくちゃ」と、嬉々として絵筆を握っていることでしょう。 秋の庭も見どころ満載! 幻想的な夜のガーデン 『北川村「モネの庭」マルモッタン』を管理するガーデナーは、「実のところ秋がオススメ」というほど、秋の庭は見応えがあります。なぜなら10月下旬〜11月中旬頃になると、サルビアやセージがメインとなり、圧倒的な草丈のボリュームで花壇を彩るからです。シックなオータムカラーの花色は、気温の低下とともに発色がよくなり、息を呑むような風景をつくりだします。 毎年9月に開催している「キャンドルナイト」。水の庭にキャンドルを浮かべて幻想的な風景を楽しむイベントで、普段は見ることのできない夜のモネの庭を楽しみます。マルシェや音楽の演奏会、体験コーナーなども開催され、大盛況となります。 また、11月下旬〜12月下旬には水の庭周辺で紅葉した木々をライトアップする「光のフェスタ」が催されるなど、一年を通してさまざまなイベントが開かれるので、情報をチェックして出かける計画を立てるのも一案です。 ギャラリーやショップ、カフェなども充実! 何度でも訪れたい魅力満載 モネが住んでいた「モネの家」の外観を模し、同じ配色で建てられたギャラリー。花の庭の背景になり、モネの庭の一部として一役買っています。 ギャラリーの内部。1階はショップで、モネの絵画をモチーフにしたグッズが多数揃っています。人気は傘やクリアファイル、バッグ、ガーデニンググッズなど。ほかに北川村の特産品もたくさん揃い、お土産に喜ばれています。 2階はギャラリーで、モネの絵画(複製画)を展示。モネの庭の四季を切り取った写真も展示しており、それぞれの景色の違いも見てとれ、「また違う季節に来てみたい」と思わせてくれます。 2017年にリニューアルオープンした、カフェ「モネの家」。モネは料理にも造詣が深く、さまざまな創作料理を生み出し、器にもこだわりがあったといいます。このことにちなみ、このカフェでも工夫を凝らした四季折々のメニューを提供。モネが残したレシピをアレンジしたメニューも揃います。 人気メニューは、写真の「四万十ポーク 焦がしバターソテー〜北川ゆずポン酢ソース〜メイン+ライス+スープ」1,400円。ほかに「土佐沖鮮魚のパイ包み焼き〜モネレシピのアメレケーヌソースとともに〜」、「四万十鶏のロースト〜モネレシピ風〜」、「土佐あかうしのハンバーグ〜モネレシピのリヨン風ポーチドエッグを添えて〜」など、地元食材を使ったメニューが並びます。デザートもフルーツグラタンや焼きたてパンのふわふわ香草フレンチトースト、白ワインのサバイヨンムースなど、上品なラインナップ。旅の思い出に、ぜひ味わいたいものです。 Information 北川村「モネの庭」マルモッタン 所在地:高知県安芸郡北川村野友甲1100 Tel. 0887-32-1233 https://www.kjmonet.jp/ アクセス:高知龍馬空港より車で60分、高知自動車道南国ICより車で70分 オープン期間:通年(1月初旬から2月末日まで冬期メンテンス休園あり) 定休日:火曜、年末年始 営業時間:10:00~17:00(2018年3月より9:00~17:00) 入園料:一般700円、小・中学生300円 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが、醍醐味ですね。https://twitter.com/passion_oranges/
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北海道

野の花のようにのびやかに育つ花々と色彩の庭「紫竹ガーデン」
紫竹おばあちゃんのつくるのびやかな庭「紫竹ガーデン」 北海道帯広市の郊外、十勝平野のまっただなかに広がるお花畑、「紫竹ガーデン」。紫竹おばあちゃんこと紫竹昭葉さんが、「子どものころに遊んだ、野の花が咲く野原のような風景をつくりたい」という思いでタネを播き、木々を植え、25年もの間、手をかけてきたガーデンです。約5万㎡という広大な敷地には、さまざまなシーンを楽しめるガーデンエリアがあり、季節を通して2,500種もの花々が咲き乱れます。その色彩にあふれた庭の美しさに惹かれ、日本国内はもちろん、海外からも毎年多くの人が訪れます。 広々としたガーデンに展開するさまざまなシーン 足を踏み入れた後、どのガーデンシーンを見に行くか迷ってしまうほど広大な「紫竹ガーデン」。季節によってガーデンシーンも大きく異なる表情を見せます。たっぷりと時間をかけて散策しましょう。入り口近くに立てられた園内地図で、その日に見頃を迎えているガーデンエリアを確認して行くのもいいですね。 初夏にちょうど見頃を迎えるエリアは、「バラとクレマチスの道」。色とりどりのバラが咲く長さ約150mの道の両側を飾るのは、オダマキやシャスタ―デージーなどの花々と、200種以上のクレマチスのコレクションです。 「紫竹ガーデン」の花々は、ガーデン内でつくられた堆肥で生き生きと育ち、特にクレマチスはびっくりするほど大きな花を咲かせます。アーチやオベリスク、ポール、木の枝などに絡んで咲き誇るバラとクレマチスは、互いを引き立てあって優しく華やかな景色をつくっています。 何本もの道が交差し、自由に歩くことができる「花の径」から続く「リボン花壇」と、芝生の上に一年草を植栽してつくられた「パレット花壇」は、「紫竹ガーデン」の中でも最も色鮮やかな一角です。デルフィニウムやルドベキア、ルピナス、ポピーなど、さまざまな植物がつくり出すリズムと色彩がガーデンを満たし、風に揺れる花々を眺めれば、ゆったりと流れる時を実感できます。 ガーデンの周囲を囲むのは、北海道らしいシラカバの木。シラカバの白い幹の美しさと、十勝平野ののどかな田園風景がガーデンの背景となってカラフルな花々を引き立てます。 自然の中のようなのびやかで心地よいガーデン風景 ガーデンを奥へと進むと、木々の足元にひっそりと育つ植物たちのシェードガーデン「木陰園」と、小高い丘につくられた「ロックガーデン」が。丘の上からは、ガーデンの風景を一望できます。ゴツゴツとした岩の道の脇では、シダやギボウシなどが葉を大きく広げてこんもりと茂り、ナチュラルで迫力ある景色を生み出しています。 「ロックガーデン」から、カキツバタやオダマキなどが群れ咲く先には、スイレンの池があります。周囲を湿生植物で囲まれ、ピンク色の花弁の中から黄色い花心をのぞかせるスイレンの姿は、しっとりとして風情があります。午後には花が閉じてしまうので、訪れるときは午前中に楽しんでおきましょう。夢中になりすぎて池に落ちないようにご注意を。 一面にシロツメクサの白い花が咲く広場は、野原のような自然でのびやかな美しさ。広々とした広場のところどころに、ヘメロカリスの群落やハーブガーデンのエリアが設けられています。「紫竹ガーデン」では、野の花もガーデンの風景をつくる仲間として大切な存在です。その場所を気に入った植物たちは根をおろしてのびのびと育ち、場所が気に入らなかったものは、いつの間にか消えてしまう。すべてに手をかけず、一部は自然にまかせるのも、紫竹ガーデンが生き生きとして、エネルギーにあふれ、心地よい理由かもしれません。 ベンチに座ってひと休み。ガーデン内には、そこここに椅子やベンチが置かれていて、散策中に、座ってちょっとひと息入れることができます。緑豊かなガーデンに座り、心地よい風に吹かれていると、時間のたつのを忘れてしまいそう。 朝のガーデンで心地よい朝食を 「紫竹ガーデン」を訪れる人に大人気なのが、ちょっと早起きしてガーデン内のレストランでいただくビュッフェスタイルの朝食セット。事前に予約をしておけば、花々が咲き競う朝の爽やかなガーデンで、十勝の新鮮な季節の野菜をふんだんに使った盛りだくさんの料理をお腹いっぱい味わうことができます。食後にガーデンを散策してからスコーンやハーブティーでティータイムなど、ガーデンの朝をたっぷり楽しむことができます。 レストランの隣に立つガーデンショップでは、約1,600品種もの花や野菜のタネや苗が揃い、思わず手を伸ばしてしまう珍しい品種のタネも壁一面に並んでいます。季節を通してナチュラルな花咲く景色をつくれる、ワイルドフラワーのオリジナルミックスシードも販売。紫竹ガーデンを訪れた際には、ぜひ立ち寄りたいショップです。 Information 「紫竹ガーデン」 帯広市美栄町西4線107番地 Tel. 0155-60-2377 http://shichikugarden.com/ Open 4月中旬~11月初め 8:00〜18:00 入場料 大人800円、小・中学生200円 Credit 写真&文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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愛知県

カメラマンが訪ねた感動の花の庭。絵を描くように植栽する愛知・黒田邸
カメラマンの視点でバラの庭をご案内 愛知県豊橋市の黒田和重さんがつくる庭は、数々のガーデン雑誌でも紹介されてきた花好きの人たちにとっては有名な場所です。これまで10年もの間、その成熟していく様子を毎年見続けてきた、僕にとっても思い入れのある庭の一つです。 初めて黒田さんの庭を訪ねたのは、2007年2月の終わりのこと。とてもお世話になっていた豊橋にある花屋さんに「今井さん好みの最高に素敵なお庭があるから」と紹介されたのがきっかけでした。店での取材を終えて、さっそく車で10分ほどの場所にあるその庭を訪ねてみました。すると、庭主の黒田さんともお会いすることができ、聞くところによるとイギリスのコテージガーデンが好きで庭づくりを始めたといいます。いくつかのエリアに区切られた回遊式の、まるでイギリスの庭を移築してきたかと錯覚させられるほど素敵なデザインでした。 イギリスのガーデン雑誌をお手本に庭づくり 当時は大のバラブームで、つるバラの庭や、流行のイングリッシュローズをコレクションした庭などはたくさん見てきましたが、訪れた黒田さんの庭はほかとは違う魅力がありました。まるで、以前イギリスに行った時に巡った庭を思わせるような、しっかりとデザインされた庭でした。 きっと何度もイギリスに行かれたのだろうと思いながら、施主の黒田さんに僕のイギリスでの庭巡りについて話していたのですが、「私は一度もイギリスには行ったことがないんですよ。ひたすらイギリスのガーデン雑誌を見て勉強しました」と言うんですから、本当に驚きました。 初訪問は寒風が吹く2月でしたので、バラが咲き乱れる5月の庭を想像しながら初対面とは思えない黒田さんとの楽しい庭談義の時間を過ごして、5月に撮影に来る約束をして帰りました。 バラの最盛期に訪れた輝く庭 そして同じ年の5月中旬。期待に胸を膨らませて訪れた黒田さんの庭は、まさに想像以上! ちょっと大げさに言うと、本当にここが日本なの? と思わせるほど見事な景色でした。きれいに刈り込まれたツゲのヘッジ、庭を取り囲む塀にはさまざまなバラとクレマチスが咲き乱れています。 当時いろいろな園芸雑誌の企画で、バラとクレマチスの組み合わせが注目されていましたが、実際にはなかなか成功させている庭がなくて取材に苦労していた頃です。そんななか、この庭ではごく当たり前に、しかもとてもセンスよくバラとクレマチス、ジギタリスやデルフィニウムまでが美しく調和して咲き誇っていました。黒田さんのセンスと植物をちゃんと育てられる力には本当に脱帽です。夢中で時間も忘れてシャッターを切り続けた幸せな時間を、今も思い出します。 よりよいバラの庭を目指して年々グレードアップ それから毎年5月になると、一番気になるのが黒田さんの庭です。黒田さんはいつも「自分の庭がどうしたらもっとよくなるか」ばかり考えている方です。お会いした時はいつも「よいバラがあったら教えて」とか「新しいバラでうちに入れたらよいバラは何か?」とか、庭の話題が尽きません。 2013年に伺った時も、バラのコンディションやボリュームともに完璧。ボーダー花壇にいたっては、イキシア・ビリディフローラという翡翠色の球根まで入っていて、これ以上ない完璧な庭になっていました。さすがに黒田さんの庭も完成だなと思っていたら、翌年には美しかったボーダー花壇をつくり直し、生け垣だった場所は、神谷造園さんのコッツウォルドストーンの塀につくり替えられていました。黒田さんの庭に完成という言葉はないようです。 バラが咲き乱れる感動の光景の数々 2017年も5月22日、朝5時少し前に駐車場に車を止めると、もう掃除をすませた黒田さんがいつもの笑顔で出迎えてくれました。まだ5時前のボーッとした光の中、挨拶もそこそこに黒田さんの後ろについて庭の入り口に行ってみると、今年もまた一段と素晴らしい光景が目の前に広がりました。‘ランブリング・レクター’の花綱はまさに圧巻! 隣にはアルバローズの名花‘マダム・ルグラ・ドゥ・サンジェルマン’、奥には‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’が家の塀を覆い尽くしていました。3品種の白バラと青のキャットミント、ピンクの小花、そして青々と茂る緑の芝生……。息を呑むほどの美しさで、まるで一枚の絵画のようです。 朝の光を浴びて‘ランブリング・レクター’が輝き出すまで、まだ少し時間がありそうなので、三脚にカメラをセットして庭の中へ入っていきました。これまで何度も通った馴染みの光景だけれど、よく手入れされた朝の庭は本当に気持ちがよいものです。深呼吸をしながら、「キッチン前の窓辺のベンチとホスタ」、「フェンスに掛かっているピンクのオールドローズ」という風に頭の中で1枚ずつシャッターを切りながら歩いていきます。 いい光を探してシャッターを切る そうこうしているうちに、東の空からパーッと朝の光が差し込んできました。急いでカメラに戻ってみると、柔らかな朝日が‘ランブリング・レクター’の左上から当たり始めていたので、何枚かシャッターを切ってひと安心。 もう一度庭に戻り、今日撮れそうなカットをまた探しながら、きれいに光が当たってきたコーナーでは撮影をして、光の感じが変わったらまた最初の入り口に戻ってもう一度シャッターを切ります。朝はほんの数分で全然違う光景になってしまうので、ここぞというチャンスには、いつもシャッターは5分おきくらいに数回は切るようにしています。 僕の撮影を実際に見たことがある人から「今井さんは同じ所を、何回も何回も走り回っている」とよく言われます。そう、庭の撮影には微妙な光のニュアンスを見極める目が必要だと常々思うのです。光が強くなってくる7時過ぎには撮影を終了させて、ようやく黒田さんが入れてくれた香り豊かなコーヒーを飲みながら、しばし庭談義。こうして、今年もいい光を捉える幸せな撮影時間を過ごすことができました。
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イギリス

イギリス、中世の館「コーティール」のクリスマス・ガーランド(花綱飾り)
120年前のこと、英国の慈善団体ナショナル・トラストは、開発で失われていく自然や、歴史ある建物や庭といった文化的遺産を守り、後世に残そうと、活動を始めました。多くのボランティアの力によって守り継がれる、その素晴らしい庭の数々を訪ねます。 伝統となったガーランドづくり コーティールのヘッドガーデナー、デイビッドさんに、お話を伺います。ガーランドづくりが始まったのは、今から60年余り前のこと。最初は、ここで働くスタッフやボランティアのために開かれるクリスマス・パーティーの飾りつけにと、つくられたのだそうです。毎年続けるうちに、庭で育てた花をドライフラワーにして使うようになって、ノウハウも蓄積。今ではコーティールに欠かせない年中行事となって、来園客を喜ばせています。 さて、ガーランドづくりの手順を追ってみましょう。 制作が始まるのは11月の初め。完成まで10日余りかかります。まず、ガーランドの土台に使う、トベラの仲間を庭から採ってきます。 小枝を切り揃え、小さな花束のように束ねていきます。 花綱の芯となる、長さ18mほどのロープに小枝の束を巻き付けて、ワイヤーでしっかりとくくりつけます。 モコモコの緑の太綱がどんどん伸びていきます! これが花綱の土台になります。 大切に育てたドライフラワー 次は花の飾りつけ。飾りに使うドライフラワーの花々は、どれもコーティールの庭で栽培され、収穫されたものです。スターチスやヘリクリサム、ラグラス、ゴウダソウ、スターチス・スウォロウィーといった、ドライフラワーに適した品種です。 切り花用の庭で栽培された花々は、コーンウォール州の変わりやすい天候の中、大切に育てられました。夏が来て花が咲き出したら、収穫の日々が続きます。2017年の収穫量は、堂々の3万2,000本。過去最高は4万本だったそうです。そして、なんと、その年収穫したすべての花が、ガーランドに使われます! ドライフラワーをきれいにつくるコツは、十分に花が開いた完璧な状態で摘むこと。そして、摘んだ当日からよく乾かせるように、お昼前に摘むことです。摘んだら、後で作業しやすいように葉をすべて落とし、20本ずつの束にして、風通しのよい冷暗所の天井から吊るして、乾燥させます。時間と労力を要する作業です。 中世の館にふさわしい壮麗なガーランド さて、工程もいよいよ大詰め。天井から土台となる緑の太綱が吊るされ、スタッフは組まれた足場の上で、色鮮やかなドライフラワーを差し込んでいきます。 隙間なく差し込まれた花々。均等に行きわたるよう、区画ごとに差す本数はしっかり計算されています。毎年、花の種類が少しずつ変わり、それに伴って、でき上がる花綱の印象も変わります。 ついに完成! 他に類を見ない、オリジナルのガーランド。真冬に現れた見事な花景色です。 扉まわりにも違うデザインのガーランドが。豪華な花飾りに、古風な建物が引き立ちます。人々の熱意から生まれた素晴らしいガーランドで、素敵なクリスマスが迎えられますね。 Information 〈The National Trust〉Cotehele (コーティール) コーティールへは、ロンドンから車で約4時間半。電車では、ロンドン・パディントン駅からプリマス駅経由で最寄りのカルストック駅(Calstock)へ。ロンドンから距離があるので、プリマスで宿泊するなど、余裕のある旅程を組むとよいでしょう。カルストック駅からコーティールへは車で10分ほどですが、駅にタクシー乗り場はないので自分で呼ぶ必要があります。また、駅から2.4km、道しるべに従って森の中を歩いても行けますが、坂道あり。冬の午後は暗くなるので懐中電灯の用意を忘れずに。庭園は通年開園。屋敷の開館は3月11日~10月29日。10月30日~12月31日(25日、26日を除く)は、クリスマス・ガーランドの飾られたホールのみ開館。11時~16時。 住所:St Dominick, near Saltash, Cornwall, PL12 6TA 電話:+44 (0) 1579351346 https://www.nationaltrust.org.uk/cotehele Credit 文/萩尾 昌美 (Masami Hagio) ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。5年間のイギリス滞在中に、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するようになる。神奈川生まれ、早稲田大学第一文学部・英文学専修卒。 取材協力 英国ナショナル・トラスト(英語) https://www.nationaltrust.org.uk/ ナショナル・トラスト(日本語) http://www.ntejc.jp/
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東京都

花の庭巡りならここ! エキゾチックな植物の宝庫「夢の島熱帯植物館」
冬になると、ほとんどの植物が休眠して庭やベランダは寂しくなり、みずみずしいグリーンの葉が生い茂る景色に飢えてしまう……。そんなガーデナーにご紹介したい、とっておきの場所が、東京都の「夢の島熱帯植物館」。冬も21〜22℃に保たれた温室では、約900種の熱帯植物が生き生きとした表情を見せてくれます。熱帯植物の圧倒的な生命力に触れて、寒さで鬱々とした気分を吹き飛ばしましょう! 都会のオアシス、トロピカルガーデンにようこそ 高層ビルを借景に建つ都会のオアシスが、「夢の島熱帯植物館」です。1988年のオープン以来、魅力ある展示やイベントを続け、現在の年間来場者数は約10万人。近年は外国人観光客も多く、癒しのスポットとして人気を集めています。植物が展示されている大温室のドームは、A棟の「木生シダと水辺の景観」、B棟の「ヤシと人里の景観」、C棟の「小笠原の植物とオウギバショウ」の3つのテーマで構成されています。冬は特に外気温との差を感じやすいので、脱ぎ着できる服装で出かけるのがオススメです。 「夢の島熱帯植物館」のエントランス。最寄り駅の新木場駅からは徒歩約15分で、夢の島公園敷地内奥の海側に建っています。43ヘクタールにも及ぶ夢の島公園内に入ると、急に空が大きく開けて清々しい景色が広がるので、植物園までの散歩をゆったりと楽しむのもオススメ。熱帯雨林の環境を維持するために温室で使われる暖房エネルギーは、新江東清掃工場のゴミの熱焼却で発生する余熱を利用してまかなわれているそうです。 ガラス張りの温室内の天井は一番高い所で28mもあり、ヤシの林や太いものでは直径30㎝にもなる象竹、タコノキなど、熱帯植物ならではの迫力ある風景が楽しめます。エキゾチックな花姿のトロピカルフラワーに魅了されるほか、バナナやマンゴー、カカオ、バニラなど、普段おいしく食べている「食材」としてしか見かけない植物も多く、「本来はこんな姿で生きているのね!」と改めての感動を覚えること請け合いです。 温室内には傾斜を付けた水路が張り巡らされ、滝の流れるシーンも見られます。この水路が温室内の湿度を高める役割を果たしており、熱帯らしい草いきれの臨場感も魅力の一つです。滝の裏側は通路になっていて、シダやモンステラなどが壁面を覆い尽くすように生い茂っています。 「年中変わらずこのような景色が続くのだろうな」というイメージを持つかもしれませんが、さにあらず。人工的に熱帯環境が整備されているものの、ここは四季のある日本で温度差があるうえ、太陽の光量や軌跡によって植物も反応するので、温室内にも四季があるというのです。季節ごとに開花リレーが見られ、違った雰囲気が味わえるそう。「見頃を迎えた花」が毎月発表されているので、ぜひチェックして出かけてみましょう。 シベが長く伸び、花弁が反り返ってフワフワとした可憐な花を咲かせるフウリンブッソウゲは、12月に見られる花です。 ガイドツアーやバラエティーに富んだイベントを多数開催、リピーター続出! 今回は館長の榎本浩さんに、手厚いガイドツアーをしていただきました。コンゴの衣装をまとった姿で登場、さらにムードが盛り上がります。珍しい熱帯植物の紹介はもちろん、香り、触感なども織り交ぜながら、詳しい解説が展開され、目からウロコの発見の喜びでいっぱい。ガイドを務める係員によって話の内容が異なり、それぞれに持ちネタがあるそうで、何度でも通いたくなります。 「夢の島熱帯植物館」では、毎週末を中心に楽しいイベントが開催されています。そのコンテンツがバラエティーに富んでいるのも、リピーターが多い理由の一つ。寄せ植え講習会や食虫植物の捕虫実験、ここで飼育されているミツバチの巣箱の観察、イモ掘り、チョコレートづくり、ハロウィン、音楽コンサートなど、枚挙に暇がありません。写真は大人気のイベント、空中散歩の様子。温室の天井から垂らしたロープを自身で登り、鳥になった視点で熱帯植物館の全景を見渡します。 そして、ナイトガーデンの公開をしているのも、「夢の島熱帯植物館」ならではの魅力。毎年、夏の週末と冬(1日だけのクリスマスコンサート)に開催しています。これは、夜に開花する熱帯植物の魅力を知ってもらおうという試みでスタートしました。開館時間を20:30まで延長してクラフト体験やミニ縁日、コンサートなどさまざまなイベントを開催。また、館内のカフェがバーに変身し、オリジナルカクテルがメニューに登場するバータイムも盛況です。写真は、冬のクリスマスコンサートの様子。 トロピカルメニュー充実のカフェ&オリジナルグッズや雑貨が揃うショップ 「夢の島熱帯植物館」には「夢の島カフェ」があり、トロピカルな雰囲気を味わえる、なんとも魅力的なメニューが揃うので、ぜひご紹介しましょう。食事メニューは、ロコモコ(ハンバーグごはん、750円)、グリーンカレー(800円)、ドライカレー(750円)、スパムライス(500円)など。 デザートは温室で見られる植物にちなんだラインナップで、熱帯フルーツアイス(タロイモ、マンゴー、ココナッツ、各380円)、ベン&ジェリーズアイスクリーム(バニラ、チェリーガルシア、チャンキーモンキーなど全6種、各380円)が大人気とか。 ドリンクもコーヒーや紅茶などのスタンダード以外に、グァバジュース、マンゴージュース(各400円)、バジルシードドリンク(マンゴー、ライチなど4種、各290円)と、どれをオーダーしようか迷ってしまう充実ぶり! オープンは11:00〜16:00で、持ち込みや休憩のみもOKです。 館内には熱帯植物にまつわる書籍や、園内の風景を切り取ったポストカードのほか、文房具、雑貨などを扱うショップも併設。熱帯植物の苗の販売もあります。そして「夢の島熱帯植物園」でしか手に入らない、2種類のオリジナルの手ぬぐい(870円)も揃い、こちらは記念のお土産にぴったりです。 Information 「夢の島熱帯植物館」 所在地:東京都江東区夢の島2-1-2 TEL:03-3522-0281 http://www.yumenoshima.jp/ アクセス:JR京葉線、東京メトロ有楽町線、りんかい線「新木場」駅より徒歩15分 Open 9:30~17:00(入館は16:00まで) 休館日:月曜(祝日、都民の日に当たる場合はその翌日)、12月29〜1月3日 入園料:大人250円、65歳以上120円、中学生100円(小学生以下と都内在住在学の中学生は無料) 併せて読みたい 神秘の色のヒスイカズラ、その魅力とは 花好きさんの旅案内、シンガポール「ナショナル・オーキッド・ガーデン」 オージーガーデニングのすすめ「オーストラリアの木生羊歯」 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが、醍醐味ですね。https://twitter.com/passion_oranges/
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イギリス

イングリッシュガーデン旅案内【英国】クイーン・メアリーズ・ガーデンズの花綱
ロンドン随一のローズコレクションは6月が見頃 クイーン・メアリーズ・ガーデンズは、ウィンザー朝の国王ジョージ5世の妻、メアリー王妃の名を冠した庭園で、1932年に一般公開が始まりました。ロンドンでは最大級のバラのコレクションとなる1万2,000株が植えられ、クラシックなバラからモダンローズまで、主な品種が揃っています。 リージェンツ・パーク内の壮麗なジュビリーゲートから、庭園のあるインナーサークルと呼ばれる区画に入ると、無数に花を咲かせるバラの花壇がさっそく迎えてくれました。淡いピンクに、オレンジ、濃い紫。さまざまなバラが咲く花壇が、カーブを描く園路に沿って続きます。一つの花壇には一つの品種が咲き、それが全部で85もあるそうです。 腰丈ほどに群れ咲くバラや、目の高さで咲くバラ、オベリスクに仕立てられたバラ、さまざまなバラが次々と現れて、景色が変わっていきます。左手には池があって、6月の初夏の陽気に爽やかな風が吹いていました。 「このバラは香るかな?」一種ずつ顔を近づけては確認したり、カメラを向けたり、たくさんのバラに囲まれて、なかなかお目当ての花綱の庭までたどり着きません。今回は見つけられませんでしたが、公園を管理する機関「ロイヤル・パークス」の名を冠したバラもあるそうです。ハークネス社作出のアプリコット色のハイブリッド・ティー・ローズで、病気に強くてよく咲き、公園用に最適なバラとのこと。 360度バラに囲まれるガーランドの名所 ガーデニングで「ガーランド」とは、綱につるバラが伝いロマンチックな景色を生むデザインのこと。このサークル状につるバラが誘引された花綱が見られる有名な場所がここ「クイーン・メアリーズ・ガーデンズ」です。高さ3mを超す木製のオベリスクが円を描くように立ち並び、その間に2本の綱が渡されて、多種のつるバラが絡まっています。まだつぼみが多い時期でしたが、早咲きのつるバラが開花を始めて、ロマンチックな景色をつくっています。 満開のつるバラの下で過ごす穏やかな時間 日本の観光ガーデンでも、この綱にバラのつるを沿わせて咲かせるガーランドとか、花綱(はなづな)仕立てに出合うことがありますが、ここのように、広い場所を使って360度、ぐるりと円形に花綱がつながっているガーデンは、ほかにありません。花綱で囲まれた園の内側にももちろんバラが咲き、美しいグラデーションを見せています。 花綱の下にはところどころベンチが置いてあって、語り合う人や新聞を広げる人、バラを静かに眺める人と、思い思いにくつろぐ姿があります。花に囲まれた空間で過ごす人たちは、みんな穏やかな表情。芝生をつつく野鳥の微笑ましい姿もあります。 インスタ映えするフォトスポット バラが美しく咲く様をカメラに収める楽しそうな姿はもちろん、バラを背景に自撮りする人も多数みかけました。見上げれば、重そうに花房を下げるバラがすぐそこに。まさにインスタ映えするフォトスポットです。 バラとの組み合わせ植物もチェック つるバラを誘引しているオベリスクの株元付近をよーく見ると、ブルーやピンクの小花を咲かせる宿根草が植わっています。バラが咲くシーズンに合わせて花盛りを迎える品種を選んでいるようです。写真左はペンステモン。右は、種ができつつある花後のアガパンサスと、キャットミント。芝生の緑にブルーの小花が愛らしく映ります。 左写真は、日本でもバラの下草として人気のゲラニウム。右写真は、一重のバラの下草としてブルーのセントーレアが色を添えています。 それぞれのオベリスクには、誘引されているつるバラの品種名が記されています。日本ではあまり聞きなれない品種もあって、イギリスにいるんだなぁ、と改めて実感。ぐるりと2周、3周しては、ベンチに腰掛けて、いろんな角度からバラの風景を楽しむ……。見ごたえたっぷりの、素敵なローズガーデンです。 併せて読みたい 一年中センスがよい小さな庭をつくろう! 英国で見つけた7つの庭のアイデア 宿根草ショップの店長が教える! 2018年度の人気ガーデン植物5選 知っておきたい! 流行中のバラトレンドと、オススメ品種10選
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宮城県

花の庭巡りならここ! 澄んだ青空に広い花畑が映える、宮城「やくらいガーデン」
宮城県にある「やくらいガーデン」は、1997年にオープンした観光ガーデン。稜線の美しい薬莱山(やくらいさん)を借景に15万㎡という広大な敷地を生かして迫力ある花畑をつくり出し、面で魅せる演出が特徴的です。年間を通して約2,000種類の植物が数万株植えられ、季節によって景色がガラリと変わるのでリピーターも多く、年間約6万人が訪れる、人気のガーデンです。 春は菜の花やビオラが爛漫と咲いて絨毯を広げたような景色に 結婚式を挙げることができる、チャペル前の広場。地元でも親しまれている薬莱山を正面に望む、開けた視界の中に花畑をつくっています。春はビオラで円形花壇を構成。白、黄、紫、青などの花色で、華やかなボーダーをつくり出し、新郎新婦の門出を盛り上げます。 4月下旬〜5月中旬は、黄色い絨毯が敷かれたように、菜の花畑が広がります。春はスイセン、ビオラ、菜の花から始まり、バラ、ハーブへとバトンタッチ。秋はサルビア、ケイトウ、マリーゴールドなどへ引き継がれ、壮大な花畑のシーンを楽しめます。エリアごとに植栽を変えてそれぞれに見どころを設けており、大人の足でゆっくり歩いても1時間ほどで回れます。 初夏になるとバラのエリアが見どころに 6月中旬〜7月上旬には、バラコーナーが見頃を迎えます。アーチを連ねてトンネル状にし、つるバラをダイナミックに仕立てており、その下をくぐれば馥郁とした香りに満たされ、幸せな気分に。イングリッシュローズやオールドローズなど、約300株のバラが見られます。 バラが見頃の6月には毎週末にローズフェアを開催し、ガーデンツアーをしています。つるバラや木立性、修景バラなどさまざまな品種のバラが集まっているので、詳しい解説を聞きながら回れば、庭に迎えたい品種が見つかるかもしれません。見ごたえのある仕立て方のガイドから、自庭への応用のヒントも得られそうです。 秋は赤いサルビアが一面を覆い、青空とのコントラスが美しい 「やくらいガーデン」では、9、10月の秋が一番見ごたえのある季節。「ふるるの丘」では、赤のサルビアがカーペットのように一面を覆っています。15万株もが植栽されている花畑は、毎年植栽エリアやデザインを変えているので、この季節を楽しみに訪れるリピーターも多いといいます。 ケイトウや青のサルビアなどでライン状に畝をつくり出したエリアは、人気のフォトスポット。空が開けて視界が広がる景色に「日本じゃないみたい」「北海道のように壮大な景色」との感想が聞かれます。 また、秋はハロウィンにちなんで、カボチャやキノコのオブジェのディスプレイエリアも加わります。 おみやげ用のショップやレストランも充実! おみやげコーナーでは、ハーブティーや雑貨などが揃います。季節によって品揃えが変わるので、ぜひパトロールしておきたいもの。バラのハンドクリームやせっけん、タオルなどラブリーなグッズがずらりと並んで、目移りしそうです。 こちらは特に人気が高いという、バラのルームフレグランスシリーズ。種類によって香りのニュアンスが異なるので、トライしてお気に入りを見つけてみましょう。 「やくらいガーデン」では、レストラン「フォーリア」を併設しており、メニューが充実しているのも嬉しいところ。4月後半〜10月のハイシーズンはバイキングのみで、約40種類のメニューが70分間食べ放題。大人1,600円、小学生800円、3歳以上300円。営業時間は11:00〜16:00、ラストオーダーは平日14:30、土日祝日は15:30。ハイシーズン以外では単品で注文でき、ピザ、パスタ、チーズフォンデュ、ステーキなどに人気があります。デザートも各種揃うので、歩き疲れてひと休みしたい時には、ぜひ立ち寄ってみましょう。 Information 「やくらいガーデン」 所在地:宮城県加美郡加美町字味ヶ袋やくらい原1-9 TEL:0229-67-7272 http://www.yakurai-garden.com アクセス:仙台駅から車で約70分、古川駅から車で約40分 オープン期間:4月中旬~11月下旬 Open 10:00~17:00 入園料:大人700円、小・中学生200円 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが、醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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イギリス

英国の名園巡り 英国で最も美しい風景式庭園「ストアヘッド」
120年前のこと、英国の慈善団体ナショナル・トラストは、開発で失われていく自然や、歴史ある建物や庭といった文化的遺産を守り、後世に残そうと、活動を始めました。多くのボランティアの力によって守り継がれる、その素晴らしい庭の数々を訪ねます。 風景画さながらの美しさ ストアヘッドの門をくぐり、庭園に向かうと、そこには絵のように美しい景色が広がっています。ゆるやかにうねる緑の芝生の先で、風景の中心となるのは、穏やかに水を湛える湖。自然な佇まいを見せていますが、じつは、川をせき止めて人工的につくったものというから、驚いてしまいます。湖の周りには、針葉樹や広葉樹、さまざまな種類の大木が豊かに葉を茂らせ、その緑の中に建てられた古代神殿(パンテオン)が、景色に趣を与えています。 ストアヘッドを愛したホア一族 ストアヘッドの歴史は、1717年、銀行業で成功を収めたホア一族の2代目、ヘンリー・ホア1世が地所を買い取り、パッラーディオ様式の大邸宅を建てたことに始まります。 ストアヘッドの世界的名園を設計し、形にしたのは、その息子のヘンリー・ホア2世。彼は、1743年から30年余りをかけ、建築家のヘンリー・フリットクロフトとともに、湖を造成し、50人のガーデナーを使って植林するなど、ダイナミックな造園に情熱を注ぎました。 次に地所を継いだ、ホア2世の孫は、祖父が植えたモミの代わりにさまざまな広葉樹を植えるなどして、改良を試みます。こうして、ストアヘッドの屋敷と庭は、代々のホア一族によって愛されました。 永久の楽園と称される庭 17世紀まで、英国貴族の間では、フランスのベルサイユ宮殿に代表される、左右対称の整形式庭園が人気でした。しかし、18世紀に入ると、その幾何学的なデザインに堅苦しさを感じるようになったのか、より自然な趣のある風景式庭園を称賛する動きが起きます。ストアヘッドはその先駆的な存在で、1740年代に公開されると「生ける芸術作品」と絶賛を浴びました。 ヘンリー・ホア2世は、自らの土地に、自らの信条や願いを表現する景観を創ろうとする小さなグループ〈ジェントルマン階級のガーデナー〉の一員でした。彼は芸術に造詣が深く、イタリアへも旅しており、造園のインスピレーションを、17世紀フランス古典主義の巨匠、クロード・ロランやニコラ・プッサンの風景画から得たといわれます。ホア2世がここに創ろうとしたのは、画家たちの描いた理想的な風景、つまり、永久の楽園のような景色だったのです。 ストアヘッドの春夏秋冬 ストアヘッドの広大な庭に花壇はありませんが、湖の周辺では、早春のスノードロップから、春のラッパズイセン、初夏のブルーベルなど、季節の花々が咲き継ぎ、開放的な花景色が広がります。また、5月になると、木々の間でシャクナゲの類が鮮やかな色の塊となって、彩りを添えます。 メドウにワイルドフラワーが咲き乱れる夏は、芝生でのピクニックや、園内の散策を楽しむのに最高の季節。湖畔を一周すると、木々の間から次々と新しい景色が開けます。のんびりと思い思いのペースで巡るのもいいし、3月から10月にかけて行われている、ボランティアによるガイドツアーに参加するのもよいでしょう。庭園について深く知ることができる上に、絶景スポットにも案内してもらえます。 ストアヘッドでは秋の紅葉も見応えがあります。真っ赤に染まる北米原産のサトウカエデを皮切りに、日本のモミジやセイヨウシデ、セイヨウトチノキなど、多種多様な落葉樹が次々と紅葉して、庭園の景色を日々変えていきます。 そして、葉が落ちた頃にやってくる冬。静寂に包まれたモノトーンの世界も、格別の美しさを見せてくれます。
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シンガポール

花好きさんの旅案内、シンガポール「ナショナル・オーキッド・ガーデン」
6万株のランに出合える場所へ 原種1,000種と交配種である洋ラン2,000種、約6万株ものランが集まる植物園「ナショナル・オーキッド・ガーデン」は、約74万㎡、東京ドーム13個分という巨大な国立植物園「シンガポール・ボタニック・ガーデン」の中にあります。オーキッド・ガーデン以外はすべて無料ということもあり、ピクニックやジョギングを楽しむ人がいて、市民の憩いの場にもなっていることが分かりました。大きな樹木に囲まれて日陰も多く、散歩気分でのんびりできます。 ナショナル・オーキッド・ガーデンの入り口では、カラフルなランがお出迎え。日本では、温室や室内で栽培環境を調整しなくては育たないランが、赤道直下のシンガポールでは、屋外で花をいっぱいつけています。地植えで花咲くランを見て、シンガポールならでは!と、まず驚かされました。 黄色のランが無数に咲くフォトスポット 園内に入り、順路に沿って歩くと現れたのは、黄花のランが満開の連続アーチです。クリアーな黄色の小花が無数に咲くこのランは、オンシジウム・ゴールデンシャワーと呼ばれ、このボタニック・ガーデンでつくられた交配種だそう。一つひとつの花をよく見ると、黄色いドレスを着たダンサーのように見えるので、「ダンシング・レディ」という別名もあるといいます。ここでしか出合えない景色の一つです。 熱帯の木々とエアプランツの散策路 さらに進むと、熱帯の木々がダイナミックに枝を伸ばし、美しい緑のグラデーションを見せるコーナーへ。枝のあちこちから枝垂れて伸びているのは、今日本でもブームのエアプランツです。カーテンのように長く伸びたエアプランツは、人気のチランジア・ウスネオイデス。オープンエアでのびのびと生きている様子は、いままで見たことがなく異世界に迷い込んだような気分になりました。美しいカラーリーフを持つ熱帯植物も多く、葉色の魅力だけでデザインされたコーナーは、色づかいなど庭づくりのヒントにもつながります。 ランのカラーバリエーションに心躍ります 熱帯の木々が生い茂る園路を歩いていると、花をいっぱい咲かせたランが次々と現れます。こんなに群生するランの姿を見るのは初めてです。一輪一輪が蝶のように見える愛らしいデンファレが無数に咲いていて、品種や株数に圧倒されます。デンファレの切り花は、シンガポールの重要な輸出品の一つですが、それは、1928年からこのオーキッド・ガーデンで交配と繁殖が行われたことが始まりだそうです。 珍しいランや著名人の名がついたランも展示 高温多湿を好むランや珍しいランがコレクションされた「タン・フーン・シアン・ミストハウス」では、ランには珍しい、青い花弁を持つバンダ・コエルレアに注目。青紫の網目模様や斑模様が魅惑的です。どの花も本当に状態がよく、ランにとって育ちやすい環境だとよく分かります。 また、「VIPオーキッド・ガーデン」では、日本の天皇陛下の名前を持つ真紅のランや雅子さまの名がついた白いラン、英国のエリザベス女王の名を持つ黄色いランや、サッチャー元首相の名のピンク色のランなどが展示されていて、世界中の有名人のランに出合うことができます。一つずつ追っているうちに、あっという間に時間が過ぎてしまいます。 シンガポールで子どもと一緒に花と自然に触れよう! シンガポールは国土が東京23区ほどで、移動時間があまりかからない小さな都市です。中心部を拠点にすると、タクシーで20分足らずでいろんな観光名所へ行くことができます。ご紹介のシンガポール植物園やナショナルオーキッドガーデンなど植物や自然に触れながら一緒に楽しめる場所も多く、移動も楽なので子連れ旅にもオススメです。ちょっと足を伸ばして、未来の空中庭園のような「ガーデンズバイザベイ」やジャングルのような「シンガポール動物園」など、花緑に触れながら休暇をゆったり過ごせます。初の子連れ海外旅に、ここを選ぶ人が増えているようです。
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イギリス

イングリッシュガーデンの聖地、「シシングハースト・カースル・ガーデン」へ旅する
イングリッシュガーデンを巡る旅も、いよいよ後半。コッツウォルズ地方のKingham駅から電車で約2時間、ロンドンPaddinton駅に到着しました。そこからタクシーに乗り、Charing Crosse駅へ。この駅は、旅の最後に訪れるシシングハースト・カースル・ガーデンへのアクセスが抜群で、宿泊先のホテルも駅に隣接していました。チェックインをすませると、日が暮れるまでロンドンの美しい街並みを散策しました。 忘れられない出会い 翌日は、いよいよシシングハースト・カースル・ガーデンへ。最寄り駅のStaplehurst駅はCharing Cross駅から電車で1時間ほどで到着しました。ところが、ここで思わぬハプニングが。下調べではこの駅の電話ボックスからタクシーを呼んで、ガーデンへ行く予定でしたが、なぜか電話ボックスが閉まっていたのです。そのうえ、チケット売り場の窓口も閉められ、駅員さんらしい姿も見えません。 困り果ててあたふたしていると、上品ないでたちの男性が、声を掛けてくれました。事情を話すと、その男性は、親切に自分の携帯からタクシーを呼んでくれたのです。何度もお礼を伝えると「シシングハーストは素晴らしいガーデンだよ、楽しんでね!」と、笑顔で立ち去って行きました。まさに、絵に描いたようなイギリス紳士! こんな奇蹟のような出会いも、旅の忘れられない思い出です。 夢のようなホワイトガーデン Staplehurst駅からタクシーで約20分。ようやく私たちは、憧れのシシングハースト・カースル・ガーデンへ到着しました。この庭園は、1930年に英国の作家、ヴィタ・サックヴィル=ウェストと、夫のハロルド・ニコルソンによってつくられた、世界中のガーデナーが憧れるイングリッシュガーデンの聖地(現在は、ナショナルトラストによって管理されています)。 エントランスを抜けると、目の前に高い塔が現れました。私たちは、この塔に上って庭園を上から見てみることにしました。狭く細い階段を上ると、広大な庭園と、辺りの緑豊かな田園風景が360度見渡せました。言葉では言い尽くせない美しさと開放感。真上から見た庭園は、生け垣やレンガ塀で区切られ、色別に植栽された部屋が幾つもあるように見えました。 塔を降りると、まず初めに向かったのは白い部屋。そう、あの有名なホワイトガーデンです。ここは、シシングハースト・カースル・ガーデンのシンボル。本や雑誌で何度も見た夢のような場所です。緊張と興奮のあまり足がすくみ、頭の中も真っ白に……。そんな私を、アイリスやジギタリス、ボリジ、アストランティア、デルフィニウムなどの白い花々が迎えてくれました。 差し色の淡い黄色のハナビシソウやシャクヤクも、何とも優しげな雰囲気。溢れんばかりの白い花々に囲まれて、いつのまにか緊張もほぐれ清々しい気分になりました。残念ながら、ホワイトガーデンのシンボルローズ、ロサ・ムリガニーはまだつぼみでしたが、そびえ立つ塔を背景に満開の白バラが咲く光景を想像すると、心が浄化されていくようでした。 オールドローズが咲き誇る ロマンチックガーデン ホワイトガーデンの余韻に浸りながら、次はピンク〜パープル系の部屋へ。入り口には、味わい深い古いレンガの壁を覆い尽くすように、満開のツルアジサイとモンタナ系のクレマチスが絡まり、奥へと誘うように水色の可愛らしいアイアンの扉がありました。 ワクワクしながら中へ入ると、数えきれないほどのバラの花と、濃密な香りに包まれました。思わず、「わあ〜、なんて素敵なの!」と声をあげると、近くにいた女性がこちらを見てにっこり。「So lovely!」と声をかけてくれました。言葉は通じなくても、私のリアクションに共感してくれたようで嬉しくなりました。 淡いピンク〜赤紫色の華やかなバラの足元にも、同じグラデーションのジギタリスやアリウム、シャクヤクなどがバランスよく混植されていて、その完璧なカラーバランスは植栽のお手本。それでいて堅苦しさを感じないのは、バラの支柱やオベリスクに小枝や植物のつるが利用されていたり、誘引や剪定の仕方にも秘密がありそうです。 そよ風にふわりと揺れるバラの花と、その足元に寄り添う多年草の花々。きっと庭主だったヴィタさんも、こんなロマンチックな景色がお好みだったに違いありません。 そう言えば、建物の一角にヴィタさんが好きだったというオールドローズが、ガラスの一輪挿しに並んでいました。一輪一輪、手書きで名前が記されたラベルも添えられて。今は亡き彼女の面影を感じられる心憎い演出に感激しました。 そしてもう一つ、彼女がお気に入りだったイチジクは、何と、レンガの塀に誘引されていました。こんなユニークなイチジクの仕立て方を見たのは初めてだったので、ちょっと驚きましたが、永い時を刻んだ味わい深いレンガ塀に、しっくりと馴染んでいました。イチジクのふくよかな実がなる頃は、どんなにか素敵でしょうね。 明るい木漏れ日のようなイエローガーデン そして、次は黄色の部屋へ。黄色は、明るく元気をくれる色ですが、黄色の花を植栽する時、配色を一歩間違えると、何となくまとまりのない印象になりがちです。なので、これまで黄色の花をどちらかというと敬遠していました。ところが、この部屋の植栽を見て、黄色い花の印象が変わりました。 レモンイエローのアイリスと黄緑色の葉物の組み合わせは、春の柔らかな陽射しのよう。鮮やかな黄色とオレンジ色のゲウムは、ビビッドな色同士なのに、可憐な小花がチラチラと木漏れ日のように見えました。その中で一際輝いていたのが、赤と黄のバイカラーのオダマキ。個性的でキュートな存在感に目が釘付けになりました。組み合わせる葉物や花の雰囲気で、黄色がこんなにも違った印象に見えるのですね。わが家の庭にも、黄色の花を植えてみたくなりました。 古い建物と植栽の調和 シシングハースト・カースル・ガーデンの見所は、完璧な植栽やカラーバランス、ガーデンデザインなど、書き尽くせないほどありますが、古いレンガの壁や建物もその一つ。ヴィタさん夫妻は、この庭園をつくり始めた時、残存していた古い建物の雰囲気を失わないように、再使用可能な古いレンガや石を使って修復したそうです。 必要以上に美化することなく、植栽は建物との調和を何よりも大切にしたのだとか。だからこそ、この庭園のバラや草花が、より生き生きと自然に見えるのですね。改めて、植栽と建物との調和の大切さを痛感しました。 そして、ヴィタさんとハロルド夫妻の意思やビジョンを失うことなく、150年経った今も庭園を維持し続けている、イギリスの誇るべき文化財保護財団「ナショナル・トラスト」。シシングハースト・カースル・ガーデンは、イングリッシュガーデンの真髄を目の当たりにできる、まさに聖地でした。 Credit 写真&文/前田満見 高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。 Instagram cocoroba-garden
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北海道

庭巡りにオススメ!珍しい植物に出合える北海道「真鍋庭園」
珍しい植物に出合える見本園「真鍋庭園」 北海道・帯広市にある樹木の輸入・生産・販売を行う真鍋庭園苗畑が運営する「真鍋庭園」。1966年より一般に開放されているこの庭園は、約2万5000坪の敷地が、日本庭園、西洋庭園、風景式庭園の3つを主体に、いくつかのテーマを持つガーデンエリアに分けられた回遊式のガーデンです。日本初のコニファーガーデンとしても知られ、世界各地から集められた珍しい樹種など、数千品種を超える植物のコレクションが見られる樹木の見本園です。ここでしか出合えない植物がそこかしこに植わり、植物好きな人にとってはワンダーランドのような空間です。 入り口から個性豊かな植物がたくさん 広大な敷地の中に大きな樹木がたくさん育つ真鍋庭園。見通しがきかないほどに生き生きと茂っているため、迷子になってしまう人も珍しくありません。エゾリスコースやキタキツネコースなど、周遊コースが設定されているので、自分好みのコースを選んで観覧しましょう。 入り口のゲートをくぐった先には、下から見上げると首が痛くなるほど大きく育った樹木が幾本も並び立っています。隣にそびえる針葉樹の葉を手に取ってみると、柑橘系に似た爽やかな香りが。その先へ進むと、本格的な日本庭園風の庭が現れます。コイが泳ぐ大きな池がある日本庭園は、植栽されている植物がすべて寒さの厳しい北海道でも育つ耐寒性の強いものであることが特徴です。さまざまな針葉樹や高木が背景となる、和洋折衷の一風変わった雰囲気を持つ庭園になっています。 日本庭園からつながるヨーロッパガーデンの、カーブを描く道々の脇には、多種多様なコニファーやメギなどのカラーリーフ、ジュニパーなどの低木まで、とりどりの植物が植栽されていて、一つひとつじっくり見て回るには時間が足りなくなってしまいそう。周囲をバラに彩られた赤い屋根の家が木々の合間に見えてくると、まるで外国の森を訪れたようです。 芝生の広場から滝、林まで、起伏に富んださまざまな光景 展望デッキの横を通り、まるで鉛筆のような細長い円柱形になるヤマナラシ‘エレクタ’の木の下を抜けた先には、広々とした芝生の空間が。その一角で大きく枝を広げるヤナギの大木は、挿し木から38年経ったもの。そのまま育てていると、地面につくほど枝が伸びてしまうので、時々切り揃えているのだそうです。 さらに奥、足元に注意しながら急な階段を降りると、オリビンの滝と呼ばれるカンラン石(ペリドット)の石を積んでつくられた人工の滝が現れます。水源は、札内川(さつないがわ)の伏流水を循環させたもので、季節によって水量は変化します。 滝の前にかかる橋を渡った先にあるのが、ストローブマツなど、マツボックリを落とす樹種が多く植えられたストローブマツの森。このエリアではリスのかじった後のマツボックリが転がっていることもあります。マツカサの部分がすっかりなくなり、芯だけが残されている様子は、エビフライにそっくり。そんな森の中にあるのが、リスの教会と呼ばれる小さな教会。数名入ったらいっぱいになってしまう可愛らしいサイズで、まるで童話の中に迷い込んだような景色です。 個性的な植物に出合えるガーデンエリア カルガモなどが遊ぶ水辺の道を離れると、成長の遅い植物を集めてデザインされたドワーフガーデンへ。あまり大きくならないため、剪定などの手入れが簡単で、家庭の庭やあまり手を掛けられない人にぴったりの樹種を紹介しています。 続いて見られるリバース・ボーダー・ガーデンは、多様なカラーリーフのモデルガーデン。ミラー・ボーダー・ガーデンのように鏡に映したような対称的な植栽ですが、南側の並木では、片側に黄金葉の高木と銅葉の低木、もう片側に銅葉の高木と黄金葉の低木が植栽されているのが面白いところ。北側の並木も同様に、銀青葉と緑葉の植物がコントラストを描くように植栽されています。 真鍋庭園を一周して、最後に見られるのが50周年を記念してつくられたモンスターガーデン。広い芝生のあちらこちらに、ユニークな形のモンスターたちが枝を伸ばしています。枝垂れる性質を持った樹木を骨組みに添わせることで、個性的な形のモンスターたちが生まれます。ユーモアたっぷりのガーデンは、子どもたちだけでなく大人にとっても面白い光景です。 入口ゲート前のガーデンセンターでは、園内に植えられている植物の苗も手に入ります。園内で見た植物がほしい場合、真鍋庭園苗畑で手に入れることができます。通信販売も行っていて、苗一本から配送してくれます。樹種によっては大きく育つものもあり、何より長いつき合いになるので、購入するときは慎重に検討したいもの。ぜひ、真鍋庭園に足を運んで、実際に育っている姿をその目で確かめてみてはいかがでしょうか。一目ぼれできる木との出合いがあるかもしれません。 Information 「真鍋庭園」 帯広市稲田町東2-6 Tel. 0155-48-2120 http://www.manabegarden.jp/index.htm open 5月~11月下旬 レギュラーシーズン(6~8月を除く) 8:00~日没まで サマーシーズン(6~8月) 8:00~19:00(入園は18:00まで) 入場料 大人800円、子ども(小・中学生200円) 写真&文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。




















