イギリス、中世の館「コーティール」のクリスマス・ガーランド(花綱飾り)
イギリス、コーンウォール州にある15世紀の石造りの屋敷、コーティール。英ナショナル・トラストの所有するこの屋敷では、毎年、クリスマスが近づくと、スタッフやボランティアが総出で巨大な花綱飾り(ガーランド)をつくり、ホールに飾ります。飾りつけに使われるのは、数万本もの色鮮やかなドライフラワー。材料すべて屋敷の庭で育てられ、収穫されたものです。クリスマスを祝う、圧巻のガーランドづくりをご紹介しましょう。

120年前のこと、英国の慈善団体ナショナル・トラストは、開発で失われていく自然や、歴史ある建物や庭といった文化的遺産を守り、後世に残そうと、活動を始めました。多くのボランティアの力によって守り継がれる、その素晴らしい庭の数々を訪ねます。
伝統となったガーランドづくり
コーティールのヘッドガーデナー、デイビッドさんに、お話を伺います。ガーランドづくりが始まったのは、今から60年余り前のこと。最初は、ここで働くスタッフやボランティアのために開かれるクリスマス・パーティーの飾りつけにと、つくられたのだそうです。毎年続けるうちに、庭で育てた花をドライフラワーにして使うようになって、ノウハウも蓄積。今ではコーティールに欠かせない年中行事となって、来園客を喜ばせています。
さて、ガーランドづくりの手順を追ってみましょう。

制作が始まるのは11月の初め。完成まで10日余りかかります。まず、ガーランドの土台に使う、トベラの仲間を庭から採ってきます。

小枝を切り揃え、小さな花束のように束ねていきます。

花綱の芯となる、長さ18mほどのロープに小枝の束を巻き付けて、ワイヤーでしっかりとくくりつけます。

モコモコの緑の太綱がどんどん伸びていきます! これが花綱の土台になります。
大切に育てたドライフラワー

次は花の飾りつけ。飾りに使うドライフラワーの花々は、どれもコーティールの庭で栽培され、収穫されたものです。スターチスやヘリクリサム、ラグラス、ゴウダソウ、スターチス・スウォロウィーといった、ドライフラワーに適した品種です。

切り花用の庭で栽培された花々は、コーンウォール州の変わりやすい天候の中、大切に育てられました。夏が来て花が咲き出したら、収穫の日々が続きます。2017年の収穫量は、堂々の3万2,000本。過去最高は4万本だったそうです。そして、なんと、その年収穫したすべての花が、ガーランドに使われます!

ドライフラワーをきれいにつくるコツは、十分に花が開いた完璧な状態で摘むこと。そして、摘んだ当日からよく乾かせるように、お昼前に摘むことです。摘んだら、後で作業しやすいように葉をすべて落とし、20本ずつの束にして、風通しのよい冷暗所の天井から吊るして、乾燥させます。時間と労力を要する作業です。
中世の館にふさわしい壮麗なガーランド

さて、工程もいよいよ大詰め。天井から土台となる緑の太綱が吊るされ、スタッフは組まれた足場の上で、色鮮やかなドライフラワーを差し込んでいきます。

隙間なく差し込まれた花々。均等に行きわたるよう、区画ごとに差す本数はしっかり計算されています。毎年、花の種類が少しずつ変わり、それに伴って、でき上がる花綱の印象も変わります。

ついに完成! 他に類を見ない、オリジナルのガーランド。真冬に現れた見事な花景色です。

扉まわりにも違うデザインのガーランドが。豪華な花飾りに、古風な建物が引き立ちます。人々の熱意から生まれた素晴らしいガーランドで、素敵なクリスマスが迎えられますね。
Information
〈The National Trust〉Cotehele (コーティール)
コーティールへは、ロンドンから車で約4時間半。電車では、ロンドン・パディントン駅からプリマス駅経由で最寄りのカルストック駅(Calstock)へ。ロンドンから距離があるので、プリマスで宿泊するなど、余裕のある旅程を組むとよいでしょう。カルストック駅からコーティールへは車で10分ほどですが、駅にタクシー乗り場はないので自分で呼ぶ必要があります。また、駅から2.4km、道しるべに従って森の中を歩いても行けますが、坂道あり。冬の午後は暗くなるので懐中電灯の用意を忘れずに。庭園は通年開園。屋敷の開館は3月11日~10月29日。10月30日~12月31日(25日、26日を除く)は、クリスマス・ガーランドの飾られたホールのみ開館。11時~16時。
住所:St Dominick, near Saltash, Cornwall, PL12 6TA
電話:+44 (0) 1579351346
https://www.nationaltrust.org.uk/cotehele
Credit
文/萩尾 昌美 (Masami Hagio)
ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。5年間のイギリス滞在中に、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するようになる。神奈川生まれ、早稲田大学第一文学部・英文学専修卒。

取材協力
英国ナショナル・トラスト(英語) https://www.nationaltrust.org.uk/
ナショナル・トラスト(日本語) http://www.ntejc.jp/
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