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群馬県

花の庭巡りならここ! 四季折々の花が紡ぐように咲く美しい森「赤城自然園」
「赤城自然園」は、「豊かな森を次世代に引き継ぐ」を理念に、約40年前から植生に手を入れて整備されてきた森です。60haもの広大な敷地は、「自然生態園」「四季の森」「セゾンガーデン」の3つにゾーニングされており、すべてを巡るには、大人の足でゆっくり歩いて2時間くらいかかります。 園内の森には、花木や山野草、宿根草、球根植物が絶妙なバランスで植栽されており、四季折々の開花リレーでつながれて、いつ訪れても見頃の花に出合えます。多くの植物の中でも改良された園芸品種は取り入れず、森の中でこそ映える在来種の楚々とした魅力を味わえるのも特徴。植物園や観光ガーデンとは趣が異なり、人工的な添景物を排した自然そのものの景観が、この「赤城自然園」の魅力です。ハイキングに出かけるつもりで、野鳥の声にも耳を傾けつつ、四季折々の花の景色を楽しみましょう。 12万球を超えるカタクリが群れ咲く姿を堪能! 5月はツツジやシャクナゲで華やぐ景色に 5月になるとツツジやシャクナゲをはじめ、たくさんの花が咲き競い、特に華やぐ季節です。「赤城自然園」は標高600〜700mで、低地と高地の中間くらいの環境。そのため、高地で見られるシラネアオイやオオヤマレンゲ、低地で見られる12万球を超えるカタクリなどが共生する景色を楽しめます。 「赤城自然園」の植物は、大本類152種、草本類510種が確認されています。ほかに鳥類77種、哺乳類15種、昆虫類が1,810種など。 新緑の季節は雑木林の緑陰の下を歩くのはすがすがしく、植物の息吹からヒーリング効果を得られることでしょう。整備された遊歩道は約10㎞に及んでいますが、それほど疲れを感じません。なぜなら、アスファルトではなくバークチップ(木の皮)が敷き詰められているため、ふかふかの感触で足あたりがよいからです。ぜひ歩きやすい服装&靴を着用し、時間を忘れて散策を楽しみましょう。 一日2回開催されるガイドツアーは内容充実! 子どもと一緒に生態系のサイクルを学ぼう 「赤城自然園」では、毎日ガイドツアーが行われています。一日2回の開催で、スタート時間は10:00と13:00、無料です。15名定員で、当日の台帳に申し込んだ順の早い者勝ちなので、参加希望の方はお早めに。約1時間かけて園内を散策し、見頃の花をはじめ鳥や昆虫などについても詳しく解説してもらえます。季節やガイドをするスタッフによって解説内容も変わるので、何度参加しても楽しめますよ。 7月中旬〜8月上旬になると、アジサイ類が見頃を迎えます。アジサイは、さんさんと日差しが照りつける日向よりも、雑木の足元など半日陰のしっとりとした場所でこそ魅力が増すもの。適した環境でのびのびと生育するアジサイの姿を見に出かけましょう。夏は希少で人気が高く、「森の妖精」と呼ばれるレンゲショウマが園内全域で観られるのをはじめ、ヤマユリやキツネのカミソリ、カワラナデシコ、キキョウなどが次々と開花し、その清楚な花姿を楽しめます。 お子さんのいる家族なら、夏休みを利用して園内の「自然生態園」ゾーンをじっくり回ってはいかがでしょうか。「昆虫広場」や「昆虫館」「カブトムシの森」「チョウのはらっぱ」「トンボ池」「ミズスマシの池」などがあり、生態系のサイクルを学ぶことができます。「赤城自然園」には年間約8万人の来園者があり、毎週のように訪れるリピーターもいるとか。自然に触れる機会が少なくなっている現代、手入れの行き届いた豊かな森で、子ども時代の思い出を重ねていくのに理想の場所ではないでしょうか。 秋の山野草に、紅葉が織りなす色鮮やかな絶景 深まっていく秋の景色を満喫しよう 秋はオミナエシ、ワレモコウ、ツリフネソウ、キバナアキギリ、フジバカマ、ホトトギスなどが次々と開花をつなぎ、オータムカラーのしっとりとした風情を楽しめます。初秋には、1,000㎞以上も移動するといわれるチョウ「アサギマダラ」が数千羽もやってきます。その生態はいまだよく分かっておらず、「赤城自然園」では毎日マーキング調査を実施。そのマーキング体験も、期間中は毎日無料で参加できます。美しいチョウの姿を子どもと一緒に観察するのもいいですね。 そして森の景色が黄色や赤に染まる紅葉の見頃は10月下旬〜11月中旬。少し標高の高い場所ならではの、発色の素晴らしい紅葉シーンをぜひ写真に収めてください。 備え付けられたベンチに座って、鮮やかな紅葉を心ゆくまで眺めていたいところですが、「赤城自然園」内には、レストランやカフェなどの飲食店は入っていません。飲食物の持ち込みはOKなので、ハイキングに出かけるつもりで、各自飲み物やお弁当、おやつを持参しましょう。飲食できるのは、6カ所の休憩広場、9カ所の東屋です。ゴミは各自持ち帰ることも忘れずに。園内へのペット同伴は不可、禁煙です。 「赤城自然園」では、12月〜翌年3月の冬季期間中も、土・日曜のみオープン。雪景色の森のなか、野鳥や動物たちがたくましく生き抜く姿を見ることができます。年間パスポートが3,000円で発行されているので、四季を通して出かけるのもオススメです。 Information 赤城自然園 所在地:群馬県渋川市赤城町南赤城山892 TEL:0279-56-5211 http://akagishizenen.jp アクセス:公共交通機関/JR渋川駅よりシャトルバス、またはタクシーで約20分 車/関越自動車道赤城I.Cより約10分 オープン期間:通年 休園日:火曜(5月は無休)、12月〜翌年3月平日、年末年始 営業時間:9:00〜16:30(最終入園15:30) 料金:大人(高校生以上)1,000円、子ども(中学生以下)無料 駐車場:400台(無料) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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海外

旅して感じたイングリッシュガーデンと日本庭園の共通点
日本庭園を巡って感じた共通点を探る 2年前の6月、イングリッシュガーデン巡りの旅を終えた時、なぜか心にふと芽生えた日本庭園への想い。その理由を確かめるために、翌年、同じ時季に京都の日本庭園を巡りました。 イングリッシュガーデンと日本庭園。それまでは、どちらかというと接点がないように感じていましたが、実際に訪れてみると、いくつか共通点を見つけることができました。 重厚な門構え 訪れた庭園の入り口には、どこも素晴らしい門構えがありました。中でも印象的だったのが湖水地方のホッカー・ホール&ガーデンと、大徳寺の塔頭高桐院です。ホッカー・ホール&ガーデンは、重厚な褐色の石壁とエレガントな鉄製の門扉が、いかにも貴族の庭園らしく、シンメトリーに設置された品のよい色彩のコンテナとオブジェにイギリスらしさが溢れていました。 高桐院は、大胆に組まれた大木と瓦が力強く凛とした佇まい。ひと枝ひと枝手入れされた松とみずみずしい苔の緑が鮮やかでした。石と木、鉄と瓦、素材やデザイン、植栽の相違はありますが、どちらも堂々たる風格。互いの伝統と美意識がひと目で伝わってくる門構えです。 また、その他にも、一直線に伸びた石畳と芝生アプローチ、竹と常緑樹のシンプルな植栽など、類似した景色をいくつか見ることができました。 歴史ある建物と植栽の調和 回訪れたイングリッシュガーデンは、20世紀のイギリスを代表する有名な庭園ばかり。庭園内の建物も100年以上経過した歴史あるものでした。例えば、ヒドコートマナーガーデンの茅葺きの家、シシングハーストカースルガーデンの塔や母屋、キフツゲートコートガーデンやバーンズリーハウスガーデンのエレガントな館など。古い雰囲気を損なうことなく修復された建物が、イギリスの風土に合った草花のクラシカルな植栽と調和し、得も言われぬ美しさを醸し出していました。 同じように、日本庭園でも歴史ある貴重な建物を見ることができました。京都御所から移築された平安神宮神苑の橋殿と尚実館、南禅寺の山門や永観堂の本堂です。ここでは、松や桜、モミジなどの日本古来の樹木が多用されていました。選び抜かれた植物と色彩を抑えた植栽が、格式高い日本建築と調和し、清らかで凛とした空気が漂っていました。 歴史ある建物とその国の風土に合った植栽が調和しているからこそ、このような素晴らしい景観が生まれるのですね。 魅力ある壁面 イングリッシュガーデンの魅力の一つは、壁面の華やかさ。味わいある蜂蜜色や褐色のレンガ壁を、さらに魅力的に演出しているのが、つるバラやクレマチス、つるアジサイなどのつる性植物です。壁一面に誘引された満開の花々が咲く様は、もはや芸術。その美しさに幾度となく目を奪われました。 日本庭園の壁面は、主に漆喰や石、木材が用いられています。モノトーンの上、イングリッシュガーデンのように壁面を花で彩ることもないので、どちらかというと地味な印象。 けれども、埋め込まれた瓦が美しい文様を刻む漆喰塀、端正な石積みなど、随所に丁寧な職人技が光る素晴らしいものでした。そんな壁面の背景に清々しく映えていた青モミジ。イングリッシュガーデンも日本庭園も、どちらも壁と植物とのバランスが美しく、魅了されます。 心和む自然と一体化した景色 イングリッシュガーデンを訪れて特に心に残ったことの一つは、自然と一体化した景色です。不思議なことに、日本庭園でも同じような景色を見ることができました。 例えば、ヒドコートマナーガーデンで見た、鬱蒼とした樹木に囲まれた場所でひっそりと咲いていたピンクや白の可憐な野花。その景色にとてもよく似ていたのが、平安神宮神苑の巨木に囲まれた池に群れ咲く花菖蒲と睡蓮です。 どちらも、まるで森の中のオアシス。一瞬、ここが庭園であることを忘れてしまうほど自然に溶け込み、秘密の場所を見つけたようなワクワク感を味わえました。 そのほかにも、草木で覆われた先が見えない小径や南禅寺の天授庵の池にかかった橋は、自然の奥深くへ誘われるような神秘的な景色でした。 今まで経験したことのない感動を与えてくれたイングリッシュガーデン。実際に目と肌で感じた美しさは、想像を遥かに超えていました。そして、その感動は、改めて日本庭園の素晴らしさに気付かせてくれました。 イングリッシュガーデンと日本庭園に間違いなく共通していたのは、国の伝統や文化、美意識、自然への敬意。「イングリッシュガーデンにようこそ!」と、誇らしい笑顔で迎えてくれたイギリスの人たちのように、わたしも日本人として日本庭園を誇れるように、もっと見聞を広めていきたいと思いました。 Credit 写真&文/前田満見 高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。 Instagram cocoroba-garden
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茨城県

花の庭巡りならここ! 広大な敷地でダイナミックに花が咲く「国営ひたち海浜公園」
広大な敷地を誇る都市公園「国営ひたち海浜公園」 1991年にオープンした「国営ひたち海浜公園」は、総面積が約350ha、開園面積が約200haにも及ぶ、広大な都市公園です。園内では四季を通してさまざまな花々が咲くほか、林間アスレチック広場やバーベキュー広場(要予約)、乗り物やアトラクションが充実しているプレジャーガーデン(遊園地)、サイクリングコース、自然観察ができる場所などがあります。一日いても全ては回りきれない広さなので、訪れたい場所はどのエリアか、園内マップを参照し、ターゲットを絞ってから出かけるのがオススメです。 敷地の広さを生かして季節の草花を群稙し、ダイナミックに面で魅せるのがこの公園の特徴。特に春のネモフィラと夏〜秋のコキアは、もはや誰もが知る人気スポットになっていますね。2017年度は約227万人が訪れたという実績があり、花好きさんにとっては何度でも見に行きたい花の名所になっています。 春はネモフィラが有名ですが約25万本のチューリップも見逃さないで! 「国営ひたち海浜公園」では、なんと真冬の1月からチューリップが開花します。これらは「アイスチューリップ」と呼ばれる、特殊な方法で冷蔵処理した球根を植え付けたものです。アイスチューリップは真冬に開花し、開花期間が大変長いのが特徴で、「グラスハウス」前の池のほとりに約1万5000本が咲き競います。ガーデナーにとって、花が咲く姿に飢えている冬。ぜひアイスチューリップに癒されに出かけ、春の訪れを楽しみに待ちましょう。 「国営ひたち海浜公園」の春の見どころは、なんといってもチューリップ。見頃は4月中旬〜下旬です。「たまごの森フラワーガーデン」では、約240品種25万本のチューリップが開花。毎年さまざまな品種を楽しめ、リピーターも多いとか。早咲きと遅咲きの品種を組み合わせて植栽し、時間の経過とともに変化するよう工夫されています。 「国営ひたち海浜公園といえば、ネモフィラ」。そんなイメージが定着してきましたね。見頃は4月中旬〜5月上旬。園内の「みはらしの丘」に、ネモフィラ‘インシグニスブルー’が約450万本植栽され、一面がブルーで彩られます。空と海、そしてネモフィラのブルーに囲まれたすがすがしい景色を、ぜひ一度は味わいたいものです。 「国営ひたち海浜公園」内にある「常陸ローズガーデン」では、約120品種3,400本のバラが植栽されています。見頃は春が5月中旬〜6月上旬、秋が10月下旬〜11月上旬です。写真の「ローズレリーフガーデン」は、園路によって一輪の大きなバラを表現。大観覧車から眺めると、目を引くデザインポイントになります。また、バラの原種の一つのハマナスは、茨城県が太平洋側の自生地の南限ということもあり、約1,600本が植栽されています。 バラが見頃を迎える期間は「茨城バラまつり」を開催。ガイドスタッフによる解説が聞ける「常陸ローズガーデンツアー」が行われるほか、フォトレッスンやコンサート、バラにまつわるクラフト体験など、さまざまなイベントに参加できます。 また、バラと同時期に「BMXコース周辺」のカリフォルニアポピー、「大草原フラワーガーデン」のリナリア、シャーレーポピーが楽しめるので、これらのエリアへもぜひ足を運びましょう。 夏はヒマワリ&もこもこコキアを満喫!秋は紅葉して真っ赤に染まるコキアの丘が大人気 8月中旬には、ヒマワリが見どころに。「みはらしの里」では約4,700㎡の敷地に咲く約3万本のヒマワリが楽しめます。「ヒマワリの迷路」がつくられているので、ゴールを目指してヒマワリ畑の散策を楽しみましょう。一方、「泉の広場フラワーガーデン」では、40品種ものヒマワリを植栽。色、形、大きさなど、育ててみたいヒマワリを見つけに足を運ぶのもオススメです。 7月上旬頃は、「国営ひたち海浜公園」の「みはらしの丘」に約3万2,000本が植栽された、グリーンのコキアが見られます。このモコモコっぷり、なんだかカワイイと思っちゃいませんか? 青空をバックに、たくさんのグリーンのモコモコと一緒にぜひ写真を撮りましょう。インスタ映えすること間違いありません! 8月中旬から約1週間の期間限定で、コキアが見られる「みはらしの丘」エリアのみ夜間開園が行われます。楽しいBGMが流れる中、LEDによるカラフルなライトアップが見どころ。毎年テーマを設けて繰り広げられる、光と音楽の演出を堪能しましょう。さまざまな屋台が現れる、グルメブースの特設会場にもぜひ寄り道を。 そして、コキアが本領を発揮するのが10月中旬から。グリーンから、なんと真っ赤に紅葉するんです。なだらかな丘一面が真っ赤に染まる景色は一見の価値あり。ぜひ秋のコキアを見に出かけましょう。同時期に、赤、白、ピンクのコスモス、ススキ、オギなど、楚々とした秋の花も見頃になります。 広すぎる園内では、周遊する「シーサイドトレイン」の活用を!オシャレなレストランやカジュアルなカフェも充実 「国営ひたち海浜公園」では、園内9カ所の停留所を周遊する「シーサイドトレイン」が運行しています。3歳以上が有料で一人600円の一日周遊券を購入すれば、乗り降り自由で乗り放題。敷地が大変広いので、普段あまり歩き慣れていない方にはオススメ。1周約40分かけて回るので、まずは「シーサイドトレイン」で園内をぐるりと巡って、見たい場所の目星をつけるのもいいですね。ただし、ペットの同伴は不可となっています。 「国営ひたち海浜公園」内には、レストラン1店舗、軽食店(飲食スタンド・カフェ)が7店舗入っています。写真は、海が見えるガラス張りのカフェテラス、グラスハウスの「Sea Side Café」。営業時間は9:30〜閉園1時間前まで(季節によって異なる)、ラストオーダーは閉園1時間15分前まで。 「Sea Side Café」のメニューには、「グラスハウスのそばめし」(800円)や「グラスハウスのエビピラフ」(800円)、シフォンケーキ(650円)、常陸野ハニードーナッツ(450円)、花をイメージしたソフトクリーム(620円)、ネモフィラをイメージしたアイス(550円)などがあります。 ちなみに、園内では飲食店が充実していますが、飲食物の持ち込みもOK。青空の下でお弁当やおやつを広げて、休憩するのもいいですね。 Information 国営ひたち海浜公園 所在地:茨城県ひたちなか市馬渡字大沼605-4TEL:公園029-265-9001 バーベキュー広場予約029-265-9002 プレジャーガーデン(遊園地) 029-265-8185http://www.hitachikaihin.jp 英語サイト: https://hitachikaihin.jp/en/ アクセス:公共交通機関/JR常磐線「勝田駅」東口より、バスロータリー2番乗り場茨城交通バス「海浜公園行き」にて約15分(タクシー15分)、「海浜公園西口」または「南口」下車すぐひたちなか海浜鉄道湊線「阿字ヶ浦駅」下車、徒歩約20分(海浜公園南口)車/東京方面:常磐自動車道~(友部JCT)~北関東自動車道経由、常陸那珂有料道路「ひたち海浜公園IC」より県道247号線 約1㎞いわき方面:常磐自動車道「日立南太田IC」より約15㎞ 休園日:月曜(祝日にあたる場合は翌日の火曜)、12月31日、1月1日、2月の第1火曜日からその週の金曜日まで ※但し、3月26日~5月31日、7月21日~8月31日、10月1日~10月31日、12月25日~30日は無休 営業時間:9:30~17:00 ※但し、夏期7月21日~8月31日は18:00まで、冬期11月1日~2月末日は16:30まで 料金:大人(高校生歳以上)450円、シルバー(65歳以上)210円、小人(小中学生)無料 ※のりもの券は別途料金 駐車場:4,350台(普通車510円/1日)
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北海道

上野ファームの庭便り「バラも宿根草も! 思いっきり楽しむ夏の庭」
バラが咲く華やかなシーズンが到来 いよいよ北海道もバラのシーズンに入りました。バラを主役とした庭園は、全国にたくさんありますが、上野ファームの庭は、バラだけが主役ではなく、宿根草の中にバラが混じって咲いているような雰囲気です。バラと同じ時期から最盛期を迎える宿根草もたくさんあるので、すべての花が美しく咲き誇り、どの花も主役といえるくらい華やかなシーズンが、バラの咲く季節なのです。 大きな葉やボリュームのある花に埋まりそうになりながら、上野ファームのバラたちは、宿根草の隙間から私が主役といわんばかりに顔を出し、たくましく開花しています。いろいろな草花と一緒に咲くバラたちはとても素敵です。 周囲の植物によって表情が変わるバラ バラは一輪でも十分美しい花だと思いますが、共演させる花たちによって表情がまた違ってくるように思います。周りをどんな役者で囲むかによって、バラの雰囲気も変わるのだと思います。静かな小花と合わせたり、時には大輪のシャクヤクと競わせたりと、どんな植物と一緒に咲かせると面白いのか。いろいろと考えながら、あまりルールにはとらわれずに、バラと宿根草の庭づくりを楽しんでいます。 華やかなバラは、シンプルで素朴な野草とも実は相性がいいのです。野草とバラと聞くと、ちょっとアンバランスな気もしますが、その土地の植物と合わせて咲くバラも、オリジナリティーのある地域性が出て魅力的だと思っています。 大型の植物とバラのコンビネーション ボリュームある小さな花の塊とバラは、どちらの魅力もより引き立て合いながら、とてもよい関係をつくることができます。大型の植物を近くに植えることは、バラにとっては日陰をつくることになるので、あまりよくないとは分かっているのですが、上野ファームでは思い切って大きな植物を背景にもってくることもよくあります。豪華なバラと相まってダイナミックな植栽となり、それもまた楽しいシーンとなります。 例えば、サークルボーダーのホワイトエリアでは、2m近くになる大きなレースフラワーのような、バレリアナ・オフィシナリスを背景に、白いバラが重なるように見えて、とても素敵なイメージになります。 手前にはジギタリス、背後には大きなバーバスカムでバラを挟むように植栽しました。尖った雰囲気の植物は、丸い顔のバラととても相性がいいのです。また、写真では見えませんが、バラの後ろには細い園路があり、バラの背景に見えている植物は実は離れた場所に植わっています。こうした環境ならば、バラの背景に大きな植物をもってくることが可能です。見る角度や位置によって、バラの背景に何が見えるのかを考えながら植物を選ぶのは、とても楽しいことです。 上野ファームのバラは7月から見頃に 北海道はこれからがバラのベストシーズン。バラが咲き終わると今度は盛夏の花たちが一斉に開花を始めます。夏の間も途切れることなく、のびのびと花咲く植物が楽しめる北国の庭に、ぜひ遊びにいらしてください。 美しいバラと合わせて、さまざまな庭を楽しめる「北海道ガーデン街道」もチェックを!
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神奈川県

横浜とバラの歴史を刻み続ける「港の見える丘公園」
バラが最もふさわしい場所 2016年(平成28)4月に、バラ園がリニューアルされた横浜・山手の「港の見える丘公園」には、現在、約330種2,200株のバラが植栽されているそうですが、元々こちらの公園にバラが植えられたのは、1962年(昭和37)のこと。「港の見える丘公園」内にあるイギリス館に合わせて、イギリスの国花であるバラが植えられました。そしてその後、開港130周年にあたる1989年(平成1)、市制100周年を記念して、市民投票で一番人気が高かったバラを横浜市の花として制定したことに加え、最もバラがふさわしい場所として「港の見える丘公園」が選定されたのでした。 バラが最もふさわしい場所とは、一体どんなところなのでしょうか。今回は、その「港の見える丘公園」についてご紹介します。 横浜とバラの関わりを知る歴史 「バラが最もふさわしい場所」をひもとくには、横浜の歴史に目を向けることが大切です。まずは、横浜とバラの歴史の年表をご覧いただきましょう。 1859年(安政6)7月1日、横浜港開港。 1867年(慶応3) 山手地区が外国人居留地(きょりゅうち)として開放され、西洋館の街が完成 居留地制度は1899年(明治32)まで続きました。 1868年(明治1) 明治維新。 1870年(明治3) 山手公園が開園。フラワーショーが開かれました。 1872年(明治5) 英国商社ヴィーチ商会のクラマー氏が、モダンローズの赤いバラを出品して、居留人に注目されます。バラが居留地の庭園に植えられ、近くに住む日本人からは、「イバラボタン」と呼ばれます。バラは当時、なかなか入手出来ない高嶺の花でした。 日本初の近代バラの広告「英国産のバラ売ります。横濱山六十三番スミス」という広告が出ました。 1885~1888年(明治18~21) かつて山手にあったゲーテ座でフラワーショーが開催され、多くのバラが出品されました。 *ゲーテ座とは、「居留地外国人たちの憩いの場」であり、演劇、音楽会、舞踏会、読書会、宗教活動など、さまざまな催しがそこで行われました。 1885年からは、バラを含めた植物の品評会「草木花卉品評会」が、計4回行われ、アレンジメント、盆栽、シクラメンやベゴニアなどの鉢植えが出品され、賞が与えられました。 1回目の1等賞は、W.B.ウォルター夫人のバラのアレンジメント。ジェームス夫人のバラのコレクション。この頃は、まだティーローズが多かったようです。2回目以降は、日本のご婦人たちによる出品が増え、生花、鉢植え、バラの出品が増えていったそうです。 同時期、有名な英国人建築士のジョサイア・コンドル氏(1852年9月28日 ~ 1920年6月21日)が設計を手掛けた「鹿鳴館」(ろくめいかん)が、1883年(明治16)日比谷に完成しましたが、鹿鳴館の夜会において、バラの切り花が贅沢に使用されていたそうです。 こうして、当時の目新しいバラは、外国人や外国人と関わりのある職業の方やそのご夫人方(いわゆる当時横浜での上流社会の催しなどにおいて、中心的な役割を担っていた人たち)の間にまず広まり、徐々に一般庶民にも広まっていったのでした。 震災を受けてからの横浜とバラ 1923年(大正12) 関東大震災により山手地区の街は壊滅状態へ。 1929年(昭和4) 関東大震災時にアメリカのシアトル市から受けた援助のお礼として、桜の苗木3,500本を贈り、その返礼として、200種3,000本のバラが贈られました。それらのバラは、当時の野毛山公園、山下公園、横浜市児童遊園地に「日米親善のバラ」として植えられました。その中には、‘ラ・フランス’、‘フラウ・カール・ドルシュキー’(新雪)、‘オフェリア’などがあったと伝えられています。 1935年(昭和10)から「バラ祭り」が開催され、「バラ行進」などは現在の「国際仮装行列」の原形になりました。 戦争に突入してからの横浜とバラ 戦争のために「バラ祭り」などのイベントは中止され、バラもほとんどが姿を消してしまいました。 1937年(昭和12) 英国総領事公邸としてイギリス館が建てられ、1969年(昭和44)まで使用されます。 今もなお、「港の見える丘公園」内にある「イギリス館」についてもご紹介しましょう。 1937年(昭和12)、東アジアに散在する英国公館の施設を預かる上海の大英工部総署の設計により、英国総領事公邸が建てられました。建物北側玄関左に、「1937年ジョージ6世時代」を示す「GRⅥ 1937」と印した紋章がはめ込まれています。その後、1990年(平成2)に横浜市が旧英国総領事公邸を買収し、「イギリス館」として市の文化財に指定しました。 1939年(昭和14) 第二次世界大戦始まる。 1945年(昭和20) 8月15日、第二次世界大戦終戦。 終戦を迎えてからの横浜とバラ 1949年(昭和24) 3月15日、野毛山公園を会場に「日本貿易博覧会」が開催。横浜市と日本ばら会の共催による日米のバラの展示会では、サンフランシスコのバラ会より空輸された‘ピース’、‘ショーガール’、‘アームストロング’などが出品され、注目を浴びました。 1962年(昭和37) イギリス館の周囲にイギリスの国花であるバラが植栽されました。 1989年(平成1) 開港130周年、市制100周年を記念して、横浜市の花として「バラ」が制定され、バラを植栽するバラ園をつくるために、最もふさわしい場所として「港の見える丘公園」が選定されました。 港の見える丘公園内にバラ園が誕生 このような歴史的背景を持ち、横浜港を見下ろす「港の見える丘公園」に以前からあったバラが整備されて「港の見える丘公園内バラ園」は、1991年(平成3)5月に開園しました。 そして、2016年(平成28)に、「港の見える丘公園内バラ園」は、イギリス館前が「イングリッシュローズガーデン」に、大佛次郎記念館前が「香りの庭」に、そして111番館前にかけてが「バラとカスケードの庭」へとリニューアルされ、宿根草や一年草との混植のガーデンとなりました。さらには、2017年(平成29年)に横浜で大々的なイベント「第33回全国都市緑化よこはまフェア」が開催され、多くの人が横浜を、そしてバラの咲くガーデンを訪れたのです。 このように、これまで横浜は、バラと深い歴史でつながってきました。これからも「市の花」である「バラ」と共に、共存、発展していくことと思います。
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山梨県

花の庭巡りならここ! バラが爛漫と咲き乱れる「河口湖 音楽と森の美術館」
コンセプトは王侯貴族が住んでいる庭! 「河口湖 音楽と森の美術館」 「河口湖 音楽と森の美術館」は、中世ヨーロッパの王侯貴族が愛したオルゴールの世界を楽しんでもらおうと、「王侯貴族が住んでいる」というコンセプトのもと、1999年にオープンしたオルゴールミュージアムです。2003年にはオールドローズを中心とした庭がつくられ、さらに05年には「王妃が庭の片隅につくった、バラを楽しむためのプライベートガーデン」をテーマに、本格的なガーデンが誕生。ローズガーデンのデザインは、ガーデンデザイナーの保立美智子さんが監修し、バラの品種は中田邦子薔薇研究所の中田邦子さんがセレクトしました。 富士山を望む河口湖畔という立地から、このガーデンは日本の風土、風景に溶け込む「自然風景式庭園」を目指しており、自然樹木の間にバラがのびやかに調和する景色を堪能できます。 希少な原種のバラやオールドローズが息づく 中世をイメージさせるローズガーデン 2万3176㎡の敷地を抱く「河口湖 音楽と森の美術館」は、庭園の散策は20〜30分で一巡でき、コンサート鑑賞、お買い物と合わせて2〜3時間の観光が楽しめます。 バラは約720品種1,200株が植栽され、一番の見頃は6月上旬〜中旬。庭園内は「オールドローズエリア」「モダンローズエリア」「フレンチローズエリア」「音楽関連の名前がついたバラを集めたエリア」とテーマによってゾーニングされています。特に「中世王侯貴族が愛し守ったオールドローズ」のコーナーは、数多くの原種のバラやオールドローズが集められており、希少品種も多く見応えがあります。 ガーデン内では視界を遮るアーチを多用し、空間を仕切って場面転換をはかっています。オベリスクは園内に12基。シンメトリーに配してバラ2品種を仕立てており、その組み合わせ術は自邸の庭へのヒントになりそうです。 年間28万人が訪れる「河口湖 音楽と森の美術館」では、オルゴールミュージアムはもちろんのこと、ガーデンのファンも。「手入れが行き届いている」と評判で、リピーターが多く訪れています。 園内には高さ280㎝×幅255㎝のアーチがいくつも設けられ、バラ‘夢乙女’、‘バレリーナ’、‘コーネリア’、‘パーペチュアル・ユアーズ’などを仕立てています。 バラの季節以外も、春はスイセンに始まり、コブシ、ユキヤナギ、シャクナゲ、カリン、アジサイ、サルスベリ、クリスマスローズなどが開花リレーを見せ、四季を通して花で彩られるナチュラルガーデンを観賞できます。 ペット同伴は不可(小型犬なら預かり可)、館内禁煙、飲食物の持ち込みは不可となっているので、マナーを守って利用しましょう。 ガーデンの散策とともに 中世の贅沢な自動演奏楽器&オートマタを楽しもう 「河口湖 音楽と森の美術館」の真骨頂、ミュージアムのオルゴールやオートマタ(自動人形)の見学も、ぜひ楽しみましょう。一日7回の実演コンサートが行われているので、約100年前の人々の心を癒した音色を実際に聴いてみてはいかがでしょうか。デジタルでいつでもどこでも音楽を再生することができる現代にあって、音楽をいつでも聴けることは贅沢の極みだった時代の荘厳な音色に、心を打たれること間違いありません。 豪華客船タイタニックに搭載予定だった自動演奏楽器に合わせて、オペラ歌手が歌うコンサートなど、趣向を凝らしたイベントを楽しめます。 雄大な富士山を望みながらのランチは格別! ミュージアムショップでのお買い物も楽しもう 「河口湖 音楽と森の美術館」内には、レストランが併設されています。「森のレストラン」の営業時間は11:00〜15:00(ラストオーダー14:30)、客席は80席あります。ランチの価格は2,000円前後。地元の旬の食材を使ったコース料理「季節のスペシャルランチ」2,300円、郷土料理のほうとうを西洋風にアレンジした「西洋ほうとう」1,500円がオススメです。 富士山を望む絶景のもと、おしゃべりに花を咲かせながら、ティータイムを楽しむのもいいですね。ケーキセットは950円。数種の中からお好みのケーキをセレクトでき、ドリンクはコーヒーまたは紅茶がつきます。 「河口湖 音楽と森の美術館」では、お土産コーナーももちろん充実していますよ。ミュージアムショップの営業時間は9:30〜18:30。オルゴール、ワイン、アクセサリー、食品などが人気です。品揃えの主な価格帯は1,000円〜。 最後に、「河口湖 音楽と森の美術館」でしか買えない、オリジナルチョコレートをご紹介しましょう。ト音記号の形が愛らしいチョコレートは、ミルク、ビター、ホワイトの3種類が揃います。単品で616円、アソートで1,029円。ぜひお土産にどうぞ。 Information 河口湖 音楽と森の美術館 所在地:山梨県南都留郡富士河口湖町河口3077-20 TEL:0555-20-4111 https://kawaguchikomusicforest.jp アクセス:公共交通機関/富士急行線河口湖駅よりタクシーで約16分、または河口湖周遊レトロバス「オルゴールの森美術館」下車すぐ 車/中央道河口I.Cより国道137号線約15分 オープン期間:通年 休館日:毎年冬季休館日あり(2020年は1月14日~24日、2月28日) 営業時間:10:00~17:30(最終入館…17:00) 料金:大人1,800円、大高生1,300円、小中生1,000円 駐車場:約300台(入館する場合、無料) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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イギリス

イギリス「ハンプトン・コート宮殿」の庭【世界のガーデンを探る旅11】
スペインのアルハンブラ宮殿からスタートして、ヨーロッパの歴史とともに、イタリア、フランス、そしてオランダと、いろいろな庭を見てきましたが、いよいよナポレオンもヒトラーも渡れなかったドーバー海峡を渡って、イギリスの庭を見ていくことにしましょう。 今回はロンドン郊外、テニスで有名なウィンブルドンの近くにあるハンプトン・コート宮殿です。 ハンプトン・コート宮殿を正門からご案内 まずはハンプトン・コート宮殿(Hampton Court Palace)の全敷地を確認してみましょう。写真手前の広場に正門があり、建物の奥に放射状に広がるのが、中央に大きなプールがあるオランダ式とも呼ばれる整形式庭園で、まっすぐ奥へと長いプールが続いています。毎年7月上旬に行われている大イベント「ハンプトン・コート宮殿 フラワー・ショー」は、このプールの周りで開かれています。 テムズ川河畔に沿って広がるハンプトン宮殿ですが、空から見ると写真右手が南側になり、テムズ川と微妙な角度で、宮殿とその周りに庭が配置されていることがよく分かります。宮殿を東に抜けると大きなオランダ式ともいわれる整形式のグレート・ファウンテン・ガーデンが、まるで無限の広がりを持っているかのように目の前に現れます。そして、その右側には、フランス式整形庭園が南側のテムズ川に向かって広がっています。川沿いには船着き場があり、下流のロンドン中心部(写真奥側)から船で来ることも可能です。 宮殿は、1521年に、イングランドの聖職者で政治家だったトマス・ウルジー氏によって建てられました。しかし、そのあまりの美しさにヘンリー8世が妬んだので、すぐに王のものとなりました。元々はイタリアルネサンスへの憧れのもとつくられた、チューダー様式とゴシック様式の入り交じった左右対称の幾何学的模様の宮殿で、幾度もの改築や改修が施されながら、18世紀にほぼ現在の形になりました。その後、1838年に大改修の工事が終わると、当時のビクトリア女王によって一般公開されるようになったのです。敷地内にある「プリヴィ・ガーデン」は、1995年の大改修により建設当時の姿に復元されて現在に至っています。 庭は、宮殿の東側と北側に広がっていますが、東側の大きい場所から順に「グレート・ファウンテン・ガーデン」、テムズ川に向かって伸びる「プリヴィ・ガーデン」、その横、宮殿の南側に2つの庭「サンクンガーデン」と「ポンドガーデン」があります。宮殿の北側には「ローズガーデン」や「キングサリのトンネル」、さらには有名な「メイズ(迷路)」、高く刈り込まれた生け垣の迷路などが宮殿を取り巻くように配置されています。 庭園を散策しながら特徴をご紹介 きれいに刈り込まれたイチイは、デアーライン(家畜が下枝を食べたような形)と呼ばれる下枝の刈り込みによって、見通しを確保し広がりを見せています。 シルバーリーフのシロタエギクと、紫花のヘリオトロープとを組み合わせた落ち着いた色合いで、フランスやイタリアの花壇植栽とはまったく違うテイストです。 宮殿から南に広がる「プリヴィ・ガーデン」 当時は新興国だったイギリスの、イタリアルネサンスとフランス文化への憧れが顕著に現れた、見事なまでのフォーマルガーデンです。 この庭は1995年に再現されましたが、完璧なまでに幾何学的な左右対称庭園です。イギリスらしく両側は小高い土手に囲まれ、きれいにメンテナンスされたフォーマル庭園が俯瞰できるようになっています。左側の土手の上には5m以上の高いシデのトンネルがあり、あまりにも人工的な幾何学模様にイギリスらしさが加味されているように思われます。 宮殿横に可愛らしい「ノットガーデン」とオランジェリー 草ツゲの緑のフレームの中は、ベゴニア・センパフローレンスが。はっきりとした色の対比がイタリアの庭を思い出させます。これも、ルネサンスへの憧れの表れなのでしょう。その奥にはオランジェリー(温室)があります。 大きく立派なオランジェリーの前には、テンダー(寒さに弱い植物)な植物の鉢植え。これらの鉢は、すべて冬前にはオランジェリーの中へ入れ、寒さから守ります。 一番の見せ場「サンクンガーデン(沈床花壇)」 オープンで広い「プリヴィ・ガーデン」は緑が中心でしたが、このサンクンガーデンは周りを高い生け垣で囲み、完全に周囲から隔離された空間になっています。 春は、チューリップとパンジー、夏はサルビアやマーガレット、デージー、シロタエギク、そして赤いゼラニウムとベゴニアでカラフルに植栽され、ここではイギリスらしい色とりどりの花が主役になっています。 隣のポンドガーデンは、サンクンガーデンより一回り小さくて色合いもデザインもシンプルです。素敵な2つの庭が並んでいるのも何かもったいないような気がしますが、はっきりと生け垣で区切られているのはイギリスらしい庭の見せ方です。 世界最高齢のブドウの木は、1768年にケイパビリティー・ブラウン氏によって植えられたと伝えられています。イギリスの庭づくりを根底から変えた天才造園家であるランスロット・ケイパビリティー・ブラウン氏については、また今後ご紹介する予定です。 北側の園路には、ゴミ箱さえもブリティッシュグリーンにペイント。ご存じのようにイギリス人が大好きな色です。 イギリスらしい庭のデザインといえば、ボーダー花壇。冬の寒い西風から植物を守るレンガの壁(ウォール)に沿って手前に低い植物、奥へ高い植物を組み合わせて、細長く配置する手法で、イタリアでは見られないスタイルです。さまざまな植物をパッチワークのように組み合わせて植えていく、イギリスでは当たり前に見られる手法は、イギリス庭園史上もう一人の偉人として知られるガートルード・ジーキル女史が始めたもので、今もイギリスの花壇植栽はこの手法がもとになっています。 日本でも憧れて育てる人が多いキングサリをトンネルに仕立てた場所もあります。イギリスでも、なかなかここまで見事な景色にはお目にかかれません。 ハンプトン・コート宮殿は、さまざまなタイプの庭や歴史が詰まっていて、一日いても飽きることはありません。ある意味、ここからイギリスの庭は始まったともいえるでしょう。次回からは、今、ガーデニングの本場といわれているイギリスの庭巡りの旅を始めるとしましょう!
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神奈川県

バラの庭づくり初心者が育んだ5年目の小さな庭
庭づくりのはじまりは2株のバラ 神奈川県藤沢市、一戸建てが立ち並ぶ閑静な住宅街に、Yさんの小さな庭はあります。玄関前の花壇を中心に、道路に面したスペースに鉢植えをたくさんレイアウトしたオープンなつくりで、バラの季節になると、道行く人はその美しさに思わず目を向けていきます。 Yさんのバラ物語が始まったのは5年前、新築の家に越して来た時でした。それまで園芸にはさほど関心がなく、庭植えが唯一可能な玄関前の花壇も、業者にお任せでした。しかし、そこに転機が訪れます。花壇に植わっていたコニファーを目にしたお母様が「コニファーは大きく育つから、この場所にあるといずれ困るはず」と、すっぽり抜いてしまったのです。 花壇にあいた穴に困ったYさんは、憧れのバラでも植えてみようかと思い立ちます。そして、バラ専門店の「京成バラ園」に赴いて、初心者でも育てやすい丈夫なバラを教えてもらいました。すすめられたのは、明るいピンクの‘バイランド’と、優美な白バラ‘ボレロ’。どちらも病気に強い四季咲きのフロリバンダ種で、コンパクトなサイズ感も玄関先のこの場所にぴったりでした。 ‘バイランド’は日当たりのよい花壇を気に入ってくれて、順調に育ちました。今もよく咲くその姿は、通りがかる人々に陽気に挨拶する看板娘のようです。白い‘ボレロ’のほうは、日当たりがよすぎたからか一時弱りましたが、郵便受け脇の半日陰に移すと健やかに成長するようになりました。 はじめの2株がうまく花開いたことで、バラは思ったよりも丈夫で、意外と簡単に育つのかな、と感じたYさんは、バラの世界にどんどん魅せられていきました。 赤いバラに心惹かれて庭づくり それからは気になるバラを、一つ、また一つと増やしていきました。玄関前の花壇にはスペースがなくなったため、鉢植えでの栽培も始めました。手塩にかけたバラがきれいに咲いた時の喜びと達成感を知ったYさんは、バラの栽培にますます熱中していきました。 ある年は、赤いバラに心惹かれて、赤いバラばかりを買い求めました。ドイツ語で「赤ずきんちゃん」という名の通り、赤いケープをまとったような愛らしい姿の‘ロートケプヘン’に、明るく華やかな赤が印象的な‘ジークフリート’。「赤いバラは、白やピンクの柔らかな色合いの景色を、ぐっと引き締めてくれるんですよ」と、Yさん。 家の周りをバラの回廊に 鉢植えの置き場所もなくなったので、今度は家の外周の地面を利用しようと土を耕し、つるバラを植え込んでアーチやオベリスクに立体的に仕立ててみることにしました。玄関脇から家の西側の壁沿いを彩るのは、フェンスに絡まる白バラ‘ブノワ・マジメル’と、ピンクの‘ビアンヴニュ’。柵の左側にあるお隣さんの花壇とコラボレーションしています。 家を囲む通路の幅は、わずか80㎝。隣家の半日陰になる場所ではありますが、Yさんの日頃の観察と手入れによって、バラたちはよく花をつけ、美しい花の回廊が実現しました。 鉢植えトラブルを乗り越えてバラの庭を充実 Yさんのバラコレクションは、5年の間に鉢植えは30株、地植えが20株、計50株を超すまでになりましたが、鉢植え栽培ならではのトラブルもいろいろと体験しました。ある時、6鉢のバラの様子がおかしくなりました。花が咲かず、シュートも出ず、葉にも元気がなくて、成長が止まってしまったかのよう。鉢から出してみると、なぜか土がドロドロになっていて、根腐れをしていると気がつきました。 さらによく鉢の中を調べてみると、各鉢に決まって2匹のミミズがいました。ミミズは益虫と思って当初は気づきませんでしたが、調べてみると、どうやらそのミミズが犯人。鉢にいたのは、庭の土を耕して土作りをするといわれるフトミミズではなく、頭の尖った細いシマミミズでした。 有機物を食べるシマミミズが、堆肥や肥料といった餌を求めて近くの鉢にもぐり込み、粘り気のある糞をして鉢土をドロドロにしてしまった、というのが事の真相。シマミミズは、ミミズコンポストに使うには最適ですが、鉢植えに入り込まれるとやっかいなことになってしまうようです。 バラが休眠期の冬になるとYさんは、被害を受けたバラの根や鉢をきれいに洗って植え替えをしました。虫が苦手だったYさんですが、いまや愛するバラを救うためなら、シマミミズやコガネムシの幼虫退治もできるように。美しく咲くバラの姿を求めて、手探りの試行錯誤が続きます。 バラの庭が広げてくれる世界 バラの季節になるとYさんは、次々と咲く花を惜しげもなく摘んではブーケをつくって、友人やご近所さんに贈ります。「庭咲きのバラは、いろんな色を合わせても不思議とうまくまとまるんですよ」とYさん。うっとりするようなブーケのおすそ分けは、みんなを幸せな気持ちにします。 庭作りを始めたことでYさんには、園芸の師匠と仰ぐご近所さんや、憧れのナチュラルガーデンを持つマダムといった、素敵な花友だちができました。最年少の花友さんは、近所に住まう幼稚園児の男の子。パンジーの押し花を教えてあげたり、一緒にローズマリーのハーブの香りを嗅いだり、小さな庭で花好き同士の楽しい時間が生まれます。Yさんにとってこの庭は、日々のささやかな幸せとみんなの笑顔を運んでくれる、かけがえのない空間です。 併せて読みたい ・平成園芸を彩った三種の神器「バラ」「クレマチス」「クリスマスローズ」 ・「私の庭・私の暮らし」インスタで人気! 雑木や宿根草、バラに囲まれた大人庭 千葉県・田中邸 ・バラの専門家が教える! 鉢植えバラの剪定方法
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兵庫県

花の庭巡りならここ! インスタ映えする景色の宝庫「淡路島国営明石海峡公園」
一年を通してさまざまな表情が楽しめる 「淡路島国営明石海峡公園」 2002年に1期オープンした「淡路島国営明石海峡公園」は、約100ヘクタールの大規模な土取り跡地の自然を回復し、国際的でリゾート感あふれる海辺の園遊空間の創造を目指して整備されました。2022年7月現在、計画面積の約45%となる43.1ヘクタールが開園しています。 園内のガーデンは広大な敷地を生かし、季節の旬の花を群植させるダイナミックな演出が持ち味。面で魅せる花壇の数々は迫力満点で、春はスイセンから始まり、チューリップ、リビングストンデージー、アジサイ、ヒマワリ、コスモス、そして冬のクリスマスローズとつなぐ、一年を通して見ごたえのある景色が広がります。毎年植栽計画を変えて、違った表情に演出しているため、リピーターが多いのも特徴です。「インスタ映えする写真が撮れるガーデン」を目指し、さまざまなフォトスポットの仕掛けが満載で、記念の写真をたっぷり撮れるのも魅力。 ガーデンのほかにもバーベキュー広場や150もの遊具が集まった大型複合遊具「夢っこランド」もあり、家族で一日過ごして飽きない公園です。 開花期を揃えた迫力満点の演出 面で彩るチューリップ花壇を一度は見ておきたい! 温暖な瀬戸内海の淡路島では、寒咲きナノハナの見頃は1〜2月上旬。 芝生と水の流れなどで構成された「移ろいの庭」の花景色を前に、「春はもうすぐ、そこまでやってきている!」と心が躍ります。 奥に見えるガゼボは小高い丘の上に建っており、ここから眺めると海が借景として広がり、ブルーとイエローのコントラストが映えるビュースポット。園内では飲食の持ち込みは自由なので、ここでお弁当を広げての休憩もOKです。 3月下旬〜4月中旬はチューリップの見頃です。「ポプラの丘」と「大地の虹」の2つのエリアを合わせると約4,600㎡にもなる花壇に、2025年は約100品種、168,000本のチューリップが開花しました。草丈や品種の開花期を揃える綿密な植栽計画に裏づけられたカラフルなガーデンは、迫力満点です。毎年テーマを設けて配色を変え、面で魅せるダイナミックな景色をつくっており、多くのリピーターが訪れます。 トップシーズンには「春のカーニバル」のイベントを開催。オランダの衣装を試着しての撮影会など、毎年さまざまな体験コーナーを実施しています。写真に見える奥の風車はオランダをイメージしたもので、人の背丈ほどにセットしてあり、人気のフォトスポットです。 リビングストンデージーの見頃は4月中旬〜5月上旬。600㎡に約1万5000株が植えられています。這うように広がり、絨毯のように花が埋め尽くす特性を生かし、さまざまな色をミックスさせています。太陽の光を受けてキラキラと輝く宝石のような姿にうっとり。リビングストンデージーは光に反応して開花する性質があるので、お天気のよい日を選んでのおでかけがオススメです。 「淡路島国営明石海峡公園」内では、「トラムカー夢ハッチ号」が1時間に1〜2本の間隔で運行しています。ガイドスタッフが同乗し、園内の開花スポットを片道10分かけて案内します。一日乗り放題で、300円です。 ※夢ハッチ号は、車両故障のため、当面の間運行を休止中 園内は、ペット同伴OK(ただし建物内と乗り物は不可)。リビングストンデージーを、上から眺めながらのお散歩を楽しみましょう。ただし、リードをつけることが義務づけられています。また、糞の始末などのマナーもしっかり守りましょう。 また、「淡路島国営明石海峡公園」内は、禁煙となっています。ただし、喫煙所が設けられているので、愛煙家の方は所定の場所で休憩してください。 夏はアジサイにユリ、そしてヒマワリ畑 元気いっぱいに咲き競う圧巻の景色を楽しもう 6月上旬〜7月上旬には、アジサイが見頃に。約16品種約1万4000株が豊かに園内を彩ります。手前のアメリカノリノキ‘アナベル’は、ライムグリーンで咲き始め、咲き進むとピュアホワイトへと移ろう清楚な姿が大人気の品種です。 ユリの見頃は6月上旬〜7月中旬。約35品種1万2000株が植栽されています。日当たりのよい場所には色鮮やかなスカシユリなどを、木陰など半日陰の場所にはカノコユリやリーガルリリーなど、生育に適した植栽が見られます。 「大地の虹」の南と北エリアでは、7月上旬〜8月中旬がヒマワリの見頃で、花色や花形が異なる約40品種3万6000株を植栽しています。なだらかな丘に沿って縫うように散策の小道が続くので、ヒマワリ畑を背景にフォトジェニックな写真が撮れると、毎年大人気。南エリアは7月から咲き始め、北エリアは8月から開花するよう植栽時期を分けて、開花期が長くなるように工夫されています。 秋はダリアにコスモス、冬はクリスマスローズ 四季を通して何度でも足を運びたいガーデン ダリアの季節は9月下旬〜10月下旬。約600㎡の敷地に、矮性種が約6品種1万株、大輪高性種が約40品種160株も植栽されています。高性種を背景に、カラフルな色調をミックスさせた矮性種のダリア花壇が眼前に広がり、写真映えのする秋の人気エリアです。 9月下旬〜10月下旬は、コスモスが主役。花の色や形が異なる16品種と‘キャンパスシリーズ’などの遅咲き4品種を合わせて、約20品種5万株が見頃となります。写真の「ポプラの丘」エリアは、さまざまな花色をミックスさせて植栽。一方「大地の虹」花壇は、赤、ピンクの濃淡、白、黄色など、花を色ごとに分けて植栽し、ストライプの虹模様を描くデザインにしており、2通りの植栽術が楽しめます。 12月下旬〜4月上旬は、クリスマスローズが見頃となり、冬も魅了。原種や異種間の交雑種など、現在約130品種1,500株を植栽、毎年品種が増え、クリスマスローズ愛好家が多く訪れる聖地と化しています。 例年3月にクリスマスローズガーデンで講習会を開催。さまざまな品種の紹介や基本的な育て方など、約1時間かけてガイドしてもらえます。右写真のクリスマスローズの品種は‘エリックスミシー スノーダンス’。 ねじり鉢巻、タコさんのゆるい愛らしさ! ユニークな写真が撮れるインスタ映えスポット 草花で彩ったユニークなオブジェコーナーもご紹介しましょう。左は明石の特産品、タコさんのトピアリー。鉢巻姿がなんともおとぼけの表情で、愛らしいですね。写真には写っていませんが、タイもいますよ。右は阪神淡路大震災の復興のシンボルとなっている不死鳥の花火鳥。いずれのトピアリーも高さ3mほどあり、迫力満点です。季節によってビオラ、ベゴニア、アキランサスで彩っています。笑みを誘うインスタ映え写真が撮れると、大変人気のあるフォトスポットです。 ※公園の植物の品種数及び植栽本数については、年次ごとに変わります。 ハイシーズンの春と秋には、専門スタッフによるガイドツアーが無料で開催されます。園内を1時間ほどかけてゆっくり回るので、ぜひご参加を。 レストランや売店にも名物が 「淡路島国営明石海峡公園」内には、レストラン「花屋敷」があります。広い園内に歩き疲れたら、少し休憩を。営業時間は10時〜閉園時間の1時間前(季節によって異なる)。ラストオーダーは閉店の30分前まで。ランチの価格帯は1,000円前後で、オススメは土地名物の生しらす丼「淡路生釜丼」(4〜11月の季節限定)、タマネギスープつきで1,080円。屋内40席、テラス40席があります。 園内の売店では、淡路島の名産品がいろいろ揃っているので、お土産にぜひ立ち寄ってみましょう。オススメは特産品のタマネギスープ540円、タマネギ煎餅540円、公園オリジナル饅頭700円。 Information 淡路島国営明石海峡公園 所在地:兵庫県淡路市夢舞台8-10 TEL:0799-72-2000 http://awaji-kaikyopark.jp アクセス:公共交通機関/JR三ノ宮駅か舞子駅より高速バス乗り場へ 本四海峡バス 大磯号で淡路夢舞台前下車徒歩5分 車/神戸淡路鳴門自動車道 淡路インターより国道28号を南へ5分 オープン期間:通年 休園日:12月31日、1月1日、2月第1月曜とその翌日 営業時間:9:30〜17:00(3月、9月、10月) 9:30〜18:00(4月〜8月) 9:30〜16:30(11月〜2月) ※入園は閉園の1時間前まで 入園料:大人(15才以上)450円、シルバー(65才以上)210円、中学生以下無料
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イギリス

ロンドンの公園歩き 春のケンジントン・ガーデンズ編
故ダイアナ元皇太子妃ゆかりのケンジントン・ガーデンズ かつてはハイド・パークの一部だったというケンジントン・ガーデンズは、18世紀前半に、現在の形に整えられました。南北に抜ける道を隔てて、東側がハイド・パーク、西側がケンジントン・ガーデンズ。合わせた面積は、ロンドン中心部の公園として一番の広さを誇ります。北側の地下鉄クイーンズウェイ駅から一歩入ると、とにかく広い! ケンジントン・ガーデンズは、園内に建つケンジントン宮殿に15年間住まわれた、故ダイアナ元皇太子妃にゆかりの深い公園です。子ども好きだった彼女を偲んでつくられた、ダイアナ・メモリアル・プレイグラウンド(12歳までの子どもとその保護者専用の遊び場)が近くにあるせいか、親子連れを多く見かけます。今回は訪ねることができませんでしたが、流れる川のような噴水、ダイアナ・メモリアル・ファウンテンも、園内の見どころの一つです。 広い園内に花壇はほとんどありませんが、花や葉の美しい低木や灌木が植わっています。もちろん、大きな木々もたくさん生えていて、この緑の景観を途切れなく守っていくために、綿密な植林計画が立てられています。2023年までに年30~50本ペースで植林を続けるという計画ですが、それだけのスペースがあることに、まず、驚きます。 園内に、貸自転車のドッキング・ステーションを見つけました。ロンドン交通局が運営する貸自転車のシステムで、市内中心部に750カ所のステーションがあります。そばにある機械を操作して、予約なしですぐに使える仕組み。交通量の多い市内の道路を走るのは旅行者にはかなり怖いですが、公園内のサイクリングなら楽しめそうですね。 ここではまた、身体の不自由な方が楽に園内を回れるよう、リバティ・ドライブというカート運行サービスが、慈善団体によって行われています(予約制)。 芝生の広がるエリアでは、リスに出合いました。19世紀後半に北米から持ち込まれた、トウブハイイロリスです。在来種の赤い毛皮のキタリスは、南イングランドではほぼ見かけなくなってしまいました。トウブハイイロリスはガーデナーにとっては害獣といわれ、そういえば、筆者もかつて鉢植えの苗を食べられてしまったことがありましたが、緑の中で遊ぶ姿は可愛いですね。 今も王室メンバーの住まうケンジントン宮殿 とうとうケンジントン宮殿までやってきました! 19世紀に大英帝国を躍進させたヴィクトリア女王(石像)の生家であり、現在も、ウィリアム王子とキャサリン妃のご一家や、先日ご結婚されたハリー王子とメーガン妃をはじめとする、王室の方々が住まわれています。宮殿の一部は一般公開されていて、王室の歴史を垣間見ることができます。 そして、こちらがケンジントン宮殿のサンクンガーデン! 噴水のある長方形の池を、花壇が幾重にも囲むつくりです。庭園の3辺は、シナノキの仲間を誘引したトンネルがあって、異なる角度から庭を眺められるようになっています。 春の花壇は、チューリップ、ストック、パンジーなどを使った、明るい植栽。暗いトーンのピンクのストックの上に咲く、白、黄、ピンクのチューリップがなんともキュートです。夏になると、ゲラニウム、ベゴニア、カンナといった、より色鮮やかな植物に変わっていきます。 2017年4〜9月の間、この庭園は、故ダイアナ元皇太子妃の逝去から20年を記念して期間限定でつくられた、〈プリンセス・ダイアナ・メモリアル・ガーデン〉として公開されました。白を好んだ元皇太子妃を偲んで、白いチューリップやバラ、ユリを中心に、スイセンやヒヤシンス、ワスレナグサなどを可愛らしく挿し色に使った、ホワイト・ガーデンでした。 先日ご結婚されたハリー王子は、この庭で婚約発表をされました。もしかすると、このカラフルな明るい植栽は、王子のご結婚を祝って計画されたのかもしれませんね。 ケンジントン宮殿への入場は有料ですが、このサンクンガーデンは無料で見学することができます。また、サンクンガーデンの東側にあるケンジントン・パレス・パビリオンでは、庭園を眺めながら食事やアフタヌーンティーを楽しむことができます。ぜひおしゃれをして、優雅な気分でお出かけください。 〈ケンジントン・ガーデンズ 庭園情報 2018〉 通年開園、6:00~日没まで(季節によって、冬の16:15から夏の21:45の間で変動します)。最寄りの地下鉄の駅は、ランカスター・ゲート駅、クイーンズウェイ駅、ベイズウォーター駅、ハイ・ストリート・ケンジントン駅。 *ケンジントン・パレス・パビリオンは、18世紀に建てられたオランジェリー(近年はレストランとして使われていた)が改修中のため、期間限定で設営されたレストラン兼イベント会場です。オランジェリーは2021年に再オープンの予定。 Kensington Gardens, London W2 2UH https://www.royalparks.org.uk/parks/kensington-gardens 併せて読みたい ロンドンの公園歩き 春のセント・ジェームズ・パーク&グリーン・パーク編 イギリス流の見せ方いろいろ! みんな大好き、チューリップで春を楽しもう センスがよい小さな庭をつくろう! 英国で見つけた7つの庭のアイデア
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東京都

アジサイの名所が銀座に登場!新品種も勢揃い
2019「初夏のあじさいガーデン」 梅雨の季節を前に、ファンケル銀座スクエア10階の空中庭園に登場するのは、色とりどりのアジサイが咲き乱れるアジサイのガーデン。今年のテーマは「アンダルシアに想いを寄せて」。風情溢れるアジサイの花々が、都心の庭園を優美に彩ります。 全国から集められた、アジサイの希少品種の数々も必見です。 2019年の「初夏のあじさいガーデン」は5/31(金)~6/7(金)まで。入場無料で楽しめます。 以下は2018年のあじさいガーデンの様子です。 都心に現れたアジサイの園 『木々が光を遮る深い森の奥、濃密な緑がふと開けた明るい場所に、美しい湖とともに現れるアジサイの花園。青緑色の水をたたえた湖の湖面を白鳥達がすべるように進み、その奥の小高い丘には“白鳥城”の名を持つノイシュヴァンシュタイン城*がひっそりとそびえ立ち………。』 (*ドイツロマンチック街道の奥にあり、若き美しきバイエルンの王、ルートヴィッヒ2世が莫大な資金とその生涯をかけ、作り上げた世界一美しい城) ファンケル 銀座スクエア10階の空中庭園では、そんなロマンチックなストーリーで構成された「初夏のあじさいガーデン」が開催中です。アジサイといえば、雨を脇役としつつも控えめに季節の主役を演じてきた「和」のイメージが定着していますが、今回この庭に登場するのは、「エレガント」「ゴージャス」「ドラマチック」といった形容詞が似合う新品種。日本全国から集められた30種類以上の新品種が初夏の宿根草とともに庭を華麗に彩ります。 アジサイは近年、日本の育種家たちによって次々に新しい品種が生み出され、花弁の縁が別の色で彩られたピコティや繊細なグラデーション、フリルのようにたっぷりとした八重咲き、劇的な色変わりを見せるアンティークアジサイなど、その表情は多種多様な広がりを見せています。この庭を企画、制作した渡辺さくらさんは、今回の展示もそんな新しいアジサイのイメージを感じてもらえるように演出にも趣向をこらしたと話します。 「近年、日本で生まれる新品種のアジサイは、アジサイ寺などこれまで私たちが抱いていた、いわゆる水色の手まり状の花というイメージから飛躍し、花色も花形も驚くようなユニークな花がたくさん登場しています。そうした新品種ならではのアジサイの魅力を演出するために、あえてヨーロッパを舞台にした“あじさいガーデン”をつくることにしました。今回の庭は、白鳥を象った素敵な鉢との出合いからイメージを膨らませ、白鳥城といわれるドイツのノイシュヴァンシュタイン城と、その城が見下ろすアルプ湖をデザインコンセプトにしています」(渡辺さん) ここには、アジサイの育種が盛んな群馬県の「さかもと園芸」や「小内園芸」、常緑アジサイを生み出した「久保田花園」、秋色アジサイで有名な福岡県の「鬼木園芸」、‘万華鏡’や‘銀河’など優良品種を次々に生み出している島根県アジサイ研究会など、日本を代表するアジサイの育種・生産者たちの名品、新品種が一堂に会しています。ガーデン全体の雰囲気を楽しみながら、一つひとつの花に目を向けてみると、これらの新しいアジサイは、華麗でありながら、日本独自の感性による花の育種文化を色濃く反映していることが分かります。 例えば、「さかもと園芸」の代表品種でフラワー・オブ・ザ・イヤーを受賞した‘KEIKO’は、咲き始めは白の花弁にピンクの濃い縁取りがあり、次第に縁取りの色が溶け出るように全体がピンクがかって、さらにグリーンを帯びたアンティークカラーに変化するという複雑な色変わりが楽しめる花です。花形も最初はガクアジサイのように花の中心があいていますが、咲き進むに従ってふんわり手まり状に変わっていきます。こうした新しいアジサイは一見すると、その艶やかさに気を取られがちですが、そればかりでなく花の表情は繊細で緻密、そして時の移り変わりを楽しませるという趣向は、日本的な美意識のもとに生み出された花であることを感じさせます。今回の展示では新品種の‘ピンキーリング’もお目見えしています。 日本で生み出される新しいアジサイは、梅雨以降の庭の風景を変える重要な素材になりつつあり、今回の展示では庭のみならず寄せ植えやハンギングバスケットなど、アジサイのさまざまな演出方法が提案されています。 開催中はアジサイの鉢苗を販売しているほか、最終日には展示品の一部販売も行われます。市場ではあまりお目にかかれない希少種を手に入れるまたとないチャンスでもあるので、銀座にお出かけの際は足を運んでみては。これまでのアジサイのイメージを大きく変える日本の新しいアジサイの世界をご堪能ください。 Information 初夏のあじさいガーデン 5月26日(金)~6月1日(木) 会場:ファンケル 銀座スクエア10F スカイガーデン 問い合わせ:TEL 03-5537-0231(インフォメーションカウンター) http://www.fancl.jp/sq/ Credit 写真&文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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東京都

武蔵野の小麦畑の一角にオープンした市民のための憩いの庭「タネニハ」
花の生産農家が育てる「タネニハ」の庭 小麦の青い穂が初夏の風にそよいでいる。その広大な小麦畑の一角に、市民のための憩いの庭、タネニハが2017年秋のプレ・オープンを経て、2018年3月正式にオープンした。東京の多摩地区東部、東久留米市にある花の生産農家、秋田緑花農園の秋田茂良さんが3年前に企画し、自ら基本設計した庭だ。 400㎡の敷地内には、農園で生産された花苗や多摩地区に自生している野草など、多彩な植物が植えられている。タネニハという名前の「ニハ」は、古語で場を意味する。人と人、人と植物が出会い、さまざまなタネが育ってほしいという思いを込めて名づけられた。 秋田緑花農園のある一帯は、約300年前、江戸時代の半ばに開拓された農地で、茂良さんは農家の12代目にあたる。小麦やさつま芋畑は主に父親の貞夫さんが担当し、茂良さんは17年前から本格的に温室での花卉(かき)栽培を始めた。 温室ではゼラニウム、ビオラ、ヒューケラなどのポット苗が並び、中でも農園で育種し、第66回関東東海花の博覧会で金賞を受賞した極小ビオラ「多摩の星空」がひときわ可憐な姿を見せていた。 12代続く農家ならではの庭づくりを模索 秋田さんは小学生の頃、作文に「街を緑でいっぱいにしたい」と書いたが、その思いを強くしたのは、2011年の東日本大震災がきっかけだった。その年の7月から3年間、ヒマワリなどの苗を届け、被災した多くの人に喜ばれた。花によって人々の心が和らぐのを目の当たりにして、改めて植物の持つ癒しの力を教えられたという。 そうした経験から、「誰もが訪れて庭いじりに参加でき、のんびりと散策もできる、花農家ならではの庭をつくりたい」と思い立ったのが、タネニハ誕生の物語だ。農園のスタッフや友人のガーデナーたちに、多くの市民ボランティアが加わり、園内にある自宅付近の木々を移植。芝生の庭を囲むように季節の花々が植栽された。 東久留米は「平成の水100選」に選ばれた南沢湧水のある地で、その湧水池をイメージした池も設置された。農園やタネニハの水やりも、地下深くから汲み上げた豊富な地下水を利用しており、丈夫な植物が育つ一因になっている。 花農家は卸売りが中心だが、タネニハの前には直売コーナーが設けられた。自転車や車で通りかかった人たちが、鮮やかなゼラニウムの色に誘われるように足をとめ、時間をかけて花苗を選んでいく。 庭は人をつなぎ、新しい街の形を創造していく 植物の寄せ植えや、ハボタンの苗などを使ったリースづくり、またヒンメリ(麦のストロー・アート)づくりなどのワークショップも共催。農園の無農薬の小麦粉で、天然酵母のパンづくりをしているプチ・フールの宮沢ロミさんをはじめとして、東久留米の地域の仲間とのネットワークも充実し、公園でのマルシェ開催や、アートプロジェクトの実現などにも取り組んでいる。 「街と社会は人でつくられている。花から生まれた人との関係が広がってくれたら嬉しい」と語る秋田茂良さん。タネニハの芝生に寝転んで空を見上げていると「武蔵野の自然の中にいる」…そんな心地よさに包まれる庭だ。 Information タネニハ(taneniwa) 所在地:東京都東久留米市南町2-3-19 TEL:042-452-3287(受付8:00〜17:00) Blog: http://blog.kaobana.com/ Email:info@kaobana.com アクセス:公共交通機関/西武池袋線「ひばりヶ丘駅」または西武新宿線「田無駅」からバスで「イオンモール東久留米南下車」徒歩約10分。 車/「イオンモール東久留米」を目指し、所沢街道「南町4丁目交差点」から約600m。 オープン期間:火~土曜日、12:00〜16:30 閉園:日・月曜日、雨天・荒天日 季節閉園:1〜2月、7〜8月
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オランダ

オランダ「ヘット・ロー宮殿」と「キューケンホフ」の庭【世界のガーデンを探る旅10 】
前回までフランス式庭園についてご紹介してきました。フランス革命(1789年)により、かのマリー・アントワネットも処刑され、時代は貴族から庶民へと移り、ナポレオンの出現(1799年)によりヨーロッパは大きく動きました。ヨーロッパ中の憧れの的であったフランス式庭園は、イギリスをはじめ、あちこちでつくられるようになっていました。その動きがドーバー海峡を渡る前に、もう少し大陸の中の庭園のお話をしましょう。 オランダ王室の夏の離宮「ヘット・ロー宮殿」 15世紀、バスコ・ダ・ガマやコロンブスなどの活躍で大航海時代が始まりました。ポルトガルやスペイン、16世紀には、オランダやフランスも加わって、17世紀に入るとオランダ、イギリスが世界の海を支配し、世界中の富がそれぞれの国へ集まってきました。オランダでは、16世紀にトルコで見つかったチューリップが引き金になって、「チューリップ狂時代」が始まりました。 今回ご紹介する「ヘット・ロー宮殿」も、オランダ大航海時代に、オランダ王室の夏の離宮、狩猟の場所として1684年に建てられ、1975年まで実際に使われていました。広大な庭園は幾何学模様のバロック式庭園です。オランダ人の友達から聞いた話ですが、ナポレオンがフランスから攻め上がってきた19世紀初頭に、その素敵な庭園をナポレオンに見られるのが悔しくて、なんと埋めてしまったそうです。その後、近年になって庭は掘り起こされ、当時のままの姿に再建されて、1975年から貴重な博物館として一般公開されています(2018年1月8日から2021年頃まで宮殿の博物館部分は改修工事のため休館予定。工事期間中は、4〜9月のみ、庭園と厩、レストランのみ一般公開)。 アッペルドーン郊外の森を背景に、宮殿の各部屋の窓から遠くに見下ろす広大な幾何学模様の整形式庭園。きれいに低く刈り込まれた緑一色の草ツゲの間に、色砂利を敷き詰めて彩りを見せています。 春限定の公開庭園「キューケンホフ」 オランダにはもう一つ、必ず訪れてほしい庭があります。それは春の季節にだけ開園する「キューケンホフ」です。 3月中旬から5月中旬の春の間だけ一般公開されるこの庭は、あまりにも有名で、世界中から観光客が押し寄せます。元々ここは、かつてはハーブを育てていたことから「キューケンホッフ(台所の畑)」と呼ばれるようになりました。1949年に「キューケンホフ」があるリッセ市の市長のアイデアにより、球根を使った庭のコンテストが開催されたことをきっかけに、現在のような素晴らしい庭になりました。 実は、この場所は個人の持ち物で、リッセの球根生産者が春の期間だけ借りて、地域の自慢の球根や新品種を植え込んで、商談を進める見本市の要素も持ち合わせているのです。ですから、春の季節が終われば静かな森に戻ります。僕も以前、このキューケンホフで、鳥取の花回廊の寄贈による日本庭園をつくったことがありました。つくった当初は球根は植え込まれていなかったのですが、やはりそこはオランダ。翌年からは、球根で花いっぱいになっていたのです。 リッセ市のカラフルな球根畑 ここリッセは、球根の世界的産地でもあります。キューケンホフへ行くまでに、色とりどりの球根による縞模様の畑を見ることができます。この地域でなぜ球根栽培が盛んなのかというと、すぐ西側が砂丘になっている砂地であること、また偏西風が球根栽培に向いているためだと思われます。 球根の熟成のため、満開になってから花摘みをするので、毎年花のカーペットがリッセ市中に出現します。ただまったく平らな土地なので、空撮でなければこの壮大な景色を見ることはできません。 ムスカリとスイセンのあとは、ヒヤシンス。色合いはぐっと落ち着いて、よい香りが園内に溢れます。 そしていよいよ主役のチューリップが咲き始めると、世界に類を見ない光景で観光客を驚かせます。 球根でいえば、チューリップが終わると百合の季節ですが、ここではヨーロッパブナの芽吹きが始まって、黄緑色の世界が静かに広がり、それまでの華やかさとは打って変わって静かな公園に戻るのです。
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京都府

日本庭園巡りの旅へ 京都・瑠璃光院
瑠璃光院 京都市内の「出町柳駅」から叡山電車で約15分。風光明媚な八瀬比叡山にひっそりと佇む瑠璃光院は、平安時代から武士や貴族に愛されてきた保養所だったそうです。数年前から、春と秋の期間限定で拝観できるようになって、年々人気が高まり多くの人が訪れるようになりました。 端正な石張りと枝垂れもみじが迎える山門 「八瀬比叡山駅」から高野川の清流に沿って歩き、吊り橋を渡ると、瑠璃光院の山門が見えてきます。小雨降る生憎のお天気でしたが、ひんやりと湿った空気に、山間の八瀬の青葉がいっそう映えていました。途中、絶え間なく聞こえてくる蛙の声も心地よく、吊り橋を渡った瞬間、別天地へ足を踏み入れたような感覚を覚えました。 石張りの小階段と木塀の端正な山門は、しっとりと落ち着いた雰囲気。ゆるりと枝垂れるもみじが優しく迎えてくれました。階段を上ると、玄関へ続く苔ともみじの参道がありました。雨粒に混じって空から降ってくるかのような青もみじの葉と、足元に敷き詰められた苔の何と美しいこと。一歩一歩前へ進む度に、身も心も清められるようでした。 苔の緑潤う瑠璃の庭 数寄屋造りの書院から見える「瑠璃の庭」は、瑠璃色に輝く浄土の世界を表した主庭。数十種類の苔の合間をぬって、一筋のせせらぎが静かに流れています。たっぷりと雨水を含んだ苔はこんもりと鮮やか。もみじが羽を広げたように苔に寄り添う光景は、穏やかで優しい雰囲気に満ちていました。そして、見れば見るほど、「光が射すと、この景色はどう変わるのかな」「せせらぎは、浄土への道標を表現しているのかな」と、想像が膨らみます。きっと、シンプルで無駄のない植栽だからこそ、見る者は想像力を掻き立てられ、どんどんその世界へ引き込まれていくのかもしれません。 そして、この瑠璃の庭のもう一つの見所は、書院の2階からの眺めです。階段を上るやいなや目に飛び込んでくるのが、窓ガラス一面の青もみじ。さらに、薄暗い室内に置かれた黒塗りの机の天板に反射した緑が、一瞬、水面をたゆたう水草のように見えました。この光景を何と表現したらよいのでしょう。息を呑む緑のグラデーションの美しさに、しばらく言葉を失ってしまいました。こんな「窓に映る景色を室内に反射させて愛でる」風情ある見せ方に、ただただ、感動しました。 水と石の臥龍の庭 瑠璃光院のもう一つの庭が、「臥龍の庭」。この庭は、天にかけ昇る龍を水と石で表現した池泉式庭園で、人の心を解放し昇運の兆しをもたらすといわれています。斜面に沿って設えられた自然石の間を流れる水は、比叡山の清水なのだとか。 その先に設えられた池には、ひらひらと泳ぐ錦鯉。まるで、一幅の絵画を鑑賞しているような気分でした。そして、絶え間なく聞こえる水音と雨音のハーモニーに、身も心も洗われ癒やされました。 今回の日本庭園巡りの旅で、一番最後に訪れた瑠璃光院。どの庭園よりも青もみじの滴る緑と、苔の美しさを余すことなく堪能できた庭園でした。願わくば、今度は木漏れ日に輝く瑠璃の庭を見てみたい。そして、この青もみじが一斉に紅葉する秋に、もう一度訪れたいと思いました。 Credit 写真&文/前田満見 高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。 Instagram cocoroba-garden
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滋賀県

花の庭巡りならここ! 自然の恵みを五感で楽しめる、充実の観光ガーデン「English Garden ローザンベリー…
さまざまな雰囲気の庭が楽しめる「English Garden ローザンベリー多和田」 2011年9月にオープンした「English Garden ローザンベリー多和田」。園内敷地は約12万㎡、そのうちガーデンは1万3000㎡で、約30〜60分かけて散策できる広さです。「いつか自分の庭をつくりたい」とオーナーの大澤惠理子さん自らデザイン・植栽を手がけ、自然の景色に溶け込むナチュラルガーデンを完成させました。ガーデンは「宿根草の庭」「サクラ並木」「コニファーガーデン」「メドーガーデン」「シャガの庭」「ローズガーデン」「キッチンガーデン」の7つのエリアに区分けされ、それぞれ雰囲気の異なるガーデンスタイルを観賞できます。 四季を通しての開花リレーが楽しめる植栽となっていますが、トップシーズンはなんといっても5月上旬~6月。4.5mのロートアイアンをベースにした藤のアンブレラ仕立てが素晴らしい景色を生み出し、約400品種のバラ、約70品種のクレマチスが咲き誇ります。 ガーデン以外でも、園内には体験工房、野菜や果物の収穫体験、羊と触れ合える牧場、季節ごとのワークショップ、バーベキューなど、さまざまなレジャーが用意されているほか、レストランやショップも充実しており、家族で楽しめる観光ガーデンです。 里山の景観と調和する優しい花色でコーディネートした エレガントなガーデンには四季を通して足を運びたい! メイン通路「ココロード」では、毎年3月中旬〜4月中旬に「パンジー ビオラフェスティバル」を開催。育種家が愛情を込めて育てた、まるで芸術品のような美しい品種をセレクトし、寄せ植えやスタンディングミニ仕立てで、より美しく魅せるギャラリーにしています。 上写真は通路の奥にあるエンブレムの前の桜が満開になった4月上旬の様子。桜とパンジー、ビオラの競演は、必見です! 「English Garden ローザンベリー多和田」のトップシーズンともいえる、バラの見頃は、5月中旬〜6月中旬。約400品種1,000株ものバラを観賞できます。パステルカラーのバラを主とした優しい雰囲気で、無理な誘引をせずに木々や造形物に自然な表情で溶け込むように仕立てられています。 ローズガーデンでは、バラの顏がよく見えるように樹高を剪定でコントロールし、観賞しやすい高さで咲くよう調整されているのが嬉しいところ。周囲に添える宿根草も、あくまで引き立て役として控えめに植栽されています。 左写真はローズガーデンに咲くイングリッシュローズ‘ボスコベル’、右写真はキッチンガーデン横の建物に絡むつるバラ‘キュー・ランブラー’。 6月中旬〜7月上旬はアジサイの季節。ガーデン正面の入り口には、色とりどりのアジサイが飾られています。なかでも次々と開花し続ける四季咲きアジサイの‘霧島の恵’は、これから大注目の品種です。6月中旬は「秋色アジサイの展示」のイベントが開催されます。 夏のガーデンでは、ルリトラノオ、アガパンサス、ノリウツギ、八重咲きのユリが開花リレーをしていき、メイン通路「ココロード」ではサンパラソル、ニチニチソウ、トレニア、アンゲロニアなどが夏の暑さに負けずに元気いっぱいに咲き誇ります。カラーリーフプランツとの組み合わせ術も参考になりそうです。 9月下旬からシュウメイギクやヒガンバナが咲き始め、10月中旬ごろから秋バラが見頃になります。写真は、11月上旬の「宿根草の庭」の様子。オータムカラーに染まったガーデンと、深いブルーのベンチとのコントラストが目を引きます。 そして秋が深まり、11月中旬〜12月上旬にはメイン通路「ココロード」のメタセコイヤの紅葉が見頃に。斜めから差し込むやわらかな光を受けて、黄金に輝く景色を楽しみましょう。 2018年冬より、通年開園をスタート。花のない時期も、実やタネ、雪景色など、冬にしか出逢えないガーデンの景色を楽しめます。冬はバラが葉を落として枝のみになるので、つるバラの誘引・剪定の仕方を参考にするのもいいですね。 ガーデニングショップでは寄せ植えのワークショップを開催 ここでしか買えない品揃え満載のセレクトショップも人気 「English Garden ローザンベリー多和田」内にはガーデンショップがあり、貴重な育種ビオラ、秋色アジサイ、希少なクレマチス、クリスマスローズ、シクラメン、山野草など、セレクトのこだわりがうかがえる花苗が多数揃います。ウィッチフォードの鉢やワンダーデコールのガーデンオーナメントなど、ガーデン雑貨も素敵なものばかりで、目移りしてしまいそう。 土日・祝日には、寄せ植えのワークショップを開催しています。随時受付可能で、植木鉢の持ち込みもOKです。 「English Garden ローザンベリー多和田」のセレクトショップ「はぜの木」には、ここでしか購入できないオリジナル商品が多数揃うのも魅力です。特に人気なのが「伊吹ミルクジャム」「苺ジャム」「ほうじ茶ジャム」「緑茶ジャム」「季節限定のジャム」など、オリジナルジャム各種540〜1,037円(税込)。 人気商品は、ニュージーランド直輸入のハチミツを練り込んだ「やさしいハチミツキャンディー」357〜756円(税込)、「大地のレストラン」人気メニューの「チキンカレー」「ルンダンカレー」「グリーンカレー」各735円(税込)、「ねぎ野菜みそ」(要冷蔵)432円(税込)、「玉ねぎドレッシング」(要冷蔵)486円(税込)。 オシャレなカフェ&バイキング形式のレストランにリピーター続出 手ぶらで訪れて楽しめるバーベキューも! 「English Garden ローザンベリー多和田」内には、オシャレなカフェ「EASYTIME」があります。営業時間は10:00〜17:00(食事のラストオーダー16:00、ドリンク&スイーツのラストオーダー16:30)、客席は30席。価格帯は、ランチ980〜1,500円(税込)、スイーツ500円(税込)〜、ドリンク400円(税込)〜です(※グリーンカレーにはスープはつきません)。 写真左は人気メニューの「多和田ランチ」1,500円 (税込)。メインはビーフストロガノフかグリーンカレーから選べます。サラダにスープ、日替わりデリ5種盛りつき。 写真右はオーダーを受けてから焼き上げる、クロワッサンワッフル700円(税込)。クロワッサン生地を使ったサクフワの食感が楽しめます。 一方、「大地のレストラン」はバイキング形式で、料理研究家・関口絢子さんプロデュースの季節ごとに変わる10品を含む30品と、手作りデザート10品から選べます。営業時間は11:00〜15:00(受付は14:30まで)、料金は大人1,750円(税込)、小学生1,200円(税込)、幼児(4・5歳)850円、3歳以下無料 ※ソフトドリンク込み、アルコール・ノンアルコールは別途料金です。 また、300席を有するバーベキュー場があり、手ぶらで訪れて楽しめます。受付時間は10:00〜14:00、料金はベーシックコースで肉160g(牛80g&豚80g)、ウィンナー2本、野菜食べ放題(3〜5種類)、ごはんのセットで2,300円 (税込・入園料別途)。ほかに、お得プラン2,800円(税込)、女子会プラン2,800円(税込)、 滋賀こだわりプラン3,500円(税込) 、近江牛プラン5,400円(税込)があります。飲食物の持ち込みは禁止です。※飲み物は、好きなものを別途オーダー。 Information English Garden ローザンベリー多和田 所在地:滋賀県米原市多和田605-10 TEL:0749-54-2323 http://www.rb-tawada.com アクセス:公共交通機関/JR米原駅よりタクシーで約15分 ※米原市乗り合いタクシー「まいちゃん号」(要予約:0749-62-0106)利用可。 車/米原ICより約15分 オープン期間:通年 休園日:毎週火曜日(祝日営業)、年末年始 営業時間:10:00〜17:00(1〜11月) 10:00〜16:00(12〜3月) 料金:大人(中学生以上)800円、小人(4歳以上)400円、3歳以下無料 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/



















