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イタリア

イタリア「チボリ公園」【世界のガーデンを探る旅2】
華やかな幾何学式庭園 チボリ公園 イタリア式庭園は華やかな幾何学式庭園で、高低差のある斜面につくられるテラス状(階段状)の棚田のような庭園の中にふんだんに水を使った噴水を配したり、庭の随所には、国宝級の大理石の彫刻が効果的に配置されています。また、園路はタイルなどでモザイク模様が施され、それを引き立たせる糸杉や傘のような丸い形をしたイタリアマツが茂っています。そんなイタリア式庭園の原形ともいえる庭が、このチボリ公園です。デンマークのコペンハーゲンにも、この公園をまねた同じ名の庭園があります。 ルネサンス華やかなりし頃(15~16世紀)、イタリアの貴族たちは、暑い夏のローマを嫌って北イタリアや丘陵地に避暑に出かけました。ローマ平野の東の端、ここチボリの丘も避暑地として古くからローマの富裕層や貴族に利用されてきた場所です。避暑とは、暑さを避ける目的だけではなく、いろいろな病気を運んで来る蚊を避けるためでもありました。今も昔もオリーブとぶどう畑が周辺に広がるこの場所へ、1550年、エステ家がアニエーネ川から水を引いて、500もの噴水を持つ庭園を急斜面につくったのです。 宮殿に入り、壁にかかったフレスコ画や壁や天井の装飾に目を奪われながら歩いて行くと、突然視界が開けます。足下には、イタリア式庭園の特徴である高低差を巧みに利用した、いくつものテラスとさまざまな噴水を持つ壮大な庭園が現れます。そして、そのはるか向こうには、遠くローマ平野を見渡すことができます。 宮殿から庭に下りて行くと、数々の噴水に驚かされます。しぶきを上げて水を噴き上げるものや、滝のように高所から流れ落ちる水、たっぷりと水を貯め絶え間なく波打つ水面など、あちこちから聞こえてくる水音と勢いのある水の姿。これほど贅を尽くした演出がほかにあるでしょうか。 苔むした名所「100の噴水」 今ではすっかり苔むした名所「100の噴水」も、迫力満点の演出です。何段にもなった噴水は、当時のままの姿で絶えることなく水を噴出させています。水の噴き出し口がいろいろな動物にかたどられていたり、孔雀の羽を模した扇状に広がる噴水、それらの噴水の中央にはエステ家の紋章の鷲が配置されています。100mにも及ぶこの噴水は、自由な発想の中にもフォーマルな雰囲気が漂う実に見事なデザインだと思います。じつは、噴水はイタリア人が考え出した大発明の一つで、この庭では地形の落差を利用しながら、アニエーネ川から引いた水を使って、さまざまな形の噴水がつくられました。 宮殿から眼下に広がる庭園を見渡す。水面の輝きとしぶきが左右対称となり、たっぷりとした木々の緑が周囲を覆うチボリ公園。「アルハンブラ宮殿」をつくったアラブ人の考え、‘流れ出した水が世界を潤す’という世界観が、ここにも受け継がれています。 庭園の最大の噴水「オルガン噴水」 かつては流れる水がパイプオルガンを奏でるようになっていたそうですが、今では残念ながら曲を奏でてはいません。ここがこの庭の最下部。ここまで下りてくると、初めて庭の全貌が明らかになります。 次々現れるいろいろな噴水を見ながら歩を進めているうちに、いつの間にか急な斜面につくられているはずのガーデンの下方にたどり着いてしまうという心憎い演出に、ただただ感心するばかりです。 チボリ庭園と共に世界遺産となっているハドリアヌス邸、紀元1世紀にローマ皇帝ハドリアヌスがつくった別荘の遺構が、チボリ庭園から少し下った所にあります。ここでは、ハドリアヌスがギリシャを偲んでつくったというギリシャ式庭園を見ることができます。ぜひチボリ庭園を訪れた際には、時間をたっぷりつくって、当時の面影を残すこの地域を散策し、思いを巡らせてください。 併せて読みたい 世界のガーデンを探る旅1 スペイン「アルハンブラ宮殿」 世界のガーデンを探る旅14 イギリス発祥の庭デザイン「ノットガーデン」 松本路子の庭をめぐる物語 フランス・パリ「ロダン美術館の庭園」と秋バラ
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千葉県

花の庭巡り 千葉「京成バラ園」
下総台地の豊かな自然を残した市街地を擁する千葉県八千代市。その住宅街のほど近くに、国内有数のバラ園「京成バラ園」はあります。八千代市では、バラは市民投票により市の花に決定されるほど、多くの市民に親しまれています。敷地面積約3万㎡の京成バラ園のメインとなるのは、何といってもバラ。ゲートを抜けた先に現れる整形式のローズガーデンには、1,600品種1万株のバラが咲き誇り、満開のシーズンには色とりどりのバラが視界いっぱいに広がる景色が楽しめます。ローズガーデンの奥にはナチュラルな自然風庭園があり、敷地内には大温室も。バラを中心としながらも、四季折々の花々が楽しめるガーデン構成になっています。 京成バラ園のメインであるローズガーデン。左右対称につくられた約3万㎡のガーデンは、まるでフランスの城に広がる庭園のようなクラシックな雰囲気を持ち、歩を進めるたびに、さまざまな品種のバラと出合えます。京成バラ園芸のオリジナルブランドのバラはもちろん、原種バラやオールドローズから最新品種まで植えられているので、園内を巡ることで気になるバラをチェックしたり、バラの歴史の奥深さに触れることができるガーデンです。 ‘フランソワ・ジュランビル’の大アーチ つるバラ‘フランソワ・ジュランビル’の大きなアーチ。このガーデンの経営母体である、日本最大のバラメーカー、京成バラ園芸株式会社の創立時から植えられていて、ローズガーデンのリニューアル時に移植されたものです。樹齢約60年を数えますが、満開時には毎年ピンク色の花がアーチ全体を覆う見事な景色に。アーチの下をくぐれば、ティー系の上品な香りも漂います。 愛のガゼボ ローズガーデンの奥には、数多くのバラに囲まれた大理石のガゼボが。ブライダルファッションデザイナーの桂由美さんより寄贈されたこのガゼボの中には、プロポーズにふさわしい場所「恋人の聖地」として認証されたシンボルである「エデンの鐘」が設置され、挙式の際には2人を祝福するような音色が響きます。バラが咲き乱れる中、恋人と過ごす時間は大切な思い出となることでしょう。バラのシーズン中には「カップル割」で入園できる期間限定イベントも。受付で「愛しあってます」と大きな声で申告すると、お得に入園できるそうです(2017年現在)。ガゼボの前はイベントスペースになっていて、コンサートやトークショウなどのイベントも行われています。 ベルばらのテラス フランス革命の頃のベルサイユ宮殿を舞台にした人気少女漫画『ベルサイユのばら』をモチーフに、メイアン社(仏)が作出した美しいバラ全6種を集めたテラスです。純白のバラ‘オスカル・フランソワ’や、あでやかな大輪花‘王妃アントワネット’など、漫画に登場する人物それぞれのイメージに合わせた姿や香りを持つバラとともに、記念写真を撮れるスポットです。白いテラスに立てば、あなたも‘ベルばら’の気分を味わえるかも。 つるバラの‘羽衣’と‘新雪’が絡むアーチ越しに、涼しげな音を立てる噴水「エデンの泉」を望む景色。その先は、イングリッシュローズが数多く咲く「バラの丘」へと続きます。ローズガーデンのほぼ中央に位置する噴水の周囲にはベンチが置かれ、美しいバラの花と涼やかな水の流れを見ながら一息入れることができます。 ローズガーデンの一角。オールドローズが系統別に植栽されていて、バラの進化の歴史に触れることができるエリアです。白やピンクなどのかぐわしいバラに囲まれ、柔らかい光を浴びて佇むスタチューは、まるで一枚の絵のようです。京成バラ園では、バラのシーズン時には早朝入園ができる日もあるので、朝の透明な光の中で写真を撮影することもできます。 ローズガーデンを抜けた先には、整形式のバラ園とは対照的な自然風庭園が続いています。緩やかに流れる小川と池にはスイレンやハナショウブが、通路の横にはアジサイや四季折々の花木が花をつけ、秋には草木がしっとりとした紅葉に染まります。自然風庭園のエリアには、野性味のある原種バラ約80品種が植栽され、春に咲く素朴なバラの花の表情、秋にはたわわな赤い実など、季節の風情を楽しむことができます。 京成バラ園の歴史は1971年、すでにバラの育種や販売を始めていた京成バラ園芸が、品種ごとに実際の花色や香り、樹形、花つきなどを五感で知ってもらうために開園した見本園までさかのぼります。その後、1999年の大規模な工事を経て、現在楽しめるような本格的な整形式庭園としてリニューアルオープンしました。2015年には、世界バラ会議にて優秀庭園賞を受賞し、世界的にも美しく価値の高いガーデンであることが認められています。バラを中心としたガーデンですが、バラの特徴に合うように宿根草を植栽したエリアもあり、庭づくりの参考として訪れるのもオススメです。 京成バラ園を訪れたら、ぜひ立ち寄りたいのがガーデンセンターです。ガーデンセンターの広い敷地には、京成バラ園芸で扱っているさまざまなブランドの苗がずらりと並びます。バラ以外の植物やガーデニング資材なども豊富に手に入るので、ガーデナーなら楽しめること間違いなし。セール時は、お得に元気なバラ苗を購入する大きなチャンスです。ガーデンセンターのほか、約2,000種類のバラアイテムを取り揃えたローズショップやバラのソフトクリームが楽しめるカフェ、レストランも併設されています。 Information 「京成バラ園」 所在地:千葉県八千代市大和田新田755 ☎047-459-0106 http://www.keiseirose.co.jp/ アクセス:東葉高速鉄道 八千代緑が丘駅から徒歩15分 Open:1月2日〜12月30日(7月・8月、12月~3月15日は水曜定休) 入園料: 通常時(1~4月、9月、12月)大人300円・小・中学生100円 春バラシーズン(5・6月) 大人1,200円・小・中学生200円 夏バラシーズン(7・8月) 大人500円・小・中学生100円 秋バラシーズン(10・11月) 大人1,000円・小・中学生200円 開園時間(入園は閉園30分前まで): 1~3月上旬 10:00~16:00 3月下旬~4月 10:00~17:00 5・6月 9:00~18:00 7~9月 10:00~17:00 10・11月 9:00~17:00 12月 10:00~16:00 Credit 写真&文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。 記事協力:京成バラ園芸 http://www.keiseirose.co.jp/
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大阪府

花の庭巡りならここ!府民に愛される遊園地・大阪「ひらかたパーク」
大阪府民に愛されている遊園地「ひらかたパーク」内には、見応えのあるバラ園が併設されています。1955年に本格的なバラ園として開設され、まだ一般的ではなかった珍しいバラを数々植栽。「東洋一の大バラ園」とうたわれ、国内のバラ園の先駆けとなりました。 2000年には「ローズガーデン」として大幅にリニューアルされ、現在は600品種4,000株のバラが見られます。観覧車やジェットコースターなど遊園地内らしい借景もあいまって、楽しいレジャー気分を満喫できます。 「ひらかたパーク」内の「ローズガーデン」は、4つのエリアから構成されています。品種改良が進み、現在最も多く栽培されているバラを集めた「モダンローズガーデン」、品種改良の進む前からヨーロッパの王侯貴族の間で親しまれていたバラを集めた「オールドローズガーデン」、イングリッシュローズと季節の草花や宿根草を混植した「イングリッシュローズガーデン」、半つる性のバラを中心に野趣あふれる風景が見られる「シュラブローズガーデン」です。 特に「モダンローズガーデン」には、話題になったバラ、日本の皇族や海外の王族の名前がつけられたバラ、さまざまな香りが間近で楽しめるバラなどのエリアがあり、訪れる人の興味を引く植栽が見られます。また、2017年には日本のバラ育種家たちが作出したバラを集めたコーナーが新設されました。近年は、日本人ならではの感性で作出されたバラの人気が高まっており、品種のトレンドがうかがえる植栽の工夫も見どころです。 写真は、バラのトンネルをくぐった先の、愛のキューピッドが立つ「愛の神殿」。「ローズガーデン」内にはフォトジェニックなスポットがいくつも用意されています。 「ローズガーデン」の見頃は5月中旬〜6月上旬と10月中旬〜11月下旬です。特に4月末〜6月上旬には、毎年「ローズフェスティバル」が開催され、バラにまつわるイベントを多数行っています。2017年には、バラが最も美しい早朝に観賞できる「ローズガーデン早朝散策デー」を初開催し、100名限定で開場。多数のバラ愛好家が訪れ、ゆっくりと香りや花姿を楽しんでいました。訪れた人からは「バラの樹高が抑えられているので、きれいな花がよく見える」との声が聞かれました。(2018年以降の早朝散策デーは開催未定のため、お問い合わせを) 遊園地ならではの演出も魅力の一つ。写真左の「ノームトレイン」は、車掌が周辺のアトラクションやローズガーデンについて説明しながら回る汽車(列車)で、1周を約5分で巡ります。写真右の「ファンタジークルーズ」は可愛いボートで水路をゆっくりと回遊。いずれも15歳以上の保護者と同伴の場合、0歳から乗車できます。また、イルミネーションイベント時は、走路や水路などがイルミネーションで輝きます。 写真左のように、メリーゴーラウンドを背景に、遊園地ならではのメルヘンチックな写真が撮れるのも魅力。ローズガーデンでは、アーチやオベリスクを配した立体的な演出が、そこかしこに見られます。オベリスクに仕立てているのは‘羽衣’で、手前のピンクのバラは‘ディオルサン’。右の写真の可憐なバラは‘コンテス ドゥ セギュール’。四季咲きなので年中よく咲いています。 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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栃木県

花の庭巡り、栃木「コピスガーデン」
2013年にオープンした、自然豊かな雑木林の借景が広がる「コピスガーデン」は、那須ICから車で約8分という好立地にあります。6,000坪に及ぶ敷地は、母体のナーセリー「大森プランツ」社長の佐々木清志郎さんが、自らガーデンをデザインして重機を操り、草花を植栽して完成させました。「しあわせな時間へようこそ」をテーマに、植物を通してしあわせな空間を提供しています。しあわせな時間を過ごしてほしいという思いを込めて美しい庭園づくりをし、カフェや雑貨店、苗売り場も併設。見どころ満載で一日過ごしても飽きないと、ガーデナーに大人気のスポットとなっています。 「コピスガーデン」で特に見応えがあるのがバラの季節で、約400種のバラが咲き誇ります。母体の「大森プランツ」が、バラや宿根草を生産・販売するナーセリーであることも魅力の一つ。なぜなら、バラはフランスの「ギヨー」、日本の「禅ローズ」の正規代理店で、その他「デビッド・オースチン・ロージズ」やオールドローズ、一般種なども扱っており、常に最新品種やトレンド品種を見られるからです。旺盛に枝葉を伸ばす品種やコンパクトにまとまる品種、うつむいて咲く品種など、それぞれの特性を知り尽くしているからこそ、ここでは一番映える仕立て方が見られます。育ててみたいバラが、最終的にはどんな樹形で、どんな風に咲くのか、一目瞭然の見本園としての側面ももっているのです。 「コピスガーデン」では、バラ以外にも約100種の宿根草や樹木、約3万球の春咲き球根植物が植えられ、年間を通して約2,000種類の植物が見られます。春はスノードロップ、クロッカス、シラー、スイセンから始まり、宿根草が季節の開花リレーをし、冬はクリスマスローズが咲くなど、一年中見どころ満載です。「大森プランツ」は日本有数の宿根草の生産・販売会社でもあり、毎シーズン庭園の一部をリニューアルして、宿根草の最新トレンドを紹介しています。これはコレクターにとっては所有欲をくすぐられるもので、毎年訪れてチェックしたくなります。まだ発売されていないものがこっそり植栽されることもあるそうで、「これは何という品種?」など、発見の喜びもありそうです。 「コピスガーデン」を散策して、一目惚れした植物や、育ててみたい植物が見つかったら、苗売り場に直行しましょう。品種は多岐にわたり、マニアックな植物も見つかります。熱心なガーデナーなら、ここでじっくり吟味してみるのも一興です。 「コピスガーデン」を巡っておなかがすいたら、カフェに寄ってみませんか。一番人気のメニューはウェスタンスタイル・パンケーキ。メニューはほかにハンバーグやスパゲティー、カレーなどもあります。スイーツも充実しており、バナナのパンケーキが定番。産地から直接仕入れたモモ、ブドウ、ブルーべリー、キウイ、レモンなど、旬のフルーツを使ったホームメイドタルトもオススメです。 「コピスガーデン」では、おしゃれなガーデニング用品や雑貨類の販売も充実しています。お気に入りのガーデングッズやツールが見つかって、嬉しくなること請け合いです。花のない時期も楽しめるように、オレンジやラベンダー、ローズマリーといったエッセンシャルオイルやディフューザーなど、アロマ製品の提案もしています。 「コピスガーデン」では、予約制でワークショップも行っています。最近の人気は、ガラスの器にドライフラワーをアレンジする「テラリウム」づくりと、カラーサンドを使った「多肉植物の寄せ植え」。少人数制で40〜50分かけて制作します。レッスン料はテラリウムが2,000円(材料費込み)、寄せ植えは選ぶ器や多肉植物によって異なりますが、2,000〜3,000円が平均的な料金です。ほかに2〜3時間かけて行うトールペイント、カリグラフィー、アートフラワー、リースづくりなども。ワークショップでは一緒になった参加者同士、いつも和気あいあいとした雰囲気で制作しています。 それから忘れてはいけない、「コピスガーデン」のマスコット、アヒルの「ギンジ」と「キク」と「アヤメ」。放し飼いで庭園内を自由に散歩する姿に癒やされます。常連さんは、「今日はどこに?」と会うのを楽しみにしているとか。近年は行動範囲を広げているため、見つけるのが難しくなっているそうで、出会えたらラッキーです! ほかにも、ライブやクリスマスローズの展示会「春コレ2018」(2018年2月上旬予定)など、さまざまなイベントが開催され、年間を通してリピーターが多いのも「コピスガーデン」の特徴です。一日中いても飽きないガーデンへ、ぜひお出かけください! Information 「CoppiceGARDEN(コピスガーデン)」 所在地:栃木県那須郡那須町大字高久甲4453-27 電話番号:0120-377-228 http://omoricoppice.blog108.fc2.com/ http://www.coppicegarden.com/(通販) Facebook:https://www.facebook.com/coppicegarden/ アクセス: 那須I.C.より車で8分、JR那須塩原駅より車で20分 JR黒磯駅より車で15分 Open: 9:00-18:00(冬期間時間短縮) 入園料: 540円(春バラ開花の時期のみ) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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イギリス

英国の名園巡り メッセル家の愛した四季の庭「ナイマンズ」
ロンドン郊外にあるナイマンズは、都会に暮らす人々が広々とした緑の空間を楽しめる場として、ナショナル・トラストの中でも人気の高い庭です。メッセル家が有した13万㎡の庭園は、優美なローズガーデンから、ロックガーデンや樹木園といった野趣のある庭まで、さまざまな要素が美しく構成され、また、園内にはプラントハンターによって世界中から集められた、珍しい植物がたくさん植わっています。 春を告げるモクレンやスイセン、夏の鮮やかな一年草とバラ、燃えるような紅葉を見せる木々、そして、ウィンター・ウォークの冬咲きの植物。豊かな森に囲まれた庭には、四季折々の楽しみがあります。 サマーボーダーの中央に据えられた、大理石の噴水と複雑な形に刈り込まれたトピアリー。カラフルな植栽を引き締める、美しいセンターピースです。 レオナルドの妻、モードが愛したローズガーデン。ピンクと白のつるバラやシュラブローズが見事に咲き誇ります。 ナイマンズの庭は、株式仲買人のルードヴィッヒ・メッセルとその家族により、1890年から半世紀かけてつくられました。ドイツから英国に亡命したルードヴィッヒは、ロンドンの金融市場で大成功を収めると、6人の子どもたちをのびのびと育てられる理想の田舎家を持とうと、ナイマンズの地所を買い求めます。 もともと美術に造詣が深かったルードヴィッヒは、新たな趣味として庭づくりに取り組みます。知識豊富な庭師のジェイムズ・コーマーの力を借りながら、彼は美的センスを発揮して、ロックガーデンやヒースの庭、針葉樹園などをつくり、園芸界の注目を集めます。彼はまた、世界の珍しい樹木や植物を集めたり、それらの耐寒性を実験したりと、新しいものに取り組むチャレンジ精神も持っていました。 石造りの鳩小屋を背にアリウムが咲く、ウォールガーデンの一角。 古風なガーデンゲートに切り取られた、のびやかな花景色。 1915年、ルードヴィッヒが亡くなると、長男のレオナルドが地所を受け継ぎます。彼は父のような芸術家気質ではなかったものの、植物の蒐集に大いなる情熱を注ぎ、特に、モクレン、ツバキ、ロドデンドロンのコレクションを充実させました。兄弟のように親しく育った、庭師のジェイムズ・コーマーとともに、モクレンやツバキなどの新しい品種を作出することにも熱心で、家族やナイマンズの名を冠した30以上の品種を生み出しています。 ナイマンズで育った、庭師ジェイムズの息子、ハロルド・コーマーは植物学者となり、1920年代にチリやタスマニアに植物採集の旅に向かいました。彼が持ち帰った南米の植物は、いまも英国有数のコレクションとして、ウォールガーデン内で大切に育てられています。 ロックガーデンからの屋敷と廃墟の眺め。 消失を免れた屋敷の内部は、20世紀後半にレオナルドの娘、アンが暮らした頃のままに残っています。アンは、母モードの手による美しいしつらえを大切にしました。 レオナルドの妻モードは、芸術家肌の創造性豊かな人物で、古風でロマンチックなものが大好きでした。彼女はいささか平凡だった屋敷を、美しい中世の邸宅風に建て直させ、卓越した審美眼で室内も美しく設えました。しかし、残念ながら、屋敷の半分は、1947年に起きた火事で失われてしまいます。夫妻は別宅へと移りますが、皮肉なことに、廃墟のようになった外壁は、まるでおとぎ話に出てくるような美しい背景となって、ナイマンズの情緒ある庭景色に不可欠なものとなったのでした。 1953年、レオナルドの死後、ナイマンズはナショナル・トラストに遺贈されます。娘のアンは、社交界の華として注目され貴族と結婚して伯爵夫人となった人物ですが、未亡人になると幼少期を過ごしたナイマンズに戻り、愛しい庭で余生を送りました。母譲りの美的センスを持つアンは、庭の花々を自ら摘んで、部屋の雰囲気に合わせて生けるのを楽しんだといいます。 大きな花を咲かせて散らすモクレン。園内にはさまざまなモクレンがあります。 咲き広がる黄色のラッパズイセンは、明るい春の象徴です。 ロンドンからナイマンズへは、車でブライトン方面に向かって約1時間。電車の場合は、ロンドン・ヴィクトリア駅からクローリー駅(Crawley)、またはヘイワーズ・ヒース駅(Haywards Heath)に向かい約45分、路線バスに乗り換えて約20分。 庭園は12月24・25日を除き、毎日10:00から17:00(もしくは日没)まで開園します。屋敷は保全作業のため、11月から2月の冬場は閉館されます。 ナイマンズの庭園の外には素晴らしい森が広がっていて、ウォーキングや野生動物の観察を楽しむことができます。1987年、イングランド南東部を大嵐が襲い、ナイマンズの庭園や森では樹齢数百年の大木を含め、500本を超える木々が失われました。30年が経った今、庭や森は美しく再建されていますが、森の奥では今も倒木を見ることができます。 取材協力 英国ナショナル・トラスト(英語) https://www.nationaltrust.org.uk/ ナショナル・トラスト(日本語)http://www.ntejc.jp/ Information 〈The National Trust〉 Nymans ナイマンズ 住所:Handcross, near Haywards Heath, West Sussex, RH17 6EB 電話:+44-(0)1444-405250 https://www.nationaltrust.org.uk/nymans 併せて読みたい ・宿根草植栽に織り交ぜて楽しみたい秋植え球根 6選【乙庭Styleの植物4】 ・イングリッシュガーデン旅案内【英国】ジーキル女史のデザインがよみがえった「マナーハウス、アプトン・グレイ村」 ・カメラマンが訪ねた感動の花の庭。イギリス以上にイギリスを感じる庭 山梨・神谷邸 Credit 文/萩尾 昌美 (Masami Hagio) ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。5年間のイギリス滞在中に、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するようになる。神奈川生まれ、早稲田大学第一文学部・英文学専修卒。
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イギリス

イングリッシュガーデン旅案内【英国】ヒドコート
ヒドコートの庭は、20世紀前半に、園芸家のローレンス・ジョンストンによってつくられました。ジョンストンはアメリカの裕福な資産家に生まれ、フランスや英ケンブリッジ大学で教育を受けた人物。その後、軍役で赴いた南アフリカの植物に強く惹かれ、園芸に興味を持つようになったと言われます。ジョンストンは30代半ばにヒドコートに移り住むと、独学によって庭づくりを始めます。そして、ガーデナー達と力を合わせて、屋敷の周りに広がる農地を次々と、独創的な美しい庭に変えていきました。20世紀、そして、現代の庭づくりに大きな影響を与えたと言われるこの庭は、現在は英国ナショナル・トラストによって管理されています。 コッツウォルド地方を巡るガーデンツアーでは、ヒドコートと、ここから歩いて10分程の距離にあるキフツゲイトの2つの庭を、よくセットにして訪れます。ヒドコートの主人ジョンストンと、キフツゲイトの女主人ヘザー・ミュアは、実際に花友だちだったそうで、一世紀近くが経った今も2つの庭が美しく保たれているのは、嬉しいことです。 さて、今回の訪問は、7月の中旬。バラが咲き始め、色とりどりの宿根草も丈高く伸び始める季節でした。ヒドコートの庭には、庭づくりのヒントがたくさん。細かいところにも注目しながら、庭を巡っていきましょう。 エントランスの建物を抜けると、緑の生け垣で仕切られたメイプルガーデンとホワイトガーデンから庭散策がスタートします。 緑の生け垣がつくる背景に、白のカンパニュラや優しい色のバラが引き立つホワイトガーデン。庭はきっちりと刈り込まれた生け垣によって、部屋のように仕切られています。生け垣や構造物を使って庭園を部屋のような小さめの空間に仕切り、それらの小さな「部屋」をつなげていくというスタイルは、ここヒドコートで生み出されました。 ホワイトガーデンの奥へ進むと、次にあるのはオールドガーデン。蜂蜜色のコッツウォルドストーンで建てられた屋敷を背景に、愛らしいピンクのバラや花穂を伸ばすジギタリス、紫花のゲラニウムが元気に茂っています。 特に支柱もなくナチュラルに茂って咲くパステルカラーの花々の競演に、目を奪われます。柔らかな日差しを受けて、花色がとても美しく見えます。写真にも花色がきれいに再現され、カメラの腕が上がったようで嬉しくなります。庭巡りには絶好のお天気です。 フーシャガーデンとベイジングプールガーデンをつなぐ階段は、鳥のトピアリーで飾られています。石造りの階段の手すりにはつる性植物が這わせてあるため、石材が庭になじんで見えます。 この階段を降りると、目の前に大きく丸い池が現れて、鏡のように周囲の緑を映し出します。 左は、複数の花色が混ざり合って美しい調和を見せる、群植のコーナー。右は対照的に、黄色いユリという単一の植物が、背景の緑の中に美しく引き立つ例です。 歩を進めるたびに出合う花々の美しい姿に、思わずため息が出ます。 日本では、大型のポピーのほとんどは栽培禁止になっているので、この美しい大きな花を愛でることができるのは、イギリスならではの貴重な機会です。ポピーに限らず、日本では流通していない草花もたくさん植えてあって、初めて見る植物を前に、これはいったい何の仲間だろうと、新たな興味が広がります。 小径や階段といった構造物のデザインも、英国ガーデンを観賞するポイントです。シンプルな緑の生け垣や植え込みなどで、周囲をすっきりとまとめている場所では、その分、構造物のデザインが凝っています。小径の丸いペイビングや、小口積みの階段の石など、オリジナリティがあって、庭づくりの参考になりますね。 ヒドコートの中でも、特に有名なレッドボーダー。サルビア、ダリア、バーベナといった赤い花々や、銅葉の植物を集めたこの庭は、盛夏に見頃を迎えます。7月はまだメンテナンス中で、残念ながら入ることはできませんでした。入り口付近には柵が設けられ、来園客の侵入を防ぐスタッフの姿もあります。パーフェクトな植栽を目指す、ガーデナーたちの強い想いが感じられました 高山植物が集められた、アルパイン・テラス。石垣で縁取られたひな壇状の花壇に、繊細な植物の数々がコレクションされています。このようなひな壇状の花壇だと、小型の植物が大きな植物に埋もれることがなく、また、近づいてその繊細な姿をよく鑑賞することもできます。用土には砂利が混ざっているようで、水はけがよさそうです。 ジョンストンが生きた時代、英国では、富裕層の支援を受けたプラントハンターが世界中に出向いて、珍しい植物を集めていました。ジョンストン自身も植物の蒐集に熱心で、資金を提供するほか、自らもスイス・アルプスや中国などに植物採集の旅に出かけています。彼の庭づくりの資料はほとんど残されていないのですが、この庭には、彼のその手で採集された高山植物が、そのまま残されているのかもしれません。 木々がつくる木陰の中を抜ける小径。足元には、ピンクやブルーのゲラニウムやアストランティアがふわふわと咲いています。道幅は狭いものの、草丈が低い花壇なので、ゆったり歩けます。この先はピラーガーデンです。 背の高い、いくつもの柱状のトピアリーがリズミカルな雰囲気をつくっているピラーガーデン。そのトピアリーの間を、フクシアやピオニーなどが明るい花色で彩ります。整然としたトピアリーと、ナチュラルで軽やかな植栽がよいコントラストを見せる、ジョンストンの独創性が感じられる庭です。 人がやっとすれ違うくらいの細い小径と、対照的な広々とした空間が交互に現れる、ヒドコートの庭。それぞれの空間で、植物の持つ色合いや形、質感が異なっていて、飽きることがありません。夢中になって歩いていると、今どこにいるのか、どれだけ時間が経ったかも忘れてしまいます。 キッチンガーデンにある小屋の中。ドライフラワーが天井から下がり、摘んだばかりの花々が活けられていました。黒板には、今年のカッティングガーデンの草花リストが書かれています。このような広い庭では、雨や太陽を避けられる小屋があると、作業がはかどりそうです。 キッチンガーデンでは、枝や竹を組んださまざまなタイプの支柱があり、害獣からの防除の工夫も見られました。 ヒドコートは、本当に広いガーデンです。すべてのコーナーをじっくり見るには1日かけることをオススメします。今回、1時間半と限られた時間での見学でしたが、一番印象に残ったエリアは、ハイドランジア・コーナーの奥でした。腰丈ほどまで葉を伸ばすシダの間に、アストランティアが混ざり咲くという、初めて目にする光景。木々の間を抜ける風でふわふわと葉が揺れ、鳥の声がしたその瞬間、心がほどけました。 ヒドコートは、ガーデンショップも充実。ナショナル・トラストのマークが入ったガーデングッズをはじめ、書籍やお菓子、ウェアなど、自分のため、花友だちのためのお買い物が楽しめます。 併せて読みたい ・イングリッシュガーデン旅案内【英国】ジーキル女史のデザインがよみがえった「マナーハウス、アプトン・グレイ村」 ・イングリッシュガーデン旅案内【英国】21世紀を代表するガーデンデザイン「ブロートン・グランジ」 ・イングリッシュガーデン旅案内【英国】王侯気分でアフタヌーンティーを! ハートウェル・ハウス
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フランス

花好きさんの旅案内【フランス】モネの庭
モネの庭は、池を中心としたエリア〈水の庭園〉と、モネが晩年までを過ごした家の前に広がる、〈クロ・ノルマン〉と呼ばれる庭で構成されています。さあ、タイプが異なる2つの庭を散策してみましょう。 入園すると、まず右手の地下道をくぐって、水の庭園に向かいました。竹が生い茂る、少し狭い通路を抜けると、絵にも描かれた、太鼓橋のような日本風の橋と、大きなしだれ柳が水面に葉を垂らす姿が見えます。訪れたのは7月の中旬。朝方は小雨が降っていましたが、ときどき晴れ間がのぞく穏やかな天気に変わったことで、池の水面には空と雲が映り、植物もみずみずしく見えました。 モネがジヴェルニーの美しい田園風景に一目ぼれし、移り住んだのは、1883年、43歳の時でした。モネは画家ならではの色彩センスで、田舎家を愛すべき我が家へと変身させ、また、家族総出で前庭をつくり始めました。そして、その10年後には、道の向こうの土地を買い増し、近くを流れるエプト川から水を引いて、この水の庭園をつくり出したのでした。 池の周りをぐるりと巡る散策路を行くと、進むにつれ景色が変わっていきます。柳の葉が池を隠すかと思えば、次は開けた場所に出ます。足元付近には、ホタルブクロやアスチルベ、ニコチアナなど、小さくて鮮やかな赤、白、ピンクの素朴な植物が、緑の中で一際引き立っていました。 池には、睡蓮を手入れするために船に乗ったガーデナーの姿がありました。モネの作品に、たくさん描かれてきた睡蓮。この角度からは白花のほとんどが閉じていましたが、いっせいに花が開く頃の素晴らしさが容易に想像できました。 モネははじめ、ただ楽しみのために睡蓮を植え、手入れをしていました。しかし、ある日突然、啓示を受けたかのように睡蓮の池が持つ魅力に気づき、パレットを手にしたのだそうです。それ以降、モネはほぼ睡蓮だけを描き続けました。毎朝、池のほとりに数時間立って、池の上に広がる空や、流れる雲を眺めていたといいます。 モネが晩年に制作し、フランス国家に遺贈した『睡蓮』の作品は、彼の亡くなった翌年となる1927年に、友人で政治家のジョルジュ・クレマンソーの尽力によって、パリ、オランジュリー美術館で公開されました。当初、世間の反応は控えめなものでしたが、第二次世界大戦後に、パリにいたアメリカ人画家たちにより再評価されたことで、『睡蓮』は美術史に残る傑作となったのでした。 水の庭園では、モミジやツツジ、竹など、日本の雰囲気を醸し出す植物がたくさん育ち、竹を組んだ柵もありました。大木の幹を伝い上るように誘引されたバラも、迫力のある仕立てです。バラのガゼボの近くに、モネの自画像が撮られたのは、もしやここ? と思われる緑のベンチを発見! モネと同じポーズで座り、記念写真を撮りました。 水の庭園を一周した後は、モネの住まいの前に広がる庭、クロ・ノルマンに向かいます。園内の散策路は、どこもカラフルな花でいっぱいでした。 ジヴェルニーを心から愛したモネは、1926年に86歳で亡くなるまでの43年間、ここで庭づくりと創作を続けました。モネの亡き後、義理の娘で画家のブランシュが家と庭を維持しますが、彼女が亡くなると住む人もいなくなり、地所は荒れるがままになっていきました。 ジヴェルニーとモネの遺した数々の作品は、次男ミシェルによりフランス芸術アカデミーに遺贈されます。ジヴェルニーに関心が集まり、家と庭の修復作業が始まったのは、1977年のこと。その時、家は荒れ、クロ・ノルマンは雑草だらけの草地となり、水の庭園も泥の川と化して、橋も朽ち果てていました。また、モネが世話した当時の植物は何も残っておらず、庭の修復作業は難航を極めました。しかし、修復チームは彼が描いた何枚もの庭の絵や、アーカイブに残されていた植物の種の注文書などを読み解きながら、2つの庭を構築し、その3年後に一般公開にこぎ着けました。 現在の庭は、モネの庭の完全なる再現ではありません。しかし、資料の綿密な考証や科学的アプローチによって、モネの世界観は十分に再現されています。 クロ・ノルマンの中央には、家の正面へと抜ける、大きなアーチのかかった小径があります。小径は残念ながら入ることはできませんが、地際にナスタチウムが茂り、頭上にちらほら咲き始めたバラが絡む様子を見ることができます。夏の終わりになると、ここはナスタチウムの鮮やかなオレンジ色の花に溢れ、バラやコスモス、ダリアなどの、明るい花色と混じり合います。 もし、小径がたくさんの来訪者で混雑していたら、この景色をじっくり眺めるのを諦めてしまったかもしれませんね。 アーチのかかる中央の小径に並行する小径を歩きながら、立体的に花が咲く、個性的な庭デザインを楽しみました。ダリアやポピー、クレマチス、オダマキ……。黄色のエリア、紫花のエリア、ピンクのエリア、そして、花色が混じり合うエリアなど、モネの色彩がここにあふれていると感じました。 モネは、まるで色調の異なる絵を並べるように、整然と並ぶ四角い花壇を、花で埋めていきました。 モネの庭は、初期は簡素なものでしたが、次第に複雑な構成を持つようになります。モネは数カ月にわたって庭全体に色が満ちるように植栽を計画し、より複雑な色の調和を求めました。そのために、庭師頭を雇って、自らも園芸の知識を深めていきました。 フランスの作家、マルセル・プルーストは、ジヴェルニーの庭を考察して、「花よりもさらに色調や色を主体とした」「いわば、花の庭というよりも色の庭」と評しています。この庭は、モネの絵画に多く描かれていますが、単なる絵画の題材ではなく、彼の芸術作品の一つである。そのような解釈の下に、ジヴェルニーの庭は日々手入れされています。 さて、家の近くまでやってくると、建物の外壁の色に呼応した、ピンク色のスタンダード仕立てのバラが、平行して咲いています。株元には、赤とピンクのゼラニウムが鮮やかです。 家の中も見学できるので、行ってみましょう。 建物の中からも、モネの気分で庭を眺めてみましょう。部屋ごとに窓が必ずありますが、部屋の雰囲気に合わせたカーテンの違いにもご注目ください。美しい窓辺のつくり方の参考になります。 1階には壁一面にモネの作品(複製)が飾られている、彼の最初のアトリエがあります。この部屋は後に、友人や画商に絵を見せるためのサロンとして使われました。大きな窓から柔らかな光が差し込み、天井が高い素敵な空間です。部屋のレイアウトはモネの暮らしていた当時と同じで、花模様の布張りのソファやカウチも当時のままに再現されています。壁にかかる絵はどれも、彼が手放そうとしなかったもの。それらは、モネにとって大切な思い出でした。 青と白のタイルが貼られた近代的なキッチンのほか、友人や印象派の若手画家の手による作品が飾られたモネの寝室、鮮やかな黄色で統一されたダイニングなど、どの部屋も見学することができます。部屋ごとに異なるテーマカラーや、インテリアの変化など、見どころがいっぱいです。モネの優れた色彩感覚に、改めて驚きます。 また、1階のいたるところに飾られている浮世絵(複製)もお見逃しなく。日本の美術を愛したモネは、歌麿や北斎、広重など、浮世絵の巨匠による231点もの版画コレクションを持っていました。 庭では、ガーデナーが手入れする様子も見られました。世界中からたくさんの見学者が訪れるモネの庭。維持管理も大切な仕事です。多くの人にとって、人生で一度きりのジヴェルニー来園を印象深いものにしようと、ガーデナーは常にベストの状態を目指しています。 モネの庭を実際に訪れてから、また改めて作品を見たいと思いました。庭に接するようになった自分が、モネの作品にどんなことを思うのか。新しい楽しみができました。 出口にある建物は、ショップになっていて、傘やTシャツ、お菓子などが並んでいます。モネの作品集や絵葉書はもちろん、絵画をイメージした草花の種のセットなど、オリジナルグッズもありました。 じつは、この建物は、『睡蓮』のアトリエと呼ばれる、モネが『睡蓮』を描くためにつくった3番目のアトリエです。天窓から降り注ぐ柔らかな光の中で、キャンバスに向かうモネの姿を想像してみてくださいね。 参考文献: 『ジヴェルニーのモネ』アドリアン・ゲッツ著 Gourcuff Grandinigo出版 併せて読みたい 『松本路子の庭をめぐる物語 フランス・パリの隠れ家「パレ・ロワイヤル」』 『最も歴史あるバラのナーセリー「フランス・ギヨー社 GUILLOT」』 『世界のガーデンを探る旅6 フランス「ヴェルサイユ宮殿」前編』
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京都府

【二十四節気】寒露は紅葉シーズン。一度は行きたい紅葉名所
二十四節気 寒露 10月8日頃 紅葉シーズンと球根 大自然の中の三段紅葉 朝夕の冷え込みが厳しくなってくると始まるのが、紅葉シーズン。北アルプス奥穂高岳の直下、3,000m級の山々に囲まれた涸沢(からさわ)カールは日本一の紅葉の名所として知られています。9月中旬から木々が色づき始め、下旬〜10月上旬にかけては赤、黄色、黄緑色の見事なパノラマが広がります。紅葉の「赤」と山の岩肌を覆う雪の「白」、空の「青」とのコンビネーションは「三段紅葉」と呼ばれ、この絶景を目指して全国から登山者や写真愛好家が訪れます。 三段紅葉は北海道でも。大雪山系・旭岳は日本一早い紅葉と全国初の冠雪場所として知られる山です。9月には紅葉が見頃を迎え、約1カ月かけて山を降りるようにさまざまな木々が色づき、雪が降り始めます。 平地での紅葉を楽しむなら11月上旬から。名所揃いの京都では街中が春の桜の季節と同じくらいにぎわい、ホテルも旅館もほぼ満室となります。京都の紅葉見物を計画の際は、どうぞお早めに。 英国の紅葉の名所 ヨーロッパでは日本のように燃え上がるような紅葉が見られないとよくいわれますが、英国コッツウォルズ地方には日本にも勝るとも劣らないドラマチックな紅葉が見られる公園があります。ウェストンバート国立森林公園には、600エーカーという広大な敷地に、3,000種、1万6000本の樹木が植えられています。この公園をつくった大富豪ロバート・ホルフォードは、単なる見本園ではなくピクチャレスクガーデンという絵画の概念を応用した造園手法によって、芸術性の高い公園をつくることを信条としました。第二次世界大戦で荒廃したものの、現在は英国政府の機関である森林保護委員会によって復興、管理され、氏の信条通り公園は四季を通じて生きた絵画のごとく美しい風景で人々を楽しませています。 京都の紅葉名所案内 宝筐院(ほうきょういん)京都嵯峨野にある寺院。モミジやドウダンツツジが多数。右京区嵯峨釈迦堂門前南中院町9 南禅寺(なんぜんじ)水面に映る色模様も美しい天授庵の池の紅葉。左京区南禅寺福地町86 禅林寺永観堂(ぜんりんじえいかんどう)853年(仁寿3)空海の弟子真紹が開いた道場。ライトアップが幻想的。左京区永観堂町48 光明寺(こうみょうじ)宗祖円光大師法然上人の立教開宗の地。参道の紅葉が趣深い。長岡京市粟生西条ノ内26-1 球根の植えどきは紅葉が目安 秋は春咲き球根の植えどきです。チューリップやスイセン、ムスカリ、ヒヤシンスなど春に咲く球根は冬の寒さにあうことで開花するリズムを持っているため、秋に植え、冬の寒さを経験させると、春に開花を迎えます。これらの春咲き球根は10〜15℃ほどの温度で根を伸ばしますが、20℃以上ではうまく育つことができません。球根が出回り始めるのは9〜10月ですが、近年の10月の平均気温は約19℃。球根を植えるにはまだ少し早いようです。ですから、球根を買ってきてすぐ植えると、温度が適さず生育不良の原因となることがあります。そこで役に立つのが紅葉。周囲の木々が紅葉を始める頃が、球根を植えるのに最適な地温となる目安です。紅葉の見頃は、球根の植えどきと覚えておきましょう。
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イギリス

英国の名園巡り、オールドローズの聖地「モティスフォント」
日本で愛される桜のように、古くから英国の人々に愛されているバラ。英国にはバラの名園がたくさんありますが、愛好家たちが初夏にこぞって訪れるのが、モティスフォントのウォールド・ローズガーデンです。 ロンドンの南西、ハンプシャー州にあるモティスフォントは、13世紀に修道院として始まり、18世紀には大邸宅が建てられて、芸術家の集う場として賑わいました。広大な敷地の中には緑の森や牧草地が広がり、小川も流れます。その美しい田園風景の中に、この魅惑のバラ園はあります。 6月の花の盛り、四方をレンガ塀に囲まれたローズガーデンの門をくぐると、そこには500種を超えるバラが咲き揃う、夢の世界が待っています。5枚の花びらをひらひらさせる可憐な一重のバラに、幾重もの花弁を持つ優美なロゼット咲きのバラ、それから、小ぶりな花でアーチを覆い尽くすつるバラ。園内にはさまざまな色と形のバラが、歌うように咲き、甘く香ります。 バラ好きにとってこの庭が特別なのは、一般にオールドローズと呼ばれる、古い品種のバラの一大コレクションがあるからです。いまやナショナル・コレクションにも認定されるそれらのバラを集めたのは、高名な園芸家でバラ栽培家のグラハム・トーマス(1909-2003)。彼は、モダンローズの人気の陰で消えようとしていた古風なバラたちに魅せられ、同好の士を訪ねて精力的に苗を集めていましたが、1970年代にナショナル・トラストのガーデン・アドバイザーを務めたことから、それらの安住の地となるこの庭をつくる機会に恵まれました。救われたバラの中には、絶滅の危機に瀕しているものもあります。オールドローズの多くは1年に1度しか咲きませんが、トーマスが愛したその優雅な花姿は、今も人々を魅了し続けています。 トーマスは庭を設計する際、バラはバラだけでなく、宿根草と合わせることで、美しさがより引き立つと考えました。まず背景となるのは、常緑の生け垣やトピアリー、そして、芝生がつくる端正な緑。そこに、バラの花色に合わせて、青や紫、ピンク、白の花を咲かせる宿根草が寄り添います。カンパニュラ、ゲラニウム、フロックス、ピオニー、ナデシコ、ネペタ、ジギタリス、クレマチス、アガパンサス。これらの宿根草は、バラのない時期にも庭を美しく保ってくれます。 園内には、現代の偉大なバラ育種家、デビッド・オースチンによって作出された、豊かな色合いの黄色いイングリッシュローズ‘グラハム・トーマス’も咲いています。トーマスは生前、オースチンと親交があり、彼のナーセリーをよく訪れてバラ談義を交わしました。このバラは、トーマス自身が気に入って名付けたといわれます。 モティスフォントへはロンドンから車で2時間ほど。庭園の開園時間は10~17時ですが、バラの見頃となる6月第2~4週の木~土は20時まで開園。バラの放つ甘い香りに満ちた、夕暮れのバラ園を体験することができます。 モティスフォントは一年を通して楽しめる場所で、ウィンターガーデンは、スノードロップ、クリスマスローズやシクラメン、ラッパズイセンなど、早春から花が溢れています。また、英国でも珍しいプラタナスやマロニエの巨木が、秋にはダイナミックな紅葉を見せます。広い芝生でピクニックをしたり、小川沿いを散歩したりという、田園ならではの楽しみ方も。無料のガイドウォークも充実しているので、本場英国のウォーキングにチャレンジするのもよいでしょう。 Text by Masami Hagio Information 〈The National Trust〉Mottisfont モティスフォント 住所:Mottisfont Lane, Mottisfont, Nr Romsey, Hampshire SO51 0LP 電話:+44 (0)1794 340757 https://www.nationaltrust.org.uk/mottisfont
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北海道

上野ファームの四季【花巡り・ガーデン案内 〜北海道〜】
ダイナミック! 北海道ガーデン 北海道・旭川にある上野ファームは、約3,000坪の敷地に10のエリアが広がる開放感に満ちたガーデン。上野悦子さん、砂由紀さんの母娘で18年つくり続けてきた伸びやかなガーデンは、冷涼な北海道の気候が育む花々の冴えた色彩も魅力で、全国から多くの人が訪れます。2016年には、とんがり屋根がトレードマークのナチュラルガーデン「ノームの庭」がオープンしました。そんな上野ファームの美しい一年の庭ストーリーをご案内します。 雪解けは4月 長く厳しい北海道の冬。凍り付くような寒さが緩み、すべてを覆っていた白い雪から茶色の地面がのぞくようになる雪解けは、長く待ち望んでいた春の先触れです。植物たちは雪の下でじっと寒さに耐えながら、次の冬までの短い間、存分に美しく花開くためのエネルギーを蓄えてきました。さあ、上野ファームの一年の始まりです。 4月下旬に幕が上がる球根花の競演 北海道にようやく訪れた本格的な春。その短い季節を謳歌するかのごとく、凝縮されたエネルギーに満ちた景色がガーデンのそこかしこで繰り広げられます。春のガーデンをいち早く彩る球根花は、スイセンやヒヤシンス、チューリップなど。花壇はいつの間にか、早春の光を浴びて宝石のように輝く愛らしい花々に埋め尽くされていました。 6月からは主役のバラが登場 春と夏がほとんど同時に訪れる北海道。春と初夏の花々が一堂に会してつくり上げるのは、北海道ガーデン限定の光景です。数ある花の中でもひときわ艶やかで、ガーデンの印象をガラリと変える季節の主役花が、バラ。イギリスとほぼ同緯度で、冷涼な気候の北海道はバラがひときわ美しく育つ地。濃く澄んだ花色と豊かな香りを持つバラたちが、これから7月まで上野ファームを彩ります。 次に夏から冬までをご紹介します。 ぐんぐん伸びる6月の草花 一年の中でも最も植物が成長する時期になりました。バーバスカムやリグラリア、エゾクガイソウ、ホリホックなど、空に向かってまっすぐ伸びる花々がガーデンに縦のリズムをつくります。この季節になると、同じ場所でも、芽吹きの季節とは全く違った景色が見られるように。大きく葉を茂らせたホスタなどの植物が地を覆い、緑豊かな爽やかな景色が見られます。 7月 花盛りのガーデン 7月上旬頃には、数えきれないほどの花々が、広いガーデンのあちらこちらで伸びやかに花開きます。低く咲くものから、背丈を越すほどのボリュームある宿根草の数々に圧倒されてしまいます。とんがり屋根が目印の「ノームの庭」は、2016年にグランドオープンしたばかり。毎年進化を続けるガーデンを楽しみに、多くの人々が上野ファームを訪れて花々の美しさを堪能しています。 深みを増す秋色のガーデン にぎやかだった北海道の短い夏が終わり、日増しに空気が冷たさを増す秋。夏の花に変わり、落ち着いた風情の秋の花々が咲き始める中、植物は静かに次の世代に命をつなぐ準備にかかります。ぷっくりと膨らみ、色づき始める草木の実は、花数が少なくなる秋の庭でひときわ愛らしい輝きを放ちます。 冬の上野ファーム 季節は巡り、開園期間を終えた上野ファームでは、宿根草の刈り込みや落ち葉の掃除、翌年のための新しい植え込み、そしてバラや草木の冬越しの準備に、上野さん母娘とスタッフ総出で急ピッチの作業が進みます。やがて空から雪が舞いはじめ、あれほどカラフルな花々で満たされていたガーデンは、一面白銀の世界に閉ざされました。時に2mを超す厚い積雪の下に隠された土の中では、植物たちが翌年の芽吹きの時を静かに待っています。 Information 上野ファーム 住所 北海道旭川市永山町16丁目186 Tel 0166-47-8741 URL http://www.uenofarm.net ガーデン開園期間 4月中旬~10月中旬まで(2017年は4/22~10/15) 10:00~17:00 入場料 大人800円 小学生以下は無料 団体割引 15名以上での来園で、大人一人700円 併せて読みたい 上野ファームの庭便り「バラも宿根草も! 思いっきり楽しむ夏の庭」 連休の花庭お出かけ情報! 日本全国、花の旅にオススメの観光ガーデン保存版【北海道・東北・関東】 カメラマンが訪ねた感動の花の庭。北海道 上野ファーム
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群馬県

花旅案内・ブルーベリー摘みができる果樹園の中の可愛いカフェ
緑の森と青空を背景に建つ、煙突屋根の可愛らしい一軒家カフェ「ティア・ツリー オーチャード&カフェ」。周囲をリンゴやブルーベリーの果樹園に囲まれて、なんだか赤毛のアンの世界に入り込んだよう。建物の前には丹精されたフラワーガーデンが広がり、花を眺めながら店内へ。7月からは周囲に広がるブルーベリー畑で摘み取り体験ができるので、腰を落ち着ける前に、まずは摘み取り専用ボックスを購入して、畑へGO! 熟したブルーベリーを探して、木から木へ。紫色が濃くて、白っぽい粉をまとった粒を選びます。この白い粉は‘ブルーム’といい、果実の水分が蒸発するのを防ぐために自然に分泌されているものです。熟した新鮮な果実の目安になるので、よく観察しながら摘みます。ブルーベリーはお日様をたっぷり浴びて育つため、畑には陽を遮るものがないので帽子は必携ですね。 「1粒ずつじゃなく、10粒くらい一緒に食べてみてください」と言うのは、オーナーで料理を担当している星野綾さん。言われた通りにしてみると、濃厚な甘みとともに野趣溢れる香りが口いっぱいに広がり、「ブルーベリーってこんなに美味しかったっけ?」という新鮮&感動体験。ティア・ツリーの大粒で甘いフレッシュ・ブルーベリーは贈答用としても人気です。500g×2/3,000円、500g×4/5,000円(送料込み)。受け付けは8月いっぱいまで。旬の期間の短いブルーベリーは冷凍が可能で、むしろ冷凍して料理に使ったほうが、果肉がしっかり残って美味しいのだそうです。 カフェは果樹園の高台にあり、どの席からも村の美しい田園風景が眺められます。ブルーベリー畑の向こうにはリンゴ畑、その向こうには田んぼが広がっており、オーナーの星野さん一家は、これらの田畑を作る農家でもあります。ご主人の孝之さんを中心に、それぞれのご両親とともに農業を営みつつ、2008年にカフェをオープン。料理やジャムの製造は綾さんが担当し、定期的なイベントも企画しています。入り口の素敵な庭と、テーブルに飾られた可愛らしい花のアレンジは、ガーデニングが好きな綾さんのお母さまの手によるものです。 秋のカフェからの眺めは、黄金色の田んぼとリンゴ畑に変わります。川場村は83%が山林で占められており、日本百名山の一つ、武尊山からの雪解け水と朝夕の寒暖の差が村のあらゆる作物の味を特別なものにしています。川場村のお米は、あまり一般に流通しない幻のお米として知る人ぞ知る逸品です。炊きたてはもちろん、冷めても美味しいのが特徴で、お米の食味を鑑定する国際コンクールで8年も続けて最高賞を取り続け、ミシュランガイドで3つ星を獲得したニューヨークの名店も川場村のお米を使っています。カフェでも星野さんたちが丹精込めて作った川場産コシヒカリのお米のランチメニューがいただけるほか、通販で購入することもできます。 店内の席は少しずつ雰囲気が異なり、インテリアを眺めるのも楽しい空間です。ペット連れの方は外のテラス席も利用できます。カフェを利用する際には、事前に予約をした方がスムーズに入れます。ジャムやフルーツジュースなどの他に雑貨や食器なども販売されており、可愛いお土産が見つかりますよ。 お土産のブルーベリーでマフィンを作ってみましょう。友達に送ったブルーベリーにも、レシピを添えて。 材料/ホットケーキミックス150g、卵1個、牛乳100㏄、砂糖40〜50g、バター50g、ブルーベリー適量 バターを室温に戻しておくとともに、オーブンを180度に予熱しておきます。 ボールに材料を全部入れてさっくり混ぜ、マフィン型の半分くらいまで生地を入れます。型をトントンと軽く落として空気を抜き、オーブンで20〜25分。竹串などで刺して生地が付かなければ焼き上がりです。 Information ティア・ツリー オーチャード&カフェ 〒378-0102 群馬県利根郡川場村川場湯原 2453-3 営業時間:open 金・土・日・祝のみ 営業(冬期休業あり) 11~17時(ランチは11〜14時)※フードラストオーダー16時 TEL. 0278-52-3556 FAX. 0278-25-3553 http://tiatree.com ※ホームページのカレンダーで営業日をご確認のうえ、カフェを利用される際は席の予約をオススメします。 併せて読みたい ・知っておきたいブルーベリーの肥料の施し方と注意点 ・花の庭巡りならここ! フルーツの魅力を発信する「東谷山フルーツパーク」 ・ガーデニングとは? 楽しく成功させるためのアイデアと基本情報をご紹介 Credit 写真&文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。 Photo/top)Chamille White/8)Vladyslav Yankovsky/Shutterstock.com
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イギリス

イギリス 湖水地方 初夏のイングリッシュガーデンを巡る旅
湖水地方 〜B&BとHolehird Gardens〜 まず初めに、私たちが訪れたのは、イギリス北西部の湖水地方。かの有名なピーターラビットのお話が生まれた場所です。宿泊先は、ウィンダミア湖畔の街ボウネスのB&B。ここで私たちを迎えてくれたのが、満開の藤でした。まさにウェルカムサプライズ!建物の壁面に誘引された藤の美しさに、長旅の疲れも一瞬で吹き飛んでしまいました。 翌日は、のんびりとボウネスの街を散策し、ウィンダミア湖のクルーズに参加しました。湖面に吹くひんやりとした風、澄んだ空気が心地よく、対岸のみずみずしい緑の中に点々と見える石造りの建物は、どこを切り取っても絵になる景色でした。 次の日は、いよいよチャーターしておいたタクシーでガーデン巡り。幸運にも、タクシーの運転手さんが日本好きな方で、片言の日本語を交えながらとても親切に接してくれました。初めに向かった先は、Holehird Gardens。庭好きの私たちのためにわざわざ立ち寄ってくれたガーデンです。何と、そこで生まれて初めて青いケシの花を見ることができたのです。手漉き和紙のような青い花びらに朝日が透ける様はとても神秘的で、暫く見とれました。 小さいながらもお手入れの行き届いた庭は、ボーダーガーデンやロックガーデン、ウォーターガーデンもあり見応え十分。ナチュラルな植栽も親しみやすく、特に、斑入りの葉が美しい黄色のカキツバタや、赤いクリンソウが鮮やかな水辺の植栽に目を奪われました。 湖水地方〜Rydal Mount garden〜 次に向かった先は、詩人ウィリアム・ワーズワースの邸宅Rydal Mount。1万8,000㎡(約5,500坪)にも及ぶ広大な庭園は、ガーデニング好きだったワーズワース自身によって造園されたことで有名です。山の中腹につくられた庭は、周りの自然と溶け込みダイナミック。山の中を散策しているような気分でした。 また、ワーズワース一家が暮らしていた当時の様子が再現された家の中も見学できるので、その暮らしぶりを垣間見ることができました。中でも、つる植物が無造作に絡まる窓辺は、まるで絵画のよう。どの窓からも庭の豊かな緑が見えました。この場所で、湖水地方の美しい景色をモチーフに数々のロマンチックな詩を残したことが頷ける、叙情的な眺めでした。 湖水地方〜ピーターラビットのお話が生まれたHill Top~ Rydal Mountを後に、次に向かったのが、かの有名なピーターラビットのお話が生まれたHill Top。その道中で、ウィンダミア湖を見下ろす丘の上で、素晴らしい景色を見ることができました。 実はこの場所も、タクシーの運転手さんが立ち寄ってくれたお勧めのビューポイント。これぞ湖水地方!というイメージにぴったりの絶景でした。「もし天国があるとしたら、きっとこんな所かもしれない」、そう思いました。 そこから車で約15分。Hill Topのあるニアソーリー村に到着した途端、お天気が一変、急に雨が降り出しました。とはいえ、ずっと憧れていたHill Top のなだらかな坂道のボーダーガーデンやピーターの菜園が目の前に広がっているのです。 迷うことなく雨に濡れながら興奮気味に写真を撮っていると、すれ違う人たちから、「Hello!」「Enjoy!」と声をかけてもらったり、笑顔で手を振ってもらったり…。こんな温かなコミュニケーションが生まれるのも、ビアトリクス・ポターさんとピーターラビットたちの魔法のおかげ。Hill Topは、世界中の人を笑顔にさせてくれる場所でした。 湖水地方〜Holker Hall Garden〜 そして、この日最後に訪れたのがHolker Hall Garden。ここは、昔、貴族の地主が建てた邸宅の庭で、現在でもキャヴェンディッシュ卿が住んでいるのだとか。その邸宅の一部を見学できるようになっていて、豪華でエレガントな室内を堪能することができました。 1991年に英国園芸界の最高峰「Garden of the Year」を受賞したという庭園は、何と約3万坪(99,000㎡)。装飾の美しい門扉の先や、柵の向こうに羊が放牧されていて、どこまでが庭園なのかわからないほどでした。そんな広い庭園で、ひと際目を奪われたのが、重厚な屋敷の屋根付近まで壁面にびっしりと誘引された白藤。垂れた白い花穂の優美さは圧巻でした。他にも鉢植え仕立ての藤があちらこちらに置かれていました。「いったい、あの高さまでどうやって誘引しているの?」「鉢植えの藤のつるは、どう処理しているの?」と、興味津々でした。 藤やバラが咲くメインガーデンの先には、森の中の散歩道のようなウッドランドガーデンが。日向は、アヤメやチドリソウのような紫と白で統一された涼やかな花々、日陰にはシダやギボウシ、鮮やかなクリンソウがバランス良く植えられていました。更に奥へ進むと、樹木に囲まれた薄暗い場所に噴水がありました。木漏れ日にキラキラと輝く水しぶきが美しくて、水音を聞きながら暫く眺めていました。 こうして、丸一日かけて巡った湖水地方のイングリッシュガーデン。豊かな自然の景色を取り入れた広大な庭園は、ゆったりとした時間が流れ、ナチュラルな草花の植栽が印象的でした。そして、何と言っても心が震えた満開の藤の美しさ。万葉の時代から愛されてきた日本原産の藤「wisteria」が、イギリスの人々にこんなにもが愛されているということに驚きと感動を覚えました。イングリッシュガーデンが、改めて藤の魅力を教えてくれたような気がします。 Credit 写真&文/前田満見 高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。 Instagram cocoroba-garden
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シンガポール

シンガポール「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」【花好きさんの旅案内】
ここは、シンガポール政府が2005年にコンペを呼びかけてプロジェクトがスタートした、植物と近未来の建造物を融合したアミューズメントパークです。70もの応募の中から英国のランドスケープデザイナー、アンドリュー・グラント氏の案が採用されて実現しました。敷地面積100万㎡、屋外に1,500種30万株の植物、温室には1,000種10万株という規模。こんなに広く充実した施設ですが、特別な場所以外は基本的に無料ということにも驚きます。写真は、世界各国の植物が展示されているガラスのドーム「フラワードーム」(有料施設)です。 ここでまず圧倒されるのは、高さ25〜50mもある巨大な人工木「スーパーツリー」。園内には18本のツリーが立っていて、その表面には生きたつる植物やシダ類など200種の植物が茂り、SF映画の森に迷い込んだような不思議な驚きがあります。ツリーはそれぞれソーラーパネルを備えていたり、レストランが入っていたり。夜は赤、青、緑と何色もの光でツリーが闇に浮かび上がり、一日中楽しめます。 有料ゾーンの巨大なガラスドーム「クラウドフォレスト」は、天井高が最高で54mという中に、高さ35mの人工の山が丸ごと入っています。何本もの滝が流れる山の斜面には標高1,000〜2,000mの植生が再現され、低地の植物まで一度に観賞できるというもの。「ロストワールド」と名付けられた頂上付近では、高山の珍しいランやシダが見られ、雲を思わせる霧を漂わせる演出まで。あたりは涼しくて温室にいることを忘れてしまいます。 クラウドフォレストには、山をぐるりと見学できる空中散策路があり、高い所はまるで渓谷の吊り橋のよう。ちょっと足がすくみます。滝壺の裏から水流を見上げることができたり、大興奮の演出があちこちにあります。 世界中の植物を集めて‘永遠の春’を表現している「フラワードーム」では、日本でも人気のビカクシダの巨大な株や、ここまで伸びるのか! と驚かせてくれる多肉植物の一群、バオバブやオリーブなどが。次々と現れる植物のバリエーションに、飽きずに散策ができます。外に比べて涼しく、温室内でも過ごしやすいのもよいところ。 形がユニークな食虫植物のコーナーでは、本物の植物に混じって鮮やかなオブジェが。よーく見ると、レゴブロックで作られていました。子どもも興味を持つようなユーモアのある展示法に、思わずパチリ。 家族連れなら、ぜひ行って欲しいのが「ベイ・サウス」。ゲートを入って、まっすぐ行くと「チルドレンズガーデン」に。ジャングルみたいに緑もたくさん茂った場所で、子どもたちがつい駆け出したくなるエリアです。 子ども心をくすぐる遊具が次々と現れる「アドベンチャー・トレイル」や、アスレチックのようなツリーハウスの「ザ・ツリーハウス」コーナー、噴水やシャワーで水しぶきが気持ちよいウォーターパークなど。地元の子どもたちはもちろん、観光客のキッズも一緒に思い思いに遊べる無料エリアです。 シンガポールは国土が東京23区ほどで、移動時間があまりかからない小さな都市。子どもたちと楽しめるスポットもあり、子連れ旅にオススメです。ちょっと足を伸ばせば「シンガポール動物園」や世界遺産の「ロイヤルボタニックガーデン」などがあり、花緑に触れながら休暇をゆったり過ごせます。初の子連れ海外旅に、ここを選ぶ人が増えているというのもうなずけます。 併せて読みたい 花の庭巡りならここ! エキゾチックな植物の宝庫「夢の島熱帯植物館」 オージーガーデニングのすすめ「オーストラリアの木生羊歯」 花好きさんの旅案内、シンガポール「ナショナル・オーキッド・ガーデン」
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イギリス

花好きさんの旅案内【英国】ロイヤル・ボタニック・ガーデンズ・キュー
ロンドン郊外にあるキュー・ガーデンは、1759年にオーガスタ皇太子妃によって創設された、英国の王立植物園。植物コレクションの多様性においては世界一と言われ、また、植物と菌類に関する最高峰の学術機関として、世界をリードしています。2003年には、ユネスコの世界文化遺産の指定を受けました。 さて、広さ120万㎡、見どころは100を超えるという、広大な園内。一日ですべてを見て回るのは至難の業ですが、とにかく、歩き始めましょう。 地下鉄キュー・ガーデンズ駅からアクセスのよい、ヴィクトリア・ゲートから入場して、まずは、キュー・ガーデンを象徴するガラス温室、〈パーム・ハウス(Palm House)〉へ向かいます。温室前の芝生の広場には、無数のアリウムが列植された季節の花壇が。この花と温室のコンビネーションは、思わずカメラを向けてしまう、絵になる風景でした。 パーム・ハウスは、ヴィクトリア朝時代のプラントハンターが熱帯雨林から持ち帰った植物を育てる場として、1844年に建てられました。建造には当時の造船技術が応用されましたが、鉄製のフレームとガラスによって、こんなにも美しい曲線を描けることに感心します。屋外も汗ばむ初夏の陽気でしたが、温室内は熱帯雨林と同じ環境。入った瞬間から、むわっとした暖かい空気と、360度の熱帯の緑に囲まれました。 パーム・ハウスを出ると、南西側に、ブッシュローズとシュラブローズによるローズガーデンがあります。植物園らしく、それぞれのバラに品種名が書かれたプレートが添えられているので、好みのバラを探すのにもよい庭です。日本でオールドローズがブームになった頃によく耳にした、少し懐かしいオーソドックスな品種にも多々出合えました。 バラは、低く咲くものから、背丈以上に枝を伸ばして、重そうに花首を垂らして咲くものまで、品種ごとの樹形を生かしたナチュラルな仕立てになっていました。バラの茂みとパーム・ハウスの風景も、やっぱり絵になります。 この温室は、ヴィクトリア朝の園芸家を魅了した、アマゾン原産のオオオニバスを育てる目的で、1852年に建てられたというもの。珍しい植物を世界中から集めて栽培しようとする英国人の情熱には、本当に驚いてしまいます。 建物の中は、直径約10mの丸池でほとんど占められていて、池の周りをぐるりと一周しながら、水面に浮かぶスイレンの類や、ふわふわしたパピルス、吊るされたヒョウタンの類といった、熱帯植物を見ることができます。 池では今もオオオニバスが栽培されていますが、葉が大きすぎるため、現在は、それより小ぶりなサンタクルス・ウォーターリリーを多く育てているのだそうです。 道の両側に、ずっと先まで続いていく、ゆったりと幅の広い花壇です。全長320m、3万株の宿根草が植わる花壇は、英国最長のダブル・ハベーシャス・ボーダー(小径を挟んで対になってつくられる宿根草花壇のこと)。この道は元々、パーム・ハウスに至る散歩道でしたが、2016年の春に、現在のような形になりました。 リーガルリリーが今にも咲きそうにつぼみを膨らましていたかと思えば、アルケミラモリスが、まるで絨毯のように広がっています。そして、トリトマやバーバスカム、イヌラ・マグニフィカといった、オレンジや黄色の元気な色の花が、鮮やかに園路を彩ります。花壇に見とれて歩くうちに、あっという間に長い距離を進んでいました。 カモミールなど34種の植物からなるメドウに囲まれて建つのは、17万個のアルミ製パーツと1,000個のLED電球からなる「巣」を、ハチになった気分で体感するという、高さ17mのインスタレーション・アート。2015年ミラノ万博の英国館展示品として、アーティストのウォルフガング・バットレスによって作成されたものが、移築されました。 ハチの研究にインスピレーションを受けてデザインされたというこのアート作品は、人間が食べる食物の受粉を担っているハチの重要性を訴えかけるものです。キュー・ガーデンでは、ハチの食糧となるさまざまな植物を確保するなど、近年危惧されるハチの減少を食い止めようと、対策を試みています。 ロックガーデンは、1882年に、3,000株の高山植物の寄付を受けたことをきっかけにつくられました。ピレネー山脈の生息環境を模して、階段状に砂岩を組んだ花壇の中に、草丈30㎝もないような、小さな高山植物が植えられています。普段なら見落としてしまいそうな、小さな花の繊細な咲き姿が、ここではよく観察できます。綿のような花や針のような花など、これまで見たことのない植物にもたくさん出合えるコーナーです。 ロックガーデンを眺めながら歩くと、いつのまにか、鮮やかなバラに彩られた、ローズパーゴラの入り口に到着していました。長いパーゴラには、数多の花を咲かせるつるバラが何種類も絡んでいて、豪華な回廊を形作っています。 ここは、〈プラント・ファミリー・ベッド(Plant Family Beds)〉と呼ばれる一画。102に区分けされた花壇には、シソ科やナデシコ科というように、さまざまな植物が93の科に仲間分けされ、紹介されています。学術的な花壇ですが、ガーデンとしての見応えも十分の美しい場所です。 その昔、ここはキュー・パレスに住まうジョージ3世のために食物を育てた畑でしたが、現在は、BBCのテレビ番組のためにつくられた、新しいキッチンガーデンがあります。有名フレンチシェフのレイモンド・ブランが案内役となって、250種の野菜や果物を一年を通じて収穫しながら、料理や食の歴史を紹介する番組で、このキッチンガーデンはテレビを通じてとても人気があるのだとか。 小さな実をつけた、エスパリエ仕立てのリンゴやナシの仲間、これから支柱に絡まるであろう、まだ小さな苗のインゲン類、それから、花茎を立ち上げ始めたラベンダー。ハーブも野菜も、花も実も、一緒に楽しめるガーデンになっています。 支柱の先端には、作業中にかがんでも怪我をしないようにと、小さな植木鉢がかぶせてあります。そんなところからも、「本当に庭づくりを長年続けた国の植物園だなぁ」と、実感させられます。 〈プラント・ファミリー・ベッド〉の一角には、デザインの異なるハチの巣箱が3タイプ並んでいました。これは、マルハナバチやミツバチの巣箱。メドウに囲まれていて、近くに寄ることはできません。キュー・ガーデンでは、近年危惧されている、受粉を担うハチの減少を食い止めようと、ハチの好む植物を植えるなど、生育環境を整えています。ここで待っていれば、ころんとした可愛らしいマルハナバチを観察できるそうですよ。 あ、あの花、私が好きな花だ! あ、あんなところにバラが咲いている! なんて言いながら、次から次へと歩くうちに、広い広いガーデンの北の端近くまで来ていました。ヴィクトリア・ゲートを入ってから、あっという間に2時間。今回巡ったのは、植物園の北の方面ですが、まだ敷地の8分の1も見ていないかもしれません。 ゲートまで戻っていくと、パーム・ハウスの南側で、高さ3mほどの大木に絡まった、一重のつるバラが満開となって、驚きの花景色を見せていました。名札には「‘HIMALAYAN MUSK ROSE’ Rosa brunonii」とありました。 さて、これで庭巡りもおしまいです。 またの機会に恵まれたなら、庭の南側にある〈テンペレート・ハウス(Temperate House)〉にもぜひ訪れてみたいもの。パーム・ハウスの2倍の広さを持つ、ヴィクトリア朝に建てられた中で世界最大の温室です。温帯気候の植物が集められていて、その中には、希少種や絶滅危惧種もあるのだとか。現在修復中ですが、2018年に再びオープンの予定です。 もし、春の桜の頃に訪れる機会を得たら、テンペレート・ハウス近くのチェリー・ウォークを歩くのもオススメです。英国に暮らす日本人が故郷を思い出すという、サクラの素晴らしい景色が待っています。 〈ロイヤル・ボタニック・ガーデンズ・キュー〉 庭園情報 ロンドンの中心地から、公共交通機関を使って30分ほどという、旅行者には嬉しい立地にあります。最寄り駅、地下鉄ディストリクト・ラインのキュー・ガーデンズ駅(Kew Gardens)から植物園のヴィクトリア・ゲートまでは徒歩約6分。 12月24日、25日を除いて、毎日10:00に開園。 閉園時間は8月までは、月~木が18:30(最終入場18:00)、金~日、祝日は20:30(最終入場20:00)。9月は、月~木が18:30(最終入場18:00)、金~日、祝日は19:00(最終入場18:30)。 10月以降は、季節によって閉園時間が変わります。冬場はかなり早く閉園するので、詳しくはHPで要確認。入園料は£15.50(寄付込み)。*2017年現在の情報です。
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北海道

庭巡りならここへ! 北海道「ガーデン街道」の名園紹介 前編
冷涼な気候で広大な大地が広がる北海道には、本州とは異なる庭文化があります。個性あふれる名園8つを結んだ、大雪から富良野、十勝を結ぶ全長250kmは、「北海道ガーデン街道」として近年、国内外から人気を集めるルート。道央から南下し、北海道ガーデン街道の8つの庭の内、前編では4つの庭をご紹介します。 「大雪 森のガーデン」 最初にご紹介するのは、大雪山を望む高原の庭「大雪 森のガーデン」。シラカバ林に囲まれた森の花園は、緩やかな斜面に約700種の植物が植栽されており、歩みを進めるごとに見える花の色が次々に変わっていきます。歩いてきた道を振り返ると、今見てきたのとは全く違う表情の花景色が現れ、遠景の美しさが北海道らしいダイナミズムを感じさせます。北海道出身の三國清三シェフがプロデュースするレストラン「フラテッロ・ディ・ミクニ」が併設されており、レストランからも雄大な高原の景色が望めます。 ・北部にしかない珍しい植物に会える 北海道「大雪 森のガーデン」 Information 「大雪 森のガーデン」 上川郡上川町菊水841番地8 TEL 01658-2-4655 http://www.daisetsu-asahigaoka.jp/ Open 5月中旬~10月中旬 9:00~18:00(最終入園17:00)※季節により営業時間が異なります。 入場料 大人800円/中学生以下無料 「上野ファーム」 ガーデナーの上野砂由紀さんが家族とともにつくり上げる「上野ファーム」。同じ植物でも、北海道で生育する植物は本州に比べて草丈や花色、開花期が異なることを最大限に生かし、気候風土を反映した個性豊かな「北海道ガーデン」を展開しています。左右対称に色彩計画されたミラーボーダーは、エゾクガイソウやオニシモツケなど北海道特有の宿根草が見上げるような高さで咲き競い、圧巻の花景色。ガーデン内に新たに生まれた「ノームの庭」は、華やかな園芸種と野草やグラス類が美しい景色を織りなします。 Information 「上野ファーム」 旭川市永山町16丁目186番地 0166-47-8741 ※団体は要予約 http://www.uenofarm.net/ Open 4月下旬~10月中旬(カフェは通年営業) 10:00~17:00 入場料 大人800円/小学生以下無料 「風のガーデン」 脚本家、倉本聰氏のTVドラマ『風のガーデン』の舞台としてつくられたドラマと同名の庭「風のガーデン」。倉本氏から依頼を受け、「上野ファーム」の上野砂由紀さんが制作しました。ドラマにゆかりの深いカンパニュラや登場人物の名前を冠したバラなどが色鮮やかに咲きます。ドラマを見ていなくても十分楽しめる庭ですが、ストーリーを知っていると個々の植物への親愛度が増し、より深く庭が楽しめるでしょう。新設された「野の花の散歩道」には、小道の両側に北海道の野草が広がり、野原を歩く懐かしい感覚が味わえます。 Information 「風のガーデン」 富良野市中御料 TEL 0167-22-1111(新富良野プリンスホテル) http://www.princehotels.co.jp/furano-area/summer/garden/ Open 4月末~10月中旬 8:00~18:00(6月中旬~8月下旬は6:30~開園予定、10月は16:00まで) (最終受付閉園30分前) 入場料 大人800円/小学生500円/幼児無料 「十勝千年の森」 十勝平野と日高山脈を結ぶ地点に、400ヘクタールの広大な森とガーデンが広がる「十勝千年の森」。ここは十勝毎日新聞社が所有する土地で、紙を大量に消費する新聞社の宿命に対し、次世代へ豊かな環境を残すという使命から生まれました。英国の造園家ダン・ピアソン氏が設計した「メドウ・ガーデン」と「アース・ガーデン」は、自然植生を生かして雄大な自然と一体になった庭風景を展開。英国の権威あるガーデン選考会で「21世紀のガーデンデザインの最良の例」と絶賛されました。他にも北国で育つバラを集めたローズガーデンや美しいキッチンガーデン、ゴートファームなど、楽しみの尽きないガーデンです。 Information 「十勝千年の森」 清水町羽帯南10線 TEL 0156-63-3000 http://www.tmf.jp/ Open 4月末~10月中旬 9:30〜17:00(7/1〜8/31は9:00から、9月以降は16:00まで) 入場料 大人1,000円/小・中学生500円/幼児無料 後編はこちらへどうぞ。 併せて読みたい ・北部にしかない珍しい植物に会える 北海道「大雪 森のガーデン」 ・上野ファームの庭便り「バラも宿根草も! 思いっきり楽しむ夏の庭」 ・カメラマンが訪ねた感動の花の庭。長年通ったアンディ&ウイリアムス ボタニックガーデン Credit 文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。


















