花の庭巡りならここ! 実はエンタメ空間!「水戸市植物公園」
植物園というと、珍しい植物や季節の花がたくさん咲く場所という漠然としたイメージしかないかもしれませんが、実は日本の植物園はそれぞれに個性があり、そこでしか体験できないことがたくさん詰まったエンターテインメント空間なのです。今回は茨城県水戸市にある「水戸市植物公園」をご紹介。園内に薬膳料理が美味しい喫茶がある癒しの植物園です。
植物を身近に親しんでもらうための植物公園
「都会の人こそ、週末くらいはこういう所へ来て癒されたほうがいいですよ〜。ほら、いい香りでしょ」と、ローズマリーの葉をもんで、香りをかがせてくれたのは西川綾子園長。NHK「趣味の園芸」の講師を務め、ハーブの栽培と利用方法に精通する園芸研究家でもあります。園内の随所にローズマリーやセージ、タイム、バジルなどが植えられており、葉にそっと触れただけで少しスパイシーな香りや甘い香りがフワッと立ち上ります。これらのハーブは鑑賞するだけでなく、収穫してイベントなどで利用されています。
「栽培したハーブでポプリやリース、ハーブティーをつくって楽しむハーブ友の会や、薬草で草木染めをする草木染織同好会など、同好会活動や一般の方が参加できるイベントも多数開催しています。こうやって植物に触れて味わって、植物をもっと身近に親しんでもらい、多面的な価値を知ってもらうのがこの植物園の役目の一つです」。
水戸市の歴史と深い関係にある薬草たち
水戸市植物公園がこうした活動に力を入れているのは、水戸市の歴史的背景にその理由があります。水戸黄門として有名な水戸藩第2代藩主、徳川光圀は、民衆のために数々の偉業をなしたことが知られていますが、その一つに『救民妙薬(きゅうみんみょうやく)』という本があります。これは病気になっても医者にかかることのできない貧しい人々が、身近に生えている植物を使って病の苦しみを癒せるようにと、光圀が藩医の鈴木宗与(穂積甫庵)に命じてまとめさせたもので、藩内で採取できる薬草を材料にした処方箋が397種類紹介されています。また、後代の水戸藩主、9代徳川斉昭は弘道館(こうどうかん*人材育成のための当時の学校)を創設。館内に医学館とともに薬園を設置して薬草栽培を行い、製薬をしました。
2017年4月には、園内の薬草園を拡張整備した「水戸 養命酒薬用ハーブ園」がオープンしました。ここでは江戸時代の水戸藩にまつわる薬草や現代親しまれているハーブを、散策しながら楽しめます。
水戸市植物公園では自然美と人工美の調和した景観を大きな特徴としており、テラスガーデンをはじめとして、季節ごとに異なる景観が楽しめます。美しい花景色を楽しみつつ、植物への知識と親しみを深めに訪れてみませんか。季節ごとの美味しい薬膳料理(土日・数量限定)を提供している園内の喫茶にもぜひお立ち寄りください。
<水戸市植物公園パンフレットより>
白いウメの花をお酒に浮かべて香りを楽しみましょう
ウメの白い花が咲いたら、半分開きかけた花を集めましょう。梅干しの種子を除いた梅肉を、蓋が付いた真空保存ができる容器の底に敷きます。採集した花をその上に並べて保存します。暑い季節に取り出して、お酒やお湯にその花を浮かべれば、梅肉の香りと花の美しさを楽しめます。クチナシの花も同様につけても見事です。(弘道館本草局長 佐藤中陵の『中陵漫録』の意訳)
写真提供/水戸市植物公園
information
水戸市植物公園
茨城県水戸市小吹町504
Tel. 029-243-9311
http://www.mito-botanical-park.com
開園時間:9〜17時(入園は16時まで)
休園日:月曜日(祝日または振替休日のときは翌日)、年末年始12月29日〜1月3日
入園料:一般300円、小・中学生と市内及び近隣市町村(笠間市・ひたちなか市・那珂市・小美玉市・茨城町・城里町・大洗町・東海村)居住の60歳以上150円
Credit
取材&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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