花の庭巡りならここ! 画家・モネが愛した庭を再現『北川村「モネの庭」マルモッタン』

四季がはっきり変化する日本には、豊かな自然と幅広い植物群、そして花を美しく咲かせる技術力があり、海外からも注目されるガーデンがたくさんあります。全国各地で育まれ、訪れる人々を感動させる花咲く数々のスポット。人生で一度は訪れてほしい観光ガーデンへご案内します。
印象派の画家、クロード・モネ。彼がフランスのジヴェルニーに移り住み、半生をかけて庭づくりに熱中したことは、ガーデナーの間ではお馴染みの話でしょう。花の庭や、睡蓮が艶やかに咲く水の庭をつくりだし、その景色をモチーフとして描いた作品も数多く残されています。大気と光を描きたいと願った画家ならではの、豊かな色彩感覚でつくられたガーデンを、日本でも見られるとしたら?
そう、高知県の『北川村「モネの庭」マルモッタン』は、フランスの「モネの庭」を再現した庭です。モネの庭責任者(当時)ジルヴェール・ヴァエ氏の協力を得て、デザイン・植栽ともにモネの庭に基づいてつくられ、2000年に開園しました。世界各国から「モネの庭」をつくりたいというオファーがあるなか、唯一それを許された日本のモネの庭。北川村の熱意が伝わって本家を動かし実現できたという、モネへの敬意にあふれた庭園の景色は、一見の価値ありです。
「モネの精神を受け継ぐ庭」をコンセプトにモネの庭を再現

『北川村「モネの庭」マルモッタン』の園内総面積は11万㎡に及び、花の庭、水の庭、光の庭でゾーニングされ、約1,000種10万本の植物が息づいています。
花の庭では、3月下旬〜4月上旬にパンジー、ビオラ、チューリップ、リナリア、ポピーなど春の喜びであふれる景色が広がります。本家のモネの庭にならってアーチがトンネル状に配置されており、その足元には「画家のパレットのよう」と評される彩り豊かな混植花壇が。春は背丈が小さく可愛らしいパステルカラーでまとめられています。

4月上旬に見られる、チューリップとワスレナグサの混植花壇。本家モネの庭と同じ植栽にしている、春の象徴的な風景です。また、園内では、毎年チューリップが2万球ほど植栽され、3月下旬〜4月上旬に一番の見頃を迎えます。
2018年春には、イベント「チューリップ、チューリップ」を開催。例年より多く5万本のチューリップが開花する予定です。

現在『北川村「モネの庭」マルモッタン』の庭園管理責任者は、川上裕さん。「モネの精神を受け継ぐ庭」のコンセプトのもと、本家モネの庭の各エリアごとに決められている色彩に合わせ、植栽・デザインを維持しています。フランスのジヴェルニーと高知県では気候・風土・光量がまったく異なるため、苦労した部分も多いとか。「モネが日本に来ていたらどのような植栽をするだろう?」と想いを馳せ、本家の色ベースに基づいて日本に合った植栽をするなど、工夫を凝らして庭を維持しています。川上さんは本家モネの庭と交流を深めることにも尽力し、2015年にはフランスの芸術文化勲章シュヴァリエを受章しました。
睡蓮が浮かぶ水の庭では、モネの絵に入り込んだような錯覚に

日本に憧れを持っていたモネは、庭に太鼓橋を設け、睡蓮の咲く水の庭をつくりました。『北川村「モネの庭」マルモッタン』でも忠実に再現され、周りの木々や空、雲が映り込む水鏡の景色を楽しめます。夏の7〜9月頃は緑が濃くなり、睡蓮は最盛期を迎えます。赤、ピンク、白、黄色など色とりどりに200〜300もの花が咲き競うシーンは見事。水鏡、周りの木々の風景、太鼓橋、そして睡蓮……モネの絵画の中に入り込んだような錯覚を堪能できます。
実は睡蓮の季節の水鏡を維持するために、週に1度は池に入って増えすぎた葉の間引きや花がら摘みなどのメンテナンスに励んでいるのだそう。睡蓮の配置はモネの絵画をもとに決められ、細部に至るまで配慮の行き届いた風景をつくりだしているのです。

写真は6月下旬〜10月下旬頃まで開花する青い睡蓮の‘ウイリアム・ストーン’。モネが生きていた時に咲かせようとしたものの、熱帯性睡蓮のため夏でも涼しいフランスのジヴェルニーでは気候が合わず、咲かせることができなかった品種です。このモネが憧れた青い睡蓮は、本家モネの庭からの要望をかなえ、『北川村「モネの庭」マルモッタン』で見ることができます。きっとモネは天国で「私の庭に念願の青い睡蓮が咲いたぞ、絵を描かなくちゃ」と、嬉々として絵筆を握っていることでしょう。
秋の庭も見どころ満載! 幻想的な夜のガーデン

『北川村「モネの庭」マルモッタン』を管理するガーデナーは、「実のところ秋がオススメ」というほど、秋の庭は見応えがあります。なぜなら10月下旬〜11月中旬頃になると、サルビアやセージがメインとなり、圧倒的な草丈のボリュームで花壇を彩るからです。シックなオータムカラーの花色は、気温の低下とともに発色がよくなり、息を呑むような風景をつくりだします。

毎年9月に開催している「キャンドルナイト」。水の庭にキャンドルを浮かべて幻想的な風景を楽しむイベントで、普段は見ることのできない夜のモネの庭を楽しみます。マルシェや音楽の演奏会、体験コーナーなども開催され、大盛況となります。
また、11月下旬〜12月下旬には水の庭周辺で紅葉した木々をライトアップする「光のフェスタ」が催されるなど、一年を通してさまざまなイベントが開かれるので、情報をチェックして出かける計画を立てるのも一案です。
ギャラリーやショップ、カフェなども充実! 何度でも訪れたい魅力満載

モネが住んでいた「モネの家」の外観を模し、同じ配色で建てられたギャラリー。花の庭の背景になり、モネの庭の一部として一役買っています。

ギャラリーの内部。1階はショップで、モネの絵画をモチーフにしたグッズが多数揃っています。人気は傘やクリアファイル、バッグ、ガーデニンググッズなど。ほかに北川村の特産品もたくさん揃い、お土産に喜ばれています。
2階はギャラリーで、モネの絵画(複製画)を展示。モネの庭の四季を切り取った写真も展示しており、それぞれの景色の違いも見てとれ、「また違う季節に来てみたい」と思わせてくれます。

2017年にリニューアルオープンした、カフェ「モネの家」。モネは料理にも造詣が深く、さまざまな創作料理を生み出し、器にもこだわりがあったといいます。このことにちなみ、このカフェでも工夫を凝らした四季折々のメニューを提供。モネが残したレシピをアレンジしたメニューも揃います。

人気メニューは、写真の「四万十ポーク 焦がしバターソテー〜北川ゆずポン酢ソース〜メイン+ライス+スープ」1,400円。ほかに「土佐沖鮮魚のパイ包み焼き〜モネレシピのアメレケーヌソースとともに〜」、「四万十鶏のロースト〜モネレシピ風〜」、「土佐あかうしのハンバーグ〜モネレシピのリヨン風ポーチドエッグを添えて〜」など、地元食材を使ったメニューが並びます。デザートもフルーツグラタンや焼きたてパンのふわふわ香草フレンチトースト、白ワインのサバイヨンムースなど、上品なラインナップ。旅の思い出に、ぜひ味わいたいものです。
Information
北川村「モネの庭」マルモッタン
所在地:高知県安芸郡北川村野友甲1100
Tel. 0887-32-1233
アクセス:高知龍馬空港より車で60分、高知自動車道南国ICより車で70分
オープン期間:通年(1月初旬から2月末日まで冬期メンテンス休園あり)
定休日:火曜、年末年始
営業時間:10:00~17:00(2018年3月より9:00~17:00)
入園料:一般700円、小・中学生300円
Credit

取材&文/長田節子
ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが、醍醐味ですね。https://twitter.com/passion_oranges/
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