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フランス・パリ「ロダン美術館の庭園」と秋バラ【松本路子の庭をめぐる物語】

フランス・パリ「ロダン美術館の庭園」と秋バラ【松本路子の庭をめぐる物語】

近年、リニューアルしたロダン美術館は「考える人」の作者である彫刻家ロダンの住まいで、マティスなどの若いアーティストも集った場所。現在は、18世紀に建てられたロココ様式の建物と、優美な庭園が一般にも解放されているパリの名所です。世界各地の美しい場所を旅する写真家でエッセイストの松本路子さんが、2018年秋に訪れたお気に入りの庭、ロダン美術館の庭園をご案内します。

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ロココ様式の館の美術館

ロダン美術館入り口
ロダン美術館の入り口。

制作中のアートフィルムの撮影で、秋のパリを訪れた。撮影の合間に立ち寄ったのがロダン美術館。2015年に3年間の改装期間を経て、リニューアルオープンした美術館は、彫刻家オーギュスト・ロダンが住んでいた当時の館の様相を再現している。

かつての所有者である将軍の名前から「ビロン館」と呼ばれる邸宅は、パリ7区の閑静な住宅地にある。18世紀に建てられたロココ様式の建物と優美な庭園で知られる場所だ。

ロダン美術館の建物

ロダンは1908年から亡くなるまでの10年間をこの館で過ごしている。この館は当時の所有者によって一時期若いアーティストたちに提供され、ロダンとともに詩人のリルケやジャン・コクトー、画家アンリ・マティス、舞踊家イサドラ・ダンカンなどが住んでいた時代もあった。

ロダン美術館の中庭

パリ市が館を所有することになった時、ロダンは自身の作品を市に寄贈することを条件に、ロダン美術館の設立を持ちかけたのだという。1919年、ロダンの死の2年後に開館された美術館には、6,600点の彫刻、7,000点のデッサン、ロダンの収集した美術品などが収蔵されている。

ロダンの弟子で愛人でもあったカミーユ・クローデルの作品を収めた部屋もあり、改めて彼女の才能とその生涯に思いを馳せた。

ローズガーデンと「考える人」

ロダン美術館とローズガーデンの秋

美術館の正門を入ると、館の前庭にローズガーデンが広がり、その庭の右手にロダンの作品の中で最も知られた「考える人」のブロンズ像が立っている。像は原型から何点か鋳造されているので、オリジナルといえるものがほかの場所にもあるが、ロダンの暮らしていた館の庭で見るのは、また格別だ。

 ローズガーデンと「考える人」のブロンズ像
ローズガーデンと「考える人」のブロンズ像。

10月の中旬だったので、春のバラの最盛期ほどではないが、秋バラに彩られた「考える人」には趣が感じられた。

前庭の彫刻たち

トピアリーと彫刻「三つの影」
トピアリーに囲まれた彫刻「三つの影」。

「考える人」の向かい側のローズガーデンには「三つの影」、そして奥にはこれも有名な「地獄の門」、ヴァレンヌ通りに面した場所には「カレーの市民」が。バラの花や端正に整形された木々の間に、ロダンの代表作が並んでいる。何とも贅沢な空間だ。

『神曲』をテーマにした「地獄の門」
叙事詩『神曲』に登場する内容をテーマにした「地獄の門」。
 ヴァレンヌ通りに面した庭にある「カレーの市民」
ヴァレンヌ通りに面した庭にある「カレーの市民」。

館の庭を散策

秋の木漏れ日と彫刻。
秋の木漏れ日の中で見る彫刻。

美術館の庭園は3万㎡の広さで、内庭にはイギリス式庭園と、木々に囲まれた彫刻の林が連なっている。秋の木漏れ日の中で見る彫刻は美しく、ロダンが自然の光の中で見てほしいと希望した展示方法であるという。

ロダン美術館の中庭と建物

また庭園の奥の池のほとりから望む館と、水面に映ったその優美な姿も忘れがたい。庭園の一角にはカフェもあり、散策の途中にひと息入れることも。パリの中心地とは思えない静寂と豊かな緑を満喫できる。

‘ロダン’という名前のバラ

バラ‘ロダン’
ロダンに捧げられたバラ‘ロダン’。

館を取り囲むようにコの字形につくられた植え込みに咲くピンクのバラ。半八重のそのバラにはロダンの名前が冠されている。2005年にフランスの育種家メイアンによって作出され、ロダンに捧げられたものだという。バラの名前に関心があり、その名前のゆかりの地を訪ね歩いている私にとって、思いがけず嬉しい出合いだった。

ロダン美術館と彫像

庭園に秋バラは咲いていたが、6月に訪れたらローズガーデンはさらに華やいでいるのではないだろうか。いつかまたバラの季節に訪れたい、そんな風に思える場所だ。

併せて読みたい

松本路子の庭をめぐる物語 フランス・パリの隠れ家「パレ・ロワイヤル」
写真家・松本路子のルーフバルコニー便り「秋バラの楽しみ」
最も歴史あるバラのナーセリー「フランス・ギヨー社 GUILLOT」

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