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フランス

フランス「ヴェルサイユ宮殿」デザイン編【世界のガーデンを探る旅6】
絶対王政の象徴 ヴェルサイユ宮殿 メソポタミアから始まった西洋の庭の流れは、イタリア・ルネサンスを経てフランス王朝へと受け継がれていきます。それまでは地中海が世界のすべてでしたが、バスコ・ダ・ガマやコロンブスなどの登場によって、大きな世界が認知され、植民地支配による莫大な富がフランスへと流れ込みました。ここに世界の富の中心がイタリアからフランスへと移り、絶対王政の象徴としてのヴェルサイユ宮殿がつくられたのです。 今回取り上げる「ヴェルサイユ宮殿」の庭は、後につくられる数々の庭へあまりにも大きな影響を与えた重要な存在。まずは、ヴェルサイユ宮殿の庭について、詳しくご紹介したいと思います。 フランス式庭園の誕生 フランスの王ルイ13世の狩猟場であったヴェルサイユの丘の上に建てられたヴェルサイユ宮殿。バロック建築の代表作とされるこの美しい建物は、太陽王ルイ14世の命で建築家ル・ヴォーとマンサールが設計し、建造に5年の歳月をかけて1665年に完成しました。 その後50年に渡ってさまざまに手が加えられ、全長550m、部屋数700室を超える豪華で重厚な宮殿が完成したのです。フランス式庭園の最高傑作といわれる庭園は、1667〜1670年に、アンドレ・ル・ノートルによってつくられました。ル・ノートルは、ルイ14世の依頼を受けてイタリアに旅し、かの地でいろいろな庭園を見て回ったといいます。イタリアの旅先で受けたインスピレーションを、彼なりにフランス風にアレンジし、重厚なヴェルサイユ宮殿の建物に負けない1,000ヘクタールもの庭園をつくり出したのです。 ヴェルサイユ宮殿とその庭園は、左右対称の配置になっています。宮殿正面広場には花や緑はまったく見られず、石の重厚感に圧倒されながら、バロック、ロココ調の宮殿に入ります。宮殿の中は外観とは打って変わって豪華絢爛。太陽王ルイ14世の名にふさわしい、きらびやかさを今も放っています。 宮殿を通り抜けると、目の前にはラトナの泉と見渡す限りのシンメトリックな庭園を見下ろすことができます。1919年に、ここでドイツと連合国によって締結されたヴェルサイユ条約により、第一次世界大戦が終わりました。 ル・ノートルがつくったフランス式庭園の特徴は、中心を通る軸線に対して左右対称に幾何学模様をデザインし、いろいろな要素を完璧なまでに配置しているところにあります。この庭園の誕生によって、自然をも支配する絶対君主の存在を人々に示しました。 もともと宮殿は、周囲を見下ろす丘の上に建てられたため、近くに水源がありませんでした。そこで、10㎞も離れたセーヌ川に「マルリーのポンプ」と呼ばれる揚水機をつくって、庭園内の噴水に使う水を水路で運び込んだのです。 宮殿を出て、左右に高く茂る緑の生け垣と真っ白な大理石の彫刻を見ながら丘を下っていくと、楕円形の「太陽神アポロンの噴水」にたどり着きます。ギリシャ神話の神アポロンが、4頭の馬が引く戦車に乗って海から出てくる様子を黄金色の彫像で表現しています。その場所から見上げる宮殿の威容は、まさに自然をも支配したいと願ったルイ14世の心意気を感じさせます。 毛氈花壇とボックスウッド 宮殿を出て左へ行くと、ペルシャ絨毯を思わせる毛氈花壇が広がる南の花壇があります。円錐形に刈り込まれた濃緑のイチイが効果的なアクセントとなり、低く刈り込まれたボックスウッドにより緑の幾何学模様が浮かび上がっています。緑の縁取りの中には、フランス独特の色合いの花々が咲き、訪れる人を引き込んでしまいます。 ルーフガーデンから見下ろすオランジェリー 緑と花の毛氈花壇を楽しみながら進むと、花壇の先に不思議な空間が広がります。と同時に自分がいた場所が、いつの間にかルーフガーデンでになっていることに驚かされます。石の手すり越しに見下ろすと20mほど下には、丸い池を配したフォーマルガーデンの緑とベージュ色の庭が広がっています。ここはオランジェリーに囲まれた春から秋までがシーズンの庭です。よく見てください。ほとんどの植物は緑の木箱に植えられていることにお気付きでしょうか? 植えられている植物は、オレンジの木や月桂樹、それに南の植物のヤシなどです。 これらの木々は、左側に建つ高い窓が配された部屋「オランジェリー」で冬越しをします。オレンジは、もともとインドのアッサム地方が原産地なので、フランスの寒さに弱く、また当時はまだガラスで囲まれた温室はなかったため、オレンジなどの木々は建物の中で加温して冬越しさせました。イタリア・ルネサンスで始まったオランジェリーも、庭とともに着実にフランスへと受け継がれていきます。当時の貴族の人々は、オレンジの実を楽しむだけでなく、冬にはオランジェリーでその香りも楽しんだことでしょう。 トピアリーの道とラトナの噴水 宮殿の裏から右、北の花壇へ行くと、ゆるいスロープの両側に、さまざまに刈り込まれたトピアリーが並ぶ園路があり、下ったその先には「ラトナの噴水」があります。ここでは4〜10月の毎週日曜日に音と水の祭典が開かれています。 ヴェルサイユ宮殿の庭は、基本は左右対称で東西に中心線が走っています。基本的な配置は左右対象ですが、それぞれのパートは必ずしも左右対称ではありません。場所ごとにデザインと工夫が施され、考えられるほぼすべてのタイプの庭がヴェルサイユ宮殿にはあり、そのアイデアの豊かさに驚かされます。ル・ノートルが残したこの庭が、現在までのフランス式庭園のすべてのモデルになっているといっても過言ではないでしょう。 このあと大航海時代に入り、フランス王朝の没落とともに世界の富と文化の中心がドーバー海峡を渡っていきます。イギリスでも最初はフランス式庭園が多くつくられますが、その話はまだまだ先のこと。次回『フランス「ヴェルサイユ宮殿」の花壇編【世界のガーデンを探る旅7】』では、ヴェルサイユ宮殿の花壇や、パリの庭の話をしましょう。
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三重県

花の庭巡りならここ! 四季を通して楽しめる観光ガーデン「花と緑と食のテーマパーク なばなの里」
一日たっぷり遊べる観光ガーデン「花と緑と食のテーマパーク なばなの里」 「花と緑と食のテーマパーク なばなの里」は、リゾートホテルや温泉施設、遊園地などを持つ「ナガシマリゾート」が運営する観光ガーデン。四季折々に花々が咲き誇る景色が広がり、1998年のオープン以来、多くのリピーターが訪れる癒やしのスポットです。里内には、地ビール園をはじめとする8つのレストランや売店、国内最大級の温室、温泉施設も併設。一日たっぷり時間をかけて過ごすのがオススメです。入場の際には、里内で使える1,000円分の金券がついているので、ぜひレジャーを楽しみましょう! 一年を通して花であふれるテーマパークへ出かけよう! 「なばなの里」は約30万㎡という広大な敷地で、里内を一周するには大人の足でゆっくり歩いて約1時間ほど。春の「花まつり」は2月から始まり、しだれ梅約330本、梅(紅梅、白梅)約150本が開花、まだ冬の名残りのあるなか、一足早く春の到来を実感できます。写真は桜の中でも早咲きの河津桜で、3月上旬〜下旬が見頃。約300本が植栽された花街道をそぞろ歩きしながら、少し早い花見を楽しみましょう。3月下旬〜4月下旬には、チューリップが満開となり、約4万3,000㎡の花ひろばが、カラフルな絨毯のような景色をつくり出します。 5月上旬〜6月下旬は、バラが主役となって里内を彩る季節。約800品種4,000本のバラが出迎えてくれます。通路側には香りの強いバラが植栽されているので、品種ごとに異なる馥郁とした香り比べを楽しみましょう。イングリッシュローズやオールドローズなど、人気のバラがアーチやオベリスクなどに絡み、全方位から見て楽しめる仕立て方が目を引きます。 6月上旬〜7月初旬は、アジサイ約7万株とハナショウブ8,000株が咲き競う季節。奥の展望台に上がれば、約2万6,000㎡の敷地一面が紫〜ブルーに染まる全景を見渡せ、その壮大な景色を楽しめます。 9月中旬〜11月上旬はコスモスの季節。タネ播きの時期をずらして開花調整し、長い期間満開の様子を楽しめるよう工夫しているそうです。ピンクの濃淡&白のコスモスでつくる花の絨毯の色が見どころの一つ。爛漫と咲き乱れる花畑で、フォトジェニックなシーンを写真に収めることができそうです。さらに季節が進んで10月上旬〜11月下旬には、約200種3万2,000本のダリアが見頃を迎えます。 紅葉の見頃は毎年11月下旬から。フォトスポットは「鏡池」と名づけられた池周辺です。周囲にぐるりとモミジなどを植栽して囲い込んでつくられた、逆さ紅葉が水鏡に映し出される景色は圧巻。夜はライトアップされるので、昼間とはまた違った表情を見せてくれます。この水鏡を維持するために、スタッフが池の落ち葉拾いなどに励むそうで、行き届いたメンテナンスあっての絶景です。 イルミネーションや温室のベゴニアガーデンも見どころ 10月中旬〜5月初旬は、国内最大級のイルミネーションが楽しめます。写真はシンボルツリーの約20mのヒマラヤスギが、毎年色を変えてイルミネーションで照らし出される様子。里内にはさまざまなイルミネーションが施され、約5,200人の夜景鑑賞士が厳選する「イルミネーションランキング」では、3年連続第1位を獲得するクオリティーの高さを誇ります。毎年テーマを設けており、2017-2018年は「くまもとだモン!」〜くまモンのふるさと紀行〜と題した、熊本の復興応援企画。高さ約30m、幅約150mのスケールで躍動感あふれるイルミネーションが彩る大パノラマを楽しめます。 写真は、アンデスの花園「ベゴニアガーデン」。約9,000㎡の温室に、世界各地から集められた球根ベゴニア、木立ベゴニアなど約600種1万2,000株を展示しています。天井からは豪華なハンギングが下がり、花のパラダイスさながら。年中15〜25℃に保って調光することにより、冬でもたくさんのベゴニアが咲くように管理されています。ベゴニアガーデンの奥はカフェスペースがあるので、花景色を楽しみながらの休憩もいいですね。 レストランやカフェは8店舗! 土産物を扱うショップも充実の品揃え 里内には8店舗のレストランが点在しています。写真の「カフェ・ラ・テラス」のオープンは9:00〜21:00(季節によって22:00、ラストオーダーは30分前まで)で、コーヒー、紅茶(各480円)、ソフトドリンク(450円〜)のほか、ミックスサンドイッチ(780円)、アイスクリーム、シャーベット(各450円〜)などもオーダーできます。オススメは里内にある「テン・ツー・ファイブ」で毎日焼き上げる手作りのケーキ(各種430円)。また、季節限定メニューもあります。 また、里内にはパン屋さん「テン・ツー・ファイブ」があり、ここで購入したパンを里内で飲食してもOK。アウトドアの季節には、景色を見ながら外で腹ごしらえするのもよさそうです。人気はメガメロンパン(600円)で、直径約25㎝もあり、大きい分中はふんわり、表面はサクッとした食感がおいしいと評判。1日数量限定で焼かれるレアアイテムです。 土産物売り場の「村の市」では、雑貨や食品など地元の名産品がバラエティー豊かに陳列されています。ほかにもビールサーバーから注がれる長島地ビールや、揚げたてのコロッケ、さつまあげの「うま天」などが販売され、休憩スペースで味比べを楽しむのもオツなものです! Information なばなの里 所在地:三重県桑名市長島町駒江漆畑270 Tel. 0594-41-0787 http://www.nagashima-onsen.co.jp アクセス:名古屋・名鉄バスセンター「長島温泉」行きバスにて約40分「なばなの里」下車すぐ。 JR・近鉄桑名駅下車 三重交通「なばなの里」行き直通バスにて20分(イルミネーション期間中は運休) JR・近鉄長島駅下車 三重交通「なばなの里」行き直通バスにて20分(イルミネーション期間中のみ運行) 東名阪自動車道「長島IC」より、県道7号線を南下、約10分 伊勢湾岸自動車道「湾岸長島IC」より、県道7号線を北上、約15分 オープン期間:通年(各季節、イベントにより異なる). 定休日:メンテナンスのため毎年7月上旬頃、5日間の休業日あり 営業時間:9:00〜21:00、9:00〜22:00(イルミネーション期間中の特定日など) 入園料:小学生以上2,300円(イルミネーション期間中、里内で使える1,000円分の金券つき) ※時期によって異なります Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが、醍醐味ですね。https://twitter.com/passion_oranges/
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茨城県

花の庭巡りならここ! 実はエンタメ空間!「水戸市植物公園」
植物を身近に親しんでもらうための植物公園 「都会の人こそ、週末くらいはこういう所へ来て癒されたほうがいいですよ〜。ほら、いい香りでしょ」と、ローズマリーの葉をもんで、香りをかがせてくれたのは西川綾子園長。NHK「趣味の園芸」の講師を務め、ハーブの栽培と利用方法に精通する園芸研究家でもあります。園内の随所にローズマリーやセージ、タイム、バジルなどが植えられており、葉にそっと触れただけで少しスパイシーな香りや甘い香りがフワッと立ち上ります。これらのハーブは鑑賞するだけでなく、収穫してイベントなどで利用されています。 「栽培したハーブでポプリやリース、ハーブティーをつくって楽しむハーブ友の会や、薬草で草木染めをする草木染織同好会など、同好会活動や一般の方が参加できるイベントも多数開催しています。こうやって植物に触れて味わって、植物をもっと身近に親しんでもらい、多面的な価値を知ってもらうのがこの植物園の役目の一つです」。 水戸市の歴史と深い関係にある薬草たち 水戸市植物公園がこうした活動に力を入れているのは、水戸市の歴史的背景にその理由があります。水戸黄門として有名な水戸藩第2代藩主、徳川光圀は、民衆のために数々の偉業をなしたことが知られていますが、その一つに『救民妙薬(きゅうみんみょうやく)』という本があります。これは病気になっても医者にかかることのできない貧しい人々が、身近に生えている植物を使って病の苦しみを癒せるようにと、光圀が藩医の鈴木宗与(穂積甫庵)に命じてまとめさせたもので、藩内で採取できる薬草を材料にした処方箋が397種類紹介されています。また、後代の水戸藩主、9代徳川斉昭は弘道館(こうどうかん*人材育成のための当時の学校)を創設。館内に医学館とともに薬園を設置して薬草栽培を行い、製薬をしました。 2017年4月には、園内の薬草園を拡張整備した「水戸 養命酒薬用ハーブ園」がオープンしました。ここでは江戸時代の水戸藩にまつわる薬草や現代親しまれているハーブを、散策しながら楽しめます。 水戸市植物公園では自然美と人工美の調和した景観を大きな特徴としており、テラスガーデンをはじめとして、季節ごとに異なる景観が楽しめます。美しい花景色を楽しみつつ、植物への知識と親しみを深めに訪れてみませんか。季節ごとの美味しい薬膳料理(土日・数量限定)を提供している園内の喫茶にもぜひお立ち寄りください。 <水戸市植物公園パンフレットより> 白いウメの花をお酒に浮かべて香りを楽しみましょう ウメの白い花が咲いたら、半分開きかけた花を集めましょう。梅干しの種子を除いた梅肉を、蓋が付いた真空保存ができる容器の底に敷きます。採集した花をその上に並べて保存します。暑い季節に取り出して、お酒やお湯にその花を浮かべれば、梅肉の香りと花の美しさを楽しめます。クチナシの花も同様につけても見事です。(弘道館本草局長 佐藤中陵の『中陵漫録』の意訳) 写真提供/水戸市植物公園 information 水戸市植物公園 茨城県水戸市小吹町504 Tel. 029-243-9311 http://www.mito-botanical-park.com 開園時間:9〜17時(入園は16時まで) 休園日:月曜日(祝日または振替休日のときは翌日)、年末年始12月29日〜1月3日 入園料:一般300円、小・中学生と市内及び近隣市町村(笠間市・ひたちなか市・那珂市・小美玉市・茨城町・城里町・大洗町・東海村)居住の60歳以上150円 Credit 取材&文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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宮城県

希望の花・家族の花「クリスマスローズ」のナーセリーを訪ねて ~宮城県川崎町 びいなすふぁあむ~
希望の花「クリスマスローズ」 仙台市にある私の庭で、春一番に咲く花が「クリスマスローズ」です。10年前に、植物関係の仕事をしていた姉から「このクリスマスローズは貴重な花だから大切に育ててね!」と言われ、大株の苗を譲り受けました。その後、地植えしたものが、上の4枚の写真です。育て始めた頃は価値が分からず「下向きに咲く暗いヤツ」と思い、なんとなく付き合ってきました。そのイメージが覆ったのが東日本大震災が発生した年の春です。震災で心身ともに疲れきった私が花壇に目を落とすと、クリスマスローズがたくましく新しい茎を何本も地面から伸ばし、その先で葉を広げ、宝石のように美しい花とつぼみがうつむくように咲いていました。私は、「うわぁ、凄い!」と叫びながら地面に寝そべり花を見上げ、再び生きる希望が湧いたことを覚えています。それから年を追うごとに株は成長し、毎年立派な花を咲かせています。 ※一般に花弁と呼んでいる部位は萼片(がくへん)で、本来の花弁は退化して蜜腺となっています。 クリスマスローズの故郷を訪ねてみたい クリスマスローズの魅力にとりつかれた私は、この花が育った場所を訪ねてみたくなり、わが家のクリスマスローズを生産した「びいなすふぁあむ」さんに連絡をとることにしました。びいなすふぁあむさんは、全国の愛好家の間では有名なナーセリーで、特に原種の生産においては聖地と呼ばれるほどです。 クリスマスローズのナーセリー「びいなすふぁあむ」さんは、蔵王連峰のふもとにある、宮城県・川崎町という自然豊かな美しい町にあります。「クリスマスローズについて教えてください」と私がたずねると、柔和な笑顔で「いいですよ!」と大森さんご夫妻が出迎えてくださいました。 「びいなすふぁあむ」を営む大森さんご夫妻にお話を伺いました。 どうしてわが家のクリスマスローズは立派に育っているのですか? 普通のクリスマスローズの苗は、温室の中で鉢植えで育てられ、1月の寒い時期に店頭で販売されます。温室育ちの苗は鉢の中で根が回り、外の寒い環境に適応できず、うまく育たないものも出てきます。びいなすふぁあむでは、冬に掘り上げて鉢植えしたものを、ゆっくりハウスの中で開花させて販売したり、露地栽培で開花したクリスマスローズの株をお客様に選んでいただき、それを掘り上げて販売するので、鉢の中で根が回っていることがなく、そのまま地植えしても丈夫に育つのです。 どのようにして生産しているのですか? びいなすふぁあむでは、無農薬有機栽培で苗を育てています。3~5年寝かせたバークを元土として使い、自家製のくん炭と地元でとれた赤土に発酵豚糞、骨粉、苦土、かき殻石灰を混ぜた用土で育てています。土全体がふかふかで通気性と排水性、保肥力に優れ、クリスマスローズが丈夫に育ちます。 クリスマスローズの楽しみ方を教えてください。 クリスマスローズの原産国(東欧諸国など)では、落葉樹の下や野原でクリスマスローズが咲き、ヘパチカ(雪割草の原種)、プリムラ・ブルガリス、クロッカス、スノードロップ、アネモネ類などとコラボレーションする美しい風景が見られます。クリスマスローズは本来、庭で地植えして楽しむ植物です。ですから、これから日本の庭でもこの植栽を広めていきたいです。 家族の花「クリスマスローズ」 地元の小学校の卒業式に、クリスマスローズの苗をプレゼントしてきました。それを自宅で植えた卒業生が大人になり、どこか違う町でクリスマスローズを見つけると故郷を思い出すそうです。クリスマスローズは毎年咲き、家族とともに成長していく花なのです。 写真の風景は、農地に隣接する「ゴーシュの森」です。ふだん街中に暮らし、土に触れることが少ない子供たちに思いっきり時間を忘れて遊んでもらえるよう、特製のブランコや木登りできる木、BBQスペースなどを設け、解放しています。森林を満喫し、クリスマスローズも自然の姿で育った苗から好みのものを選んでいただけます。 大森さんにクリスマスローズにまつわる興味深いお話を伺い、すっかり魅了されました。私が自分の庭で感じているクリスマスローズが醸し出す優しさが、作り手からも伝わってきました。それで、ぜひ皆さんにもクリスマスローズの魅力を伝えたいと思い、本サイトでも記事で発信していただくことに。とにかく温かい人柄と、クリスマスローズを通して人の生き方を提案していく大森さんの記事をお楽しみに! 協力:びいなすふぁあむ http://venusfarm.blog.jp/ Credit 写真&文/albert_sun3 私は写真家ではありません。庭と植物が大好きなサラリーマンです。 「バラは難しい」と言われますが、ポイントをおさえれば誰でも育てることができます。 ガーデニングを楽しみながら、みなさんとWEBで共有できたら幸せです。 公益社団法人 家庭園芸普及協会認定「グリーンアドバイザー」
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富山県

花の庭巡りならここ! 五感で楽しめる癒やしの庭「氷見あいやまガーデン」
里山の地形を生かした広大なガーデン 富山県の「氷見あいやまガーデン」は、4.4万㎡の敷地面積を誇る、広大な観光ガーデン。元の里山の地形を壊さずに赤松林や雑木林を借景とし、高低差を生かしたゾーニングが特徴です。園内には「フロントガーデン」「ローズガーデン」「フォーマルガーデン」「グレートウォーク」「沈床ガーデン」「円形花壇」「水辺エリア」「子ども広場」「展望台」などがあり、テーマ性をもたせた、変化に富んだ景観を楽しめます。 春から秋まで開花リレーが展開し、 いつの季節も爛漫の景色が楽しめる 4月中旬からは、チューリップが見頃を迎えます。その数は、約20品種、約4万球。チューリップの足元にはパンジーなどが添えられて、カラフルな春の喜びでいっぱいの景色を楽しめます。毎年違った表情を楽しめるように、色彩計画を立てて植栽しているので、チューリップの季節を目当てに訪れるリピーターも多く見られます。 5月中旬からはバラの季節。250品種、3,000本が植栽されています。アーチに仕立てられたピンクのバラは‘アンジェラ’。房咲きになってアーチを覆い尽くすほどに咲き誇ります。5月は花菖蒲やフジも見頃を迎えるので、この時期は特に来場者数が増えます。 人気ナンバーワンのバラ、ピンクの‘ピエール・ドゥ・ロンサール’と花つきがよい赤バラ‘カクテル’のコンビネーション。バラの季節は、芳しい花の香りに誘われ、花に顔を近づけて品種ごとの香りの違いを楽しむ姿もちらほら。「バラの花の香りにうっとりしました」との声が多く聞かれます。 夏から秋はビビッドな花色合わせが見どころ このエリアは「フロントガーデン」と「フォーマルガーデン」をつなぐ、「グレートウォーク」のエリア。初夏のナチュラルな花壇で、ベゴニア、マリーゴールド、サルビア・ファリナセアなど、夏らしいピンクやオレンジ、紫のビビッドカラーの中に、白花のオルレアが調和役となっています。さまざまな花色の組み合わせ方は、自邸の庭の参考になることでしょう。 6月中旬ごろのナチュラルな花壇。黄色い花はヘメロカリス、奥のオレンジはバラ、紫色の花穂を伸ばす花はブルーキャットミント。反対色同士の花色を組み合わせ、コントラストをつけた花壇も素敵です。 6月下旬からは、西洋アジサイ‘アナベル’とユリが同時に咲き始めます。グリーンがかったホワイトの魅力的な花色で、ボリュームたっぷりの花姿が人気の‘アナベル’は、約50株植栽され、群植された姿は壮観です。ユリはスカシユリやオリエンタルリリー、カノコユリなど32品種、1万6,000株を植栽。ウェディングに使われる豪華な品種や野趣感漂う品種など、それぞれのユリの魅力を見比べることができます。 季節が進むほどに花色が深みを帯び、黄昏れていく景色も、また秋の花壇の魅力。黄色のヤナギバヒマワリ、紫のシオン、白のガウラ、ピンクのシュウメイギクが織りなす、オータムカラーの花壇です。 冬を越えて、また春が到来 自然豊かな癒しの庭は、眺望も抜群 3月中旬からは、約500株のクリスマスローズが主役に。開園当初に、八重と一重の品種を数十株植えたところ、毎年のように新たな自然交配の品種がふえているとか。つまり、ここでしか出合えないクリスマスローズがあるのです。この時期はスイセンやクロッカス、ヒヤシンスも見頃となり、早春の表情が楽しめます。 里山に近く四季折々に見どころがある「氷見あいやまガーデン」。水の音や葉擦れの音、虫や鳥の声、さらりと肌をなでる風……「五感で楽しめる庭ですよ」という案内の言葉通りの、癒しのガーデンです。 標高100mの位置から見渡す景色。氷見市の市街地、富山湾、その奥に3,000m級の山が連なる館山連峰が広がります。全体を回るには、大人の足で40〜60分ほど。ゆっくり散策を楽しみ、2時間ほどかけて景色を楽しむ方が多いそうです。 ゲストハウスではドライフラワーショップが人気! ゲストハウスでは、ハイシーズン限定でレストランがオープンする予定。ドライフラワーショップ「ぶらぶら」では、園内の植物を使った、手作りの花束やドライフラワー、ハーバリウムを販売しています。ほかに地元のお菓子や香水、タオルなどの雑貨類も扱っているので、お土産選びにぜひ立ち寄ってみてください。 Information フォレストフローラル 氷見あいやまガーデン 所在地:富山県氷見市稲積112-1 TEL:0766-72-7187 https://www.aiyamagarden.jp/ アクセス: 能越自動車道 氷見北ICより約10分 JR氷見線 氷見駅よりタクシーで約15分 オープン期間:無休(設備維持管理、年末年始、臨時休園あり) 営業時間:9:00〜17:00(最終入園時間16:30) 入園料:大人800円、小・中学生400円、65歳以上700円 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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滋賀県

カメラマンが訪ねた感動の花の庭。滋賀「English Gardenローザンベリー多和田」のパンジービオラフェステ…
「English Garden ローザンベリー多和田」で開かれた「パンジービオラフェスティバル」 「English Garden ローザンベリー多和田」は、オーナーの大澤恵理子さんが、細部にまでこだわってガーデンをつくってこられました。大澤さんもイギリスがお好きのようで、私のようなイギリス好きのカメラマンにとっては、たまらないガーデンです。そんな素敵なガーデンを会場にして、日本各地から育種家さんの可愛いビオラが集められ、撮影ができるという夢のようなイベント「パンジービオラフェスティバル」が開催されるというのですから、ワクワクして出かけたのはご想像の通りです。 ビオラが好きになった20年前の記憶 元々僕は白や青、薄いピンクの小花みたいな花が好きだったので、ビオラは好きな花でした。そのビオラが大好きになったのは20数年くらい前、千葉県富里市の沖縄出身のご夫婦がなさっている「七栄グリーン」と言うお店との出会いがきっかけでした。七栄グリーンは、とってもセンスの良いカラーリーフを使った寄せ植えとハンギングで有名なお店で、僕も機会があるごとにうかがって撮影をしていました。そんな七栄グリーンの寄せ植えに欠かせない花がビオラでした。 その当時は、まだ“育種家さんのビオラ”のような個性的な品種はなかったのですが、七栄グリーンさんは大手の種苗会社のカタログの中からきれいなビオラをセレクトして、棚の上にはいつもかわいいビオラがたくさん並んでいて、僕もそんなビオラを使ってよく寄せ植えをつくっていました。 その後七栄グリーンさんは沖縄に帰られお店はクローズしてしまったのですが、最近はホームセンターなどでも見元さんや他の方々が生み出したかわいいビオラが手に入るようになったので、寄せ植えは今でも時々つくっています。 育種家さんのビオラとの出会い 僕が最初に育種家さんのビオラに出会ったのは、雑誌の取材で訪れた北海道札幌市にある「国営滝野すずらん丘陵公園」で、梅木あゆみさんが主催するイベントでした。その以前にもいろいろな方から「宮崎の育種家さんのビオラが素晴らしいよ」と、話は聞いていたので、是非拝見したいと思っていました。実際に見る育種家さんによるビオラは、色も形も大きさも想像以上にバラエティに富んでいて素晴らしく、興奮しながら撮影したのを覚えています。 その後は大阪の園芸店「Kanekyu金久」さんに取材に行ったり、神奈川県横浜市の笈川さんのハウスにお邪魔していろんなビオラを見てきました。知り合いのガーデンラバーさん達は、もうとっくに宮崎にまで行っていたりして、「今度一緒に宮崎に行きませんか?」と誘われてしまうほど育種家さんのビオラは、僕にとってしっかり撮影してみたい憧れの花になってしまいました。 自宅から5時間かけて「ローザンベリー多和田」へ そんな憧れのビオラが「ローザンベリー多和田」さんに勢揃いすると聞いたら、行かないわけにはいきません。4月4日、当日の天気を確認していざ出発です。自宅の千葉からローザンベリー多和田のある米原までは450kmおよそ5時間のドライブです。暗いうちに出発したので、お昼前には無事到着。SNSのショートメールでガーデナーのヒデさんに連絡してゲートへ向かうと、4日は休園日とのことで園内はガラーンとしていました。これは、ビオラ独り占めで撮影ができる! 素晴らしい機会となりました。 ローザンベリーと言えばアンティークレンガの塀とメタセコイアのロングウォークが有名ですが、その塀の前には分かりやすく、育種家さんごとにテーブルが置かれていました。アイアンのフェンスの前には、大きなハンギングやテラコッタがいくつも、いくつも並べられていています。 カメラマンとしては、育種家さんごとに全部の花をカメラに収めたいし、大作のハンギングやテーブルの上のグルーピングの写真も撮りたい。撮っても撮っても終わらない大変な一日になってしまいましたが、どの花も可愛く、どのハンギングも素敵だったので、不思議と疲れは感じない充実感いっぱいの幸せな一日になりました。 ○2018年のビオラフェアー パンジービオラフェスティバル は、3月17日(土)~4月15日(日)の開催です。詳しくはホームページ(http://www.rb-tawada.com)でご確認ください。 ○この記事でご紹介してきたすべての写真は、すべて「English Garden ローザンベリー多和田」で今井秀治さんが撮影したものです。 Information English Garden ローザンベリー多和田 所在地:滋賀県米原市多和田605-10 TEL:0749-54-2323 http://www.rb-tawada.com アクセス:名神高速道路 一宮ICより約40分 JR米原駅よりタクシーで約15分 オープン期間:火曜休(祝日の場合は営業) ※冬季休園あり 2018年は3月17日(土)からの営業(オープン期間はHPにてご確認ください) 営業時間:10:00〜17:00(レストランは11:00〜15:00) ※冬季(12〜3月)は10:00〜16:00の営業 入園料:大人(中学生以上)800円、小人(4歳以上)400円、3歳以下無料 ※団体は15名以上、割引あり
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宮城県

花の庭巡りならここ! ペット同伴OKなのが嬉しい「泉ボタニカルガーデン」
約6万9300㎡の敷地を持つ「泉ボタニカルガーデン」は、1998年にオープンした、約1,500品種、約10万株の植物が息づく自然植物公園。宮城県七北田ダムに隣接する、自然豊かな里山の景観を生かした植栽は、山歩きを楽しむ感覚で四季を彩る花々の景色を観賞できます。この庭園を運営する母体は、ガーデン施工会社「泉緑化」で、元々圃場として利用していた場所を、市民の憩いの場として提供しようと、長年かけて整備してきました。樹木や草花はどれくらいの大きさに成長するのか、日陰ではどんな植物が育つのか、相性のいい植物の組み合わせ方など、個人庭園に参考になるモデルガーデンとしての役割も備えているといいます。プロの技がたくさん詰まった植栽術を見に、ぜひ出かけてみてはいかがでしょうか。 四季の変化によって見どころが移ろう、 何度でも訪れたいガーデン 広大な敷地はエリアごとに区分けされ、それぞれに雰囲気の異なる見どころが設けられています。「ローズガーデン」「シャクナゲの斜面」「アヤメの湿原エリア」「エビネとヒメシャガの日陰」「カタクリとツツジの谷」「ガクアジサイの岬」「野草の枝道」「カルミアと東屋」「芝生広場」などのエリアがあり、季節の変化によって、見どころも次々と移ろっていきます。 5月上旬はチューリップが見頃で、約8,000球を植栽。毎年色の組み合わせを変えており、株元を彩るネモフィラなど一年草との組み合わせ方も参考になります。 里山の景色を生かしつつ、斜面を色で覆い尽くすように植栽されたシャクナゲのエリア。5月の2週目前後が見頃となり、サクラやヤマツツジも同じ頃に開花するので、春がいっぺんにやって来る北国ならではの風景を楽しめます。「この季節を待ってました」とばかりに、多くの方々が足を運んで特に賑わいを見せ、「最高の眺めが楽しめるハイキングコース」と親しまれています。 「泉ボタニカルガーデン」では、約400品種、約600本のバラが植栽され、6月中旬に見頃となります。写真は、手作りの木製パーゴラに仕立てた‘アンジェラ’の満開の様子。歩き疲れたら、パーゴラ下のテーブルとチェアで休憩ができます。園内にはたくさんの休憩スポットが用意されており、持ち込みでの飲食もOK。ゴミは各自持ち帰って、マナーを守りましょう。 職人さんが手作りした木製のアーチが何本も連ねられた小道は、幅約3m、奥行き約30m。ダイナミックなバラのトンネルは、赤の‘トラディション95’‘テス オブ ザ ダーバービルズ’‘LDブレスウェイト’、ピンクの‘スパニッシュ・ビーューティー’‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’‘ラウブリッター’、白の‘アイスバーグ’などと、花色を絞って優美に彩っています。 寂しくなりがちなアーチの足元には、キャットミントやアルケミラモリス、アリウム・ギガンチウム、ラムズイヤーなどの宿根草をボリュームたっぷりに植栽。アーチの庭への上手な取り入れ方のヒントになりそうです。 夏〜秋は植物の成長が著しく、 ボリューム感のある景色が広がる バラの季節が終わると、ヤマアジサイやセイヨウアジサイなど、アジサイが主役の季節へとバトンタッチ。さらに梅雨があけて夏を迎えると、ルドベキアやヒマワリなどを中心に、黄色い花々がガーデンに輝きを与えます。写真左は8月上〜中旬の景色。写真右は夏らしいビビッドな色づかいで、草丈の高低差を生かした植栽術が目を引きます。少し標高が高いので、真夏も植物がへたらず元気いっぱいに咲き誇る姿が魅力です。 秋になると、背の高い宿根草が伸び上がってきて、ボリュームたっぷりの景観をつくりだします。写真は10月頃で、さまざまなセージがダイナミックに群植されたコーナーが見どころです。 また、10月のハロウィンの季節はマルシェが開催され、たくさんのさまざまなイベントが楽しめます。公式ホームページでは、季節ごとに音楽コンサートやワークショップなどいろいろなイベント情報が掲載されているので、ぜひチェックしてみてください。 青空の下でいただく食事は、 いつもよりずっとおいしい! 「泉ボタニカルガーデン」内には、カフェ「Cafe Terrace Felicia」が併設されています。オープン時間は10:00〜16:00(ラストオーダー15:30)。4〜6月は無休、7〜11月は水曜定休。空が開け、風が頬をなでるオープン席が人気です。メニューはパスタ850円のほか、そば、うどん、丼ものがあり、季節によって変わります。オススメは手作りのケーキセット(ドリンクつき)850円です(写真右)。 ほかにも、ハンドメイド作家がつくる雑貨のショップや花苗・花木の売店があり、不定期でマルシェが立つなど、お買い物も楽しめます。 ペットも喜ぶ! 里山の景色を楽しみながらハイキングを 「泉ボタニカルガーデン」ではペットを同伴でき、一緒に園内のお散歩を楽しめます。リードをつけていれば、走り回ってもOK。これまで犬や猫、ウサギのほか、オウムまで来園したことがあるそうです。マナーとして、トイレの始末は各自で行いましょう。写真は「泉ボタニカルガーデン」看板犬のチェリーちゃん。園内の芝生広場に毎日のように出勤しています。 Information 泉ボタニカルガーデン 所在地:宮城県仙台市泉区福岡字赤下 Tel. 022-379-2698 http://www.izumi-green.co.jp/botanical/ アクセス: 仙台市地下鉄泉中央駅より 車で約30分 仙台泉I.Cより 泉ヶ岳方面へ車で約40分 仙台宮城I.Cより 国道48号線経由、国道457号線大和方面へ車で約40分 オープン期間:4月第2土曜日~11月第2日曜日 営業時間:9:30~17:00(最終入園は16:30) 入園料:大人500円、小学生100円、未就学児無料 会員パスポート(年内有効)1,000円 団体割引10名以上大人300円 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが、醍醐味ですね。https://twitter.com/passion_oranges/
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イギリス

英国の名園巡り イギリス南西部のエキゾチックな庭「トレングウェイントン・ガーデン」
120年前のこと、英国の慈善団体ナショナル・トラストは、開発で失われていく自然や、歴史ある建物や庭といった文化的遺産を守り、後世に残そうと、活動を始めました。多くのボランティアの力によって守り継がれる、その素晴らしい庭の数々を訪ねます。 世界中の植物が茂る庭 トレングウェイントンの屋敷と庭は、1817年、ジャマイカから帰郷した資産家のサー・ローズ・プライスによって整えられました。その後、1867年に、地元の実業家トーマス・サイモン・ブリソーの手に渡り、以来、1961年にナショナル・トラストに寄贈されるまで、ブリソー家で6代に渡って受け継がれてきました。12万㎡ほどの広い庭には、石塀に囲われたエリアと、小川に沿って小径を散策できるエリアがあります。 庭づくりに特に熱心だったのは、3代目のサー・エドワード・ブリソーです。20世紀前半、彼は、州内随一といわれた有能な庭師とともに、園内に小川を引いたり、世界各地の珍しい植物を集めたりして、庭園を充実させました。 5月になると、かつてプラントハンターが持ち帰った希少な品種を含むアザレアやロドデンドロンが、小径を鮮やかに彩り、甘い香りで満たします。 異国情緒あふれるツリー・ファーンの林 園内で最もエキゾチックな雰囲気が漂うのは、ツリー・ファーン(ディクソニア・アンタルティカ)の茂る林です。一見するとヤシの木のような、オーストラリア原産の大きなシダが、ひんやりとしてほの暗い、静かな世界をつくります。そこに明るさをもたらすべく植えられているのは、鮮やかな花色のツバキやロドデンドロン。他では見られない、ちょっと面白い取り合わせです。 花々に縁どられる小川の庭 こちらは、園内を流れる小川に沿ってつくられた、ストリーム・ガーデン。小川の流れは自然で、その昔に人工的につくられたとは信じられません。アメリカミズバショウ、ヤグルマソウ、ホスタ、シダ、ヘメロカリス、クロコスミアといった植物が植えられた、解放感のある水辺の景色が素敵です。 春から初夏にかけて、小川はさまざまな花に縁どられます。中でも目を引くのは、黄と赤紫の色鮮やかなカンデラブラ・プリムラ。燭台のようにすっと伸びた姿をして、小川のそばでよく育つプリムラです。 ノアの方舟を模したキッチン・ガーデン 石塀でぐるりと囲われ、傾斜のついた花壇のあるキッチン・ガーデンも見逃せません。この地所を最初に整えたサー・プライスは、いささかエキセントリックな信仰を持っていて、キッチン・ガーデンを、ノアの方舟の大きさ(およそ120×20m)に合わせてつくったと伝えられています。なかなかユニークな発想ですね。現在、このキッチン・ガーデンの一部は、地元の人々や小学生のコミュニティーガーデンとして使われています。 ペンザンス周辺には、海辺の断崖絶壁につくられた野外劇場ミナックシアターや、英国最西端となるランズエンドなど、ダイナミックな自然を感じられる観光スポットがあります。ぜひ周遊して、コーンウォールの旅を満喫してください。 取材協力 英国ナショナル・トラスト(英語) https://www.nationaltrust.org.uk/ ナショナル・トラスト(日本語) http://www.ntejc.jp/ Information 〈The National Trust〉Trengwainton Garden トレングウェイントン・ガーデン コーンウォール州ペンザンスへは、ロンドンから車で約6時間。電車では、ロンドン・パディントン駅からペンザンス駅まで約5時間。駅のバス・ステーションから庭園へは約20分、タクシーなら約10分。2月12日~10月29日の月~木と日に開園(10:30~17:00、屋敷は非公開)。 住所:Madron, near Penzance, Cornwall, TR20 8RZ 電話:+44 (0) 1736363148 https://www.nationaltrust.org.uk/trengwainton-garden Credit 文/萩尾 昌美 (Masami Hagio) ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。5年間のイギリス滞在中に、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するようになる。神奈川生まれ、早稲田大学第一文学部・英文学専修卒。
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イギリス

英国ナショナル・トラスト ウィンターガーデンの楽しみ
120年前のこと、英国の慈善団体ナショナル・トラストは、開発で失われていく自然や、歴史ある建物や庭といった文化的遺産を守り、後世に残そうと、活動を始めました。多くのボランティアの力によって守り継がれる、その素晴らしい庭の数々を訪ねます。 足元に咲く可憐な球根花 大木の根元に咲き広がるシクラメン・コウムは、冬の庭に明るさをもたらしてくれる貴重な存在。草丈10㎝程の小さなシクラメンで、多少の霜にも耐えられます。 氷の妖精みたいな小さなアイリスは、レティキュラータ種の‘キャスリン・ホジキン’。草丈12㎝程の可愛らしいアイリスで、晩冬から早春にかけて、スノードロップと同じ頃に花開きます。 うつむく純白の花を咲かせるスノードロップ。イギリスでは落葉樹の林に群生しているところも多々あり、春が近づいていることを真っ先に知らせる花として親しまれています。花姿が微妙に異なる、さまざまな園芸種も出ています。 寒さが生み出す芸術 霧氷に美しく縁取られたカエデの葉。冬ならではのアート作品です。 一面の霜に覆われる、早朝のキッチンガーデン。凍りつくケールが砂糖菓子のよう。 朝もやの中、濠の向こうに浮かぶスコットニー城。静寂に包まれたモノトーンの世界。 庭の人気者 ロビン 裸木の多い冬の庭では、餌を求めてやってくる小鳥の姿も見つけやすく、野鳥観察が楽しめます。赤い顔と丸みのある姿が愛らしいロビン(ヨーロッパコマドリ)は、物語に出てきたり、クリスマスカードのモチーフに描かれたりと、英国の人々に広く愛されています。 ロビンが止まっている低木は、ミズキの仲間、コルヌス・サングイネア‘ミッドウィンター・ファイヤー’。その名の通り、燃えるように鮮やかなオレンジ色の幹や枝が、彩りの少ない冬の庭のアクセントとして楽しまれています。 いかがでしたか、英国の冬の楽しみ。あなたの周りでも、冬ならではの庭景色を見つけてくださいね。 併せて読みたい ・上野ファームの庭便り「冬を楽しみ、冬を飾る」絵になるガーデンシーン ・庭で野鳥観察! 庭にバードフィーダーを置こう 取材協力 英国ナショナル・トラスト(英語) https://www.nationaltrust.org.uk/ ナショナル・トラスト(日本語) http://www.ntejc.jp/ Credit 文/萩尾 昌美 (Masami Hagio) ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。5年間のイギリス滞在中に、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するようになる。神奈川生まれ、早稲田大学第一文学部・英文学専修卒。
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イタリア

イタリア式庭園の特徴が凝縮された「ヴィラ・カルロッタ」【世界のガーデンを探る旅5】
イタリア式庭園の特徴をすべて備えた「ヴィラ・カルロッタ」 北イタリアの庭園巡りも、いよいよこの庭が最後になります。イタリア式庭園の特徴であるテラス状になった植栽帯や、豊富な水と巧みな高低差を使った噴水、そして大理石彫刻の見事さ。さらには、どこにも負けない鮮やかな花の色。そのすべてが見られるのが「ヴィラ・カルロッタ」の庭です。 コモ湖を望むこのヴィラは、湖畔の入り口から正面を見上げると、フォーマルな佇まいの噴水と花壇の向こうにそびえ立つ白亜の邸宅が、緑の山を背景に威厳をたたえて我々訪問者を見下ろしているかのようです。 カルロッタ邸の歴史に関わった貴族たち ここは元々16世紀に絹貿易で財産を築いたクラリチ一族(Clerici family)のものでした。17世紀にミラノの銀行家ジョルジョー・クラリチ伯爵(Giorgio Clerici)の別荘として今の姿になり、その後19世紀にナポレオンの友人のジャン・バチスタ・ソンマリーヴァ伯爵(Gian Battista Sommariva)の手に渡り、庭を改修したり美術品を蒐集するなどしました。その後、この邸宅の名称になっているカルロッタの母親、マリアンネ公爵夫人の手に渡り、夫人の夫が広大な敷地内に植物園をつくりました。そして、結婚祝いに、このヴィラが娘のカルロッタにプレゼントされ、カルロッタ邸となったのです。この素晴らしいヴィラを贈られたカルロッタは、なんと23歳の若さで亡くなってしまいました。 何代もオーナーが変わりながら、7ヘクタールもの敷地の中には、カルロッタの父が世界中から集めた植物により植物園になったのですが、特に、日本のツツジやシャクナゲ、ツバキのコレクションは有名で、日本を思わせる竹林もあります。また、邸宅の中には数々の美術品も収蔵されていますが、なかでも、「ロミオとジュリエットの最後のキス」と題された18世紀末のロマン主義画家による作品が、近くの窓から見える湖の風景とも調和し、訪れる人にため息をつかせます。現在は、カルロッタ財団により運営、一般公開され、世界中から観光客が訪れています。 カルロッタ邸の敷地内をご案内します 外から見ると敷地内に高低差があることをあまり感じませんが、一歩中に入ると、前庭には十分な奥行きと広がりがあり、知らず知らずのうちに建物の足下までたどり着きます。そこから見上げるヴィラは白くそびえ立ち、その建物と庭の配置のすばらしい演出効果で、気がついた時は庭の中に吸い込まれているのです。 前庭から最上階のテラスまで登る左右対称につくられた階段には、白い大理石に映えるベゴニアとつるバラが咲き、そして上階の手すりにはアイビーゼラニウムが飾られています。植物のセレクトは、すべてイタリアンレッドです。 最上階からの絶景と庭の融合 テラスの最上階ではコモ湖を望み、遠くの山々が見渡せる絶景が待っています。ここにたどり着くまでに設けられている1段目のテラスと2段目のテラスが、最上階で待っている景色への期待感を徐々に高めてくれます。 まず前庭から階段を上り、最初のテラスに出ると、レモンやオレンジなどの柑橘類のトンネルが現れます。ここで一度周囲の眺望を消し去り、2段目のテラスに到着すると、背丈より高い赤いサルスベリで少し視界と明るさを取り戻します。さらに3段目の最上階へ到達すると、この庭の最高の絶景が目を楽しませてくれます。コモ湖の向こうには濃い緑の山々と蒼い空が広がり、手前に配置された1列の赤いハイビスカスの鉢植えが、それらを引き立てる心憎いまでの演出には、ただただ感心するばかりです。 お屋敷には美術品の数々 全体がパステルブルーに塗られた吹き抜けのメインホールに一歩入ると、真っ白な彫像やレリーフに目を奪われます。カノーヴァの彫刻をはじめ、さまざまな芸術品が当時のインテリアとともに鑑賞できるという贅沢なひとときも味わえます。 ヴィラの裏手にはまぶしい緑、そして振り返れば深い群青色のコモ湖と蒼い空が窓の外に広がっています。天井画や美術品に水面の反射光がさして、鑑賞するものすべてが輝いて見えます。 ヴィラの裏側にもかわいらしい花壇がありました。真っ白な大理石の砂利が緑の中に一際存在感を出しています。つげの生け垣のデザインもちょっとユーモラスで、ここでは赤に代わって優しいオレンジ色がアクセントに。園主のおもてなしの心が感じられます。 植物園の中の毛氈花壇では、寒い北風からヤシを守るように、背景にさまざまな高木や針葉樹の森が広がっています。緩やかな斜面には、ピンク、黄色、オレンジ、パープルとパッチワークのように夏の花が咲き、木々の緑と対比する花色の洪水が、不思議な迫力をつくり出しています。写真の右端に写っている人影と比べれば、この庭園のダイナミックなサイズ感がお分かりになると思います。 「ヴィラ カルロッタ」がある街、トレメッツォ 北イタリアの湖水地方の中でも美しいコモ湖を望む観光地、トレメッツォは豪華な邸宅が立ち並ぶことでも有名な場所です。かつて北イタリアはドイツ語圏(ドイツ、スイス、オーストリア)からの観光客が多かったのですが、今はアメリカンイングリッシュが聞かれ、英語がどこでも通じるので、安心して旅行ができます。 トレメッツォから少し離れた郊外の小さな村でも、広場には花に飾られた道標が出迎えてくれます。ルネッサンスから連綿と続いたイタリアの庭の歴史、宮殿からヴィラ、そして町の中へ。着実に、花のある豊かな暮らしの精神は引き継がれているようです。 ヨーロッパの富と文化の中心は、ルネッサンスの後、フランスの王族文化へと移っていきます。ルイ14世の命を受けたル・ノートルがイタリアを訪れ、そこから得たインスピレーションからベルサイユ宮殿の庭をデザインしていくというお話は、また次回にご紹介しましょう。
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島根県

花の庭巡りならここ! 伝統的な英国スタイルのガーデン「松江イングリッシュガーデン」
2007年に開園した、島根県松江市立「松江イングリッシュガーデン」。イギリスからキース・ゴットさんをヘッドガーデナーに迎えて整備された、英国式庭園です。約1万㎡に及ぶ敷地は、「バラのテラス」「キングサリのアーチ」「ホワイトガーデン」「サンクンガーデン」「パーゴラの中庭」「噴水広場」「憩いの広場」「屋内ガーデン」「クロイスターガーデン」の9つにゾーニングされ、それぞれにテーマ性のある景色が楽しめます。そして特筆すべきは、これだけの規模の庭園で、行き届いたメンテナンスが施されながら、入場は無料だということ。四季を通して見どころが変化していく庭園にはリピーターが多く、地元の方々の憩いのスポットとなっています。 これぞイングリッシュガーデン! 洗練された植栽術にうっとり 毎年、豪華な花穂のデルフィニウムを主役とした、ランドスケープガーデンを制作しています。ゴールデンウィークが一番の見頃で、深いブルーや紫、白のデルフィニウムの株元には、ロベリア、セイヨウダイコンソウ、ブロンズ色のカラーリーフが美しいリシマキア‘ファイヤークラッカー’などが縫うように植栽され、ナチュラルな景色が魅力です。 「松江イングリッシュガーデン」では橋がかけられた水辺の景色も楽しめます。橋の左手に誘引された赤いバラは‘レッドメイディランド’、手前の房咲きのバラは‘バレリーナ’で、6月初旬の景色です。池にはスイレンが植栽され、初夏から開花を楽しめます。空や植物が映り込む水鏡を保つために、スイレンが繁茂しすぎないように、間引いたり花殻摘みをしたりと、定期的なメンテナンスをして景観を維持しています。 5月中旬〜6月中旬のバラの季節は見どころ満載! 「松江イングリッシュガーデン」の園内にはさまざまなバラが植栽されています。見頃は5月中旬〜6月中旬。ホワイトガーデンのアーチは高さ3.5m、奥行き4mで、白バラの‘クライミング・アイスバーグ’、‘オドラータ’がダイナミックに仕立てられています。このホワイトガーデンのアーチの一番の見頃は5月下旬〜6月初頭のわずか1週間ほど。この素晴らしい景色を写真に収めようと、タイミングをはかって何度も訪れる人もいるそうです。 一段下げてつくってあり、上から遠くまで一望できる沈床スタイル「サンクンガーデン」の一角。手前のピンクのバラ‘ピンクヘイズ’が満開を迎えています。19世紀終盤〜20世紀初頭の伝統的な英国スタイルの庭園を再現した園内には、トピアリーや生垣で縁取った、整形式花壇も制作。「松江イングリッシュガーデン」では、総じて約500種の植物が息づいています。 修景バラの‘レッドメイディランド’が園路を彩るランドスケープガーデンの一部。奥のガゼボには、ピンクのバラ‘アロハ’が仕立てられ、現在はガゼボを覆い尽くすほどに成長しており、人気のコーナーになっています。ガゼボの中に入って、香りのよいバラとして知られる‘アロハ’の芳香を楽しみながら、くつろぎのひとときを過ごせます。 宍道湖の借景を生かした、ビロードのように整備された芝生の庭。視界が開けて心地よく、春から秋にかけてはお弁当を広げてくつろぐファミリーの姿が多く見られます。 「松江イングリッシュガーデン」の開花リレーは次の通りです。セイヨウスイセンが2月下旬〜4月下旬、デルフィニウムが4月下旬〜6月中旬、藤棚にダイナミックに仕立てられ、スパイシーな香りが楽しめるシナフジは4月下旬〜5月初旬、キングサリが5月初旬〜下旬、ジギタリスが4月下旬〜7月上旬、バラが5月中旬〜6月中旬、ユリが6月中旬〜7月下旬、宿根サルビアが9月下旬〜12月初旬、紅葉が10月下旬〜12月中旬、クリスマスローズが1月上旬〜4月上旬。リピーターが多いのも納得です! 温室では展示会やコンサートなどのイベントを開催! 温室ではベンジャミンやアコウの大木、熱帯植物を見ることができます。庭園を取り囲むように、温室を兼ねた多目的ホールや回廊があり、展示会やコンサートなどのイベントも開催されます。 このほか、売店では、お菓子や地元のキャラクターグッズ、ガーデニンググッズ、花をモチーフにした雑貨などのお土産物が揃います。なかでもビスケットやクラッカー、チョコレートなど、イギリスをはじめヨーロッパから輸入されたお菓子が大人気だそうです。 併設するイタリアンレストランでコース料理を堪能! 「松江イングリッシュガーデン」では、ウェデイングパーティーも行える、イタリアンレストラン「レストランウェディングLaut」を併設。壁の一面がガラス張りとなっており、宍道湖を一望できるナイスビューを楽しみながら食事を楽しめます。ランチは11:30〜14:00、ディナーは予約制で18:00〜22:00、定休日は火曜です。 写真右はランチの一例。メニューはコースのみで、2,000、3,000、4,500円から選べます。旬の食材を使ったコース料理に舌鼓を打つ、贅沢なひとときを過ごしてみませんか? Information 松江イングリッシュガーデン 所在地:島根県松江市西浜佐陀町330-1 Tel. 0852-36-3030 http://www.matsue-englishgarden.jp/ アクセス:出雲空港より車で約40分 JR松江駅よりバス「免許センター・朝日ヶ丘行き」約30分 一畑電鉄松江しんじ湖温泉駅より、一畑電鉄、出雲方面行きに乗り約5分 車で大阪・岡山方面より米子自動車道−山陰道(松江西ランプ下車)−国道9号線−宍道湖大橋−国道431号線(出雲方面へ) 広島方面より中国自動車道(三次東JCT)−やまなみ街道(尾道松江線)−宍道JCT−山陰道(松江西ランプ下車)−国道9号線−宍道湖大橋−国道431号線(出雲方面へ) オープン期間:通年 定休日:無休、ただし年末年始(12/29~1/3)は閉園 営業時間:9:00〜17:30(4〜9月)、9:00-16:30(10-3月) 入園料:無料 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが、醍醐味ですね。https://twitter.com/passion_oranges/
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イタリア

これぞイタリアの色づかい「ヴィラ・ターラント」【世界のガーデンを探る旅4】
世界中の植物が2,000種集まった 絶景も見逃せない植物園 今回ご紹介する「ヴィラ・ターラントVilla Taranto」は、世界中の植物約2,000種類が集められた植物園(Botanical Garden)として公開されています。一つずつの植物を観賞するばかりでなく、丘の上からは遠くに雪をいただくスイスアルプスが望める絶景や、真っ青で穏やかなマッジョーレ湖を望む丘もあり、一日ゆっくり景色も堪能しながら、贅沢な時間を過ごすことができる場所です。そして何といっても、ここイタリアでしか見ることのできない素晴らしい色づかいの花壇植栽が魅力です。 お気に入りの土地にガーデンをつくったMr.ネイル この庭は、20世紀の初めにスコットランド人のネイル・マックイーチャン(Neil McEacharn)によってつくられました。彼はお気に入りの土地だったマッジョーレ湖のほとりの古いヴィラを1931年に買い取り、世界中から植物を集めたのちに、この地に植物園を兼ねた壮大な庭をつくりました。それがこの庭園です。16ヘクタールの敷地内には、回遊式のイングリッシュガーデンスタイルをベースにした、世界有数の植物のコレクションがあります。フォーマルな庭をはじめ、噴水やさまざまなフラワーベッドなどがちりばめられ、園路の総延長は7㎞にも及びます。1939年、彼には跡取りがいなかったため、完成した植物園の中に自分を埋葬するという条件で、イタリア政府にすべて寄贈し、現在に至ります。彼は今もこの庭の中心にある花壇の中に眠り、庭を見守っています。 この庭をつくったネイル・マックイーチャンの碑を囲むように、ドーム状に花を咲かせているのは、黄色とオレンジのジニア。シンプルな植栽ですが、とても効果的で華やかです。 巨大なコニファーが並ぶエントランスからガーデン観賞スタート 両側に緑のグラデーションをつくるパイネータム(針葉樹園)のエリア「コニファーアレー」から、ガーデン散策がスタートします。ゆるやかな上り坂を進むと、森林浴をしているような清々しい気持ちになります。1930年代に植えられた樹木は、樹齢100年を超え、見上げるばかりの大木です。それぞれの種の持つ自然樹形や性質を比較しながら見ることができます。さまざまなコニファーの緑の株元を彩っているのは、カラフルなインパチェンスのボーダー花壇です。コニファーの緑の補色である赤いインパチェンスだけでなく、白やピンクを混ぜ合わせることにより、必要以上に鮮烈な印象になりがちな色の対比を和らげて、訪れた人を優しく迎えてくれます。 さらに進むと、夏の終わりのボーダー花壇のエリアに到着。手前には燃えるような黄色と赤のケイトウの花穂が眩しく輝き、陽射しの下で光り輝いています。芝の緑と空の青に対比する花色を選ぶのは、イタリアならではの組み合わせです。芝生はしっかり刈り込まれて、花壇のエッジが効いた、とても分かりやすいガーデンデザインです。 この庭で一番の見どころ 丘の上のフォーマルなテラスガーデン 丘の上に到着すると、テラス状になった敷地は、中央に水の流れを配し、左右対称のフラワーベッドになっています。遠くに山を望む素晴らしい借景の中、緑と赤の対比が目に飛び込んできます。ブロンズの少年が眺めているのは、屋敷の向こう、雪をいただくアルプスの山々でしょうか。 ガーデン全体が強烈なイタリアンカラーで、原色を対比させた配色の中に不思議な静寂感があります。イギリスのナチュラルな植物の組み合わせとはまったく違った、面で色構成されるイタリアの庭デザインは、ほかでは見ることのないものです。フラワーベッドの植物の使い方と配色は、日本のように夏が蒸し暑くなく、カラッとした気候の北イタリアならではの花風景。インパチェンスやケイトウが生き生きと育つ様子を見ると、日本でもこの派手な色づかいを試してみたくなります。 園路沿いには草丈2mにも育った赤やピンクのインパチェンスと、株元を引き締めるアゲラタムの紫。とても日本では考えられないボリュームです。 園内のあちこちに見られる花の植え込み。散策の途中でも飽きさせません。 ハス池の周りにも、対比する花色のサフィニアの鉢植えがアクセントに。 湖から8㎞離れた場所ですが、噴水はパイプで汲み上げた自然の水を使っています。 屋敷を引き立てる強烈な花色のバランス 屋敷の横には、赤一色だけのケイトウ花壇と芝生の対比。アクセントにスタンダード仕立てのバラが空中に浮かぶことで、芝の庭との間をつなぎます。これも、この庭独特のデザインの一つです。 今回、この庭を取り上げた理由は、現代のイタリアの庭の多くが、これほどにはイタリアンカラーを強調していないという物足りなさを感じたためです。造園の歴史から考えると、この庭は時代としては比較的新しいほうですが、それぞれのお国柄に合った植栽と配色は、当時も現在も同じ傾向にあると思います。造園の歴史は、イタリアルネッサンスのあと、フランスやイギリスへと移っていきます。次回はもう一つ、イタリアルネッサンスのヴィラをご紹介します。
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高知県

花の庭巡りならここ! 画家・モネが愛した庭を再現『北川村「モネの庭」マルモッタン』
印象派の画家、クロード・モネ。彼がフランスのジヴェルニーに移り住み、半生をかけて庭づくりに熱中したことは、ガーデナーの間ではお馴染みの話でしょう。花の庭や、睡蓮が艶やかに咲く水の庭をつくりだし、その景色をモチーフとして描いた作品も数多く残されています。大気と光を描きたいと願った画家ならではの、豊かな色彩感覚でつくられたガーデンを、日本でも見られるとしたら? そう、高知県の『北川村「モネの庭」マルモッタン』は、フランスの「モネの庭」を再現した庭です。モネの庭責任者(当時)ジルヴェール・ヴァエ氏の協力を得て、デザイン・植栽ともにモネの庭に基づいてつくられ、2000年に開園しました。世界各国から「モネの庭」をつくりたいというオファーがあるなか、唯一それを許された日本のモネの庭。北川村の熱意が伝わって本家を動かし実現できたという、モネへの敬意にあふれた庭園の景色は、一見の価値ありです。 「モネの精神を受け継ぐ庭」をコンセプトにモネの庭を再現 『北川村「モネの庭」マルモッタン』の園内総面積は11万㎡に及び、花の庭、水の庭、光の庭でゾーニングされ、約1,000種10万本の植物が息づいています。 花の庭では、3月下旬〜4月上旬にパンジー、ビオラ、チューリップ、リナリア、ポピーなど春の喜びであふれる景色が広がります。本家のモネの庭にならってアーチがトンネル状に配置されており、その足元には「画家のパレットのよう」と評される彩り豊かな混植花壇が。春は背丈が小さく可愛らしいパステルカラーでまとめられています。 4月上旬に見られる、チューリップとワスレナグサの混植花壇。本家モネの庭と同じ植栽にしている、春の象徴的な風景です。また、園内では、毎年チューリップが2万球ほど植栽され、3月下旬〜4月上旬に一番の見頃を迎えます。 2018年春には、イベント「チューリップ、チューリップ」を開催。例年より多く5万本のチューリップが開花する予定です。 現在『北川村「モネの庭」マルモッタン』の庭園管理責任者は、川上裕さん。「モネの精神を受け継ぐ庭」のコンセプトのもと、本家モネの庭の各エリアごとに決められている色彩に合わせ、植栽・デザインを維持しています。フランスのジヴェルニーと高知県では気候・風土・光量がまったく異なるため、苦労した部分も多いとか。「モネが日本に来ていたらどのような植栽をするだろう?」と想いを馳せ、本家の色ベースに基づいて日本に合った植栽をするなど、工夫を凝らして庭を維持しています。川上さんは本家モネの庭と交流を深めることにも尽力し、2015年にはフランスの芸術文化勲章シュヴァリエを受章しました。 睡蓮が浮かぶ水の庭では、モネの絵に入り込んだような錯覚に 日本に憧れを持っていたモネは、庭に太鼓橋を設け、睡蓮の咲く水の庭をつくりました。『北川村「モネの庭」マルモッタン』でも忠実に再現され、周りの木々や空、雲が映り込む水鏡の景色を楽しめます。夏の7〜9月頃は緑が濃くなり、睡蓮は最盛期を迎えます。赤、ピンク、白、黄色など色とりどりに200〜300もの花が咲き競うシーンは見事。水鏡、周りの木々の風景、太鼓橋、そして睡蓮……モネの絵画の中に入り込んだような錯覚を堪能できます。 実は睡蓮の季節の水鏡を維持するために、週に1度は池に入って増えすぎた葉の間引きや花がら摘みなどのメンテナンスに励んでいるのだそう。睡蓮の配置はモネの絵画をもとに決められ、細部に至るまで配慮の行き届いた風景をつくりだしているのです。 写真は6月下旬〜10月下旬頃まで開花する青い睡蓮の‘ウイリアム・ストーン’。モネが生きていた時に咲かせようとしたものの、熱帯性睡蓮のため夏でも涼しいフランスのジヴェルニーでは気候が合わず、咲かせることができなかった品種です。このモネが憧れた青い睡蓮は、本家モネの庭からの要望をかなえ、『北川村「モネの庭」マルモッタン』で見ることができます。きっとモネは天国で「私の庭に念願の青い睡蓮が咲いたぞ、絵を描かなくちゃ」と、嬉々として絵筆を握っていることでしょう。 秋の庭も見どころ満載! 幻想的な夜のガーデン 『北川村「モネの庭」マルモッタン』を管理するガーデナーは、「実のところ秋がオススメ」というほど、秋の庭は見応えがあります。なぜなら10月下旬〜11月中旬頃になると、サルビアやセージがメインとなり、圧倒的な草丈のボリュームで花壇を彩るからです。シックなオータムカラーの花色は、気温の低下とともに発色がよくなり、息を呑むような風景をつくりだします。 毎年9月に開催している「キャンドルナイト」。水の庭にキャンドルを浮かべて幻想的な風景を楽しむイベントで、普段は見ることのできない夜のモネの庭を楽しみます。マルシェや音楽の演奏会、体験コーナーなども開催され、大盛況となります。 また、11月下旬〜12月下旬には水の庭周辺で紅葉した木々をライトアップする「光のフェスタ」が催されるなど、一年を通してさまざまなイベントが開かれるので、情報をチェックして出かける計画を立てるのも一案です。 ギャラリーやショップ、カフェなども充実! 何度でも訪れたい魅力満載 モネが住んでいた「モネの家」の外観を模し、同じ配色で建てられたギャラリー。花の庭の背景になり、モネの庭の一部として一役買っています。 ギャラリーの内部。1階はショップで、モネの絵画をモチーフにしたグッズが多数揃っています。人気は傘やクリアファイル、バッグ、ガーデニンググッズなど。ほかに北川村の特産品もたくさん揃い、お土産に喜ばれています。 2階はギャラリーで、モネの絵画(複製画)を展示。モネの庭の四季を切り取った写真も展示しており、それぞれの景色の違いも見てとれ、「また違う季節に来てみたい」と思わせてくれます。 2017年にリニューアルオープンした、カフェ「モネの家」。モネは料理にも造詣が深く、さまざまな創作料理を生み出し、器にもこだわりがあったといいます。このことにちなみ、このカフェでも工夫を凝らした四季折々のメニューを提供。モネが残したレシピをアレンジしたメニューも揃います。 人気メニューは、写真の「四万十ポーク 焦がしバターソテー〜北川ゆずポン酢ソース〜メイン+ライス+スープ」1,400円。ほかに「土佐沖鮮魚のパイ包み焼き〜モネレシピのアメレケーヌソースとともに〜」、「四万十鶏のロースト〜モネレシピ風〜」、「土佐あかうしのハンバーグ〜モネレシピのリヨン風ポーチドエッグを添えて〜」など、地元食材を使ったメニューが並びます。デザートもフルーツグラタンや焼きたてパンのふわふわ香草フレンチトースト、白ワインのサバイヨンムースなど、上品なラインナップ。旅の思い出に、ぜひ味わいたいものです。 Information 北川村「モネの庭」マルモッタン 所在地:高知県安芸郡北川村野友甲1100 Tel. 0887-32-1233 https://www.kjmonet.jp/ アクセス:高知龍馬空港より車で60分、高知自動車道南国ICより車で70分 オープン期間:通年(1月初旬から2月末日まで冬期メンテンス休園あり) 定休日:火曜、年末年始 営業時間:10:00~17:00(2018年3月より9:00~17:00) 入園料:一般700円、小・中学生300円 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが、醍醐味ですね。https://twitter.com/passion_oranges/
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北海道

野の花のようにのびやかに育つ花々と色彩の庭「紫竹ガーデン」
紫竹おばあちゃんのつくるのびやかな庭「紫竹ガーデン」 北海道帯広市の郊外、十勝平野のまっただなかに広がるお花畑、「紫竹ガーデン」。紫竹おばあちゃんこと紫竹昭葉さんが、「子どものころに遊んだ、野の花が咲く野原のような風景をつくりたい」という思いでタネを播き、木々を植え、25年もの間、手をかけてきたガーデンです。約5万㎡という広大な敷地には、さまざまなシーンを楽しめるガーデンエリアがあり、季節を通して2,500種もの花々が咲き乱れます。その色彩にあふれた庭の美しさに惹かれ、日本国内はもちろん、海外からも毎年多くの人が訪れます。 広々としたガーデンに展開するさまざまなシーン 足を踏み入れた後、どのガーデンシーンを見に行くか迷ってしまうほど広大な「紫竹ガーデン」。季節によってガーデンシーンも大きく異なる表情を見せます。たっぷりと時間をかけて散策しましょう。入り口近くに立てられた園内地図で、その日に見頃を迎えているガーデンエリアを確認して行くのもいいですね。 初夏にちょうど見頃を迎えるエリアは、「バラとクレマチスの道」。色とりどりのバラが咲く長さ約150mの道の両側を飾るのは、オダマキやシャスタ―デージーなどの花々と、200種以上のクレマチスのコレクションです。 「紫竹ガーデン」の花々は、ガーデン内でつくられた堆肥で生き生きと育ち、特にクレマチスはびっくりするほど大きな花を咲かせます。アーチやオベリスク、ポール、木の枝などに絡んで咲き誇るバラとクレマチスは、互いを引き立てあって優しく華やかな景色をつくっています。 何本もの道が交差し、自由に歩くことができる「花の径」から続く「リボン花壇」と、芝生の上に一年草を植栽してつくられた「パレット花壇」は、「紫竹ガーデン」の中でも最も色鮮やかな一角です。デルフィニウムやルドベキア、ルピナス、ポピーなど、さまざまな植物がつくり出すリズムと色彩がガーデンを満たし、風に揺れる花々を眺めれば、ゆったりと流れる時を実感できます。 ガーデンの周囲を囲むのは、北海道らしいシラカバの木。シラカバの白い幹の美しさと、十勝平野ののどかな田園風景がガーデンの背景となってカラフルな花々を引き立てます。 自然の中のようなのびやかで心地よいガーデン風景 ガーデンを奥へと進むと、木々の足元にひっそりと育つ植物たちのシェードガーデン「木陰園」と、小高い丘につくられた「ロックガーデン」が。丘の上からは、ガーデンの風景を一望できます。ゴツゴツとした岩の道の脇では、シダやギボウシなどが葉を大きく広げてこんもりと茂り、ナチュラルで迫力ある景色を生み出しています。 「ロックガーデン」から、カキツバタやオダマキなどが群れ咲く先には、スイレンの池があります。周囲を湿生植物で囲まれ、ピンク色の花弁の中から黄色い花心をのぞかせるスイレンの姿は、しっとりとして風情があります。午後には花が閉じてしまうので、訪れるときは午前中に楽しんでおきましょう。夢中になりすぎて池に落ちないようにご注意を。 一面にシロツメクサの白い花が咲く広場は、野原のような自然でのびやかな美しさ。広々とした広場のところどころに、ヘメロカリスの群落やハーブガーデンのエリアが設けられています。「紫竹ガーデン」では、野の花もガーデンの風景をつくる仲間として大切な存在です。その場所を気に入った植物たちは根をおろしてのびのびと育ち、場所が気に入らなかったものは、いつの間にか消えてしまう。すべてに手をかけず、一部は自然にまかせるのも、紫竹ガーデンが生き生きとして、エネルギーにあふれ、心地よい理由かもしれません。 ベンチに座ってひと休み。ガーデン内には、そこここに椅子やベンチが置かれていて、散策中に、座ってちょっとひと息入れることができます。緑豊かなガーデンに座り、心地よい風に吹かれていると、時間のたつのを忘れてしまいそう。 朝のガーデンで心地よい朝食を 「紫竹ガーデン」を訪れる人に大人気なのが、ちょっと早起きしてガーデン内のレストランでいただくビュッフェスタイルの朝食セット。事前に予約をしておけば、花々が咲き競う朝の爽やかなガーデンで、十勝の新鮮な季節の野菜をふんだんに使った盛りだくさんの料理をお腹いっぱい味わうことができます。食後にガーデンを散策してからスコーンやハーブティーでティータイムなど、ガーデンの朝をたっぷり楽しむことができます。 レストランの隣に立つガーデンショップでは、約1,600品種もの花や野菜のタネや苗が揃い、思わず手を伸ばしてしまう珍しい品種のタネも壁一面に並んでいます。季節を通してナチュラルな花咲く景色をつくれる、ワイルドフラワーのオリジナルミックスシードも販売。紫竹ガーデンを訪れた際には、ぜひ立ち寄りたいショップです。 Information 「紫竹ガーデン」 帯広市美栄町西4線107番地 Tel. 0155-60-2377 http://shichikugarden.com/ Open 4月中旬~11月初め 8:00〜18:00 入場料 大人800円、小・中学生200円 Credit 写真&文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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愛知県

カメラマンが訪ねた感動の花の庭。絵を描くように植栽する愛知・黒田邸
カメラマンの視点でバラの庭をご案内 愛知県豊橋市の黒田和重さんがつくる庭は、数々のガーデン雑誌でも紹介されてきた花好きの人たちにとっては有名な場所です。これまで10年もの間、その成熟していく様子を毎年見続けてきた、僕にとっても思い入れのある庭の一つです。 初めて黒田さんの庭を訪ねたのは、2007年2月の終わりのこと。とてもお世話になっていた豊橋にある花屋さんに「今井さん好みの最高に素敵なお庭があるから」と紹介されたのがきっかけでした。店での取材を終えて、さっそく車で10分ほどの場所にあるその庭を訪ねてみました。すると、庭主の黒田さんともお会いすることができ、聞くところによるとイギリスのコテージガーデンが好きで庭づくりを始めたといいます。いくつかのエリアに区切られた回遊式の、まるでイギリスの庭を移築してきたかと錯覚させられるほど素敵なデザインでした。 イギリスのガーデン雑誌をお手本に庭づくり 当時は大のバラブームで、つるバラの庭や、流行のイングリッシュローズをコレクションした庭などはたくさん見てきましたが、訪れた黒田さんの庭はほかとは違う魅力がありました。まるで、以前イギリスに行った時に巡った庭を思わせるような、しっかりとデザインされた庭でした。 きっと何度もイギリスに行かれたのだろうと思いながら、施主の黒田さんに僕のイギリスでの庭巡りについて話していたのですが、「私は一度もイギリスには行ったことがないんですよ。ひたすらイギリスのガーデン雑誌を見て勉強しました」と言うんですから、本当に驚きました。 初訪問は寒風が吹く2月でしたので、バラが咲き乱れる5月の庭を想像しながら初対面とは思えない黒田さんとの楽しい庭談義の時間を過ごして、5月に撮影に来る約束をして帰りました。 バラの最盛期に訪れた輝く庭 そして同じ年の5月中旬。期待に胸を膨らませて訪れた黒田さんの庭は、まさに想像以上! ちょっと大げさに言うと、本当にここが日本なの? と思わせるほど見事な景色でした。きれいに刈り込まれたツゲのヘッジ、庭を取り囲む塀にはさまざまなバラとクレマチスが咲き乱れています。 当時いろいろな園芸雑誌の企画で、バラとクレマチスの組み合わせが注目されていましたが、実際にはなかなか成功させている庭がなくて取材に苦労していた頃です。そんななか、この庭ではごく当たり前に、しかもとてもセンスよくバラとクレマチス、ジギタリスやデルフィニウムまでが美しく調和して咲き誇っていました。黒田さんのセンスと植物をちゃんと育てられる力には本当に脱帽です。夢中で時間も忘れてシャッターを切り続けた幸せな時間を、今も思い出します。 よりよいバラの庭を目指して年々グレードアップ それから毎年5月になると、一番気になるのが黒田さんの庭です。黒田さんはいつも「自分の庭がどうしたらもっとよくなるか」ばかり考えている方です。お会いした時はいつも「よいバラがあったら教えて」とか「新しいバラでうちに入れたらよいバラは何か?」とか、庭の話題が尽きません。 2013年に伺った時も、バラのコンディションやボリュームともに完璧。ボーダー花壇にいたっては、イキシア・ビリディフローラという翡翠色の球根まで入っていて、これ以上ない完璧な庭になっていました。さすがに黒田さんの庭も完成だなと思っていたら、翌年には美しかったボーダー花壇をつくり直し、生け垣だった場所は、神谷造園さんのコッツウォルドストーンの塀につくり替えられていました。黒田さんの庭に完成という言葉はないようです。 バラが咲き乱れる感動の光景の数々 2017年も5月22日、朝5時少し前に駐車場に車を止めると、もう掃除をすませた黒田さんがいつもの笑顔で出迎えてくれました。まだ5時前のボーッとした光の中、挨拶もそこそこに黒田さんの後ろについて庭の入り口に行ってみると、今年もまた一段と素晴らしい光景が目の前に広がりました。‘ランブリング・レクター’の花綱はまさに圧巻! 隣にはアルバローズの名花‘マダム・ルグラ・ドゥ・サンジェルマン’、奥には‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’が家の塀を覆い尽くしていました。3品種の白バラと青のキャットミント、ピンクの小花、そして青々と茂る緑の芝生……。息を呑むほどの美しさで、まるで一枚の絵画のようです。 朝の光を浴びて‘ランブリング・レクター’が輝き出すまで、まだ少し時間がありそうなので、三脚にカメラをセットして庭の中へ入っていきました。これまで何度も通った馴染みの光景だけれど、よく手入れされた朝の庭は本当に気持ちがよいものです。深呼吸をしながら、「キッチン前の窓辺のベンチとホスタ」、「フェンスに掛かっているピンクのオールドローズ」という風に頭の中で1枚ずつシャッターを切りながら歩いていきます。 いい光を探してシャッターを切る そうこうしているうちに、東の空からパーッと朝の光が差し込んできました。急いでカメラに戻ってみると、柔らかな朝日が‘ランブリング・レクター’の左上から当たり始めていたので、何枚かシャッターを切ってひと安心。 もう一度庭に戻り、今日撮れそうなカットをまた探しながら、きれいに光が当たってきたコーナーでは撮影をして、光の感じが変わったらまた最初の入り口に戻ってもう一度シャッターを切ります。朝はほんの数分で全然違う光景になってしまうので、ここぞというチャンスには、いつもシャッターは5分おきくらいに数回は切るようにしています。 僕の撮影を実際に見たことがある人から「今井さんは同じ所を、何回も何回も走り回っている」とよく言われます。そう、庭の撮影には微妙な光のニュアンスを見極める目が必要だと常々思うのです。光が強くなってくる7時過ぎには撮影を終了させて、ようやく黒田さんが入れてくれた香り豊かなコーヒーを飲みながら、しばし庭談義。こうして、今年もいい光を捉える幸せな撮影時間を過ごすことができました。


















