- TOP
- ガーデン&ショップ
-
北海道

カメラマンが訪ねた感動の花の庭。北海道 イコロの森
青空を願った早朝の撮影 2017年7月15日、午前4時30分。前日、前々日と2日続けて早朝のイコロの森は真っ白な霧に包まれて、ローズガーデンの撮影ができずにいました。今日こそ晴れてくれないか、と願いながらカーテンをあけて窓の外を見ると、森はまだぼんやりとした光の中。霧は出ていないようです。 「晴れたかな?」と思いながら急いで着替えをすませ、機材を持ってガーデンへと走りました。今回は早朝のローズガーデン撮影にそなえて入園許可をもらい、イコロの森のセミナーハウスに宿泊していたため、走ってたった1分でガーデンに到着。 まだ薄暗い森を抜けてガーデンの入り口に着くと、いつものようによく手入れがされた緑の芝生と、少し明るくなってきた青空が出迎えてくれました。「晴れた!」ウキウキとした足取りで入り口のロープをまたぎ、高い針葉樹の塀をくぐり抜けてローズガーデンに入ると、そこはまさに満開。撮影にはベストタイミングでした。 美しい庭を一人占めした時間 まだ少し冷たい空気を感じながら、静まり返ったローズガーデンを、一人ゆっくりと撮影ポイントへ向かいます。途中園路を歩いていると、両側のすべてのバラが「ようこそ」と語りかけてくれている気がしてきて、最高の気分で撮影を始めました。時間とともに東側の木々の間から差し込んでくる朝陽を浴びてローズガーデンはどんどん彩りを増していきます。僕もハイテンションでシャッターを切り続けました。ふだん見慣れているバラたちと比べると、イコロの森のバラに派手さはなく、仕立て方もナチュラル。どの花も本当に可愛く咲いていて、大満足の撮影でした。 初めての北海道の庭撮影 僕が最初にバラや庭の撮影で北海道に来たのは、2010年の8月。『趣味の園芸』の取材でした。その時にガイド&コーディネイターをしてくれたのが、現在はイラストレーターとして有名な藤川志朗さんです。この年は2泊2日の短い取材でしたが、バラと宿根草のきれいな庭を何軒も紹介していただいて、僕はすっかり北海道の魅力に取り付かれてしまい、翌年の取材のガイド&コーディネイトも藤川さんにお願いして帰りました。 翌年は個人の庭数軒と岩見沢のバラ園でオールドローズが撮りたいと思い、藤川さんに連絡して7月のはじめに北海道に向かいました。まずは岩見沢のバラの素敵な個人邸の撮影を済ませ、夕方には岩見沢バラ園で心ゆくまでオールドローズを堪能。すると「明日も素敵なガーデンに行きましょう。多分今井さんお好きだと思います」と、藤川さんが勧めてくれたのが、このイコロの森でした。 イコロの森に初めて行った日 翌日は北海道の雄大な風景を見ながらドライブをしてイコロの森へ向かいました。広いバイパス道路から森の中の細い道に曲がると、そこは突然、別世界へと変わりました。今まで走ったことのない、まるでコマーシャルにでも出てきそうなほど美しい森の中の一本道を走ること10分。センスのよいイコロの森の看板が見えてきました。駐車場に車を止めてガーデンの入り口に向かう小径から、もうすでによい雰囲気を醸し出しています。 入り口でガーデナーの北村さん、高林さんに挨拶をして中へ入ると、正面には緑の芝が美しいレストランガーデン。右手にはコニファーガーデン、針葉樹の塀の中は、整形式のローズガーデンと宿根草のガーデン。宿根草のガーデンを抜けると、信じられないほど美しい芝と宿根草のボーダーガーデン。そのすべてが森の静寂の中にあり、「ここは本当に日本なのかな?」と疑いたくなるほど、センスのよいガーデンで、僕は完全に一目惚れ。藤川さんの予想は正に的中でした。 やっと叶ったバラの最盛期の撮影 2011年以降も、ほぼ毎年のように雑誌の取材などで北海道には来ていますが、千歳空港に近いということもあって、イコロの森には必ずといっていいほど毎回寄らせてもらっていました。しかし、なかなかバラが最盛期のタイミングに合いません。 イコロの森の代表である工藤敏博さんは、北海道の気候に合った耐寒性と耐病性のあるバラを収集していて、ローズガーデンにはハイブリッド・ルゴサをはじめとした、僕たちにはあまり馴染みがないバラが多種植えられていると聞いていました。これは一度しっかり見せていただきたいと思っていたのですが、岩見沢地域に比べると、開花は半月くらい遅いため、なかなかベストタイミングとはいきませんでした。 どうにかしてイコロの森のバラを撮りたいと思っていた時、偶然知り合いの編集者さんが僕のイコロの森の写真が見たいと言ってくれたのを機に、2017年はイコロの森のバラの開花時期にスケジュールを合わせることに。ガーデナーの高林さんにバラの開花状況を随時聞きながら、7月半ばにやっと念願が叶ってローズガーデンの撮影ができました。 こうしてベストな条件とタイミングでローズガーデンが撮れたので、次回は紅葉のイコロの森ですね。木々やグラス類の紅葉の写真を狙ってみたいですが、バラ以上にタイミングが難しそうです。来年、10月半ばから後半に、寒そうだけれどチャレンジしてみたいと思っています。
-
イギリス

プラントハンターの時代の庭【世界のガーデンを探る旅16】
世界の植物を発見するまでの ヨーロッパの歴史を、まずはおさらい バビロンの空中庭園から始まった「世界のガーデンを探る旅」は、イタリアやフランスからドーバー海峡を渡り、中世以降のイギリスに移ってきました。イギリスの庭文化は、プラントハンターによって大きな変革期を迎えるのですが、その前に、少しヨーロッパの歴史をおさらいしておきましょう。 ヨーロッパでは十字軍の遠征(11〜13世紀)以降、中近東からの情報が多くもたらされました。そして歴史的な交易路であるシルクロードによって、アジアの物品や香辛料が運ばれ、植物にも人々の関心が高まりました。ただ、途中にトルコのようなイスラム国家があり、キリスト教徒の西ヨーロッパには西アジアに行く安全なルートがなく、地中海ルートもイスラム教の国に支配されていたため、新しく安全なルートが求められている時代でした。15世紀の後半になると、大西洋に面したスペインとポルトガルが積極的にアフリカ西海岸を南に下ったことで、さまざまな品物が母国にもたらされました。 大西洋に面したポルトガルやスペインは、多くの冒険家や宣教師を航海へ送り出しました。1498年にはバスコ・ダ・ガマがインド航路を発見、多くの物品や香辛料をポルトガルに持ち帰り莫大な利益を得ました。スペインが送り出したクリストファー・コロンブスは、1492年にアメリカ大陸を発見しました。また、1519年にスペインを出発したフェルディナンド・マゼランは、世界一周航路を切り開き、地球が丸いことを実証しました。 各地の植物が世界に渡る時代 17世紀の中頃には、地球上のほぼ全ての地域にヨーロッパ人が訪れ、大航海時代は終わりを告げると、植民地時代が始まります。第二次世界大戦までにはヨーロッパと日本を除く、ほぼ全ての地域がヨーロッパ列強の植民地、あるいは支配下になり、本国に莫大な利益をもたらしました。 新しく発見された地域には冒険家、宣教師とともに植物採集のためのプラントハンターが多く訪れ、いろいろな香辛料をはじめ、食料や薬草などを持ち帰りました。また、その中には珍しい花や木も含まれていました。 日本はその当時鎖国をしていましたので、自由に植物を持ち出すことはできませんでしたが、かの有名な通称シーボルト(ドイツ人医師で博物学者のフィリップ・フランツ・フォン・シーボルト)とその前任者で植物分類の基礎を作ったカール・フォン・リンネ(スウェーデン人の植物学者)の弟子のカール・ツンベルク(スウェーデン人の植物学者、博物学者、医学者)などによって、多くの植物がヨーロッパに紹介されました。その後鎖国は解かれ、園芸品種も含む日本のさまざまな植物がヨーロッパに送られると、その園芸文化の高さに触れた当時の人々は驚いたようです。 プラントハンターが持ち帰った膨大な植物 さてそんな中、世界中に送られたプラントハンターがイギリスに持ち帰った植物は膨大な量となり、整理し分類する必要に迫られていました。そして1804年、ロンドンの植物好きが集まって、園芸文化の普及や奨励を目的とする慈善団体「ロンドン園芸協会」が設立されました。その協会が1861年に王室の許可を得て現在の名称となった「王立園芸協会」であり、当時世界中からもたらされた植物を一カ所に集めた植物園が「キュー・ガーデン(Royal Botanic Gardens, Kew)」です。 王立園芸協会は、庭文化の普及も目的の一つとして、ウィズレー(The Royal Horticultural Society's garden at Wisley)に最初の作庭の見本となる庭をつくりました。手がけたのは、実業家で王立園芸協会の会員であったジョージ・ファーガソン・ウィルソン(George Ferguson Wilson)氏で、1878年に約25ヘクタールの敷地に庭がつくられ、その後、拡張されて現在は約100ヘクタールになっています。 現代も世界中から多くの来園者が訪れる ウィズレーの植物園 ウィズレーへの来園者は、1905年には年間約5,000人ほどでしたが、近年は年間100万人以上の人が訪れています。イギリスで最も人気のあるキューガーデンには及びませんが、見本庭園に限らず、蔵書や植物のコレクションでも有名な場所です。 よく手入れされたキャナルガーデンは、長方形の池を中心に左右対称にデザインされ、水中のスイレンまでも左右対称に整っています。 エントランスから庭へ降りて行く途中にある正方形の庭は、なんとサニーレタスで彩られていました。野菜を使って図形を浮かび上がらせるとは、微笑ましいアイデア。 1910年に造園家のJames Pulham and Sonによって、ロックガーデンが築かれました。斜面地を巧みに利用して水はけをよくし、高山植物や球根植物が多く植えられています。また矮性の樹木や球根類も多く、スコットランドのエジンバラ植物園のロックガーデンとともに、世界中のロックガーデンの手本になっています。 なだらかな丘になっているので、高台から庭全体が見渡せます。園内の植物には全てネームプレートがつけられ、まるで生きた植物図鑑の。来園者が熱心に興味のある植物をチェックしていました。 2006年に新たにつくられた温室へ続く初秋の宿根草ボーダーには、いろいろな草花がパッチワーク状に植えられていました。 造園家のトム・スチュワート=スミス氏が関与した新しい温室は、白いフレームと曲面が多用されたデザイン。 家庭菜園サイズに区切られたベジタブルガーデンは、そのまま自宅につくれそうな見本となっています。こんなところにも、ウィズレーガーデンの本来の趣旨である、「来園者にとって参考になる庭」の展示が見られます。 きれいに刈り込まれたツゲに囲まれた空間では、低く茂る鮮やかなペチュニアと立ち上がる白いダリアが左右対称に。とてもシンプルですが、広い空間で花を引き立てるこのテクニックは、日本の街中の花壇植栽の参考になりそうです。 和を思わせるフェンスを設けて視線を遮り、盆栽が並んでいます。なかなか考えられた演出です。近年、海外の盆栽レベルもかなり向上し、イギリスでも多くの盆栽愛好家グループが活発に活動しています。 幾何学模様にきれいに刈り込まれた芝生がとてもフォーマルな雰囲気。残念ながら花の時期ではありませんが、落ち葉ひとつなく、すべての株が剪定されて清々しい景色になっていました。 花が少なく、落葉した木々に囲まれた冬でも多くの人たちが訪れて、散策を楽しんでいました。 毎年発表される多種の新品種などを比較する栽培場もありました。イギリスの園芸文化の奥の深さを感じさせます。 イギリスの庭園文化を支える植物園 プラントハンターによって多くの植物がイギリスに持ち込まれ、もともと自生の植物が少なかったイギリスに園芸文化が深く根付いた理由の一つが、王立園芸協会の存在です。植物分類はキューガーデン、植物の庭での使い方はここウィズレーガーデンと、2つの庭はイギリスの園芸文化を底辺で支える両輪となっています。ロンドンから車でもさほど遠くないので、ぜひ訪れてほしいガーデニングの聖地です。 併せて読みたい ・花好きさんの旅案内【英国】ロイヤル・ボタニック・ガーデンズ・キュー ・イギリス発祥の庭デザイン「ノットガーデン」【世界のガーデンを探る旅14】 ・カメラマンが訪ねた感動の花の庭。イギリス以上にイギリスを感じる庭 山梨・神谷邸
-
岡山県

備前焼の魅力を伝える新プロジェクト「Bizen×Whichford」コラボイベント報告
若い陶芸家が中心となり開催された初のイベント 全国的に秋晴れとなった2018年10月20・21日に岡山・備前市にある「特別史跡 旧閑谷(しずたに)学校」にて開催された「セラミック・アート・ビゼン閑谷(Ceramic Art Bizen in Shizutani)」。備前焼作家として国内外で活躍する新進気鋭の若手陶芸家、石田和也さん(32歳)が中心となり、備前焼を盛り上げたいと1年の準備期間を経て開催され、話題となったイベントです。 プロジェクトの中心となった石田さんは、備前焼人間国宝の伊勢崎淳氏に師事後、2011年に渡英し、デヴォンのKigbeare Studioで制作活動に従事。2012年には英国オックスフォード郊外のWhichford Potteryに就職し研鑽を積むという、国内にとどまらず垣根を超えて備前焼の魅力の可能性を探り続けている若き陶芸家です。 そんな彼が備前市と協力して、“どのように備前や備前焼を盛り上げていくか”を模索している過程で、ある試みを行ったことがこのイベント開催のきっかけになったといいます。それは、毎年秋に全国から多くの人が訪れる「備前まつり」についてロンドン芸術大学の生徒達と実施したリサーチでした。彼らに客観的に「備前」を捉えてもらったことで、備前焼を販売をすること以上に、その伝統や技、他にはない価値をあらゆる角度から“伝える”ことが大切であると石田さんは自覚したのです。 そこから、石田さんの思いに地域の方々をはじめ、旧閑谷学校関係者や、備前焼の現代作家、備前焼を応援するあらゆる分野の方々が協力し、「セラミック・アート・ビゼン閑谷」が開催された2日間、予想を超える約2,000人の来場者がありました。また、陶芸や寄せ植えのワークショップには約120人が参加。見て、触れて、体験して備前の魅力を再発見してもらえる機会となりました。 備前焼に触れる英国スタイルのティータイム 開催両日、完売の人気となったのが「備前焼×英国スタイルティータイム」。使う器はすべてプロジェクトリーダーである石田さんが焼いたもので、備前焼のトレーに8種の焼き菓子の中から気に入ったものを1つ選び、Bizen×Whichfordのマグカップで英国紅茶をいただくという、このアートイベント限定のティーコーナーが旧閑谷学校前の広場に出現。 雲ひとつない晴天の屋外には、日差しを遮る大きな白いパラソルも備えられ、自然の鳥のさえずりをBGMに、手作りのスコーンと香り高い紅茶をいただく。実際に備前の器を手に取り、使うことで肌触りや日常での使い方を知り、備前焼を身近に感じることができるおもてなしでした。 英国のアフタヌーンティーに欠かせないスコーンなどの焼き菓子は、全部で8種。写真左上は、オーソドックスなJersey Milk Scone、右上はサンギリスコーン、右下、ジンジャーケーキ、左下は、黒豆きな粉にドライイチジクの丸い模様をあしらったボタモチスコーン。 左上は一番人気だった、プロジェクトリーダーである石田さんの作品をイメージしたイシダスペシャルスコーン、右上は、英国のティータイムで定番の菓子ヴィクトリアサンドイッチ、右下はオーツケーキ、左下は、チェダーチーズでたすき模様を描いたヒダスキスコーン。 この手作りスコーンにも、実は備前焼を思わせる要素が隠されているのです。例えば、穴窯で焼かれるゆえに現れる備前焼の焼き色の特徴「ヒダスキ(緋襷)」や、黒~灰青の景色の変化「サンギリ(桟切)」、丸い模様が浮かぶ「ボタモチ(牡丹餅)」など。スコーンをいただきながら、備前焼の模様に興味を持ち、お茶の後、実物を見て「なるほどー」と理解できる仕掛けに、来場者もびっくり。 「備前焼×英国スタイルティータイム」は、兵庫県在住のフラワー&ティーコーディネーターの内田恭子さんを中心とした5名で開催。内田さんは、お花を飾りお茶をいただく英国スタイルの楽しさと、くつろぎを広める活動をしています。これまでイギリスでスコーン作りやお茶を学んだ経験を、備前でも伝えたいと、今回参加しました。写真左から、ロールケーキのお店「F.T.E」店長の木村正彦さん、田淵さん、牧野さん、橋本さん、COZY STYLE主宰の内田恭子さん、イギリス文化を日本に伝える新会社を立ち上げたブリティッシュ・プライドの新宅久起さん。 日英文化の融合Bizen×Whichford 今回、ガーデニングファンが特に注目したのが、英国の伝統園芸鉢工房「ウィッチフォードポタリー」と備前焼のコラボレーション企画です。まず1つめは、オリジナル作品の販売コーナー。ガーデニングの本場イギリスで、伝統的な技術とデザインのフラワーポットを作り続けている「ウィッチフォードポタリー」の鉢は、日本でも広く流通し、ガーデニングファンに愛用されていますが、ここでは、イギリスの素焼き製ではなく、備前焼で作られたオリジナルの鉢が購入できるとあり、他県からも多くの方が訪れました。 こうして英国と備前がつながるきっかけの一つが、2002年にウィッチフォードポタリーの代表、ジム・キーリングさんが備前へ足を運び、素朴で味わいのある備前焼に惹かれたことにあります。備前焼と園芸鉢は全く異なるジャンルでありながら、「無釉焼締め陶(むゆうやきしめとう)」の共通点から、2017年に初のBizen×Whichfordフラワーポットが誕生しました。 その後、ジムさん自らも備前での作品制作やワークショップに参加し、市民や地元アーティストとの交流も進み、2018年1月にはイギリスからウィッチフォードポタリーの職人たちが来日して、他県からも参加者が集まる初のワークショップも開催されています。 ガーデニングファンが駆けつけた陶芸体験 ウィッチフォードポタリーの石膏型などを使って、オリジナルの備前焼フラワーポットづくりができる「陶芸ワークショップ」5講座と「Bizen×Whichford を使った多肉植物の寄せ植え」1講座は、2カ月前から事前にSNSなどで参加者を募集しました。すると、北海道から宮崎まで約120人が応募、その8割以上が県外からの参加者で、2日間で計6回のワークショップは大盛況となりました。 ウィッチフォードポタリーの代表、ジム・キーリングさんと陶芸家の石田和也さんをはじめとする、陶芸のプロたちが直接指導をする約2時間の「陶芸ワークショップ」では、実際にウィッチフォードポタリーでも使われているモールド(模様の型)を使いながら、オリジナルの鉢を完成させていきます。中でも人気だったのは、ビオラやニワトリ模様。植物模様のスタンプや、転がして模様をつけるルーレット、細かな仕上げをする棒状の道具も用意されていました。 ワークショップの冒頭に、ジムさんは「備前焼と私たち工房の作品には、釉薬をかけないという共通点があります。それは、デコレーションのディテールが薄い膜で覆われず、はっきり模様が見えるという特性があります。備前焼もイングリッシュガーデンも、どちらも伝統がありますが、今回はその2つの伝統が土という素材を通してコラボレーションします。備前にはなかった、このような装飾道具を使うこともコラボレーションの一つで、新しいものが生まれることでしょう。この時間を通して、皆さんの備前の見え方もまた違ってくることでしょう。作品づくりを楽しんでください」と挨拶し、ワークショップはスタートしました。 ウィッチフォードポタリーでは、ろくろ成形後一日乾かしてちょうどよい固さになった作品にデコレーションをしていきます。このワークショップでも、同様の手順が踏めるようにと、参加者は事前にS、M、L、LL、3Lの中から作りたいサイズと数を申請。人数分の鉢を、ジムさんなど職人の手によってろくろを使い、3日間かけて用意されていました。 説明を30分聞いた後、まず、鉢のどの位置へどの模様をいくつつけるかを決め、思い思いに仕上げていきます。ポターさんによるお手本の作業工程を見て覚えたつもりでも、実際に自分の手を動かし、模様の型に土を詰め、鉢に押し付け、模様の縁をきれいにならしていく工程は、思ったようには進みません。 参加者はそれぞれに迷いながらも、集中して手を動かしていきます。ジムさんと石田さん、ポターさんは慌ただしく参加者一人ずつに気を配り、作業につまずいている人を手伝い、アドバイスしながら、アッという間の1時間半。鉢の仕上げにBizen×Whichfordのスタンプを押して、作業は終了時間を迎えました。 ウィッチフォードの鉢で特徴的な縁取りの装飾は、プロの手にゆだねて仕上げてもらうことができました。写真は、ウイッチフォードポタリーで大型鉢の責任者を任されている職人の、サイモン・ガーンさん。 1月に参加して「世界に一つしかないオリジナルのポットが作れるという貴重な体験をまたぜひ!」にと、再び参加した千葉在住の橋本景子さん。「前回と違うモールドを使ってみたかったことや、ポッターさんに再びお会いするのが楽しみでやって来ました。今回を振り返ってみると、時間的に余裕がなく、焦ったり失敗もありましたが、サイモンさんが手助けをしてくれたり、ジムさんが絵を描いてくれたりという幸せな時間もありました。仕上がりが本当に待ち遠しいです」。 2日間で作られた約140点もの作品は、その後、乾かされて2019年の早春に穴窯による焼成が行われます。穴窯は、なんと10日間火を絶やすことなく焼き続け、備前焼ならではの自然釉の景色や炎の表情が生まれるとのこと。参加者は、自分の作品の仕上がりを首を長くして待っているところです。 2日間に渡り行われた6つものワークショップを支えた皆さん。左から、Bizen×Whichfordを担当したガーデナーの田中美紀さん、ジム・キーリングさん、「セラミック・アート・ビゼンin閑谷」プロジェクトリーダーの石田和也さん、サイモン・ガーンさん、去年までWhichfordで2年間陶芸を学んだ経験がある鈴木麻莉さん、陶芸センター事務員の滝川美由紀さん。 日本の伝統と英国の伝統がコラボするという、ガーデニング界にも新しい風となったプロジェクト「セラミック・アート・ビゼン閑谷」。今後の展開が期待されます。 今後の活動やニュースは、以下で発信されます。要チェックです。 【フェイスブック】Bizen×Whichford https://www.facebook.com/bizenwhichford/ 【ブログ】ウィッチフォードに恋をして https://wfpottery.exblog.jp 併せて読みたい ・カメラマンが訪ねた感動の花の庭。滋賀「English Gardenローザンベリー多和田」のパンジービオラフェスティバル ・クリスマスやお正月にもぴったり! 冬こそ楽しめるおしゃれなリース型の寄せ植え ・絶対かぶらない! 女性にも男性にも喜ばれるおしゃれなプレゼント「ワインと花の冬の寄せ植え」 Credit 写真&文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
-
大阪府

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪4 大阪「Kanekyu金久」
寄せ植え好きにはたまらないショップ「Kanekyu金久」 店頭にずらりと並ぶたくさんの花々が、広い通りで目を引くショップ「Kanekyu金久」。春には外壁を覆うつるバラ‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’の美しい花が、華やかに出迎えてくれます。この店の開店時間は、園芸店には早い午前9時。オープンと同時に次々とお客様が訪れています。 お客様を飽きさせない 工夫を凝らしたショップづくり 「Kanekyu金久」は、かつて主に盆栽や山野草を扱う店でしたが、オーナーである父から経営を任された神藤直行さんが、草花や雑貨まで幅広く扱うガーデニングショップとして、今から20年ほど前にリニューアル。以前からあった売り場にショップの建物を加え、それをぐるりと囲むように回遊式の売り場を設けました。 何台もある花苗台の中央には、オススメの草花を植えた大鉢や寄せ植えをディスプレイ。その下にはポット苗がきれいに並んでいます。また、ハンギングバスケットや雑貨類を飾ったアーチやウォールで空間を区切り、小部屋が次々に現れるような構成に。決して広くはないスペースですが、パーゴラやアーチ、花台を巧みに使った立体感のある演出が、ショップ奥への見通しを阻み、新たに広がる売り場への期待感をいっそう高めています。そのめくるめく展開は、まるでアミューズメントパークのようです。 最近人気のさまざまなビカクシダやカラーリーフに囲まれたコーナーは、植物園の温室にいるような気分になります。 常に植物にとってベストな場所を選んでディスプレイ。パーゴラの桟にかけたスパニッシュモスが、奥のエリアを隠すスクリーンの役目を担っています。 苗の状態はピカいち! スタッフ全員で行う徹底した管理 売り場に所狭しと並ぶ花苗は、どれも非常に状態がよい印象。「植物は元気なものをもちろん仕入れていますが、入荷後の管理も徹底しています」とオーナーの神藤さん。蒸れやすい植物は、トレイにひとマスずつ飛ばして並べて風通しを確保するほか、少しでも状態が悪くなれば店の奥で養生するなど、常に苗の状態に目を光らせて、こまめなチェックを行っています。また、販売後にお客様のところで100点満点になるよう、生産者と出荷のタイミングを図ったり、鉢やポットに土増しや施肥をして苗のクオリティを上げる努力も。仕入れ数も徹底管理し、最良の状態の植物を提供することに力を注いでいるのです。 日本中の生産者を回って仕入れた こだわりの植物がずらりと並ぶ 注目している植物が旬を迎える少し前になると、全国どこでも生産者の所に直接足を運び、市場からはもちろんのこと、育種家や生産者からも苗を仕入れている神藤さん。ほかでは見られないような花も並びます。展示会などにも頻繁に顔を出すよう努め、信頼関係を築いていることで、生産者が特別自信を持って勧める希少な株を入手できるのです。 特に神藤さんが力を入れている植物の一つがクリスマスローズ。年内から全国を駆け回り、国内で屈指の育種家に良質な株を注文。1~2月には店中、クリスマスローズでいっぱいになります。売り場は育種家ごとに分けて株を陳列。花や葉の個性は育種家によって少しずつ異なるので、見比べながら自分の好みを見つけられます。期間中は、この店特有の「ドラフト会議」というくじ引き大会のイベントが開かれ、大いに盛り上がるのだそう。また、旬の育種家によるトークイベントなども毎年開催されています。 植物だけじゃない! 店の最大の‘売り’は寄せ植え提案 「良質で豊富な品揃え」に加えて力を入れているのは、寄せ植えづくりの提案です。‘Kanekyu金久スタイル’と称するこの店の寄せ植えのメソッドは、いろいろな種類を盛り込みすぎずにシンプルに仕上げ、ワンシーズンずっと楽しめることを大切にしたアレンジづくり。美しいデザインであることはもちろん、健やかな状態を維持できる組み合わせであることにも重点を置いています。「花だけでなくカラーリーフを積極的に使うと、きれいが長もちするだけでなく、表情がぐっと深まりますよ」と、スタッフで寄せ植え担当の植田英子さん。 多肉植物コーナーに瑞々しい彩りを添えている寄せ植え。アレンジの提案だけでなく、売り場の盛り上げ役としても。 寄せ植えにオススメのカラーリーフも充実。花よりもリーフを多めに盛り込むのが‘Kanekyu金久スタイル’。 大小さまざまなコンテナもたくさん取り揃えています。グリーンが頭上を覆う売り場の中でのショッピングもなかなかオツなもの。 Kanekyu金久スタイルの寄せ植え かわいらしい・華やか・シックなど、さまざまな雰囲気の寄せ植えが揃っています。どれもシンプルで育てやすいものばかり。ぜひ参考にしてみて。 ◆あでやかでいてナチュラルな寄せ植え 【使った花】 ペンタス、クレロデンドロム、ヒポエステス(白斑)、のミスカンサス、ワイヤープランツなど ◆カップ型の鉢でフォーマルな寄せ植え 【使った花】 左/コルディリネ‘ピンクパッション’、斑入りサザンクロス‘フィオリーナクイーン’、ペルネッティア、ヒューケラ 右/コルディリネ‘ピンクパッション、’ヘミジギア‘ピンクサファイア’、ハツユキカズラ ◆色味を抑えたシックな寄せ植え 【使った花】 ビオラ、コクリュウ、エリカ‘バレリーグリフィス’、プリムローズジャスミン ◆繊細で淡雪のような寄せ植え 【使った花】 左/エリカ‘エアリーホワイト’、コロキア、ヒサカキ‘ミスティホワイト’ 右/カルーナ、ヒサカキ‘ミスティホワイト’ ◆カラーリーフのみのしっとりとした寄せ植え 【使った花】 左/ヒューケラ、アスパラ、コクリュウ、ヘミグラフィス 右/ヒューケラ、シダ、アイビー インドアグリーンも充実 ギフトにも最適 建物の中は、インドアグリーン売り場です。毎年、沖縄に仕入れに行き、定番品種から変わった種類まで豊富なバリエーション。どれもおしゃれなコンテナに丁寧に植え込みがされているので、ギフトにも最適です。希望があれば植え替えや取り寄せも可能なので、ぜひ相談してみて。 神藤さんイチオシの植物はコレ! 砂糖菓子のように愛らしいミニシクラメン 冬に注目なのが、最近変わった種類が多く出回っているミニシクラメン。「お気に入りの鉢に、ひと株ポンと入れるだけで、シーンがぐっとおしゃれになりますよ」と神藤さん。一般的なシクラメンより丈夫で育てやすく、冬は霜や寒風の当たらない明るい場所で、夏は水を切りながら涼しい場所で管理すれば、翌年また楽しめます。 【フリルがかるシクラメン】 【コロンと咲くシクラメン】 【つぼみがユニークなシクラメン】 【ツートンカラーの品種】 【葉が変わっている品種】 【そのほかの愛らしいシクラメン】 育種家がこだわって生み出した植物を求めて日本各地を回り、自分の目で確かめながら入荷するスタイルにこだわり続ける店「Kanekyu金久」。植物の管理にも一切妥協をしないといった姿勢が生み出した、信頼と珠玉の逸品が詰まったショップです。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、JR阪和線日根野駅から徒歩15分。 阪神高速4号湾岸線「泉佐野南」IC、または 阪和自動車道「泉佐野・上之郷IC」から約10分。 【GARDEN SHOP DATA】 Kanekyu金久 〒598-0021 大阪府泉佐野市日根野2545 TEL: 072-467-2413 URL: http://kanekyu.sblo.jp/ 営業時間:9:00~18:00 定休日:無休(正月を除く) 併せて読みたい ・素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪3 神奈川「苔丸」 ・まだまだ買い時! パンジー・ビオラでつくる バスケットの花かごとリースの寄せ植え ・ガーデンデザイナーが教える「寄せ植え上手」のコツ Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
-
岐阜県

花の庭巡りならここ! 3県にわたって敷地が広がる日本一大きな公園「国営木曽三川公園」内「木曽三川公園…
敷地の広さを生かした、面で魅せる植栽 「国営木曽三川公園」は、愛知県、岐阜県、三重県の3県にわたって敷地が広がる、日本一大きな公園です。木曽三川(木曽川、長良川、揖斐川)下流域の広大な土地を生かし、東海地方の人々のためのレクリエーション施設として整備されました。13の公園を含んでいるため、とても一日では回りきれない規模ですが、今回は四季を通して花見を楽しめる「木曽三川公園センター」に絞った情報をお届けします。 「木曽三川公園センター」は、「南ゾーン」と「北ゾーン」に区分されています。季節の草花で花壇を彩っているのは、主に「北ゾーン」で、中央に位置する高さ65mの展望タワー(有料)の見学も含めて、大人の足で約60分ほどで回れる規模です。開花リレーは、春のチューリップ、桜、ネモフィラ、夏のキバナコスモス、ヒマワリ、秋のコスモス、冬のパンジー、ビオラ、アイスチューリップと、季節によって見どころが移っていくので、いつ訪れても花見を楽しめます。一年を通して週末にイベントを開催しており、マルシェやハンドメイド市が立つ日もあるので、花見のついでに買い物を楽しむのもいいですね。 春から冬まで開花リレーでつなぐ、花の絶えない公園 「木曽三川公園センター」の北ゾーン大花壇西のエリアでは、4月上旬に約50本で織りなす桜並木の景色が楽しめます。約30年前に公園がオープンした際に植栽された桜が、それぞれに大きく育ち、枝葉を存分に伸ばした見事な樹形です。園内への飲食物の持ち込みは認められているので、青空の下でお弁当やおやつを広げて、春の到来を実感するのもいいですね。 ※建物内への飲食物の持ち込みは不可となっています。 4月上旬〜中旬、「北ゾーン」の大花壇では、約3,800㎡の敷地に植栽された約21万5000株のチューリップ、約10万5000株のムスカリが見頃を迎えます。「木曽三川の流れ」のイメージをデザインに込めた壮大な景色を、一度は見ておきたいもの。毎年色彩を変えて植栽されるので、この季節を楽しみに多くのリピーターが訪れ、熱心に写真に収める姿が見られます。 「木曽三川公園センター」の「北ゾーン」では、6月頃に約200株のアジサイが絵になる風景をつくりだします。日本原産のアジサイや西洋アジサイ、近年人気が高まっている‘アナベル’など、さまざまな品種が見られるので「我が家のガーデンに取り入れるならどれがいいかな?」と見比べるのも楽しいものです。古民家を背景に、ノスタルジックな雰囲気の写真を撮影できるスポットもあります。 8月になると「北ゾーン」にある「花絵花壇」「園路脇花壇」に植栽されたヒマワリが見頃になります。‘マティス’‘ゴッホ’‘モネ’など5品種、約3万7000本のヒマワリが開花。「花絵花壇」では草丈の高さを生かして「迷路花壇」がつくられ、ヒマワリ畑の中に入っての散策も楽しめますよ! 「木曽三川公園センター」の「北ゾーン」の大花壇では、9月下旬〜10月中旬にコスモスが見頃に。。‘ダブルクリック’や‘ハッピーリング’などさまざまな品種、約30万株のコスモスが一斉に開花し、風に揺らいで華やかな景色をつくりだします。毎年9月中旬〜11月上旬に「秋の花物語」と題したイベントが開催され、週末にマルシェやハンドメイド市、ジャズコンサートなどが楽しめます。園内には、秋の草花で彩られたインスタ映えする撮影スポットも登場しますよ! 展望タワーから360度に広がる景色を堪能!冬はイルミネーションの夜景を楽しんで 「木曽三川公園センター」内には、「水と緑の館・展望タワー」があり、大人620円、小中学生300円で入館できます(団体・障がい者割引あり)。高さ56m(展望タワーは65mですが、展望室は56mです)の展望室まで上がると、眼下に木曽川、長良川、揖斐川の「木曽三川」を一望でき、水郷の景観を360°見渡すことができますよ! また、治水の歴史や風土、この地域で見られる植物、動物、魚などの展示コーナーを常設。プリザーブドフラワー、万華鏡、立体カードなどのクラフト体験教室も開かれています。 「木曽三川公園センター」では、11月下旬〜12月31日まで、「冬の光物語」と題した、ウインター・イルミネーションが灯されます。点灯時間は16:30〜21:00。毎年テーマを変えて、50万球の電飾で色彩豊かに彩られます。イルミネーション期間中は、コンサートや花火の打ち上げ、クリスマスマーケットなど、さまざまなイベントが開催されるので、ぜひ夜の散策を楽しみましょう! 地元名物のなまず料理やみそかつ定食のほかデザートも充実の「レストラン ままずカフェ」 「木曽三川公園センター」内にある「レストラン ままずカフェ」は、客席数約60席で、大きなガラス窓から公園の眺望を楽しめます。営業時間は10:30〜17:00(3〜11月)、11:30〜16:00(12〜2月)※イベントにより変更あり。定休日は第2月曜(祭日の場合は翌日)、4・8・12月は無休。メニューは和食、洋食ともに充実しており、ランチの価格帯は700〜800円。人気メニューは 「ヒレみそかつ定食」1,100円。デザートの「ままずカフェの気まぐれデザードプレート」580円(ドリンクバーつき750円)もオススメです。 写真は名物の「あんかけままず定食」950円。淡白な白身の食用なまずと、甘辛いたれとの相性が抜群の一品です。ほかに「ままずフライ丼」850円、「ままずバーガー」680円(土日限定!)もあります。ぜひご当地メニューを味わってみましょう! Information 国営木曽三川公園 木曽三川公園センター 所在地:岐阜県海津市海津町油島255-3TEL:0584-54-5531kisosansenkoen.jp アクセス:養老鉄道石津駅から海津市コミュニティバス「木曽三川公園」下車すぐ(夜間はありません) オープン期間:通年 休園日:第2月曜(祭日の場合は翌日)、4・8・12月は無休 営業時間:9:30~17:00(3~6月、9〜11月)、9:30~18:00(7~8月)、9:30~16: 30(12月~2月)※イベントにより、変更あり。 料金:無料(水と緑の館・展望タワーは有料 大人620円、小中学生300円) 駐車場:1,231台(無料)
-
千葉県

花の庭巡りならここ! 植物がテーマのミュージアム「三陽メディアフラワーミュージアム 千葉市花の美術館…
3つのガーデンと屋内花壇、温室の熱帯植物が楽しめる 1996年に開館した「三陽メディアフラワーミュージアム(開館時の名称: 千葉市花の美術館)」は、敷地面積、約3ヘクタールで、ゆっくり歩いて1時間くらいで一巡りできる広さです。屋外の前庭・中庭・後庭、アトリウムガーデン(屋内花壇)や熱帯温室で構成され、年間約1,600種4万8000株の植物が育っています。温室の熱帯・亜熱帯植物、展示棟のアトリウムガーデンなど、天候に左右されない展示構成も魅力です。屋上庭園にはキッチンガーデンがあり、子ども連れの家族からは「スーパーに並んでいる姿しか知らない野菜が実際に実っている姿を、初めて見た」「野菜の花もきれい」といった声も聞こえてきます。 手入れが行き届いたガーデンは、年に数回の植え替えがなされ、いつ訪れても華やぐ景色に心浮き立ち、足どりも軽くなります。春は河津桜からスタートし、ポピー、初夏のバラ、アジサイ、ラベンダー、夏はヒマワリ、秋はダリア、コスモス、冬は寒咲きのナノハナ、クリスマスローズ、スイセンなどへと開花リレーがつながります。温室では、3月頃から咲くヒスイカズラが人気。季節の花が見頃を迎える時期に合わせて、「フラワーイースター」「ローズフェア」「ハーブウィーク」「ハロウィンパーティー」「フローラルクリスマス」など年9回のイベントを開催しており、足繁く通うリピーターも多く見られます。 前庭・中庭・後庭とゾーニングされ、 それぞれに異なるガーデンスタイルで魅了 「三陽メディアフラワーミュージアム 千葉市花の美術館」のエントランスには、ウェルカムフラワーが飾られているので、これを目印に、どうぞお入りください! 植え替えは年に4回実施しており、2色以上の花色を組み合わせた、華やかな寄せ植えがゲストを迎えます。上写真は初夏のエントランスの様子で、フラワーボックスを鮮やかに彩っているのは黄色とオレンジのナスタチウムです。 なお、屋外の庭はペット同伴で散策できます。館内へは、ペットをキャリーバッグに入れてファスナーを閉じていればOKです。 レストラン、アトリウム、温室に囲まれた中庭のナチュラルガーデンは、四方から眺めることができます。アトリウムから中庭に出られるので、車椅子でも散策が可能です。宿根草をメインに、一年草を添えて華やぎをプラスした植栽で、季節の移ろいを感じることができます。ところどころにガーデンテーブルと椅子が置かれており、屋内以外は飲食物の持ち込みOKなので、おやつを広げて一休みするのもいいですね。 後庭のローズガーデンでは、約200種300株のバラが楽しめます。ゲートには、3本のアーチに仕立てられた3種の‘ピエール・ドゥ・ロンサール’がお出迎え。フェンスやコテージにもさまざまなつるバラが彩りを添えます。「バラの海」と名づけられた花壇はバラと宿根草、一年草が奏でるハーモニーが見どころ。白、ピンク、赤、オレンジ、黄色、紫の6つの色別に、カラーコーディネートされています。 上写真のバラは‘ルノアール’。‘レオナルド・ダ・ビンチ’‘レンブラント’‘モネ’など芸術家にちなんだ名前のバラが植栽されている「バラの美術館」コーナーで見られます。 温室は熱帯植物に囲まれて、まるでジャングルのよう! 冬は、高さ23m、直径33mもの規模を誇る温室を、ゆっくりと見学してはいかがでしょう。温室内の滝の周りに生い茂るヤシやヘゴ、色鮮やかなハイビスカス、コチョウランのほか、パイナップルやバナナ、グァバなどの果樹も含む熱帯・亜熱帯の植物が約300種、3,000株植栽されています。 写真のように、ヒカゲヘゴやヤシなどは高さ10m以上にも達し(ダイオウヤシはなんと20m!)、まるでジャングルに入り込んだかのよう。ふだんはなかなか触れることのできない植物の姿を、観察してみましょう。 室内のアトリウムガーデン。写真の季節は冬で、一足早く春の花々を植栽。冬でも草花が爛漫と咲く景色は、花を愛するガーデナーはもちろん、訪れるすべての人々にとって何よりのサプリメントですね。 アトリウムガーデンは年6回、テーマを設けて模様替えしています。春は「イースターガーデン」、夏は「アドベンチャーガーデン」、秋は「ハロウィンパーティー」、冬は「フローラルクリスマス」など、季節によってガラリと雰囲気が変わりますよ! 「三陽メディアフラワーミュージアム 千葉市花の美術館」のアトリウムガーデンの中でも人気が高いのが、多肉植物を使った箱庭の展示です。この展示はミュージアムのスタッフがデザインから作成。小さな家なども手づくりし、多肉植物を約100種類ほど使って美しい箱庭の景色をつくりだしています。写真は秋のハロウィンの季節に展示したもので、それぞれの季節に合わせて細かく模様替えされているんです! 夏は麦わら帽子をかぶった釣りをしているおじさんがいたり、冬には家の玄関扉に小さなクリスマスリースが飾られ、毛糸の帽子をかぶったおじいさんやおばあさんがクリスマスを楽しんでいたりと、ほっこりと心なごむ演出が見られます。 年間約40講座が開催されるカレッジは大人気 雑貨ショップやレストランも忘れずにのぞこう! 「三陽メディアフラワーミュージアム 千葉市花の美術館」内にある「花工房」では、さまざまなフラワーカレッジ(寄せ植えやクラフト教室など)を年間約40講座設けています。写真は、夏に開かれた子どもカレッジの陶芸教室。好きな葉を粘土に押しつけて型を取り、葉っぱのお皿などをつくっています。特に夏休みの子どもカレッジは大人気で、キャンセル待ちになることもしばしばです。 お土産ものを扱う売店もあるので、ぜひ立ち寄ってみましょう。お花をモチーフにした雑貨が多数揃うセレクトショップでは、素敵な品々に目移りしそう。ハンカチや布巾、ホームフレグランスサシェなど500〜1,000円くらいの雑貨が人気で、手土産にちょうどいいですね。店頭では、鉢花も販売していますよ。 「三陽メディアフラワーミュージアム 千葉市花の美術館」内の休憩棟には、併設でイタリアンレストランもあるので、ちょっと一息を入れるのもいいですね。中庭に面した大きな窓から自然光が入る明るい店内で、ガーデンの花や緑を眺めながら食事を楽しめます。また、テラス席ではワンちゃん同伴OK。ワンちゃん用のメニューもありますよ! Information 三陽メディアフラワーミュージアム 千葉市花の美術館 所在地:千葉市美浜区高浜7-2-4 TEL:043-277-8776 https://sunsetbeachpark.jp/facilities/flower.html アクセス:公共交通機関/JR稲毛駅西口2番線バス乗り場より、海浜交通バス「海浜公園プール」行で「花の美術館」下車。または「高浜車庫」行で終点下車徒歩5分 JR稲毛海岸駅南口2番線バス乗り場より、海浜交通バス「海浜公園入口」行で終点下車徒歩5分 オープン期間:通年 休館日:月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始12月29日〜1月3日 営業時間:9:30~17:00 料金:大人300円 小・中学生150円(30名以上利用で団体割引有) 駐車場:550台 普通車:300円(3時間まで)、以降1時間経過ごとに100円、1日最大600円 ※プール開催中のみ1日600円 大型車:1日1回2000円 併せて読みたい ・花の庭巡りならここ! エキゾチックな植物の宝庫「夢の島熱帯植物館」 ・神秘の色のヒスイカズラ、その魅力とは ・花好きさんの旅案内、シンガポール「ナショナル・オーキッド・ガーデン」 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
-
愛知県

花の庭巡りならここ! 花々に彩られたテーマパーク「ラグーナテンボス ラグナシア フラワーラグーンエリア…
複合型リゾート施設の最新コンテンツ 季節の花々に彩られた楽園へ出かけよう 複合型リゾート施設「ラグーナテンボス」内にオープンしたのが、「ガーデン」をテーマにあふれんばかりの花々で彩られる「ラグーナテンボス ラグナシア フラワーラグーンエリア」です。園内の面積は9,000㎡で、「フラワーフォール」「フラワーバレー」「フラワービーチ」「フラワーアーチ」「フラワースカイ」「フラワーオーバル」の6つのエリアにゾーニングされ、1時間ほどで巡ることができます。 コンセプトは「花と水とアートが融合したエンターテインメントガーデン」で、見せ方にこだわった芸術的な花々の競演には、舌を巻くばかり。「草花にはこれほどの演出力があったのか」と、想像を超えたエンターテインメントあふれる空間に圧倒されます。空中散歩ができる花の園路など、テーマパークならではの展示構成を、ぜひ楽しみましょう。 季節によって、ミニバラ詰め放題やサシェづくり体験、オリジナルハーバリウム体験、チューリップの球根詰め放題など、さまざまなイベントも開催されているので、要チェックです! 手入れの行き届いたフラワーテーマパーク 一面を彩る花々からパワーをもらえそう ゲートから一歩入ると、まず目に飛び込んでくるのが「フラワーフォール」。インパクト大の高さ4mの壁が30mに渡って続き、花々で鮮やかに彩られています。この壁と足元のフラワーベッドとをつなぐ、大型の寄せ植えコンテナも見どころです。せせらぎの音が心地よい小さな滝も流れ、自然に奥へと歩みが導かれます。 まるで花畑の上を空中散歩している気分になれる「フラワーバレー」の一角。小道が谷となり、両脇にはなだらかな丘が設けられ、芸術的な花々の植栽には拍手を送りたくなるほどです。丘によって周囲への視界を遮ることで、「小道のカーブの先には、どんな景色が広がるのかしら?」と、より期待感が高まります。 「フラワーバレー」で空中散歩をしている気分になれる理由が、これ。歩道はガラス張りで整備されており、その下にも季節の花々があふれんばかりに咲いているのです! ガラスを透かして見るので、発色のいい草花を選び、上向きに咲く花を厳選しています。上から足元の花を覗き込む体験なんてなかなかありませんから、空中散歩の贅沢を存分に楽しみましょう。 高さ4mの花の壁が圧巻の「フラワーオーバル」。楕円形のプールを中心に360°すべてを花の壁で筒形に囲っています。色のコーディネート・デザインは季節によって変えているので、何度でも訪れてみたいものです。プールの水面には周囲の花々が映り込んで、いっそう華やぎをもたらします。ベンチが設けられているので、座ってゆっくり眺めるのもいいですね。訪れる人々からは「写真映えしました」「孫とまた一緒に来たいです」「流れてくる音楽ともマッチしていて癒されました」といった声が聞かれます。 最後に視界がパッと開けた先に登場するのは、「フラワービーチ」。真っ青なビーチの上に浮かぶ花の島をイメージしています。夏は南国らしい花が植栽され、雰囲気を盛り上げます。季節に応じたフォトブースが設けられているので、ぜひ記念にインスタ映えする写真を撮影しましょう。夜のライトアップの際には、水中イルミネーションが光り輝き、色が幾度も変化して花々の魅力を引き出します。 「フラワービーチ」横、「フラワーアーチ」のエリア。季節の花で埋め尽くされた、ダイナミックなアーチが10基つながるコーナーです。季節によって植栽を変えて色合わせを考慮し、アートとして表現。色とりどりの花のアーチをくぐって、先へと続く散策路を進みましょう。 ナイトタイムのライトアップは幻想的! 冬期はイルミネーション「ジュエルガーデン」を開催 「ラグーナテンボス ラグナシア フラワーラグーンエリア」はラグナシア閉園まで楽しめます。日没後はライトアップされ、夜ならではの花と光のコラボレーションを演出。昼間とは違った幻想的な空間を楽しみましょう。冬のイルミネーション期間は、まるで宝石をちりばめたような「ジュエルガーデン」が披露されます。 絵本の中から飛び出してきたかのような キュートなカフェレストランでひと休み 「ラグーナテンボス ラグナシア フラワーラグーンエリア」敷地奥に登場する、カフェレストラン「ラグーナの森」。まるで絵本から飛び出したかのようなメルヘンチックな外観が目印です。客席は店内が36席、テラス席が18席あり、花景色を眺めながら、ゆったりくつろげます。 インテリアも可愛らしい「ラグーナの森」は、フレンチスタイルのカフェレストラン。ランチの価格帯は1,000〜1,600円で、ここでしか味わえないオリジナルメニューが揃い、お皿の中に花を散らすなど、目でも楽しませてくれます。人気メニューは炙りサーモンアボカド丼1,500円、ストウブ鍋1,600円など。 大人気メニューのローストビーフ丼1,600円。ジューシーなビーフのトップには、卵黄が載っていますよ! 西洋わさびソースとの相性も抜群、感動の一皿です。 デザートメニューも充実しています。モンブランやベイクドチーズケーキなど、各種ケーキにジェラートが添えられた一皿が680円。写真の「森のチョコレートパフェ」は1,250円です。 Information ラグーナテンボス ラグナシア フラワーラグーンエリア 所在地:愛知県蒲郡市海陽町2-3 TEL:0570-097117 https://www.lagunatenbosch.co.jp/event/rg/flower/ アクセス:公共交通機関/JR東海道線・名鉄蒲郡線「蒲郡駅」より無料シャトルバス15分 車/東名高速道路「音羽蒲郡IC」よりオレンジロード経由で20分 オープン期間:通年 ※不定休 休園日:なし 営業時間:10:00~21:00 ※期間・日によって異なる 料金:大人2,250円 小学生1,300円 幼児800円 駐車場:1,000台 800円(1日)※期間・日によって変動あり 併せて読みたい ・花好きさんの旅案内 シンガポール「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」 ・オージーガーデニングのすすめ「オーストラリアの木生羊歯」 ・花の庭巡りならここ! 22のガーデンスタイルが楽しめる「名古屋港ワイルドフラワーガーデン“ブルーボネット”」 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
-
イギリス

英国「シシングハースト・カースル・ガーデン」色彩豊かなローズガーデン&サウスコテージガーデン
120年前のこと、英国の慈善団体ナショナル・トラストは、開発で失われていく自然や、歴史ある建物や庭といった文化的遺産を守り、後世に残そうと、活動を始めました。多くのボランティアの力によって守り継がれる、その素晴らしい屋敷と庭を訪ねます 時とまどろみに埋もれた庭 シシングハーストの庭園は、詩人、作家として活躍した妻のヴィタ・サックヴィル=ウェストと、外交官で作家でもあった夫のハロルド・ニコルソンによって、1930年からつくられました。 庭園の設計は、夫ハロルドの担当。彼は、もともとあった古いレンガ塀を生かしつつ、セイヨウイチイの生け垣を間仕切りとして効果的に設計するなどして、個性の異なる庭がつながっていくようにデザインしました。そして、感性豊かな妻のヴィタは、夫のデザインした古典的でエレガントな枠組みの中に、色彩豊かでロマンチックな植栽を施しました。 1930年、ヴィタは300年間打ち捨てられていたシシングハースト・カースルに出合うと、一目で恋に落ちました。彼女の目には、廃墟と化していたエリザベス朝時代の建物が「眠りの森の城」のように映り、芸術家としてのイマジネーションをかきたてられたのです。「時とまどろみに埋もれた」場所。ヴィタはのちに『シシングハースト』と題した自らの詩の中でも、そう表現しています。彼女がつくり上げたのは、時の中に埋もれるような、秘密の花園でした。 色彩躍るローズガーデン 庭園のシンボルである塔(タワー)の下に広がる芝生から、脇にある小さなゲートをくぐると、その先にローズガーデンが広がっています。この庭が最も美しいのは、6月下旬から7月上旬。ヴィタが愛した数々のオールドローズが咲き誇る季節です。 ヴィタとハロルドが庭園をつくり始めた当初、バラは現在のホワイトガーデンに植えられていました。しかし、バラが増えて手狭になったために、1937年、キッチンガーデンとして使われていたこの区画に移され、新たにローズガーデンがつくられました。 ローズガーデンの構造の中心となるのは、長方形の庭のほぼ中央にある、「ロンデル」と呼ばれる円形の生け垣です。長い年月を経て厚い壁のようになったセイヨウイチイの生け垣は、小さな苗木から育てたとは想像もできないほど立派です。このロンデルからは四方に小径が出ていて、その一つは西の端にある、弧を描く石塀を背にした芝生のステージに行き当たります。ハロルドの設計した生け垣や芝生のステージには、どこか舞台装置のような趣があって、古典的なデザインながらも、ちょっとした驚きが隠されています。 ヴィタが庭づくりを始めた頃に心に描いていたのは、「バラやハニーサックル、イチジク、ブドウが揺れる」花景色でした。赤味がかった古いレンガ塀には、それらのつる性植物が絡まって、風に葉を揺らし、時とまどろみに埋もれる花園の雰囲気を生み出しています。 花壇では、こんもりと茂るように仕立てられた数々のバラの合間に、ピオニーやアリウム、アイリス、シュウメイギク、エレムルスといった宿根草や球根花が、ヴィタいわく「泡立つように」茂って、バラの美しさをさらに引き出しています。 20世紀のジャーナリスト、アン・スコット=ジェームズによると、ヴィタは「オールドローズの美しさや香りだけでなく、そのロマンに惹きつけられた」といいます。彼女は「長い歴史を持つバラ、例えば、17世紀にアラブ人によってペルシャからもたらされたであろう、暗い赤色をしたガリカ種のバラ」や、「‘カーディナル・ドゥ・リシュリュー’のような、過去の記憶を呼び起こすような名を持ったバラ」を好みました。ヴィタにとって、バラは美しいだけでなく、歴史を偲ばせ、詩作のイマジネーションを誘うものだったのかもしれません。 ヴィタは園芸の正式な教育を受けたわけではありませんでしたが、試行錯誤の中で自ら多くを学んだ、才能あるガーデナーでした。彼女が英国の新聞、オブザーバー紙に毎週書いていたガーデンコラムは人気で、亡くなる前年まで14年余りに渡って掲載されました。 ヴィタはむきだしの土が見えているのがとにかく嫌いで、その植栽スタイルは「どんな隙間にもどんどん詰め込む」というものでした。草花があふれるように茂って、きらめくような色彩と香りを放つ花景色を好んだヴィタは、完璧さを求めず、直感の告げるままに庭と向き合って、美しい植栽を生み出しました。 夕暮れ色のサウスコテージガーデン ピンクを基調としたロマンチックな雰囲気のローズガーデンとは対照的に、サウスコテージガーデンでは、黄色やオレンジの花々がハッとするようなまぶしさを放っています。 かつてこの庭は、単にコテージガーデンと呼ばれていましたが、ヴィクトリア朝時代に流行った、いわゆるコテージガーデン(田舎家の庭)のスタイルではありません。シシングハーストの他の庭と同様に、この庭にもヴィタとハロルドの洗練された美意識が感じられます。 庭の中央で目を引くのは、たっぷりとして丸みのある、やや不安定なフォルムをした、4本のセイヨウイチイのトピアリーです。そして、レンガや石を敷いたまっすぐな小径が、長方形の花壇を囲むように縦横に伸びています。 植栽のカラースキームは、黄、オレンジ、赤を中心としたもので、「サンセット」がテーマ。日本の夕暮れは茜色のイメージですが、ヴィタがイメージしたのはおそらく、温かみのある、黄金色に輝く光が降り注ぐような、イギリスの華やかな夕暮れだったのでしょう。 ヴィタの時代には、この庭の見頃は晩夏から初秋にかけてでしたが、現在は、春から夏をピークに、庭の楽しみが長く続くような植栽になっています。夏の花壇は本当にまばゆいばかりで、黄やオレンジの花色の魅力を再発見できます。 夏、色鮮やかに咲き誇るのは、インパクトのある花姿のトリトマやカンナ、それから、華やかなダリアです。バーバスカムが長い花穂を上に伸ばす一方で、クロコスミアはオレンジ色の花穂をゆらゆらと揺らします。 そしてそこに、スイートピーや赤いヒマワリ、ヒナゲシといった一年草が加わって、可愛らしさを添えています。 一方、春の庭は、夏と比べると、より温かみのあるトーンの花で満たされます。チューリップ、エリシムム、オダマキ、アークトチス(ハゴロモギク)が、穏やかに春の歓びを告げています。 ヴィタとハロルドは、地所内に点在する、エリザベス朝時代の4つの建物を住居として使っていました。庭園の入り口付近の建物には図書室と兼用の居間が、塔(タワー)にはヴィタの書斎がありました。ホワイトガーデン脇の家は子どもたちが暮らし、家族で食事をする場所で、このサウスコテージには、ハロルドの書斎と、2人の寝室や浴室がありました。それぞれの建物は、距離はあるものの庭によってつながれ、ヴィタとハロルドは生活の場が分散していても、気にすることはなかったといいます。 サウスコテージにあるハロルドの書斎やヴィタの寝室の窓辺からは、この明るい庭を見渡すことができます。ハロルドは、庭に置いてある石のくぼみで、夜の間に降った雨の量を調べるのを毎朝の日課にしていました。この庭は2人にとって、すぐそこにあった庭。最も身近で、日々の暮らしに深く結びついた庭でした。 併せて読みたい ・ガーデナー憧れの地「シシングハースト・カースル・ガーデン」誕生の物語 ・ナショナル・トラスト2018秋冬コレクション 英国有数の保養地 イングランド南西部を訪ねる ・英国の名園巡り、ビアトリクス・ポターの愛した暮らし「ヒル・トップ」
-

「庭道具屋toolbox」店長に教わる! 剪定バサミのスペシャルメンテナンス
「切れる」を「維持できる」のが魅力 FELCOの剪定バサミ 樹木類の手入れのなかで最も重要な「剪定作業」。この作業次第で、以降の植物の成長や見た目が左右されます。きちんと、そして気持ちよく作業ができるように、「切れるハサミ」を使いたいものです。理想は「切れる」と同時に「切れるのを維持できる」こと。その両方を兼ね備えているのが、皆さんご存知の「FELCOの剪定バサミ」です。 FELCOは精密機器を得意とするスイスの刃物メーカーの製品。ここのハサミは「切れ味がよい」ことはもちろんですが、それにプラスして「すべてのパーツに分解して手入れができ、壊れたパーツを交換できること」が、大きなポイントです。 ヨーロッパの庭文化は、庭の管理を職人に任せる日本の庭文化とは異なり、自身で作業しながら楽しむという歴史があります。一般家庭でもガーデンツールは自分で手入れして大切に長く使う習慣が根付いているので、FELCOは各家庭できちんと手入れができるように設計されているのです。 レッツ トライ! 年に1回は行いたいスペシャルケア 剪定バサミを使う頻度にもよりますが、バラなど剪定作業が多い植物を多く育てているガーデナーは、年に1回を目安にスペシャルケアを行いましょう。 通常は使用後、毎回布で水分と植物のヤニをふき取るだけで大丈夫。ヤニは粘りがあるなどしてこびりつきやすいので、ヤニクリーナー(下写真参照)を吹きかけて取り除くといいでしょう。でも、数年するとネジ周りの油が劣化して固まってしまったり、併せてヤニも混ざっていたりするので、ハサミを分解して、通常のケアでは取り切れない汚れを除くようにします。これがスペシャルケアです。 【まず道具を準備しましょう】 作業に必要なもの/①ボックスレンチ、②モンキーレンチ、③真鍮のワイヤーブラシ、④ヤニクリーナー、⑤刃物手入れ用オイル、⑥シャープナー(砥石)、⑦千枚通し、⑧メッシュサンドペーパー(100番) 【黒田さんにスペシャルケアをしてもらう、古びたハサミ】 このハサミは20年以上前に使われていて、長年放置されていたもの。当時こまめな手入れがなされていなかったため、刃の部分に植物のヤニが分厚くつき、やや開きにくくなってしまいました。しかし、サビはほとんど見られません。このハサミ、よみがえるのでしょうか? ※ここでお手入れするハサミは現在ほとんど出回っていないモデルFELCO4。現在のモデルとネジ周りの仕様は若干異なりますが、手入れ法は同じです 一つひとつ丁寧に分解して お手入れスタート! 【分解・手入れ】 まずスプリングを外す。引っ張ると簡単に外すことができる。 ハサミの表裏のナットをレンチで外す。 ナットが外れると、これらのパーツに分解できる。ネジとナットが入る向きを覚えておこう。 購入当初からつけられていたグリースとヤニなどの汚れが、刃以外の部分にもこびりついているのが分かる。 刃の平らな面をサンドペーパーに軽く押さえつけるようにしてこすり、汚れやサビを落とす。汚れだけを削るような感覚で力を入れる。 カーブが効いた刃面や側面などは、サンドペーパーを当ててこする。 ワイヤーブラシで、軽い汚れやサンドペーパーでこすって剥げた汚れを落とす。 サンドペーパーで落とせない凹凸部分などは、千枚通しで丁寧にこすって落とす。 ワイヤーブラシで汚れを払い落として、全体をチェックする。 スプリング部分の汚れやサビも、ワイヤーブラシでこすって落とす。 【組み立て】 組み立てる前に、ナットが入る中心部分にオイルをさす。 合わせる側の穴にも油をさす。 ボルトを元の穴に通す。 ハサミをひっくり返してナットをはめ、レンチで締める。固く締めすぎないように注意。 ハンドルの開き具合を確かめる。開いた上側のハンドルが、ゆっくり落ちるぐらいの締め加減が◎。 スプリングを取り付け、仕上げに砥石で刃を研ぐ。フェルコの切り刃は刃先部分の幅が2~3mmとなっている。 刃の裏面は水平に砥石で研ぐ。 研ぎが終わったら終了! 見違えるようにきれいな姿になり、古びていたのではなく汚れていただけで、見事によみがえった。 販売されている FELCO専用のお手入れアイテム&パーツ FELCOは、スペシャルケアに必要な専用の道具を揃えています。アイテムは、砥石とグリース、破損やひどいサビが発生してしまった刃やスプリングのための交換パーツの4つ。ホームセンターに行けばいろいろな道具類がありますが、砥石とグリースは専用のアイテムを使うと安心です。 左からハサミ用砥石、グリース、替え刃、スプリング。砥石はダイヤモンドコーティングの鋼鉄製で、コンパクトで使いやすいのがGood。グリースはハサミの潤滑な動きを安定的に維持してくれます。 【グリースを注入する部分】 現在出回っている剪定バサミは、レクチャーで使ったFELCO4と異なり、ネジ部分で2段構造になっており、締める強さの微調整が簡単にできます。グリースをここの内側に注入することで、潤滑性が高まります。 ハサミを分解したら、ネジの穴周りのくぼみにグリースを注入します。購入当初から塗られているグリースは、ヤニと混ざって劣化していることもあるので拭き取ります。 toolboxでオススメする FELCOのハサミはこの6本! ショップオススメの、現在販売されているハサミ6種です。よく見ると少しずつハンドルや刃の大きさ、形態が異なります。 ◆FELCO6 軽量・コンパクトで使い勝手がよく、特に女性など手の小さい人に向いている。ホームユースタイプ。 (全長:19.5㎝/重さ:210g) ◆FELCO8 標準的なサイズ。ハンドルから切刃に力を伝えやすいフォルムに、フィット感抜群のハンドルと、機能性が非常に高い。 (全長:21cm 重さ:245g) ◆FELCO100 切刃には、切断した茎や枝を落とさずつかむことができるプレートが付いており、バラの剪定や果樹の収穫に向く。 (全長:21cm 重さ:255g) ◆FELCO12 コンパクトで軽量なハンドルが回転式のタイプ。力が刃に効率よく伝わるので疲れにくく、相当数剪定する人に向く。 (全長:20cm 重量:265g) ◆FELCO31 両刃仕上げの切刃と枝の滑りを抑えるアンビル(受台)を採用しており、枝を切断した時の衝撃を軽減。 両手兼用。 (全長:21cm 重量:225g) ◆FELCO13 全長が長く、両手で握って力を入れて作業できるロングハンドル。太い枝の剪定などの時に活用する。両手兼用。 (全長:27cm 重量:310g) 大切なのは日々の手入れ 念願かなって手に入れた高価なハサミも、そのつどの手入れをしなければ、次第に仕事の精度も低下してしまいます。使い終わったらすぐにヤニクリーナーでヤニを取り除き、水分もふき取った状態で保存をするようにしましょう。普段からきちんと手入れをしておけば、スペシャルケアも楽にできます。 「庭道具屋toolbox」でFELCOの剪定バサミを購入された方は、黒田さんがショップにてメンテナンスをしてくれます。その他の場合は、FELCO剪定バサミの輸入代理店による「FELCOメンテナンス工房」があるので、以下にご相談ください。 昭和貿易株式会社「FELCOメンテナンス工房」 http://www.showa-boeki.co.jp/felco/ 併せて読みたい ・素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪2 「庭道具屋 toolbox」 ・バラが似合うおしゃれなガーデングッズ5つ ・イギリスのガーデンデザイナーもオススメするデザイン・機能性に優れた5アイテム 【GARDEN SHOP DATA】 庭道具屋 toolbox 世界のこだわりのガーデンツールやアイテムを扱う、園芸ショップ。逸品がずらりと並ぶ品ぞろえに、本格派ガーデナーの熱い支持を得ている。2019年1月、世田谷・用賀から移転して、埼玉県越谷市にオープン予定。 住所:埼玉県越谷市恩間413-10 TEL: 048-971-7814/FAX: 048-971-7815 URL: https://www.rakuten.co.jp/toolbox/ Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
-
愛知県

花の庭巡りならここ! 22のガーデンスタイルが楽しめる「名古屋港ワイルドフラワーガーデン“ブルーボネッ…
丘一面に広がるワイルドフラワーが魅力 「名古屋港ワイルドフラワーガーデン“ブルーボネット”」は中部電力創立50周年の節目に、新名古屋火力発電所の緑地の一部を地域共生施設として提供するために整備され、2002年にオープンしました。 広さは約2万2000㎡で、ゆっくり歩いて1時間程度で園内を散策できます。敷地の外周は緑地で周囲の環境との遮断を図っているため、名古屋港の海と植物のみに囲まれた園内は、都会の喧騒から離れた癒しの空間。自然風庭園がコンセプトで、趣向を凝らした22のガーデンを楽しめます。中でも世界で活躍するトップガーデナーが手がけたモデルガーデンが見どころ。ジョン・ブルックス氏の「クール・ブリタニア」、ダレル・モリソン氏の「日本・テキサス友好の庭」、ロビン・ウィリアムズ氏の「ファミリーガーデン」は必見です。 趣向を凝らした22のガーデンスタイルに 心ときめき、歩みを進めるのが楽しい! この庭園の愛称、「ブルーボネット」は、ルピナスの一種、「テキサス・ブルーボネット」から名づけられました。1980年代、広大な土地の緑化に「ワイルドフラワー緑化手法」の先鞭をつけたアメリカ・テキサス州の州花です。小さな花の一つひとつが、アメリカ西部開拓時代に女性がかぶっていた日よけの帽子「ボネット」に似ていることから、この名がついたとされています。この「名古屋港ワイルドフラワーガーデン“ブルーボネット”」のシンボルフラワーは、4〜5月頃に園内各所で開花します。 写真は4月上旬頃の「花の谷」のエリア。チューリップ、ブルーボネット、 リナリア、クリサンセマム・ムルチコーレなどが、まるで自然の中で咲いているように規則性を配して植栽されています。ここは「名古屋港ワイルドフラワーガーデン“ブルーボネット”」の中央に位置し、一年を通して見せ場となるエリアです。花色はビビッドカラーをあまり使わず、優しい雰囲気のパステルカラーで統一されています。 写真は「名古屋港ワイルドフラワーガーデン“ブルーボネット”」の名前の由来となっている「ワイルドフラワーの里」で、1,820㎡という園内で一番広いエリア。「ワイルドフラワー」とは、野生の草花のこと。自然のままに草花が咲き乱れているようにつくられた庭園を「ワイルドフラワーガーデン」といい、ここでは冬と夏にそれぞれ20種以上のタネをブレンドして播き、春と秋に見頃を迎えます。写真は4月頃に咲くブルーのネモフィラ‘メンジェシー’と黄色のラステニアのミックス。小高い丘の上のガゼボから一望すると、ワイルドフラワーが織りなす壮大な景色を楽しめます。 写真はエントランス近くに位置し、ウェルカムガーデンの役割を果たす5月頃の「サンクンガーデン」。サンクンガーデンとは、地表面より掘り下げて造成した庭や花壇、テラスのことで、「沈床式庭園」とも呼ばれています。掘り下げて一段低くすることで、立体感を出すとともに、視界を遮らず敷地を広く見せる効果があります。また遠くからでは全体が分からないため、近寄って花壇を見つけた時には驚きがあり、近づくにつれ姿を現す美しい花々に惹きつけられるという、人を誘導する効果のあるガーデンです。この花壇ではコクチナシやラベンダー、ローズマリーなど香りのよい植物と四季折々の草花を植栽し、きっちり区分けした幾何学模様のデザインで対比調和させています。年に7回の植え替えを行っているので、出かけるたびに違った景色を楽しめます。 写真の「フラワーリング」は開けた海の景色を背景に、華やかな写真を撮影できるフォトスポット。中央にしつらえてある鐘を鳴らして、幸せを呼んでみましょう! 「フラワーリング」の植え替えも、年に7回行われているので、どの季節に訪れても旬の花が出迎えてくれます。テーマカラーは赤が多く、遠くからでも目を引く植栽にしています。 「名古屋港ワイルドフラワーガーデン“ブルーボネット”」は日本植物園協会にも加盟しており、一年を通して約600種5万株もの植物が見られます。 写真は「花の谷」の秋の景色。約3,000株のコスモス‘イエローキャンパス’は10月中旬〜11月上旬に見頃になります。この時期はキバナコスモス、レモンマリーゴールド、シュウメイギク、コバノランタナなどが咲き、園内をオータムカラーで染め上げます。 「名古屋港ワイルドフラワーガーデン“ブルーボネット”」の22のガーデンは、それぞれにコンセプトが与えられ、野趣あふれるエリアがあれば、つくり込まれたモデルガーデンもあり、場所ごとにメリハリのきいた多様な庭のスタイルを楽しめます。自庭のヒントになりそうなアイデアが満載なので、アーチやパーゴラ、トレリスの使い方、ハンギングバスケットやコンテナの見せ方などをチェックしておきたいですね。 写真は、有名ガーデンデザイナーのダレル・モリソン氏が手がけた「日本・テキサス友好の庭」です。後ろの建物は「アラモの砦」をイメージしたもので、これを背景にテキサス州の景色を表現。季節は秋で、日本のススキに似たパンパスグラスやパープルファウンテングラスを植栽して、友好を表しています。 年間を通して魅力的なイベントが目白押し! 「花文化館」では多様なガーデニング情報を得よう 毎年10月は、ハロウィンの楽しいイベントを開催。写真は春と秋にしつらえられるインスタ映えするフォトスポットで、秋はジャック・オ・ランタンなどハロウィン一色の飾りつけをバックに記念撮影ができます。園内の各所にハロウィンのディスプレイが見られ、園内に流れるBGMもハロウィンらしいメロディで雰囲気をアップ。イベント期間中に仮装して入園すると、オリジナル缶バッジがプレゼントされますよ。プレゼントが当たる園内クイズラリーも開催されるので、この時期ならではのイベントを楽しみましょう! ハロウィン期間に限らず、ガーデンコンサートやガーデンガイドツアー、ガーデニング講座、クラフト教室など、年間を通してイベントが開催されているので、公式ホームページをのぞいてチェックをしてから出かけるのもオススメです。 「名古屋港ワイルドフラワーガーデン“ブルーボネット”」には、クラシックなビクトリア調の建物があり、ここで入園券を購入します。1Fにはオシャレなレストランとガーデンショップがあるので、ぜひお立ち寄りを。2Fは「花文化館」で、庭づくりのシミュレーションコーナーやオープンシアターなどがあり、パソコンや映像を使ってガーデンや草花に関する情報発信をしています。不定期でボタニカルアートなどの展示会も開催。 充実の品揃えにワクワクするガーデンショップと 多彩なメニューが嬉しいレストランも楽しんで 「センターハウス」1Fのガーデンショップ「ボネット」には、季節の花苗やガーデニング用品、ハンドメイドのイギリス製「ウィッチフォード」の鉢、雑貨類などが並びます。センスのいいガーデングッズが充実しているので、ガーデナーなら、ついお財布の紐がゆるんでしまうかも。お菓子などのお土産品やオリジナルグッズも揃っていますよ。 ここでしか買えないオリジナル商品のオススメは、無添加ジャム(ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー)各564円、100%天然ハチミツ漬けのローズハニー564円、ハニーナッツ1,000円、キッチンソルト(サラダソルト、ハーブソルト)各361円、「名古屋港ワイルドフラワーガーデン“ブルーボネット”」内で咲くワイルドフラワーの種をミックスした種袋430円(いずれも税抜き)など。 「名古屋港ワイルドフラワーガーデン“ブルーボネット”」の有料エリアへの飲食の持ち込みは不可となっています。おなかがすいたら「センターハウス」1Fのレストラン「アウラ」で休憩を。テラスで花の景色を愛でながら、ゆったりとしたひとときを過ごせます。 営業時間は9:00〜17:00(ラストオーダー16:30)。ミックスフライセットや、カレー、パスタ、ピザなどの洋風メニュー、海鮮丼やみそカツ、きしめんなどの和風メニュー、フライドチキンなどのサイドメニュー、ケーキやアイスクリームなどのデザートが揃う、充実のラインナップです。ランチの価格帯は750〜1,600円。特に人気があるのは、焼きたて自家製アップルパイ(バニラアイス添え)単品700円、ドリンクセット1,000円(いずれも税込み)。 Information 名古屋港ワイルドフラワーガーデン“ブルーボネット” 所在地:愛知県名古屋市港区潮見町42番地 TEL:052-613-1187 http://www.wfg-bluebonnet.com/ アクセス:公共交通機関/市バス新瑞橋発14系統、金山発19系統、神宮東門発19系統「ワイルドフラワーガーデン」行き 車/国道1号線「星崎1」交差点を西進、潮見橋を越えて最初の信号を左折 伊勢湾岸自動車道「名港潮見」ICを降りて約5分、名古屋高速4号東海線、船見ICを降りて約5分 オープン期間:3月1日~12月25日 休園日:月曜(祝日の場合は翌日)、名古屋みなと祭開催日、12月24日、冬季(12月26日~翌2月末日) 営業時間:9:30~17:00(3月1日~11月30日)、9:30~16:00(12月1日~12月25日) 料金:大人300円、65歳以上200円、小中学生150円、6歳未満無料、障がい者・付添人(1人)200円、小中学生障がい者100円 駐車場:有り、200台(無料) 併せて読みたい ・カメラマンが訪ねた感動の花の庭。芝とハーブとバラがコラボする庭 愛知・寺田邸 ・天野麻里絵さんの「やってみよう!初めてのガーデニング」小さな花壇で育てる冬~春の花5選 ・花の庭巡りならここ! インスタ映えする景色の宝庫「淡路島国営明石海峡公園」 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
-
ドイツ

オーガニックコスメ「ヴェレダ」社のハーブガーデン・レポート! ヴェレダの商品を使った至福のトリートメ…
ドイツにあるヴェレダ社の広大なハーブガーデン ナチュラル・オーガニックコスメブランドのヴェレダ。「人と自然との調和」をモットーに、植物一つひとつがそれぞれ持つ力を引き出し、人の美しさや健康へと生かす商品を販売しています。ヴェレダの数々の商品に使われている原材料の一部は、世界各地にある自社農園で栽培・収穫された植物も含まれています。中でも最大の農園が、ドイツのシュヴェービッシュ・グミュント北方の高原にあるハーブガーデン。20ヘクタールの敷地にさまざまな植物が育つ、広大な薬用植物苑です。前回は、植物や虫など、そこに住まう生物たちが調和を保つこの美しい庭についてお話ししました。今回は、ハーブガーデンのガイドツアーを終えてから受けた、至福の体験についてご紹介します。 ガーデンの隣に建つヴェレダの工場 さて、ヴェレダ社の広大なハーブガーデンは、もちろん、ただ目で見て美しいだけの庭ではありません。ヴェレダの製品に使われている植物原料は、可能な限り、認証を受けたオーガニック栽培かバイオダイナミック有機栽培で収穫されたもの、または管理された野生採集のものが使用されています。このハーブガーデンも、そんな薬用植物の収穫の場の一つです。ハーブガーデンでは、多くの薬効あるメディカルプランツやハーブが育ち、その中から180種の植物が実際に収穫されてヴェレダの医薬品や化粧品の原料として利用されています。 収穫された薬用植物が、製品となるまでの工程の一部が行われているのが、ガーデン入り口のすぐ近くに立つ、鮮やかな赤色の工場の中。収穫されたさまざまな植物から、薬効成分を抽出するなどして、製品に使用できる形にしています。ちなみに、ヴェレダのボディオイルやバス用品は、すべてここ、シュヴェービッシュ・グミュントにて製造されているそうですよ。 見学では、工場内に足を踏み入れることはできませんが、収穫から製品に使用されるまでの工程の解説を見たり、サンプルを見学したりできます。植物の持つ力が引き出され、スキンケアやボディケアなどさまざまな製品に役立っている過程は興味深く、面白いものです。 至福のトリートメント体験 この日は広大なハーブガーデンを巡り、今まで知らなかった新しい知識の数々を得ることができました。ガーデンを巡る間はずっとワクワクしていましたし、とても充実した一日を過ごせたのも確かですが、ここを訪れるまでの長時間のドライブの疲れもあり、一通り見て回った後にはちょっとグッタリ。ちょうどそんなタイミングで、疲れが吹き飛ぶようなオーガニックなヴェレダ製品を使った至福のトリートメントを体験することができました。 場所はヴェレダのショップの2階。開放的なショップがある1階から2階に上がると、25人ほどが入れる大きな部屋がありました。ラッキーなことに、私たちが体験した時には貸し切りの状態。部屋に足を踏み入れると、ほのかにハーブのよい香りが鼻をかすめ、それだけでも疲れが軽くなるのを感じます。窓が大きくて光がたっぷり入る、暖かそうな部屋の中心には数組の椅子があり、壁沿いには、パイル地のタオルとバケツとともに、ヴェレダ製品が並んでいました。 これから何が始まるのか、ドキドキしながら椅子に座ると、感じのいい素敵な女性スタッフが、数種類のハーブオイルを見せてくれて、どんな香りが好みなのかを質問してきました。ヴェレダの製品には、それぞれシンボルとなる、効能や個性豊かなキープラントがあります。その中から、今回、私が選んだのはラベンダー。好みの香りを選ぶと、靴と靴下を脱ぐように促され、容器にお湯を張って、ヴェレダの「ラベンダー バスミルク」を入れた足湯に浸かることになりました。 足湯の温度は38~39℃ほど。もちろん、個人の習慣によっても異なりますが、10~20分くらい、あまり熱すぎないお湯を使うとよいとされています。爽やかな香りが漂う足湯は極楽気分で、しばらくすると疲れ切った足もすっかりリフレッシュ。 この足湯と同時に、首周りに蒸しタオルを巻いてもらうのもとても気持ちがよく、ドライブや取材で疲れていた体や首がほぐれ、頭痛が引いていくのを感じました。タオルからは、心身の調和を整えるというバラの香りが。座っていた椅子から一面に大きく開いた窓を見やると、緑の木々越しに輝く太陽と青い空が見え、鳥たちの歌声も聞こえます。ゆったりとリラックスできる、まるで天国のような素晴らしい時間でした。 足湯を終えると、最後にリラックスオイルを使ったハンドマッサージまで受けることができました。ヴェレダの製品体験の時間は、合わせて30~40分ほど。トリートメントを終え、すっかりリフレッシュした気持ちで帰途につきました。 ヴェレダのキープラント ヴェレダの製品にはどれも、シンボルとなる固有の薬用植物があり、それらはキープラントと呼ばれています。キープラントは、それぞれ私たちの健康や美容に生かすことのできるパワーを持っています。 例えば、今回の体験で私が選んだラベンダー。濃厚で爽やかな香りは、リラックスや鎮静効果があるとして、古代より親しまれてきた有名なハーブです。ラベンダーの花から採れる精油には、中枢神経系を鎮める働きや身体をリラックスさせてくれる効果があり、神経興奮や不眠症、けいれん、心血管疾患や消化不良にもいいとされています。ラベンダーは、疲れた心身のケアにぴったり。不眠気味の人は、お風呂にバスミルクを入れたり、眠る前にボディオイルでマッサージしたりすると効果が期待できます。 ローズマリーも一般的なハーブの一つ。すっきりとした強い香りは、リフレッシュや疲労解消に効果があるとされています。その精油は消化促進や循環機能、神経細胞の活性化などの効能を持ち、冷えの改善や、リューマチや偏頭痛の緩和に効果的だそう。また、殺菌作用にも優れていて、入浴剤にすれば、治りにくい傷に治癒効果があります。ハーブティーなどで口にしても、オイルを肌に塗ってスキンケアとしてもいい高性能なハーブです。 もう一つ、入浴時のバスミルクとして、ぜひオススメしたいのが、モミ(サパン)。一般的にクリスマスツリーとして使われる、モミの木から抽出した精油を用いています。常緑樹のモミの木は、冬でも葉が落ちることなくみずみずしい姿を保つことから、永遠の生命の象徴として、ローマ時代に欧州各地で行われていた冬至祭で崇拝されていました。また、ヴェレダの思想として重要な、アントロポゾフィー(人智学)的な視点からは、寒い北の国で内部に熱や力を蓄え、外界の刺激から身を守り、均衡を保ちながら育つ植物とされています。ちなみに、ヴェレダのモミの精油は、極寒の地シベリアに育つモミから採れたもの。そのバスミルクは、まるで森林浴をしているかのような心地よい香りで、しっかり体を温めてくれます。 ヴェレダのガーデンガイドツアーとトリートメント体験 今回私が訪れた、ドイツのシュヴェービッシュ・グミュント北方の高原にあるハーブガーデンでは、申し込みをすれば、誰でもガーデンガイドツアーやトリートメント体験に参加できます。体験できる主なトリートメントは、バスミルクを使った足湯や蒸しタオルなどのリラクゼーション、ボディオイルを使ったマッサージなど。手や脚、首のように、体の一部短い時間のみのマッサージでも、びっくりするほどリラックスできますよ。ボディオイルは季節により異なり、好きな香りを選ぶことができます。夏には、蒸しタオルの代わりに、レモンの香りがする冷たいタオルでリフレッシュするのもオススメ。ドイツを訪れた際には、ぜひ一度体験してみてくださいね。 日本ヴェレダHP https://www.weleda.jp/ 併せて読みたい ・オーガニックコスメのパイオニア「ヴェレダ」社のハーブガーデン・レポート! ・ドイツの秋冬の食卓に欠かせないバラエティー豊かなリンゴの実 ・お風呂でできる「ガーデンセラピー」、しませんか? Credit ストーリー&写真/Elfriede Fuji-Zellner ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子ども向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。 協力/WELEDA 取材/3and garden
-
神奈川県

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪3 神奈川「苔丸」
鎌倉の住宅街にある園芸ショップ「苔丸」を訪ねる 鎌倉駅からバスに乗り、長谷観音や大仏を通り越して揺られること約15分。緑豊かな住宅街の中のローカルなバス停で下車し、1~2分歩いたところに「苔丸」があります。ショップのシンボルツリーとなる大木のサクラが目印で、その奥に佇む古い平屋が店舗。どこか懐かしさ漂うノスタルジックな雰囲気が、訪れた人を奥へと誘います。 身近にあるものを使った 独創的なディスプレイが魅力 季節の草花が並ぶ店先の陰に隠れたショップのエントランスから、苔丸の世界が楽しめます。建屋の壁を利用して木を組んだ棚には、ノコギリやハサミなどの古びた道具類や、山に転がっているような木片や動物の骨などが、ディスプレイ。一見ガラクタに見えるようなものでも植物と巧みに合わせて、遊び心あふれる見ごたえのあるシーンをつくっています。丁寧なディスプレイからは、オーナーの細やかな人柄がうかがえます。 マニアも身震いする 珍奇植物がずらりと揃う 中庭の建物側に設置した手づくりのサンルーム内は、オセアニアやアフリカ、南米などのユニークな植物がずらり。マニアもうなるこの品揃えは、オーナーの赤地光太郎さんのこだわりの一つです。仲買い人を通すこともありますが、多くはプランツハンターである知人に依頼して入手したもので、一般的な園芸店には出回らないようなものばかり。珍奇植物を知らなかった人も十分楽しめる空間です。 冬の寒さが苦手な植物が多いので、2018年春にサンルームのような空間を製作。雨の日も、ゆっくり買い物ができます。 建屋の掃き出し窓を取り除き、木の素朴な扉を自身で設置。ちょっとした棚を付けて、盆栽のような仕立ての珍奇植物をかわいらしくディスプレイ。 ニュージーランドでの出合いを きっかけに、自身の世界が花開く 植物にまつわることなら大抵こなせるという器用な赤地さんは、もともと切り花業界の出身で、花の販売だけでなく室内装飾なども幅広くこなしていました。数年働いたのちに見聞を広めるべくニュージーランドに渡り、園芸店でアルバイト。そこのオーナーの独特なセンスと植物の世界の奥深さに触れた時間は、とても衝撃的で意義深いものだったといいます。その経験が赤地さんを大きく前進させ、‛苔丸’をオープンさせるきっかけとなりました。 今から約15年前に自宅から近い古い民家を借り、園芸植物や資材、切り花を扱う‘苔丸’をオープン。「好きに改装していい」という大家さんの好意で、さっそく知人の手も借りながら建物を大改造。ニュージーランドの体験をもとに、自由な発想でコツコツと自身の世界をつくり上げていきました。 もともとお母さまが自然な庭をつくっていたことから、植栽のセンスも備わっていた赤地さん。店の奥に広がる庭も見ごたえたっぷり、必見です。そよそよとした植物が多い植栽は、世界各地原産の植物が盛り込まれていているのに、とても自然な趣。茂みの中にさりげなく配した古道具などの雑貨類が庭におもしろみを与えていています。その気負いのない自然なスタイルが心地よさを生んでいるのか、ここ数年で庭づくりの依頼が急激に増加。「ここに植わっているものを使って、庭をつくってほしい」という依頼も多く、そのたびに植物が持ち出されるので、庭は頻繁につくり替えています。半年に1回のスパンで変わることが多いので、ショップを訪れるたびに新たな風景が楽しめます。 赤地さんの真骨頂! 創意工夫を凝らしたサンルーム 赤地さんがデザインを考え、知人に形にしてもらったというサンルーム。よく見てみると、大きさも雰囲気も違う窓枠が使われています。フランスの木製の窓やアイアンの窓、イギリスのステンドグラス、日本の古民家の扉など、どれも古くて味わいのあるものばかり。すりガラスも使われていましたが、見通しをよくするために透明のガラスに交換。また、レトロモダンなデザインのライトは、ノルウェーのプールサイドで使われていたものだそうです。雰囲気の異なるアイテムをしっくりと馴染ませながら味わいを出す空間づくりは、赤地さんだからこそなせる業といえるでしょう。 珍奇な植物だけでなく ナチュラルな草花も揃う 苔丸では、楚々とした山野草や草花も販売しています。これらは、赤地さんが自然な庭づくりをする際に、あるといいなと思うもの。花色は白や青、パープルが多く、ラインの細いものがメインです。古びた雑貨や構造物、野趣を感じさせる樹木などとナチュラルに調和する草花が選ばれています。 植物以外のアイテムも充実 ギャラリーのような陳列も魅力 雰囲気のある店内には、鉢や雑貨類が整然と陳列されています。アイテムはいずれも渋い雰囲気で、アイアン製のものは日本やインドなどの古い道具類がメイン。鉢はひとひねりしたデザインが多いので、個性的な植物と合わせれば、アートな世界が楽しめそう。 がらりと趣が異なる やさしく上品な雰囲気漂う切り花 生活全般を彩る提案をしている苔丸では、切り花も販売。花は白やライムグリーンをメインにした、シックでノーブルな印象のものが並びます。こちらは奥様がメインで担当。苔丸らしい渋い空間にマッチしつつ、女性的で上品なエッセンスも感じられる、ナチュラルなセレクトです。 より個性が際立つ ショップ兼作業場(アトリエ) サンルームに併設するやや薄暗い部屋は、アンティークや古道具が並ぶショップ兼クラフト用のアトリエ。古代の土器やインドの古い生活道具、ヨーロッパのアンティーク瓶などが個性的な植物に合わせて飾られ、不思議な世界を織りなしています。 かつて住居だったとは思えない空間。和風だった古い壁面には工事現場の足場で使っていたという長い木板を貼りつけ、山小屋のようにワイルドに仕上げました。庭側の掃き出し窓は取り外してアーチ状の出入り口を設け、スムーズな動線をおしゃれに確保。押し入れや天袋だった形跡が見受けられるものの、それがかえって面白みとして生かされています。思い切ったリノベーションを重ねた空間は赤地さんの感性が凝縮され、個性を表現するキャンバスになっています。 申し込みがやや困難 大人気のクラフト講座 アトリエでは、月の第1・3・4週目の木曜日、午前1回・午後2回の一日3回、クラフトの講習会が催されています。作るものはリースやスワッグなどが主で、その時の気分で選べます。花材はここにあるものから自由に選ぶことができ、でき上がりは人それぞれ。寄せ植えレッスンをお願いすることも可能です。少人数制で、すぐにいっぱいになってしまうそうなので、気になる人は事前に問い合わせを。 赤地さんイチ押しはコレ! 他ではまだ見られない植物 ベスト4 かなりマニアックで購入する人は限られてくるかもしれませんが、一見の価値ある植物4種をご紹介します。 見慣れない異国情緒漂う植物、昔ながらの素朴な草花、日常で使われていた味わいのある古い道具に、ひんやりとした質感の無機質な道具――古今東西、あらゆるものが混在し、独特な世界感が広がっている園芸ショップ「苔丸」。個性的だけどどこか懐かしさを感じる空間は、鎌倉山の立地と相まって、ここでしか感じられない居心地のよさがあります。ぜひ鎌倉観光を兼ねて訪れてみてください。アクセスは、鎌倉駅より鎌倉山行きバスで約15分、旭ヶ丘停留所下車徒歩約2分。 【GARDEN SHOP DATA】 苔丸 神奈川県鎌倉市鎌倉山2-15-9 TEL/FAX: 0467-31-5174 URL: http://www.kokemaru.net 営業時間:10:30~18:00 定休日:火曜日 併せて読みたい ・素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪2 東京・世田谷「toolbox世田谷」 ・小さな庭と花暮らし「苔の緑を楽しむ」 ・黒田健太郎さんに学ぶ 数株で素敵に! シンプル寄せ植え&コーディネートLesson1 Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
-
イギリス

イングリッシュガーデン以前の17世紀の庭デザイン【世界のガーデンを探る旅15】
イタリアやフランスへの憧れから イギリス独自の庭文化へ発展 ヨーロッパの中では、文化的にも経済的にも後発国であったイギリスは、イタリアルネッサンスやフランスの宮廷文化に憧れて、国内に多くのイタリア式庭園やフランス式庭園をつくっていきました。しかし、イギリスは緩やかな起伏の丘が続くつづく地形で、イタリアほど起伏も急流もなく、また、フランスのような広くて平らな土地にも恵まれていませんでした。そのためイギリスにおいては、両方の庭園様式が深く根付く事はありませんでした。 またその頃、“知識は力なり”の格言で有名な哲学者フランシス・ベーコンや文学“失楽園”の著者、ジョン・ミルトンなどが、自然なものへの憧憬、大陸文化からの脱却を提唱し始めます。 庭園も、今までの整形的なユートピアから、自然復帰こそが神が示してくれたものであるという英国的価値観へと移行していきます。 17世紀につくられた「ハンベリー・ホール」と庭 今回ご紹介する庭は、イギリス中西部、ウスターシャーにある「ハンベリー・ホール(Hanbury Hall)」です。この屋敷は、大地主のトーマス・ヴェルノンが1701年からつくり始めました。庭園のデザインは、その当時、イギリスで流行していたフランス式庭園で、設計はハンプトン・コートも設計した造園家、ジョージ・ロンドンとヘンリー・ワイズが担当。しかし、ここには広々としたフランス式庭園がつくれるような平地はなかったため、この土地に合った小規模な整形式庭園がつくられたのです。 まずは、屋敷前の車寄せから見ていきましょう。広々とした車寄せの向こうには、樹齢300年といわれる針葉樹、アトランティックシダーが高木となり、両側には落ち着いた雰囲気の、よく手入れがされたボーダー花壇が訪れた人を歓迎してくれます。 オレンジ色の石造りの建物や柱と対比する、きれいに刈り込まれた芝のエリアには、オレンジのヘメロカリスやライムグリーンの花が咲くアルケミラモリス、ピオニー、シュウメイギク、そして塀の向こう側にはスモークツリー(ケムリの木)など、現代の私たちがイングリッシュガーデンでよく名を聞く植物たちがボーダー花壇に使われています。手前には、経年変化で味が出た鉢から鋭い葉を広げているアガベが引き締め効果に。 2人の造園家が担当した整形式庭園 建物の向こう側には、ツゲで区切られたいくつかの庭が並んでいます。順番に、そのデザインを見ていきましょう。まずは、スタンダード仕立てのナシの木と鉢植えのリンゴを配した、オランダ風のフォーマルガーデンです。その向こうのエリアでは、ほかでは見たことのないような素敵な花壇が出迎えてくれます。 丸く刈り込まれたナシの木が並ぶエリアを、低いツゲで縁取られた四角い花壇が囲むなど、木々の組み合わせで、平坦な敷地に立体感のある景色をつくっています。 屋敷から見渡せる場所には、一段下がった土地にフォーマルな沈床花壇がつくられています。きれいに刈り込まれた緑のツゲの縁取りに、独特な花の組み合わせで明るい雰囲気を出しています。薄黄色の低い刈り込みはヒメツルマサキ、真ん中のボールは斑入りのヒイラギです。 四角や円錐、丸いトピアリーを複数組み合わせてたフォーマルな、整って見える庭デザインですが、花の数が少なく、手がかからない工夫を感じました。また、色合いがイギリスにしては、はっきりとした原色系の花が使われています。現代のコテージガーデン風な色合いに慣れてしまっている私たちには、新鮮な驚きをもってこのコンパクトな庭を楽しむことができます。植えられている植物も、驚くほど少量で小さなコニファーのトピアリーと緑や黄色のヘッジ、それらが土の色と相まってつくり出している不思議な雰囲気の庭です。このような植え方は他では見たことがありません。これはつくられた当時からのアイデアか、または、今のオーナーのアイデアかは分かりませんが、皆さまも一度ここを訪れて不思議な感覚を味わってみてはいかがでしょうか? 庭を見学していたら、ガーデナーが直線的なツゲのヘッジの刈り込みをしていました。水糸を引いて神経質に思えるほど緻密な作業でしたが、その向こう側では、別のガーデナーとオーナーらしき夫婦が何やら話し合い。秋の植栽計画でも相談しているのでしょうか? 富の象徴の一つ、オランジェリー 「ハンベリー・ホール」の敷地内には、オランジェリーも当時のまま残っていました。かなり緯度の高いイギリスでは、冬に吹く冷たい北風から寒さに弱い植物を守るために、大きなオランジェリーがつくられました。その頃、イタリアルネッサンスへの強い憧れを抱いていたイギリスの富裕層にとって、イタリアへ旅行することは一種のステータスでした。そして、寒さに弱いオレンジの木などを自宅に備えたオランジェリーで栽培することも、自慢の種になっていたようです。 植物が外へ持ち出されている夏の間のオランジェリーの中は、ガランとした空間。春から秋までは、コンサバトリーのようにも使われることもあります。現在のような温室が登場するのは19世紀に入ってからですので、それ以前の時代は、寒さに弱い植物の冬越しはオランジェリーの中で行っていました。 イギリスの地形に合わせた庭デザインを模索する時代へ 庭から広がる穏やかな起伏に富んだイングランドの丘陵地、最もイギリスらしい風景です。大きな木はアトランティックシダ―。複雑な樹形は、この土地の歴史を物語っているようです。 大陸文化の模倣から始まったイギリスの庭の歴史は、イタリア式庭園、フランス式庭園、オランダ式庭園などの要素を吸収し、咀嚼しながら、ソフトなイギリスのランドスケープにフィットするような独自の様式を少しずつつくり出していきます。16世紀後半から7つの海を支配したイギリスに世界中の富が集まり、世界の文化と経済の中心としてのイギリスの時代と相まって、世界中に送られたプラントハンターが持ち帰った植物を使った華やかなイングリッシュガーデンの時代が始まろうとしています。 併せて読みたい ・イギリス発祥の庭デザイン「ノットガーデン」【世界のガーデンを探る旅14】 ・【初めてのガーデニング講座】小さな花壇で育てる一年の花サイクル ・松本路子の庭をめぐる物語 フランス・パリの隠れ家「パレ・ロワイヤル」
-
三重県

花の庭巡りならここ! 地域住民の誇り、英国式庭園「松阪農業公園ベルファーム」
地域の人々が関わるイングリッシュガーデン 2004年にオープンした三重県の「松阪農業公園ベルファーム」は、伊勢自動車道の松阪ICから降りてすぐの立地にあり、松阪の豊かな自然環境や地域農業を生かし、「食育」・「緑育」の場を提供することを目的に設置されました。総敷地面積23万㎡の広大な園内には、地域の人々に愛される、緑に囲まれた癒しの場として整備された、敷地面積1万4,000㎡のイングリッシュガーデンがあり、ゆっくり歩いて30~40分ほどで見て回れます。 イングリッシュガーデンは、日本に英国式庭園の魅力を広めたケイ山田さんの設計。リニューアルを重ねつつ、現在は9つのエリア、チェルシーガーデン、ローズガーデン、ウォールガーデン、オーチャードガーデン、ハーブガーデン、ローディー(シャクナゲ)ガーデン、コニファーガーデン、インドアガーデン(グラスハウス内)、ストリームガーデン(改装中)を見学できます。 毎週火曜日には、地域のボランティアスタッフが訪れて、雑草抜きや植え替えなどの植物のケアに励み、植物を愛する人たちのコミュニケーションの場になっています。イングリッシュガーデンに不可欠な植物でも、松阪の温暖な気候では育たないケースもあり、代わりになる植物は何か試行錯誤しながら、年月をかけて松阪の気候風土に合うスタイルのイングリッシュガーデンに育ててきました。地域の気候に合った植物とは? 最新のトレンド品種とは? その答えが見つかるスポットとして、ガーデナーが情報を求めて訪ねる交流の場にもなっています。 灌木と草花が織りなすハーモニーは必見! 手入れの行き届いたガーデン 写真はウォールガーデンに対で植栽されたアメリカハナナシで、自然に樹形が三角形に整う花木です。3月下旬〜4月上旬が見頃で、花色は淡いピンクから白へと移ろいます。桜と同様に開花期は短く、1週間程度。樹高が7〜8mあるため、満開の時期は大変見応えがあり、アメリカハナナシの花見を目的に訪れるファンの姿も多く見られます。 チェルシーガーデンエリアの4月下旬〜5月上旬の景色です。直径4×高さ4mの六角形のコンサバトリーには、樹齢約15年の藤が覆うように仕立てられ、満開時は壮観。ガラス張りのコンサバトリーの中から見る藤の姿も素敵です。地植えのネモフィラやワスレナグサなど、ブルーの草花とも好相性ですね。 ローズガーデンのエリアでは、花つきがよく優美な花姿が魅力のイングリッシュローズを中心に植栽。オベリスクが5基あり、つるバラ‘ソンブレイユ’などを這わせてメリハリをつけています。本場のイングリッシュガーデンではピンクのバラと紫のラベンダーの組み合わせがよく見られますが、この地域ではラベンダーの育ちが悪いのが悩みでした。試行錯誤の結果、得られた解決策は、暑さに強いジャイアントキャットミントを代わりに植栽すること。ピンクとブルーの色の対比がとてもエレガントです。 バラの見頃は5月中旬〜下旬で、イングリッシュガーデンのトップシーズンでもあります。園内には約60品種500株のバラを植栽。写真はイングリッシュローズの‘ボスコベル’とジャイアントキャットミントの競演です。 イングリッシュガーデンに入ってすぐのボーダーガーデン。手前にはピンク、紫、白のペインテッドセージを植栽しています。同時期に咲くジギタリスやペンステモンと相性がよいうえに、草丈60〜80cmで花壇の中段を埋めるのにちょうどいい花材。花つきがよく枝葉がやわらかいので、風にそよいで混ざり咲く姿もたおやかです。 自然豊かな里山の借景が素晴らしい 毎月の体験教室やイベントも充実の松阪農業公園ベルファーム 松阪の里山の借景に恵まれているイングリッシュガーデン。広葉樹が里山の景色をつくっているので、四季の移ろいを感じることができます。特に、4月頃のヤマザクラがふもとから頂上へだんだんと上がっていく景色、萌えいづる季節の新緑のグラデーション、寒さが増すほどに深い緑から冬枯れへと移り変わる景色……園内のイングリッシュガーデンももちろん素敵ですが、美しい里山の景色も見どころの一つ。小鳥のさえずりがすぐ近くで聞こえて、時にはカワセミの姿も見られますよ! グラスハウス内のインドアガーデンは、雨の日でも楽しめるエリア。このプールには、睡蓮、パピルス、コロカシアなどの水生植物を植栽。初夏からは睡蓮の端正な花姿が見頃になります。15時を過ぎると花が閉じてしまうので、午前中に訪れるのがオススメです。 また、毎月多彩な体験講座が開催されており、フラワーアレンジやプリザーブドフラワー、草木染め、ハーブせっけん作り、料理教室など魅力的なコンテンツが目白押しなので、ぜひ参加してみましょう(予約が必要な講座が多いので、公式ホームページをチェックしてください)。 写真は秋の景色で、パンパスグラスが季節感を演出、センニチコウ、リコリス、黄色コスモス‘キャンパスイエロー’などの花々が彩りを添えます。10月末~11月上旬は、ハンギングバスケットやコンテナのコンテストも開催されるので、ぜひ作品群を見に出かけましょう。 温暖な気候のため冬もオープンしており、年に1度くらいしか積雪はありません。でも実のところ、雪化粧をしたコニファーガーデンはとてもロマンティックな雰囲気を堪能できるので、貴重なタイミングを逃さずに。またバラの植栽が多いため、この時期は剪定のコツをつかみに訪れる熱心なガーデナーの姿もちらほらと見られます。 カフェのパティシエ作ジェラートはリピートして全制覇したい! 2018年オープン、無添加生地のこだわりパン屋さんも大盛況 「松阪農業公園ベルファーム」内、イングリッシュガーデンのエントランスには、「ガーデンカフェ ルーベル」があります。営業時間は10:00〜16:00(平日)、10:00〜17:00(土日祝、11〜3月は16:00)、ランチタイムは11:00〜14:00。園内の直売所から届く朝採れ野菜など、地元の旬の食材を使った食事を楽しめます。写真は野菜ソムリエの手作りランチ。パティシエのミニデザートつきで平日1,050円。 「ガーデンカフェ ルーベル」のオススメは、パティシエが作る季節のジェラート 。ミディアムサイズ2種盛り340円、3種盛り440円。フレーバーは季節によって変わり、こく旨ミルク、最高級抹茶(プラス30円)、松阪牛肉みそ、チョコレート、ブルーベリー、カボチャ、イチジク、塩レモン、アンズヨーグルト、ブラムリー、巨峰シャーベット、はちみつばんかんなど、常時10種類以上の味が楽しめます。個性的なフレーバーがずらり、これはぜひリピートしたいデザートですね! 2018年春には、「松阪農業公園ベルファーム」の直売所(農家市場内)に「国産小麦のパンとスイーツのお店『やさい畑』」がオープンしました。営業時間は10:00〜16:00。 国産小麦を100%使用し、イーストフード、保存料などの合成添加物は使わない無添加生地にこだわっており、すべて店内で手づくりしています。イートインスペースもありますよ(イングリッシュガーデン内での飲食は不可)! 「国産小麦のパンとスイーツのお店『やさい畑』」のオススメは、写真の最高級伊勢抹茶さくさくメロンパン162円。ほかにパンドミ345円、阿波黒牛揚げカレーパン270円、季節のフルーツタルト400円も人気です。 掲載している商品および価格は、2018年11月現在(消費税込み)の内容です。今後変更になる場合もありますのでご了承ください。 Information 松阪農業公園ベルファーム 所在地:三重県松阪市伊勢寺町551-3 TEL:0598-63-0050 http://www.bellfarm.jp/ アクセス:公共交通機関/JR・近鉄松阪駅よりタクシーで約20分、バスで約30分 車/伊勢自動車道松阪インターより東に約500m オープン期間:周年 休園日:2019年4月より、5・8月を除く毎週水曜日(祝日の場合は翌日)、12月31日、1月1日 ※臨時休園あり 営業時間:イングリッシュガーデン10:00〜17:00 (施設により異なる) 料金:無料 駐車場:普通車700台、大型バス10台(無料) 併せて読みたい ・花の庭巡りならここ!「かおり風景100選」に認定された「山形県村山市 東沢バラ公園」 ・花の庭巡りならここ! 麗しき英国式庭園「みつけイングリッシュガーデン」 ・花の庭巡りならここ! 色彩美を表現する印象派庭園を一度は見ておきたい「浜名湖ガーデンパーク」 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
-
北海道

春をイメージして手が進む晩秋の庭仕事
私流の秋の庭作業スタイル 秋の森は静かです。にぎやかな虫の声も、鳴き交わす鳥の歌も、時の向こうに消え、耳にささやくのは風が草葉を抜ける音だけ。毎年、急にシンとした森に「ああ、秋が来た……」と思います。もうすぐ長い冬……花咲く庭が名残惜しくなりますが、寂しがってはいられません。本格的に冬を迎える前の「今」こそ、来年に向けた絶好の庭シーズンです。 この季節の朝晩は、関西の真冬並みに冷え込みます。太陽が照らす日中は温度も上がり心地よく感じますが、それはほんのいっとき。寒がりの私の体に冷えが伝わってこないよう守ってくれるのが、ナイロン製の農作業着「ヤッケ」です。さすがプロの農家さんの御用達だけあって、動きやすさも防寒も抜群! 一般的なピッタリサイズの上下の着こなしに、私はちょっと、ひと工夫。あえて特大サイズの上着に、黒いワンサイズ小さいズボンを履いて、チュニック風に見せています。農作業着のお店にはお手頃価格でサイズも色も豊富に揃っているんですよ。 軽作業の時は写真のようにゆったりしたワンピースを重ねます。庭用にザブザブ洗える薄手のデニムで作りました。何年も庭に出るたび羽織ってきたワンピースで庭にいると、庭に溶け込んでいける気がします。汗をかくほど動かない時は、なおさら冷えやすいのですが、一枚のワンピースがつくる空気層で心地よくポカポカです。 楽しみでする庭仕事。身も心も心地よくありたいと思っています。 秋恒例の庭作業はお買い物からスタート 庭仕事着を身にまとって庭に出る前に、まず向かうのはガーデンセンター! 狙いは球根とバーゲン苗です。荒地だった土地に森を育てようと手入れをしている木々が育ち、日陰が増えている私の庭。庭の主役をバラから日陰に強いアジサイに変えようと苗を買ってきました。お値段なんと250円! 小さな苗が主役に育つのは何年後でしょうね。 チューリップは‘ピンクダイヤモンド’を毎年買い足しています。帰ったら腕まくりもそこそこに、裏庭で植え込み準備を開始。まずは、一つひとつに巻かれた品種名のラベル剥がしです。長雨続きの庭は荒れてきていますが、そんなの目に入りません。お手入れは後回し。 ウキウキした私を見て、愛犬のユピーやノノもソワソワ。あらら、球根をオヤツと思い込んで「おすわり」しちゃった。 球根を狙う可愛い庭の訪問者 実は、球根を本当にごちそうと思い込んでいるエゾリスがいて困っています。ユリ根はともかく、チューリップなんて美味しいのかしら? と疑問に思うのですが、毎年食べているところを見ると……きっと美味しいのでしょうね。 「ああ〜食べられた」と歯ぎしりするくらいなら、エゾリスとも仲よく共存して大らかに見守りたいと、球根もお手頃価格を選んでいます。皮を剥いで見たらカビが! ということもありますが、そこもオーケー。できればリスにはカビの球根を一番に掘り当てて「今年は食べられないわ〜」と、ドングリを食べに行ってほしいなあ。 土を掘って球根を植えましょう 植えるテンポはゆっくり、ゆっくり。芝生のエッジを切ったり、雑草を抜いたりしながら、えっちらおっちら。ふと見上げた時に、もう枝先を止めたつもりだったバラが咲いていて、宝物を見つけたようにときめいたりしながら、春のために庭を整えていきます。 失敗から学んだ春咲き球根を植えるコツ 球根を植える時は、宿根草が目印です。ミヤマオダマキやゲラニウムの周りが遅咲きスイセンの‘サーウィンストンチャーチル(写真内白い花)’。その間がチューリップのスペースです。なんとなく範囲を決めておくだけで、前年までに植わっていた球根にスコップが刺さって真っ二つにしてしまう「事件」は激減しました。スイセンだけでも500球以上が眠っているので、以前は事件が多発。おかげで、今年はたった1個ですみました。 春を夢見て植え込みとタネ播き 枯れ草の目立ち始めた庭ですが、球根を植えている時の脳内は春らんまん。夢を見ながら手を動かす時間は、かけがえのない一時です。 また、秋はタネ播きの季節でもあります。私のタネ播きは、立ち枯れた花を切って庭のあちらこちらに挿していくだけ。 大自然の懐にある我が家は豊かな土地に見えますが、開発跡の荒地です。石混じりの赤土と粘土は耕運機の歯が立たないほど硬く、黒土を数十cm盛ったご近所さんも、元の土との間に水が溜まり、根腐れを起こすなど尽きぬ悩みを抱えていました。 大規模な土壌改良をする余裕もなく、植物を育てるのを諦めそうになった時に活躍してくれたのが、こぼれダネから育つ花。自らの力で根を下ろし、根張りに見合ったサイズの茎葉をつける花たちは、小さくても元気いっぱい。根が土を耕し、ミミズを呼んで豊かな土へと育ててくれました。 植物が大きく育つようになった今、改めて根っこの力に感動を覚えます。 はじめに紹介させていただいた春の写真のミヤマオダマキ(青い花)も、タネをつけて枯れた花茎を、そのまま葉陰に挿すことで、生え広がってくれました。カゴの写真に入っているのは淡いブルーのカンパニュラ。7月にいっぱい咲いてくれたら嬉しいなあ……とあちらこちらに挿して回りました。 こぼれ落ちるタネが、無理なく育つ場所でのみ育っていく。花にとっても、私にとっても無理のない空間で、お互い伸びやかに生きていきたいと思います。 今年のガーデンでもたくさんの幸せをもらいました。秋冬の庭仕事は来春の私へのプレゼント。北海道の長い冬を経て、また訪れる芽吹きの季節が楽しみです。



















