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北海道

上野ファームの庭便り「秋こそ美しい! 表現広がるオーナメンタルグラス」
庭で発揮するオーナメンタルグラスの魅力 「オーナメンタルグラス」という言葉も、少しずつ聞く機会が増えてきたように思いますが、まだまだあまり知られていないようです。葉や穂の美しさなどを含めて装飾的にも美しいグラス類(草)の総称をオーナメンタルグラスと呼び、上野ファームでもガーデン全体にたくさんの種類を植えています。美しい花を咲かせる植物とはまた違い、オーナメンタルグラスの美しさは、葉と穂にあります。 秋になるとたくさんの穂があがり、オーナメンタルグラスはさらに美しさを増してきます。秋風とともにしなやかに揺れる穂の動きも、庭デザインの一部としてとても魅力的なのです。シンプルながら、庭に新鮮な動きを与えてくれるグラスは、一見ナチュラルな庭に合いそうなイメージですが、都会のコンクリート建築などともとても相性のよい植物。固い素材と対照的なやわらかさとシンプルさが、モダンなデザインとしても魅力的な表現を可能にしてくれます。 ガーデンにグラスを入れるだけで、表現の幅はどんどん広がります。シンプルに風に揺れることを意識してデザインしたり、葉や穂の色でグラデーションをつくることもできます。植物の引き立て役としても優秀で、背景にオーナメンタルグラスがあるだけで、手前の花やシードヘッドの輪郭がくっきりと浮かび上がるため、ほかの植物を最大限に魅力的に見せてくれます。 例えば、背景にグラスがあることで手前のエリンジウムのシルエットがはっきりと分かるように。お互いの魅力を引き立て合うことも可能です。 タネだけになった植物のシードヘッドも、グラスと合わせることで、まるでモダンアートのように美しいシーンをつくり出せます。 穂が風で踊るように揺れる姿は、ガーデンに動きと感動を与えてくれます。表情豊かなオーナメンタルグラスは秋が見頃です。 上野ファームで秋の庭を盛り上げるグラス類をご紹介 ・ミスカンサス&カラマグロスティス 葉は似たようなものが多いですが、穂は多彩な表情を持っています。左はミスカンサス、右はふわふわの穂がシッポのようなカラマグロスティス。 ・斑入りフウチソウ 斑入りの葉が春から秋まで美しく茂り続ける、斑入りフウチソウ。 ・ワイルドオーツ まるで小判がいっぱいぶら下がっているような雰囲気が愛らしいワイルドオーツ。 ・パニカム‘シェナンドア’ 小さなビーズのような赤い穂と葉先がワインレッドになるのが魅力のパニカム‘シェナンドア’。 ・モリニア‘バリエガータ’ 涼しげな斑入りの葉から、明るい黄色の茎が放射線を描く、モリニア‘バリエガータ’。 草花との組み合わせや植え方で多彩な表情に グラスと花を混ぜ合わせるように植えると、野原のようなメドウガーデンに。シンプルに植えるとモダンなアートのようにも表現が可能です。場所の雰囲気、合わせる草花によって、本当に多彩な表現ができるのがオーナメンタルグラスです。 まるで雲のように細かな穂が出るデスチャンプシアと、トリカブトやアキレアなどを混ぜ合わせて野原のような自然な庭に。 札幌の商業施設屋上で植栽デザインを担当した「そらのガーデン」でも、オーナメンタルグラスは大活躍。葉の微妙な色の変化をグラデーションのように組み合わせて、屋上という厳しい環境にも耐えています。ビルの間ならではの強風さえも、穂が美しく揺れるというデザインの味方になっているグラスガーデン。西日が当たる時間は、穂が光で透けて輝いて見えて別世界のようです。 カラマグロスティス・ブラキトリカ一種だけを使って、生け垣のようにシンプルに仕切りをつけるとモダンな雰囲気に。コンクリートの塀や板塀などでは表現できない柔らかさが出ます。 デザインを担当した子どもたちのためのキッズガーデン「くるみなの庭」では、草むらをくぐり抜けるようなワクワク感を楽しんでもらおうと、さまざまな種類のオーナメンタルグラスを使ってグラス迷路をつくりました。グラスが成長するつれ、難易度も変化していきます。かくれんぼもできる人気コーナーに。 まだまだ使い方や魅力は知られていないオーナメンタルグラスですが、栽培も簡単で管理もしやすく乾燥に強い品種が多いので、いろんなシーンで気軽にデザインに取り入れていくことができると思います。デザインの新しい可能性が広がる魅力的なオーナメンタルグラス、ぜひあなたの庭でも挑戦してみてはいかがでしょうか。
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京都府

花の庭巡りならここ! 古都にフランスの風を感じるスポット「ガーデンミュージアム比叡」
フランスをコンセプトにデザインされた 「ガーデンミュージアム比叡」 2001年4月にオープンした「ガーデンミュージアム比叡」は、17,000㎡の敷地を持つ庭園。以前の比叡山遊園地の建て替えに伴い、京都と姉妹都市にあたるフランスをコンセプトに、新たな観光スポットとして開園しました。フランス人デザイナーのルイ佐藤さんが庭園のデザインを手がけ、「京阪園芸」が当初の植栽を担当。この庭園の一番の特徴は、フランス印象派画家の描いた絵画をモチーフにしたガーデンデザインで、園内にはモネやルノワールなどの印象派の陶板画が45点設置されています。 園内は「花の庭」「睡蓮の庭」「香りの庭」「こもれびの庭」「藤の丘」「バラ園」の6つのエリアに分かれています。「花の庭」「睡蓮の庭」は、印象派の画家・モネの庭をテーマに植栽。「香りの庭」ではプロヴァンス地方の丘陵地をモチーフに、ラベンダーなどのハーブや黄色い花を中心に、立地を生かして斜面一面に花を咲かせる演出をしています。「藤の丘」では多様なワイルドフラワーが揺れる自然の野原のような景色に……と、各エリアによって異なるシーンが演出されており、歩を進めるのが楽しく、足取りも軽くなります。 年間の来園者数は約8万人で、「昼と夜の気温差のために、花の発色が鮮やか」「小鳥のさえずりがよく聞こえて癒される」「夏の暑い時期でも、たくさん花が咲いていて爽やか」との声が寄せられ、リピーターも多く訪れます。ミュージアムとミックスした新スタイルの観光ガーデンに、ぜひ足を運んでみてください。 まるで絵画の中に入り込んだような 色彩豊かなガーデンが広がる 「ガーデンミュージアム比叡」のエントランス。大人の足でゆっくり歩いて1時間ほどかかる園内は、約1,500種10万株の植物で彩られています。訪れるのにオススメの時間帯は午前中。「香りの庭」や「藤の丘」は東向きの斜面にあるため、太陽の光を受けて生き生きとした表情が見られ、バラが強く香るのも、睡蓮が咲くのも午前中だからです。また、曇りの日は特に色鮮やかに見え、霧の日もとても幻想的でオススメです。 一方、夏は夕暮れが涼しく、特に「藤の丘」にたくさん植栽されているクレオメが、いっそう艶やかに開花します。夜は「ジャルダン・デ・ルミエール」と題したキャンドルライトアップとともに夜景も楽しめるので、夕方以降に訪れるのがオススメですよ! 4月20日の開園以降、花の見頃が続くように花期をずらして植栽したり、庭ごとに表情が異なるように植え方を変えたりと、植栽テクニックの技が光るので、自庭の参考にもなりそう。 そして「ガーデンミュージアム比叡」の春本番は、ゴールデンウィークの頃で、チューリップやシャクナゲが見頃を迎えます。印象派の陶板画が設置されている付近は、その絵に描かれている世界が広がるように同じ色の花を植栽しており、絵画との素晴らしいコラボレーションが楽しめます。 「こもれびの庭」の花の回廊を中心に、「ガーデンミュージアム比叡」の園内にはホンシャクナゲや西洋シャクナゲなど、約30種300本が植えられています。一番の見頃は5月上旬〜6月。背景に咲いているピンクに彩られた花木は桃の木で、開花が揃う時期を狙って訪れるのもいいですね。 「ガーデンミュージアム比叡」の「ローズガーデン」には、約180種1,000株のバラが植栽されており、6月中旬から見頃を迎えます。冬の厳しい寒さも乗り切れるように、耐寒性のあるバラや修景バラを多く植栽。アーチやフェンス、ガゼボなどにつるバラを誘引した、立体的な演出も見どころです。バラのハイシーズンには、「京阪園芸」のバラのスペシャリスト、小山内健さんを招いて、園内を歩きながらバラの講習会を行っています。 写真は丈夫に育ち、こぼれんばかりに咲く修景バラ‘ボニカ82’。「ガーデンミュージアム比叡」は山頂に位置するため冬の寒さが厳しい土地柄で、雪の重さで折れるのを防止するため、冬期剪定の前に仮剪定をしています。 「ガーデンミュージアム比叡」の「睡蓮の庭」は、印象派の画家、モネのフランス・ジヴェルニーにある自邸の庭園を参考につくられました。フジの絡まる太鼓橋を背景に、池には約10種100株の睡蓮が植栽され、モネの絵画「睡蓮」の世界が広がっているかのようなエリアとなっています。訪れた方からは「まるでジヴェルニーに来たみたい」という感嘆の声が聞かれます。 9月になると、シュウメイギクが見頃を迎えます。山頂の気候と相性がよいのか毎年自然に株数が増しています。「ガーデンミュージアム比叡」では、飲食の持ち込みが可能なので(但しカフェへの持ち込みは不可)、すがすがしい秋にはピクニック気分でお弁当を広げるのもいいですね。 自然の野原のような植栽をしている「藤の丘」では、9月下旬〜10月に約3,000株のコスモスが見頃になります。コスモスはタネ播きの時期をずらし、3回に分けて植え替えをして花が途切れないように工夫。9月は台風の強風によってなぎ倒されることがないよう、矮性の品種‘ソナタ’を植栽しています。さらに秋が深まるとともに、‘イエローキャンパス’と‘オレンジキャンパス’が加わり、少しずつガーデンの表情に変化を与えているのも工夫のポイントです。この時期はダリアやサルビアも見頃になり、秋の庭園を華やかに盛り上げます。 標高840mに位置するガーデンミュージアム比叡は 見晴らしがよく、爽やかな風を感じる 「ガーデンミュージアム比叡」の標高は、約840m。琵琶湖、大津市街、京都市内が一望できます。比叡山頂の気候は市街地よりも4〜5℃低いため、ゴールデンウィーク頃にチューリップが、初夏にバラが咲くなど、少し遅れて開花期がやってきます。そして真夏の端境期でも、宿根草などの花が色鮮やかに、元気に咲き誇り、標高が高い場所ならではのガーデンの景色が楽しめます。 「ガーデンミュージアム比叡」内には、眺望を楽しみながら飲食できる「カフェ・ド・パリ」があるので、ランチやティータイムのひとときを過ごしてはいかがでしょう。営業時間は10:30〜16:30、ラストオーダーは16:00。客席数は110席で広め。価格帯はランチメニュー1,600円、ケーキセット750円。人気メニューは牛肉をじっくり煮込んだ「ビーフシチューセット」です。 土産物や雑貨が揃う充実のショップ ワークショップも開催しているので、ぜひご参加を 「ガーデンミュージアム比叡」内のショップ「メゾン・ド・フルール」では、ミュージアムグッズやガーデニンググッズ、フランス雑貨、ハーブ・アロマグッズなどを揃えています。営業時間は10:00〜17:00。特にオリジナルハーブティーが人気です。 「メゾン・ド・フルール」のショップでは、「体験工房アロマ石けんづくり」のワークショップを土日・祝日に開催しています(2週間前までに予約すれば、平日でもOK)。パームオイルからできた添加物を含まない石けん素地に、好みのアロマオイルを選んで香りと色をつけ、オリジナルの石けんをつくります。観光の記念に、ぜひトライしてみましょう! Information ガーデンミュージアム比叡 所在地:京都府京都市左京区修学院尺羅ヶ谷四明ヶ嶽4番地 TEL:075-707-7733 http://www.garden-museum-hiei.co.jp/ アクセス:京阪三条駅または出町柳駅から比叡山ドライブバス 「比叡山頂」下車すぐ 叡山電車八瀬比叡山口駅のりかえ叡山ケーブル・ロープウェイ比叡山頂駅下車すぐ オープン期間:4月中旬〜12月上旬 営業時間:10:00~17:30 (夏季ナイター営業あり) 料金:大人 1,200円、子供 600円 駐車場:有り230台(比叡山内駐車料金無料 ※別途通行料金が必要となります。) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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岩手県

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪1 岩手・雫石「花工房らら倶楽部」
秀峰・岩手山に抱かれた、のどかな田園地帯が広がる雫石。乳製品で有名な「小岩井農場」があり、宮沢賢治の幻想的な世界もよく似合う町です。車を走らせると、田畑の隅や家の入り口などが花で彩られている様子が多く見られます。花を愛するこの町の人々が通う「花工房らら倶楽部」を訪ねました。 街道に沿って美しく咲く植栽が道行く人の目を引く「花工房らら倶楽部」。花苗、資材などあらゆるものが揃う大型のガーデニングショップです。オープンは今から20年ほど前で、それまでは切り花の生産農家をしていたというオーナーの櫻糀(さくらこうじ)哲也さん。園芸ブームの到来を機に、切り花から花苗の生産にシフトチェンジして、イギリスなどに何度も足を運んで西欧の庭園を視察。イングリッシュガーデンのエッセンスを加えた園芸店「花工房らら倶楽部」を農場内にオープンさせました。 さわやかな風が吹き渡る ナチュラルなサンプルガーデン まずは、このショップの人気スポット、サンプルガーデンをご案内しましょう。店舗の建物の前に広がるサンプルガーデンは、イギリスの視察で訪れたガーデンを参考にしたといいます。2,000坪もある敷地には、蛇行する小道が設けられ、季節の花々を見ながらゆっくり散策できます。植えられている植物は、雪深いこの地域でも丈夫に育ち、美しい花を咲かせるショップイチ押しの宿根草がメイン。数年前には2年連続でガーデンデザイナーのポール・スミザー氏による植栽勉強会も開催し、スミザー氏がオススメするグラス類も多種植えられています。 ガーデンの奥に設けられた水色のシェッドがフォーカルポイントです。真夏の庭では、旺盛に育つエキナセアやルドベキア、オミナエシなどが鮮やかな色を添えていました。 庭づくりの参考にしたい! 地域で丈夫に育つ四季の植物たち ガーデンでは、雪がとける4月頃から、植物たちの開花リレーがスタートします。まず、クリスマスローズや小球根が一斉に咲き広がり、春、夏と季節ごとの花に少しずつ移ろっていきます。秋には人の背丈を超えるほどに成長したグラス類が、ダイナミックな風景に。庭はつくり込みすぎないようにすることを心がけ、植物の生命力に任せつつ、程よく手を入れているというだけに、おおらかさがこの庭の最大の魅力です。 7月にはたくさんのユリが咲き乱れます。広い庭には大輪多花性のタイプがよく似合うことを実証。花色は白や淡い黄やピンクが多く、鮮やかな草花と美しくマッチしています。 崩れたアイアンのガゼボをそのまま庭のアクセントに生かし、エキナセアが寄り添い咲くコーナー。錆びたテーブルセットと不思議な調和を見せていました。 白花のガウラがボリュームたっぷりに広がり、幻想的な風景に。こんなにも自然任せに育てられるのは、広いナチュラルガーデンならでは。 ガーデンに点在する樹木をよく見ると、リーフが美しいネグンドカエデや、赤い実がアクセサリーのようなヒメリンゴなど、眺めて楽しい樹木がセレクトされています。 売り場の間に設けられた シェードガーデンも素敵! 植物と雑貨の売り場の間には、シェードガーデンが設けられています。メインのサンプルガーデンとは異なり、リーフがメインのしっとりとした趣がある空間。オーナーが育種したクリスマスローズが多用されて、春先には可憐な無数の花で覆われるそう。お買い物の合間にホッと一息つける癒しの場所です。 360度緑に包まれて深呼吸したい イギリスの趣たっぷりの裏門 人通りが少なく、木々に覆われて静かな裏門周辺には、特別落ち着いた雰囲気があります。レンガの塀を伝ツルアジサイや、アイアンのガゼボを覆うアピオスなどが入り口に生い茂り、店内をやんわりと隠していることで、訪れた人の期待感を高めてくれます。空を仰ぎ見る女性の彫像や朽ちそうな味のある木製フェンスが、雰囲気アップに一役買っています。 今が旬の花苗が並ぶ広い売り場で ゆったりと買い物を楽しもう 花苗やグッズの売り場は、数棟の大きなハウスの中にあるので、雨や雪の日でも安心してショッピングが楽しめます。季節ごとに次々と入れ替わる花苗は、隣のハウスで丹精込めて育てられたもの。 購入者が生長段階も楽しめるよう、しっかりとした苗を早目に店頭に並べることにこだわっています。自家生産なので、安くて新鮮なのも嬉しいポイント。 花苗に加え、寄せ植えの提案や、ガーデン雑貨や園芸資材の品揃えも充実。寄せ植えをはじめとする講習会も月1回開催しています。秋に開かれる講習会は、サンプルガーデンで収穫した実などを利用したリースづくりなどのクラフト教室。アッという間に定員がいっぱいになるほど人気です。 遠くから通うファンも! 郷土料理を提供する農家レストランも併設 店の最奥、裏門を入ったところには「農家レストラン・らら」があります。ここでは、この土地で採れた食材をふんだんに使った、雫石の郷土料理を中心にしたメニューをいただけます。このレストランは、料理好きな櫻糀さんが「遠くから来てくれた人が、ホッと一息つける場所を提供したい」という思いで設けた場所。野菜中心の料理は、どこか懐かしさを感じさせるやさしい味わいで、リーズナブルな価格なのも大きな魅力です。 3~11月の土・日曜日は、櫻糀さんも自ら腕を振るう30品目ほどの手づくり料理が880円(税込)で食べ放題。その他の平日は、700~1,000円(税込)の選べるセットになっています。一角に設けられた新鮮野菜の格安販売コーナーもお見逃しなく。 写真は、煮物やひっつみ、小鉢、プチケーキ、コーヒーがセットになった「らら御前」(1,000円)。滋味あふれるお味。 季節の植物探しだけでなく、ガーデン散策やランチも楽しめる「花工房らら倶楽部」。花と緑に関するさまざまな楽しみにあふれた、ワンダーランドのような園芸ショップです。アクセスは、JR盛岡駅から車で約30分、JR田沢湖線小岩井駅から車で約10分。ぜひ一度、足を運んでみてくださいね。 【GARDEN SHOP DATA】 花工房らら倶楽部 LALA CLUB 所在地:岩手県岩手郡雫石町長山七ッ田27 TEL:019-692-6001/FAX:019-692-5466 http://lalaclub.jp/ 営業時間:9:00~17:00(レストラン10:00 ~17:00) 併せて読みたい ・素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪2 「庭道具屋 toolbox」 ・花き生産高1位の地域に生まれた、旬の花と野菜が並ぶショップ「Marché&Cafe hana・yasai はなやさい」 ・花好きさんの旅案内 【国内】長野・白馬のオススメガーデン3選 Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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北海道

花の庭巡りならここ! リナリアの群植は一見の価値あり!「ゆにガーデン」
広大な大地に咲き継ぐ花々は圧巻 北海道・札幌から車で約60分の由仁町にある「ゆにガーデン」は、英国風庭園をコンセプトにデザインされた観光ガーデンです。「スペシャルガーデン」「ノットガーデン」「ホワイトガーデン」「ローズガーデン」「ウェディングガーデン」「ブロードウォーク」など15のガーデンエリアで構成され、くまなく散策すれば、大人の足で40〜60分ほどかかります。 春はグローリー・オブ・ザ・スノウ、サクラ、ナノハナ、初夏はリナリア、シャクヤク、夏はバラ、ユリ、アジサイ、サルビア、秋はコスモスと開花リレーがつながれ、四季を通して花々で彩られます。「ゆにガーデン」では、ウェディングも行えるだけに、ロマンチックなガーデンのディスプレイも見どころです。 ペットの同伴は「わんわんカート乗車」のみで可、園内とカフェテラスの一部までOK(有料)です。北海道の澄み切った青空の下、美しい森の借景とも相まって、日常とはかけ離れた癒しのひとときを過ごせること間違いありません。 四季を通して花々で埋め尽くされる ロケーションの素晴らしい英国式庭園 「ゆにガーデン」といえば、リナリアで演出するダイナミックな植栽が見どころ。見頃は6月中旬〜7月中旬です。「リナリアの丘」の芝生広場に、紫やピンクの花が咲き誇るロケーションは、一度は見ておきたいもの。写真のように、リナリアのピンクとレディースマントルの黄色い花とのコントラストも素晴らしく、ぜひ写真に収めておきたいシーンです。 「ゆにガーデン」内のエリアの一つ、「ブロードウォーク」は、7〜8月が一番の見頃です。芝生を挟んだ通路の両脇に、全長160mにわたって宿根草で構成されたボーダーガーデンが続きます。北海道の冷涼な気候だからこそ実現できる、宿根草たちの華やかな競演を楽しみましょう。 7月下旬〜8月上旬は、「ユリ・アジサイまつり」のイベント期間。「アジサイの小路」では、爽やかな青や白のアジサイが約400株植栽されています。アジサイは太陽の光に燦々と照らされるよりは、緑陰の下でこそ潤いを帯びた魅力が発揮されるもの。木漏れ日の中、アジサイが彩る小道の散策を楽しみましょう。 「彩りの丘 リリーガーデン」では、約5万球ものユリが植栽されています。見頃は7月中旬〜8月中旬で、さまざまな品種が群植されてカラフルに彩る景色は見応え十分。ユリは馥郁とした香りを放つため、辺りが甘く優雅な香りに包まれます。 8月上旬〜9月上旬は「サルビア・ミントまつり」を開催。赤、紫、白のサルビアが約1万本植栽され、園内にカーペットを敷いたかのような、雄大な景色が広がります。また、園内にはさまざまな種類のミントが植栽されているので、アップルミントやパイナップルミントなど、種類によって異なる香り比べをして楽しみましょう。 コルチカムは葉よりも先に花茎を伸ばして花を咲かせる性質があり、群稙すると色がかたまりとなって見応えがあります。「ゆにガーデン」では毎年秋に、花壇の縁どりのコルチカムが開花。また、9月中旬〜10月中旬は「コスモスまつり」が開催され、1万5,000㎡のコスモスエリアでは約50万本のコスモスが咲き競います。 モフモフのジャンボウサギと 触れ合える「ウォーターガーデン」 「ゆにガーデン」園内の「ウォーターガーデン」にはウサギ小屋があって、ジャンボウサギが5羽います。なまら・・・大きい! ここではジャンボウサギたちと自由に触れ合えます(無料)。おやつ(100円)もあげることができますよ! お子さんがいる家庭なら、ぜひ一緒に遊んではいかがでしょうか。 レストランやカフェ、土産物店が充実! 美食やショッピングを楽しもう 「ゆにガーデン」にはチロリアン風の外観が目印のセンターハウスがあります。バイキング形式の「レストランチャイブ」、オリジナルソフトクリームやピザを楽しめる「カフェテリアバジル」、オリジナルハーブティーやアロマグッズが揃う「フレグランスショップ」、地元の野菜や土産物が充実の「ファーマーズマーケット」と、飲食店やショップが入っています。園内を歩き疲れたら、休憩がてら食事やティータイムを楽しむのもいいし、お土産に気のきいたアイテムを見て回るのもいいですね。 「レストランチャイブ」は客席数が250席あり、地元近郊の野菜を使用したヘルシーなランチバイキングを楽しめます。ハーブティーやドリンク、デザートを含め約40種が揃う充実のメニュー! 営業時間は11:00〜14:30(ラストオーダー14:00・平日)、11:00〜15:30(ラストオーダー15:00・土日祝)。ランチバイキング料金は大人1,950円、シニア1,450円、小学生1,000円(6〜9月)、大人1,750円、シニア1,350円、小学生900円(4・5・10月)、。 「ファーマーズマーケット」では、花やハーブの苗、由仁の特産品、旬の新鮮な野菜、お惣菜、お土産品などを販売しています。ここでしか手に入らないレアアイテムも満載なので、ぜひパトロールを! 特に「レストランチャイブ」監修の「オリジナルスープカレー」530円や、ごはんが進む「黒胡麻ごぼう」648円がオススメです。 Information ゆにガーデン 所在地:北海道夕張郡由仁町伏見134-2 TEL:0123-82-2001 http://yuni-garden.co.jp/ アクセス:公共交通機関/千歳線由仁駅行、乗換2回(新千歳空港駅→南千歳駅→追分駅→由仁駅、タクシーで約5分) 車/札幌から車で約50分(国道36号線 → 国道274号線または道道札幌夕張線、約40㎞)、新千歳空港から車で約35分(国道337号線→国道274号線→国道234号線、約30㎞) オープン期間:4月21日~10月21日(2018年) 営業時間:10:00~17:00(平日)、9:00~17:00(土日祝日) 料金:大人620円、シニア(65歳以上)420円、小学生300円(6〜9月)、 大人310円、シニア(65歳以上)210円、小学生110円(4、5、10月) 駐車場:有り 800台(無料) 併せて読みたい ・花の庭巡りならここ! 北海道スケールの花畑を愛でよう「展望花畑 四季彩の丘」 ・花の庭巡りならここ!花と色と農のテーマパーク北海道「十勝ヒルズ」 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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神奈川県

環境省『みどり香るまちづくり』を受賞したラベンダーの小径
公園から海まで約2km、草花が咲き香る散歩道 藤沢市の北部から、南にある相模湾に向かって流れる引地川沿いには、ウォーキングを楽しむのにうってつけの緑道が整備されています。そのうち、川沿いにある長久保公園から海までの約2kmにわたっては、ラベンダーに加え、ローズマリーやセージ、ハニーサックルやシャリンバイなど、香りのよい植物が多種植えられて、ことさら楽しみの多い散歩道です。 2014年、長久保公園を管理する「公益財団法人 藤沢市まちづくり協会」は、環境省が主催する第9回『みどり香るまちづくり』企画コンテストに、この香りあふれる散歩道の植栽企画を応募し、見事入賞を果たしました。そして翌年、「ながくぼグリーンサポーターハーブ部会」に属する市民ボランティアの協力で、約2㎞に及ぶ川沿いの花壇に苗の植えつけが行われ、香りの小径が実現したのです。 五感で楽しむ散歩道に込められた思い 雑草取りなどの日頃の管理は、総勢80名ほどが所属する市民ボランティアによって、3年に渡り行われてきました。植えたばかりの頃はとても小さかったラベンダーも、今では大きく生長し、遠くまでラベンダー色に染まるほどの見事な香りの小径となっています。この小径は、ラベンダーを見るだけに止まらず、香りを嗅いだり、風にそよぐ音やハチの羽音を聞いたり、手に触れるなど、五感すべてで味わうことができる場所。企画者と管理者による“植物をより身近に感じてほしい”という願いが込められています。 満開を迎えたラベンダーの小径には、どこから来たのか、驚くほどたくさんのミツバチやクマバチが、蜜を集めようと飛び交います。首都圏の市街地であるこの辺りは、普段これほど多くのハチを見かけることはありません。軽やかなミツバチの羽音を聞いていると、この小径が地域の生態系を守る、一助となっていることを感じます。 収穫したラベンダーでクラフトづくり 植え込みから3年が経過し、立派に咲くようになったラベンダー‘グロッソ’の花は、クラフトづくりの材料として収穫できるまでになりました。収穫時の6月、長久保公園では、ながくぼグリーンサポーターハーブ部会の会員でJHS上級ハーブインストラクターの池田貴美子さんを講師に招いて、市民向けのラベンダーバンドルズ講習会を開催しています。バンドルズとは、ラベンダーの束にリボンを編み込んでつくるクラフトのことで、作業をしていると部屋中が花の香りに満たされます。癒し効果もたっぷりの、楽しい香り体験です。 近隣の小学校に広がる香りの輪 ラベンダーバンドルズづくりの講習は、2017年からは近隣の小学校のPTAとの連携によって、児童向けにも行われるようになりました。この日参加したのは、高学年の児童30名ほど。「みなさん、ラベンダーを知っていますか?」。ボランティアで講師を務める、アロマテラピストの角本久美さんが、子どもたちに語りかけます。 それぞれ好きな色のリボンを選んで、児童のバンドルズづくりが始まりました。ながくぼグリーンサポーターハーブ部会のボランティアが側について、手ほどきします。子どもたちはみな熱心に、そして、器用にリボンを編み込んでいきます。 教室に広がるラベンダーの香りにうっとりする子もいれば、「うちの親はこの香りが苦手なんだ」と残念がる子もいます。中には、持ち帰ったバンドルズを家族中が喜んで、ラベンダーを庭に植えることにした、という子もいました。フレッシュな花の香りに触れることは、子どもたちの「植育」にもなっています。 *ラベンダーバンドルズのつくり方はこちら 取材協力: 公益財団法人 藤沢市まちづくり協会 http://f-machikyo.or.jp/ 藤沢市長久保公園都市緑化植物園 https://nagakubokouen.jp 角本久美 Herb & Aroma Kumincure主宰 https://ameblo.jp/kumincure/ 併せて読みたい ・‘ハーブの女王’ラベンダーの香りの楽しみ方 ・ガーデンセラピー活動レポート〜憩いの場となる屋上庭園づくり〜 Credit 写真&文/ 萩尾昌美 (Masami Hagio) 早稲田大学第一文学部英文学専修卒業。ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。20代の頃、ロンドンで働き、暮らすうちに、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するように。神奈川生まれ、2児の母。
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イギリス

イギリスに現存する歴史あるイタリア式庭園【世界のガーデンを探る旅13】
当時のままの庭を見て知るイギリスの庭の歴史 イギリスの庭って、いつ頃から始まったのでしょうか? もともとイギリスという国自体が、前回の「ペンズ・ハースト・プレイス・アンド・ガーデン」で少し触れたように、歴史的にも国家的にも、日本人にはやや理解しづらい所があります。そもそもイギリスには建国の日はありませんし、他のスコットランドやウェールズにも建国の日はありません。イギリスとスコットランドが一緒になったのは1707年、国旗のユニオンジャックが制定されたのは1801年。憲法で統一されていない4つの国(イングランド、スコットランド、ウエールズ、北アイルランド)が集まった集合体のまま、一つの国として落ち着き始めた10世紀以降、十字軍遠征もあって、イギリスは他国の文化の影響を強く受けたのです。 ルネッサンスやフランス王宮文化に憧れを持ったイギリスは、その後もさまざまなものを他国から取り入れていきました。その中の一つが、イタリア式やフランス式の庭園です。きっとその洗練された庭の姿に憧れた当時のイギリスの領主や富豪が、こぞってイタリア式やフランス式の庭をつくったことで、国中にそれをまねた庭が溢れかえったのでしょう。しかし、その頃の庭で現存しているものが少ないのは、一人の天才造園家“ケイパビリティ-ブラウン”の存在が大きいと考えていますが、それはまた後日、お話ししましょう。 その頃使われていた植物は、イギリスに自生する数少ない植物や、大陸から持ち帰ったヨーロッパ大陸原産の植物であったはずです。今のように多様な植物が使えるようになるのは、ずっと後のプラントハンターの出現まで待たなくてはなりません。 イギリスに庭ができ始めるのは17世紀の初頭で、そのうちのいくつかは今も残っていて見ることができます。その一つは、イングランド中部のピーク・ディストリクトにある「ハドン・ホール」です。ルネッサンスの雰囲気を色濃く残すイタリア式庭園が、「ハドン・ホール」に今もほぼ当時の姿のまま残っています。この庭がつくられたのは、イギリスで最初に国立公園に指定された地域で、イギリスには珍しく起伏に富んだ地形の、中世の雰囲気を感じさせるノスタルジックなエリアです。 ハドン・ホールの庭 「中世から生き残るもっとも完璧な家」と呼ばれ、“1000 Best Houses”にも選ばれているハドン・ホールの歴史は12世紀から始まりますが、2段のテラスのあるイタリア式庭園は、17世紀前半につくられました。近年になり少し改修されましたが、ほぼ原形のまま残っています。 ハドン・ホールの庭は、もともとの地形をうまく利用して、庭の中に階段を設け、上下2つのテラス状になっています。 屋敷の周りにはいろいろな植物が植えられていますが、これには理由があります。イギリスは冬に“ゲイル”と呼ばれる冷たくて強い北西の風が吹くので、植物をゲイルによるダメージから守るために建物に沿って植えられているのです。 屋敷の広い壁面を生かして、つるバラを誘引し、たわわに咲く花が窓や入り口を彩っています。 一段下がると、敷地の中央は池を配した整形式庭園になっています。 おそらく、日本の皆さんがイメージするイングリッシュガーデンと違って、この庭は色彩的にも地味で、シンプルなデザインではないでしょうか。色とりどりの花が咲き乱れる、イギリス独自の庭の形式ができる以前の庭であると意識して観賞すると、とても興味深く感じます。またここにかけられていたタペストリーの花モチーフが、イギリスの陶磁器ブランド‘Minton(ミントン)’のハドンホールシリーズのもととなったことでも有名です。ロンドンから北に車で3〜4時間と、ちょっと距離がありますが、イギリスの庭の始まりを感じられる絶好の名所です。 もう一つの古い庭「ハム・ハウス」 ここも17世紀の前半に建てられたカントリーハウスが当時のままに残っている数少ない場所の一つです。ロンドン市内からそれほど離れていない高級住宅地で、多くの著名人たちが住んでいることでもよく知られているリッチモンドにあります。屋敷の正面中央に立つと、建物も植栽も見事なまでに左右対称に配置されています。 建物の反対側には整形式の庭園があります。ここはガラス温室ができる前に普及していた防寒用の部屋である「オランジェリー」が当時のまま残っています。ちなみに、大きなガラス温室が世界で最初につくられたのは、ロンドン郊外にある「キュー・ガーデン」だといわれています。 建物の横には、ラベンダーが列植されたイタリア式庭園があります。 ここもハドン・ホールと同様に、イギリスの庭が色とりどりの花で彩られる以前につくられた庭なので、ちょっと物足りないかもしれませんが、当時のままを頑なに守るイギリスらしさを感じさせてくれます。 今回の2つの庭は、大陸からの影響(模倣)そのものであるといってもいいでしょう。しかしあまりにも人工的な左右対称のデザインにイギリス人が違和感を抱いたのか、その後徐々に崩れていきます。しかしそれはずっとあとのこと。話は飛びますが、日本も最初は中国から左右対称の律令制を導入するのですが、独自の文化が花開く平安時代になると、それが崩れていきます。平らなフランスと中国、起伏に富むイギリスと日本。大陸と島国、お互い世界でまれに見る独自の庭文化を育んだイギリスと日本には、大変興味深い共通点があります。庭の歴史を探っていく過程で、なぜイギリスと日本だけが、庭文化が今も進化し続けているかを考えてみたいと思います。 次回は、プラントハンターによって世界中から集められたさまざまな植物達によって彩られた庭を見ていきましょう。 併せて読みたい ・スペイン「アルハンブラ宮殿」【世界のガーデンを探る旅1 】 ・イタリア式庭園の特徴が凝縮された「ヴィラ・カルロッタ」【世界のガーデンを探る旅5】 ・イギリス「ペンズハースト・プレイス・アンド・ガーデンズ」の庭【世界のガーデンを探る旅12】
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新潟県

花の庭巡りならここ! 麗しき英国式庭園「みつけイングリッシュガーデン」
ボランティアにより維持される本格的なイングリッシュガーデン 2009年にオープンし、広さ22,000㎡(公園部分は16,000㎡)の敷地を持つ「みつけイングリッシュガーデン」は、新潟・見附市が管理する観光ガーデン。見附市の緑地帯を活用し、市内の緑化と交流の拠点としてイングリッシュガーデンに整備されました。デザイン監修は、英国園芸研究家のケイ山田さんです。イギリス式の植栽はもちろん、ガゼボやアーチ、ベンチ、オーナメントなどのガーデン資材は全て英国製にこだわり、本場の雰囲気を再現。現在も年に2回は訪れて、植栽やメンテナンスなど、景観維持のためのアドバイスをしています。 「みつけイングリッシュガーデン」は、正面入り口のアイアンゲートをくぐると、「ボーダーガーデン」「ウェディングガーデン」「池とガゼボ」「アナベルロードと芝生広場」「バラロード」「展望台(ガゼボ)とロックガーデン」「メドウガーデン」など、各エリアに分けられ、それぞれに変化に富んだ植栽が見られます。イギリスの庭園さながらの洗練された景色には、ため息がもれるばかりです。 特筆すべきは、「みつけイングリッシュガーデン」のメンテナンスは、市民ボランティア団体「ナチュラルガーデンクラブ」が行っていること。水やりや草取り、植え替え、剪定、苗の生産(ナーセリー)など、初期は不慣れな点も多かったものの、ボランティア参加者たちは年々スキルを磨いていったそう。今やガーデニングの専門知識や技術を、ガーデニング教室やワークショップの開催によって、来園者に還元しています。園内への入場料は無料のため、気軽に訪れることができるのも嬉しいところ。もともと見附市が目指した「緑化と交流の拠点」が実現し、理想的な憩いの場となっています。2018年には新しくカフェ&ショップもオープン。見附市民のみなさんが愛して育んできた、温もり感あふれる観光ガーデンに、ぜひ足を運んでみませんか。 息を呑むほどの壮麗な景色にうっとり! ケイ山田さん監修の英国式庭園 「みつけイングリッシュガーデン」の春を彩るのは、クロッカス、クリスマスローズ、パンジーなど。4月中旬〜5月上旬にはチューリップが見頃になり、「ボーダーガーデン」「ウェディングガーデン」、コンテナを中心に、それぞれのエリアで色彩テーマを変えて植栽しています。写真はパステルピンクのチューリップとパステルブルー&パープルのパンジーの組み合わせで、ソフトで優しい雰囲気。 高さ2.5m、奥行き10mのアーチに仕立てた藤は、樹齢約15年の‘フロリバンダ’。見頃は5月いっぱいです。頂部から長い花穂がたわわに枝垂れる藤のトンネルはダイナミックで、その下を歩くと至福のひとときを味わえます。 「みつけイングリッシュガーデン」には、約150種700株のバラが植栽されています。パーゴラ、アーチが3カ所にあり、それぞれにつるバラを誘引した壮麗な景色は、眼福そのもの。この写真は「ボーダーガーデン夏エリア」で、アーチに仕立てたバラ‘ブラッシュ・ランブラー’を主役に、ピンクをテーマカラーにして植栽。毎年、一年草で模様替えをして、異なる雰囲気を演出しています。 写真は、赤いバラで統一したトンネル。‘エトワール・デ・オランダ・クライマー’、‘ギネー’、‘エクセルサ’、‘ニュードーン・レッド’、‘アレン・チャンドラー’、‘チェビーチェイス’などのつるバラを誘引しています。紫の花穂を立ち上げている下草はキャットミント。色のコントラストがシックで、圧巻の景色です。赤バラのトンネルをくぐり終えたら、ぜひ後ろを振り返ってください。最後のアーチの裏側のみ、白いバラ‘ガーデニア’、‘フラウ・カール・ドルシキー・クライマー’で覆われており、これまで見てきたトンネルとはまた違った印象の景色が広がります。 「みつけイングリッシュガーデン」の園内は、どの通路も車椅子や乳母車が通れる広めの設計で傾斜もゆるやかなので、誰でも気軽に訪れることができます。写真のエリアは「アナベルロードと芝生広場」。見頃は6月下旬〜7月中旬で、芝生の周囲に列植された西洋アジサイ‘アナベル’が満開となって、見事な景色をつくりだします。‘アナベル’の下草は毎年「ボランティア植栽会」で一般の参加者が植栽。花の種類は毎年変わるので「今年はどんな色合わせが楽しめるのかな」と、リピーターが楽しみに訪れるスポットです。 写真手前の草花は「ウェディングガーデン」の一角です。「華やかさ」をテーマにしたエリアで、植栽によるカラーコーディネートの妙を楽しめます。奥に見えるガゼボは休憩スポット。「みつけイングリッシュガーデン」への飲食の持ち込みは自由で、飲食可能なスペースは「ガゼボ」「ガーデンテント」「子ども広場」です。また、園内にはゴミ箱が設置されていないので、ゴミは各自で持ち帰るようにしましょう。 毎年秋に開催される「オータムフェア」では 来園者参加型の楽しいイベントを開催! 毎年秋には「オータムフェア」を開催(2018年は9月29日〜10月8日)。「みつけイングリッシュガーデン」内各所にハロウィンスポットが登場します。ぜひ一緒に写真を撮って、ハロウィンを楽しみましょう。また、多肉植物の寄せ植えづくりやスワッグづくりなど、クラフトを楽しむワークショップが催され、クラフト作家が販売する「青空マーケット」も展開。「ハロウィンこども DAY!」(2018年は10月8日)では、仮装した子どもたちが遊びに来て、園内をさらに盛り上げます。 2018年4月よりオシャレなカフェがオープン! 併設の土産物売り場も充実の品揃え 「みつけイングリッシュガーデン」では、来園者から「くつろぐ場所が欲しい」との要望を受けて、2018年4月にオシャレなカフェ「MEG CAFE 511」がオープンしました。営業日は開園中(4〜11月)は無休、閉園中(12〜3月)は火曜定休、年末年始は休館。営業時間は10:00〜21:30、ラストオーダー21:00(季節により変動)。店内40席のほか、テラス席が12席ほどあります。価格帯はランチプレート1,080円〜、ディナープレート1,280円〜、本日のケーキ360円〜。オススメは3日間熟成させるモチモチのピザ、インスタ映え間違いなしのドリンク「ローズレモネード」など。テイクアウトメニューもあります。 写真は、カフェ「MEG CAFE 511」の人気スイーツメニュー「ふわとろフレンチトースト」(S580円、M780円)。フレンチトーストの上にアイスクリームがのっています。蜂蜜をたっぷりかけて、召し上がれ! 秋には季節感たっぷりのフレンチトーストが登場します。 写真は、カフェ「MEG CAFE 511」のインスタ映えドリンク。手前はローズレモネード×ブルー、奥はローズレモネード×ピンク(各400円)。シロップとレモネードが別々に出され、生レモンスライスたっぷりのドリンクに、ローズペダルの入ったシロップを注ぐと、なんとなんと、レモネードの色が変化します! 話題のドリンクをぜひ味わってください。 カフェ「MEG CAFE 511」店内には、土産物売り場が併設されており、新潟・見附市の特産品やオリジナルグッズ、花苗などを販売。オススメは、ニットの街「見附」×イングリッシュガーデンのコラボ商品「ニットのテディベア」4,800円〜、「みつけイングリッシュガーデン」で収穫した見附産100%ローズヒップ(無農薬)がたっぷり入ったフィナンシェ(6個入り)1,000円です。 秋〜冬には、ガーデンや「MEG CAFE 511」店内で、ワークショップを不定期開催しています。あらかじめ公式ホームページをチェックして、参加の計画を立てるのもいいですね。 Information みつけイングリッシュガーデン 所在地:新潟県見附市新幸町6-35 TEL:0258-66-8832 http://www.city.mitsuke.niigata.jp/ (見附市ホームページ内) アクセス:公共交通機関/信越本線JR見附駅から1.2km(車で5分) 車/北陸自動車道 中之島見附I.C.から2km(車で3分) オープン期間: 4月1日~11月30日 営業時間:8:40~日没 料金:無料(草花の管理協力金として、1人100円程度の寄付をお願いします) 駐車場:145台(無料) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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フランス

フランス・パリの隠れ家「パレ・ロワイヤル」【松本路子の庭をめぐる物語】
パリを訪れるとよく立ち寄るところが何箇所かある。時間ができると、ふらりと足が向く場所。その一つがパレ・ロワイヤルの中庭だ。今年、2018年7月にも木陰のベンチとカフェで数時間を過ごした。 パレ・ロワイヤルはルーブル宮殿の隣に位置している。当初はリシュリュー宰相の城館として建てられたが、ルイ14世がルーブルから移り住んだことから、パレ・ロワイヤル(王宮)と呼ばれるようになった。数奇な運命に見舞われた場所でもあり、フランス革命はここから起こったとされるなど、歴史の舞台にも登場する。 サントノーレ通り側から入ると、現代アートの作品である白と黒のストライプの円柱がいくつも立ち並ぶ広場があり、その奥が庭園になっている。 両側には幾何学的に整えられた並木、その木陰のベンチではバイオリンの稽古をしているカップルなどが。庭園をコの字に囲む建物の1階の回廊には、レストランやカフェ、骨董店などがあるが、木々にさえぎられて庭園からはほとんど見えない。 中央にある花壇にはいつも季節の花々があふれているが、今年のパリの夏の暑さは尋常ではなく、植物もじっと耐え忍んでいるように見える。それでもいくつかの夏バラが咲き、花壇のダリアが色彩のハーモニーを奏でていた。 庭園に面した建物の2階部分には、かつて作家のシドニー=ガブリエル・コレットやジャン・コクトーが住んでいた。私は『ヨーロッパ バラの名前をめぐる旅』という自著で、コレットゆかりの地を訪ね歩いたことがある。コレットは植物に並々ならぬ想いを寄せていた。 『コレット 花28のエッセイ』(八坂書房刊)は、コレットがさまざまな花について綴った、いわばアンソロジーなのだが、まさに言葉の花束といってもよい一冊だ。 その本の中で、彼女はしばしば部屋の窓から見えるパレ・ロワイヤルの庭のことを書いている。バラについては特別な思いを抱いていたようだ。 「噴水の捕虜となった虹が、このパリの真ただ中で目覚めさせるバラ。お前たちを何にたとえたらいいのか。お前たちに匹敵する花は、いかなる楽園へ行けば摘むことができるだろう」(森本謙子訳) 中庭からコレットの住んでいた部屋の窓を見上げ、また彼女が見ていたであろう庭の方向に目を転ずる。バラの花がかすかに風に揺れた。 コレットはパレ・ロワイヤルの自室で亡くなった。1954年、81歳だった。その葬儀は国葬として、この中庭で執り行われたという。彼女が亡くなったのは8月だったので、その時バラが咲いていたか定かではなかった。だが夏の庭を訪れた時、私は確信した。バラたちは彼女の旅立ちを見送ることができた、ということを。 パリの庭園の素敵なところは、ベンチだけでなく、一人掛けのイスが置かれてあること。噴水を囲む広場では、人々は水辺に椅子を移動し、思い思いの姿で、読書や日光浴を楽しんでいた。 眺めることや散策のためだけではなく、そこで自由に時間を過ごすことができる、憩いの空間。パリの中心部に位置していながら、パレ・ロワイヤルの庭園は、自宅の隣にあるような、隠れ家のような、愛すべき場所ともいえるのだ。 併せて読みたい 松本路子の庭をめぐる物語 フランス・パリ「ロダン美術館の庭園」と秋バラ ナショナル・トラスト2018秋冬コレクション 英国有数の保養地 イングランド南西部を訪ねる【PR】 世界のガーデンを探る旅1 スペイン「アルハンブラ宮殿」
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北海道

心が潤う庭の花を使った暮らしの遊び
花盛りを目前にした6月の庭で 前回の「私のガーデンストーリー」でご紹介した、芝地を囲むように野の花が咲く場所には、これまで赤いベンチが置かれていましたが、ちょっと飽きて、空色の庭イスと場所を入れ替えました。5月にはスイセンなどの春の球根花たちが育っていた庭も、一月で草丈はグングン伸びて、芝地の草抜きも埋もれるようにやっています。 これからバラが咲き、一番庭が輝く季節がやってくるはずでしたが、今年はとっても雨盛り。お願いだから、雨足の強さを半分にしてください! と天に願ったのですが、連日のようにバケツをひっくり返したように降りました。 咲き始めたばかりのシャクヤクは、昨日まで満開だったのに、一夜にしてボッキボキです。 大雨の後は花たちを救出 雨に打たれたシャクヤクたちを、サクサク切って家に連れて帰って来ました。この日のガーデンルームは紅色に染まり、この後、窓辺に吊るしてドライにし、クリスマスやしめ飾りに使おうと思います。 今年は、他の地域でもそうだったように、北海道もバラの生育のスピードが速くて、6月下旬には、今にも咲きそうにつぼみをたくさんつけました。去年ネズミに食べられて、弱り切っていたのが嘘のよう。 イングリッシュローズの‘メアリー・ローズ’と、‘ガートルード・ジェキル’は、一番花の開花が1週間から10日ほど早いイメージです。息子のバラも、咲きそうなつぼみが33個あると喜んでいました。ですが、今年は毛虫がいっぱい。食べられなければ、もっとあったそうです。 野ばらもご覧のありさま。うーん、捨て置けない! こんなとき、私はハサミで真っ二つに。「わあ、2匹が4匹に! 事件だっ」「もしも閻魔大王が毛虫だったら地獄行きだね〜」と夫は笑います。 でもね、笑っているうちに、夫のバラはつぼみをほとんど食べられ、この調子では、今年もほとんど咲かないでしょう。咲かないバラを見たら悲しむので、やっぱり代わりに毛虫を成敗してあげました。コッソリね。 バラの季節のメール文通で 「Garden Story」の編集部さんから、ポストカードが届いたので、お礼に写真のパフェを送りました。そしたら、「なんてかわいい! 今年のインスタ映え写真♪第一位に決定です」なんて、お返事が届きましたよ。 このパフェの正体、実はイングリッシュローズの‘クロッカス・ローズ’。咲きたては、まるでソフトクリームみたいだと思って。サクランボを飾って、庭のジューンベリーを並べたら、庭に訪ねてきた友だちも、ワッと盛り上がった大笑いのウェルカムフラワーのでき上がり。 食べ物でイタズラしてごめんなさい。でも、サクランボは美味しくいただきますから、無駄にはしていませんよ。うふふ。バラは、おしゃべりの間中、一緒に過ごすテーブルフラワーです。 バラも一斉に咲き始めて、庭にいたいのは山々ですが、これから数日留守にするというとき。花がらが葉にベトベトついてしまうのが嫌なので、一斉にカットしました。ただでさえ雨でグチョグチョの花を見るのはたまらないので、今年は特に、家中花まみれでした。 花と遊ぶのは楽しいです。バラのフルーティーな香りを嗅ぐと、嫌なことは全部吹き飛びます。自分で世話したバラだから、なおさらです。 花瓶に挿すには短い花首の場合は、花の根元に画鋲で穴をあけて、ワイヤーを通して小枝に吊って、香りを楽しむモビールにします。 フレッシュで香りが漂う頃もいいし、次第に落ち着いた色に変化していくモビールも大好き。 この地で庭と暮らして12年。庭に興味のなかった夫が「野ばらの『桜』が咲いたよ、きれいだよ」と寝込んでいた私に知らせてくれました。私も見に行きたいと思い、身体を上げて歩くうち、気持ちが晴れていきます。 好きな場所で、好きなものを、家族と分かち合って暮らせること。 なによりの贅沢で、今の私の生きる力です。 今年は、小さなアジサイの苗も買いました。日陰になりつつある我が家の庭で、いつまでも無理なく庭とつき合いたいと思っています。 庭話は楽しいので、ついつい長くなりました。
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兵庫県

花の庭巡りならここ! 大人の遠足にうってつけのスポット「兵庫県立フラワーセンター」
1976年にオープンした歴史ある公園、「兵庫県立フラワーセンター」。自然の松林に囲まれた園内は、中央に満々と水をたたえた亀ノ倉池、大小さまざまな花壇や樹木園、四季を通じて楽しめる大温室で構成されています。総面積46万㎡の敷地は、園内なら大人の足で1時間〜1時間30分で巡ることができます。また、飯盛山の展望台やつばきの森、つつじの小道まで足をのばすと2時間ほど。ピクニック気分で出かけるのに、ちょうどよいスポットです。 植物は4,546種(在来種2,053種、園芸種2,493種)が息づき、花壇では春のチューリップに始まり、夏はサルビア、ジニア、ヒマワリ、秋はマリーゴールド、コスモス、ダリア、冬はビオラへと咲きつないでいきます。またサクラ園、バラ園、シャクナゲ園、ボタン園、ツバキ園、ウメ園のほか、アジサイ、ツツジの小道や林床植物を集めたウッドランドなどがあり、いつ訪れても何かしらの花が見頃を迎えているのが、花好きには嬉しいところですね。 園内には花の相談所があり、常時園芸相談を受け付けているので、うまく育たない植物の悩みごとがあれば、ぜひ立ち寄ってみましょう。ブーケやリースづくり、バックヤード見学会、食虫植物教室など、イベントや講習会も随時行っているので、事前に公式ホームページをチェックして、園内の散策に加えて体験型教室に積極的に参加するのもオススメです。 春はなんといっても22万株のチューリップ花壇! 夏は元気いっぱいのヒマワリ畑に衣替え 4月中旬から、風車前花壇は500品種22万株のチューリップが見頃になります。長期間楽しめるように、一つの花壇に同色で開花期の異なる球根を植えつけているのがマル秘テクニック。これは自宅のガーデンにも応用できそうですね。どんな風に植栽しているのか、チェックしてみるのもツウの楽しみです! また、4月の土・日曜は、子どもや女性向けに、オランダ衣装試着体験も行っています。この衣装、実は「兵庫県立フラワーセンター」にお勤めの職員さんの手づくりなんですって! なんだか温かみのあるおもてなしを感じませんか? ちなみに「兵庫県立フラワーセンター」では飲食の持ち込みもOK。青空の下、花々に囲まれてお弁当を広げれば、いっそうおいしく感じられそうですね。 夏の見どころはヒマワリ。園内には14品種1万株が植栽され、見頃は7〜8月です。群植されたヒマワリが一斉に同じ方向を向く景色は、背景の風車とも相まって、インスタ映えすること間違いなし! ぜひ記念にヒマワリと一緒に写真を撮りましょう。 「兵庫県立フラワーセンター」では、ペット同伴OKです。ただし、必ずリードをつけて、糞の始末はきちんとするなど、マナーは守りましょう。 夏は毎年サマーイルミネーションが催され、8月の金・土・日には、夜間の18:00〜21:00も園内で過ごすことができます。光るおもちゃの販売やかき氷、焼きそばなどの屋台も登場。お祭り気分を味わいましょう。「レストハウスフルーリ」も特別営業を行い、バーベキューも楽しめます(バーベキューへの持ち込みは不可)。 2018年は8月3日〜9月2日の金・土・日と8月13・14日が開催日。8月12日にエレクトーンコンサートが開かれ、8月19日には本場徳島阿波踊りが行われるので、ふるってご参加を! 秋が見頃の植物が織りなす景色を楽しもう! 雨天時や冬は大温室をゆっくり堪能 風車前花壇の秋を彩るのはマリーゴールドで、見頃は10月頃です。黄色やオレンジの花が密に咲き、花のカーペットのような景色をつくり出します。 南料金所横には、ガーデニングショップやギフトショップがあるので、お土産を探しに足を運んでみてください。営業時間は9:00〜17:00。北播磨地方の名産品、特産品を中心にした品揃えで、人気商品は、日本酒「富久錦」、もちむぎ麺、山田錦せんべい、黒豆ようかんなど。価格帯は1,000円前後が平均で、お手頃感があります。 「兵庫県立フラワーセンター」秋の名物、ダリアが見頃になるのは、9月下旬〜10月。100品種1,500株と、多様なダリアが植栽されているので、育ててみたい品種に出合えるかもしれません。ほかにも、この時期はコスモスなども見ごたえがあります。 菊は日本を象徴する花の一つで、大菊や盆栽など丹精込めて栽培する趣味人が多いことでも知られています。「兵庫県立フラワーセンター」では、毎年秋に兵庫県の菊愛好家が出品する「兵庫県連合菊花展覧会」を開催。美しい葉のつき方、ふっくらとした花姿、全体のバランスが整った草姿など、それは見事な菊が出揃います。 2018年の「第41回兵庫県連合菊花展覧会」は、10月14日〜11月18日開催予定。11月1日が審査日なので、どの菊が最も評価されたのか、奥深い世界を覗いてみましょう。 「兵庫県立フラワーセンター」の落葉樹が紅葉し、見頃を迎えるのは11月上旬。モミジ、ケヤキ、ドウダンツツジなどが鮮やかに発色し、園内をオータムカラーに染め上げます。写真はモミジバフウの並木が美しい「彫刻の道」の景色です。 「兵庫県立フラワーセンター」の大温室は1,971㎡の広さを誇り、大小7つの部屋に分かれています。開花期の異なる植物を集め、華やかに咲かせる「四季の花室」、色とりどりのベゴニアが約300鉢も並ぶ「球根ベゴニア室」、トロピカルな雰囲気で約150種の熱帯花木などが彩る「熱帯植物室」、インテリアプランツのゲスネリアが約300鉢も集まる「ゲスネリア室」、野生種、園芸種ともに楽しめる「ラン室」、ここでしか見ることのできないレア品種も揃えた60種500株の「食虫植物室」、そして四季の草花の鉢などが並ぶ「フラワーホール」です。 写真は1〜4月が一番華やぐ「ラン室」で、コチョウランが咲き競っています。多い時期には1,000鉢ものランがお目見えします! 地元の旬の食材を使ったおもてなし料理 充実のレストランで美食を満喫! 「兵庫県立フラワーセンター」には、喫茶や食事が楽しめる「レストハウスフルーリ」があるので、歩き疲れたらぜひご利用を。喫茶は10:00〜16:00、ラストオーダー15:30、食事は11:00〜14:00。客席は1階、2階ともに100席あります。ただし、冬期などの閑散期は休業しているので、出かける前にチェックしておきましょう。 「レストハウスフルーリ」の価格帯は1,000〜2,600円。人気メニューは「季節のおすすめ膳」1,800〜2,000円(季節により内容及び価格変更あり)、「志方牛ステーキ御前」2,600円、「飯森(豆腐料理)」1,650円です。写真はたくさんのおかずを少しずつ楽しめる「十六彩膳」2,500円。 Information 兵庫県立フラワーセンター 所在地:兵庫県加西市豊倉町飯森1282-1 TEL:0790-47-1182 http://www.hyogo-park.or.jp/flower-center/ アクセス:中国自動車道 加西I.C.から南へ3km オープン期間:通年 休園日:毎週水曜日(水曜日が祝日の場合は翌日)、12月28日~1月1日、チューリップまつり・菊花展覧会開催期間中は無休 営業時間:9:00〜17:00(入園は16:00まで) 料金:一般500円、70歳以上250円、障がい者250円、高校生以下無料 駐車場:バス21台、乗用車570台(無料) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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北海道

上野ファームの庭便り「鮮やかな夏を彩る、エキナセアの世界」
夏の庭に欠かせない主役花、エキナセア 強い日差しにも負けず、上野ファームの夏の庭をいつも元気に彩ってくれる植物はいろいろありますが、その中でもエキナセアは、夏の主役ともいえるくらい華やかで鮮やか。上野ファームの夏の庭には、もはや欠かせない存在です。 夏から秋の終わり近くまで咲き続ける開花期の長さも魅力です。多少の雨であれば倒れることも少なく、病害虫にも強いので、庭づくりを始めたばかりの方でも気軽に植えられる、オススメ植物です。エキナセアと聞くと、ピンクのイメージですが、最近では、黄色やオレンジなどの色のバリエーションも増えて、八重咲き品種などもあり、さまざまな植物との組み合わせを楽しめるようになりました。 以前は、エキナセアは“背が高くて使いにくい”というイメージをもっていた方も多かったようですが、最近では、背の低い品種が多く登場しているので、いろいろな草丈が選べるようになりました。ひざ下くらいの草丈であれば、倒れにくく庭でも場所を取らずにコンパクトに楽しめます。エキナセアは、数年育ててもそれほど株が大きくなる植物ではないので、ボリューム感を出したい場合は同じ品種を数株まとめて植えると、こんもりしたボリュームでより華やかなコーナーをつくることができます。 白のエキナセア‘ベイビーホワイトスワン’と組み合わせた優しいブルーのアスター。夏こそ鮮やかな色でまとめたほうが、強い日差しに負けません。 濃い色は使いにくいと思われがちですが、ちょっとした庭の差し色としてビビッドな色をピンポイントで使うと、ガーデンにスパイスが入ったように引き締まります。 ダイナミックな群植を楽しむ 限られたスペースの庭に植えるときは、コンパクトにまとまるような品種を選びますが、上野ファームでは、エキナセアの色の迫力をより魅力的に見せるために、群れで咲くようなイメージで植栽している場所もあります。いつも見慣れているシンプルなエキナセアも、組み合わせやボリューム次第で新しい表情が生まれます。 ピンクとも相性がいい、ブルーのエリンジウムやアリウムをパレットの絵の具のように混ぜ合わせて。エキナセアの背景に見えるピンクの花はフィリペンデュラ‘マグニフィカ’。 白とピンクのエキナセアの間に、オーナメンタルグラスを入れることで、より花の輪郭がはっきりします。濃い色合い同士の組み合わせも、間にグラスを入れることで庭の表情が柔らかになります。 よりナチュラルに楽しむ 派手な組み合わせだけでなく、オーナメンタルグラスと合わせて、草原の中の野草のようなイメージで表現することができるのもエキナセアの魅力です。シンプルな組み合わせでも、エキナセアは十分に魅力を発揮します。 オーナメンタルグラスから透けて見えるエキナセアも風情があります。 オミナエシとグラスのシンプルな組み合わせ。素朴な花と一緒に合わせてもなじみます。夏も終わりに近づくと、エキナセアの鮮やかな色が次第に抜けて色あせてきますが、アンティークカラーに変化してゆく様子もとても魅力的に見えます。花が終わって秋にシードヘッド(タネの頭)になった姿もまた違った魅力があるので、ぜひ最後まで楽しみ尽くしてみてください。 シードヘッドだけになったエキナセア。最後は色ではなく、形としてドライフラワーのように楽しむ観賞にもエキナセアは向いています。 ボーダーでも彩りを添えてくれる、エキナセア‘ピンクダブルデライト’(手前)。淡いピンクのソープワートと一緒に爽やかに。 夏の庭を華やかにも、ナチュラルにも自在な表現で使える植物はなかなかありません、魅力的なエキナセアの新しい世界、ぜひ皆様もお庭で楽しんでみてください。 北海道の夏の庭の本番はこれからです。夏も途切れることなくさまざまな花がボリュームいっぱいに咲く北国の庭に、ぜひ遊びにいらしてください。 夏から秋も魅力がいっぱいの「北海道ガーデン街道」もチェックを!
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イギリス

イギリス「ペンズハースト・プレイス・アンド・ガーデンズ」の庭【世界のガーデンを探る旅12】
ガーデニングの本場といわれるイギリスの庭の発祥とは イギリスの庭の歴史はいつ頃から始まったのでしょう? これまで、イスラムの庭からイタリアルネサンス、そしてフランス、オランダとヨーロッパ大陸での庭の連綿たる歴史を見てきましたが、イギリスではどうだったのでしょうか? そもそもこの地には、石器時代から先住民が住んでいました。有名なストーンヘンジはその頃(紀元前2500〜2000年頃)のものです。その後、ケルト人が紀元前から住み着きました。紀元後になるとローマ帝国に侵略(西暦43年)され、その後4世紀まで支配されます。今でもイギリス南部にはローマ時代の遺跡や村が所々に残っています。その後、ゲルマン人やバイキングなど、さまざまな外圧、支配を受けながら現在の大英帝国(Great Britain)になっていきますが、その辺りの詳しい説明は、歴史の教科書に任せましょう。 イギリスに現存する庭の中で、最も古いものの一つ そこで今回ご紹介したいのは、僕の大好きな庭の一つ「ペンズハースト・プレイス・アンド・ガーデンズ」です。きれいに手入れが行き届いたこの庭は、イギリスで現存する庭の中で最も古いものの一つとされています。 ここでもう少しイギリスの歴史についてお話ししましょう。イギリスは11世紀から約200年に渡って行われた十字軍に参加し、帰還した兵士たちがイスラムの文化をいろいろ持ち帰ったと思われますが、この庭の歴史がはっきりしてくるのは、その後半の13世紀のイタリアルネサンスが始まった頃からです。ペンズハースト・プレイスがあるこの地は豊かな丘陵地帯で、ロンドンから馬で半日の距離にあるという立地条件も含めて、別荘としても便利なことから選ばれたようです。建物は14世紀にほぼでき上がり、建物の前にあるイタリア式整形庭園と、そこに続くウォールガーデンがつくられたようです。また、この庭は多くの詩や物語の中にも読まれていることでも有名です。 ペンズハースト・プレイスの散策を始めましょう 1554年に植えられたという記録が残るオークのアプローチです。このアプローチを歩いていくだけで、左側の城壁の向こう側に展開する庭への期待感が、歴史をバックにした重々しさとともに強まります。 屋敷の前は、この地の緩い傾斜を巧みに利用した一種のサンクンガーデン(沈床式花壇)になっています。この庭は整形式の中でも正方形に近い形で、草ツゲの段になった低い刈り込みの緑とピンクのバラを組み合わせて、他では見られない独特な雰囲気を醸し出しています。庭の向こうに低く連なる遥かな丘陵を巧みに借景として利用することで、高い場所に位置するこの地が、大きく広がる天上の楽園(ユートピア)を表しているような気がします。 庭の横に置いてあるベンチが、いかにもイングリッシュガーデンといった趣です。 イギリスらしい色彩調和が随所に見られるボーダー花壇 城壁の南側に続くボーダー花壇には、日本ではちょっと考えられない、日向が好きな植物と日陰が好きな植物の組み合わせ。淡い色のヘメロカリスが咲き、その足下には斑入りのホスタやボリジ、ニコチアナ、ラベンダーなどが咲いています。もうすぐアガパンサスも咲きそうです。ボーダーの左側には、イチイの生け垣がその背後の花壇を隠すように茂っています。 ボーダー花壇の端には小さな池があり、屋敷の明るい色の石壁に銅葉のノムラモミジが映え、広い空間のアクセントになっています。スクエアのポットの中心にはスタンダード仕立ての月桂樹、その株元に薄黄色のペチュニアと控えめな紫のロベリアを組み合わせる色彩センスは、イギリスらしさを感じさせます。 ここでは、赤いスモークツリーを中心に、ペンステモンや黄花のツキミソウ、白いフランネル草や2種類のゲラニウム、金露梅に白い花のブッシュはエリカでしょうか? 低木と宿根草がうまく立体的に混じり咲いています。左側はアスター、アルケミラモリス、そして自然樹形に伸びた白バラが見えます。 刈り込んだイチイのヘッジ(生け垣)に囲まれたバラ園 イチイの生け垣を抜けるとバラ園があります。白バラ‘アイスバーグ’のスタンダード、その株元はシルバーリーフのラムズイヤーがカーペットに。視線の先には、アイストップとしてアイボリーホワイトのベンチが配され、素敵な空間を演出しています。 ラムズイヤーのカーペットの左右には、きっちり四角くトリミングされた赤い葉のバーベリス(メギ)の生け垣があり、中にはオレンジ色のバラが植えられています。バラ園の中に、銅葉のバーベリスを使い、さらにはオレンジ色を組み合わせる例は他に見たことがありません。僕個人としては、もう少しヘッジを低く刈り込むか、バラをハイブリッドティーのような背の高い種類にすれば、より調和の効果があるような気がします。 小道を進むと、優しいカーブを描く低いツゲの模様の繋がりが楽しい細長いガーデンが。ヘッジの中にラベンダーが咲き、トーテムポールを思わせるモダンなオブジェがアクセントになっています。ポールの頭には、赤いドラゴンやその他の動物が象られていますが、もしやこのシドニー家の家紋の動物でしょうか? イギリスでもっとも古いとされる庭で、こんなモダンな演出に出合ったことに驚きました。ツゲの外側は、背丈より高く仕立てられたリンゴやナシのエスパリエで視線が遮られていることで、よりポールが引き立って見えます。 今見た庭から次の庭へと導く道の左右には、きれいに刈り込まれたヘッジの壁があります。これは、前の庭のイメージをシンプルな空間に入ることでリセットさせて、次の庭へ進むことができるイギリス独特の仕掛けです。 このエリアは、緑のイチイの生け垣で周囲をぐるりと囲み、真ん中に真四角の池があるというシンプルな庭です。池に咲く睡蓮が、この庭デザインの人工的な構図を和らげてくれています。庭としては、ある意味とても大胆なデザインです。一条の噴水が何か物悲しげな感じがします。 ペンズハースト・プレイスで一番華やかな庭 睡蓮が咲く池の隣のエリアは、なんとユニオンジャックの庭です。青地に白のクロスのスコットランド、白地に赤のクロスのアイルランド、白地に赤の十字のイングランドの旗が重なってできた現在のグレートブリテン及び北アイルランド連合王国(イギリスの正式な国名)の旗が浮かび上がる花壇です。何度か訪れたなかでも、初めてユニオンジャックに見えた時の写真です。紅白のバラとイングリッシュラベンダーが同時に咲くことで成立する植栽デザイン。この遊び心、なかなか真似できませんね。 さまざまな庭デザインのバリエーションが敷地内に凝縮している「ペンズハースト・プレイス・アンド・ガーデンズ」。14世紀に建てられた邸宅としては保存状態もよく、内部の部屋も一般公開されている観光名所で、貴族の日常がどのようなものであったかを知ることができる貴重な場所。いにしえに思いを馳せながら庭をあとにすると、駐車場横には、子どもたちの歓声が響く賑やかなアドベンチャー公園が。その元気な声が、人々に愛されている生きた場所なんだと、この庭の今を感じさせてくれました。
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神奈川県

世界バラ会連合会議で「横浜イングリッシュガーデン」が栄誉ある賞を受賞!
2018年は世界バラ会連合発足50周年の記念の年 1976年に選出された「バラの栄誉の殿堂」第1号‘ピース’。Photo/Patrick Civello/Shutterstock.com 1968年にイギリス、ロンドンにて発足し、今年で50周年を迎えたバラ愛好家たちの世界的組織「世界バラ会連合(The World Federation of Rose Societies ※以下WFRS)」は、バラに関する知識や情報交換などを目的として、会議や展示会を行い、3年に一度、バラの歴史が長い国・都市で「世界バラ会連合会議(World Rose Convention)」を開催し、「バラの栄誉の殿堂」や「優秀庭園賞」などの賞の付与なども行っています。発足50周年となる2018年は、6月28日~7月4日にデンマーク・コペンハーゲンを開催地として大会が行われました。 大会で注目される権威ある賞「バラの栄誉の殿堂(Rose Hall of Fame)」 1983年に選出された「バラの栄誉の殿堂」品種‘アイスバーグ’。Photo/alybaba/Shutterstock.com 2006年の大阪大会では、写真の‘ピエール・ドゥ・ロンサール’と‘エリナ’が「バラの栄誉の殿堂」として選出されました。Photo/3and garden 大会で授与される注目の賞の一つである「バラの栄誉の殿堂」は、世界中のどの環境でも育てやすいことや、誰が見ても美しい品種であること、多くの国で長く愛されていることなどが審査基準となり、第1回の‘ピース’をはじめ、‘アイスバーグ’や‘ニュー・ドーン’、‘ピエール・ドゥ・ロンサール’など、日本でも人気がある品種が多数選ばれています。 Photo/Patrick baehl de Lescure/Shutterstock.com 2018年に「バラの栄誉の殿堂」に選ばれたのは、2000年にアメリカのラドラー氏によって作出された‘ノック・アウト’です。バラにとってダメージとなる黒星病やうどんこ病に強い抵抗力があり、地域によっては無農薬栽培で育てることができるほど耐病性に優れています。また、春から晩秋まで咲き続けるブッシュローズ(木立性)で、バラには珍しく花がら摘み以外のメンテナンスが少なくてよいので、バラ栽培の初心者だけでなく、公共空間の景観をつくるバラとしても活用されています。 優れた庭園に贈られる「優秀庭園賞」 2018年に「優秀庭園賞」に選ばれた神奈川県横浜市の「横浜イングリッシュガーデン」。 大会で授与される「優秀庭園賞」は、数あるローズガーデンの中から、歴史的、教育的、景観的な各視点により特に優れた庭園に贈られるもので、庭園としての美しさに加え、メンテナンスの質がよいことや、学術的に価値がある品種を栽培しているなどの総合的な評価により選ばれます。 「優秀庭園賞」の表彰は、1998年からスタートし、2018年開催のコペンハーゲン大会までで世界各地の64カ所の庭園が受賞。日本では、岐阜県「花フェスタ記念公園」、広島県「福山市バラ園」、大阪府「靭(うつぼ)公園」、東京都「神代植物公園ばら園」、千葉県「京成バラ園」、千葉県「佐倉草ぶえの丘バラ園」、静岡県「アカオハーブ&ローズガーデン」の7つの庭園が受賞してきました。 日本で8つめの「優秀庭園賞」は神奈川「横浜イングリッシュガーデン」 日本ばら会から推奨を受けたWFRSのケルビン・トリンパー会長とヘルガ・ブリシェ元会長は、2017年11月に横浜イングリッシュガーデンを視察訪問しました。その際、ケルビン会長からあがった評価点は以下の項目でした。 6,600m² と小さな庭園であるが、バラだけでなく数多くの花木や宿根草、一年草などが組み合わされた美しいデザインである。 オールドローズ、つるバラ、シュラブ、各種の四季咲き性のバラや野生種のコレクションは、1,800品種を超え、どれも良好な生育をしていて、管理水準が非常に高い。 自国品種の保護の観点からも、その中に500種以上の日本のバラのコレクションが含まれていることは、とても素晴らしい。 品種プレートは正確に表示されていて、来園者にも分かりやすくなっている。 季節のテーマに合ったプログラムや子ども向けの教育プログラムを運営している。 これらの評価により見事受賞となった神奈川「横浜イングリッシュガーデン」から、2012年よりスーパーバイザーとしてガーデンデザイン、植栽管理を行っている河合伸志さんが、デンマーク、コペンハーゲンへ駆けつけ、第18回「世界バラ連合」、「優秀庭園賞」授与式に出席しました。 壇上にて賞状を受け取る河合伸志さん。 河合伸志さんとWFRSのケルビン・トリンパー会長の記念ショット。 これまで「優秀庭園賞」を受賞してきた世界各地の庭園に、「横浜イングリッシュガーデン」が仲間入り。WFRSのホームページ内「Award of Garden Excellence」でも紹介されています。 この度見事受賞となった「横浜イングリッシュガーデン」では、先にご紹介した「バラの栄誉の殿堂」入りのバラも多数見ることができます。 横浜イングリッシュガーデンの一年を追った『横浜イングリッシュガーデンの四季【花巡り・ガーデン案内 〜神奈川〜】』の記事もご覧ください。
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北海道

花の庭巡りならここ! 北海道スケールの花畑を愛でよう「展望花畑 四季彩の丘」
2001年6月にオープンした「展望花畑 四季彩の丘」は、14万㎡もの広大な敷地を持つ観光ガーデン。北海道美瑛地方特有の丘陵と大雪山連峰を背景に、季節の花々で絨毯のように彩るダイナミックな景色が大きな魅力です。 大小約30に畑が分割され、約30種類45万株の草花を植栽。チューリップからムスカリ、パンジー、ポピー、ルピナス、マリーゴールド、サルビアへと、季節が進むたびに見頃の花も徐々に変化していきます。年間80万人が訪れる、北海道屈指の観光ガーデンに、ぜひお出かけください! さわやかな北海道の夏空のもと 壮大に広がる花のカーペット 「展望花畑 四季彩の丘」の一番の見頃は7〜8月。写真は中央エリアで、ピンクの濃淡のクレオメが植栽されています。抜けるような青空のもと、地平線まで広がるような花畑に、北海道ならではのスケールの大きさを実感することでしょう。花畑をひと通り巡るのにかかる時間は、大人の足でゆっくり歩いて1時間くらい。見る角度や高さによって印象も変わってくるので、訪れた記念にぜひ写真をたくさん撮りましょう。 写真は「展望花畑 四季彩の丘」の中央エリア。マリーゴールド、シルバーダスト、青と赤のサルビアが整然と植栽され、遠くから見ると美しいストライプ状になります。どの季節に訪れても素晴らしい景色が見られますが、毎年同じ景色にならないように、植える花の場所を変えているので、リピーターも多いとか。外国からのお客様が多く、写真映えするように色鮮やかな配色を心がけているそうです。 ちなみに、花畑へのペット同伴はOK、飲食の持ち込みは不可となっています。 ノロッコ号に乗っての周遊もオススメ! アルパカと触れ合える牧場エリアも近接 広大な敷地、かつ傾斜のある丘のため、普段歩き慣れていない方にはノロッコ号(トラクターバス)の利用がオススメ。園内を15分かけて一周し、中央の高台まで行くと、フォトジェニックな写真が撮れるスポットで5分ほど停車します。利用料金は、大人500円、小・中学生300円、幼児無料。カートの貸し出しも行っています。 「四季彩の丘」の入り口近くには、アルパカ牧場エリアがあります。入場料は大人500円、小・中学生300円、幼児無料。柵越しに餌やり体験(餌100円)ができ、モフモフの毛をなでて触れ合うこともできます。愛らしいクリクリの瞳、ふわふわの毛並み、シャイながらも好奇心旺盛なアルパカに癒されること間違いなしですね(アルパカ牧場はペット同伴不可)。 自社農園で採れた新鮮野菜も販売! メニュー充実のレストランにも立ち寄ろう 「四季彩の丘」には、売店、レストランもあります。1階が売店で、おみやげコーナーにはラベンダーグッズ、ポストカード、北海道限定のお菓子や、リースなどクラフト雑貨も揃い、自社農園の「四季の丘FARM」で採れた農産物も販売しています。2階がレストランで、客席数は100、営業時間は8:30〜18:00(ラストオーダー17:00)、夏の最盛期は10:00〜15:00(混み状況で異なります)。 1階の売店では、ソフトクリーム(300円)も販売。ミルク、ラベンダー、メロンの3種類があります。オススメは北海道のおいしいジャガイモでつくられる「丘のじゃがいもコロッケ」1個130円。男爵薯とキタアカリの2種があります。屋外にベンチがあるので、気軽におやつ感覚でどうぞ。 2階のレストランでは、北海道ならではのメニューが目白押し。なかでもスープカレー(1,100円)、彩りうどん(700円)に人気があります。写真は鹿ジンギスカン定食(1,000円)。花畑の景色を楽しんだあとに、地元の名物料理を味わえるのも魅力の一つですね。 Information 展望花畑 四季彩の丘 所在地:北海道上川郡美瑛町新星第三 TEL:0166-95-2758 https://www.shikisainooka.jp アクセス:公共交通機関/JR富良野線「美馬牛駅」より徒歩25分、JR富良野線を「美瑛駅」より車で12分(タクシー在中あり) 車/旭川方面からは国道237号線から道道824号線に入り、美馬牛駅方向へ。 富良野方面からは国道237号線より、トリックアート美術館を目印に右折し直進。 オープン期間:通年 休園日:12月31日、1月1日 営業時間:9:00〜17:00(4〜5月、10月、※アルパカ牧場は営業時間の30分前で閉園) 8:30〜18:00(6〜9月) 9:00〜16:30(11月) 9:00~16:00(12月〜翌2月) 9:00~16:30(3月) 料金:無料(花畑維持管理費用として、任意で一人200円の募金をお願いしています) 駐車場:大型バス30台、乗用車300台(無料) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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ガーデナー憧れの地「シシングハースト・カースル・ガーデン」誕生の物語
詩人のヴィタと外交官のハロルド この類まれなる庭をつくり上げたのは、詩人、作家として活躍した妻のヴィタ・サックヴィル=ウェストと、外交官で作家でもあった夫のハロルド・ニコルソン。確かな審美眼を持ち合わせた2人は、設計や植栽に互いの個性を反映させながら、静かな美しさに満ちた庭景色を実現していきました。今ではよく見られる、白花で埋め尽くされたホワイトガーデンのスタイルも、彼らが始めたものです。 ともに貴族の出で、高い教養を持ったヴィタとハロルドは、若くして出会い、結婚しました。2人は因習にとらわれず、互いが恋人を持つことに寛容な新しい結婚形態を認め、それぞれ同性の恋人を持つこともありました。 ヴィタの恋人の一人は、作家のヴァージニア・ウルフでした。ウルフの小説『オーランドー』に登場する、性別と時空を超えて旅をする主人公は、ヴィタがモデルになっています。時に、恋人との恋愛に身を焦がすこともあったヴィタ。しかし、ヴィタとハロルドの2人はそれでも深く愛し合い、特に、シシングハーストの庭をともに創作することで強く結びついていたといいます。 廃墟との運命的な出合い 1930年のある日、ヴィタとハロルドは、廃墟と化していたシシングハースト・カースルに出合います。むき出しの土には、がれきの山が置かれ、15世紀末に建てられた歴史ある建物も、到底人が暮らせるものではありませんでした。16世紀のエリザベス朝にはイングランド女王を迎えるほどに立派だったマナーハウスは、18世紀には牢獄、19世紀には救貧院、20世紀には陸軍用地に使われ、打ち捨てられた存在になっていたのです。 しかし、ヴィタにとってこの廃墟との出合いは運命的といってもいいものでした。レンガづくりの古びた建物と、どこからでも見えるエリザベス朝時代の古い塔。彼女にはきっと、シシングハーストの未来にある、美しい庭景色が見えたのでしょう。「一目見るなり、恋に落ちた。私にはここがどんなところか分かった。眠り姫の城だ」と、書き残しています。 ピンクがかった古いレンガ塀を熱心に見つめながらヴィタがつぶやいた「私たちはここでとても幸せに暮らせるはずよ」という言葉に、当時13歳だった息子のナイジェルは驚きます。彼には、とてもそう思えなかったからです。 ヴィタとハロルドは、同じ年にシシングハーストの建物とその周辺の広大な土地を購入します。そして、契約を交わしたその日に、バラ‘マダム・アルフレッド・キャリエール’をサウスコテージの扉の脇に植えて、庭づくりの一歩を踏み出しました。それから長い年月を費やして、建物の大改修と庭の創造に取り組んだのです。 ハロルドによる古典的で優美な設計 庭の設計はハロルドが担当し、植栽は主にヴィタが行いました。ハロルドは、直線を用いた、古典的でありながらも洗練された構造を好みましたが、しかし、芝生や生け垣を設計通りに実現するのはとても難しいものでした。 また、図面と向き合い、難解なパズルを解くように何週間も案を練っているうちに、ヴィタが小径となるべき場所に樹木や灌木を植えてしまうこともありました。 ハロルドは伝統的な整形式庭園の様式を重視していました。「芝生は私たちのガーデンデザインの基本だ」。「よきイングリッシュガーデンの土台となるのは、水、樹木、生け垣、そして芝生だと、ガーデンデザイナーなら認めるべきだ」。彼はそう書き残しています。 かつて広大な鹿狩場を見渡すために建てられた塔は、屋上まで上ることができ、そこから庭園全体を見下ろすことができます。ハロルドがつくり上げた庭の構造を理解する、絶好のビューポイントです。 レンガ塀や生け垣で仕切られたガーデンは小部屋が連なるように配置され、ところどころに、高いイチイの生け垣に挟まれて一直線に伸びる‘ユー・ウォーク’の小径や、円形の生け垣といった、ダイナミックな構造がつくられているのが分かります。 シシングハースト・カースルの敷地は450エーカー(東京ドームおよそ39個分)という広さがあり、庭園は、森や小川、農地の広がる敷地の、ほぼ中央に位置しています。ケント州に生まれ育ったヴィタは、この地の森林風景を深く愛していました。庭が周囲の景色と一体となっていることは、2人にとって大切なことでした。 色彩が躍るヴィタの植栽 才能あるアマチュア・ガーデナーだったヴィタは、きっちりとした性質のハロルドとは対照的に、完璧を求めず、本能的に庭に向き合うタイプでした。植栽スタイルも、土が見えるのがとにかく嫌で「どんな隙間にもどんどん詰め込む」というもの。草花がこぼれんばかりに茂り、色彩があふれ出すような植栽を好みました。 中庭にあるパープル・ボーダーでも、ヴィタは巧みに色彩を操って、印象的な花景色をつくりました。紫色の花壇といっても、紫色の花ばかりではなく、ピンク、ブルー、ライラックといった色をうまく取り混ぜて、色彩の広がりを出しています。 ハロルドによる洗練された構造設計と、感性豊かで情熱的なヴィタの植栽。この2つの要素が相まって、他にはないシシングハーストの魅力は生まれています。 永遠に生き続ける花園 1937年、2人は初めて、2日間の一般公開を行いました。ヴィタはまた、1947年から亡くなる前年まで、英オブザーバー紙で〈イン・ユア・ガーデン〉という人気ガーデンコラムを毎週書き続け、ローズガーデン、サウスコテージガーデン、ホワイトガーデンといった、彼らが生み出した独創的なシーンは、時とともに知られるようになりました。 ヴィタは1962年に70歳で亡くなり、シシングハーストを息子のナイジェルに遺します。庭を分身のように思っていた生前のヴィタは、他人の手に庭を渡すことを頑なに拒んでいました。しかし、莫大な相続税を課せられたナイジェルには、周辺の農地を売って屋敷と庭だけを残すか、もしくは、英ナショナル・トラストにすべてを譲るかという選択肢しか残されていませんでした。 ナイジェルは、両親の手による偉大な創造物を、周辺の景色とともに守っていくよう英ナショナル・トラストを説得し、1967年、ついに地所を譲りました。それは、ヴィタの本意ではなかったかもしれません。しかし、彼女の愛した花園は、こうしてトラストによって守られ、生き続けることになったのです。 取材協力 英国ナショナル・トラスト(英語) https://www.nationaltrust.org.uk/



















