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イギリス

イングリッシュガーデン旅案内【英国】ベス・チャトー・ガーデン(2)癒しの水の庭と森の庭
乾燥の地につくられたウォーター・ガーデン 『花好きさんの旅案内【英国】 ベス・チャトー・ガーデン(1)乾燥に強い庭を実現』では、乾燥に耐えられる植物を集めたグラベル・ガーデン(砂利の庭)をご紹介しましたが、そのグラベル・ガーデン脇の庭園入り口を抜けていくと、今度は、たっぷりと水をたたえ、青々と茂る水辺の植物に縁どられた池が現れます。 予期せぬダイナミックな水辺の景色に、思わず見とれてしまいます。じつは、この池は、泉から水を引いた水路をせき止めてつくった、人工の池です。エセックス州のこの辺りは、年間降雨量が少ないことで知られますが、ベスは、乾燥したこの地では育てるのが難しい、プリムラやホスタといった湿り気を好む植物を育ててみたいと思い、池をつくって、湿度を保った環境を整えることに挑んだのでした。 ウォーター・ガーデンには、ベスが厳選した、水辺を好む植物や、湿り気を好む植物が植えられています。彼女の庭づくりの合言葉は‘Right Plant, Right Place’(ふさわしい植物を、ふさわしい場所に)というものですが、グンネラやススキの仲間など、適切な環境に植えられた植物はよく茂って、夏には涼やかな空間をつくります。暑い夏場、水辺の気温は、庭園内の他の場所に比べて数度低くなるそうです。乾燥した土地にあって、この水の庭の豊かな景色は驚くべきものです。 ウォーター・ガーデンから緑の芝生を少し上っていくと、そこはもう、スクリー・ガーデン(がれ場の庭)です。ベス・チャトー・ガーデン(1)編でご紹介しましたが、こちらは水の庭とは対照的に、乾燥に強い植物を集めた庭。ベスが、正反対の性質を持つ植物をひとところで観賞できるガーデンをつくりだしたというのはすごいことだなぁと、歩きながら感心しました。 ふかふか芝生の小径 ウォーター・ガーデンの先には、ふかふかの芝生が続く、ロング・シェイディ・ウォーク(長い日陰の小径)があります。大きなオークの木々が葉を広げる下に、シダやホスタ、ティアレラ・コルディフォリア、ヴィオラ・リヴィニアナ‘プルプレア’など、日陰を好む植物が植えられています。 弾力のある芝生の小径は幅が広くゆったりしていて、庭を独り占めしているような感覚で散策を満喫できます。もし時間が許すなら、来た道を戻りながら違う角度から眺めるのもよいでしょう。新鮮な発見ができそうと感じました。 多彩な緑を楽しむウッドランド・ガーデン ウッドランド・ガーデンは、森の中の散策を楽しむ庭です。大きなオークの木々が葉を広げてつくる天蓋の下には、森の下草としてふさわしい、日陰を好む球根花や宿根草、灌木、シダなど、ベスが厳選した植物が植えられています。 森の中は、静けさに満ちた、安らぎのある空間です。他の庭に比べると、当然ながら花より葉の緑が多く、色彩はおとなしめですが、緑を背景に花々の清楚な姿が浮かび上がって、心引かれます。 足元に茂る植物に目をやると、さまざまな葉が美しいコンビネーションを見せています。緑色の濃淡の対比や、葉の形や模様の豊かさは、見ごたえ十分。フラワーアレンジメントに精通した、フローリストの目を持つベスならではの、繊細な植栽です。ここに派手な植物はありませんが、彼女らしい植栽の魔法が発揮されているように思いました。 受け継がれるチャレンジ精神 こちらは、オープンな日向のエリアが広がる、新しいリザーバー・ガーデン。デザインが一新されて、2017年に公開されました。ここには、あまり環境を選ばない植物が植えられていて、その一角は、ニュー・プランティングと呼ばれる、新しい品種の植物を試験的に育てる場所となっています。 2014年から2年近くかけて、ベスのチームはこの辺りの粘土質の土を改良しました。使われたのは、無農薬(オーガニック)のスペント(使用済み)・マッシュルーム・コンポストです。 英国では、商業的なマッシュルーム栽培で菌床として使われた、麦わらや馬ふんなどからなる堆肥(マッシュルーム・コンポスト)を、ガーデニングに再利用する動きがあります。ベス・チャトー・ガーデンによれば、使用済みのマッシュルーム・コンポストは、窒素の量は少ないものの、他の栄養素が多く含まれ、粘土質の土壌の改良や、栄養不足の土に使う腐葉土に加えるのに最適だそう(ここでは、蒸気殺菌された使用済みマッシュルーム・コンポストが使われています。コンポストはアルカリ性なので、酸性を好むツツジ科の植物には与えないことや、土のpHが偏りすぎないように使用に注意が必要です)。 コンポストを土に十分にすき込むためには、一度に薄くしか撒けません。ベスのチームは何度も何度も根気強く、大量のコンポストをすき込み、改良を続けました。 ニュー・プランティングのエリアでは、ベス・チャトー・ガーデンにとっても挑戦となる、新しい品種の植物を育てています。 1950年代後半からフラワーアレンジメントの活動に携わったベスは、海外から取り寄せた植物の種子を発芽させて、当時はまだ珍しかった、ナチュラルなテイストの植物を育て、紹介し続けていました。1977年から1987年にかけては、英国王立園芸協会のチェルシーフラワーショーで「珍しい植物」の展示を行い、連続で合計10個のゴールドメダルを受賞しています。 たしかに、ここで日本ではまだ耳にしたことのない、最新の植物に出合うことができました。みんなが喜ぶ新しい植物を紹介し続けた、ベスの精神が受け継がれているように感じました。 庭と連動したナーセリー ウォーター・ガーデンの脇と、ウッドランド・ガーデンの脇には、広いストックベッドがあります。ここは、ナーセリーで販売するための苗を育てる場所。毎年6万株を育てているそうで、庭に生えている植物と同レベルの、しっかりとした健やかな苗が育っています。 ナーセリーで売っている品種の数は、2,000を超えます。苗の多くは、この庭に生える植物から増やしたものなので、庭はいってみれば「商品カタログ」の役割を果たしています。例えば、樹木の下の日陰で育てるのによい植物は何かなど、実際の庭を見ながら目的にふさわしい植物を探し出して、その苗を持ち帰ることができるというわけです。 ナーセリーは、乾燥に強い植物、水を好む植物、日陰を好む植物など、植物の性質ごとに売り場の区画が分かれていて、どんな庭に植えるべき植物なのか、一目でわかります。庭園に植わっている植物には一つずつ名札がついているので、その品種名を頼りに苗を探すこともできますし、また、気になった植物の写真を撮ってナーセリーにいる園芸スタッフに見せれば、名前を教えてくれます。地元の人達にとっては、心強い味方に違いありません。とても活用されているガーデンなのだなぁと感じました。 庭園にはショップと小さなカフェレストランが併設され、窓の外に広がる庭を眺めながら、昼食を楽しむことができます。テーブルには庭の花が生けられていて、ほっこりした気持ちになります。 庭の植物が無農薬で育てられていると聞いたからか、庭の空気もなおさら気持ちよく感じられました。ベスは無農薬栽培を熱心に提唱した人でしたが、これだけの規模のガーデンを無農薬で管理するのは本当に志が高くないと継続できません。きっと彼女は芯が強くて、カリスマ性のある人物だったのだろうと、その庭に触れて実感しました。 併せて読みたい ・英国のオープンガーデン 秋まで美しい、オーナメンタル・グラスがおしゃれな庭 ・庭をつくろう! イギリスで見つけた、7つの小さな庭のアイデア ・玄関を花でコーディネート! 海外のおしゃれな玄関先8選
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山口県

花の庭巡りならここ! 花苗生産が盛んな地域ならではの演出「やまぐちフラワーランド」
年に7回の植え替えにより、500品種45万本の花を植栽! 2006年にオープンした「やまぐちフラワーランド」は、35,000㎡の敷地を持ち、大人の足でゆっくり歩いて1時間半ほどで回れる広さです。山口県柳井市は温暖で日照時間の長い気候のため、花の生産が盛ん。そんな地域の振興をはかる目的で整備されたのが「やまぐちフラワーランド」で、地元で生産された花苗を植栽しています。年間を通して約500品種45万本もの花を植栽しており、毎年新品種も導入しているので、最新トレンドを知ることができるのも魅力です。 園内には大きく分けて21の区画があり、家庭でも実践できるような提案型のモデルガーデンや、園内に植栽されている花を集合させたコレクション花壇など、区画ごとにテーマが設けられています。それぞれに“インスタ映え”を意識した色彩豊かなシーンを演出しているので、訪れた記念にナイスビューを写真に収めましょう! 棚田だった地形を生かした 斜面を覆うように彩る花畑が特徴的 「歴史と自然に囲まれた、ちょっとおしゃれな花と緑の庭園」をコンセプトにしている「やまぐちフラワーランド」は、一年を通して季節の花々が咲き競います。 写真は2018年3月下旬の自由広場沿いのエリア。カーペットのように咲いている赤やピンクの花は、デージーです。土手の頂で白い小さな花を枝いっぱいに咲かせるユキヤナギは3月末〜4月上旬が見頃。約100mにわたって約500株が植栽されています。 写真は「やまぐちフラワーランド」の一角で、2018年春の景色です。約130㎡にわたって群植されている黄色い花は、クリサンセマム。約4,000本が咲き広がり、見頃は4月〜5月上旬です。ゆるやかにつながる階段を上り切ると、高低差が50mの迫力ある全景が一望できます。 「やまぐちフラワーランド」は、もともとあった棚田の地形を生かした花壇も特徴的です。写真は2018年4月のフラワーガーデンのエリア。左手の黄色やオレンジの花はエスコルチアで約6,000本を植栽、見頃は3月下旬〜5月上旬です。右手のピンクや白、クリームイエローをミックスさせたフラワーベッドは、リビングストーンデージー。約4,000本が植栽され、見頃は4月〜5月上旬です。 2018年5月のフラワーガーデンでは、オレンジ&黄色のナスタチウム、ピンク&白のダイアンサス、黄色のダールベルグデージーが競演。里山の借景が美しく、野鳥の楽しそうなさえずりも聞こえてきます。園内では飲食物の持ち込みが自由なので、好きな場所でお弁当やおやつを広げることができますよ。花景色を前に、心地よい風を感じながら好きな食べ物をほおばるのは、なんとも贅沢な時間です。園内にはゴミ箱を設置していないので、持ち帰りのマナーは守ってくださいね。 「やまぐちフラワーランド」の2018年夏の屋上庭園には、センニチコウが60㎡に約700本植栽されています。見頃は7〜9月上旬です。同時期にはアンゲロニアやルドベキアなども見頃になり、夏らしいトロピカルな雰囲気をもつ草花が主役に。また涼を呼ぶ演出として、白やブルー、紫の花色のクールカラーでまとめた花壇も見られます。 秋は楽しいハロウィンディスプレイが見どころ 冬でも寂しくない! パンジー&ビオラが花盛り 毎年10月には、園内の至るところにジカボチャやキュートなオバケ雑貨を使った装飾が施され、ハロウィン一色になります。2018年はハロウィンボディペインティングやジャック・オ・ランタン作り(要予約)などのオータムフェスタが開催されます。 ハロウィンの時期に限らず、毎月の週末を中心に、ガーデニングセミナーや寄せ植えコンテスト、クイズラリー、コンサートなど、興味津々なイベントが開催されているので、事前にホームページをチェックして参加してみましょう! パンジーが絨毯のように広がっている様子、これは春の風景? いいえ、実は2017年冬のフラワーガーデンなんです。このエリアでは、100㎡に3,500本のパンジー、ビオラを植栽しており、11月下旬〜3月頃が見頃。園内の花壇すべてを合わせれば、16種類約32,000本のパンジー、ビオラを植栽しています(2017冬〜2018春)。さすが温暖で、花苗生産が盛んな地域だからこその贅沢さですね。パンジーの色合わせの妙も参考になりそうです。 冬は、ほかにも白や紫のハボタンが11月下旬〜3月上旬まで見頃になり、パンジーやビオラ、ストックとともに彩りを添えます。花色に飢えているこの時期のガーデナーにとっては、冬も元気に咲き続ける花たちと出合える、心浮き立つスポットですね。 「やまぐちフラワーランド」にはおしゃれな「レストラン 大地の恵み HANAHANA」があり、お食事も楽しめます。木曜定休(祝日の場合はオープン)です。 寄せ植え体験もできる充実の花苗ショップ 土産物コーナーも地元の名産品がずらり 「やまぐちフラワーランド」内の温室売店では、寄せ植え体験教室を常設しているので、ぜひご参加を! 好きな花、鉢を選んで、料金はセレクトによって変動します。予算に合わせての相談にも乗ってくれますよ。 そして、温室売店では、土にこだわって育てられた地元産の一年草や宿根草の花苗を約100品種、バラ100〜200品種を販売。熱心なガーデナーにとっては、「本気買い」のスイッチが入るスポットですね。来園者からは「庭園で一目惚れした花苗を、ここで買えたのでうれしい!」という声も聞かれます。営業時間は9:30〜16:30。 「やまぐちフラワーランド」内の売店「コッコロ」では、調味料やお菓子、雑貨類など地元の名産品が多数揃っていています。なかでも、毎年8月開催の「柳井金魚ちょうちん祭り」でも知られる郷土民芸品「金魚ちょうちん」は、お土産に大人気。まん丸の瞳にパクパクのお口、愛らしい表情がほほえみを誘いますね。700〜1,500円で販売されています。 また、「やまぐちフラワーランド」内にて、定期教室も行われています。フラワーデザイン、プリザーブドフラワー、ドライフラワーアレンジメントのほか、料理やウクレレ、絵手紙と多彩なラインナップ。近くにお住まいの方は公式ホームページでチェックし、趣味を広げる目的でレッスンに通うのもオススメです。 Information やまぐちフラワーランド 所在地:山口県柳井市新庄500-1 TEL:0820-24-1187 https://flowerland.or.jp/ アクセス:公共交通機関/JR柳井駅からタクシーで5分(片道定額830円) 車/山陽自動車道玖珂ICから車で約15分、山陽自動車道熊毛ICから車で約20分 オープン期間:周年 休園日:木曜(祝日を除く)、12月27日〜1月1日 ※臨時休園あり 営業時間:9:00~17:00(最終入園16:30) 料金:高校生以上500円、小・中学生250円、70歳以上250 円、未就学児 無料 ※20名以上の団体20%割引 駐車場:300台(無料) 併せて読みたい ・花の庭巡りならここ! インスタ映えする景色の宝庫「淡路島国営明石海峡公園」 ・花の庭巡りならここ! 四季を通して多様な植物で彩られる「はままつフラワーパーク」 ・花き生産高1位の地域に生まれた、旬の花と野菜が並ぶショップ「Marché&Cafe hana・yasai はなやさい」 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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フランス・パリ「ロダン美術館の庭園」と秋バラ【松本路子の庭をめぐる物語】
ロココ様式の館の美術館 制作中のアートフィルムの撮影で、秋のパリを訪れた。撮影の合間に立ち寄ったのがロダン美術館。2015年に3年間の改装期間を経て、リニューアルオープンした美術館は、彫刻家オーギュスト・ロダンが住んでいた当時の館の様相を再現している。 かつての所有者である将軍の名前から「ビロン館」と呼ばれる邸宅は、パリ7区の閑静な住宅地にある。18世紀に建てられたロココ様式の建物と優美な庭園で知られる場所だ。 ロダンは1908年から亡くなるまでの10年間をこの館で過ごしている。この館は当時の所有者によって一時期若いアーティストたちに提供され、ロダンとともに詩人のリルケやジャン・コクトー、画家アンリ・マティス、舞踊家イサドラ・ダンカンなどが住んでいた時代もあった。 パリ市が館を所有することになった時、ロダンは自身の作品を市に寄贈することを条件に、ロダン美術館の設立を持ちかけたのだという。1919年、ロダンの死の2年後に開館された美術館には、6,600点の彫刻、7,000点のデッサン、ロダンの収集した美術品などが収蔵されている。 ロダンの弟子で愛人でもあったカミーユ・クローデルの作品を収めた部屋もあり、改めて彼女の才能とその生涯に思いを馳せた。 ローズガーデンと「考える人」 美術館の正門を入ると、館の前庭にローズガーデンが広がり、その庭の右手にロダンの作品の中で最も知られた「考える人」のブロンズ像が立っている。像は原型から何点か鋳造されているので、オリジナルといえるものがほかの場所にもあるが、ロダンの暮らしていた館の庭で見るのは、また格別だ。 10月の中旬だったので、春のバラの最盛期ほどではないが、秋バラに彩られた「考える人」には趣が感じられた。 前庭の彫刻たち 「考える人」の向かい側のローズガーデンには「三つの影」、そして奥にはこれも有名な「地獄の門」、ヴァレンヌ通りに面した場所には「カレーの市民」が。バラの花や端正に整形された木々の間に、ロダンの代表作が並んでいる。何とも贅沢な空間だ。 館の庭を散策 美術館の庭園は3万㎡の広さで、内庭にはイギリス式庭園と、木々に囲まれた彫刻の林が連なっている。秋の木漏れ日の中で見る彫刻は美しく、ロダンが自然の光の中で見てほしいと希望した展示方法であるという。 また庭園の奥の池のほとりから望む館と、水面に映ったその優美な姿も忘れがたい。庭園の一角にはカフェもあり、散策の途中にひと息入れることも。パリの中心地とは思えない静寂と豊かな緑を満喫できる。 ‘ロダン’という名前のバラ 館を取り囲むようにコの字形につくられた植え込みに咲くピンクのバラ。半八重のそのバラにはロダンの名前が冠されている。2005年にフランスの育種家メイアンによって作出され、ロダンに捧げられたものだという。バラの名前に関心があり、その名前のゆかりの地を訪ね歩いている私にとって、思いがけず嬉しい出合いだった。 庭園に秋バラは咲いていたが、6月に訪れたらローズガーデンはさらに華やいでいるのではないだろうか。いつかまたバラの季節に訪れたい、そんな風に思える場所だ。 併せて読みたい ・松本路子の庭をめぐる物語 フランス・パリの隠れ家「パレ・ロワイヤル」 ・写真家・松本路子のルーフバルコニー便り「秋バラの楽しみ」 ・最も歴史あるバラのナーセリー「フランス・ギヨー社 GUILLOT」
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イングリッシュガーデン旅案内【英国】 ベス・チャトー・ガーデン(1)乾燥に強い庭を実現
20世紀の偉大なガーデンデザイナー ベス・チャトー(1923-2018)は植物の特性をよく知るガーデンデザイナーとして、また、経験に基づく豊富な園芸知識を伝えた作家、講師として活躍しました。その功績により、2002年に大英帝国四等勲爵士を授与されています。 晩年も電動カートに乗って庭に出て、ガーデンスタッフとの会話を楽しんだというベス。2018年5月、94歳で亡くなると、英国の主要メディアで訃報が報じられ、その死が惜しまれました。現在、ベスがつくり上げた庭園は孫娘のジュリア・ボルトンに引き継がれ、ベスとともに働いた有能なガーデナーチームによって管理されています。 乾燥に挑戦するグラベル・ガーデン 来園者をまず迎えるのは、グラベル・ガーデン(砂利の庭)です。風になびく柔らかなグラス類の穂や、すっと伸びるリナリアのピンクやバーバスカムの黄色の花穂。リズムを与える、紫の丸いアリウム。砂利が敷かれた広々とした区画に、さまざまな植物が茂る、軽やかで美しい植栽です。 じつは、この庭には秘密があります。それは、1991年につくり始めてから27年間、一度も人工的な水やりがされていないということ。この辺りは年間降雨量が少ない、英国でも最も乾燥している地域で、実際、2018年の夏は50日間も雨が降りませんでした。この庭の土は水を保たない貧しい土で、水を引き込むこともされていません。にもかかわらず、この素晴らしい庭景色は存在し続けています。 ここは、庭づくりには到底向かない乾燥した荒れ地で、かつては駐車場として使われていました。しかし、1991年、ベスはあえてこの場所に、実験的に庭をつくります。英国では日照りが続いて水が不足すると、庭の水やりに制限がかかります。そんな乾燥した状況にも対応できる、最低限の湿り気で育つ植物は何なのか、彼女は庭を愛する人々のために、模索を始めたのです。 適材適所、ローメンテナンスな庭づくり ベスの夫、故アンドリュー・チャトーは、世界の植物の生態系について研究を続けた人物でした。20歳で結婚したベスは、夫の影響でガーデニングに興味を持つようになります。ベスが新しい植物を持ち帰ってくると、アンドリューは、それが地球上のどこから来た植物なのかを教えたといいます。 ベスの庭づくりの合言葉は‘Right Plant, Right Place’(ふさわしい植物を、ふさわしい場所に)というものでした。野生の姿において、その植物はどんな場所に育っているのか。それを教えてくれる夫の知識に絶対の信頼を置いていたベスは、植物の性質を見極め、その植物にふさわしい環境に植えることを、基本理念としました。 ベスは、英国ガーデンデザイン界の巨匠であった、故クリストファー・ロイドと親交が深かったことでも知られていますが、2人はグラベル・ガーデンの水やりを巡って激論を交わしたといいます。今にも干からびそうな植物に水やりをしないのは、ペットに餌をやらないようなもの、と非難するクリストファーに対し、ベスは決して妥協をしませんでした。しおれそうな草花を見て苦痛を感じても、乾燥に強い植物を突き止めたいという情熱のほうが勝っていたのです。 若い頃、フラワーアレンジメントで草花に親しんだベスがつくったのは、さまざまな形や質感の草や葉が、流れるような美しいハーモニーを見せる庭。けれどもそれは、ローメンテナンスを突き詰めた庭でもあったのです。 高山植物を集めたスクリー・ガーデン 同じく、乾燥に強い植物を集めているのが、グラベル・ガーデンより前につくられた、スクリー・ガーデンです。スクリーとは、斜面に岩や石が転がっている、がれ場のこと。この庭は日当たりのよい小高い場所にあって、水はけのよい砂利の多い土が敷かれています。その状況に似た、がれ場で育つような乾燥に強い植物や高山植物が、ここには植えられています。 高山植物は高い山々でしか育たないと思われるかもしれませんが、英国で高山植物と呼ばれるものには平地でも育てられるものがあり、ロックガーデンやドライガーデンによく用いられます。日照りによる渇水が増える昨今、水やり不要のローメンテナンスの植物として、注目を集める存在です。 日本で高山植物と聞くと、維持管理が難しい植物のイメージがありますが、この庭に植わる高山植物には、アネモネやゲラニウム、フロックス、オダマキ、ナデシコ、ソリダゴ、タイム、エリゲロンなど、ガーデニングでよく耳にする植物の仲間であるものが、多々あります。 セダムの中にも、育てやすい高山植物に数えられるものがあります。他にも、陽光が好きで乾燥に強い多肉植物の鉢が、ここには並べられています。 ベスの庭は、敷地全体が一つにつながって、無数の植物が、周囲と調和する美しい組み合わせを見せながら、それぞれ環境に適した場所に植えられています。生け垣などで仕切られた、小部屋が連なるスタイルの、いわゆるイングリッシュガーデンとはだいぶ趣が異なった、ナチュラルな庭です。ゆったりとした道幅の小径をのんびり進むと、砂利の庭から水辺に出たり、森の中にいたり。時間をたっぷりかけて行き来したい庭です。 併せて読みたい ・イングリッシュガーデン旅案内【英国】ベス・チャトー・ガーデン(2)癒しの水の庭と森の庭 ・英国の名園巡り、オールドローズの聖地「モティスフォント」 ・デッドスペースにも花緑が育つ「寄せ鉢」ガーデニング
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長野県

カメラマンが訪ねた感動の花の庭。スタイリッシュな園芸店 長野・GARDEN SOIL
庭好き、花好きのオススメで向かったガーデンソイル 僕が初めてガーデンソイルさんにお邪魔したのは、2006年の春のことだったと記憶しています。その頃、僕と妻は雑誌のオープンガーデンを担当していたこともあって、あちこちのオープンガーデンを行っている方々と連絡を取っていました。この時も、「オープンガーデン信州」の清水恵子さん(飯綱高原の「ペンション フィールド・ノート」のオーナーで、日本のオープンガーデンの草分け的存在の方。いつもいろいろなことを教わりました)から「オープンガーデン信州の総会があるので、いらっしゃいませんか?」とお誘いを受け、雑誌の取材を兼ねてお邪魔しました。その時のオープンガーデン信州の事務局をしていたのが、ガーデン・ソイルの田口勇さんと片岡邦子さんでした。清水さんからも、「ガーデンソイルは素敵なお店だから行ってみてください」と言われていたので、総会の後にうかがいますと、お二人と約束しました。そして総会終了後、僕たちは清水さんや会長の稲葉典子さんにご挨拶をすませて、須坂市にあるガーデンソイルへ向かいました。 看板からも伝わってきたセンスのよさ 若い頃、志賀高原でスキー三昧の日々を送っていたことから、長野の道は得意で、須坂市にはすぐに到着。教わった住所をカーナビに入力して出発しました。町から離れて川を渡ると、辺りは一面の梨畑に。「こんな所にガーデンショップがあるのだろうか」と思いながら、ナビ通りに細い道を左に曲がると、道の脇にある小さな納屋に、「Garden Soil」と表示された明るいブルーグレイの看板を発見。センスのよい看板を見ただけで、これから伺う場所は僕が想像しているようなお店とは全然違うのだろうと、すぐに思いました。 イングリッシュガーデンとは違う庭の魅力に出合う 看板を過ぎると、お店はすぐに見つかりました。駐車場に車を止めると、目の前にはさっき見かけた看板と同じブルーグレイに塗られた木造の建物があり、その周辺には苗売り場や宿根草の植栽スペース、奥は広い庭になっていました。高木に囲まれた庭の中には、いくつものオリジナルデザインのパーゴラやガーデンシェッドが点在していて、それらを取り囲むように、草花がナチュラルに植栽されています。 当時の僕は、イングリッシュガーデンこそが美しい庭だと信じていて、イギリスを思わせるレンガの壁に、つるバラやクレマチスが絡んでいたり、ガーデンコテージの前ではシンメトリーにデザインされた花壇の中にジギタリスやデルフィニウムが咲いているようなシーンばかりを追いかけていました。そんな僕にとって「見たこともない」「イングリッシュガーデンじゃない」、でも「魅力が溢れている!」というのが、ガーデンソイルの第一印象でした。 センスのよさは、お店の中や植物選びにも 撮影の許可をもらって庭に立ってみると、どの方向にレンズを向けても絵になってしまうし、見たことがない植物だけれど、ファインダーの中ではフォルムが本当に美しく見える。でも、撮影はとても難しい……。すべてが僕にとって初めての撮影体験をさせてくれた庭。この庭をつくったお二人って、どんな方たちなんだろうと、つくづく思いました。 撮影を終えて建物に戻ると「コーヒーでもどうぞ」と声を掛けていただき、建物の奥に入りました。そこには、大きいテーブルにゆったりとした椅子、壁一面に洋書がびっしりと並ぶ本棚があり、まるでどこかのデザイン事務所の打ち合わせスペースのような空間。ガーデンソイルをつくった人はどんな人物なのだろうとますます思いを募らせながら、コーヒーを飲みました。 お話を伺ってみると、田口さんと片岡さんは、以前は東京・原宿の事務所でインテリア設計の仕事をしていたとのこと。看板がカッコいいのも、お店のインテリアが素敵なのも、庭にフォルムの美しい植物が選ばれていることも、すべてに合点がいきました。この日以来、ガーデンソイルは長野を訪れる際、時間が許す限り必ず立ち寄るマイフェイバリットのお店になりました。 ガーデンソイルの新たな魅力を発見 当時は、どのガーデニング関連の雑誌にも庭紹介のページがあって、盛んに撮影をしていましたから、僕もいつもよい庭を探すアンテナを張って、ガーデンソイルでも情報収集をしていました。この連載でご紹介した山中湖の塚原さんの庭も、田口さんが教えてくれた場所です。 昨年2017年6月のこと。長野でちょっとした撮影の後、天気もよいのでガーデンソイルで夕方の撮影をさせもらおうかなと思い伺ったら、撮影後のコーヒータイムに「この本見た?」と田口さんが手にしていたのはPiet Oudolf氏の美しい写真集でした。以前からガーデニング誌『BISES』の秋号などで見かけて、紅葉した庭がきれいなのは知っていましたが、このPiet Oudolf氏の写真は格別に美しく、思わずため息をつくと、「うちも11月の紅葉はきれいよ」と片岡さんが教えてくれました。そうと聞けば、俄然ガーデンソイルの紅葉の撮影をしたくなって「11月に必ず伺います!」と約束をし、その日は帰りました。 期待を裏切らない秋の美しい風景 夏も終わり秋風が吹き始めると、ガーデンソイルの紅葉の進み具合が気になりだしました。幸い、ガーデンソイルのガーデナーである粟野原さんがフェイスブックに庭の状況の写真をアップしてくれるので、その様子から撮影日の目安をつけつつ、天気予報をチェック。一日晴れの予報だった2017年11月3日に撮影に向かいました。午後3時に駐車場に着くと、周りの落葉樹は黄色く色づき、斜めに傾きかけた夕陽に、枯れた草花は茶色く輝き出していました。お二人にさっと挨拶をして、カメラを抱えて庭の奥まで行って振り向くと、逆光に透けて木々の葉は赤や黄色に。 グラス類は白く輝いて最高にきれいでした。真っ赤に紅葉したミナズキのボーダーにレンズを向けると、奥のカエデは黄色く輝いていました。こんなに素晴らしい光景があることを教えてくれたお二人に感謝しながら、いつものように日が沈むまでガーデンソイルの紅葉を一人で満喫した、とても幸せな一日でした。 Information 「ガーデンソイル」 所在地:長野県須坂市野辺581-1 ☎026-215-2080 http://soilgarden.exblog.jp アクセス:上信越自動車道「須坂長野東I.C.」より車で5分。 Open:10:00〜18:00(4〜7月、9月、10月は無休。その他の月は月曜定休)
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広島県

花の庭巡りならここ! 四季を通して花のカーペットで彩られる「国営備北丘陵公園」
広大な花風景に癒されるスポット 1995年に開園した、34,000㎡もの面積をもつ「国営備北丘陵公園」。森と湖(国兼池)に囲まれた緑豊かな自然の環境に恵まれ、リフレッシュに訪れるのにうってつけの公園です。「ふるさと・遊び」をテーマにしたレクリエーション施設が多様に揃っていますが、花を愛でに訪れるなら「花の広場」「みのりの里」「ひばの里」エリアを園内マップでチェックを。敷地が大変広く、公園全体を歩けば2時間以上はかかるため、目的のエリアにターゲットを絞って最寄りの駐車場を利用するのがオススメです。 敷地の広さを生かして季節の花を群植し、面で魅せる風景が「国営備北丘陵公園」の魅力です。春はスイセン、チューリップ、ネモフィラ、初夏はアジサイ、夏はヒマワリ、秋はコスモスが満開になります。また、各季節の開花時期に合わせて「スイセンファンタジー」「備北花ピクニック」「備北夏まつり」「備北コスモスピクニック」などのイベントを開催。期間中の週末を中心に、ワークショップやコンサートが開かれます。 春は丘陵一面をスイセン、チューリップ、ネモフィラが覆い尽くすように咲く 写真は「国営備北丘陵公園」にて、3月下旬〜4月上旬に見頃を迎える「みのりの里 スイセンガーデン」。約15,000㎡の敷地に約700品種150万本のスイセンが咲き乱れ、丘一面を覆い尽くします。このエリアでは3月下旬にウメが、4月上旬にハナモモが見頃に。花木とスイセンとのコラボレーションによる、華やかな景色を楽しみましょう。 「花の広場」のエリアでは、4月中旬からチューリップが見頃を迎えます。15,000㎡の敷地に10品種、25万株のチューリップを群植。2018年春に「はなの展望台」がリニューアル。展望台から花のカーペットを一望できるので、ぜひ上からのフォトジェニックな写真を撮りましょう。チューリップの後はビオラ、アイスランドポピーへと咲き継がれます。 また、同時期に「みのりの里 ピクニック広場」のエリアでは、ネモフィラが丘一面に咲く景色を楽しめるので、こちらへもぜひ足を運んでください。 初夏は1万株のアジサイを夏は5万本のヒマワリを愛でよう 「ひばの里」エリアのアジサイは、6月下旬〜7月上旬が見頃。100品種1万株が植栽されています。明治から昭和初期の里山の風景を再現した「ひばの里」の風景と共に、風情のあるアジサイの姿を楽しみましょう。ちなみに園内は、リードをつけていればペットの同伴もOK。ワンちゃんと一緒に散歩を楽しむのもいいですね。 また、アジサイと同じ時期に見頃を迎えるのが、約50品種1,500株のハナショウブ。こちらは6月中旬頃が見頃です。 「みのりの里」エリア内にある「ピクニック広場」では、約5,000㎡に、約5万本のヒマワリが植栽されています。8月上旬〜中旬が見頃のピーク。ヒマワリ畑に入ることはできませんが、周辺に道があるので間近に見ることができます。一斉に同じ方向に顔を向けるヒマワリの姿は、壮観のひと言! 秋はコスモス畑の壮大な景色を楽しみ冬はイルミネーションのナイトガーデンを満喫 「花の広場」エリアでは、9月下旬〜10月上旬に180万本のコスモスが一面を埋めるように開花します。この付近ではケイトウ、ジニアも見頃に。園内は飲食の持ち込みが自由ですから、空が澄んで、渡る風がすがすがしい秋のレジャーシーズンに、ピクニック気分で出かけてはいかがでしょうか。 「国営備北丘陵公園」では、11月10日〜翌年1月14日(2018〜2019年秋冬)に、イルミネーションが点灯します。点灯時間は17:30〜21:00(入園は20時まで)。 特に11月下旬の紅葉の時期は、ライトアップと相まって幻想的な景色に包まれます。 「ILLUMI&花火のコラボ」は、満天の星空の下、打ち上がる花火とイルミネーションの光景をお楽しみいただける大人気イベント!(開催日は毎年異なります。詳細はHPでご確認ください)。 樹木や地形を生かした奥行きのある光景が楽しめ、敷地の広い公園ならではのバラエティーに富んだ景色が広がります。ウインターシーズンならではの、光の花咲くナイトガーデンを楽しみましょう! 「ひばの里」エリアでは、1月下旬〜2月中旬に「冬咲きぼたん展」を開催。白雪の舞う中、雪囲いに守られて凛と咲く、冬咲きぼたんの可憐な姿には心を打たれるものがあります。 ちなみに、「ひばの里」のすぐ隣のエリア「中の広場」には「お食事処 中の茶屋」があるので、歩き疲れた時には休憩にご利用を。ランチの価格帯は550〜1,000円。ソフトクリームやかき氷などもあります。また、売店「ランバス」では、地元銘菓や特産品などが多数揃うので、お土産をお探しなら、ぜひ足を運んでみてください。 Information 国営備北丘陵公園 所在地:広島県庄原市三日市町4-10TEL:0824-72-7000(備北公園管理センター)http://www.bihoku-park.go.jp/ アクセス:車/中国道庄原ICより、北入口:約5分、中入口:約10分中国横断道三次東JCT・ICより、中入口:約15分 オープン期間:周年 休園日:月曜(「備北花ピクニック」「備北夏まつり」「備北コスモスピクニック」「備北イルミ」期間中は毎日開園)、12月31日、1月1日 営業時間:9:30~17:00 (3~6月・9~10月)、9:30~18:00(7~8月)、9:30~16:30(11月~翌年2月) ※入園は閉園時間の1時間前まで 料金:大人/450円、中学生以下/無料、シルバー(65歳以上)/210円 駐車場:有り・普通車2,460台、大型車40台(普通車310円/大型車1030円/二輪100円)
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東京都

秋バラが咲き誇る都会のバラ園「神代植物公園」の歴史と見どころ
昭和36年から数々のバラの名花を植栽 神代植物公園のバラ園は、1961年(昭和36年)につくられました。歴史あるバラ園には、約400品種、5,200株のバラが植栽され、本園の整形式沈床庭園では、主にモダンローズを数多く見ることができます。また、その横には、野生種が植栽されたオールドローズ園や国際ばらコンクール花壇があります。 世界バラ会連合より「優秀庭園賞」が贈られた庭 2009年(平成21年)には、世界41カ国のバラ会が加盟する「世界バラ会連合」より、バラの育成、維持管理、展示様式が高い水準であると評価されたバラ園に贈られる「優秀庭園賞」を受賞しています。 かつての「日米親善のバラ園」の面影を今に伝える「本園」 「本園」内をゆっくり見て回っていると、高芯剣弁咲きのバラが多いことと、作出国がアメリカのバラが多いことに気がつきます。その理由は、1959年(昭和34年)に、アメリカ・ロサンゼルスより、同地の中央公園のバラ園で採取した約80品種のバラの接ぎ穂が「日米親善のバラ」として東京都へ贈られたことから縁ができたためといわれています。 1959年当時の名花であったハイブリッドティーローズやフロリバンダローズが東京都へ贈られ、「日米親善のバラ園」として、ここ神代植物公園に植栽されたとのことです。当時の日米親善のバラは、現在13品種が残っていて、2018年10月に訪れた時、ちょうどそのバラたちの咲く姿を見ることができました。 ‘フロリック’(F)1953年作出 ‘ワイルド・ファイアー’(F)1955年作出 ‘ヘレン・トローベル’(HT)1951年作出 ‘ピース’(HT)1945年作出 ‘クイーン・エリザベス’(Gr)1954年作出 ‘レディ・ラック’(HT)1956年作出 ‘レッドキャップ’(F)1954年作出 ‘ファンファーレ’(F)1956年作出 ‘リリベット’(F)1953年作出 ‘ヒート・ウェイブ’(F)1958年作出 ‘ルビー・リップス’(F)1958年作出 ‘グリーン・ファイヤー’(F)1958年作出 ‘ムーン・スプライト’(F)1956年作出 また、本園内では、1961年に植栽され、57年が経った現在も花を咲かせる‘クイーン・エリザベス’の古木も見ることが出来ます。 バラの歴史と系譜をたどる「野生種・オールドローズ園」 「野生種・オールドローズ園」に向かうと、春の一季咲きのバラが多いせいか、本園に比べて秋はひっそりとした雰囲気です。その中でも花を咲かせているバラたちは、中国原産で18世紀から19世紀初めにかけてヨーロッパへ持ち込まれ、ヨーロッパのバラたちに四季咲き性をもたらしました。 現在、当たり前のように、秋に多くのバラの花を見ることができるようになったのは、このバラたちのおかげだと、しばし見入っていました。ふと周りを見渡せば、秋には花を咲かせない一季咲きのバラたちも、ローズヒップという美しく可愛らしい置き土産を残してくれています。 世界中の育種家の未発表の新品種が並ぶ「国際ばらコンクール花壇」 こちらは、「国際ばらコンクール花壇」です。このコンクールは、1963年から始まり、以来毎年、日本国内や世界中の育種家から未発表の新品種を公募し、2年間の試作を行う中で、「公益財団法人 日本ばら会」の審査員が審査を行い、入賞花を選出しています。 本園の温室寄りの花壇には、歴代のコンクール入賞花が植栽されています。この‘クイーン・オブ・神代’(HT)は、2009年度コンクールの四季咲き大輪金賞受賞花です。2011年の開園50周年を記念して、名前を公募し命名されました。 秋は春よりも気温が低くなるため、バラの開花時間が少し長くなり、さらに寒暖の差で生じる花色の深みが加わって、何ともいえない美しさを感じる時が多くあります。春より濃く感じられる香りと共に、じっくりと一輪の花と向き合って観賞するには、秋はベストシーズンかもしれません。 ぜひ、秋バラの咲くバラ園へ出かけてみてください。
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イギリス

イギリス発祥の庭デザイン「ノットガーデン」【世界のガーデンを探る旅14】
イギリスの庭デザインの手法の一つ、ノットガーデン 今まで見てきたように、イギリスで庭ができ始める前に、イタリア、フランスなど大陸では富と文化の変遷がありました。十字軍や、大陸との文化・人的交流により、イギリスにも大陸文化の影響が色濃く見られるようになって、国内では多くの整形式庭園やフォーマルガーデンがつくられました。 起伏に富んだイタリアや平坦な大地のフランスに比べ、緩やかな丘が続くイギリスでは両国の庭園様式は何かしっくりこなかったのか、イギリスのアイデンティティーの一つとして、ノットガーデン(Knot garden)が生まれてきました。 そこで今回、解説する庭は「スードリー・キャッスル(Sudeley Castle)」。遡ること1442年、チューダー王朝の時代に建てられたお城です。イングランドでは、中世100年戦争から薔薇戦争と続いた内乱がやっと終わり、平和な時間が訪れました。このお城が歴史に登場してきたのもそんな時代で、かの有名なヘンリー8世の6番目の王妃であるキャサリン・パーがスキャンダラスな生涯を送ったことでも有名です。 庭のあちこちに登場する樹木の刈り込み 山形や円錐形など、きれいに整えられたイチイの刈り込みが圧巻の庭の一角。ひときわ明るく目にとまるのは、黄金キャラの刈り込みです。このような形で庭の中で見られるのは珍しいものです。 この庭は、16世紀になると廃墟となってしまいましたが、近年大規模な修復がなされたことで、現在はイギリスで屈指の庭園になっています。 芝生と長方形の池が同じ高さにつくられたシンプルなデザインの庭。廃墟がそのまま庭の一部として取り入れられていて、この庭の歴史の古さを感じさせてくれます。 イギリスで発祥したノットガーデンの名所 ツゲの生け垣の緑により模様が浮かび上がるガーデンのことを“ノットガーデン(結び目模様の庭)”と呼びますが、イギリスでもノットガーデンの代表的な場所として有名なのが、この「スードリー・キャッスル」です。チューダー王朝時代にあったであろう形をそのままに再現したノットガーデンですが、つくり出されたこの模様は、エリザベス1世のドレスの模様がもとになっているといわれています。 このように、刈り込みが一定の高さを保つノット(結び目模様)を維持管理するのは、日が均一に当たらず生育が不揃いになるところでは非常に難しく、緯度の低い日本では再現がほぼ不可能だと思います。濃い緑一色では暗い空間になってしまうので、中心に白いタイル張りのポンドと西アジアをイメージさせる噴水のオブジェがフォーマルな庭を演出しています。 ノットガーデンを維持するガーデナーの丁寧な仕事 ノットガーデンが維持されているのを見ると、きれいに刈り込みを行い続けている作業の苦労がうかがわれます。現代になっても電動器具を使わず、手作業での刈り込みをしているところが、イギリスらしいと感じます。この「スードリー・キャッスル」には8つの庭がそれぞれ生け垣で分けられていて、どこもきれいに管理されていました。 色とりどりの花々が咲き乱れるイングリッシュガーデンの登場は、世界中からプラントハンターが持ち帰る植物が栽培されだした17世紀以降になるので、今回ご紹介している「スードリー・キャッスル」をはじめとする中世のイギリスでは、まだまだ新大陸やアジアからの新しい植物はなく、限られた植物で庭をつくっていました。そこで、庭に変化をつけるためにも、きれいに刈り込んで形づくる「ノットガーデン」やイタリアの庭でご紹介した「トピアリー」、そして庭を取り巻くイチイの生け垣やメイズ(迷路)を取り入れることで、単調な庭を変化に富んだ空間に仕立て上げたのでしょう。 ここは長い間廃墟になっていたこともあり、ある意味、当時の雰囲気がそのまま残っています。 刈り込みによる庭デザインのバリエーション 右奥にはピジョンハウス、手前はハイドランジア‘アナベル’のグリーンの花の一群。そして、奥にきれいにシェイプアップされた刈り込みの壁。男性的なデザインの庭になっています。この‘アナベル’は北アメリカの植物なので、改修後に植えられたものでしょう。 一段高く茂るスクエアの刈り込みを中央に、外へ向かって二重、三重と生け垣と芝で丸く形づくった緑に白花が浮かび上がる落ち着いた雰囲気の庭。つくられた当時のことを思いながら眺めると、ガーデンデザイナーやガーデナーの工夫と苦労を感じられます。 区切られた庭ごとに工夫があるイギリスの庭 城の壁面に沿って続くボーダー花壇では、赤花が咲く植物が多く植えられ、シックな印象です。赤花はペンステモン、ダリア、カンナ。白花はエリンジウム。建物や園路の明るいベージュと、ナツヅタや芝生の緑に花色が引き立っています。 植栽に近づいてみると、ダリアとペンステモンに、赤葉のカンナが立ち上がっています。奥のほうではジニアの深紅の丸花が控えめに咲いています。アイリスのシルバーがかった葉も、引き立て役としてうまく調和しています。 宿根草のフラワーベッドのある庭では、レイズドベッド(立ち上がった花壇)の縁取りに、コッツウォルズ独特の板石のライムストーンを積み上げ、宿根草と低木が混ざり合って多種の植物が育っています。このように、一段高い場所に植物が茂っていることで、平面的なボーダー花壇と比べ、迫力のある景色になっています。 黄ケマンソウの茂みから、放し飼いの孔雀が現れました。孔雀はもともと東アジア原産の鳥ですが、時々ヨーロッパの庭で放し飼いになっているのを見かけます。奥の木陰にはシンプルなベンチが置かれていました。 ここでは、中央に変形の池を配し、その石材の手すりに植物が寄り添い茂っていました。このように小さく区切られた敷地ごとに、いろいろなタイプの庭をつくることで、訪れる人を決して飽きさせません。「スードリー・キャッスル」では、こうしたイギリスらしい庭づくりのエッセンスをたくさん見ることができました。 緑をふんだんに使うイギリス。ナショナルカラーのブリティッシュグリーンはこんなところから始まったのではないでしょうか。 「スードリー・キャッスル」の近くにある小学校の塀にも、植物の彩り。さすがイギリスですね。 スードリー・キャッスルへ向かう途中の小さな橋も石柱が配されて洒落ています。こんなアプローチが訪れる人の心を庭の歴史に対する興味へと導いてくれます。 併せて読みたい ・スペイン「アルハンブラ宮殿」【世界のガーデンを探る旅1】 ・イギリス「ハンプトン・コート宮殿」の庭【世界のガーデンを探る旅11】 ・イギリスに現存する歴史あるイタリア式庭園【世界のガーデンを探る旅13】
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神奈川県

横浜は「バラの街」! 3つのローズガーデンの魅力を紹介
花や緑が“ネックレス”のように人・街・時をつなぐ祭典 観光地として人気の横浜。近年はさらに横浜の豊かな自然を育もうと、「ガーデンシティ横浜」を目指す事業を推進しています。その中心的な取り組みとして展開されているのが、花と緑の祭典「ガーデンネックレス横浜」です。花や緑が“ネックレス”のように、人・街・時をつなぐというコンセプトで開催され、3月は桜、4月はチューリップ、5月はバラが、次々に横浜の各地を彩りました。異国情緒豊かな横浜の街並みとさまざまな植物たちが織りなす美しい景色は、地域の人々や観光客から人気を集めています。 横浜市の花“バラ”に出合える3つのガーデン バラは横浜の市の花であり、港の見える丘公園と山下公園にある次の3つのローズガーデンは、「ガーデンネックレス横浜」をきっかけに、異なるテーマでリニューアルされ、人々を魅了しています。 イングリッシュローズの庭 ご紹介する1つ目は、港の見える丘公園内にある「イングリッシュローズの庭」です。約120種、1,200株のイングリッシュローズが植栽されています。 “イングリッシュローズ”とは、イギリスの育種家、デビッド・オースチンが作出したバラの総称で、ブランド名でもあります。春の最盛期の後も繰り返し咲く性質をもった四季咲き性で、豊かな香りを持ち、とても人気があります。 こちらの庭では、イングリッシュ・ローズにさまざまな宿根草が組み合わされ、見事なハーモニーを奏でています。そして、庭の中央付近には、世界中で愛されている黄色の名花‘グラハム・トーマス’の回廊があります。この回廊に足を踏み入れると、バラに包まれ、きっと幸せな気持ちになりますよ。 香りの庭 2つ目は同じく、港の見える丘公園にあるバラ園「香りの庭」。バラを中心に、200種類以上の香りの植物が迎えてくれます。 こちらは沈床花壇で、周囲から一段低く、香りが溜まりやすい構造になっています。訪れるなら、特に香りがよい“ゴールデンタイム”とされる朝がオススメです。 バラは、ダマスク、フルーツ、ティー、ミルラの4つの香りに分類して植栽されていますので、ぜひこの庭でバラの香りの違いを体感してみてください。 未来のバラ園 そして最後は、山下公園にある「未来のバラ園」です。 近年、ドイツやフランスでは、環境への配慮から、無農薬で栽培できるバラの育種が盛んです。このバラ園も、自然環境を考えた未来のモデルガーデンを目指し、無農薬で栽培できる耐病性のあるバラを中心に植栽されています。これからバラを栽培してみたいと考えている人は、こうした耐病性のあるバラからお気に入りを見つけてチャレンジしてみてはいかがでしょう。 また、係留されている氷川丸を背景にしたこの庭では、まさに横浜ならではの素敵な景色も楽しめます。 「ガーデンネックレス横浜」は2019年も引き続き開催される予定で、5月には新たなバラのイベントも企画されています。 来年はどんなバラの花に出合えるのでしょう。今からワクワクしますね。ぜひ皆さんも足を運んでみてください。
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イギリス

ベテランガーデナーが解説するイギリスの街景観とハンギングバスケット
ハンギングバスケットが街並み景観をレベルアップ 2018年6月にコッツウォルズを中心に庭巡りの旅に出かけた。ウイズリーやヒドコートなど、多数の庭園を巡って、改めてイギリスの園芸文化の伝統のすごさと、人々の園芸に対する造詣の深さに敬服し、多くの感動を経験すると同時に、ガーデニングのアイデアをいくつも膨らませることができた。そもそも庭巡りの旅なので、庭を見て感動するのは「想定内」のことだが、実は「想定外」の感動があった。それはハンギングバスケットのある美しい街並み景観であった。 日本でもハンギングバスケットづくりは行われているが、ガーデニングコンテストのような場面やネット上ではお目にかかるものの、街中で見かけるのは極めて稀である。そして僕のイメージでは、ハンギングバスケットといえば、コンテストで見かける“かなり力んだ作品”で、珍しい高価な花苗をふんだんに使用しているように感じられて、つい「花苗代はいくらになるのだろう?」と想像してしまい、少々、遠い存在だった。 今回の旅で見かけた、ありふれた花を上手に使用したハンギングバスケットと街並み景観に対する感動は、少々カルチャーショック的なものであった。 ストラトフォード・アポン・エイボンにて そのカルチャーショックの第一波は、2日目に訪れたシェイクスピアの生誕の街、ストラトフォード・アポン・エイボン。エイボン川の畔の静かな街だ。この日は、ウィズリーガーデンとモティスフォント・アビーガーデンで、たっぷりと美しい庭を堪能し、すっかり満ち足りた気分だった。夕方に着いて、シェイクスピア生誕の家などを見て回ったが、陽が西に傾きかけた頃、はっと視界に飛び込んできたのが、街角の絵になるハンギングバスケットのある風景だったのだ。 美しいハンギングバスケットが、横文字のお洒落な看板と共に。まさに「外国の風景」そのもので、その美しさに惹かれてシャターを押した。庭巡りの旅で出合った想定外の景色だった。日本でも、他の海外旅行でも見たことのない、街並みとハンギングバスケットの織り成す美しさにカルチャーショックを覚えたのだ。 立派なハンギングがこれほど生き生きとしているのは、気候のせいもあるだろうが、やはり人々の花に対する愛情、そして街景観に対する思いなのだろう。花で観光客をもてなす英国人気質のような、伝統に育まれた文化を感じた。 チッピングカムデンはハンギングバスケットの街 そして、いよいよコッツウォルズの街、チッピングカムデンへ。この街で、ハンギングバスケットと街並み景観に本格的なカルチャーショックを受けたのだ。チッピングカムデンはコッツウォルドストーンの名で知られる、この地方特産のハチミツ色の石造りの建物との調和が素晴らしい。 ハンギングバスケットがこれほど街並みを美しくしているのを見たのは初めてである。窓辺や玄関脇に飾られたハンギングバスケットが、街の美しさに文字通り花を添えている。その景色からは、コッツウォルドストーンで統一された建物がただきれいに並んでいるという表面的なものではなく、歴史と伝統を重んじ、自分たちで美しい街並み文化をつくり上げていくという、人々の熱い思いすら伝わってきた。 日本のよくある「これでもか!」と珍しい植物を詰め込んだ感のあるハンギングには抵抗があるが、ごく平凡な親しみのある花々を使用して、これほどの景観効果をプロデュースするハンギングの力に脱帽だ。さすがイギリスですね。 帰国後、この記事の執筆をするにあたって写真を整理していても、その時の感動が呼び戻されるほど本当に美しい街並みだ。街角の鉢物やハンギングも洗練されていて、景観を一層美しくしていた。 ハンギングに使われている植物の変化を眺めて散策 日本の街並みと何が違うのか? そうだ、電線が一本もない! 立て看板や宣伝ののぼり旗だってない。美観より経済優先できたこの数十年の日本との違いに気がついてしまったのだ。 ブラキカム、ブルーファンフラワーと青系統で爽やかなハンギング。グレコマなども見えます。 これまた赤一色で、なかなかのインパクト。見事な咲き姿のぺラルゴニウムでした。日本の気候では無理かも。 最近の日本にも見られるカラーリーフを中心にしたハンギング例。イギリスでもカラーリーフの組み合わせが流行なのだろうか? 使われているのは、ムラサキゴテン、ディコンドラ、イレシネ・ファイヤーワーク、ヒポエステスだろうか。 ちょっと乱れ気味ですが、やはりゼラニウムは強健ですね。 こうしていくつも観察していたら、ひとつの法則に気がついた。上に比較的大輪の花を置き、下にいくにつれ小輪の花を配置する。さらに、つる植物を垂らす。街並み同様に、ハンギングにも統一感が感じられるのは、そんな「掟」があるのかも。 チッピングカムデンの街は、美しいハンギングの数々と街並み風景がどこまでも続く。 バートン・オン・ザ・ウォーターのハンギング 可愛らしい街だ。そして目に飛び込むのがハンギングの花たち。平凡な花を使用しているのに、おしゃれで素敵なのだ。 明るい色づかいが石づくりの壁に映える。 通りに面した家々のフロントガーデンを美しく飾ってオープンにし、道行く人々に楽しんでもらうイギリスの庭づくりと、塀で囲んで敷地の中が見えないようにする日本の庭づくりの違いは、住宅事情等で仕方ないとしても、ハンギングバスケットによって街並みを美しく飾り、訪れる人々や観光客をおもてなしする園芸文化は羨ましくもあり、カルチャーショックでもあった。日本の観光地や街中にあふれる派手な看板やのぼり旗、そしてクモの巣のような電線を見るにつけ、街並み景観とガーデニングの今後の課題を感じさせられた。 あわせて読みたい ・庭をつくろう! イギリスで見つけた、7つの小さな庭のアイデア ・槇谷桜子のMY Botanical Life 1 見栄え抜群のハンギンググリーン ・夏のガーデニングのお手本にも! 花いっぱいのロンドン・パブ
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北海道

上野ファームの庭便り「秋の庭で春をつくる」
積雪前に植えつける秋の大切な大仕事、球根計画 秋になると、上野ファームの庭仕事は一年で最も忙しくなります。それは来春のための球根をしっかりと計画して植えつけなくてはならないからです。秋に植える球根によって理想のデザインをし、どれだけ作業を進めるかで、春のガーデンの美しさが変わるといっても過言ではありません。これから立ち枯れた冬に向かう気候の中で、頭の中のイメージを“春いっぱい”にして想像を膨らませながら球根計画を考えます。北海道はどの地域よりも積雪が早いため、球根の植栽はいつも急ぎ足です。雪が積もってしまうと植える予定の場所も見えなくなってしまうのです。積雪が早い年は、雪をかき分けながら必死で植えたこともあります。 昔とは違う! 個性豊かな球根たち チューリップの世界はどんどん広がっています。昔の赤、白、黄色のイメージとは全く異なり、個性的な形や色が多くなって、選べる種類がぐんと増えました。今注目の開花が楽しみなチューリップたちをご紹介しましょう。 黒い羽のようにシックで大人なチューリップ‘ブラック・パーロット’。 かわいいリップを引いたような‘キャンディ・コーナー’。コンパクトなサイズは寄せ植えにも向いています。 開花が進むにつれて、変身を続ける不思議系チューリップ‘ハーバーライト’。 枝分かれしてブーケのように咲くチューリップ‘アントワネット’。咲き進むにつれてピンクの縁取りが現れる変化咲き。 宿根草の間に球根を植えつける上野ファームの栽培スタイル 上野ファームの球根デザインは、ほとんどが宿根草と宿根草の間に植えるスタイルです。植物が茂っている時期はなかなかこの作業ができないので、上野ファームのガーデンの閉園後が球根を本格的に植え始めるタイミングになります。冬には地上部が枯れる宿根草を根元からきれいに刈り取って、株と株の間を分かりやすくしてから取り掛かります。色のバランス、草丈、個数、開花期のバランスなど、球根の位置はとても重要なので、すべて自分で一球一球ていねいに配置をしていきます。その作業は透明な絵の具で絵を描くような感覚で、チューリップやスイセン、アリウムなどが開花したときのイメージを、すべて頭の中で想像しながら配置を考えていきます。 同時期に成長を始める宿根草とのバランスもとても大切です。頭を使う作業ではありますが、イメージ通りの風景が春に広がる瞬間は、何度経験してもとても嬉しいものです。秋の球根選びや植えつけ作業は大変ではありますが、この嬉しさと楽しさがあるからこそ、上野ファームの庭にとって欠かすことのできない秋の庭仕事なのです。多くの宿根草は開花まで時間のかかるものが多いのですが、球根は、秋に植えれば、春に必ず結果を出して応えてくれる点も球根の魅力の一つだと思います。 翌年の初夏に咲いたアリウムの花たち。この風景を秋の植えつけ時に具体的にイメージできるかが大切。想像力をフルに働かせて秋の球根を植えていきます。 流れるように芝の中にムスカリの球根を一つひとつ丁寧に植え付けていきます。3色が混じり合うように配置していることは、この時、パッと見には分かりません。 春の開花シーズンになると、秋に描いた絵が庭に浮かび上がります。ブルーを中心に水色と白をチラチラと混ぜ合わせて、川のように流れるムスカリ。植える大変さはあるけれど、この瞬間があるからこそ、球根栽培は楽しい。 球根の開花リレーで、春の庭に変化をつくる 宿根草に開花期があるように、春に咲くというイメージしかない球根にも、開花期がしっかりとあるのをご存じですか? チューリップも早咲き、中生咲き、晩生咲きと大きく3つのシーズンに分けることができます。それは時間が進むにつれて色の組み合わせやグラデーションの色を増やすなどの開花期の時間差がつくり出すデザインとしても楽しむことができます。 前出の写真から10日後には、中生咲き、晩生咲きのチューリップが開花を始め、華やかにイメージチェンジ! 開花期を絶妙に計算することで、表情がどんどん変わる春の球根ガーデンに。 原種系チューリップや小球根たちは、早春から咲き始めますが、開花期がそれほど長くはありません。その後、さらに開花をつなげるような球根があれば、春の球根バトンリレーを長い期間楽しむことができます。 晩生咲きのチューリップを意識して植えることで、後半になって伸びてくる宿根草の葉や花と重なって、とても素敵な春のガーデンになります。 レースのような花が咲く宿根草のコンロンソウや球根花のシラーが揃って伸びてくる5月下旬は、早春の宿根草とチューリップの競演が見られる貴重な季節。 開花期の異なる球根を数種類混植して、ガラリとイメージを変えるのも楽しいものです。白樺林には、スイセンと合わせてチューリップもたくさん植えているので、清楚なスイセンが終わりかけた頃、ポップなカラーのチューリップが咲き始めて、一気に雰囲気が変わります。その後、隙間からムスカリやフリチラリアなどが開花を続けます。 球根というとチューリップやスイセンがすぐに頭に浮かぶ方も多いと思いますが、秋植え球根は、ムスカリやフリチラリア、アリウム、カマッシアなど、さまざまな種類があります。それぞれの特徴や色、草丈などを考えながら、地面にポンポンと配置して植え込むだけ! 秋の球根植えほど楽しい作業はありません。地面に描いた球根がまるで魔法のように春に開花を始めて、華やかな景色をつくってくれます。球根類には驚くほどの種類がありますが、品種を選ぶのも楽しい作業です。 上野ファームのムスカリ。ムスカリだけでもさまざまな色のバリエーションがあり、毎年少しずつ増やしながらコレクションする楽しみも広がります。 中でもお気に入りは、ムスカリ‘マウントレディ’。まるで小さな富士山みたいです。 自然風な植栽にも活躍するカマッシア。 チューリップが終わる頃、アリウム‘パープルセンセーション’と同じくらいの時期に開花するので、一緒に植栽すると涼し気な色合いの球根コーナーになります。 球根の植え時となる秋はガーデンシーズンも終盤で、ちょっと庭仕事にくたびれかけている時期ですが、春の素敵なガーデンをイメージして、もうひと頑張り! 地面に描いた球根が、ときめくような春を連れて来てくれます。球根は忘れた頃に届く自分へのプレゼントのようなもの。ぜひ、いろんな球根にチャレンジしてみてください。
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秋田県

花の庭巡りならここ! 体験教室のプラン充実の観光ガーデン「田沢湖ハーブガーデン『ハートハーブ』」
ハーブ香るガーデンで植物に触れる体験教室を 県立自然公園の中にある「田沢湖ハーブガーデン『ハートハーブ』」は、300㎡の広さを持つ、ハーブに特化した観光ガーデンです。自然豊かな周囲の借景との調和をはかったナチュラルな植栽で、約100種の植物が息づいています。春のチューリップ、初夏のラベンダーを中心としたハーブ類、秋のセージ、そして紅葉へと四季折々に表情を変えていくので、一年を通して何度でも足を運びたくなるスポット。年間10万人が訪れ、リピーターが多いというのもうなずけます。 特筆しておきたいのは、体験教室が大変充実していること。当日その場で申し込みが可能(定員あり)で、気軽に参加できるのがハーバリウム(所要時間30分〜、1,500円)、アロマストーン(所要時間30分〜、1,200円)、天然ハーブのハンドクリーム(所要時間30分、700円)などの手作り体験で、随時約15種のプランがあります。予約制では(7日前まで予約、参加者8人以上)、ハーブのミニ知識教室(所要時間約40分、600円)、手作りパン教室(所要時間2時間、1,200円)、手作りソーセージ教室(所要時間2時間、1,800円)など。旅の思い出に、ぜひ手作りのお土産を持ち帰ってみませんか?(価格表記は税別) 小鳥のさえずりが聞こえる自然豊かな環境のもと ハーブと草花が織りなすハーモニーを楽しもう 「田沢湖ハーブガーデン『ハートハーブ』」が最も華やぐのは5月上旬、ゴールデンウィークの頃です。暖地では開花期が少しずつずれるサクラ、ジューンべリー、ハナズオウなどの花木や、ムスカリ、スイセン、クロッカス、チューリップなどが一斉に咲いて春が一度にやってくる、北国ならではのガーデンの景色を楽しみましょう。チューリップは毎年配色を変えて植栽しており、群植の色合わせの妙を見せてくれます。 ラベンダーの見頃は7月中旬。寒さに強いラベンダー・グロッソを群植しています。園内を散策しながら、癒し効果のあるラベンダーの上品な香りを楽しみましょう。この時期は、ほかにヤマボウシ、ギボウシ、ミントなどがガーデンの景色を盛り上げます。 10月中旬〜下旬になると、5〜6種、約50〜60株のセージが満開に。セージは成長するとこんもり茂ってボリュームのある草姿になるので、色彩もさまざまに迫力のある景色を楽しめます。 秋が深まり、10月中旬〜11月上旬になると紅葉が見頃を迎えます。ナラ、クリ、カエデ、サクラ、ジューンベリーなど、落葉樹が燃えるように色づく姿を楽しみましょう! ちなみに、随所にベンチなどの休憩スペースがありますが、飲食の持ち込みは不可となっています。 地元の旬の味が楽しめるレストラン& テイクアウトOKのカジュアルなフード店が揃う 「田沢湖ハーブガーデン『ハートハーブ』」の外観。おいしいカレーパン、みそたんぽなどの軽食が楽しめ、テイクアウトもできるカジュアルフーズ「アルマジロ」、レストラン「サラート」、アロマシッョプ「フィールズ」などの店舗が入っているので、ぜひ立ち寄ってみましょう。 レストラン「サラート」では、田沢湖を一望できるビューを楽しみながら食事ができます。平日はビーフシチュー1,300円、くるみパンプレート680円(一日6食限定!)、八幡平ポークの生姜焼き定食1,000円など、メニュー構成が多彩。営業時間は、喫茶が10:00〜15:30(ラストオーダー15:00)、食事は11:00〜15:00(ラストオーダー14:30)。 毎週土・日と祝日はバイキング形式限定で、旬の食材を使ったさまざまな料理を楽しめます。営業時間は11:00〜15:00(受付14:30まで)、大人1,600円、小学生800円、幼児500円(価格表記は税別)。 レストラン「サラート」では、ローズ、ラベンダー、ミント、カモミールなど19種のハーブから選べるハーブティーバー500円がオススメ。おかわり自由です。もちろんスイーツも充実のラインナップ。ここでしか食べられないレモングラスのソフトクリーム278円、ワッフルプレート500円、ルバーブチーズケーキ400円、アップルパイ370円などがあります(価格表記は税別)。 ハーブ、花苗充実のガーデニングショップと アロマ&土産物充実の雑貨店でお買い物に夢中に! 「田沢湖ハーブガーデン『ハートハーブ』」の温室内には、ガーデニングショップの「シーズ」があります。食用のキッチンハーブ(カモミール、バジル、タイム、ミント)や観賞用ハーブ(ラベンダー、セージ、サントリナ)など、ハーブ苗の品揃えが多彩。堆肥や土などの資材、ガーデンアクセサリーなども販売しています。 写真はアロマショップ「フィールズ」の一角。エッセンシャルオイル、ディフューザー、マッサージオイルなどのアロマテラピー用品、ハーブ石けん、お香、アロマキャンドルなどが充実。ほかに秋田・田沢湖限定のお土産、秋田犬ぬいぐるみ、地元農産加工品などもあり、お土産探しに好適です。 Information 田沢湖ハーブガーデン「ハートハーブ」 所在地:秋田県仙北市田沢湖田沢字潟前78 TEL:0187-43-2424 http://www.heart-herb.co.jp/ アクセス:車/盛岡方面から田沢湖へ、国道46・341号経由、約1時間 秋田市方面から田沢湖へ、国道13・46号経由、約1時間40分 オープン期間:4月中旬~11月上旬 ※冬期間(11月中旬~4月上旬)は土・日・祝日のみ営業、ガーデン・温室・ランチバイキングは休み 営業時間:10:00~16:00 (平日)、9:00~17:00(土・日・祝日) ※冬期間は10:00~16:00 料金:無料 駐車場:有り、200台(無料) 併せて読みたい ・花の庭巡りならここ! 都会のオアシスで癒しのひとときを「神戸布引ハーブ園」 ・花の庭巡りならここ! 実はエンタメ空間!「水戸市植物公園」 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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オーガニックコスメのパイオニア「ヴェレダ」社のハーブガーデン・レポート!
厳しい基準をクリアしたオーガニック製品を製造 皆さんは、ヴェレダの商品を使ったことがありますか? ヴェレダはスイスに本社を置く、ナチュラル・オーガニックコスメブランド。植物一つひとつがそれぞれ持つ力を引き出し、それらを人の美しさや健康へと生かすモノづくりをしています。そんなヴェレダの商品は、製造工程のすべてにおいて、厳しい基準をクリアしたオーガニック製品であることにこだわって製造されており、日本でもショップを展開するなど、高い人気があります。それぞれにシンボルとなる「キープラント」と呼ばれる植物が配合されたヴェレダ製品のラインナップは幅広く、きっと、皆さんの中にも、フェイスケア商品やボディミルクなどの商品を愛用している人がいるのではないでしょうか。そんなヴェレダの製品材料の一部は、実は自社農園で生産されていることはご存じでしたか? 今回は、あらゆる生き物がのびのびと生きる、ドイツにあるヴェレダのハーブガーデンをご案内します。 ヴェレダの創業と人智学 ヴェレダの創業は1921年。「人間は自然と調和して生活すべきである」と考える人智学(アントロポゾフィー)の創始者で、教育や建築などでも知られるオーストリアの哲学者・自然科学者のルドルフ・シュタイナーと、オランダ人の医師イタ・ヴェーグマン、ドイツ人化学者で薬剤師でもあったオスカー・シュミーデルにより創設されました。教育と研究という、それぞれ異なるアプローチからアントロポゾフィーの活動をスタートさせた彼らに共通する理念は、医薬品は自己治癒力に刺激を与えるものであるべきというもの。彼らの持っていた「人と自然との調和」というモットーは、設立当初から変わることなく企業の理念として生き続けています。 3人はヴェレダの設立以前より仕事での関わりがあり、ヴェーグマン医師とシュミーデル博士の共同研究により生まれたものの中には、今なお用いられている自然医薬品もあります。そして1921年に、ゲーテアヌムにあったシュミーデル博士の実験施設を引き継いで化学と医薬品の製造研究所に合併し、同年に近隣のアーレスハイムに会社を移転したことが、現在のヴェレダの始まり。その後、ヴェレダという社名が生まれたのは1928年。紀元初頭に治療を行っていたといわれるゲルマン人の女性司祭で、預言者でもあったVeledaの名に由来しています。ちなみに、現在も使用されているヴェレダのロゴマークは、医療・医術を象徴する「アスクレピオスの杖」を様式化した、シュタイナーによるデザインなんですよ。 さて、そんなヴェレダがつくりだすオーガニックコスメとアントロポゾフィー医療の医薬品は、厳しく選び抜かれた原材料を用いて生産されています。世界中に契約農家を持つのはもちろん、自社のハーブガーデンでも多くの植物を栽培し、原材料として利用しているのです。ヴェレダの自社農園は、ドイツやスイス、イギリス、ブラジル、アルゼンチン、ニュージーランドなど、世界中のさまざまな場所に存在しますが、その中でも最も大きく、ヨーロッパ最大級の植物園であるのが、ドイツのシュヴェービッシュ・グミュント北方の高原にあるハーブガーデン。20ヘクタールの広さに260種の植物が栽培され、そのうち180種はヴェレダの医薬品や化粧品の原料となっています。管理と手入れが行き届き、美しいこのガーデンを訪ねた模様をご紹介します。 私の暮らしとヴェレダ 私がヴェレダのガーデンを訪れたのは、8月上旬、ドイツでもちょうど夏の盛りのことです。この取材は、仕事である以上に個人的にもとても楽しみにしていたものでした。もともと私は、ヴェレダの製品の愛用者。子ども時代からヴェレダは私にとって、とても身近なものでした。 ドイツ南部で育った私はいつも豊かな自然に囲まれて子ども時代を送り、また、私の家では口にするものや肌につけるものは、基本的に自然由来のものを選んでいました。体調を崩した際にも、まずは自然由来で効果が穏やかなホメオパシーの薬による治療を。また、母と私は敏感肌でもあり、ほとんどの一般製品は肌に合わなかったということもあります。私は、母がメイクや口紅をつけているのを見たことがありません。そのため、基礎化粧品も自然由来のものを選ぶようにしていました。そんな私たちが利用していた医薬品や化粧品の多くが、ヴェレダの製品だったのです。今でもホワイトマローのベビークリームやザクロのローション、アルニカのシャワージェルなど、ヴェレダの製品は私の暮らしには欠かせません。 そんな理由もあり、この日はとてもワクワクしながらガーデンへと向かいました。今回訪れるヴェレダのガーデンがあるシュヴェービッシュ・グミュントは、ドイツ南部にあり、シュツットガルトから東に55㎞ほどの場所に位置しています。家から3時間以上車を走らせましたが、到着まで待ち遠しく、体感時間はそれ以上。その日は霧がひどく、ドナウ川沿いの前方の車が見えないほどでしたが、シュヴェービッシュ・グミュントに到着した時、ちょうど太陽が顔を出し、忘れがたい一日が始まりました。 ドイツにあるヴェレダの自社農園 駐車場に車を止めると、ビジターセンターへと気持ちのよい道が伸び、右手にはヒツジがのんびりと草を食んでいました。なんて美しく、穏やかな光景なのでしょう! また、シラカバ林の間には大きな蒸留器が設置され、その一角はまるで屋外にある博物館のような雰囲気を漂わせます。さらに道を進むと、道の右手に、製品工場の姿が見えてきました。 ビジターセンターの周囲には、メドウと木々が茂る生き生きとした緑の景色が続いています。センターは2006年に建設され、内部には非常に明るく開放的な空間が広がっています。壁は、異なる商品ラインを示すさまざまな色にペイントされていて、とてもカラフル。ショップの端には、ちょっと一息を入れるためのテーブルと、小さなカフェカウンターが備え付けられ、建物の外には池の見える景色のよい場所に、ウッドデッキが設置されています。池の周辺には、ワイン用に栽培されていたブドウと、クリの木でできた木製のフェンスが立ち、たくさんの宿根草が植栽されています。ビジターセンター内では、ヴェレダの製品のさまざまな説明を聞いて、実際にトリートメント体験もでき、至福の時間を過ごしたのですが、そのレポートは次回に譲ることにしましょう。 ヨーロッパ最大規模のバイオダイナミック農園でもあるヴェレダのハーブガーデン さて、ビジターセンターから出てさらに道をたどると、いよいよ目的のWELEDA HEILPFLANZENGARTEN(ヴェレダのハーブと薬用植物のガーデン)の入口に。60年以上前につくられたこのガーデンは、20ヘクタールもの広さを誇る敷地いっぱいに多様な植物が育つ、ヨーロッパ最大規模の植物園。豊かな土壌には、3~10月まで季節を通じてさまざまな花が咲き競います。ガーデンには25種の樹木を含む、一年草や宿根草など260種の植物が栽培され、その中から180種が製品材料として利用されています。製品材料として使われるものはさまざまで、樹皮、花、果実、根など植物のすべてが収穫されています。植物はどれも管理が行き届き、きちんと列ごとに植栽されて、正確なプランツタグもついています。ガーデンの中にはスローベリーやハマメリス、サンザシといった植物はもちろん、ガーデン内に咲く花々を目指して、ハナアブやテントウムシなどの益虫も集まり、動物や鳥も植物とともに共生しています。 このガーデンは、ヴェレダ最大の自社農園であると同時に、ヨーロッパ最大規模のバイオダイナミック農園でもあります。バイオダイナミック農法とは、シュタイナーによって提唱された有機農法・自然農法で、生産物が有機栽培であるだけでなく、農園全体を一つの有機体とみなし、その中で完結する循環型の農業手法のこと。作物以外の植物の有効性も認めているので、直接の収穫対象とならない植物も作物と同じように育っています。また、殺虫剤や除草剤、駆除剤、殺菌剤などは使用されていないため、ミツバチやアヒルといった虫や動物もガーデン内に生息し、植物や動物、虫たちの生態系が整う、生き生きとして、調和にあふれたガーデンをつくり出しています。日々の水やりに利用されているのは、貯水池に貯められた雨水。また、ガーデン内では、シェードガーデンに向く植物のために日陰をつくるつる植物や、風よけのための生け垣など、植物の特性を生かし、互いに生育しやすい環境を整えるための工夫が至るところに見られます。 バイオダイナミック農法では、植物は自然の生育リズムに従って栽培され、さらに作業は人の手により行われます。ヴェレダでは、この美しいガーデンを管理するために、常時20人以上のガーデナーが働いています。また、近隣でシュタイナー教育を行うウォルドルフ学校の7年生の生徒たちが、授業の一環として折々にガーデンでの仕事をしていくこともありますし、ハーブガーデンで講義を行う大学もいくつかあります。このヴェレダのハーブガーデンを訪れる際には事前予約が必要ですが、予約するとガーデンガイドが丁寧に解説をしながら敷地内を案内してくれます。ドイツを訪れた際には立ち寄ってみてはいかがでしょうか? 次回は、ヴェレダのショップでの体験記をお届けしましょう。 併せて読みたい ・バイエルン州に実る緑の黄金 ビールづくりに欠かせない美しいホップ ・世界のガーデンを探る旅1 スペイン「アルハンブラ宮殿」 Credit ストーリー&写真/Elfriede Fuji-Zellner ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子ども向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。 協力/WELEDA 取材/3and garden
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東京都

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪2 「庭道具屋 toolbox」
閑静な住宅街の中に小さな店を構える「toolbox世田谷」(2018年10月21日〜「庭道具屋 toolbox」として移転)。古い倉庫を都会的にリノベーションし、シンプルにしつらえた店内には、オーナーが厳選したガーデンアイテムがところ狭しと並びます。その商品の本格的な重厚感と豊富さに、初めて訪れた人はみな圧倒されます。 目利きのオーナーが現地で見つけた 世界の選りすぐりがズラリ 店内に並ぶアイテムは、イギリスやドイツ、フランスなど、ヨーロッパのものが中心。商品が美しく見えるよう、それぞれ専用のラックが設けられ、整然と展示されています。 ツール類はみな用途が異なり、形も大なり小なり異なっています。たくさんの中から自身が求めているアイテムを選ぶのは至難の業ですが、心配はいりません。ショップオーナーの黒田明雄さんが、工房やその国のガーデニング事情などの話も交えて、詳しく説明してくれます。各工房のこだわりの違いなどを知ると、品を選びやすくなるだけでなく、ガーデニングの楽しさがぐっと膨らむものです。 世界各国の本物に触れた経験が 「toolbox」の誕生につながる もともとエクステリア会社でエクステリア&ガーデンデザイナーとして活躍していた黒田さん。約5年間デザインに従事し、その後ポストやライトなどのガーデンエクステリアプロダクトの輸入・開発の部署を立ち上げました。世界のガーデンプロダクトを研究するために、イギリスやオーストラリア、ドイツ、北欧など、各国のガーデンショーや工房、メーカーなどに足を運んで、職人やデザイナーにも会い、技術、歴史などについても学びました。「イギリスのチェルシーフラワーショウやハンプトンコートのガーデニングショーは数えきれないぐらい行ったよ。当時は何もかもが珍しく、とにかく楽しかったね」。 もともと建築も含めてデザインの世界にいたというだけあって、あらゆるものを効率よく吸収しながら‘確かな目’を養っていきました。そして、今から約10年前に独立。自身の世界を集約させたショップ「toolbox」をオープンしたのです。 工房ごとに異なる個性を 国ごとに比べてみよう 以前は、イギリス製のガーデンツールがメインでしたが、最近はオーストリアやオーストラリア、オランダなどのツールも多数取り扱っています。最近、他国に生産を任せて安く量産するメーカーも増えてきたそうですが、ここで扱うものはいずれも、伝統的な製法で職人が丁寧に作った「ぬくもりを感じる逸品」にこだわっています。 上の写真はオーストリアのPKS Bronze社のもので、あたたかみのある輝きを放つ銅合金製。オーストリアの自然科学者・ヴィクトル・シャウベルガー氏の「銅合金の農具は土壌を改善し、農作物の品質を高める」という1950年の実験結果に基づいてつくられています。滑らかな取っ手部分はブナ材。 オーストリアの繊細な印象のものとは大きく異なり、がっしりとした印象があるオランダ・スネーブル社のガーデンツール。100年以上の歴史がある工房で、園芸農家の声を受けながら改良を重ねてきたツールです。材質はステンレス製で錆びる心配がなく、エッジがシャープで使いやすいのが特徴。握りやすい柄はタモ材など。 ハサミも充実のラインナップで、アメリカや日本、スイス製があります。切れ味はどれも甲乙つけ難い優れものばかりなので、握った感じや重さなど、実際に触れて好みのものを選べるのも、この店ならでは。さらにスイス製のフェルコのハサミは、すべてのパーツに分解してメンテナンスできるのが大きな魅力。バラの愛好家たちに支持されている理由が分かります。さすが精巧なモノづくりが得意なスイスの技ですね。 黒田さんがデザインした 秀逸アイテムも必見! エクステリア&ガーデンプロダクト開発業務をショップとは別に継続していることもあり、自身で手がけたオリジナルホースリールを販売しています。これは日本製で、重厚感のあるボディはアルミ合金。劣化しづらく長もち。3色のボディの色と装飾ディスクの種類も豊富でカスタマイズされています。さらに、「ノズルがずば抜けて優れているんですよ」と黒田さん。「水の勢いを調節しつつ、それを固定できる」という設計で、使っていて疲れません。この機構を採用した散水ノズルは、日本ではこの会社の製品だけです。 どれも素敵で目移りしてしまいますが、シックなカラーの「オリジナル(中段)」はクラシックな印象を、メタリックな輝きを放つ「コスモシリーズ(上段)」はモダンな印象があり、よく見比べると醸し出す雰囲気が異なるので、自庭に合ったものを選びましょう。 庭をおしゃれに見せてくれる アイテムも充実 プランツタグや麻ひもなど、植栽シーンを素敵に演出するために欲しいアイテムも充実。実用性と遊び心を兼ね備えたデザインに、眺めているだけで園芸意欲が膨らみます。「見映えも重視したい」という、オープンガーデンなどをしている方に特にオススメです。 緯度が高いことに加えサマータイムもあり、夏は夜遅くまで日が沈まないヨーロッパ。庭が広いだけでなく、職場が自宅から近い人が多い、蚊がいないなど、さまざまな条件が揃い、夜もガーデンで家族や友人と過ごす人が多いそうです。「だから、日本人よりも庭に居心地の良さを求めるんですよ」と黒田さん。おしゃれだけど飽きのこない庭をつくるためには、見映えのよい添景物が必須。ガーデンオーナメントだけでなく、バードフィーダーなどもデザイン的なものが求められています。 シーンづくりの参考にしたい! 洗練されたディスプレイ 小さなショップ空間を有効活用したディスプレイも見逃せません。天井や壁面を巧みに活用し、見ごたえたっぷりにコーディネートされています。店内の見通しや動線を妨げずに、ここぞという場所に強弱をつけて飾るテクニックは、やばりデザイナー出身の黒田さんだからこそなせる技。“商品の使い方が想像できるように”意識されたディスプレイは、ベランダやインテリアのコーナーづくりに大いに参考になります。 店内中央で目を引いた、吊り下げ型物干し。愛らしい絵柄のタネ袋や手袋を吊り下げて、空間を軽やかに演出しています。これは18~20世紀の頃、一般の家庭で使われていた伝統的なデザインの物干しの形をそのまま復活させた製品です。付属の滑車を天井に取りつけて、長いロープで本体を上下させるので、手の届かない高い場所にも設置が可能です。ハーブ&フラワードライヤーとして活用したり、インテリアのアイテムとしていろいろ使えそうです。 おしゃれなガーデンブーツを手に入れたら、ブーツラックにもこだわると、素敵に見せながらの収納が可能。ブーツを逆さに吊るすので、ホコリが入るのを防げます。ガーデンブーツはデンマークからやってきたイルセ・ヤコブセン社のもの。編み上げがおしゃれで、タウン用としても愛用できそうです。ラックは英国・クレモアミル社の3足かけられるもの。 階段の上の空間には、異なる形・素材のバスケットを組み合わせた、シンプルなコーディネート。表皮をそのまま生かした木の巣箱も合わせて遊び心を加えています。すっきりと素敵に見えるのは、色のトーンを揃えているからなのでしょう。木製のバスケットは英国・ロイヤル・サセックス社のガーデントラッグ。ワイヤー製のものはフランスのコンブリション社のワイヤーバスケット。スクエアのバスケットは、オランダ製と、ここも国際色豊かなコーナー。 繊細さピカイチ! 日本のアイテムにも注目 商品は、海外製品に限らず、日本製のものも並んでいます。繊細な技術と手入れを必要とする盆栽は、我が国が生んだ誇るべき文化。それを支える道具類も繊細であることが求められます。黒田さんはそこに着目し、盆栽用の華奢な銅製土入れや銅製熊手なども、多肉植物やミニ盆栽などの細かい作業にオススメのアイテムとして揃えています。 黒田さんイチ押しはコレ! ドイツ製の黄色いガーデンブラシ 50年程前からドイツでつくられているガーデンブラシ。ブラシ部分がカーブしているのが大きな特徴です。ブラシは固すぎず柔らかすぎないところがポイント。熊手とは違い、芝生に引っかかることなく落葉を掻き出してくれます。もちろん、レンガや石のアプローチの掃除にもオススメ。化学繊維なので劣化しづらく、庭の掃除が格段に楽になります。 世界にはさまざまなガーデンツールがあり、庭の楽しみ方も千差万別。一つの道具を通して異国の園芸文化のほんの一端に触れるだけで、ガーデニングの時間がぐっと楽しくなるものです。「toolbox世田谷」はそんな機会を与えてくれる場所。ぜひ、奥深いガーデニングの世界をのぞきに訪れてみてください。アクセスは、東急田園都市線・用賀駅から徒歩約10分。ご紹介の実店舗に並ぶツールは、ネットショッピングも可能なので、ぜひアクセスしてみてくださいね。 併せて読みたい ・素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪1 岩手・雫石「花工房らら倶楽部」 ・マーク・チャップマンさんもオススメ! デザイン性の高いガーデングッズ5選 【GARDEN SHOP DATA】 庭道具屋 toolbox 世界のこだわりのガーデンツールやアイテムを扱う、園芸ショップ。逸品がずらりと並ぶ品ぞろえに、本格派ガーデナーの熱い支持を得ている。2019年1月、世田谷・用賀から移転して、埼玉県越谷市にオープン予定。 住所:埼玉県越谷市恩間413-10 TEL: 048-971-7814/FAX: 048-971-7815 URL: https://www.rakuten.co.jp/toolbox/ Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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滋賀県

花の庭巡りならここ! 近代名建築を華やかに盛り上げる西洋式回遊庭園「びわ湖大津館 イングリッシュガー…
湖を背景にバラも健やかに育つガーデン 1934年に建てられた昭和初期の近代名建築、「旧びわ湖ホテル本館」をリニューアルし、2002年に「柳が崎湖畔公園 びわ湖大津館」としてオープン、隣接する敷地にはイングリッシュガーデンがつくられました。その後、数度のリニューアルを経て、県下最大の300種、3,000株のバラで彩られる「びわ湖大津館 イングリッシュガーデン」として親しまれるに至っています。 「花と湖、四季折々の花々に囲まれた楽園で過ごす安らぎのひととき」がコンセプトのイングリッシュガーデンは、約5,900㎡の敷地を持ち、大人の足でゆっくり歩いて約30〜60分ほどの散策を楽しめます。それは湖上を渡るさわやかな風と優しい花の香りを感じながら、心身ともにリフレッシュできる穏やかな時間。琵琶湖を借景にしたガーデンウェディングも開催されており、祝福の心を表すように手入れの行き届いた景色は、必見です。 ローズソムリエ、小山内健さん監修の 300種、3,000株のバラにうっとり! 「びわ湖大津館 イングリッシュガーデン」は、大まかに「グラベルガーデン」「ボーダーガーデン」「ノットガーデン」「ランドスケープガーデン」「スイレンの池」のエリアに分かれています。写真は小石、砂礫を組み合わせ、可憐な花々やハーブを植え込んだ「グラベルガーデン」。春はソメイヨシノ、シダレザクラ、ヤエザクラなどの花木と、チューリップ、スイセン、ポピーなど春の草花との競演が楽しめます。特にチューリップは約20種8,000球が植栽されており、4月頃が見頃です。 美しい琵琶湖と一体になった、絵画のような景色を楽しめる「ランドスケープガーデン」では、5月上中旬に「野田藤」が見頃になります。池に渡した太鼓橋を覆うように長い花房を垂らす、それはそれは見事な景色! フォトスポットになること間違いありません。 バラの名所でもある「びわ湖大津館 イングリッシュガーデン」。バラの見頃は5月中旬〜6月中旬、10月下旬〜11月下旬です。写真はランドスケープガーデンの一角にあるローズガーデンで、散策路の両サイドに四季咲き性の品種が植栽されています。ローズガーデンは、京阪園芸のローズソムリエ小山内健さんの監修で、間近でバラの姿形や香りが楽しめるように設計されています。アーチを彩るのは‘コルデス・ジュビリー’で、開いた黄色い花が花弁の縁から徐々にピンクに染まっていく、ひと株で花色のグラデーションが楽しめるバラです。 バラは、「F&Gローズゾーン」「つるバラゾーン」「香りのゾーン」のほか、皇室や著名人にちなんで名付けられたバラを集めた「皇室ゾーン」「音楽家ゾーン」「俳優・女優ゾーン」「ペインターズ(画家)ゾーン」などに分類して植栽されています。 青空の下、琵琶湖から渡る風が心地いい! エリアごとのシーン演出に心が躍る英国式庭園 散策路や塀に沿って細長く取られた植栽スペースは「ボーダーガーデン」が。立体的に植栽されたこのエリアには、芝生のグリーンや、つるバラには希少なオールドローズ、色とりどりの宿根草、ハーブなどが絶妙に調和する風景を楽しめます。ピンクのつるバラは‘スパニッシュ・ビューティ’と‘キュー・ランブラー’。 白バラの‘アイスバーグ’、‘ホワイト・クリスマス’のアーチで場面転換される向こうに見えるのは、「ノットガーデン」。ノットは「結び目」を意味し、ツゲを刈り込んでトピアリーのように紋章を形づくり、その中心に花やハーブを植えて強調しています。琵琶湖に面しているため視界が開けて心地よく、また紋章をはっきり見るには「びわ湖大津館」建物の上階から眺めるのもオススメです。 「スイレンの池」では、5種以上、約150株の耐寒性スイレンと、約5種50株の熱帯性スイレンが集められ、優雅な姿を見せてくれます。見頃は6~9月で、訪れた方からは「太鼓橋の藤の景色とも相まって、庭を愛した印象派の画家、モネの絵のように素敵」との感想も聞かれます。 写真は琵琶湖側からノットガーデンを通して「びわ湖大津館」を望む景色。ノットガーデンでは年2回の植え替えがあり、秋はアメジストセージが紫色に染め上げます。 「びわ湖大津館 イングリッシュガーデン」では、年間を通してジャズコンサートやハロウィン、お姫様体験会(ドレス試着体験)などの各種イベントや、寄せ植え教室、基礎バラセミナー、各種カルチャー教室も開催。特にバラ監修の小山内健さんのセミナーは、毎回盛況を見せています。ぜひ公式ホームページをチェックして、気になるイベントに参加しましょう! 琵琶湖を望むレストランで美食を満喫! ギフトショップもバラにまつわる雑貨が充実 ひと通り散策を終えたら、港町をイメージしたフレンチレストラン「ベルヴァン・ブルージュ」で、琵琶湖を一望しながらラグジュアリー感のある食事やティータイムを楽しんではいかが。頬をなでる風が心地いいテラス席もあります。営業時間は10:00〜21:00。ランチコースは2,160円、3,500円・5,000円(共に要予約)。ほかにお子様ランチ1,080円、カレー1,080円〜などがあります。デザートは自家製ワッフルセット1,080円、ケーキセット910円など。 写真は、「シェフのおすすめランチコース」2,160円。季節の前菜、本日のスープ、メイン料理、デザート盛り合わせ、パンまたはライス、コーヒーまたは紅茶をいただきます。メニュー内容は月ごとに替わるので、リピートしてみたいですね。 「びわ湖大津館」内には、ショップ「Shiga no Hana(シガノハナ)」があるので、ぜひ立ち寄ってみましょう。ギフトやお土産にぴったりの、滋賀県ならではのクラフト品やお菓子、バラ園にちなんだローズ雑貨がさまざまに揃います。



















