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イギリス

イギリス、中世の館「コーティール」のクリスマス・ガーランド(花綱飾り)
120年前のこと、英国の慈善団体ナショナル・トラストは、開発で失われていく自然や、歴史ある建物や庭といった文化的遺産を守り、後世に残そうと、活動を始めました。多くのボランティアの力によって守り継がれる、その素晴らしい庭の数々を訪ねます。 伝統となったガーランドづくり コーティールのヘッドガーデナー、デイビッドさんに、お話を伺います。ガーランドづくりが始まったのは、今から60年余り前のこと。最初は、ここで働くスタッフやボランティアのために開かれるクリスマス・パーティーの飾りつけにと、つくられたのだそうです。毎年続けるうちに、庭で育てた花をドライフラワーにして使うようになって、ノウハウも蓄積。今ではコーティールに欠かせない年中行事となって、来園客を喜ばせています。 さて、ガーランドづくりの手順を追ってみましょう。 制作が始まるのは11月の初め。完成まで10日余りかかります。まず、ガーランドの土台に使う、トベラの仲間を庭から採ってきます。 小枝を切り揃え、小さな花束のように束ねていきます。 花綱の芯となる、長さ18mほどのロープに小枝の束を巻き付けて、ワイヤーでしっかりとくくりつけます。 モコモコの緑の太綱がどんどん伸びていきます! これが花綱の土台になります。 大切に育てたドライフラワー 次は花の飾りつけ。飾りに使うドライフラワーの花々は、どれもコーティールの庭で栽培され、収穫されたものです。スターチスやヘリクリサム、ラグラス、ゴウダソウ、スターチス・スウォロウィーといった、ドライフラワーに適した品種です。 切り花用の庭で栽培された花々は、コーンウォール州の変わりやすい天候の中、大切に育てられました。夏が来て花が咲き出したら、収穫の日々が続きます。2017年の収穫量は、堂々の3万2,000本。過去最高は4万本だったそうです。そして、なんと、その年収穫したすべての花が、ガーランドに使われます! ドライフラワーをきれいにつくるコツは、十分に花が開いた完璧な状態で摘むこと。そして、摘んだ当日からよく乾かせるように、お昼前に摘むことです。摘んだら、後で作業しやすいように葉をすべて落とし、20本ずつの束にして、風通しのよい冷暗所の天井から吊るして、乾燥させます。時間と労力を要する作業です。 中世の館にふさわしい壮麗なガーランド さて、工程もいよいよ大詰め。天井から土台となる緑の太綱が吊るされ、スタッフは組まれた足場の上で、色鮮やかなドライフラワーを差し込んでいきます。 隙間なく差し込まれた花々。均等に行きわたるよう、区画ごとに差す本数はしっかり計算されています。毎年、花の種類が少しずつ変わり、それに伴って、でき上がる花綱の印象も変わります。 ついに完成! 他に類を見ない、オリジナルのガーランド。真冬に現れた見事な花景色です。 扉まわりにも違うデザインのガーランドが。豪華な花飾りに、古風な建物が引き立ちます。人々の熱意から生まれた素晴らしいガーランドで、素敵なクリスマスが迎えられますね。 Information 〈The National Trust〉Cotehele (コーティール) コーティールへは、ロンドンから車で約4時間半。電車では、ロンドン・パディントン駅からプリマス駅経由で最寄りのカルストック駅(Calstock)へ。ロンドンから距離があるので、プリマスで宿泊するなど、余裕のある旅程を組むとよいでしょう。カルストック駅からコーティールへは車で10分ほどですが、駅にタクシー乗り場はないので自分で呼ぶ必要があります。また、駅から2.4km、道しるべに従って森の中を歩いても行けますが、坂道あり。冬の午後は暗くなるので懐中電灯の用意を忘れずに。庭園は通年開園。屋敷の開館は3月11日~10月29日。10月30日~12月31日(25日、26日を除く)は、クリスマス・ガーランドの飾られたホールのみ開館。11時~16時。 住所:St Dominick, near Saltash, Cornwall, PL12 6TA 電話:+44 (0) 1579351346 https://www.nationaltrust.org.uk/cotehele Credit 文/萩尾 昌美 (Masami Hagio) ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。5年間のイギリス滞在中に、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するようになる。神奈川生まれ、早稲田大学第一文学部・英文学専修卒。 取材協力 英国ナショナル・トラスト(英語) https://www.nationaltrust.org.uk/ ナショナル・トラスト(日本語) http://www.ntejc.jp/
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東京都

花の庭巡りならここ! エキゾチックな植物の宝庫「夢の島熱帯植物館」
冬になると、ほとんどの植物が休眠して庭やベランダは寂しくなり、みずみずしいグリーンの葉が生い茂る景色に飢えてしまう……。そんなガーデナーにご紹介したい、とっておきの場所が、東京都の「夢の島熱帯植物館」。冬も21〜22℃に保たれた温室では、約900種の熱帯植物が生き生きとした表情を見せてくれます。熱帯植物の圧倒的な生命力に触れて、寒さで鬱々とした気分を吹き飛ばしましょう! 都会のオアシス、トロピカルガーデンにようこそ 高層ビルを借景に建つ都会のオアシスが、「夢の島熱帯植物館」です。1988年のオープン以来、魅力ある展示やイベントを続け、現在の年間来場者数は約10万人。近年は外国人観光客も多く、癒しのスポットとして人気を集めています。植物が展示されている大温室のドームは、A棟の「木生シダと水辺の景観」、B棟の「ヤシと人里の景観」、C棟の「小笠原の植物とオウギバショウ」の3つのテーマで構成されています。冬は特に外気温との差を感じやすいので、脱ぎ着できる服装で出かけるのがオススメです。 「夢の島熱帯植物館」のエントランス。最寄り駅の新木場駅からは徒歩約15分で、夢の島公園敷地内奥の海側に建っています。43ヘクタールにも及ぶ夢の島公園内に入ると、急に空が大きく開けて清々しい景色が広がるので、植物園までの散歩をゆったりと楽しむのもオススメ。熱帯雨林の環境を維持するために温室で使われる暖房エネルギーは、新江東清掃工場のゴミの熱焼却で発生する余熱を利用してまかなわれているそうです。 ガラス張りの温室内の天井は一番高い所で28mもあり、ヤシの林や太いものでは直径30㎝にもなる象竹、タコノキなど、熱帯植物ならではの迫力ある風景が楽しめます。エキゾチックな花姿のトロピカルフラワーに魅了されるほか、バナナやマンゴー、カカオ、バニラなど、普段おいしく食べている「食材」としてしか見かけない植物も多く、「本来はこんな姿で生きているのね!」と改めての感動を覚えること請け合いです。 温室内には傾斜を付けた水路が張り巡らされ、滝の流れるシーンも見られます。この水路が温室内の湿度を高める役割を果たしており、熱帯らしい草いきれの臨場感も魅力の一つです。滝の裏側は通路になっていて、シダやモンステラなどが壁面を覆い尽くすように生い茂っています。 「年中変わらずこのような景色が続くのだろうな」というイメージを持つかもしれませんが、さにあらず。人工的に熱帯環境が整備されているものの、ここは四季のある日本で温度差があるうえ、太陽の光量や軌跡によって植物も反応するので、温室内にも四季があるというのです。季節ごとに開花リレーが見られ、違った雰囲気が味わえるそう。「見頃を迎えた花」が毎月発表されているので、ぜひチェックして出かけてみましょう。 シベが長く伸び、花弁が反り返ってフワフワとした可憐な花を咲かせるフウリンブッソウゲは、12月に見られる花です。 ガイドツアーやバラエティーに富んだイベントを多数開催、リピーター続出! 今回は館長の榎本浩さんに、手厚いガイドツアーをしていただきました。コンゴの衣装をまとった姿で登場、さらにムードが盛り上がります。珍しい熱帯植物の紹介はもちろん、香り、触感なども織り交ぜながら、詳しい解説が展開され、目からウロコの発見の喜びでいっぱい。ガイドを務める係員によって話の内容が異なり、それぞれに持ちネタがあるそうで、何度でも通いたくなります。 「夢の島熱帯植物館」では、毎週末を中心に楽しいイベントが開催されています。そのコンテンツがバラエティーに富んでいるのも、リピーターが多い理由の一つ。寄せ植え講習会や食虫植物の捕虫実験、ここで飼育されているミツバチの巣箱の観察、イモ掘り、チョコレートづくり、ハロウィン、音楽コンサートなど、枚挙に暇がありません。写真は大人気のイベント、空中散歩の様子。温室の天井から垂らしたロープを自身で登り、鳥になった視点で熱帯植物館の全景を見渡します。 そして、ナイトガーデンの公開をしているのも、「夢の島熱帯植物館」ならではの魅力。毎年、夏の週末と冬(1日だけのクリスマスコンサート)に開催しています。これは、夜に開花する熱帯植物の魅力を知ってもらおうという試みでスタートしました。開館時間を20:30まで延長してクラフト体験やミニ縁日、コンサートなどさまざまなイベントを開催。また、館内のカフェがバーに変身し、オリジナルカクテルがメニューに登場するバータイムも盛況です。写真は、冬のクリスマスコンサートの様子。 トロピカルメニュー充実のカフェ&オリジナルグッズや雑貨が揃うショップ 「夢の島熱帯植物館」には「夢の島カフェ」があり、トロピカルな雰囲気を味わえる、なんとも魅力的なメニューが揃うので、ぜひご紹介しましょう。食事メニューは、ロコモコ(ハンバーグごはん、750円)、グリーンカレー(800円)、ドライカレー(750円)、スパムライス(500円)など。 デザートは温室で見られる植物にちなんだラインナップで、熱帯フルーツアイス(タロイモ、マンゴー、ココナッツ、各380円)、ベン&ジェリーズアイスクリーム(バニラ、チェリーガルシア、チャンキーモンキーなど全6種、各380円)が大人気とか。 ドリンクもコーヒーや紅茶などのスタンダード以外に、グァバジュース、マンゴージュース(各400円)、バジルシードドリンク(マンゴー、ライチなど4種、各290円)と、どれをオーダーしようか迷ってしまう充実ぶり! オープンは11:00〜16:00で、持ち込みや休憩のみもOKです。 館内には熱帯植物にまつわる書籍や、園内の風景を切り取ったポストカードのほか、文房具、雑貨などを扱うショップも併設。熱帯植物の苗の販売もあります。そして「夢の島熱帯植物園」でしか手に入らない、2種類のオリジナルの手ぬぐい(870円)も揃い、こちらは記念のお土産にぴったりです。 Information 「夢の島熱帯植物館」 所在地:東京都江東区夢の島2-1-2 TEL:03-3522-0281 http://www.yumenoshima.jp/ アクセス:JR京葉線、東京メトロ有楽町線、りんかい線「新木場」駅より徒歩15分 Open 9:30~17:00(入館は16:00まで) 休館日:月曜(祝日、都民の日に当たる場合はその翌日)、12月29〜1月3日 入園料:大人250円、65歳以上120円、中学生100円(小学生以下と都内在住在学の中学生は無料) 併せて読みたい 神秘の色のヒスイカズラ、その魅力とは 花好きさんの旅案内、シンガポール「ナショナル・オーキッド・ガーデン」 オージーガーデニングのすすめ「オーストラリアの木生羊歯」 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが、醍醐味ですね。https://twitter.com/passion_oranges/
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イギリス

イングリッシュガーデン旅案内【英国】クイーン・メアリーズ・ガーデンズの花綱
ロンドン随一のローズコレクションは6月が見頃 クイーン・メアリーズ・ガーデンズは、ウィンザー朝の国王ジョージ5世の妻、メアリー王妃の名を冠した庭園で、1932年に一般公開が始まりました。ロンドンでは最大級のバラのコレクションとなる1万2,000株が植えられ、クラシックなバラからモダンローズまで、主な品種が揃っています。 リージェンツ・パーク内の壮麗なジュビリーゲートから、庭園のあるインナーサークルと呼ばれる区画に入ると、無数に花を咲かせるバラの花壇がさっそく迎えてくれました。淡いピンクに、オレンジ、濃い紫。さまざまなバラが咲く花壇が、カーブを描く園路に沿って続きます。一つの花壇には一つの品種が咲き、それが全部で85もあるそうです。 腰丈ほどに群れ咲くバラや、目の高さで咲くバラ、オベリスクに仕立てられたバラ、さまざまなバラが次々と現れて、景色が変わっていきます。左手には池があって、6月の初夏の陽気に爽やかな風が吹いていました。 「このバラは香るかな?」一種ずつ顔を近づけては確認したり、カメラを向けたり、たくさんのバラに囲まれて、なかなかお目当ての花綱の庭までたどり着きません。今回は見つけられませんでしたが、公園を管理する機関「ロイヤル・パークス」の名を冠したバラもあるそうです。ハークネス社作出のアプリコット色のハイブリッド・ティー・ローズで、病気に強くてよく咲き、公園用に最適なバラとのこと。 360度バラに囲まれるガーランドの名所 ガーデニングで「ガーランド」とは、綱につるバラが伝いロマンチックな景色を生むデザインのこと。このサークル状につるバラが誘引された花綱が見られる有名な場所がここ「クイーン・メアリーズ・ガーデンズ」です。高さ3mを超す木製のオベリスクが円を描くように立ち並び、その間に2本の綱が渡されて、多種のつるバラが絡まっています。まだつぼみが多い時期でしたが、早咲きのつるバラが開花を始めて、ロマンチックな景色をつくっています。 満開のつるバラの下で過ごす穏やかな時間 日本の観光ガーデンでも、この綱にバラのつるを沿わせて咲かせるガーランドとか、花綱(はなづな)仕立てに出合うことがありますが、ここのように、広い場所を使って360度、ぐるりと円形に花綱がつながっているガーデンは、ほかにありません。花綱で囲まれた園の内側にももちろんバラが咲き、美しいグラデーションを見せています。 花綱の下にはところどころベンチが置いてあって、語り合う人や新聞を広げる人、バラを静かに眺める人と、思い思いにくつろぐ姿があります。花に囲まれた空間で過ごす人たちは、みんな穏やかな表情。芝生をつつく野鳥の微笑ましい姿もあります。 インスタ映えするフォトスポット バラが美しく咲く様をカメラに収める楽しそうな姿はもちろん、バラを背景に自撮りする人も多数みかけました。見上げれば、重そうに花房を下げるバラがすぐそこに。まさにインスタ映えするフォトスポットです。 バラとの組み合わせ植物もチェック つるバラを誘引しているオベリスクの株元付近をよーく見ると、ブルーやピンクの小花を咲かせる宿根草が植わっています。バラが咲くシーズンに合わせて花盛りを迎える品種を選んでいるようです。写真左はペンステモン。右は、種ができつつある花後のアガパンサスと、キャットミント。芝生の緑にブルーの小花が愛らしく映ります。 左写真は、日本でもバラの下草として人気のゲラニウム。右写真は、一重のバラの下草としてブルーのセントーレアが色を添えています。 それぞれのオベリスクには、誘引されているつるバラの品種名が記されています。日本ではあまり聞きなれない品種もあって、イギリスにいるんだなぁ、と改めて実感。ぐるりと2周、3周しては、ベンチに腰掛けて、いろんな角度からバラの風景を楽しむ……。見ごたえたっぷりの、素敵なローズガーデンです。 併せて読みたい 一年中センスがよい小さな庭をつくろう! 英国で見つけた7つの庭のアイデア 宿根草ショップの店長が教える! 2018年度の人気ガーデン植物5選 知っておきたい! 流行中のバラトレンドと、オススメ品種10選
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宮城県

花の庭巡りならここ! 澄んだ青空に広い花畑が映える、宮城「やくらいガーデン」
宮城県にある「やくらいガーデン」は、1997年にオープンした観光ガーデン。稜線の美しい薬莱山(やくらいさん)を借景に15万㎡という広大な敷地を生かして迫力ある花畑をつくり出し、面で魅せる演出が特徴的です。年間を通して約2,000種類の植物が数万株植えられ、季節によって景色がガラリと変わるのでリピーターも多く、年間約6万人が訪れる、人気のガーデンです。 春は菜の花やビオラが爛漫と咲いて絨毯を広げたような景色に 結婚式を挙げることができる、チャペル前の広場。地元でも親しまれている薬莱山を正面に望む、開けた視界の中に花畑をつくっています。春はビオラで円形花壇を構成。白、黄、紫、青などの花色で、華やかなボーダーをつくり出し、新郎新婦の門出を盛り上げます。 4月下旬〜5月中旬は、黄色い絨毯が敷かれたように、菜の花畑が広がります。春はスイセン、ビオラ、菜の花から始まり、バラ、ハーブへとバトンタッチ。秋はサルビア、ケイトウ、マリーゴールドなどへ引き継がれ、壮大な花畑のシーンを楽しめます。エリアごとに植栽を変えてそれぞれに見どころを設けており、大人の足でゆっくり歩いても1時間ほどで回れます。 初夏になるとバラのエリアが見どころに 6月中旬〜7月上旬には、バラコーナーが見頃を迎えます。アーチを連ねてトンネル状にし、つるバラをダイナミックに仕立てており、その下をくぐれば馥郁とした香りに満たされ、幸せな気分に。イングリッシュローズやオールドローズなど、約300株のバラが見られます。 バラが見頃の6月には毎週末にローズフェアを開催し、ガーデンツアーをしています。つるバラや木立性、修景バラなどさまざまな品種のバラが集まっているので、詳しい解説を聞きながら回れば、庭に迎えたい品種が見つかるかもしれません。見ごたえのある仕立て方のガイドから、自庭への応用のヒントも得られそうです。 秋は赤いサルビアが一面を覆い、青空とのコントラスが美しい 「やくらいガーデン」では、9、10月の秋が一番見ごたえのある季節。「ふるるの丘」では、赤のサルビアがカーペットのように一面を覆っています。15万株もが植栽されている花畑は、毎年植栽エリアやデザインを変えているので、この季節を楽しみに訪れるリピーターも多いといいます。 ケイトウや青のサルビアなどでライン状に畝をつくり出したエリアは、人気のフォトスポット。空が開けて視界が広がる景色に「日本じゃないみたい」「北海道のように壮大な景色」との感想が聞かれます。 また、秋はハロウィンにちなんで、カボチャやキノコのオブジェのディスプレイエリアも加わります。 おみやげ用のショップやレストランも充実! おみやげコーナーでは、ハーブティーや雑貨などが揃います。季節によって品揃えが変わるので、ぜひパトロールしておきたいもの。バラのハンドクリームやせっけん、タオルなどラブリーなグッズがずらりと並んで、目移りしそうです。 こちらは特に人気が高いという、バラのルームフレグランスシリーズ。種類によって香りのニュアンスが異なるので、トライしてお気に入りを見つけてみましょう。 「やくらいガーデン」では、レストラン「フォーリア」を併設しており、メニューが充実しているのも嬉しいところ。4月後半〜10月のハイシーズンはバイキングのみで、約40種類のメニューが70分間食べ放題。大人1,600円、小学生800円、3歳以上300円。営業時間は11:00〜16:00、ラストオーダーは平日14:30、土日祝日は15:30。ハイシーズン以外では単品で注文でき、ピザ、パスタ、チーズフォンデュ、ステーキなどに人気があります。デザートも各種揃うので、歩き疲れてひと休みしたい時には、ぜひ立ち寄ってみましょう。 Information 「やくらいガーデン」 所在地:宮城県加美郡加美町字味ヶ袋やくらい原1-9 TEL:0229-67-7272 http://www.yakurai-garden.com アクセス:仙台駅から車で約70分、古川駅から車で約40分 オープン期間:4月中旬~11月下旬 Open 10:00~17:00 入園料:大人700円、小・中学生200円 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが、醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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イギリス

英国の名園巡り 英国で最も美しい風景式庭園「ストアヘッド」
120年前のこと、英国の慈善団体ナショナル・トラストは、開発で失われていく自然や、歴史ある建物や庭といった文化的遺産を守り、後世に残そうと、活動を始めました。多くのボランティアの力によって守り継がれる、その素晴らしい庭の数々を訪ねます。 風景画さながらの美しさ ストアヘッドの門をくぐり、庭園に向かうと、そこには絵のように美しい景色が広がっています。ゆるやかにうねる緑の芝生の先で、風景の中心となるのは、穏やかに水を湛える湖。自然な佇まいを見せていますが、じつは、川をせき止めて人工的につくったものというから、驚いてしまいます。湖の周りには、針葉樹や広葉樹、さまざまな種類の大木が豊かに葉を茂らせ、その緑の中に建てられた古代神殿(パンテオン)が、景色に趣を与えています。 ストアヘッドを愛したホア一族 ストアヘッドの歴史は、1717年、銀行業で成功を収めたホア一族の2代目、ヘンリー・ホア1世が地所を買い取り、パッラーディオ様式の大邸宅を建てたことに始まります。 ストアヘッドの世界的名園を設計し、形にしたのは、その息子のヘンリー・ホア2世。彼は、1743年から30年余りをかけ、建築家のヘンリー・フリットクロフトとともに、湖を造成し、50人のガーデナーを使って植林するなど、ダイナミックな造園に情熱を注ぎました。 次に地所を継いだ、ホア2世の孫は、祖父が植えたモミの代わりにさまざまな広葉樹を植えるなどして、改良を試みます。こうして、ストアヘッドの屋敷と庭は、代々のホア一族によって愛されました。 永久の楽園と称される庭 17世紀まで、英国貴族の間では、フランスのベルサイユ宮殿に代表される、左右対称の整形式庭園が人気でした。しかし、18世紀に入ると、その幾何学的なデザインに堅苦しさを感じるようになったのか、より自然な趣のある風景式庭園を称賛する動きが起きます。ストアヘッドはその先駆的な存在で、1740年代に公開されると「生ける芸術作品」と絶賛を浴びました。 ヘンリー・ホア2世は、自らの土地に、自らの信条や願いを表現する景観を創ろうとする小さなグループ〈ジェントルマン階級のガーデナー〉の一員でした。彼は芸術に造詣が深く、イタリアへも旅しており、造園のインスピレーションを、17世紀フランス古典主義の巨匠、クロード・ロランやニコラ・プッサンの風景画から得たといわれます。ホア2世がここに創ろうとしたのは、画家たちの描いた理想的な風景、つまり、永久の楽園のような景色だったのです。 ストアヘッドの春夏秋冬 ストアヘッドの広大な庭に花壇はありませんが、湖の周辺では、早春のスノードロップから、春のラッパズイセン、初夏のブルーベルなど、季節の花々が咲き継ぎ、開放的な花景色が広がります。また、5月になると、木々の間でシャクナゲの類が鮮やかな色の塊となって、彩りを添えます。 メドウにワイルドフラワーが咲き乱れる夏は、芝生でのピクニックや、園内の散策を楽しむのに最高の季節。湖畔を一周すると、木々の間から次々と新しい景色が開けます。のんびりと思い思いのペースで巡るのもいいし、3月から10月にかけて行われている、ボランティアによるガイドツアーに参加するのもよいでしょう。庭園について深く知ることができる上に、絶景スポットにも案内してもらえます。 ストアヘッドでは秋の紅葉も見応えがあります。真っ赤に染まる北米原産のサトウカエデを皮切りに、日本のモミジやセイヨウシデ、セイヨウトチノキなど、多種多様な落葉樹が次々と紅葉して、庭園の景色を日々変えていきます。 そして、葉が落ちた頃にやってくる冬。静寂に包まれたモノトーンの世界も、格別の美しさを見せてくれます。
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シンガポール

花好きさんの旅案内、シンガポール「ナショナル・オーキッド・ガーデン」
6万株のランに出合える場所へ 原種1,000種と交配種である洋ラン2,000種、約6万株ものランが集まる植物園「ナショナル・オーキッド・ガーデン」は、約74万㎡、東京ドーム13個分という巨大な国立植物園「シンガポール・ボタニック・ガーデン」の中にあります。オーキッド・ガーデン以外はすべて無料ということもあり、ピクニックやジョギングを楽しむ人がいて、市民の憩いの場にもなっていることが分かりました。大きな樹木に囲まれて日陰も多く、散歩気分でのんびりできます。 ナショナル・オーキッド・ガーデンの入り口では、カラフルなランがお出迎え。日本では、温室や室内で栽培環境を調整しなくては育たないランが、赤道直下のシンガポールでは、屋外で花をいっぱいつけています。地植えで花咲くランを見て、シンガポールならでは!と、まず驚かされました。 黄色のランが無数に咲くフォトスポット 園内に入り、順路に沿って歩くと現れたのは、黄花のランが満開の連続アーチです。クリアーな黄色の小花が無数に咲くこのランは、オンシジウム・ゴールデンシャワーと呼ばれ、このボタニック・ガーデンでつくられた交配種だそう。一つひとつの花をよく見ると、黄色いドレスを着たダンサーのように見えるので、「ダンシング・レディ」という別名もあるといいます。ここでしか出合えない景色の一つです。 熱帯の木々とエアプランツの散策路 さらに進むと、熱帯の木々がダイナミックに枝を伸ばし、美しい緑のグラデーションを見せるコーナーへ。枝のあちこちから枝垂れて伸びているのは、今日本でもブームのエアプランツです。カーテンのように長く伸びたエアプランツは、人気のチランジア・ウスネオイデス。オープンエアでのびのびと生きている様子は、いままで見たことがなく異世界に迷い込んだような気分になりました。美しいカラーリーフを持つ熱帯植物も多く、葉色の魅力だけでデザインされたコーナーは、色づかいなど庭づくりのヒントにもつながります。 ランのカラーバリエーションに心躍ります 熱帯の木々が生い茂る園路を歩いていると、花をいっぱい咲かせたランが次々と現れます。こんなに群生するランの姿を見るのは初めてです。一輪一輪が蝶のように見える愛らしいデンファレが無数に咲いていて、品種や株数に圧倒されます。デンファレの切り花は、シンガポールの重要な輸出品の一つですが、それは、1928年からこのオーキッド・ガーデンで交配と繁殖が行われたことが始まりだそうです。 珍しいランや著名人の名がついたランも展示 高温多湿を好むランや珍しいランがコレクションされた「タン・フーン・シアン・ミストハウス」では、ランには珍しい、青い花弁を持つバンダ・コエルレアに注目。青紫の網目模様や斑模様が魅惑的です。どの花も本当に状態がよく、ランにとって育ちやすい環境だとよく分かります。 また、「VIPオーキッド・ガーデン」では、日本の天皇陛下の名前を持つ真紅のランや雅子さまの名がついた白いラン、英国のエリザベス女王の名を持つ黄色いランや、サッチャー元首相の名のピンク色のランなどが展示されていて、世界中の有名人のランに出合うことができます。一つずつ追っているうちに、あっという間に時間が過ぎてしまいます。 シンガポールで子どもと一緒に花と自然に触れよう! シンガポールは国土が東京23区ほどで、移動時間があまりかからない小さな都市です。中心部を拠点にすると、タクシーで20分足らずでいろんな観光名所へ行くことができます。ご紹介のシンガポール植物園やナショナルオーキッドガーデンなど植物や自然に触れながら一緒に楽しめる場所も多く、移動も楽なので子連れ旅にもオススメです。ちょっと足を伸ばして、未来の空中庭園のような「ガーデンズバイザベイ」やジャングルのような「シンガポール動物園」など、花緑に触れながら休暇をゆったり過ごせます。初の子連れ海外旅に、ここを選ぶ人が増えているようです。
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イギリス

イングリッシュガーデンの聖地、「シシングハースト・カースル・ガーデン」へ旅する
イングリッシュガーデンを巡る旅も、いよいよ後半。コッツウォルズ地方のKingham駅から電車で約2時間、ロンドンPaddinton駅に到着しました。そこからタクシーに乗り、Charing Crosse駅へ。この駅は、旅の最後に訪れるシシングハースト・カースル・ガーデンへのアクセスが抜群で、宿泊先のホテルも駅に隣接していました。チェックインをすませると、日が暮れるまでロンドンの美しい街並みを散策しました。 忘れられない出会い 翌日は、いよいよシシングハースト・カースル・ガーデンへ。最寄り駅のStaplehurst駅はCharing Cross駅から電車で1時間ほどで到着しました。ところが、ここで思わぬハプニングが。下調べではこの駅の電話ボックスからタクシーを呼んで、ガーデンへ行く予定でしたが、なぜか電話ボックスが閉まっていたのです。そのうえ、チケット売り場の窓口も閉められ、駅員さんらしい姿も見えません。 困り果ててあたふたしていると、上品ないでたちの男性が、声を掛けてくれました。事情を話すと、その男性は、親切に自分の携帯からタクシーを呼んでくれたのです。何度もお礼を伝えると「シシングハーストは素晴らしいガーデンだよ、楽しんでね!」と、笑顔で立ち去って行きました。まさに、絵に描いたようなイギリス紳士! こんな奇蹟のような出会いも、旅の忘れられない思い出です。 夢のようなホワイトガーデン Staplehurst駅からタクシーで約20分。ようやく私たちは、憧れのシシングハースト・カースル・ガーデンへ到着しました。この庭園は、1930年に英国の作家、ヴィタ・サックヴィル=ウェストと、夫のハロルド・ニコルソンによってつくられた、世界中のガーデナーが憧れるイングリッシュガーデンの聖地(現在は、ナショナルトラストによって管理されています)。 エントランスを抜けると、目の前に高い塔が現れました。私たちは、この塔に上って庭園を上から見てみることにしました。狭く細い階段を上ると、広大な庭園と、辺りの緑豊かな田園風景が360度見渡せました。言葉では言い尽くせない美しさと開放感。真上から見た庭園は、生け垣やレンガ塀で区切られ、色別に植栽された部屋が幾つもあるように見えました。 塔を降りると、まず初めに向かったのは白い部屋。そう、あの有名なホワイトガーデンです。ここは、シシングハースト・カースル・ガーデンのシンボル。本や雑誌で何度も見た夢のような場所です。緊張と興奮のあまり足がすくみ、頭の中も真っ白に……。そんな私を、アイリスやジギタリス、ボリジ、アストランティア、デルフィニウムなどの白い花々が迎えてくれました。 差し色の淡い黄色のハナビシソウやシャクヤクも、何とも優しげな雰囲気。溢れんばかりの白い花々に囲まれて、いつのまにか緊張もほぐれ清々しい気分になりました。残念ながら、ホワイトガーデンのシンボルローズ、ロサ・ムリガニーはまだつぼみでしたが、そびえ立つ塔を背景に満開の白バラが咲く光景を想像すると、心が浄化されていくようでした。 オールドローズが咲き誇る ロマンチックガーデン ホワイトガーデンの余韻に浸りながら、次はピンク〜パープル系の部屋へ。入り口には、味わい深い古いレンガの壁を覆い尽くすように、満開のツルアジサイとモンタナ系のクレマチスが絡まり、奥へと誘うように水色の可愛らしいアイアンの扉がありました。 ワクワクしながら中へ入ると、数えきれないほどのバラの花と、濃密な香りに包まれました。思わず、「わあ〜、なんて素敵なの!」と声をあげると、近くにいた女性がこちらを見てにっこり。「So lovely!」と声をかけてくれました。言葉は通じなくても、私のリアクションに共感してくれたようで嬉しくなりました。 淡いピンク〜赤紫色の華やかなバラの足元にも、同じグラデーションのジギタリスやアリウム、シャクヤクなどがバランスよく混植されていて、その完璧なカラーバランスは植栽のお手本。それでいて堅苦しさを感じないのは、バラの支柱やオベリスクに小枝や植物のつるが利用されていたり、誘引や剪定の仕方にも秘密がありそうです。 そよ風にふわりと揺れるバラの花と、その足元に寄り添う多年草の花々。きっと庭主だったヴィタさんも、こんなロマンチックな景色がお好みだったに違いありません。 そう言えば、建物の一角にヴィタさんが好きだったというオールドローズが、ガラスの一輪挿しに並んでいました。一輪一輪、手書きで名前が記されたラベルも添えられて。今は亡き彼女の面影を感じられる心憎い演出に感激しました。 そしてもう一つ、彼女がお気に入りだったイチジクは、何と、レンガの塀に誘引されていました。こんなユニークなイチジクの仕立て方を見たのは初めてだったので、ちょっと驚きましたが、永い時を刻んだ味わい深いレンガ塀に、しっくりと馴染んでいました。イチジクのふくよかな実がなる頃は、どんなにか素敵でしょうね。 明るい木漏れ日のようなイエローガーデン そして、次は黄色の部屋へ。黄色は、明るく元気をくれる色ですが、黄色の花を植栽する時、配色を一歩間違えると、何となくまとまりのない印象になりがちです。なので、これまで黄色の花をどちらかというと敬遠していました。ところが、この部屋の植栽を見て、黄色い花の印象が変わりました。 レモンイエローのアイリスと黄緑色の葉物の組み合わせは、春の柔らかな陽射しのよう。鮮やかな黄色とオレンジ色のゲウムは、ビビッドな色同士なのに、可憐な小花がチラチラと木漏れ日のように見えました。その中で一際輝いていたのが、赤と黄のバイカラーのオダマキ。個性的でキュートな存在感に目が釘付けになりました。組み合わせる葉物や花の雰囲気で、黄色がこんなにも違った印象に見えるのですね。わが家の庭にも、黄色の花を植えてみたくなりました。 古い建物と植栽の調和 シシングハースト・カースル・ガーデンの見所は、完璧な植栽やカラーバランス、ガーデンデザインなど、書き尽くせないほどありますが、古いレンガの壁や建物もその一つ。ヴィタさん夫妻は、この庭園をつくり始めた時、残存していた古い建物の雰囲気を失わないように、再使用可能な古いレンガや石を使って修復したそうです。 必要以上に美化することなく、植栽は建物との調和を何よりも大切にしたのだとか。だからこそ、この庭園のバラや草花が、より生き生きと自然に見えるのですね。改めて、植栽と建物との調和の大切さを痛感しました。 そして、ヴィタさんとハロルド夫妻の意思やビジョンを失うことなく、150年経った今も庭園を維持し続けている、イギリスの誇るべき文化財保護財団「ナショナル・トラスト」。シシングハースト・カースル・ガーデンは、イングリッシュガーデンの真髄を目の当たりにできる、まさに聖地でした。 Credit 写真&文/前田満見 高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。 Instagram cocoroba-garden
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北海道

庭巡りにオススメ!珍しい植物に出合える北海道「真鍋庭園」
珍しい植物に出合える見本園「真鍋庭園」 北海道・帯広市にある樹木の輸入・生産・販売を行う真鍋庭園苗畑が運営する「真鍋庭園」。1966年より一般に開放されているこの庭園は、約2万5000坪の敷地が、日本庭園、西洋庭園、風景式庭園の3つを主体に、いくつかのテーマを持つガーデンエリアに分けられた回遊式のガーデンです。日本初のコニファーガーデンとしても知られ、世界各地から集められた珍しい樹種など、数千品種を超える植物のコレクションが見られる樹木の見本園です。ここでしか出合えない植物がそこかしこに植わり、植物好きな人にとってはワンダーランドのような空間です。 入り口から個性豊かな植物がたくさん 広大な敷地の中に大きな樹木がたくさん育つ真鍋庭園。見通しがきかないほどに生き生きと茂っているため、迷子になってしまう人も珍しくありません。エゾリスコースやキタキツネコースなど、周遊コースが設定されているので、自分好みのコースを選んで観覧しましょう。 入り口のゲートをくぐった先には、下から見上げると首が痛くなるほど大きく育った樹木が幾本も並び立っています。隣にそびえる針葉樹の葉を手に取ってみると、柑橘系に似た爽やかな香りが。その先へ進むと、本格的な日本庭園風の庭が現れます。コイが泳ぐ大きな池がある日本庭園は、植栽されている植物がすべて寒さの厳しい北海道でも育つ耐寒性の強いものであることが特徴です。さまざまな針葉樹や高木が背景となる、和洋折衷の一風変わった雰囲気を持つ庭園になっています。 日本庭園からつながるヨーロッパガーデンの、カーブを描く道々の脇には、多種多様なコニファーやメギなどのカラーリーフ、ジュニパーなどの低木まで、とりどりの植物が植栽されていて、一つひとつじっくり見て回るには時間が足りなくなってしまいそう。周囲をバラに彩られた赤い屋根の家が木々の合間に見えてくると、まるで外国の森を訪れたようです。 芝生の広場から滝、林まで、起伏に富んださまざまな光景 展望デッキの横を通り、まるで鉛筆のような細長い円柱形になるヤマナラシ‘エレクタ’の木の下を抜けた先には、広々とした芝生の空間が。その一角で大きく枝を広げるヤナギの大木は、挿し木から38年経ったもの。そのまま育てていると、地面につくほど枝が伸びてしまうので、時々切り揃えているのだそうです。 さらに奥、足元に注意しながら急な階段を降りると、オリビンの滝と呼ばれるカンラン石(ペリドット)の石を積んでつくられた人工の滝が現れます。水源は、札内川(さつないがわ)の伏流水を循環させたもので、季節によって水量は変化します。 滝の前にかかる橋を渡った先にあるのが、ストローブマツなど、マツボックリを落とす樹種が多く植えられたストローブマツの森。このエリアではリスのかじった後のマツボックリが転がっていることもあります。マツカサの部分がすっかりなくなり、芯だけが残されている様子は、エビフライにそっくり。そんな森の中にあるのが、リスの教会と呼ばれる小さな教会。数名入ったらいっぱいになってしまう可愛らしいサイズで、まるで童話の中に迷い込んだような景色です。 個性的な植物に出合えるガーデンエリア カルガモなどが遊ぶ水辺の道を離れると、成長の遅い植物を集めてデザインされたドワーフガーデンへ。あまり大きくならないため、剪定などの手入れが簡単で、家庭の庭やあまり手を掛けられない人にぴったりの樹種を紹介しています。 続いて見られるリバース・ボーダー・ガーデンは、多様なカラーリーフのモデルガーデン。ミラー・ボーダー・ガーデンのように鏡に映したような対称的な植栽ですが、南側の並木では、片側に黄金葉の高木と銅葉の低木、もう片側に銅葉の高木と黄金葉の低木が植栽されているのが面白いところ。北側の並木も同様に、銀青葉と緑葉の植物がコントラストを描くように植栽されています。 真鍋庭園を一周して、最後に見られるのが50周年を記念してつくられたモンスターガーデン。広い芝生のあちらこちらに、ユニークな形のモンスターたちが枝を伸ばしています。枝垂れる性質を持った樹木を骨組みに添わせることで、個性的な形のモンスターたちが生まれます。ユーモアたっぷりのガーデンは、子どもたちだけでなく大人にとっても面白い光景です。 入口ゲート前のガーデンセンターでは、園内に植えられている植物の苗も手に入ります。園内で見た植物がほしい場合、真鍋庭園苗畑で手に入れることができます。通信販売も行っていて、苗一本から配送してくれます。樹種によっては大きく育つものもあり、何より長いつき合いになるので、購入するときは慎重に検討したいもの。ぜひ、真鍋庭園に足を運んで、実際に育っている姿をその目で確かめてみてはいかがでしょうか。一目ぼれできる木との出合いがあるかもしれません。 Information 「真鍋庭園」 帯広市稲田町東2-6 Tel. 0155-48-2120 http://www.manabegarden.jp/index.htm open 5月~11月下旬 レギュラーシーズン(6~8月を除く) 8:00~日没まで サマーシーズン(6~8月) 8:00~19:00(入園は18:00まで) 入場料 大人800円、子ども(小・中学生200円) 写真&文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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イギリス

英国のオープンガーデン 秋まで美しい、オーナメンタル・グラスがおしゃれな庭
ロンドン郊外、一軒家の庭 ここは、ロンドンから車で約1時間の、ハートフォードシャー州にあるドゥバート夫妻の庭。広さは1,300㎡ほど。夫のエイドリアンさんは1999年に退職すると、妻のクレアさんとともに本格的に庭づくりに取り組むようになりました。ガーデニングの本を読んだり、参考になりそうな庭を訪ねたり、2人は独学で試行錯誤しながら、腕を磨いてきました。 オーナメンタル・グラスとの運命の出合い 庭づくりを始めてしばらくしてのこと、ふらりと訪れたナーセリーショップで、エイドリアンさんは運命の出合いを果たします。彼の目を引いたのは、初秋の光と風を受けて軽やかに踊り、きらきらと輝く、イネ科のオーナメンタル・グラス。思わず見とれるエイドリアンさんに、店主は、有名なオランダ人ガーデンデザイナー、ピート・アウドルフの著書『Gardening with Grasses(グラス類を使ったガーデニング)』を見せてくれました。 アウドルフは、野趣あふれる宿根草やオーナメンタル・グラスを大きな塊にして植え、草原のような自然な景観をつくり出す、世界的なガーデンデザイナー。ロンドン五輪の、クイーン・エリザベス・オリンピック・パークの植栽を手掛けたことでも有名です。エイドリアンさんは、アウドルフの現代的なデザインにすっかり魅せられて、彼の設計した庭園をいくつも訪ね、ついにはオランダで公開されている彼の私邸まで訪ねて行ったのでした。 アウドルフ流の、野趣あふれる植栽 中央の広い芝生をぐるりと囲む長い花壇には、アウドルフの庭でよく見られる宿根草やグラスが、所狭しとばかりに植わっています。明るい花色の塊をつくるエキナセアやアスチルベ。それとは対照的に、長く花穂を伸ばすリスラム。エイドリアンさんのお気に入りの宿根草は、北米原産の香りのよいモナルダです。グラス類も背が高いもの、こんもりと茂るもの、葉のしっかりしたもの、フワフワしたものなど、形も質感もさまざま。それら多種多様な植物を、リズミカルにバランスよく植えているのが見事です。 日本人にとってはお馴染みの、ススキの生える景色を思い浮かべるとよく分かりますが、高さのあるグラス類は植栽に立体感を与え、庭づくりでとても重宝する植物。冬もそのまま立ち枯れて、味のある景色をつくってくれます。エイドリアンさんのグラス・コレクションは年を経るごとに充実。今年もペルー原産の新しい品種を取り入れました。 海外への旅もインスピレーションの源 中央の広い芝生と、ついたてのような立派な生け垣の緑は、花壇の植え込みを引き立てます。グラスをもっとたくさん育てるために花壇を広げたいと思うエイドリアンさんと、芝生を広く残したいと願う妻のクレアさんの間で、何度か攻防が繰り広げられたのだとか。 写真の奥、生け垣に囲まれた小さなスペースでは、旅好きな夫妻が北米や南米、アフリカ、アジアへの旅で見つけた、異国情緒たっぷりの植物を育てていて、趣の異なる空間となっています。この写真では見えませんが、なんとバナナも生えています。 10年間続けているオープンガーデン 宿根草が見頃を迎える7月、夫妻は2007年から毎年、NGSのオープンガーデンを行っています。2年に1度は10月にもオープンして、秋の景色を楽しんでもらいます。夫妻は2017年には約300人の、10年間の累計では約3,000人の訪問客を迎え、その入園料をチャリティに寄付してきました。 「私たちはオープンガーデンが大好きです。もし素敵な庭を持っているなら、少しの間、他の人と分かち合ってみるといいでしょう。地域活性のよい機会にもなりますよ。確かに疲れるけれど、深い充足感が得られます。それに、なんといっても、困っている人を助けるチャリティの資金集めに貢献できる。オープンガーデンは、みんなが幸せになれるのです」。 夫妻の充実したガーデニングライフは続きます。 『エイドリアン&クレア・ドゥバートさん夫妻の庭情報』はこちら。
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北海道

花の庭巡りならここ!花と色と農のテーマパーク北海道「十勝ヒルズ」
花と食と農のテーマパーク「十勝ヒルズ」 青く澄んだ空の下に広がる十勝平野。清らかな札内川の流れが潤す地に、十勝の美しい自然を映したイングリッシュガーデン「十勝ヒルズ」はあります。開放感に満ちた小高い丘の上に広がるのは、季節の移ろいとともにその表情を変える7つのテーマガーデン。花と食と農をコンセプトにしたこのガーデンでは、1,500種を超える草花が風に揺れ、時間もゆったりと流れます。 個性豊かなテーマガーデン 「十勝ヒルズ」には、それぞれに異なるテーマを持った7つのガーデンがあります。石づくりのエントランスを入ると、木漏れ日の優しい道がまっすぐ続いていきます。 この道を少し外れ、右手の奥まった場所に進むと現れるテーマガーデンが「ヴィーズ・ポタジェ」。豆や野菜、果樹、ハーブなど「食」をテーマにしたキッチンガーデンです。大きな麻袋の中で育つジャガイモや、リンゴの木の足元で群れ咲くチャイブなど、見た目にも可愛いガーデン演出が随所にあり、自分でも取り入れたくなる工夫もきっと見つかります。 道をまっすぐ進むと、目の前に空がいっぱいに広がる開けた空間に。ここは、北海道の澄んだ青空を映す大地の鏡をイメージした「スカイミラー」。青と白の花を集めてストライプ状にデザインされています。隣のテーマガーデン「アルフレスコ」は、気持ちのよいピクニックエリアです。青々とした芝生の中に、宿根草のボーダー花壇が配され、春から秋まで咲き継ぐ花々を家族や愛犬と一緒に楽しむことができます。 ロマンチックなローズガーデンやナチュラルガーデン 「美味しい香りのバラ」をテーマに、約960株のイングリッシュローズを集めた華やかな「ローズガーデン」は、十勝ヒルズを訪れたらぜひ見てほしい場所。北海道の冷涼な気候の下で育つバラは、澄んだ花色の美しさと、整った花姿が魅力。手入れの行き届いたバラ園は、フルーティーな香りが特徴です。バラだけでなく、クレマチスやキャットミントなど、バラを引き立てる植物のあしらいも美しく、花の組み合わせ方の参考にもなります。 ローズガーデンの先にあるのは、愛らしいピンクの花を集めたイングリッシュガーデン「アニーカの庭」。北黄石の石垣で囲われた中に、「妖精の住む庭」をコンセプトにしたロマンチックな空間が隠されている様は、まるで自分だけの秘密の花園のよう。オリエンタルポピーやエキナセア、ラムズイヤーなどの花々がナチュラルな風情で風に揺れ、訪れる人々を迎えてくれます。 「アニーカの庭」から坂道を下ると、スイレンなどの水生植物が育つ水辺の空間「ナチュラルオアシス」が広がります。生き物の憩いの場にもなっているこの水辺では、大きなセイヨウシロヤナギの枝が風になびき、ゆったりとした時間が流れます。最後のテーマガーデンは、季節の花々が彩るサークル花壇「フラワーアイランズ」。球根や一年草などの色鮮やかな花々が群れ咲き、芝生の海に浮かぶ小島のような風景です。 これら7つの個性豊かなガーデンは園路で結ばれていて、訪れた人は好きな場所で思い思いの時を過ごすことができます。 豆屋さんがつくったガーデン このガーデンを運営しているのは、実は「丸勝」という創業60年を超える豆屋さん。ほかに穀物や飼料、農作物の製造・販売なども行っています。十勝の豊かな自然と、そこから生み出される食の魅力を多くの人に知ってもらいたいと、自然と触れ合えるこのガーデンをつくりました。かつては豆殻をバークチップ代わりに利用していたこともあったとか。丸勝は、十勝ヒルズのほか、「ヒルズファーム」という農場も持ち、希少なマンガリッツァ豚の飼育、リンゴや有機野菜の栽培、緑肥の試験など、さまざまな角度から農業に取り組んでいます。 見るだけではなく、食やイベントの楽しみも コンセプトの一つに「食」を掲げる十勝ヒルズでは、ガーデン内で味わうメニューも訪れた際の楽しみです。レストラン「ファームレストラン ヴィーズ」では、テーマガーデンの「ヴィーズ・ポタジェ」やファームで毎日採れる新鮮な野菜やハーブを使用した、おしゃれで美味しいメニューを味わうことができます。ほかにも和食処やカフェもあり、グルメが充実しているのも、花と食と農のテーマパーク、十勝ヒルズならでは。天気のよい日には、カフェでテイクアウトしたメニューでガーデンピクニックも楽しめます。 また、多肉植物やテラリウムのワークショップ、アロマテラピー講座など、誰でも楽しめるイベントが開催されているときも。ガーデンを訪れたら、ワークショップにもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。 気持ちのよい太陽の光の下、美しい花々に癒され、鳥の声や家族との会話、ピクニックを楽しむ……。十勝ヒルズは、そんな素敵な非日常のひとときを過ごすことができるガーデンです。
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静岡県

花の庭巡りならここ! 世界バラ会議で受賞歴のある熱海「アカオハーブ&ローズガーデン」
バラをはじめ、さまざまな植物が競演する「アカオハーブ&ローズガーデン」 静岡県にある「アカオハーブ&ローズガーデン」は、約600種4,000株のバラが咲き誇り、球根植物やハーブ、宿根草などさまざまな植物が織りなす見応えのある景色が楽しめます。2015年には「第17回世界バラ会議“優秀庭園賞”」を日本の民間企業で初めて受賞し、内外から注目を集めました。 12のテーマで構成された見どころいっぱいのガーデン 「アカオハーブ&ローズガーデン」は斜面を利用したガーデン。まず送迎口からバスに乗車し、それぞれのテーマガーデンの解説を受けながら約5分で頂上に着きます。バスを降りたら園路に沿って下っていき、思い思いにテーマガーデンに立ち寄りながら元の場所へ。眼下に海を望むナイスビューを堪能しつつ、優美な花々に囲まれる幸せなひとときを過ごしましょう。 斜面にガーデンがあるので、下から見上げる景色も圧巻。 「アカオハーブ&ローズガーデン」のデザインを担当したのは、ランドスケープデザイナーの白砂信夫さんです。つるバラをトンネル状に仕立てた「クライミングローズガーデン」、デビッド・オースチン・ロージズ社作出のバラが咲き誇る「イングリッシュローズガーデン」、イエローでまとめた「黄金のバラの庭」、褐色系の花々を集めた「夜の女王の庭」など、12のテーマガーデンで構成されています。アーチやオベリスク、バラと一年草や宿根草を組み合わせてトータルにコーディネートされた迫力ある景色は、ガーデニングのヒントにもなりそうです。 上写真は、結婚式が挙げられる、華やかなウェディングガーデン。 綿密な植栽プランによる開花リレーで、四季を通して花爛漫 「アカオハーブ&ローズガーデン」では、ハーブガーデンも充実しています。セージやローズマリーをはじめ、約100種のハーブを植栽。特に、段々畑に群生させたラベンダーが開花する初夏は見応えがあります。 風香るラベンダーの段々畑。 品よく香るラベンダーにちなんだ淡い紫色の「ラベンダーソフトクリーム」は、オリジナルでレシピ開発したレアアイテム。ぜひ味わっておきたいところです。 「アカオハーブ&ローズガーデン」は、その名の通り、バラとハーブが際立つガーデンですが、その観賞期以外にも開花リレーを計画して見どころをつくっています。1月はアタミザクラ、2月はナノハナ、3月中旬〜4月はチューリップ、9月はダリアやノボタン‘コートダジュール’、10〜11月はアメジストセージが群れて咲き、一年を通して華やかな景色が広がります。 カフェやショップ、体験工房もある、充実のコンテンツ! 「アカオハーブ&ローズガーデン」では、2017年9月にカフェ「COEDA HOUSE(コエダ ハウス)」がオープンしました。建築家の隈研吾さんが手がけた360度ガラス張りの木造カフェで、8㎝角のヒマラヤヒノキを積み上げた「積み木の柱」が、モダンかつ温かみのある雰囲気を醸しています。一番の高台に建つため相模湾が一望でき、水平線まで開けた海が眼前に広がる癒しのスポットです。 カフェのメニューは、パティシエの藤井幸治さんがプロデュースしたオリジナルスイーツ、熱海のダイダイを使ったチーズタルトの「熱海タルトフロマージュ(写真左)」、フワフワの食感を追求し、ミカンハチミツを使って仕上げたバームクーヘン「COEDA KUCHEN」がオススメ。ほかに、バラの花びらのジャムをあしらった、オリジナルのローズアイスクリーム(写真右)も人気があります。 「アカオハーブ&ローズガーデン」は、ペット同伴もOK(リードをつけることが義務づけられています)。抱いて膝に乗れるサイズなら、バスへの同乗も可能です。カフェの「COEDA HOUSE」にもテラス席が用意され、一緒にくつろぐことができます。 ガーデニングショップも併設されているので、お気に入りの花苗やガーデングッズを探してお買い物を楽しむのもまたよし。体験工房では「ハーブのせっけん作り」や「コロン作り」「子ども向けネイチャークラフト」など、季節によってテーマが変わる体験教室も開催しています。楽しいコンテンツがたくさん詰まった観光ガーデン「アカオハーブ&ローズガーデン」は、ぜひ一度は足を運びたいスポットです。 Information 「アカオハーブ&ローズガーデン」 所在地:静岡県熱海市上多賀1027-8 TEL:0557-82-1221 http://garden-akao.com/index.html アクセス:熱海駅よりバスで15分(熱海駅6番乗り場「網代旭町行き」に乗車、“アカオハーブ&ローズガーデン”バス停下車徒歩2分 280円) 通年開園 ※但し12月・1月の毎週火曜日は定休 Open 9:00~17:00(16:00最終入園) 入園料: 大人700円、小人400円(1月1日~2月28日) 大人1,000円、小人500円(3月1日~5月14日) 大人1,200円、小人600円(5月15日~6月10日) 大人1,000円、小人500円(6月11日~11月30日) 大人700円、小人400円(12月1日~12月31日) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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長崎県

花の庭巡りならここ! ヨーロッパの街並みがバラで埋め尽くされる長崎「ハウステンボス」
長崎県佐世保市にある「ハウステンボス」では、以前からテーマパーク内に再現されたヨーロッパの街並みを彩る美しいガーデンで、訪れる人々を魅了してきました。そして2010年よりバラを主役にした「ローズガーデン」へのリニューアルが行われ、さらに魅力が増しています。息を呑むような素晴らしい景色のローズガーデンは来場者からの評判もよく、年々見所も増え、今や2,000種のバラが植栽され、アジア最大級、日本一のイベントを行うまでになりました。美しい街並みを借景にバラが煙るように咲く、夢のようなローズガーデンに出かけてみませんか。 バラが煙るように咲く圧巻の景色 水路を中心に130mに及ぶカスケードガーデン。 草花を白で統一した中、ピンクのバラのアーチが映えるホワイトローズガーデン。 「ハウステンボス」内のガーデンは、2万6000㎡にも及ぶアートガーデンをはじめ、宮殿の前庭を彩る2種のローズガーデン、運河沿いの溢れんばかりのバラなど、さまざまなガーデンが展開されています。一番の見所はアートガーデン内のカスケードガーデン。修景バラとつるバラで仕立てたタワーを、水路を挟んでシンメトリーに配したデザインが130mも続き、水面にもバラの花が映り込んで迫力のある景色が広がります。 園内に咲くバラの品種は2,000にも及び、イングリッシュローズをはじめとするブランドローズのほか、オールドローズや香りの強いバラ、国際ローズコンテストで受賞歴のあるバラなど多様に揃い、見たことのないバラに巡り合うこともできそう。「バラ祭」のイベント期間は「ローズマーケット」が立ち、さまざまな苗を販売しているので、一目惚れしたバラがあったらぜひ立ち寄ってみましょう。ローズガーデンの見頃は5月上旬〜6月上旬と、11月上旬です。 船から眺めてみたり、イルミネーションを堪能したり。楽しみ方も多彩 運河船に乗って、バラの景色を楽しむ。 「ハウステンボス」の「バラ祭」期間は、盛りだくさんのイベントが催されます。園内の全長6㎞に及ぶ運河には客船が運行し、運河沿いに1㎞にわたって垂れ下がるように植栽された、壮大なバラの景色を楽しむことができます。また、閉園の22時まで、夜はイルミネーションで照らし出され、明るい日中とは違った表情を楽しめるのもイベント期間ならでは。ほかにもパレードや音楽のステージ生演奏、バラの専門家によるセミナーなども行われます。 チューリップの季節にはヨーロッパらしい風景が広がる! 格式あるオランダ王室が公認する宮殿の前庭を彩るチューリップ。 「ハウステンボス」の花のハイシーズンは、バラの期間だけではありません。3月中旬〜4月上旬に見頃を迎える「チューリップ祭」も人気のコンテンツです。バラにバトンを渡した後は、6月にアジサイ、夏にユリ、ヒマワリが見頃になります。秋には、世界各国のアーチストが集結する「世界フラワーガーデンショー」を華やかに開催。そして冬にはコチョウランの展示が行われ、年中美しい花の景色が楽しめます。花を愛する人にとって、何度でも足を運びたいテーマパークです。 Information 「ハウステンボス」 所在地:長崎県佐世保市ハウステンボス町1−1 総合案内ナビダイヤル0570-064-110 https://www.huistenbosch.co.jp/ アクセス:JRハウステンボス駅下車すぐ 西九州自動車道大塔ICから約10キロ 休園日:無休 Open:9:00~22:00(時期により変動あり) 入園料:【1DAYパスポート】大人6,900円、中人5,900円、小人4,500円、シニア6,400円 http://www.huistenbosch.co.jp/guide/ticket/ Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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イタリア

イタリア「ボッロメオ宮殿」【世界のガーデンを探る旅3】
中世の世界へタイムスリップ イタリア北部の湖水地方の庭 ミラノの北側から東にかけたスイスとの国境近く、ピエモンテ州にはイタリア湖水地方と呼ばれる地域があり、古くからローマ人たちに避暑地として使われていました。そこにはいまだに多くの名園が残っています。湖水地方というとイギリスが有名ですが、イタリア湖水地方は明るく、歴史を感じさせる温暖な場所です。アクセスが不便なので、ミラノからレンタカーで目的地「ボッロメオ宮殿」へ向かいます。ブドウ畑の中を快適なドライブを楽しみながら東へ走ると、絵はがきのような山と湖、中世そのままの町並みが見えてきます。イタリア湖水地方は、昔も今も避暑地としてイタリアの人々に愛され、中世に贅を尽くしてつくられた多くの宮殿(ヴィッラ)と庭が当時のまま残っています。 数々の庭園が残るイタリア湖水地方 蒼い空と遠く雪をいただくアルプスを背景にするマッジョーレ湖には、パッラビッチーニ邸公園、ベッラ島やマードレ島のボッロメオ宮殿やターラント邸庭園があります。またコモ湖にはヴィラ・デステのイタリア式庭園、セルベローニ邸、メルツィ邸、カルロッタ邸などがあり、これら多くの庭が春から秋まで一般公開されています。イタリアの数ある宮殿の中でも有名なマッジョーレ湖に浮かぶイソラ・ベッラ島のボッロメオ宮殿(PALAZZO BORROMEO)もその一つ、とても素晴らしい場所です。ボッロメオ宮殿は、イタリアバロック建築最高峰の宮殿と庭園といわれ、春から秋まで見ることができます。 遊覧船から眺めるベッラ島の南側につくられた10段の庭園 マッジョーレ湖観光の中心地、ストレーザから遊覧船に乗ると、「美しき島」という名がついたイソラ・ベッラ島が近づいてきます。ボッロメオ宮殿は、この島の地形を巧みに利用して、ヨーロッパアルプスから湖面を渡って吹き下ろしてくる北風を防ぐよう北側に建てられ、南斜面に10段の階段状のテラスを巡らせています。まわりの庭園も含めて季節の花が咲き乱れ、ベッラ島全体がひとつの花園となり、訪れた人々をあたかも“エデンの園”に迷い込んだような気分にさせてくれます。イタリアでは花の色の組み合わせがフランスともイギリスとも違い、はっきりした原色系をマッシブ(塊)に配置することにより、大理石の重厚なバロック調のオーナメントとうまく引き立て合っています。 重厚な彫刻と噴水がお出迎え 宮殿から狭い門をくぐる巧みな演出のアプローチが、秘密の園へと誘われる期待感を一足ごとに高めてくれます。 アプローチの階段を上っていくと、ユニコーンを頂点に、バロック様式の重厚な彫刻が北イタリアの真っ青な空に突き刺さるような大迫力で現れてきます。ピラミッドのような左右対称のグロット風の噴水、それとテラスの花が絶妙なコンビネーションとなって、一つの異次元の世界をつくり出しています。訪れた者に何とも不思議な威圧感を醸し出しているように思えました。 フォーマルガーデンを見下ろす 水面から30mも高い最上段には、石が広く敷き詰められ、彫刻で囲まれた劇場広場があります。ここからは、はるか北にはスイスアルプスを望み、南には10段のテラス状の庭を見下ろすことができます。10段のテラスの途中には、四隅に大きなイチイの刈り込みがあるフォーマルガーデンがつくられ、その先にある船着き場まで、花で縁取られた素敵なアプローチが、地中海を思わせる深い青色の湖面まで続きます。 イタリアの庭のシンプルで明瞭な色づかいに注目 寒さに弱いオレンジの木やキョウチクトウは、テラコッタの大きな鉢に植えられて、夏を彩ったあとはオランジェリーに移動されることでしょう。階段を縁取るスタンダード仕立ての白バラ‘アイスバーグ’や真っ赤に花を咲かせるベゴニア・センパフローレンスが、大理石の白、湖と空の青をバックに際立っています。イチイの濃い緑と淡い芝の緑も加わり、そのすべてが競い合うようにイタリアらしさをつくりだしています。 起伏を生かした立体的な庭 遠く雪をいただいたスイスアルプスを背景にこの庭を巡れば、どんなアングルでも絵はがきのような景色になってしまいます。イタリアといえば、本場のピザとパスタ、それに美味しいワイン。どれもとっても日本人好みの味ですから、食の楽しみも存分に味わってください。以前はイタリア語とドイツ語しか通じませんでしたが、今は英語も十分通じます。ミラノからの運転も、治安も問題はありません。ぜひ一度ならず2度、3度と行かれることをオススメします。 併せて読みたい 世界のガーデンを探る旅2 イタリア「チボリ公園」 世界のガーデンを探る旅1 スペイン「アルハンブラ宮殿」 世界のガーデンを探る旅14 イギリス発祥の庭デザイン「ノットガーデン」
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花の庭巡りならここ! 大阪「デビッド・オースチン イングリッシュローズガーデン」
大阪・泉南市にある「デビッド・オースチン イングリッシュローズガーデン」は、バラのナーセリー、デビッド・オースチン・ロージズ社が作出したバラ、「イングリッシュローズ」の品種群で構成され、世界最大級のイングリッシュローズ・コレクションを誇る庭園です。約7,500㎡の敷地に約120種、およそ3,000本のイングリッシュローズが植栽され、バラの季節には芳しい香りとともに、素晴らしい景色が広がります。開花の見頃は5月中旬〜下旬ですから、今からカレンダーにマークをつけて、お出かけの予定に入れておくことをオススメします! 大人気のバラ、イングリッシュローズとは? 「デビッド・オースチン イングリッシュローズガーデン」の母体は、イギリスのナーセリー「デビッド・オースチン・ロージズ」です。このナーセリーを起こしたデビッド・C.H・オースチンさんは、世界から高く評価されているバラの育種家。彼が「イングリッシュローズ」と名づけて作出したバラの品種群は、日本でも1990年代に大ブームとなり、一気に広まりました。イングリッシュローズの魅力は、多数の花弁からなるカップやロゼット型の麗しい花姿と芳醇な香り、そして四季咲きで年に何度も開花する上、病気にも強いことにあります。その人気は今も衰えることなく、毎年数種の新品種が発表されるたびに注目を集めている人気のナーセリーです。 そのイングリッシュローズの品種群を集めたガーデンが、「デビッド・オースチン イングリッシュローズガーデン」。花の大きさ、香り、枝の伸び方、花姿など、品種それぞれの特性を観察できる、見本園としての役割も持っています。 上写真左/左から孫のリチャード・オースチンさん、デビッド・C.H.オースチンさん、息子のデビッド・J.C.オースチンさん。現在3世代でナーセリーを運営しています。 右/オールドローズの美しさと香り、モダンローズの豊富な花色と四季咲き性を併せ持つイングリッシュローズ。ピンクの発色が美しい手前のバラは、‘プリンセス・アレキサンドラ・オブ・ケント’。 イングリッシュローズの魅力を存分に発揮させたガーデン 手前のピンクは‘プリンセス・アン’、奥の赤は‘ムンステッド・ウッド’、オベリスクに這わせたパステルピンクは‘ストロベリー・ヒル’。 「デビッド・オースチン イングリッシュローズガーデン」をデザインしたマイケル・マリオットさん。 「デビッド・オースチン イングリッシュローズガーデン」の全景。 「デビッド・オースチン イングリッシュローズガーデン」のデザインは、マイケル・マリオットさんが手がけました。大きく9つのエリアに区切り、それぞれにテーマを持たせ、整形式を取り入れたフォーマルなガーデン、水路とバラを組み合わせたエリア、宿根草と組み合わせたカジュアルなガーデン、広い芝生を植えた周りにバラを植栽したガーデンなどで構成。歩を進めるごとに、フォーマルからカジュアルまで、どんなシーンにも違和感なく映えるイングリッシュローズの多様性に驚かされることでしょう。大人がゆっくり歩いて30分ほどで回ることができますが、1時間以上たっぷり時間をとって、バラに囲まれる幸せを堪能する愛好家の姿がよく見られるそうです。 写真は、斜面につくられた水路の両脇に、イングリッシュローズが植栽されたエリア。 ‘モーティマー・サックラー’を這わせたアーチ。庭園内には、現在40以上のアーチがあります。 「デビッド・オースチン イングリッシュローズガーデン」では、イングリッシュローズと相性のいい宿根草や配色のバランスなど、参考にしたい植栽テクニックが満載。また、アーチやオベリスクへの仕立て方も注目すべきポイントです。つるをどの程度伸ばせるのか、シュートはどのくらい出てくるのか、花茎が出る位置はどこか、上を向いて咲くのか、うつむき気味に咲くのか、それぞれの品種の特性を確認できます。「花が咲いていない冬に訪れると、剪定や誘引の仕方が参考になる」と冬に訪れる愛好家も多いとか。イングリッシュローズの見本園としての役割を持っているため、配布されるガーデンマップが充実しており、気になった品種の名前がすぐに分かるように整理されているのも嬉しいところです。 上写真は、アーチやオベリスクを効果的に使った、フォーマルなガーデンの一角。 ガーデンを巡ったあとは、ショッピングを楽しもう! 「デビッド・オースチン・ロージズ」直営のガーデンだからこそ、苗のお買い物も楽しめます。つるバラ仕立てや大鉢植えも揃い、配送も可能です。「デビッド・オースチン イングリッシュローズガーデン」で見かけて一目惚れした品種を、すぐに手に入れられます。常時70〜80品種を販売しており、「あの子も、この子も連れて帰りたい!!」とテンションが上がること間違いなし! イベント期間中には、バラに詳しい専門家がレクチャーやデモンストレーションなどを行っています。 「デビッド・オースチン イングリッシュローズガーデン」では、土産物用のショップも充実。ガーデニング用品のほか、ギフトに最適な雑貨、デビッド・オースチンオリジナルのバッグ、ノート、食器などを取り扱っています。シーズンごとに品揃えが変わるので目新しさがあるうえ、今後はオリジナル商品のラインナップを増やしていく予定だそうです。 Information 「デビッド・オースチン イングリッシュローズガーデン」 所在地:大阪府泉南市幡代2001番地 花咲きファーム イングリッシュローズガーデン TEL:072-480-0031(デビッド・オースチン・ロージズ株式会社) TEL:072-483-0878(プランツセンター:ガーデン併設ショップ) https://www.davidaustinroses.co.jp/ アクセス: 阪和自動車道の泉南IC (19番)より約1.2km JR阪和線の和泉砂川駅よりタクシーで10分、南海本線樽井駅よりタクシーで15分 Open:10:00〜16:00(1~3月)、9:00〜:00 (4~6月) 平日9:00~17:00、土・日曜10:00~16:00(7~10月)、9:00~17:00 (11月)、10:00~16:00 (12月) 季節によって変動あり 入園料:無料 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/ 写真/デビッド・オースチン・ロージズ株式会社
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初夏のイングリッシュガーデンを巡る旅 キフツゲートコートガーデン
ヒドコートマナーガーデンからのどかな道を歩いて約15分。ヒドコートの次は、キフツゲートコートガーデンへ向かいました。現在、イギリスの名園の多くがナショナルトラストによって管理されていますが、この庭園は、今なお、母娘3代の女性によって受け継がれていることで有名です。初代のヘザー・ミュアー夫人が、庭づくりを始めたのが1918年といわれているので、なんと約100年もの間、ミュアー家の女性たちによって守られてきたのです。わが家の小さな庭でさえ、一年一年維持していくことは容易ではないのに、その費やした時間と労力を想像するだけで気が遠くなります。 しかも、ヘザー・ミュアー夫人が植えたバラが絶えることなく、初夏には満開の花を咲かせるのだそう。後に新品種‘ロサ・フィリッペス・キフツゲート’と命名された有名な白いつるバラです。まさに、キフツゲートコートガーデンを象徴する花。ひと目見られたらと胸が高鳴りました。 エレガントな建物と植栽のハーモニー 庭園の入り口には、庭主さんと思しき女性が簡素な椅子に座って受け付けをしていました。訪問者の一人ひとりに、にこやかな笑みを浮かべながらチケットを渡しています。これまで見て来た庭園と違って、とてもアットホームな雰囲気。「ようこそ、わが庭へ」と、お招きされたような気分になりました。 ワクワクしながら庭園に入ると、まず目の前に現れたのが、ルーフバルコニーのあるエレガントなお屋敷。蜂蜜色の明るい石壁には、満開の藤の花が絡んでいました。まるで、「ロミオとジュリエット」の映画のような光景に、しばしうっとり。その正面のツゲで囲われた花壇には、紫〜ピンク色のグラデーションの優しい色調の花々が植栽されていました。 中でも目を奪われたのが、変わり咲きのシャクヤク。アジア原産のこの花は、古来より、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と、高貴で華やかな女性を表す花として、日本人に愛されてきました。その優美さが、国を超えてイギリスでも愛されていることに、親しみと感動を覚えました。きっと、ミュアー家の女性の皆さんは、このシャクヤクのような方々に違いありません。 ロイヤルブルーの椅子と噴水のある憩いの場所 以前、ガーデン雑誌でキフツゲートコートガーデンの写真を見た時、目に焼きついた一つが、ロイヤルブルーの椅子です。草花よりも目立つ鮮やかすぎる色に、実は、ちょっと違和感を感じていました。けれども、実際に見てみると、その鮮やかな色こそが、広い花壇の引き締め役になっていることに気がつきました。しかも、アイキャッチ効果が抜群なので、思わず座って写真を撮りたくなります。実際、訪れていた方のほとんどが、噴水の水音を聞きながら、この椅子に座って写真を撮っていました。「庭づくりにガーデンチェアーの色選びは重要」、そう学んだ気がしました。 ロックガーデンからローアーガーデンへ 庭園の地図には、噴水の庭の先のローズボーダーの脇に、楽しみにしていた‘ロサ・フィリッペス・キフツゲート’があると記されていました。けれども、残念なことに、花も蕾さえも見ることができませんでした。やはり、訪れた時期が早かったようですね。それでも、歩く度に変わる景色を楽しみながら進むと、斜面に沿ってロックガーデンが現れてきました。 次第に針葉樹や落葉樹の大木が辺りを囲み、山の斜面を下っているような感覚に。心なしか空気もひんやりと感じました。足元には、樹木の微かな木漏れ日を浴びるように、フウロソウやオダマキ、エリゲロン、シレネなどの可憐な愛らしい花がたくさん咲いていて、なかなか前に進めませんでした。 そして、樹木の間から斜面の下に見えてきたのが、緑鮮やかな芝生と半月形のプール。どうやら、ここがローアーガーデンのようです。手入れの行き届いた芝生に降りると、目の前がパーッと開け、コッツウォルズの町並みが広がっていました。高台から見下ろすその景色のなんと美しいこと。まるで、一幅の絵画を見ているようでした。私たちはベンチに座り、野鳥の楽しげなハーモニーと爽風に擦れる木々の葉音を聞きながら、暫くその景色に見とれました。 同時に、このキフツゲートコートガーデンに注がれ、脈々と受け継がれてきたミュアー家の女性たちのガーデニングへの情熱と、コッツウォルズの美しい自然への敬意。まさに、イングリッシュガーデンの真髄を目の当たりにしたような気がして、痺れるような感動が心の底から湧き上がってきました。 Credit 写真&文/前田満見 高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。 Instagram cocoroba-garden


















