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フランス

フランス・パリの隠れ家「パレ・ロワイヤル」【松本路子の庭をめぐる物語】
パリを訪れるとよく立ち寄るところが何箇所かある。時間ができると、ふらりと足が向く場所。その一つがパレ・ロワイヤルの中庭だ。今年、2018年7月にも木陰のベンチとカフェで数時間を過ごした。 パレ・ロワイヤルはルーブル宮殿の隣に位置している。当初はリシュリュー宰相の城館として建てられたが、ルイ14世がルーブルから移り住んだことから、パレ・ロワイヤル(王宮)と呼ばれるようになった。数奇な運命に見舞われた場所でもあり、フランス革命はここから起こったとされるなど、歴史の舞台にも登場する。 サントノーレ通り側から入ると、現代アートの作品である白と黒のストライプの円柱がいくつも立ち並ぶ広場があり、その奥が庭園になっている。 両側には幾何学的に整えられた並木、その木陰のベンチではバイオリンの稽古をしているカップルなどが。庭園をコの字に囲む建物の1階の回廊には、レストランやカフェ、骨董店などがあるが、木々にさえぎられて庭園からはほとんど見えない。 中央にある花壇にはいつも季節の花々があふれているが、今年のパリの夏の暑さは尋常ではなく、植物もじっと耐え忍んでいるように見える。それでもいくつかの夏バラが咲き、花壇のダリアが色彩のハーモニーを奏でていた。 庭園に面した建物の2階部分には、かつて作家のシドニー=ガブリエル・コレットやジャン・コクトーが住んでいた。私は『ヨーロッパ バラの名前をめぐる旅』という自著で、コレットゆかりの地を訪ね歩いたことがある。コレットは植物に並々ならぬ想いを寄せていた。 『コレット 花28のエッセイ』(八坂書房刊)は、コレットがさまざまな花について綴った、いわばアンソロジーなのだが、まさに言葉の花束といってもよい一冊だ。 その本の中で、彼女はしばしば部屋の窓から見えるパレ・ロワイヤルの庭のことを書いている。バラについては特別な思いを抱いていたようだ。 「噴水の捕虜となった虹が、このパリの真ただ中で目覚めさせるバラ。お前たちを何にたとえたらいいのか。お前たちに匹敵する花は、いかなる楽園へ行けば摘むことができるだろう」(森本謙子訳) 中庭からコレットの住んでいた部屋の窓を見上げ、また彼女が見ていたであろう庭の方向に目を転ずる。バラの花がかすかに風に揺れた。 コレットはパレ・ロワイヤルの自室で亡くなった。1954年、81歳だった。その葬儀は国葬として、この中庭で執り行われたという。彼女が亡くなったのは8月だったので、その時バラが咲いていたか定かではなかった。だが夏の庭を訪れた時、私は確信した。バラたちは彼女の旅立ちを見送ることができた、ということを。 パリの庭園の素敵なところは、ベンチだけでなく、一人掛けのイスが置かれてあること。噴水を囲む広場では、人々は水辺に椅子を移動し、思い思いの姿で、読書や日光浴を楽しんでいた。 眺めることや散策のためだけではなく、そこで自由に時間を過ごすことができる、憩いの空間。パリの中心部に位置していながら、パレ・ロワイヤルの庭園は、自宅の隣にあるような、隠れ家のような、愛すべき場所ともいえるのだ。 併せて読みたい 松本路子の庭をめぐる物語 フランス・パリ「ロダン美術館の庭園」と秋バラ ナショナル・トラスト2018秋冬コレクション 英国有数の保養地 イングランド南西部を訪ねる【PR】 世界のガーデンを探る旅1 スペイン「アルハンブラ宮殿」
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北海道

心が潤う庭の花を使った暮らしの遊び
花盛りを目前にした6月の庭で 前回の「私のガーデンストーリー」でご紹介した、芝地を囲むように野の花が咲く場所には、これまで赤いベンチが置かれていましたが、ちょっと飽きて、空色の庭イスと場所を入れ替えました。5月にはスイセンなどの春の球根花たちが育っていた庭も、一月で草丈はグングン伸びて、芝地の草抜きも埋もれるようにやっています。 これからバラが咲き、一番庭が輝く季節がやってくるはずでしたが、今年はとっても雨盛り。お願いだから、雨足の強さを半分にしてください! と天に願ったのですが、連日のようにバケツをひっくり返したように降りました。 咲き始めたばかりのシャクヤクは、昨日まで満開だったのに、一夜にしてボッキボキです。 大雨の後は花たちを救出 雨に打たれたシャクヤクたちを、サクサク切って家に連れて帰って来ました。この日のガーデンルームは紅色に染まり、この後、窓辺に吊るしてドライにし、クリスマスやしめ飾りに使おうと思います。 今年は、他の地域でもそうだったように、北海道もバラの生育のスピードが速くて、6月下旬には、今にも咲きそうにつぼみをたくさんつけました。去年ネズミに食べられて、弱り切っていたのが嘘のよう。 イングリッシュローズの‘メアリー・ローズ’と、‘ガートルード・ジェキル’は、一番花の開花が1週間から10日ほど早いイメージです。息子のバラも、咲きそうなつぼみが33個あると喜んでいました。ですが、今年は毛虫がいっぱい。食べられなければ、もっとあったそうです。 野ばらもご覧のありさま。うーん、捨て置けない! こんなとき、私はハサミで真っ二つに。「わあ、2匹が4匹に! 事件だっ」「もしも閻魔大王が毛虫だったら地獄行きだね〜」と夫は笑います。 でもね、笑っているうちに、夫のバラはつぼみをほとんど食べられ、この調子では、今年もほとんど咲かないでしょう。咲かないバラを見たら悲しむので、やっぱり代わりに毛虫を成敗してあげました。コッソリね。 バラの季節のメール文通で 「Garden Story」の編集部さんから、ポストカードが届いたので、お礼に写真のパフェを送りました。そしたら、「なんてかわいい! 今年のインスタ映え写真♪第一位に決定です」なんて、お返事が届きましたよ。 このパフェの正体、実はイングリッシュローズの‘クロッカス・ローズ’。咲きたては、まるでソフトクリームみたいだと思って。サクランボを飾って、庭のジューンベリーを並べたら、庭に訪ねてきた友だちも、ワッと盛り上がった大笑いのウェルカムフラワーのでき上がり。 食べ物でイタズラしてごめんなさい。でも、サクランボは美味しくいただきますから、無駄にはしていませんよ。うふふ。バラは、おしゃべりの間中、一緒に過ごすテーブルフラワーです。 バラも一斉に咲き始めて、庭にいたいのは山々ですが、これから数日留守にするというとき。花がらが葉にベトベトついてしまうのが嫌なので、一斉にカットしました。ただでさえ雨でグチョグチョの花を見るのはたまらないので、今年は特に、家中花まみれでした。 花と遊ぶのは楽しいです。バラのフルーティーな香りを嗅ぐと、嫌なことは全部吹き飛びます。自分で世話したバラだから、なおさらです。 花瓶に挿すには短い花首の場合は、花の根元に画鋲で穴をあけて、ワイヤーを通して小枝に吊って、香りを楽しむモビールにします。 フレッシュで香りが漂う頃もいいし、次第に落ち着いた色に変化していくモビールも大好き。 この地で庭と暮らして12年。庭に興味のなかった夫が「野ばらの『桜』が咲いたよ、きれいだよ」と寝込んでいた私に知らせてくれました。私も見に行きたいと思い、身体を上げて歩くうち、気持ちが晴れていきます。 好きな場所で、好きなものを、家族と分かち合って暮らせること。 なによりの贅沢で、今の私の生きる力です。 今年は、小さなアジサイの苗も買いました。日陰になりつつある我が家の庭で、いつまでも無理なく庭とつき合いたいと思っています。 庭話は楽しいので、ついつい長くなりました。
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兵庫県

花の庭巡りならここ! 大人の遠足にうってつけのスポット「兵庫県立フラワーセンター」
1976年にオープンした歴史ある公園、「兵庫県立フラワーセンター」。自然の松林に囲まれた園内は、中央に満々と水をたたえた亀ノ倉池、大小さまざまな花壇や樹木園、四季を通じて楽しめる大温室で構成されています。総面積46万㎡の敷地は、園内なら大人の足で1時間〜1時間30分で巡ることができます。また、飯盛山の展望台やつばきの森、つつじの小道まで足をのばすと2時間ほど。ピクニック気分で出かけるのに、ちょうどよいスポットです。 植物は4,546種(在来種2,053種、園芸種2,493種)が息づき、花壇では春のチューリップに始まり、夏はサルビア、ジニア、ヒマワリ、秋はマリーゴールド、コスモス、ダリア、冬はビオラへと咲きつないでいきます。またサクラ園、バラ園、シャクナゲ園、ボタン園、ツバキ園、ウメ園のほか、アジサイ、ツツジの小道や林床植物を集めたウッドランドなどがあり、いつ訪れても何かしらの花が見頃を迎えているのが、花好きには嬉しいところですね。 園内には花の相談所があり、常時園芸相談を受け付けているので、うまく育たない植物の悩みごとがあれば、ぜひ立ち寄ってみましょう。ブーケやリースづくり、バックヤード見学会、食虫植物教室など、イベントや講習会も随時行っているので、事前に公式ホームページをチェックして、園内の散策に加えて体験型教室に積極的に参加するのもオススメです。 春はなんといっても22万株のチューリップ花壇! 夏は元気いっぱいのヒマワリ畑に衣替え 4月中旬から、風車前花壇は500品種22万株のチューリップが見頃になります。長期間楽しめるように、一つの花壇に同色で開花期の異なる球根を植えつけているのがマル秘テクニック。これは自宅のガーデンにも応用できそうですね。どんな風に植栽しているのか、チェックしてみるのもツウの楽しみです! また、4月の土・日曜は、子どもや女性向けに、オランダ衣装試着体験も行っています。この衣装、実は「兵庫県立フラワーセンター」にお勤めの職員さんの手づくりなんですって! なんだか温かみのあるおもてなしを感じませんか? ちなみに「兵庫県立フラワーセンター」では飲食の持ち込みもOK。青空の下、花々に囲まれてお弁当を広げれば、いっそうおいしく感じられそうですね。 夏の見どころはヒマワリ。園内には14品種1万株が植栽され、見頃は7〜8月です。群植されたヒマワリが一斉に同じ方向を向く景色は、背景の風車とも相まって、インスタ映えすること間違いなし! ぜひ記念にヒマワリと一緒に写真を撮りましょう。 「兵庫県立フラワーセンター」では、ペット同伴OKです。ただし、必ずリードをつけて、糞の始末はきちんとするなど、マナーは守りましょう。 夏は毎年サマーイルミネーションが催され、8月の金・土・日には、夜間の18:00〜21:00も園内で過ごすことができます。光るおもちゃの販売やかき氷、焼きそばなどの屋台も登場。お祭り気分を味わいましょう。「レストハウスフルーリ」も特別営業を行い、バーベキューも楽しめます(バーベキューへの持ち込みは不可)。 2018年は8月3日〜9月2日の金・土・日と8月13・14日が開催日。8月12日にエレクトーンコンサートが開かれ、8月19日には本場徳島阿波踊りが行われるので、ふるってご参加を! 秋が見頃の植物が織りなす景色を楽しもう! 雨天時や冬は大温室をゆっくり堪能 風車前花壇の秋を彩るのはマリーゴールドで、見頃は10月頃です。黄色やオレンジの花が密に咲き、花のカーペットのような景色をつくり出します。 南料金所横には、ガーデニングショップやギフトショップがあるので、お土産を探しに足を運んでみてください。営業時間は9:00〜17:00。北播磨地方の名産品、特産品を中心にした品揃えで、人気商品は、日本酒「富久錦」、もちむぎ麺、山田錦せんべい、黒豆ようかんなど。価格帯は1,000円前後が平均で、お手頃感があります。 「兵庫県立フラワーセンター」秋の名物、ダリアが見頃になるのは、9月下旬〜10月。100品種1,500株と、多様なダリアが植栽されているので、育ててみたい品種に出合えるかもしれません。ほかにも、この時期はコスモスなども見ごたえがあります。 菊は日本を象徴する花の一つで、大菊や盆栽など丹精込めて栽培する趣味人が多いことでも知られています。「兵庫県立フラワーセンター」では、毎年秋に兵庫県の菊愛好家が出品する「兵庫県連合菊花展覧会」を開催。美しい葉のつき方、ふっくらとした花姿、全体のバランスが整った草姿など、それは見事な菊が出揃います。 2018年の「第41回兵庫県連合菊花展覧会」は、10月14日〜11月18日開催予定。11月1日が審査日なので、どの菊が最も評価されたのか、奥深い世界を覗いてみましょう。 「兵庫県立フラワーセンター」の落葉樹が紅葉し、見頃を迎えるのは11月上旬。モミジ、ケヤキ、ドウダンツツジなどが鮮やかに発色し、園内をオータムカラーに染め上げます。写真はモミジバフウの並木が美しい「彫刻の道」の景色です。 「兵庫県立フラワーセンター」の大温室は1,971㎡の広さを誇り、大小7つの部屋に分かれています。開花期の異なる植物を集め、華やかに咲かせる「四季の花室」、色とりどりのベゴニアが約300鉢も並ぶ「球根ベゴニア室」、トロピカルな雰囲気で約150種の熱帯花木などが彩る「熱帯植物室」、インテリアプランツのゲスネリアが約300鉢も集まる「ゲスネリア室」、野生種、園芸種ともに楽しめる「ラン室」、ここでしか見ることのできないレア品種も揃えた60種500株の「食虫植物室」、そして四季の草花の鉢などが並ぶ「フラワーホール」です。 写真は1〜4月が一番華やぐ「ラン室」で、コチョウランが咲き競っています。多い時期には1,000鉢ものランがお目見えします! 地元の旬の食材を使ったおもてなし料理 充実のレストランで美食を満喫! 「兵庫県立フラワーセンター」には、喫茶や食事が楽しめる「レストハウスフルーリ」があるので、歩き疲れたらぜひご利用を。喫茶は10:00〜16:00、ラストオーダー15:30、食事は11:00〜14:00。客席は1階、2階ともに100席あります。ただし、冬期などの閑散期は休業しているので、出かける前にチェックしておきましょう。 「レストハウスフルーリ」の価格帯は1,000〜2,600円。人気メニューは「季節のおすすめ膳」1,800〜2,000円(季節により内容及び価格変更あり)、「志方牛ステーキ御前」2,600円、「飯森(豆腐料理)」1,650円です。写真はたくさんのおかずを少しずつ楽しめる「十六彩膳」2,500円。 Information 兵庫県立フラワーセンター 所在地:兵庫県加西市豊倉町飯森1282-1 TEL:0790-47-1182 http://www.hyogo-park.or.jp/flower-center/ アクセス:中国自動車道 加西I.C.から南へ3km オープン期間:通年 休園日:毎週水曜日(水曜日が祝日の場合は翌日)、12月28日~1月1日、チューリップまつり・菊花展覧会開催期間中は無休 営業時間:9:00〜17:00(入園は16:00まで) 料金:一般500円、70歳以上250円、障がい者250円、高校生以下無料 駐車場:バス21台、乗用車570台(無料) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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北海道

上野ファームの庭便り「鮮やかな夏を彩る、エキナセアの世界」
夏の庭に欠かせない主役花、エキナセア 強い日差しにも負けず、上野ファームの夏の庭をいつも元気に彩ってくれる植物はいろいろありますが、その中でもエキナセアは、夏の主役ともいえるくらい華やかで鮮やか。上野ファームの夏の庭には、もはや欠かせない存在です。 夏から秋の終わり近くまで咲き続ける開花期の長さも魅力です。多少の雨であれば倒れることも少なく、病害虫にも強いので、庭づくりを始めたばかりの方でも気軽に植えられる、オススメ植物です。エキナセアと聞くと、ピンクのイメージですが、最近では、黄色やオレンジなどの色のバリエーションも増えて、八重咲き品種などもあり、さまざまな植物との組み合わせを楽しめるようになりました。 以前は、エキナセアは“背が高くて使いにくい”というイメージをもっていた方も多かったようですが、最近では、背の低い品種が多く登場しているので、いろいろな草丈が選べるようになりました。ひざ下くらいの草丈であれば、倒れにくく庭でも場所を取らずにコンパクトに楽しめます。エキナセアは、数年育ててもそれほど株が大きくなる植物ではないので、ボリューム感を出したい場合は同じ品種を数株まとめて植えると、こんもりしたボリュームでより華やかなコーナーをつくることができます。 白のエキナセア‘ベイビーホワイトスワン’と組み合わせた優しいブルーのアスター。夏こそ鮮やかな色でまとめたほうが、強い日差しに負けません。 濃い色は使いにくいと思われがちですが、ちょっとした庭の差し色としてビビッドな色をピンポイントで使うと、ガーデンにスパイスが入ったように引き締まります。 ダイナミックな群植を楽しむ 限られたスペースの庭に植えるときは、コンパクトにまとまるような品種を選びますが、上野ファームでは、エキナセアの色の迫力をより魅力的に見せるために、群れで咲くようなイメージで植栽している場所もあります。いつも見慣れているシンプルなエキナセアも、組み合わせやボリューム次第で新しい表情が生まれます。 ピンクとも相性がいい、ブルーのエリンジウムやアリウムをパレットの絵の具のように混ぜ合わせて。エキナセアの背景に見えるピンクの花はフィリペンデュラ‘マグニフィカ’。 白とピンクのエキナセアの間に、オーナメンタルグラスを入れることで、より花の輪郭がはっきりします。濃い色合い同士の組み合わせも、間にグラスを入れることで庭の表情が柔らかになります。 よりナチュラルに楽しむ 派手な組み合わせだけでなく、オーナメンタルグラスと合わせて、草原の中の野草のようなイメージで表現することができるのもエキナセアの魅力です。シンプルな組み合わせでも、エキナセアは十分に魅力を発揮します。 オーナメンタルグラスから透けて見えるエキナセアも風情があります。 オミナエシとグラスのシンプルな組み合わせ。素朴な花と一緒に合わせてもなじみます。夏も終わりに近づくと、エキナセアの鮮やかな色が次第に抜けて色あせてきますが、アンティークカラーに変化してゆく様子もとても魅力的に見えます。花が終わって秋にシードヘッド(タネの頭)になった姿もまた違った魅力があるので、ぜひ最後まで楽しみ尽くしてみてください。 シードヘッドだけになったエキナセア。最後は色ではなく、形としてドライフラワーのように楽しむ観賞にもエキナセアは向いています。 ボーダーでも彩りを添えてくれる、エキナセア‘ピンクダブルデライト’(手前)。淡いピンクのソープワートと一緒に爽やかに。 夏の庭を華やかにも、ナチュラルにも自在な表現で使える植物はなかなかありません、魅力的なエキナセアの新しい世界、ぜひ皆様もお庭で楽しんでみてください。 北海道の夏の庭の本番はこれからです。夏も途切れることなくさまざまな花がボリュームいっぱいに咲く北国の庭に、ぜひ遊びにいらしてください。 夏から秋も魅力がいっぱいの「北海道ガーデン街道」もチェックを!
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イギリス

イギリス「ペンズハースト・プレイス・アンド・ガーデンズ」の庭【世界のガーデンを探る旅12】
ガーデニングの本場といわれるイギリスの庭の発祥とは イギリスの庭の歴史はいつ頃から始まったのでしょう? これまで、イスラムの庭からイタリアルネサンス、そしてフランス、オランダとヨーロッパ大陸での庭の連綿たる歴史を見てきましたが、イギリスではどうだったのでしょうか? そもそもこの地には、石器時代から先住民が住んでいました。有名なストーンヘンジはその頃(紀元前2500〜2000年頃)のものです。その後、ケルト人が紀元前から住み着きました。紀元後になるとローマ帝国に侵略(西暦43年)され、その後4世紀まで支配されます。今でもイギリス南部にはローマ時代の遺跡や村が所々に残っています。その後、ゲルマン人やバイキングなど、さまざまな外圧、支配を受けながら現在の大英帝国(Great Britain)になっていきますが、その辺りの詳しい説明は、歴史の教科書に任せましょう。 イギリスに現存する庭の中で、最も古いものの一つ そこで今回ご紹介したいのは、僕の大好きな庭の一つ「ペンズハースト・プレイス・アンド・ガーデンズ」です。きれいに手入れが行き届いたこの庭は、イギリスで現存する庭の中で最も古いものの一つとされています。 ここでもう少しイギリスの歴史についてお話ししましょう。イギリスは11世紀から約200年に渡って行われた十字軍に参加し、帰還した兵士たちがイスラムの文化をいろいろ持ち帰ったと思われますが、この庭の歴史がはっきりしてくるのは、その後半の13世紀のイタリアルネサンスが始まった頃からです。ペンズハースト・プレイスがあるこの地は豊かな丘陵地帯で、ロンドンから馬で半日の距離にあるという立地条件も含めて、別荘としても便利なことから選ばれたようです。建物は14世紀にほぼでき上がり、建物の前にあるイタリア式整形庭園と、そこに続くウォールガーデンがつくられたようです。また、この庭は多くの詩や物語の中にも読まれていることでも有名です。 ペンズハースト・プレイスの散策を始めましょう 1554年に植えられたという記録が残るオークのアプローチです。このアプローチを歩いていくだけで、左側の城壁の向こう側に展開する庭への期待感が、歴史をバックにした重々しさとともに強まります。 屋敷の前は、この地の緩い傾斜を巧みに利用した一種のサンクンガーデン(沈床式花壇)になっています。この庭は整形式の中でも正方形に近い形で、草ツゲの段になった低い刈り込みの緑とピンクのバラを組み合わせて、他では見られない独特な雰囲気を醸し出しています。庭の向こうに低く連なる遥かな丘陵を巧みに借景として利用することで、高い場所に位置するこの地が、大きく広がる天上の楽園(ユートピア)を表しているような気がします。 庭の横に置いてあるベンチが、いかにもイングリッシュガーデンといった趣です。 イギリスらしい色彩調和が随所に見られるボーダー花壇 城壁の南側に続くボーダー花壇には、日本ではちょっと考えられない、日向が好きな植物と日陰が好きな植物の組み合わせ。淡い色のヘメロカリスが咲き、その足下には斑入りのホスタやボリジ、ニコチアナ、ラベンダーなどが咲いています。もうすぐアガパンサスも咲きそうです。ボーダーの左側には、イチイの生け垣がその背後の花壇を隠すように茂っています。 ボーダー花壇の端には小さな池があり、屋敷の明るい色の石壁に銅葉のノムラモミジが映え、広い空間のアクセントになっています。スクエアのポットの中心にはスタンダード仕立ての月桂樹、その株元に薄黄色のペチュニアと控えめな紫のロベリアを組み合わせる色彩センスは、イギリスらしさを感じさせます。 ここでは、赤いスモークツリーを中心に、ペンステモンや黄花のツキミソウ、白いフランネル草や2種類のゲラニウム、金露梅に白い花のブッシュはエリカでしょうか? 低木と宿根草がうまく立体的に混じり咲いています。左側はアスター、アルケミラモリス、そして自然樹形に伸びた白バラが見えます。 刈り込んだイチイのヘッジ(生け垣)に囲まれたバラ園 イチイの生け垣を抜けるとバラ園があります。白バラ‘アイスバーグ’のスタンダード、その株元はシルバーリーフのラムズイヤーがカーペットに。視線の先には、アイストップとしてアイボリーホワイトのベンチが配され、素敵な空間を演出しています。 ラムズイヤーのカーペットの左右には、きっちり四角くトリミングされた赤い葉のバーベリス(メギ)の生け垣があり、中にはオレンジ色のバラが植えられています。バラ園の中に、銅葉のバーベリスを使い、さらにはオレンジ色を組み合わせる例は他に見たことがありません。僕個人としては、もう少しヘッジを低く刈り込むか、バラをハイブリッドティーのような背の高い種類にすれば、より調和の効果があるような気がします。 小道を進むと、優しいカーブを描く低いツゲの模様の繋がりが楽しい細長いガーデンが。ヘッジの中にラベンダーが咲き、トーテムポールを思わせるモダンなオブジェがアクセントになっています。ポールの頭には、赤いドラゴンやその他の動物が象られていますが、もしやこのシドニー家の家紋の動物でしょうか? イギリスでもっとも古いとされる庭で、こんなモダンな演出に出合ったことに驚きました。ツゲの外側は、背丈より高く仕立てられたリンゴやナシのエスパリエで視線が遮られていることで、よりポールが引き立って見えます。 今見た庭から次の庭へと導く道の左右には、きれいに刈り込まれたヘッジの壁があります。これは、前の庭のイメージをシンプルな空間に入ることでリセットさせて、次の庭へ進むことができるイギリス独特の仕掛けです。 このエリアは、緑のイチイの生け垣で周囲をぐるりと囲み、真ん中に真四角の池があるというシンプルな庭です。池に咲く睡蓮が、この庭デザインの人工的な構図を和らげてくれています。庭としては、ある意味とても大胆なデザインです。一条の噴水が何か物悲しげな感じがします。 ペンズハースト・プレイスで一番華やかな庭 睡蓮が咲く池の隣のエリアは、なんとユニオンジャックの庭です。青地に白のクロスのスコットランド、白地に赤のクロスのアイルランド、白地に赤の十字のイングランドの旗が重なってできた現在のグレートブリテン及び北アイルランド連合王国(イギリスの正式な国名)の旗が浮かび上がる花壇です。何度か訪れたなかでも、初めてユニオンジャックに見えた時の写真です。紅白のバラとイングリッシュラベンダーが同時に咲くことで成立する植栽デザイン。この遊び心、なかなか真似できませんね。 さまざまな庭デザインのバリエーションが敷地内に凝縮している「ペンズハースト・プレイス・アンド・ガーデンズ」。14世紀に建てられた邸宅としては保存状態もよく、内部の部屋も一般公開されている観光名所で、貴族の日常がどのようなものであったかを知ることができる貴重な場所。いにしえに思いを馳せながら庭をあとにすると、駐車場横には、子どもたちの歓声が響く賑やかなアドベンチャー公園が。その元気な声が、人々に愛されている生きた場所なんだと、この庭の今を感じさせてくれました。
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神奈川県

世界バラ会連合会議で「横浜イングリッシュガーデン」が栄誉ある賞を受賞!
2018年は世界バラ会連合発足50周年の記念の年 1976年に選出された「バラの栄誉の殿堂」第1号‘ピース’。Photo/Patrick Civello/Shutterstock.com 1968年にイギリス、ロンドンにて発足し、今年で50周年を迎えたバラ愛好家たちの世界的組織「世界バラ会連合(The World Federation of Rose Societies ※以下WFRS)」は、バラに関する知識や情報交換などを目的として、会議や展示会を行い、3年に一度、バラの歴史が長い国・都市で「世界バラ会連合会議(World Rose Convention)」を開催し、「バラの栄誉の殿堂」や「優秀庭園賞」などの賞の付与なども行っています。発足50周年となる2018年は、6月28日~7月4日にデンマーク・コペンハーゲンを開催地として大会が行われました。 大会で注目される権威ある賞「バラの栄誉の殿堂(Rose Hall of Fame)」 1983年に選出された「バラの栄誉の殿堂」品種‘アイスバーグ’。Photo/alybaba/Shutterstock.com 2006年の大阪大会では、写真の‘ピエール・ドゥ・ロンサール’と‘エリナ’が「バラの栄誉の殿堂」として選出されました。Photo/3and garden 大会で授与される注目の賞の一つである「バラの栄誉の殿堂」は、世界中のどの環境でも育てやすいことや、誰が見ても美しい品種であること、多くの国で長く愛されていることなどが審査基準となり、第1回の‘ピース’をはじめ、‘アイスバーグ’や‘ニュー・ドーン’、‘ピエール・ドゥ・ロンサール’など、日本でも人気がある品種が多数選ばれています。 Photo/Patrick baehl de Lescure/Shutterstock.com 2018年に「バラの栄誉の殿堂」に選ばれたのは、2000年にアメリカのラドラー氏によって作出された‘ノック・アウト’です。バラにとってダメージとなる黒星病やうどんこ病に強い抵抗力があり、地域によっては無農薬栽培で育てることができるほど耐病性に優れています。また、春から晩秋まで咲き続けるブッシュローズ(木立性)で、バラには珍しく花がら摘み以外のメンテナンスが少なくてよいので、バラ栽培の初心者だけでなく、公共空間の景観をつくるバラとしても活用されています。 優れた庭園に贈られる「優秀庭園賞」 2018年に「優秀庭園賞」に選ばれた神奈川県横浜市の「横浜イングリッシュガーデン」。 大会で授与される「優秀庭園賞」は、数あるローズガーデンの中から、歴史的、教育的、景観的な各視点により特に優れた庭園に贈られるもので、庭園としての美しさに加え、メンテナンスの質がよいことや、学術的に価値がある品種を栽培しているなどの総合的な評価により選ばれます。 「優秀庭園賞」の表彰は、1998年からスタートし、2018年開催のコペンハーゲン大会までで世界各地の64カ所の庭園が受賞。日本では、岐阜県「花フェスタ記念公園」、広島県「福山市バラ園」、大阪府「靭(うつぼ)公園」、東京都「神代植物公園ばら園」、千葉県「京成バラ園」、千葉県「佐倉草ぶえの丘バラ園」、静岡県「アカオハーブ&ローズガーデン」の7つの庭園が受賞してきました。 日本で8つめの「優秀庭園賞」は神奈川「横浜イングリッシュガーデン」 日本ばら会から推奨を受けたWFRSのケルビン・トリンパー会長とヘルガ・ブリシェ元会長は、2017年11月に横浜イングリッシュガーデンを視察訪問しました。その際、ケルビン会長からあがった評価点は以下の項目でした。 6,600m² と小さな庭園であるが、バラだけでなく数多くの花木や宿根草、一年草などが組み合わされた美しいデザインである。 オールドローズ、つるバラ、シュラブ、各種の四季咲き性のバラや野生種のコレクションは、1,800品種を超え、どれも良好な生育をしていて、管理水準が非常に高い。 自国品種の保護の観点からも、その中に500種以上の日本のバラのコレクションが含まれていることは、とても素晴らしい。 品種プレートは正確に表示されていて、来園者にも分かりやすくなっている。 季節のテーマに合ったプログラムや子ども向けの教育プログラムを運営している。 これらの評価により見事受賞となった神奈川「横浜イングリッシュガーデン」から、2012年よりスーパーバイザーとしてガーデンデザイン、植栽管理を行っている河合伸志さんが、デンマーク、コペンハーゲンへ駆けつけ、第18回「世界バラ連合」、「優秀庭園賞」授与式に出席しました。 壇上にて賞状を受け取る河合伸志さん。 河合伸志さんとWFRSのケルビン・トリンパー会長の記念ショット。 これまで「優秀庭園賞」を受賞してきた世界各地の庭園に、「横浜イングリッシュガーデン」が仲間入り。WFRSのホームページ内「Award of Garden Excellence」でも紹介されています。 この度見事受賞となった「横浜イングリッシュガーデン」では、先にご紹介した「バラの栄誉の殿堂」入りのバラも多数見ることができます。 横浜イングリッシュガーデンの一年を追った『横浜イングリッシュガーデンの四季【花巡り・ガーデン案内 〜神奈川〜】』の記事もご覧ください。
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北海道

花の庭巡りならここ! 北海道スケールの花畑を愛でよう「展望花畑 四季彩の丘」
2001年6月にオープンした「展望花畑 四季彩の丘」は、14万㎡もの広大な敷地を持つ観光ガーデン。北海道美瑛地方特有の丘陵と大雪山連峰を背景に、季節の花々で絨毯のように彩るダイナミックな景色が大きな魅力です。 大小約30に畑が分割され、約30種類45万株の草花を植栽。チューリップからムスカリ、パンジー、ポピー、ルピナス、マリーゴールド、サルビアへと、季節が進むたびに見頃の花も徐々に変化していきます。年間80万人が訪れる、北海道屈指の観光ガーデンに、ぜひお出かけください! さわやかな北海道の夏空のもと 壮大に広がる花のカーペット 「展望花畑 四季彩の丘」の一番の見頃は7〜8月。写真は中央エリアで、ピンクの濃淡のクレオメが植栽されています。抜けるような青空のもと、地平線まで広がるような花畑に、北海道ならではのスケールの大きさを実感することでしょう。花畑をひと通り巡るのにかかる時間は、大人の足でゆっくり歩いて1時間くらい。見る角度や高さによって印象も変わってくるので、訪れた記念にぜひ写真をたくさん撮りましょう。 写真は「展望花畑 四季彩の丘」の中央エリア。マリーゴールド、シルバーダスト、青と赤のサルビアが整然と植栽され、遠くから見ると美しいストライプ状になります。どの季節に訪れても素晴らしい景色が見られますが、毎年同じ景色にならないように、植える花の場所を変えているので、リピーターも多いとか。外国からのお客様が多く、写真映えするように色鮮やかな配色を心がけているそうです。 ちなみに、花畑へのペット同伴はOK、飲食の持ち込みは不可となっています。 ノロッコ号に乗っての周遊もオススメ! アルパカと触れ合える牧場エリアも近接 広大な敷地、かつ傾斜のある丘のため、普段歩き慣れていない方にはノロッコ号(トラクターバス)の利用がオススメ。園内を15分かけて一周し、中央の高台まで行くと、フォトジェニックな写真が撮れるスポットで5分ほど停車します。利用料金は、大人500円、小・中学生300円、幼児無料。カートの貸し出しも行っています。 「四季彩の丘」の入り口近くには、アルパカ牧場エリアがあります。入場料は大人500円、小・中学生300円、幼児無料。柵越しに餌やり体験(餌100円)ができ、モフモフの毛をなでて触れ合うこともできます。愛らしいクリクリの瞳、ふわふわの毛並み、シャイながらも好奇心旺盛なアルパカに癒されること間違いなしですね(アルパカ牧場はペット同伴不可)。 自社農園で採れた新鮮野菜も販売! メニュー充実のレストランにも立ち寄ろう 「四季彩の丘」には、売店、レストランもあります。1階が売店で、おみやげコーナーにはラベンダーグッズ、ポストカード、北海道限定のお菓子や、リースなどクラフト雑貨も揃い、自社農園の「四季の丘FARM」で採れた農産物も販売しています。2階がレストランで、客席数は100、営業時間は8:30〜18:00(ラストオーダー17:00)、夏の最盛期は10:00〜15:00(混み状況で異なります)。 1階の売店では、ソフトクリーム(300円)も販売。ミルク、ラベンダー、メロンの3種類があります。オススメは北海道のおいしいジャガイモでつくられる「丘のじゃがいもコロッケ」1個130円。男爵薯とキタアカリの2種があります。屋外にベンチがあるので、気軽におやつ感覚でどうぞ。 2階のレストランでは、北海道ならではのメニューが目白押し。なかでもスープカレー(1,100円)、彩りうどん(700円)に人気があります。写真は鹿ジンギスカン定食(1,000円)。花畑の景色を楽しんだあとに、地元の名物料理を味わえるのも魅力の一つですね。 Information 展望花畑 四季彩の丘 所在地:北海道上川郡美瑛町新星第三 TEL:0166-95-2758 https://www.shikisainooka.jp アクセス:公共交通機関/JR富良野線「美馬牛駅」より徒歩25分、JR富良野線を「美瑛駅」より車で12分(タクシー在中あり) 車/旭川方面からは国道237号線から道道824号線に入り、美馬牛駅方向へ。 富良野方面からは国道237号線より、トリックアート美術館を目印に右折し直進。 オープン期間:通年 休園日:12月31日、1月1日 営業時間:9:00〜17:00(4〜5月、10月、※アルパカ牧場は営業時間の30分前で閉園) 8:30〜18:00(6〜9月) 9:00〜16:30(11月) 9:00~16:00(12月〜翌2月) 9:00~16:30(3月) 料金:無料(花畑維持管理費用として、任意で一人200円の募金をお願いしています) 駐車場:大型バス30台、乗用車300台(無料) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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イギリス

ガーデナー憧れの地「シシングハースト・カースル・ガーデン」誕生の物語
詩人のヴィタと外交官のハロルド この類まれなる庭をつくり上げたのは、詩人、作家として活躍した妻のヴィタ・サックヴィル=ウェストと、外交官で作家でもあった夫のハロルド・ニコルソン。確かな審美眼を持ち合わせた2人は、設計や植栽に互いの個性を反映させながら、静かな美しさに満ちた庭景色を実現していきました。今ではよく見られる、白花で埋め尽くされたホワイトガーデンのスタイルも、彼らが始めたものです。 ともに貴族の出で、高い教養を持ったヴィタとハロルドは、若くして出会い、結婚しました。2人は因習にとらわれず、互いが恋人を持つことに寛容な新しい結婚形態を認め、それぞれ同性の恋人を持つこともありました。 ヴィタの恋人の一人は、作家のヴァージニア・ウルフでした。ウルフの小説『オーランドー』に登場する、性別と時空を超えて旅をする主人公は、ヴィタがモデルになっています。時に、恋人との恋愛に身を焦がすこともあったヴィタ。しかし、ヴィタとハロルドの2人はそれでも深く愛し合い、特に、シシングハーストの庭をともに創作することで強く結びついていたといいます。 廃墟との運命的な出合い 1930年のある日、ヴィタとハロルドは、廃墟と化していたシシングハースト・カースルに出合います。むき出しの土には、がれきの山が置かれ、15世紀末に建てられた歴史ある建物も、到底人が暮らせるものではありませんでした。16世紀のエリザベス朝にはイングランド女王を迎えるほどに立派だったマナーハウスは、18世紀には牢獄、19世紀には救貧院、20世紀には陸軍用地に使われ、打ち捨てられた存在になっていたのです。 しかし、ヴィタにとってこの廃墟との出合いは運命的といってもいいものでした。レンガづくりの古びた建物と、どこからでも見えるエリザベス朝時代の古い塔。彼女にはきっと、シシングハーストの未来にある、美しい庭景色が見えたのでしょう。「一目見るなり、恋に落ちた。私にはここがどんなところか分かった。眠り姫の城だ」と、書き残しています。 ピンクがかった古いレンガ塀を熱心に見つめながらヴィタがつぶやいた「私たちはここでとても幸せに暮らせるはずよ」という言葉に、当時13歳だった息子のナイジェルは驚きます。彼には、とてもそう思えなかったからです。 ヴィタとハロルドは、同じ年にシシングハーストの建物とその周辺の広大な土地を購入します。そして、契約を交わしたその日に、バラ‘マダム・アルフレッド・キャリエール’をサウスコテージの扉の脇に植えて、庭づくりの一歩を踏み出しました。それから長い年月を費やして、建物の大改修と庭の創造に取り組んだのです。 ハロルドによる古典的で優美な設計 庭の設計はハロルドが担当し、植栽は主にヴィタが行いました。ハロルドは、直線を用いた、古典的でありながらも洗練された構造を好みましたが、しかし、芝生や生け垣を設計通りに実現するのはとても難しいものでした。 また、図面と向き合い、難解なパズルを解くように何週間も案を練っているうちに、ヴィタが小径となるべき場所に樹木や灌木を植えてしまうこともありました。 ハロルドは伝統的な整形式庭園の様式を重視していました。「芝生は私たちのガーデンデザインの基本だ」。「よきイングリッシュガーデンの土台となるのは、水、樹木、生け垣、そして芝生だと、ガーデンデザイナーなら認めるべきだ」。彼はそう書き残しています。 かつて広大な鹿狩場を見渡すために建てられた塔は、屋上まで上ることができ、そこから庭園全体を見下ろすことができます。ハロルドがつくり上げた庭の構造を理解する、絶好のビューポイントです。 レンガ塀や生け垣で仕切られたガーデンは小部屋が連なるように配置され、ところどころに、高いイチイの生け垣に挟まれて一直線に伸びる‘ユー・ウォーク’の小径や、円形の生け垣といった、ダイナミックな構造がつくられているのが分かります。 シシングハースト・カースルの敷地は450エーカー(東京ドームおよそ39個分)という広さがあり、庭園は、森や小川、農地の広がる敷地の、ほぼ中央に位置しています。ケント州に生まれ育ったヴィタは、この地の森林風景を深く愛していました。庭が周囲の景色と一体となっていることは、2人にとって大切なことでした。 色彩が躍るヴィタの植栽 才能あるアマチュア・ガーデナーだったヴィタは、きっちりとした性質のハロルドとは対照的に、完璧を求めず、本能的に庭に向き合うタイプでした。植栽スタイルも、土が見えるのがとにかく嫌で「どんな隙間にもどんどん詰め込む」というもの。草花がこぼれんばかりに茂り、色彩があふれ出すような植栽を好みました。 中庭にあるパープル・ボーダーでも、ヴィタは巧みに色彩を操って、印象的な花景色をつくりました。紫色の花壇といっても、紫色の花ばかりではなく、ピンク、ブルー、ライラックといった色をうまく取り混ぜて、色彩の広がりを出しています。 ハロルドによる洗練された構造設計と、感性豊かで情熱的なヴィタの植栽。この2つの要素が相まって、他にはないシシングハーストの魅力は生まれています。 永遠に生き続ける花園 1937年、2人は初めて、2日間の一般公開を行いました。ヴィタはまた、1947年から亡くなる前年まで、英オブザーバー紙で〈イン・ユア・ガーデン〉という人気ガーデンコラムを毎週書き続け、ローズガーデン、サウスコテージガーデン、ホワイトガーデンといった、彼らが生み出した独創的なシーンは、時とともに知られるようになりました。 ヴィタは1962年に70歳で亡くなり、シシングハーストを息子のナイジェルに遺します。庭を分身のように思っていた生前のヴィタは、他人の手に庭を渡すことを頑なに拒んでいました。しかし、莫大な相続税を課せられたナイジェルには、周辺の農地を売って屋敷と庭だけを残すか、もしくは、英ナショナル・トラストにすべてを譲るかという選択肢しか残されていませんでした。 ナイジェルは、両親の手による偉大な創造物を、周辺の景色とともに守っていくよう英ナショナル・トラストを説得し、1967年、ついに地所を譲りました。それは、ヴィタの本意ではなかったかもしれません。しかし、彼女の愛した花園は、こうしてトラストによって守られ、生き続けることになったのです。 取材協力 英国ナショナル・トラスト(英語) https://www.nationaltrust.org.uk/
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群馬県

花の庭巡りならここ! 四季折々の花が紡ぐように咲く美しい森「赤城自然園」
「赤城自然園」は、「豊かな森を次世代に引き継ぐ」を理念に、約40年前から植生に手を入れて整備されてきた森です。60haもの広大な敷地は、「自然生態園」「四季の森」「セゾンガーデン」の3つにゾーニングされており、すべてを巡るには、大人の足でゆっくり歩いて2時間くらいかかります。 園内の森には、花木や山野草、宿根草、球根植物が絶妙なバランスで植栽されており、四季折々の開花リレーでつながれて、いつ訪れても見頃の花に出合えます。多くの植物の中でも改良された園芸品種は取り入れず、森の中でこそ映える在来種の楚々とした魅力を味わえるのも特徴。植物園や観光ガーデンとは趣が異なり、人工的な添景物を排した自然そのものの景観が、この「赤城自然園」の魅力です。ハイキングに出かけるつもりで、野鳥の声にも耳を傾けつつ、四季折々の花の景色を楽しみましょう。 12万球を超えるカタクリが群れ咲く姿を堪能! 5月はツツジやシャクナゲで華やぐ景色に 5月になるとツツジやシャクナゲをはじめ、たくさんの花が咲き競い、特に華やぐ季節です。「赤城自然園」は標高600〜700mで、低地と高地の中間くらいの環境。そのため、高地で見られるシラネアオイやオオヤマレンゲ、低地で見られる12万球を超えるカタクリなどが共生する景色を楽しめます。 「赤城自然園」の植物は、大本類152種、草本類510種が確認されています。ほかに鳥類77種、哺乳類15種、昆虫類が1,810種など。 新緑の季節は雑木林の緑陰の下を歩くのはすがすがしく、植物の息吹からヒーリング効果を得られることでしょう。整備された遊歩道は約10㎞に及んでいますが、それほど疲れを感じません。なぜなら、アスファルトではなくバークチップ(木の皮)が敷き詰められているため、ふかふかの感触で足あたりがよいからです。ぜひ歩きやすい服装&靴を着用し、時間を忘れて散策を楽しみましょう。 一日2回開催されるガイドツアーは内容充実! 子どもと一緒に生態系のサイクルを学ぼう 「赤城自然園」では、毎日ガイドツアーが行われています。一日2回の開催で、スタート時間は10:00と13:00、無料です。15名定員で、当日の台帳に申し込んだ順の早い者勝ちなので、参加希望の方はお早めに。約1時間かけて園内を散策し、見頃の花をはじめ鳥や昆虫などについても詳しく解説してもらえます。季節やガイドをするスタッフによって解説内容も変わるので、何度参加しても楽しめますよ。 7月中旬〜8月上旬になると、アジサイ類が見頃を迎えます。アジサイは、さんさんと日差しが照りつける日向よりも、雑木の足元など半日陰のしっとりとした場所でこそ魅力が増すもの。適した環境でのびのびと生育するアジサイの姿を見に出かけましょう。夏は希少で人気が高く、「森の妖精」と呼ばれるレンゲショウマが園内全域で観られるのをはじめ、ヤマユリやキツネのカミソリ、カワラナデシコ、キキョウなどが次々と開花し、その清楚な花姿を楽しめます。 お子さんのいる家族なら、夏休みを利用して園内の「自然生態園」ゾーンをじっくり回ってはいかがでしょうか。「昆虫広場」や「昆虫館」「カブトムシの森」「チョウのはらっぱ」「トンボ池」「ミズスマシの池」などがあり、生態系のサイクルを学ぶことができます。「赤城自然園」には年間約8万人の来園者があり、毎週のように訪れるリピーターもいるとか。自然に触れる機会が少なくなっている現代、手入れの行き届いた豊かな森で、子ども時代の思い出を重ねていくのに理想の場所ではないでしょうか。 秋の山野草に、紅葉が織りなす色鮮やかな絶景 深まっていく秋の景色を満喫しよう 秋はオミナエシ、ワレモコウ、ツリフネソウ、キバナアキギリ、フジバカマ、ホトトギスなどが次々と開花をつなぎ、オータムカラーのしっとりとした風情を楽しめます。初秋には、1,000㎞以上も移動するといわれるチョウ「アサギマダラ」が数千羽もやってきます。その生態はいまだよく分かっておらず、「赤城自然園」では毎日マーキング調査を実施。そのマーキング体験も、期間中は毎日無料で参加できます。美しいチョウの姿を子どもと一緒に観察するのもいいですね。 そして森の景色が黄色や赤に染まる紅葉の見頃は10月下旬〜11月中旬。少し標高の高い場所ならではの、発色の素晴らしい紅葉シーンをぜひ写真に収めてください。 備え付けられたベンチに座って、鮮やかな紅葉を心ゆくまで眺めていたいところですが、「赤城自然園」内には、レストランやカフェなどの飲食店は入っていません。飲食物の持ち込みはOKなので、ハイキングに出かけるつもりで、各自飲み物やお弁当、おやつを持参しましょう。飲食できるのは、6カ所の休憩広場、9カ所の東屋です。ゴミは各自持ち帰ることも忘れずに。園内へのペット同伴は不可、禁煙です。 「赤城自然園」では、12月〜翌年3月の冬季期間中も、土・日曜のみオープン。雪景色の森のなか、野鳥や動物たちがたくましく生き抜く姿を見ることができます。年間パスポートが3,000円で発行されているので、四季を通して出かけるのもオススメです。 Information 赤城自然園 所在地:群馬県渋川市赤城町南赤城山892 TEL:0279-56-5211 http://akagishizenen.jp アクセス:公共交通機関/JR渋川駅よりシャトルバス、またはタクシーで約20分 車/関越自動車道赤城I.Cより約10分 オープン期間:通年 休園日:火曜(5月は無休)、12月〜翌年3月平日、年末年始 営業時間:9:00〜16:30(最終入園15:30) 料金:大人(高校生以上)1,000円、子ども(中学生以下)無料 駐車場:400台(無料) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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海外

旅して感じたイングリッシュガーデンと日本庭園の共通点
日本庭園を巡って感じた共通点を探る 2年前の6月、イングリッシュガーデン巡りの旅を終えた時、なぜか心にふと芽生えた日本庭園への想い。その理由を確かめるために、翌年、同じ時季に京都の日本庭園を巡りました。 イングリッシュガーデンと日本庭園。それまでは、どちらかというと接点がないように感じていましたが、実際に訪れてみると、いくつか共通点を見つけることができました。 重厚な門構え 湖水地方のホッカー・ホール&ガーデンの扉。 訪れた庭園の入り口には、どこも素晴らしい門構えがありました。中でも印象的だったのが湖水地方のホッカー・ホール&ガーデンと、大徳寺の塔頭高桐院です。ホッカー・ホール&ガーデンは、重厚な褐色の石壁とエレガントな鉄製の門扉が、いかにも貴族の庭園らしく、シンメトリーに設置された品のよい色彩のコンテナとオブジェにイギリスらしさが溢れていました。 京都、大徳寺の塔頭高桐院の入り口。 高桐院は、大胆に組まれた大木と瓦が力強く凛とした佇まい。ひと枝ひと枝手入れされた松とみずみずしい苔の緑が鮮やかでした。石と木、鉄と瓦、素材やデザイン、植栽の相違はありますが、どちらも堂々たる風格。互いの伝統と美意識がひと目で伝わってくる門構えです。 また、その他にも、一直線に伸びた石畳と芝生アプローチ、竹と常緑樹のシンプルな植栽など、類似した景色をいくつか見ることができました。 歴史ある建物と植栽の調和 イギリス、ヒドコートマナーガーデン。 イギリス、キフツゲートコートガーデン。 回訪れたイングリッシュガーデンは、20世紀のイギリスを代表する有名な庭園ばかり。庭園内の建物も100年以上経過した歴史あるものでした。例えば、ヒドコートマナーガーデンの茅葺きの家、シシングハーストカースルガーデンの塔や母屋、キフツゲートコートガーデンやバーンズリーハウスガーデンのエレガントな館など。古い雰囲気を損なうことなく修復された建物が、イギリスの風土に合った草花のクラシカルな植栽と調和し、得も言われぬ美しさを醸し出していました。 イギリスの庭から見た建物との調和。 平安神宮神苑の橋殿。 同じように、日本庭園でも歴史ある貴重な建物を見ることができました。京都御所から移築された平安神宮神苑の橋殿と尚実館、南禅寺の山門や永観堂の本堂です。ここでは、松や桜、モミジなどの日本古来の樹木が多用されていました。選び抜かれた植物と色彩を抑えた植栽が、格式高い日本建築と調和し、清らかで凛とした空気が漂っていました。 歴史ある建物とその国の風土に合った植栽が調和しているからこそ、このような素晴らしい景観が生まれるのですね。 魅力ある壁面 イングリッシュガーデンの魅力の一つは、壁面の華やかさ。味わいある蜂蜜色や褐色のレンガ壁を、さらに魅力的に演出しているのが、つるバラやクレマチス、つるアジサイなどのつる性植物です。壁一面に誘引された満開の花々が咲く様は、もはや芸術。その美しさに幾度となく目を奪われました。 日本庭園の壁面は、主に漆喰や石、木材が用いられています。モノトーンの上、イングリッシュガーデンのように壁面を花で彩ることもないので、どちらかというと地味な印象。 けれども、埋め込まれた瓦が美しい文様を刻む漆喰塀、端正な石積みなど、随所に丁寧な職人技が光る素晴らしいものでした。そんな壁面の背景に清々しく映えていた青モミジ。イングリッシュガーデンも日本庭園も、どちらも壁と植物とのバランスが美しく、魅了されます。 心和む自然と一体化した景色 左/ヒドコートマナーガーデンのメドウガーデンと自然。右/平安神宮神苑の花菖蒲と睡蓮。 イングリッシュガーデンを訪れて特に心に残ったことの一つは、自然と一体化した景色です。不思議なことに、日本庭園でも同じような景色を見ることができました。 例えば、ヒドコートマナーガーデンで見た、鬱蒼とした樹木に囲まれた場所でひっそりと咲いていたピンクや白の可憐な野花。その景色にとてもよく似ていたのが、平安神宮神苑の巨木に囲まれた池に群れ咲く花菖蒲と睡蓮です。 どちらも、まるで森の中のオアシス。一瞬、ここが庭園であることを忘れてしまうほど自然に溶け込み、秘密の場所を見つけたようなワクワク感を味わえました。 左/南禅寺の橋。右/イギリスの庭。 そのほかにも、草木で覆われた先が見えない小径や南禅寺の天授庵の池にかかった橋は、自然の奥深くへ誘われるような神秘的な景色でした。 今まで経験したことのない感動を与えてくれたイングリッシュガーデン。実際に目と肌で感じた美しさは、想像を遥かに超えていました。そして、その感動は、改めて日本庭園の素晴らしさに気付かせてくれました。 イングリッシュガーデンと日本庭園に間違いなく共通していたのは、国の伝統や文化、美意識、自然への敬意。「イングリッシュガーデンにようこそ!」と、誇らしい笑顔で迎えてくれたイギリスの人たちのように、わたしも日本人として日本庭園を誇れるように、もっと見聞を広めていきたいと思いました。
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茨城県

花の庭巡りならここ! 広大な敷地でダイナミックに花が咲く「国営ひたち海浜公園」
広大な敷地を誇る都市公園「国営ひたち海浜公園」 1991年にオープンした「国営ひたち海浜公園」は、総面積が約350ha、開園面積が約200haにも及ぶ、広大な都市公園です。園内では四季を通してさまざまな花々が咲くほか、林間アスレチック広場やバーベキュー広場(要予約)、乗り物やアトラクションが充実しているプレジャーガーデン(遊園地)、サイクリングコース、自然観察ができる場所などがあります。一日いても全ては回りきれない広さなので、訪れたい場所はどのエリアか、園内マップを参照し、ターゲットを絞ってから出かけるのがオススメです。 敷地の広さを生かして季節の草花を群稙し、ダイナミックに面で魅せるのがこの公園の特徴。特に春のネモフィラと夏〜秋のコキアは、もはや誰もが知る人気スポットになっていますね。2017年度は約227万人が訪れたという実績があり、花好きさんにとっては何度でも見に行きたい花の名所になっています。 春はネモフィラが有名ですが約25万本のチューリップも見逃さないで! 「国営ひたち海浜公園」では、なんと真冬の1月からチューリップが開花します。これらは「アイスチューリップ」と呼ばれる、特殊な方法で冷蔵処理した球根を植え付けたものです。アイスチューリップは真冬に開花し、開花期間が大変長いのが特徴で、「グラスハウス」前の池のほとりに約1万5000本が咲き競います。ガーデナーにとって、花が咲く姿に飢えている冬。ぜひアイスチューリップに癒されに出かけ、春の訪れを楽しみに待ちましょう。 「国営ひたち海浜公園」の春の見どころは、なんといってもチューリップ。見頃は4月中旬〜下旬です。「たまごの森フラワーガーデン」では、約240品種25万本のチューリップが開花。毎年さまざまな品種を楽しめ、リピーターも多いとか。早咲きと遅咲きの品種を組み合わせて植栽し、時間の経過とともに変化するよう工夫されています。 「国営ひたち海浜公園といえば、ネモフィラ」。そんなイメージが定着してきましたね。見頃は4月中旬〜5月上旬。園内の「みはらしの丘」に、ネモフィラ‘インシグニスブルー’が約450万本植栽され、一面がブルーで彩られます。空と海、そしてネモフィラのブルーに囲まれたすがすがしい景色を、ぜひ一度は味わいたいものです。 「国営ひたち海浜公園」内にある「常陸ローズガーデン」では、約120品種3,400本のバラが植栽されています。見頃は春が5月中旬〜6月上旬、秋が10月下旬〜11月上旬です。写真の「ローズレリーフガーデン」は、園路によって一輪の大きなバラを表現。大観覧車から眺めると、目を引くデザインポイントになります。また、バラの原種の一つのハマナスは、茨城県が太平洋側の自生地の南限ということもあり、約1,600本が植栽されています。 バラが見頃を迎える期間は「茨城バラまつり」を開催。ガイドスタッフによる解説が聞ける「常陸ローズガーデンツアー」が行われるほか、フォトレッスンやコンサート、バラにまつわるクラフト体験など、さまざまなイベントに参加できます。 また、バラと同時期に「BMXコース周辺」のカリフォルニアポピー、「大草原フラワーガーデン」のリナリア、シャーレーポピーが楽しめるので、これらのエリアへもぜひ足を運びましょう。 夏はヒマワリ&もこもこコキアを満喫!秋は紅葉して真っ赤に染まるコキアの丘が大人気 8月中旬には、ヒマワリが見どころに。「みはらしの里」では約4,700㎡の敷地に咲く約3万本のヒマワリが楽しめます。「ヒマワリの迷路」がつくられているので、ゴールを目指してヒマワリ畑の散策を楽しみましょう。一方、「泉の広場フラワーガーデン」では、40品種ものヒマワリを植栽。色、形、大きさなど、育ててみたいヒマワリを見つけに足を運ぶのもオススメです。 7月上旬頃は、「国営ひたち海浜公園」の「みはらしの丘」に約3万2,000本が植栽された、グリーンのコキアが見られます。このモコモコっぷり、なんだかカワイイと思っちゃいませんか? 青空をバックに、たくさんのグリーンのモコモコと一緒にぜひ写真を撮りましょう。インスタ映えすること間違いありません! 8月中旬から約1週間の期間限定で、コキアが見られる「みはらしの丘」エリアのみ夜間開園が行われます。楽しいBGMが流れる中、LEDによるカラフルなライトアップが見どころ。毎年テーマを設けて繰り広げられる、光と音楽の演出を堪能しましょう。さまざまな屋台が現れる、グルメブースの特設会場にもぜひ寄り道を。 そして、コキアが本領を発揮するのが10月中旬から。グリーンから、なんと真っ赤に紅葉するんです。なだらかな丘一面が真っ赤に染まる景色は一見の価値あり。ぜひ秋のコキアを見に出かけましょう。同時期に、赤、白、ピンクのコスモス、ススキ、オギなど、楚々とした秋の花も見頃になります。 広すぎる園内では、周遊する「シーサイドトレイン」の活用を!オシャレなレストランやカジュアルなカフェも充実 「国営ひたち海浜公園」では、園内9カ所の停留所を周遊する「シーサイドトレイン」が運行しています。3歳以上が有料で一人600円の一日周遊券を購入すれば、乗り降り自由で乗り放題。敷地が大変広いので、普段あまり歩き慣れていない方にはオススメ。1周約40分かけて回るので、まずは「シーサイドトレイン」で園内をぐるりと巡って、見たい場所の目星をつけるのもいいですね。ただし、ペットの同伴は不可となっています。 「国営ひたち海浜公園」内には、レストラン1店舗、軽食店(飲食スタンド・カフェ)が7店舗入っています。写真は、海が見えるガラス張りのカフェテラス、グラスハウスの「Sea Side Café」。営業時間は9:30〜閉園1時間前まで(季節によって異なる)、ラストオーダーは閉園1時間15分前まで。 「Sea Side Café」のメニューには、「グラスハウスのそばめし」(800円)や「グラスハウスのエビピラフ」(800円)、シフォンケーキ(650円)、常陸野ハニードーナッツ(450円)、花をイメージしたソフトクリーム(620円)、ネモフィラをイメージしたアイス(550円)などがあります。 ちなみに、園内では飲食店が充実していますが、飲食物の持ち込みもOK。青空の下でお弁当やおやつを広げて、休憩するのもいいですね。 Information 国営ひたち海浜公園 所在地:茨城県ひたちなか市馬渡字大沼605-4TEL:公園029-265-9001 バーベキュー広場予約029-265-9002 プレジャーガーデン(遊園地) 029-265-8185http://www.hitachikaihin.jp 英語サイト: https://hitachikaihin.jp/en/ アクセス:公共交通機関/JR常磐線「勝田駅」東口より、バスロータリー2番乗り場茨城交通バス「海浜公園行き」にて約15分(タクシー15分)、「海浜公園西口」または「南口」下車すぐひたちなか海浜鉄道湊線「阿字ヶ浦駅」下車、徒歩約20分(海浜公園南口)車/東京方面:常磐自動車道~(友部JCT)~北関東自動車道経由、常陸那珂有料道路「ひたち海浜公園IC」より県道247号線 約1㎞いわき方面:常磐自動車道「日立南太田IC」より約15㎞ 休園日:月曜(祝日にあたる場合は翌日の火曜)、12月31日、1月1日、2月の第1火曜日からその週の金曜日まで ※但し、3月26日~5月31日、7月21日~8月31日、10月1日~10月31日、12月25日~30日は無休 営業時間:9:30~17:00 ※但し、夏期7月21日~8月31日は18:00まで、冬期11月1日~2月末日は16:30まで 料金:大人(高校生歳以上)450円、シルバー(65歳以上)210円、小人(小中学生)無料 ※のりもの券は別途料金 駐車場:4,350台(普通車510円/1日)
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北海道

上野ファームの庭便り「バラも宿根草も! 思いっきり楽しむ夏の庭」
バラが咲く華やかなシーズンが到来 いよいよ北海道もバラのシーズンに入りました。バラを主役とした庭園は、全国にたくさんありますが、上野ファームの庭は、バラだけが主役ではなく、宿根草の中にバラが混じって咲いているような雰囲気です。バラと同じ時期から最盛期を迎える宿根草もたくさんあるので、すべての花が美しく咲き誇り、どの花も主役といえるくらい華やかなシーズンが、バラの咲く季節なのです。 大きな葉やボリュームのある花に埋まりそうになりながら、上野ファームのバラたちは、宿根草の隙間から私が主役といわんばかりに顔を出し、たくましく開花しています。いろいろな草花と一緒に咲くバラたちはとても素敵です。 周囲の植物によって表情が変わるバラ バラは一輪でも十分美しい花だと思いますが、共演させる花たちによって表情がまた違ってくるように思います。周りをどんな役者で囲むかによって、バラの雰囲気も変わるのだと思います。静かな小花と合わせたり、時には大輪のシャクヤクと競わせたりと、どんな植物と一緒に咲かせると面白いのか。いろいろと考えながら、あまりルールにはとらわれずに、バラと宿根草の庭づくりを楽しんでいます。 華やかなバラは、シンプルで素朴な野草とも実は相性がいいのです。野草とバラと聞くと、ちょっとアンバランスな気もしますが、その土地の植物と合わせて咲くバラも、オリジナリティーのある地域性が出て魅力的だと思っています。 大型の植物とバラのコンビネーション ボリュームある小さな花の塊とバラは、どちらの魅力もより引き立て合いながら、とてもよい関係をつくることができます。大型の植物を近くに植えることは、バラにとっては日陰をつくることになるので、あまりよくないとは分かっているのですが、上野ファームでは思い切って大きな植物を背景にもってくることもよくあります。豪華なバラと相まってダイナミックな植栽となり、それもまた楽しいシーンとなります。 例えば、サークルボーダーのホワイトエリアでは、2m近くになる大きなレースフラワーのような、バレリアナ・オフィシナリスを背景に、白いバラが重なるように見えて、とても素敵なイメージになります。 手前にはジギタリス、背後には大きなバーバスカムでバラを挟むように植栽しました。尖った雰囲気の植物は、丸い顔のバラととても相性がいいのです。また、写真では見えませんが、バラの後ろには細い園路があり、バラの背景に見えている植物は実は離れた場所に植わっています。こうした環境ならば、バラの背景に大きな植物をもってくることが可能です。見る角度や位置によって、バラの背景に何が見えるのかを考えながら植物を選ぶのは、とても楽しいことです。 上野ファームのバラは7月から見頃に 北海道はこれからがバラのベストシーズン。バラが咲き終わると今度は盛夏の花たちが一斉に開花を始めます。夏の間も途切れることなく、のびのびと花咲く植物が楽しめる北国の庭に、ぜひ遊びにいらしてください。 美しいバラと合わせて、さまざまな庭を楽しめる「北海道ガーデン街道」もチェックを!
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神奈川県

横浜とバラの歴史を刻み続ける「港の見える丘公園」
バラが最もふさわしい場所 2016年(平成28)4月に、バラ園がリニューアルされた横浜・山手の「港の見える丘公園」には、現在、約330種2,200株のバラが植栽されているそうですが、元々こちらの公園にバラが植えられたのは、1962年(昭和37)のこと。「港の見える丘公園」内にあるイギリス館に合わせて、イギリスの国花であるバラが植えられました。そしてその後、開港130周年にあたる1989年(平成1)、市制100周年を記念して、市民投票で一番人気が高かったバラを横浜市の花として制定したことに加え、最もバラがふさわしい場所として「港の見える丘公園」が選定されたのでした。 バラが最もふさわしい場所とは、一体どんなところなのでしょうか。今回は、その「港の見える丘公園」についてご紹介します。 横浜とバラの関わりを知る歴史 「バラが最もふさわしい場所」をひもとくには、横浜の歴史に目を向けることが大切です。まずは、横浜とバラの歴史の年表をご覧いただきましょう。 1859年(安政6)7月1日、横浜港開港。 1867年(慶応3) 山手地区が外国人居留地(きょりゅうち)として開放され、西洋館の街が完成 居留地制度は1899年(明治32)まで続きました。 1868年(明治1) 明治維新。 1870年(明治3) 山手公園が開園。フラワーショーが開かれました。 1872年(明治5) 英国商社ヴィーチ商会のクラマー氏が、モダンローズの赤いバラを出品して、居留人に注目されます。バラが居留地の庭園に植えられ、近くに住む日本人からは、「イバラボタン」と呼ばれます。バラは当時、なかなか入手出来ない高嶺の花でした。 日本初の近代バラの広告「英国産のバラ売ります。横濱山六十三番スミス」という広告が出ました。 1885~1888年(明治18~21) かつて山手にあったゲーテ座でフラワーショーが開催され、多くのバラが出品されました。 *ゲーテ座とは、「居留地外国人たちの憩いの場」であり、演劇、音楽会、舞踏会、読書会、宗教活動など、さまざまな催しがそこで行われました。 1885年からは、バラを含めた植物の品評会「草木花卉品評会」が、計4回行われ、アレンジメント、盆栽、シクラメンやベゴニアなどの鉢植えが出品され、賞が与えられました。 1回目の1等賞は、W.B.ウォルター夫人のバラのアレンジメント。ジェームス夫人のバラのコレクション。この頃は、まだティーローズが多かったようです。2回目以降は、日本のご婦人たちによる出品が増え、生花、鉢植え、バラの出品が増えていったそうです。 同時期、有名な英国人建築士のジョサイア・コンドル氏(1852年9月28日 ~ 1920年6月21日)が設計を手掛けた「鹿鳴館」(ろくめいかん)が、1883年(明治16)日比谷に完成しましたが、鹿鳴館の夜会において、バラの切り花が贅沢に使用されていたそうです。 こうして、当時の目新しいバラは、外国人や外国人と関わりのある職業の方やそのご夫人方(いわゆる当時横浜での上流社会の催しなどにおいて、中心的な役割を担っていた人たち)の間にまず広まり、徐々に一般庶民にも広まっていったのでした。 震災を受けてからの横浜とバラ 1923年(大正12) 関東大震災により山手地区の街は壊滅状態へ。 1929年(昭和4) 関東大震災時にアメリカのシアトル市から受けた援助のお礼として、桜の苗木3,500本を贈り、その返礼として、200種3,000本のバラが贈られました。それらのバラは、当時の野毛山公園、山下公園、横浜市児童遊園地に「日米親善のバラ」として植えられました。その中には、‘ラ・フランス’、‘フラウ・カール・ドルシュキー’(新雪)、‘オフェリア’などがあったと伝えられています。 1935年(昭和10)から「バラ祭り」が開催され、「バラ行進」などは現在の「国際仮装行列」の原形になりました。 戦争に突入してからの横浜とバラ 戦争のために「バラ祭り」などのイベントは中止され、バラもほとんどが姿を消してしまいました。 1937年(昭和12) 英国総領事公邸としてイギリス館が建てられ、1969年(昭和44)まで使用されます。 今もなお、「港の見える丘公園」内にある「イギリス館」についてもご紹介しましょう。 1937年(昭和12)、東アジアに散在する英国公館の施設を預かる上海の大英工部総署の設計により、英国総領事公邸が建てられました。建物北側玄関左に、「1937年ジョージ6世時代」を示す「GRⅥ 1937」と印した紋章がはめ込まれています。その後、1990年(平成2)に横浜市が旧英国総領事公邸を買収し、「イギリス館」として市の文化財に指定しました。 1939年(昭和14) 第二次世界大戦始まる。 1945年(昭和20) 8月15日、第二次世界大戦終戦。 終戦を迎えてからの横浜とバラ 1949年(昭和24) 3月15日、野毛山公園を会場に「日本貿易博覧会」が開催。横浜市と日本ばら会の共催による日米のバラの展示会では、サンフランシスコのバラ会より空輸された‘ピース’、‘ショーガール’、‘アームストロング’などが出品され、注目を浴びました。 1962年(昭和37) イギリス館の周囲にイギリスの国花であるバラが植栽されました。 1989年(平成1) 開港130周年、市制100周年を記念して、横浜市の花として「バラ」が制定され、バラを植栽するバラ園をつくるために、最もふさわしい場所として「港の見える丘公園」が選定されました。 港の見える丘公園内にバラ園が誕生 このような歴史的背景を持ち、横浜港を見下ろす「港の見える丘公園」に以前からあったバラが整備されて「港の見える丘公園内バラ園」は、1991年(平成3)5月に開園しました。 そして、2016年(平成28)に、「港の見える丘公園内バラ園」は、イギリス館前が「イングリッシュローズガーデン」に、大佛次郎記念館前が「香りの庭」に、そして111番館前にかけてが「バラとカスケードの庭」へとリニューアルされ、宿根草や一年草との混植のガーデンとなりました。さらには、2017年(平成29年)に横浜で大々的なイベント「第33回全国都市緑化よこはまフェア」が開催され、多くの人が横浜を、そしてバラの咲くガーデンを訪れたのです。 このように、これまで横浜は、バラと深い歴史でつながってきました。これからも「市の花」である「バラ」と共に、共存、発展していくことと思います。
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山梨県

花の庭巡りならここ! バラが爛漫と咲き乱れる「河口湖 音楽と森の美術館」
コンセプトは王侯貴族が住んでいる庭! 「河口湖 音楽と森の美術館」 「河口湖 音楽と森の美術館」は、中世ヨーロッパの王侯貴族が愛したオルゴールの世界を楽しんでもらおうと、「王侯貴族が住んでいる」というコンセプトのもと、1999年にオープンしたオルゴールミュージアムです。2003年にはオールドローズを中心とした庭がつくられ、さらに05年には「王妃が庭の片隅につくった、バラを楽しむためのプライベートガーデン」をテーマに、本格的なガーデンが誕生。ローズガーデンのデザインは、ガーデンデザイナーの保立美智子さんが監修し、バラの品種は中田邦子薔薇研究所の中田邦子さんがセレクトしました。 富士山を望む河口湖畔という立地から、このガーデンは日本の風土、風景に溶け込む「自然風景式庭園」を目指しており、自然樹木の間にバラがのびやかに調和する景色を堪能できます。 希少な原種のバラやオールドローズが息づく 中世をイメージさせるローズガーデン 2万3176㎡の敷地を抱く「河口湖 音楽と森の美術館」は、庭園の散策は20〜30分で一巡でき、コンサート鑑賞、お買い物と合わせて2〜3時間の観光が楽しめます。 バラは約720品種1,200株が植栽され、一番の見頃は6月上旬〜中旬。庭園内は「オールドローズエリア」「モダンローズエリア」「フレンチローズエリア」「音楽関連の名前がついたバラを集めたエリア」とテーマによってゾーニングされています。特に「中世王侯貴族が愛し守ったオールドローズ」のコーナーは、数多くの原種のバラやオールドローズが集められており、希少品種も多く見応えがあります。 ガーデン内では視界を遮るアーチを多用し、空間を仕切って場面転換をはかっています。オベリスクは園内に12基。シンメトリーに配してバラ2品種を仕立てており、その組み合わせ術は自邸の庭へのヒントになりそうです。 年間28万人が訪れる「河口湖 音楽と森の美術館」では、オルゴールミュージアムはもちろんのこと、ガーデンのファンも。「手入れが行き届いている」と評判で、リピーターが多く訪れています。 園内には高さ280㎝×幅255㎝のアーチがいくつも設けられ、バラ‘夢乙女’、‘バレリーナ’、‘コーネリア’、‘パーペチュアル・ユアーズ’などを仕立てています。 バラの季節以外も、春はスイセンに始まり、コブシ、ユキヤナギ、シャクナゲ、カリン、アジサイ、サルスベリ、クリスマスローズなどが開花リレーを見せ、四季を通して花で彩られるナチュラルガーデンを観賞できます。 ペット同伴は不可(小型犬なら預かり可)、館内禁煙、飲食物の持ち込みは不可となっているので、マナーを守って利用しましょう。 ガーデンの散策とともに 中世の贅沢な自動演奏楽器&オートマタを楽しもう 「河口湖 音楽と森の美術館」の真骨頂、ミュージアムのオルゴールやオートマタ(自動人形)の見学も、ぜひ楽しみましょう。一日7回の実演コンサートが行われているので、約100年前の人々の心を癒した音色を実際に聴いてみてはいかがでしょうか。デジタルでいつでもどこでも音楽を再生することができる現代にあって、音楽をいつでも聴けることは贅沢の極みだった時代の荘厳な音色に、心を打たれること間違いありません。 豪華客船タイタニックに搭載予定だった自動演奏楽器に合わせて、オペラ歌手が歌うコンサートなど、趣向を凝らしたイベントを楽しめます。 雄大な富士山を望みながらのランチは格別! ミュージアムショップでのお買い物も楽しもう 「河口湖 音楽と森の美術館」内には、レストランが併設されています。「森のレストラン」の営業時間は11:00〜15:00(ラストオーダー14:30)、客席は80席あります。ランチの価格は2,000円前後。地元の旬の食材を使ったコース料理「季節のスペシャルランチ」2,300円、郷土料理のほうとうを西洋風にアレンジした「西洋ほうとう」1,500円がオススメです。 富士山を望む絶景のもと、おしゃべりに花を咲かせながら、ティータイムを楽しむのもいいですね。ケーキセットは950円。数種の中からお好みのケーキをセレクトでき、ドリンクはコーヒーまたは紅茶がつきます。 「河口湖 音楽と森の美術館」では、お土産コーナーももちろん充実していますよ。ミュージアムショップの営業時間は9:30〜18:30。オルゴール、ワイン、アクセサリー、食品などが人気です。品揃えの主な価格帯は1,000円〜。 最後に、「河口湖 音楽と森の美術館」でしか買えない、オリジナルチョコレートをご紹介しましょう。ト音記号の形が愛らしいチョコレートは、ミルク、ビター、ホワイトの3種類が揃います。単品で616円、アソートで1,029円。ぜひお土産にどうぞ。 Information 河口湖 音楽と森の美術館 所在地:山梨県南都留郡富士河口湖町河口3077-20 TEL:0555-20-4111 https://kawaguchikomusicforest.jp アクセス:公共交通機関/富士急行線河口湖駅よりタクシーで約16分、または河口湖周遊レトロバス「オルゴールの森美術館」下車すぐ 車/中央道河口I.Cより国道137号線約15分 オープン期間:通年 休館日:毎年冬季休館日あり(2020年は1月14日~24日、2月28日) 営業時間:10:00~17:30(最終入館…17:00) 料金:大人1,800円、大高生1,300円、小中生1,000円 駐車場:約300台(入館する場合、無料) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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イギリス

イギリス「ハンプトン・コート宮殿」の庭【世界のガーデンを探る旅11】
スペインのアルハンブラ宮殿からスタートして、ヨーロッパの歴史とともに、イタリア、フランス、そしてオランダと、いろいろな庭を見てきましたが、いよいよナポレオンもヒトラーも渡れなかったドーバー海峡を渡って、イギリスの庭を見ていくことにしましょう。 今回はロンドン郊外、テニスで有名なウィンブルドンの近くにあるハンプトン・コート宮殿です。 ハンプトン・コート宮殿を正門からご案内 まずはハンプトン・コート宮殿(Hampton Court Palace)の全敷地を確認してみましょう。写真手前の広場に正門があり、建物の奥に放射状に広がるのが、中央に大きなプールがあるオランダ式とも呼ばれる整形式庭園で、まっすぐ奥へと長いプールが続いています。毎年7月上旬に行われている大イベント「ハンプトン・コート宮殿 フラワー・ショー」は、このプールの周りで開かれています。 テムズ川河畔に沿って広がるハンプトン宮殿ですが、空から見ると写真右手が南側になり、テムズ川と微妙な角度で、宮殿とその周りに庭が配置されていることがよく分かります。宮殿を東に抜けると大きなオランダ式ともいわれる整形式のグレート・ファウンテン・ガーデンが、まるで無限の広がりを持っているかのように目の前に現れます。そして、その右側には、フランス式整形庭園が南側のテムズ川に向かって広がっています。川沿いには船着き場があり、下流のロンドン中心部(写真奥側)から船で来ることも可能です。 宮殿は、1521年に、イングランドの聖職者で政治家だったトマス・ウルジー氏によって建てられました。しかし、そのあまりの美しさにヘンリー8世が妬んだので、すぐに王のものとなりました。元々はイタリアルネサンスへの憧れのもとつくられた、チューダー様式とゴシック様式の入り交じった左右対称の幾何学的模様の宮殿で、幾度もの改築や改修が施されながら、18世紀にほぼ現在の形になりました。その後、1838年に大改修の工事が終わると、当時のビクトリア女王によって一般公開されるようになったのです。敷地内にある「プリヴィ・ガーデン」は、1995年の大改修により建設当時の姿に復元されて現在に至っています。 庭は、宮殿の東側と北側に広がっていますが、東側の大きい場所から順に「グレート・ファウンテン・ガーデン」、テムズ川に向かって伸びる「プリヴィ・ガーデン」、その横、宮殿の南側に2つの庭「サンクンガーデン」と「ポンドガーデン」があります。宮殿の北側には「ローズガーデン」や「キングサリのトンネル」、さらには有名な「メイズ(迷路)」、高く刈り込まれた生け垣の迷路などが宮殿を取り巻くように配置されています。 庭園を散策しながら特徴をご紹介 きれいに刈り込まれたイチイは、デアーライン(家畜が下枝を食べたような形)と呼ばれる下枝の刈り込みによって、見通しを確保し広がりを見せています。 シルバーリーフのシロタエギクと、紫花のヘリオトロープとを組み合わせた落ち着いた色合いで、フランスやイタリアの花壇植栽とはまったく違うテイストです。 宮殿から南に広がる「プリヴィ・ガーデン」 当時は新興国だったイギリスの、イタリアルネサンスとフランス文化への憧れが顕著に現れた、見事なまでのフォーマルガーデンです。 この庭は1995年に再現されましたが、完璧なまでに幾何学的な左右対称庭園です。イギリスらしく両側は小高い土手に囲まれ、きれいにメンテナンスされたフォーマル庭園が俯瞰できるようになっています。左側の土手の上には5m以上の高いシデのトンネルがあり、あまりにも人工的な幾何学模様にイギリスらしさが加味されているように思われます。 宮殿横に可愛らしい「ノットガーデン」とオランジェリー 草ツゲの緑のフレームの中は、ベゴニア・センパフローレンスが。はっきりとした色の対比がイタリアの庭を思い出させます。これも、ルネサンスへの憧れの表れなのでしょう。その奥にはオランジェリー(温室)があります。 大きく立派なオランジェリーの前には、テンダー(寒さに弱い植物)な植物の鉢植え。これらの鉢は、すべて冬前にはオランジェリーの中へ入れ、寒さから守ります。 一番の見せ場「サンクンガーデン(沈床花壇)」 オープンで広い「プリヴィ・ガーデン」は緑が中心でしたが、このサンクンガーデンは周りを高い生け垣で囲み、完全に周囲から隔離された空間になっています。 春は、チューリップとパンジー、夏はサルビアやマーガレット、デージー、シロタエギク、そして赤いゼラニウムとベゴニアでカラフルに植栽され、ここではイギリスらしい色とりどりの花が主役になっています。 隣のポンドガーデンは、サンクンガーデンより一回り小さくて色合いもデザインもシンプルです。素敵な2つの庭が並んでいるのも何かもったいないような気がしますが、はっきりと生け垣で区切られているのはイギリスらしい庭の見せ方です。 世界最高齢のブドウの木は、1768年にケイパビリティー・ブラウン氏によって植えられたと伝えられています。イギリスの庭づくりを根底から変えた天才造園家であるランスロット・ケイパビリティー・ブラウン氏については、また今後ご紹介する予定です。 北側の園路には、ゴミ箱さえもブリティッシュグリーンにペイント。ご存じのようにイギリス人が大好きな色です。 イギリスらしい庭のデザインといえば、ボーダー花壇。冬の寒い西風から植物を守るレンガの壁(ウォール)に沿って手前に低い植物、奥へ高い植物を組み合わせて、細長く配置する手法で、イタリアでは見られないスタイルです。さまざまな植物をパッチワークのように組み合わせて植えていく、イギリスでは当たり前に見られる手法は、イギリス庭園史上もう一人の偉人として知られるガートルード・ジーキル女史が始めたもので、今もイギリスの花壇植栽はこの手法がもとになっています。 日本でも憧れて育てる人が多いキングサリをトンネルに仕立てた場所もあります。イギリスでも、なかなかここまで見事な景色にはお目にかかれません。 ハンプトン・コート宮殿は、さまざまなタイプの庭や歴史が詰まっていて、一日いても飽きることはありません。ある意味、ここからイギリスの庭は始まったともいえるでしょう。次回からは、今、ガーデニングの本場といわれているイギリスの庭巡りの旅を始めるとしましょう!




















