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イギリス

ロンドンの公園歩き 春のセント・ジェームズ・パーク&グリーン・パーク編
ロンドン最古の王立公園 セント・ジェームズ・パーク セント・ジェームズ・パークは、ロンドンにある王立公園として最も古いものです。周辺にあるのは、トラファルガー広場やナショナル・ギャラリー、ウェストミンスター大寺院といった名所や、首相官邸や国会議事堂をはじめとする官庁、そして、バッキンガム宮殿。まさにロンドンの中心地にあります。東京で言ったら、さしずめ日比谷公園といったところでしょうか。 実は、筆者はかつてこの近くにある職場に通っていたので、ここはまさに「庭」のようなもの。水辺があり、鳥やリスが遊ぶ公園を突っ切って、仕事のおつかいに出かけるのは、とても楽しいことでした。セント・ジェームズ・パークは美しく手入れされた花壇が多く、いつでも花が咲いているので、花の公園のイメージがあります。今回は、春の花木が迎えてくれました。 元々は湿地の荒れ野だったというこの場所は、16世紀前半にヘンリー8世によって鹿の狩場となります。17世紀前半には、ジェームズ1世によって、なんと、ラクダやワニ、ゾウといった珍しい動物が飼われていました。 17世紀後半、チャールズ2世の時代になると、再計画されて、ぐっと公園らしくなります。木々や芝生が植えられ、今の湖の原型となる運河がつくられて、市民も入ることを許されるようになりました。そして、19世紀前半、名建築家で都市計画を任されたジョン・ナッシュによって、公園は自然主義的な形につくり直されます。直線的な運河はより自然な形の湖になり、ゆるやかに曲がる小径がつくられ、伝統的な花壇は灌木の茂みに変わりました。今ある公園の姿は、その時の設計からあまり変わっていないといいます。ジョン・ナッシュ、偉大ですね! 園内には緑の芝生が広がる一方で、花壇もたくさんがあって、季節ごとに植え替えられます。春の花壇は、やはりチューリップが主役級。 こちらはコントラストのある、かなりパンチの効いた配色です。背景となる灌木の暗い葉色を意識しての花選びでしょうか。 観光客も地元民もほっこり 緑あふれる水辺 テムズ川の方向を見ると、緑の向こうに、観覧車のロンドン・アイが覗いています。都心にこんな豊かな緑があって、そのスペースが市民に開放されているというのは、さすが、園芸大国イギリスならではですね。 セント・ジェームズ・パークの中央には、運河からつくり変えられた細長い湖が伸びていて、この茂みの向こうも湖です。園内のカフェは、緑と水辺、そして、湖の噴水が見られるベストポジションにあります。朝8時から開いているので、まだ静かな時間に景色をゆっくり眺めながら、朝食を楽しむことができますよ。 水辺に生えるのは、白い小花を咲かせるワイルド・キャロット(ノラニンジン)とブルーベル。ずっと昔から自生しているような、ナチュラルな植栽です。 細長く伸びるセント・ジェームズ湖。コブハクチョウやカモなど、17種の水鳥の棲みかとなっていて、身近に観察できます。この時は見られませんでしたが、ペリカンもいます! ペリカンの飼育は、1664年にロシアの大使から贈られたことが始まり。以来、40羽の歴代ペリカンがここで暮らしてきたそうです。 広がる芝生の上では、人々がデッキチェアにもたれて日光浴を楽しんでいます。実は、このデッキチェアは有料で、1時間で£1.80(約270円)。腰掛けると、どこからともなく係員さんが現れて、しっかり賃料を徴収されるのでご注意を。 ザ・マルを通ってバッキンガム宮殿へ 公園を出て、北側には、アドミラルティ・アーチからバッキンガム宮殿へと続くまっすぐな道、ザ・マルがあります。王室騎兵隊の日々の交代ルートとなるほか、戴冠式や結婚式など、王室の重要な行事の際には、パレードのルートとして使われます。道の先に、遠く宮殿が見えます。 宮殿まで行くと、待っているのはメモリアル・ガーデンズと呼ばれる花壇です。1901年、ヴィクトリア女王の逝去を悼んで、宮殿前に金色の像が載ったヴィクトリア記念堂と、それを囲む半円形の花壇がつくられました。 冬から春にかけての花壇は、チューリップとストックを使った、赤と黄の華やかな植栽です。夏になると、真っ赤なゲラニウムを中心に、オリヅルラン、サルビアなどに植え替えられます。赤い花が選ばれているのは、近衛兵や王室騎兵隊の軍服に使われる赤に合わせるため。世界的に有名な衛兵交代には、そんな配慮があったのですね。 花壇のポイントに、トピアリーがちょこんと生えているのがキュートです。バッキンガム宮殿に向かって右手に、たくさんの大木が葉を茂らせるグリーン・パークが見えてきました。豪華なカナダ門を通って、入ってみましょう。 大木が緑の天蓋をつくるグリーン・パーク グリーン・パークには、見上げるような大木が立ち並びます。これは、ロンドン・プレーン(和名モミジバスズカケノキ)と呼ばれる、プラタナスの仲間。夏には大きな枝葉を広げて涼しい木陰をつくり、排気ガスの汚染物質を取り除くフィルターの役割も果たして、都市の環境保全に貢献しています。 ロンドンの公園に生える樹木の半分は、このロンドン・プレーンといい、まさに、この町を象徴する樹木です。成木は樹高30mというので、ひょっとしたら、まだ大きくなるのかも…! 芝生と樹木ばかりで緑一色。花壇や灌木の茂みはありません。このシンプルさがグリーン・パークの大きな魅力だと、わたしは思うのですが、では、この公園にはなぜ花がないのでしょうか? 一説によると、17世紀、多くの愛人を持ったことで知られるイングランド王、チャールズ2世が、愛人のために公園で花を摘んでいるところを、妻のキャサリン王妃に見つかって、公園から花を一切なくすよう求められたからだとか。 本当の話なら、面白いですね。もっとも、春だけは景色が変わります。木々の根元で25万本のラッパズイセンが咲いて、明るい黄色のじゅうたんをつくるのです。この春の風物詩は、訪ねた時には残念ながら終わっていました。 普段は市民の憩いの場であるグリーン・パークは、女王の公式誕生日を祝うパレードなど、国の特別な行事の際には、大砲で祝砲を撃つ会場として使われます。 バッキンガム宮殿のお膝元にある、個性の異なる2つの公園。ロンドンを訪れる際には、ぜひ立ち寄ってみてください。 〈庭園情報 2018〉 セント・ジェームズ・パーク 通年開園、5:00~0:00。最寄駅は、地下鉄セント・ジェームズ・パーク駅、チャリングクロス駅、ウェストミンスター駅。 St. James’s Park, London SW1A 2BJ https://www.royalparks.org.uk/parks/st-jamess-park グリーン・パーク 通年開園、5:00~0:00。最寄駅は、地下鉄グリーン・パーク駅、ハイド・パーク・コーナー駅。 The Green Park, London SW1A 1BW https://www.royalparks.org.uk/parks/green-park 併せて読みたい ロンドンの公園歩き 春のケンジントン・ガーデンズ編 イギリス流の見せ方いろいろ! みんな大好き、チューリップで春を楽しもう センスがよい小さな庭をつくろう! 英国で見つけた7つの庭のアイデア
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静岡県

花の庭巡りならここ! 四季を通して多様な植物で彩られる「はままつフラワーパーク」
四季を通して美しい花々が咲き乱れる「はままつフラワーパーク」 1970年開園の「はままつフラワーパーク」は、浜名湖畔の自然の地形を生かしてつくられた植物園です。30万㎡の敷地は東京ドーム6.4個分、大人の足でゆっくり歩いて1時間半〜2時間かかる広さ。約3,000種100万株の樹木や草花が植栽され、四季折々に多彩な表情を見せてくれます。敷地内には、ウェルカムガーデン、ローズガーデン、原種ツツジ園、ハナショウブ園、日本庭園、クリスタルパレス(大温室)など、特色のあるエリアを多種多様に展開しており、季節ごとに花の見頃が移ろっていくので、いつ訪れても花々にあふれる感動的な景色を楽しめます。特に吉谷桂子さんプロデュースの「スマイルガーデン」は一見の価値あり! 年間入場数は約50万人にのぼり、リピーターの多さも突出しています。生き生きと咲き誇る花々に心癒されること間違いなし、ぜひ足を運んでください! 4月上旬がトップシーズン! 桜とチューリップが織りなす景色は一見の価値アリ 「はままつフラワーパーク」の春は、梅とスイセンの競演からスタート。2月上旬〜3月上旬が見頃で、梅は約110品種300本、ラッパズイセンは約20品種8万球が植栽されています。斜面を生かして梅園をつくっており、梅の足元を覆い尽くすようにスイセンが開花する様子は、大変迫力があります。 世界一美しいと評される「桜とチューリップの庭園」。花の見頃は3月下旬〜4月上旬。約1,300本の桜と約50万球のチューリップが生み出す景色は、感動的で息をのむ美しさです。 チューリップは品種、系統、花色などの特性を生かした組み合わせで植栽し、開花期も早生から晩生までをリレーさせて、長期間楽しめるように工夫しています。 写真は、なんと1月1日から開催される「早春チューリップの展示」の鉢物チューリップで、まだ寒い時期から春を感じさせてくれます。 4月下旬になると、藤が見頃を迎えます。写真は樹齢約20年の野田九尺藤11本が植栽された藤棚。長さ80mにわたってトンネル状に続き、長く伸びた花房が風にそよぐ様子は圧巻の美しさです。写真にベンチが見えますが、「はままつフラワーパーク」園内への飲食物の持ち込みはOKなので、ここでお弁当を広げてのお花見もよさそうですね。 写真は樹齢約20年の白藤を8本植栽したエリアです。満開時には光を受けて輝き、青空によく映えます。 ローズガーデンでは、5月中旬〜6月上旬に約200品種1,000株のバラが咲き競います。モダンローズ、ミニバラ、オールドローズなど多様な品種で構成。シンメトリー技法を用いた伝統的なデザインの「整形ガーデン」、バラのほかに季節の宿根草を組み合わせた「ナチュラルガーデン」、日本の皇室や世界の王室に捧げられたバラを集めた「インペリアルローズコーナー」など、変化に富んだ演出をしています。 ロマンティックな景色にため息がこぼれる 吉谷桂子さんプロデュースの「スマイルガーデン」 「スマイルガーデン」の見頃は4月上旬〜6月中旬。「笑顔がこぼれる庭」をコンセプトに、日本を代表するガーデンデザイナー・吉谷桂子さんがプロデュースするガーデンです。約150mの小道には、1万3000株を超える草花が咲き乱れます。 毎年秋、吉谷さんの指揮のもとに植栽して冬越しさせるので、春には健やかに育った草花がダイナミックに咲き揃います。 5,000㎡に及ぶハナショウブ園は、日本屈指の約720品種100万株を植栽。見頃は6月上旬〜中旬です。湿地帯に咲くハナショウブは、木製の園路を巡りながら、それぞれの品種を近くで観賞できます。 写真は約600mにわたるアジサイ並木の景色で、見頃は6月上旬〜下旬です。西洋アジサイ約52品種3,000株、野生アジサイ約40品種500株を植栽。ブルー、ピンク、紫、白のアジサイが顔を揃え、園路のそぞろ歩きに心が弾みます。 冬はイルミネーションの季節で、夜間まで時間を延長して開園しています。「フラワーイルミネーション2018」は11月23日〜2019年1月6日を予定。屋外の展示テーマは「ホッとイルミネーション」と題し、藤棚の光のトンネルや光の吊り橋のほか、噴水池で30分ごとに行われる「水と音楽のショー」のライトアップを楽しめます。一方、「クリスタルパレス」温室内の展示テーマは「クリスマスタウン」。高さ8mのモミの木のツリーを中心に、華やかなポインセチアなどを添えたクリスマスガーデンを演出します。 ガイドつき「フラワートレイン」は大人気! カフェやショッピングエリアも充実 「はままつフラワーパーク」の園内では、「フラワートレイン」が走っています。運転手が車内マイクを使って園内の見どころをガイドしながら、時速15㎞ほどで、ゆっくりと約15分かけて運行。39人乗りで1回の乗車につき大人100円、子ども50円です。ハイシーズンの混雑期は1時間に4〜5回、閑散期は1時間に2回くらいの間隔で走行。3台のうち2台が車椅子に対応しており、1台につき1〜2名が車椅子のままで乗車できます。 「はままつフラワーパーク」では、年間を通してさまざまなイベントが開催されています。サクラソウ、アサガオ、アジサイ、観葉植物、多肉植物など、テーマを設けて育て方を解説するガーデニングの講習会のほか、クラフト教室や音楽コンサートなど多様なので、公式ホームページをチェックして出かけるのもオススメです。写真は8月の土日・祝日開催、水の上に浮かぶ世界一大きな葉っぱ「オオオニバスに乗ってみよう!」体験のひとコマ。 園内のショップでは、花苗も充実した品揃え。地元生産者から毎日届く新鮮な切り花のほか、花苗、鉢物、資材(土や鉢など)が、100〜5,000円の価格帯で揃います。人気の商品は、地元生産者直送のコチョウラン1,000円前後、サボテン260円〜アニマルの鉢入り1,000円など。 地元の名産品やオリジナルのお菓子・グッズなど、土産物用の商品も多様に揃います。本物の花びらをあしらったクッキー「花一輪」(18枚入り)432円がオススメです。 「はままつフラワーパーク」園内には、飲食店もあるので、歩き疲れたら休憩しましょう。左写真は「カフェレストラン 花の散歩道」。座席数は140席で、ランチの価格帯は500〜950円。地ビールのヴァイツェン500円、フラワーパフェ500円、ぜんざい450円などもあります。 右写真はクリスタルパレス(大温室)内にある、カジュアルなカフェ。バラのエッセンスを使ったソフトクリームが絶品です。 Information はままつフラワーパーク 所在地:静岡県浜松市西区舘山寺町195 TEL:053-487-0511 http://e-flowerpark.com アクセス: 公共交通機関/JR浜松駅より遠鉄バス1番乗り場より舘山寺温泉行きで約40分、「フラワーパーク」バス停下車すぐ 車/東名浜松西I.Cより県道65号と県道48号を経由し舘山寺温泉方面へ約15分、新東名浜松いなさI.Cより約30分 オープン期間:通年 休園日:12月29日〜31日 ※臨時休園の場合あり 営業時間: 9:00〜17:00(3〜9月)、9:00〜16:30(10〜11月)、10:00〜16:30(12〜2月) ※イベントにより変動あり 料金:大人無料〜1,000円、小・中学生/無料~500円 ※季節によって異なる。詳しくは公式ホームページ参照 駐車場:600台(1回200円) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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オーストリア

オーストリア「シェーンブルン宮殿」【世界のガーデンを探る旅9】
ここまでは、フランス王室のシンボルであったベルサイユ宮殿のお話をしてきましたが、今回は、中世ヨーロッパのもう一つの富と文化の中心で、ウィーンのハプスブルク家の住まいであった「シェーンブルン宮殿」の庭を見ていきましょう。 東ヨーロッパの富と文化の中心地 中世のヨーロッパは、西半分はパリのブルボン王朝が、東半分はウィーンのハプスブルク家が富と文化の中心として君臨していました。ブルボン王朝はフランス革命により終わりを告げましたが、ウィーンのハプスブルク家は第一次世界大戦まで東ヨーロッパの富と文化の中心として、また音楽の都の頂として長く繁栄していました。当時、フランスの貴族文化の象徴であるヴェルサイユ宮殿(17世紀〜)はヨーロッパ中の憧れの的。その頃、ヨーロッパの東半分の富をある意味独占していたハプスブルク家も例外ではありませんでした。広大なフランス式庭園を持つ憧れのヴェルサイユ宮殿を手本に、このシェーンブルン宮殿がつくられたのです。 ハプスブルク家の夏の離宮としてウィーンの郊外につくられたこの宮殿には、1,441室もの部屋があり、さらには、ベルサイユ宮殿に勝るとも劣らない素敵なフランス式庭園がつくられて、それらは現在まで残っています。この宮殿は、女帝マリア・テレジアの居城として、そしてその娘マリー・アントワネットの数奇な運命とともに現在まで語り継がれています。 現在、この宮殿一帯に、年間670万もの人々が訪れる、ウィーンでもっともポピュラーな観光地になっています。 宮殿から広がるシンメトリックなフランス式庭園は、はるか遠くの小高い丘のグロリエッテまで続きます。 グロリエッテの手前には大きな噴水があり、宮殿と噴水の間には広大な毛氈花壇がシンメトリックに広がります。 原色の植物が緑に浮かび上がる平面的な花壇 ウィーンはパリに比べるとかなり寒い場所なので、この庭を楽しむには、やはり夏から秋が一番でしょう。僕が訪れたのも初夏でしたが、何も遮るものがないこの庭園を、グロリエッテまで歩いた時、陽射しが強烈だったことを鮮明に覚えています。 この花壇は芝生の緑をベースに原色系の植物を、おもに線状に並べて模様を描くことによって、はるか遠くに見えるグロリエッテまでの距離感をより強調しています。鮮やかな色と人工的な幾何学模様を際立たせるために、平面的な花壇の横には、小高く刈り込まれた濃い緑の生け垣が巡らされ、大理石の真っ白な彫刻が気持ちを和らげてくれます。 宮殿から数百メートルも離れた噴水の周りには、夏の花のベゴニアで赤と白のはっきりとした曲線が描かれ、背の高い黄色いカンナが立体感を出しています。ここでは前回解説したようなフランス式の花の混植は見られません。 ウィーンのもう一つの有名な宮殿である「ベルヴェデーレ宮殿」の早春の花壇は、春の空気までも表しているかのような優しいカラーリングです。宮殿の壁や屋根の色と調和する、白と黄色のチューリップの混植に、ガーデナーの優れたセンスが溢れています。 世界で2番目に古い温室「パルメンハウス」 有名なパルメンハウスとその前の線描花壇。パルメンハウスは1882年に建てられた世界で2番目に古い温室です。世界最古の温室は、これより4年前に建てられたイギリスのキューガーデンのパームハウスです。さて、パルメンとはドイツ語で手のひらを意味し、ヤシの木を指します。このような大規模な温室ができたことにより、世界中の植物がプラントハンターによって集められ、寒いウィーンでもさまざまな植物が栽培されるようになりました。これは、産業革命と技術革新により曲面ガラスの製造が可能になったことも大きく影響しています。 それにしても、なんと重厚で美しい姿なのでしょうか! 園路両脇のイチイのトピアリーもこの温室をひときわ優美に引き立てています。 巨大な生け垣と彫刻を配置する効果 視線を遮る西洋シデ(Carpinus beturus)の刈り込みが高く幾重にもつながり、正面はるか彼方にある大理石の彫刻に視線を集めています。 訪れた人に、この庭の奥行きと重厚感を伝えるデザインです。この手法は、後のイングリッシュガーデンにも多く取り入れられています。 こちらは緑の芝生に立ち並ぶ直線的なトピアリーと、生け垣に埋め込まれた大理石の彫刻。これもベルサイユ宮殿の影響なのでしょうか? 補色関係にある赤い屋根と深い緑が白い彫刻をアクセントとして上手にまとまった空間をつくりだしています。 最後に紹介するのは、あまりにも有名なモーツァルトの大理石の像と、その前にあるト音記号のマークの花壇です。ハプスブルク家歴代の皇帝の居城にして音楽の都、ウィーンの中心にあるホーフブルク庭園が、やはりウィーンの庭巡りの始まりでしょう。
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茨城県

カメラマンが訪ねた感動の花の庭。茨城「つくばローズガーデン」
今から10年ほど前に雑誌の企画で「オープンガーデンつくば」さんに取材に伺った際、何人かの方から「オープンガーデンのグループではないですけど、元市長の藤澤さんがつくった、なかなか立派なバラ園がありますよ」と教えていただいたことがありました。その時はそのまま忘れてしまっていましたが、オープンガーデンの取材も終わり、お世話になった方にお礼の電話をしている時に「来年は藤澤さんのお庭にぜひ行かれたらいいですよ」と改めて薦めていただいたことがお付き合いの始まりでした。 とはいっても、元市長さんに電話をするのは気後れして、大きな白いお屋敷にハイブリッドティーだらけのバラ園という勝手なイメージも邪魔をして、なかなか電話をできずにいました。しばらくどうしたものかと考えた末、やっと電話をかけてみると、藤澤さんはとてもていねいな優しい口調の方で、「写真に撮っていただけるような庭かどうか分かりませんが、それでもよかったらお越しください」と言ってくださいました。 最初の電話から半年が過ぎ、いよいよ再びバラのシーズンが始まり、藤沢さんのバラ園の撮影当日、どんな庭だろうと思いながら伺ってみると、目の前に現れたその庭は無数のバラが咲き乱れる、僕の勝手な想像とはまったく違う夢のような庭でした。 中央の緑の芝生のスペースを囲むように、左側にはツゲのヘッジに囲まれたオールドローズのエリア、その向こう側には大小さまざまなパーゴラが立ち並ぶイングリッシュローズのエリア。さらに奥には、フレンチブルーに塗られたトンネルに、フレンチローズが咲き乱れています。またまた奥のフェンスには、満開のつるバラ。右側のヘッジの中はミニバラのスタンダードとイングリッシュローズが咲き乱れ、見渡す限りすべてのバラが今が盛りと5月の優しい光の中で美しく咲いています。 バラ園の入り口で藤澤さんに挨拶をすませ、早速中へ。午後3時半の少し傾きかけた太陽の位置を確認して、撮影ポイントを探しながら歩き回ると、つるバラのアーチの下をくぐるときも、イングリッシュローズのパーゴラの脇を通るときも、さまざまな心地よいバラの香りに包まれます。きれいに咲いた花を見つけては、まず顔を近づけて香りを嗅いでから数枚のシャッターを切り、心の中で「ありがとう」とつぶやいてから次の花へ。そんな幸せな気分で過ごした日暮れまでの3時間でした。 藤澤さんは市長を務めている頃、つくば市にバラ園があるといいなと考えていたそうですが実現することはなく、ならば自宅の前の畑をバラ園に変えようと行動したそうです。バラ園をつくると決めた藤澤さんは、毎日のようにガーデニング誌『BISES』やDVDの『オードリー・ヘプバーンの庭園紀行』を見ながら構想を練り、馬ふん堆肥やウッドチップを使った土づくりから、パーゴラやアーチの製作、2,500株に及ぶバラの植え付けまで、1人ですべてをやってしまったというから驚きます。 バラの選定は千葉県のバラ園「草ぶえの丘」に通って、すっかり気に入ったオールドローズでと決めていましたが、知り合いからの意見もあり、ちょうどその頃流行りだしたイングリッシュローズを主流にしたそうです。それから13年間、毎年毎年4トンの馬ふん堆肥を入れ、米ぬかやカニ殻を自分流にブレンドした有機肥料を使いながらバラ園を育ててきた藤澤さん。 「バラを育てるのは難しいです。剪定も毎年悩みながらやっています。うまくいった年もあるし、うまくいかなかった年もあります。だからうまくいったら嬉しいし、うまくいかなかったら悔しいです。だからまた頑張れる。何といっても、きれいに咲いた時にお客様が喜んでくれるのが一番嬉しいです」と、いつもの笑顔で教えてくれました。 このバラ園での一番の思い出は、2014年に藤澤さんの発案で、福島県にあった「双葉ばら園」の写真展を開催できたことです。きっかけは、3.11の東日本大震災で被災された「双葉ばら園」の園主、岡田勝秀さんの仮住まいがご近所だったこと。岡田さんがときどき藤澤さんのバラ園にも来てくださることもあって、岡田さんへのエールの気持ちも込めた写真展企画でした。2013年発行の『BISES』No.87で双葉ばら園の特集を掲載していただいた八木編集長にも写真展への協力をお願いしたところ、快く引き受けていただき、「一瞬で幻となった双葉ばら園の43年間の記憶」という特集タイトルを写真展でも使わせていただきました。また、心のこもった挨拶文までいただいたのは、僕だけでなく藤澤さんにも岡田さんにも、本当に忘れられない思い出です。 先日、この記事を執筆することをお伝えするために藤澤さんを訪ねました。「原稿は今井さんにお任せしますよ。今年はつぼみがたくさんつきましたから楽しみです」と、いつもと変わらない笑顔で迎えてくれました。
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静岡県

花の庭巡りならここ! 美術館と庭園が融合した文化香る「クレマチスの丘」
美術館と融合した、クレマチスが主役のガーデン 「クレマチスの丘」は、庭園、美術館、文学館、地場の食材を使ったレストラン、自然公園などで構成された文化香るスポット。庭園は、静岡県長泉町がクレマチス苗の生産地として国内6割のシェアを誇ることから、クレマチスを主役として展開しています。 クレマチスガーデン/ヴァンジ彫刻庭園美術館は、傾斜地に建つ展示棟を中心に、上下2つのエリアに分けて展開されています。園内には、白い花のみで構成されたホワイトガーデン、クレマチスの品種を分かりやすく展示しているポール仕立てのクレマチス、木立性のクレマチスを集めたアイランドベッド、クレマチスとつるバラで構成されている石垣壁など、テーマごとに場面転換があります。各場面でテーマカラーやカラースキームが決められており、植物によるカラーコーディネートは、美術館らしいこだわりの美意識が息づいています。また、庭園内には、ジュリアーノ・ヴァンジの彫刻作品が各所に常設されていて、植栽との調和も見どころです。 クレマチスファンが集う聖地には レアから最新トレンドまで幅広い品種が集結 クレマチスガーデンには、約250品種2,000株が植栽されています。早春咲きのアーマンディー系からスタートし、フォステリー系、モンタナ系、早咲き大輪系、遅咲き大輪系、インテグリフォリア系、ヴィチセラ系、ヴィオルナ系、テキセンシス系、フロリダ系、ヴィタルバ系、シルホサ系、そして冬に開花するアンスエンシスへとリレーし、一年を通して開花。最も多くのクレマチスが咲くのが6月初旬です。クレマチスは最新品種はもちろん、日本作出のあまり生産されていない希少な品種なども揃え、年々数を増やしています。トレンドや珍しい品種を求めるなら、ぜひ足を運んでおきたいクレマチスの聖地です。写真は、‘セム’、‘ジェニー’、‘ジャックマニー’、‘テンテル’、‘ベラ’が混ざり咲くフェンス。 園内が最も華やかになるのは、バラ(約100品種900株)とクレマチスが競演する5月中旬〜下旬。クレマチスとバラの組み合わせでは、クレマチスのつるでバラの生育が邪魔されないよう、またバラの棘がクレマチスのやわらかい新芽を傷つけないようにと、誘引の工夫が随所に見られます。クレマチスとバラを共存させる植栽術からは、個人の庭でのガーデニングのヒントも得られそうです。 左写真は、4月上中旬のチューリップが咲き乱れるホワイトガーデン。白花のクレマチス20品種を中心に構成されています。代表的な品種は‘アンスンエンシス’、‘アーマンディー’、‘モンタナ・スノーフレーク’、‘白万重’、‘アルバ・ラグジュリアンス’、‘ロコーコラ’など、できるだけ強健で多花性の品種を選んでいます。 右写真は、ポール仕立てのクレマチスのコーナー。高さ3mと3.3mの鋳鉄製ポールを計約100本設置してクレマチスを絡め、品種名や花の特徴などを書いたラベルを付けて、「クレマチス博物館」としての役割も果たしています。主に四季咲きの品種を植栽し、剪定によって春から晩秋まで花期を長く保つよう調整。クレマチス同士の組み合わせや、下草のあしらいも見どころです。毎年約10品種の新しいクレマチスが追加されています。 イロハモミジに寄り添うクレマチスは、モンタナ系の‘スノーフレーク’。モンタナ系のクレマチスは、原生地での様子が再現できるよう、樹木仕立てにしています。株元から枝までは、人の手によって誘引されていますが、枝に到達した先は、クレマチスが自由につるを伸ばして生長する姿を観賞できます。 庭園内には多くのベンチが置かれており、自由に休憩できますが、飲食は不可。 ランドスケープと彫刻作品の調和にも注目! 講習会などのイベントも多数開催 クレマチスガーデン/ヴァンジ彫刻庭園美術館の庭園内には、ジュリアーノ・ヴァンジの彫刻作品が常設で19点展示されています。美術館と庭園の建設計画の段階から、作家本人が関わり、作品の配置を決定しました。写真の作品『プリマヴェーラ』は、2002年の開館後、この庭園に合わせて制作・設置されたものです。クレマチスが彩る美しい庭園と彫刻作品の調和は、この庭ならではの魅力。 クレマチスのシーズンには、金子明人先生(園芸研究家、クレマチス栽培研究の第一人者。日本クレマチス協会理事、国際クレマチス協会会員)を招いて、ガーデンツアーに加え、ミニ講座やミニ体験を行っています。 2018年の日程は、以下の通りです。 第1回/5月4日(祝・金)13:00〜14:30 ミニ講座「早咲き大輪系の魅力」 第2回/5月19日(土)13:00〜14:30 ミニ講座「はじめてクレマチスを育てる方へ〜クレマチス栽培の基本」 第3回/6月3日(日)13:00〜14:30 ミニ講座「クレマチス苗の植えつけ教室」(クレマチス苗のお土産つき) 第4回/6月10日(日)13:00〜15:00 ミニ体験「クレマチスの挿し木に挑戦してみよう」(挿し木したポットは持ち帰り可) 第5回/6月16日(土)10:15〜12:15 ミニ体験「クレマチスの剪定に挑戦してみよう」 *参加費はクレマチスガーデン/ヴァンジ彫刻庭園美術館入館料込みで各1,500円、第3回のみ3,500円(花苗代含む)。 *要予約(クレマチスの丘コミュニケーションセンター☎︎055-989-8785)、各回の定員に達したら募集は締め切られるのでお早めに。 金子先生のクレマチス講座以外にも、ハーブやバラをテーマにした講習会などイベントを随時行っているので、公式ホームページをまめにチェックすることをオススメします。 花苗店や書籍&雑貨店などでショッピング レストランで食の楽しみまで クレマチスの丘には、フラワーショップ「ビオトープガーデン」があり、クレマチスのシーズンには約200品種のクレマチス苗や開花鉢が店頭に並びます。人気の品種は‘プリンセス・ダイアナ’、‘白万重’、‘テッセン’など。クレマチス以外にも、多肉植物やガーデン雑貨のほか、量販店ではなかなか目にしない仕入れ担当者オススメの個性的な花苗が並びます。 写真左、ヴァンジ彫刻庭園美術館併設のミュージアムショップ「NOHARA BOOKS」では、美術関連図録や書籍、絵本のほか、暮らしを彩る雑貨も販売。人気の品は「クレマチスの丘オリジナル和三盆」756円。 写真右「ブティック クレマチス」では、クレマチスをモチーフにしたグッズ、洋服やバッグ、雑貨、アクセサリーを販売しています。人気商品は花をモチーフにしたストール2,160円、バッグ1,300円。 クレマチスの丘のレストランでは、駿河湾の魚介類や箱根西麓の契約農家から届くみずみずしい野菜など、地元食材を活かした味わい豊かなひとときを楽しめます。 写真は、カジュアルなイタリアン「ピッツェリア&トラットリア CIAO CIAO(チャオ チャオ)」。営業時間は10:00〜21:00、ランチタイム11:00〜ラストオーダー14:30、ティータイム14:30〜17:30、ディナータイム17:30〜ラストオーダー19:30(第1・3火曜日はディナー休み)。 新窯で焼き上げるピッツァを中心に、パスタや前菜などメニューも充実。バラエティー豊かなオリジナルジェラートも常時約10種類あります。 左の写真は「マルゲリータ クレマチス」2,500円、右の写真はティラミス500円、ハーブティー500円。※メニューは季節によって異なります。 Information クレマチスの丘 クレマチスガーデン/ヴァンジ彫刻庭園美術館 所在地:静岡県長泉町東野クレマチスの丘347-1 TEL:055-989-8787 https://www.clematis-no-oka.co.jp アクセス:JR東海道線三島駅北口(新幹線口)より無料シャトルバス運行 【東京方面より】東名 裾野I.C.よりR246経由、沼津方面へ10km 【名古屋方面より】新東名 長泉沼津I.C.あるいは東名 沼津I.C.より伊豆縦貫道(東駿河湾環状道路)へ、長泉I.C.出口R246右折/新東名 長泉沼津I.C.より5km オープン期間:通年 休館日:水曜(祝日の場合は翌日)、年末年始 営業時間:10:00~16:30(11〜1月)、10:00~17:00(2〜3月、9〜10月)、10:00〜18:00(4〜8月) ※入館は閉館30分前まで 入館料:クレマチスガーデン ヴァンジ彫刻庭園美術館 大人1,200円、高・大学生800円(4〜10月)、大人1,000円、高・大学生500円(11月〜3月)※小・中学生無料 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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栃木県

花の庭巡りならここ! 世界一の藤棚が見られると海外からの呼び声が高い「あしかがフラワーパーク」
「あしかがフラワーパーク」の前身は、1968年に開園した「早川農園」で、「250畳の大藤」を持つ藤の名所として地元の方々に愛されてきました。再開発により1997年に現在の場所へ大藤とともに移転し、敷地も規模拡大して9万4,000㎡の観光庭園となっています。 「あしかがフラワーパーク」では一年を8つの花の季節に区切り、1月上旬〜2月下旬の「早春〜春のいぶき」の冬咲きボタン、寒紅梅、ロウバイの見頃からスタートし、「春の花まつり」「レインボーガーデン」「ブルー&ホワイトガーデン」など次々と旬の開花リレーを楽しめます。 特筆すべきは、やはり大藤が満開となる4月中旬〜5月中旬の「ふじのはな物語」の期間。1,000㎡に及ぶ藤棚から豪華に花房が咲き枝垂れるさまは、一見の価値ありです。アメリカのニュースチャンネル、CNNのトラベルスタッフより「2014年の世界の夢の旅行先10カ所」に日本で唯一選ばれたこともあり、世界中から注目を集め、海外からの観光客も増加の一途。2017年には約150万人が訪れました。人々の感動を誘う「世界一美しい藤」を見に、ぜひ出かけてみませんか。 春の喜びでいっぱい! 2万球のチューリップ&世界が恋する神々しいほどの藤棚 「春の花まつり」期間は、3月上旬〜4月中旬。特に人気の高いチューリップの見頃は3月上旬〜4月下旬で、毎年約2万球が咲き競う姿は圧巻。配色や品種も毎年変わり、この期間を楽しみに多くのリピーターが訪れます。このほか、ユキヤナギが3月下旬〜4月中旬、サクラが3月下旬〜4月上旬に見頃となります。 「ふじのはな物語」期間は4月中旬〜5月中旬。「あしかがフラワーパーク」のシンボルともいえる藤の花が最も美しい時期です。古いものでは樹齢150年の大木があり、うす紅藤、むらさき藤、長藤、八重の藤、白藤、きばな藤などさまざまな品種が開花をつなぎ、1カ月以上も満開の姿を披露します。移植時は72㎡でしたが、年々規模を広げて、いまや1,000㎡にも及ぶほどに。「世界一美しい藤の庭園」として海外からも熱い視線を浴び、多くのツーリストが訪れます。 園内には藤の花のトンネルを2カ所に設置。きばな藤と白藤がそれぞれ高さ約3m、奥行き約85mにもわたってダイナミックに咲き誇ります。ここでしか撮影できない、フォトジェニックなシーンをぜひ記念に残しましょう。「ふじのはな物語」期間は、夜間もオープンしています。 この時期は、ほかにツツジが4月中旬〜5月上旬、シャクナゲが5月に盛りの時を迎えます。 バラにシャクナゲ、クレマチスの咲く花の楽園 一度は訪れておきたい、日本が誇るフラワーパーク バラ、シャクナゲ、クレマチスなどが満開になる「レインボーガーデン」の期間は5月中旬〜6月上旬。ローズガーデンは2015年にリニューアルされ、約400品種2,500株が植栽されています。つるバラをオベリスクや壁面にダイナミックに仕立て、空間を豪奢に彩る演出が見どころです。 この期間は、約1,000本のシャクナゲ、約500株のクレマチスも次々と咲いて、園内が色彩豊かに華やぎます。 「ブルー&ホワイトガーデン 花菖蒲 あじさいまつり」は、毎年6月に開催。夏に向けてブルー&ホワイトに花色を絞り、涼しげなシーンを演出。花菖蒲は6月中、あじさいは6月上旬〜7月上旬が見頃になるので、両方が同時に開花しているタイミングが、特にオススメです。 「水辺に浮かぶ花の妖精たち」の期間は7月上旬〜9月下旬。写真は熱帯性スイレンで、白、黄色、ピンク、赤、紫など、花色、品種もさまざまに、約1,500株が植栽されています。桟橋から眺めると馥郁とした香りが立ちのぼり、うっとりと見とれてしまうことでしょう。 10月上旬〜11月下旬にはアメジストセージが満開になる「パーブルガーデン」。紫一色で彩られる面で魅せる豪華な演出は、撮影スポットとして人気です。 園内をゆっくり歩いて、ひと通り散策し終えるまでには、大人の足で90分くらいかかります。少し疲れたら、休憩を。園内にはレストラン「ウェステリア」「あじさい」「マロニエ」の3店舗があります。中でも「ウェステリア」は200名収容の大型レストランで、和食、洋食など、多様なメニュー構成です。 冬はあたたかな光で花園を演出 日本三大イルミネーションスポットを楽しもう! 毎年10月下旬〜2月上旬はイルミネーション期間となり、ナイトガーデンも楽しめます。「光の花の庭」をテーマに400万球のLEDで彩られ、藤の花房をイメージした「奇蹟の大藤」をはじめ、「光のバラ園〜ハピネスガーデン〜」など光の花畑をイメージさせるファンタジックな世界は必見。水面に映り込む「光のピラミッド」、クリスマスを演出する高さ25mの「イルミネーションタワー」、光の壁画「スノーワールド」「レインボーマジック」なども人気で、「日本三大イルミネーション」に認定されているほどの規模を誇ります。 春や秋にはバラの育て方教室や、園芸家を迎えての講習会などのイベントが各種催されるほか、花苗売り場も充実。土産物店もプライベートブランドの藤の香水、藤染のストール、藤饅頭など、ここでしか買えない品々が多数揃っています。 Information あしかがフラワーパーク 所在地:栃木県足利市迫間町607 TEL:0284-91-4939 http://www.ashikaga.co.jp アクセス:JR両毛線あしかがフラワーパーク駅より徒歩1分 【東北自動車道】佐野藤岡IC、国道50号前橋・足利方面進行約18分 【北関東自動車道】太田桐生ICより国道122号経由、国道50号足利・小山方面進行約20分/足利ICより国道293号経由、県道67号佐野方面進行約15分/佐野田沼ICより、県道16号経由、県道67号足利方面進行約12分 オープン期間:通年、無休(但し12月31日、2月第3水曜、木曜は休園) 営業時間:9:00~18:00(通常期、「ふじのはな物語」期間を除く)、10:00~17:00(夏季・冬季、イルミネーション期間を除く) 【ふじのはな物語期間】7:00〜21:00(4月14日〜5月13日)、7:00〜18:00(5月14日〜5月20日) 【光の花の庭期間】15:30〜21:308(10月27日〜2月5日土・日・祝日)、15:30〜21:00(10月27日〜2月5日平日)※季節、開花状況によって異なる 入園料:【昼の部】大人300〜1,200円・子ども200〜600円(1月1日〜4月17日)、大人900〜1,800円、子ども500〜900円(4月14日〜5月20日)、大人500〜1,200円、子ども300〜600円(5月21日〜6月30日)、大人300〜900円、子ども100〜500円(7月1日〜12月31日) 【夜の部】大人900円、子ども500円 (10月下旬〜2月上旬) ※開花状況により変動あり。昼の部・夜の部は入替制ではありません。 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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群馬県

花の庭巡りならここ! 一日過ごしても飽きない「ぐんまフラワーパーク」
1992年に開園した「ぐんまフラワーパーク」は、18万4,000㎡の敷地に約3,000種以上、約50万株の植物が息づいています。四季折々の草花が植栽された庭園はいつ訪れても花々が咲き競い、年間の来場者は約23万人(2017年度)。車椅子のままでも触れて楽しめるハーブ園や、子ども向けアスレチックなどの遊具もあり、幅広い年齢層に愛されています。 庭園内は、メインガーデンとなるフラトピア花壇を中央に、東エリアにイングリッシュガーデン、ハーブ園、バラ園、ロックガーデン、山野草コーナー、西エリアに観賞温室、日本庭園、つつじヶ丘など、大きく3つのエリアに区分けされています。大人の足でゆっくり歩いて90分くらいで、ペット同伴もOK(入場料200円)。レストランが充実しているほか、寄せ植え教室やバラの講演会などのイベント、押し花やアロマ石けんづくりなどのクラフト教室も開催されているので、一日遊び尽くすつもりで出かけるのにちょうどいい総合公園です。 四季の開花リレーで見どころが移ろう 何度でも訪れたい観光ガーデン 写真は、2017年の改修工事によって完成したフラトピア大花壇。球根類、一年草、バラなど四季を通して楽しめるように多数の草花で彩っています。フランス庭園に見られる左右対称、幾何学模様や唐草模様などを表現した植栽も見どころ。中央の整形花壇は、季節が進むたびに年4回の植え替えが行われています。 写真は園内中央、高さ18mの展望台「パークタワー」から見下ろした4月のチューリップ花壇。毎年配色デザインを変え、約70種20万球が開花します。 「ぐんまフラワーパーク」では、毎年5月下旬〜6月には、バラフェスタを開催。園内には香り高いバラを中心に、約400品種1,600株が植栽されています。バラ園では作出された国別に分類し、このエリアの木立バラやオベリスク仕立てのバラなどからは、美に対するお国柄を垣間見ることができそう。園路を進むと、スタンダードローズ、つるバラのアーチやオベリスク仕立て、ウィーピングスタンダード仕立てなどが次々と現れ、立体感のある演出を楽しめます。写真、手前のピンクのバラは‘マチルダ’。 6月中旬〜下旬はアジサイの季節。アメリカアジサイの‘アナベル’は、普通のアジサイよりも華奢な草姿に、グリーンがかった白い花色がたわわに咲く、近年の人気品種です。 夏の花壇はブルーやイエローをテーマカラーに、季節感を演出するよう植栽のカラーコーディネートをしています。 7月中旬と9月下旬〜10月上旬には、ダリアが見頃を迎えます。約200品種1,500株が植栽され、紫や赤をベースに秋らしいシックな花色でまとめています。 このほか、10月になるとフロトピア大花壇に群植されたサルビア・レウカンサが満開になり、紫色の絨毯を敷いたようなナイスビューが広がります。 「ぐんまフラワーパーク」の園内には5棟の温室があります。「予定していた日が雨で残念だったけれど、温室の景色だけでも十分楽しめました」との声が寄せられるほどの充実ぶり。特にイベント温室では、年間7回の入れ替えを行うディスプレイガーデンがあり、毎回30種300株がテーマに沿って植栽されています。写真は1月1日〜2月12日開催のアザレア展で、150種350株が華やかに彩りました。 写真はイングリッシュガーデンの一角。英国王立園芸協会会員、ガーデンデザイナーのサラ・フェイスフル氏が設計した、フォーマルガーデンとコートヤード(箱庭)の伝統的な整形庭園です。フォーマルなテラスから左右対称のボーダー花壇へと歩みを導き、ホットカラーからクールカラーへと花色が変化していく景色は、ため息がこぼれるばかり。トレリスなどによって仕切られた典型的な英国式庭園は、群馬県特有の「上州からっ風」と呼ばれる強風から植物を守ってくれる役割もあるとか。強風対策に悩まされている土地にお住まいの方には、参考にしたいアイデアが見つかりそうです。 ガイドツアー「チュウチュウトレイン」でラクラク見学 イルミネーションの季節もオススメ! 季節の花を楽しみながら、のんびりとガイドツアー「チュウチュウトレイン」を利用するのもオススメ。写真は4月中旬頃で、桜の散歩道を人が歩くくらいの速度で進みます。園内を約20分かけて回り、料金は300円(3歳以下は無料)。52名定員で、車椅子専用が2席あります。 毎年11月上旬〜1月下旬には、「妖精たちの楽園」をテーマにしたイルミネーションが設置されます。約100万球のLEDで装飾された幻想的な風景に、プロジェクションマッピングやレーザーショーも加わり、素晴らしいライトアップが楽しめます。 地場産の旬を取り入れたメニュー満載のレストランや カジュアルな軽食コーナーなど休憩どころも充実 広い園内には、レストランや軽食コーナーなど4店舗があります。写真は地場の食材にこだわり、オリジナル料理を提供するレストラン「花みずき」のメニューの一例。ダリアフェスタの時期限定、ダリアの花を丸ごと揚げた天ぷらが添えられた「ダリア天ぷらそば」です。ランチは11:00〜15:00、ディナーは16:30〜19:00(特別な夜間開園時のみ)、ラストオーダーは15分前まで。団体利用OKで、120席あります。価格帯はランチが1,000円前後、スイーツメニューはクリームあんみつ500円、フォンダンショコラ680円、季節限定パンケーキ780円など。 ほかに土産物を扱う売店も充実しており、群馬県の特産品や、ぐんまちゃんグッズ、農産物など多数揃っているので、ショッピングを楽しむ時間もとっておきましょう! Information ぐんまフラワーパーク 所在地:群馬県前橋市柏倉町2471-7 TEL:0120-1187-38 http://www.flower-park.jp/ アクセス:上毛電鉄大胡駅から約6㎞(乗り合いタクシーで約15分) 関越自動車道より赤城IC下りて前橋・赤城方面へ約22㎞ 車で約30分 北関東自動車道より伊勢崎IC下りて前橋・渋川方面へ約15㎞ 車で約30分 オープン期間:通年、無休 営業時間:9:00~17:00(3月~10月)、9:00~16:00(1月~2月) 入園料:700円(4〜6月)、600円(7月〜3月) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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北海道

上野ファームの庭便り「美しいグリーンガーデンの季節」
花が咲き出す直前のフレッシュグリーンは、この季節ならではの見どころ にぎやかな春の球根が一段落すると、上野ファームの庭は、フレッシュな葉を広げる植物たちがつくりだす、美しい緑の世界になります。宿根草が多い上野ファームは、すぐに花で埋め尽くされるガーデンというよりも、美しい緑のキャンパスに毎日一色ずつ色をつけていくように、ゆっくりと開花が進みます。徐々に開花する花で庭全体を描くように、色数が増えていきます。 春から秋までに「どんな葉が展開するか」も観察ポイント 彩りあふれる花がいっぱいの季節も素敵なのですが、開花を待つ植物たちがつくりだす、静かな緑の期間が私はとても好きです。開花後は葉の色も落ちてきてしまうことが多いのですが、花が咲く前の緑は、どの植物も勢いがあり、とても美しいのです。 葉の美しさや形状に思わず惚れ込んだ植物も 私は植える植物を選ぶ時、花の魅力以外に、その植物がもつ葉の美しさや形状に惚れ込んで植えることもよくあります。季節を迎えて咲く宿根草の場合、花の開花期はそれほど長いものではありません。長くても見頃は1カ月ほど、短いものなら10日ほどで見頃が終わってしまう花もたくさんあります。 そう考えるとシーズンの半分以上は花よりも葉を見る期間が長いので、春から秋までどんな葉が展開するのかをじっくりと観察することも、デザインにおいてはとても重要なこと。そのため、みずみずしい緑いっぱいの初夏は、私にとってわくわくする時期でもあるのです。 庭の美しさには、緑と花のバランスが大切 緑の中から鮮やかなアリウムが浮遊するように開花し始めると、美しい緑があるからこそ花がきれいに見えるということに、改めて気づかされます。緑のバランスが庭づくりにおいて、とても大切だということがよく分かります。 西洋オダマキやゲラニウムなど緑を背景にすることで、魅力が引き立つ初夏の花はいろいろとあります。黄緑の葉と黄色の花が美しいアルケミラ・モリスも、葉がとても美しい植物の一つです。 花が咲く前の植物がもつ葉だけの美しさに気づくと、ますますガーデンを見ることが楽しくなると思います。「どんな花が咲くのかな」、「どこからつぼみが出てくるのかな」など、想像を広げながら植物を観察することがとても大切なので、ガーデナーにとってはどの時期でも植物から学ぶことは山のようにあります。 緑のキャンバスに少しずつ花の色が増えていくガーデン 花咲く前のミラーボーダーの様子です。美しい緑のグラデーションだけを楽しむ「グリーンガーデン」というジャンルや楽しみ方があってもいいくらい。植物の豊かな表情は花咲く前から十分楽しめます。この緑のキャンバスにさまざまな色をつけて描くと、下写真のように夏にはこんな絵に仕上がっていきます。 一色一色、日に日に増えていき、にぎやかな色で華やぐ夏の庭へ。 黄金色の葉をもつ花咲く前のアガスターシェ‘ゴールデンジュビリー’。緑と黄緑の組み合わせがとてもきれいでした。葉の美しさを生かした組み合わせもいろいろと研究中です。 北国ならではの美しい新緑の季節は、いよいよこれからです。緑あふれるガーデンに今日も新しい色が描かれています。
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神奈川県

神奈川「生田緑地ばら苑」ボランティアが支える天空のばら苑
2018年に60周年を迎えた歴史あるばら苑 東京「新宿駅」から小田急線に乗って急行電車で約25分と、都心から近いにもかかわらず、緑豊かな丘の上にあることから、川崎生田緑地ばら苑は「天空のばら苑」とも呼ばれています。 かつて小田急・向ヶ丘遊園地がこの緑多き多摩区の山の上にできたのは1927年。幼稚園や小学校の遠足先として、また、ファミリー向けの憩いの場として人気を博しました。当時、来訪者を迎えるために入り口斜面につくられた、よく手入れの施された大きな花時計は、今でも訪れた方の思い出の中に残っているのではないでしょうか。 遊園地開園30年後の1958年、東洋一のばら苑としてこの遊園地内につくられたのが、「旧向ヶ丘ばら苑」、現在の「生田緑地ばら苑」です。 1958(昭和33)年といえば、今上天皇陛下と皇后陛下(美智子様)がご婚約された年であり、一万円札ができた年です。また、12月には、東京タワーが完工しました。高度経済成長時代まっただ中、勢いのある時代に、当時の人々にとって繁栄と文明の象徴でもあるモダンなバラたちが集められ、60年の時を経て現在に至っています。 ボランティアが支えるばら苑 その後、向ヶ丘遊園地は、2002年3月に残念ながら閉園を迎えますが、ばら苑の存続を求める川崎市民の多くの声によって、川崎市がばら苑の保全をすることになりました。同年4月より、「川崎市生田緑地ばら苑」として多くの市民ボランティアが協力し支えています。 私も、このばら苑の近くに住む市民のひとりとして、6年前から時折ボランティア活動に参加しています。普段は庭のバラと一人で向き合い、全て一人で作業していますが、こちらでは皆で力を合わせ、一緒にバラを育てている一体感が感じられます。剪定、誘引、花がら摘み、草取りなど、地元に暮らすバラを愛する皆さんと一緒に行う作業の時間も、また楽しいものです。 古いばら苑ならではの雰囲気と希少品種を保有 60年の歴史あるばら苑ですので、どこか懐かしい雰囲気が漂う苑内では、他のバラ園では見かけないような古い希少種のモダンローズを見ることができます。 “ロイヤル“にちなんだバラの品種が充実 各国の要人にちなんだ名前を持つバラたちが植栽された「ロイヤルコーナー」は、他のバラ園でもよく目にすることができますが、こちらのばら苑のロイヤルコーナーの充実ぶりは、特筆すべきものがあります。 ロイヤルコーナーに植栽されているこの‘スルタン・カブース’というバラは、中東のオマーン・スルタン国の現在の国王陛下の名を冠したバラです。このバラをオマーン・スルタン国駐日大使ご夫妻が見に来られるなど、バラがつなぐ民間国際交流の輪も広がりを見せています。 新しいバラや注目のバラ苗も植栽 古いばら苑であっても、各国の新しいバラ、世界バラ会連合選出の殿堂入りのバラなど、常に新しいバラの品種や注目のバラに目を向け、新しく苗を植栽しています。 オールドローズが充実のボランティアガーデン ボランティアガーデンには、オールドローズが多く植栽されています。その結果、モダンローズが多い生田緑地ばら苑の品種のバランスを保つことに繋がっています。モダンローズのルーツを探ることはオールドローズを知ることでもあり、原種のバラへたどり着くことでもあります。バラの歴史は、壮大なストーリーを秘めていることに、来訪者が気づけるような、さりげない工夫でもあるのです。 簡単ではありますが、川崎市の生田緑地ばら苑の見どころをご紹介させていただきました。 こちらのばら苑では、春と秋のバラの開花シーズンのみ一般公開を無料で行っています。 いよいよ、今年の春の一般公開の日が近付いてきました。 春の一般公開日程は、http://www.ikuta-rose.jp/をご覧下さい。 最寄駅:小田急「向ヶ丘遊園」駅南口より徒歩約20分 住所:川崎市多摩区長尾2丁目8番1号ほか(旧 向ヶ丘遊園内) 公開中は、バラの講習会、ボランティアによる庭園ガイド、庭園での演奏会等が開催予定です。(雨天中止の場合有り)
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東京・銀座の空中庭園「お買い物の休憩は花咲くおしゃれな庭で」
銀座・和光と銀座三越が向かい合う銀座4丁目の交差点。商業地として日本で最も地価の高いこの場所のほど近くに、季節の花が咲き乱れる空中庭園があります。ファンケル 銀座スクエア最上階「ロイヤルルーム」に併設された、屋上ガーデンです。 ここでは季節に合わせたガーデンイベントが度々開催されており、イベント会期中は誰でも無料で入場できます。春いちばんに登場したのは「早春の女神の庭 球根とビオラのかわいいハーモニー(今期の会期は終了)」。 エレベーターに乗って1階から10階へ。扉が開くと、そこには陽光輝く春爛漫のガーデンが広がっていました。パンジーやビオラ、プリムラ、スイセン、ラナンキュラスなど可憐な花々が咲き乱れ、その瑞々しい生気と香りに包まれていると、今歩いてきたハイブランドが立ち並ぶ都会の喧騒がまるで幻だったかのような錯覚を覚えます。 ガーデン中央には200株のビオラやプリムラで彩られたビッグハートが。ここに使われている花は、今注目を浴びている個人育種品種。高知県の植田光宣さん・寛美さんが作出した「天の羽衣」と、同じく高知県の見元園芸によるバラ咲きプリムラ・ジュリアンで構成されています。他にも今回の展示では12人の育種家による個性的な花が並び、見たことのない美しい花姿に来場者たちは目を奪われていました。 日本の育種技術は世界的にレベルが高く、育種家によって生み出される花々は、日本の風土や文化を反映した繊細さや複雑さを持ち、他国にはない独自で豊かな展開は、世界から注目を浴びています。なかでも近年、次々に生み出されるパンジー・ビオラは、その劇的な変化によって主婦の間に育種ブームを生むほどです。ファンケル 銀座スクエアでは、こうした流れをいち早く展示イベントに取り入れて発信。 館長の深澤典子さんは、「美しく華やかな空間であることに加え、銀座の一等地でご覧いただくのに相応しい内容かどうかということも企画の大事なポイントです。個人育種のパンジー・ビオラには日本独自の花文化が色濃く反映され、文化の発信地であり続ける銀座にぴったりだと思います」と話します。ガーデンを見に行くには通常、郊外へ足を運ばなければなりませんが、ここでは日本全国から集められた個人育種による最新品種のビオラが一堂に会し、日本の最先端の園芸文化に触れられる会場構成となっていました。 庭植えできるラナンキュラス・ラックスシリーズ。今年の新色ティーバ。 デザイン・総合演出を手掛けたのは、渡辺さくらさん。ハンギングバスケット・コンテナ制作の他、日比谷ガーデニングショーなど数多くのガーデンイベントの運営に携わってきました。数年前からファンケル 銀座スクエアのこの2月の「早春の庭」の他に、6月の「あじさいガーデン」や10月の「ハロウィンガーデン」も担当。「渡辺さくらとその仲間たち」でガーデン制作を行い、女性らしい細やかな演出とアイデアで入場者数を増やしています。 「イベントとして華やかであると同時に、来場された方が実際に花のある暮らしを始めるきっかけになればと思っています。屋上ガーデンは広さが限られていますが、だからこそ都会の庭づくりの参考にしていただけるような演出を心がけています」(渡辺さん)。 さまざまな鉢植えスタイルの展開も、そうした演出の一つです。 春の花に続き、5月4日(金・祝)〜11日(金)までは、京成バラ園芸の協力でローズガーデンが登場します。2018年春のローズガーデンのテーマは「恋人バラ・恋ばな・恋結び」。京成バラ園芸の新品種「恋結び」をメインに、恋や愛にまつわるバラで庭を彩ります。4日には京成バラ園芸のヘッドガーデナー、村上敏(むらかみさとし)さんによるトークショーが開催され、京成バラ園芸の新品種「恋結び」と今回の庭についてお話しします。また、7日(月)には第一園芸フローリスト江辺雄亮(えべゆうすけ)さん によるフラワーアレンジメントのデモンストレーションが行われます。さらに、最終日にはバラの展示販売会も開催。銀座でローズガーデンを堪能してみませんか。 また、6月1日(金)〜8日(金)までは「初夏のあじさいガーデン」を開催。日本の育種家によって作出された個性的なアジサイが多数登場します。 Information 会場:ファンケル 銀座スクエア10Fロイヤルルーム 問い合わせ:TEL 03-5537-0231(インフォメーションカウンター) http://www.fancl.jp/sq/ Credit 写真&文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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兵庫県

花の庭巡りならここ! 都会のオアシスで癒しのひとときを「神戸布引ハーブ園」
1991年秋の開園以来、長く愛されている「神戸布引ハーブ園」。約16万㎡の敷地を整備し、当初は園芸家・ハーブ研究家の広田靚子さんをアドバイザーに迎え、「環境」「人と自然の共生」をキーワードに、ハーブ園の計画が進められました。現在も「香りと色と味わいの世界を五感で実感できる舞台づくり」をコンセプトに、暮らしに役立つハーブを中心とした、香りや彩りの豊かなガーデンを披露しています。 園内は、「展望エリア」「ガーデンエリア」「グラスハウスエリア(温室含む)」「風の丘エリア」の4つにゾーニングされ、それぞれに見応えのあるシーンを演出しています。見どころは、ヨーロッパの田舎風の景色が楽しめる「フレグラントガーデン」、約100種1,700株のハーブが植栽された見本園としての「ハーブミュージアム」、オシャレなキッチンガーデンを提案する「家庭菜園ポタジェ」、1,300㎡のラベンダー畑が広がる「ラベンダー園」、ヨーロッパのカントリーサイドをイメージして4つのシーンを演出する「四季の庭」など、枚挙にいとまがないほどの充実ぶりです。山の景色を借景として生かした、自然風景式ガーデンへ、ぜひ出かけてみませんか。 生命力あふれるハーブや草花が織りなすガーデンから元気をもらおう! 神戸繁華街の三宮から約10分、新神戸駅より徒歩約5分でロープウェイ乗り場「ハーブ園山麓駅」に着きます。ロープウェイに約10分乗ると、「神戸布引ハーブ園」に到着。一般的に、観光ガーデンは郊外に立地するケースが多いのですが、こちらは繁華街から気軽に出かけられる都会のオアシス。ロープウェイ乗車中の眺めも素晴らしく、市民のみなさんをはじめ、県外からの観光客も多く、年間の来場者数は40万人に達します。来訪者からは「景色がよかった」「食事がおいしかった」との感想も聞かれ、リピーターの多いハーブ園です。 写真は「ウェルカムガーデン」のエリア。ドイツの古城をモチーフにしたレストハウスと城門に囲われた広場で、ロープウェイから降り立った瞬間、ハーブ園に来たことを実感できます。季節の花を立体的に飾り、彩り豊かにハーブ園の旬を演出。20〜30種類、約2,000株の植物で彩られる、フォトジェニックなスポットです。 写真は「ローズシンフォニーガーデン」のエリアで、見頃は6月、10月。香りがよく花色が豊富なイングリッシュローズを、香り別に6エリアに分類し、約60種170株のバラを植栽しています。花びらの多いカップ咲きやシンプルな一重咲き、ポンポン咲きなど個性豊かなバラの花姿を堪能。パーゴラを中心にシンメトリーに配されたトピアリーなど、美しいコーナーを背景に、思い出に残る写真を撮りましょう。 「神戸布引ハーブ園」では、四季を通して旬の草花が彩るように植栽計画がなされています。春はミモザ、サクラ、コブシ、ハナナ、チューリップ、カモミールなど。夏はラベンダー、ユリ、ヒマワリが元気に開花。秋はコスモス、セージ類、紅葉と、オータムカラーで彩られます。冬は温室内の植物たちをご覧ください。左の写真のサクラが満開になるのは、例年4月7〜10日くらい、右の写真の豊かなカモミール畑は5月中旬〜下旬です。 また、季節を通して「春の収穫祭(カモミール)」「ラベンダー摘み取り体験」「ハロウィンフェア」「ハーブ&スパイスカーニバル」「紅葉カフェ」「クリスマスマーケット」といったイベントを開催。出かける前に公式ホームページをチェックして、どんなイベントが開催中なのかチェックしておくのも一案です。 春と秋の土・日・祝日、夏季の全日は、ナイトガーデンを満喫できます。ロープウェイや展望エリアから望む神戸の夜景は、宝石をちりばめたような輝きを放ちます。また、森の中の幻想的な空間を光や音で演出するイルミネーションイベント「光の森〜Forest of Illumination」を開催。このロマンティックな景色の中で、ドイツビールやワイン、オリジナルハーブソーセージやハーブステーキなどの料理も楽しめます。 2018年4月にオープンしたカフェ「ザ・ヴェランダ神戸」に大注目! メニュー充実、今話題のホットなスポット 「神戸布引ハーブ園」内のグラスハウスエリアを改装し、2018年4月7日にグランドオープンした「ザ・ヴェランダ神戸」。標高約400mに位置し、眼下は港町神戸の街並みが一望できます。古きよき神戸の洋館のイメージとモダンなカフェが融合した、クラシック&ラグジュアリーな空間で食事やティータイムを楽しみましょう。営業時間は10:30〜16:30(2Fのみラストオーダー16:00)。 写真左は2Fカフェラウンジで77席。季節を彩るデザート、サンドウィッチ、ハーブティー、コーヒーなどのメニューが揃います。写真右は1Fテラス席で89席。広い空をより近くに、そよぐ風を心地よく感じる開放的な空間。布引ハーブバーガー1,000円、サヴァラン900円ほか、スイーツ、ソフトクリーム、ハーブティーを楽しめます。 写真はカフェ「ザ・ヴェランダ神戸」オリジナルブレンドハーブティー(2Fは全12種各1,000円、1Fは全3種各600円)。 「神戸布引ハーブ園」の展望エリアには、展望レストハウス2Fにレストラン「ザ・ハーブダイニング」があります。営業時間は11:00〜15:00(ラストオーダー14:30)、席数は100席、料金は大人2,380円、小学生1,180円、小学生未満無料(メイン料理は除く)。色鮮やかなハーブガーデンをイメージしたメイン料理(肉・魚・パスタ)の9種から好きな一皿を選べ、15種の前菜ブッフェ、メイン料理、オリジナルブレンドハーブティーがセットになった「ガーデンプレートコレクション」です。 左の写真は「鴨のロースト バルサミコソース 菜園をイメージして」、右の写真は「桜海老と春野菜のトマトソース」。 無料のハーブガイドツアーは魅力的なコンテンツ! オリジナル商品を扱うショップも充実 「神戸布引ハーブ園」では、毎日無料のハーブガイドツアーを①11:00~②13:30~③14:30~の3回開催しています。①は「暮らしにとりいれよう! アロマと香り」をテーマに、さまざまな実生活に役立つ精油の活用術を実演を交えて紹介。香りのブレンド方法も説明します。②は「ふれて楽しむフレッシュハーブ」。約100種類のハーブを植栽展示しているハーブミュージアムで、フレッシュならではのハーブの香りや色、味に触れながら活用法を学べます。③は「ハーブガーデンを巡る」。ガーデンを巡りながら植物や季節の花・ハーブを紹介します。各回約45分です。 「神戸布引ハーブ園」では、山麓駅内のショップ、山頂の「ハーバルマーケット」でショッピングを楽しめます。オリジナルブランド商品の品揃えが豊富で、ハーブティー6種各860円、ルームスプレー3種各1,580円、ハンドクリーム3種各1,850円、リップバーム1,450円、ボディクリーム2,800円、エッセンシャルオイル30種各1,620円、ハーバルクッキー2種各1,200円が人気のラインナップです。 Information 神戸布引ハーブ園/ロープウェイ 所在地:神戸市中央区北野町1丁目4-3 TEL:078-271-1160 http://www.kobeherb.com アクセス:新幹線・神戸市営地下鉄「新神戸」駅より徒歩約5分、ロープウェイで約10分「ハーブ園山頂駅」下車すぐ オープン期間:無休(強風や雷の場合は運休・休園する場合あり。またロープウェイ年次点検のため、2〜3月に約3週間の運休・休園あり) 営業時間:9:00~16:45、9:30〜20:15(3月20日〜11月30日の土日祝、7月20日〜8月31日)※16:45、20:15はロープウェイ上り時刻 入場料:大人1,500円・小人750円(ロープウェイ乗車を含む) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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イギリス

美しき家と庭 英国モリス・デザインの世界を体感する「スタンデン・ハウス・アンド・ガーデン」
120年前のこと、英国の慈善団体ナショナル・トラストは、開発で失われていく自然や、歴史ある建物や庭といった文化的遺産を守り、後世に残そうと、活動を始めました。多くのボランティアの力によって守り継がれる、その素晴らしい屋敷と庭を訪ねます。 ビール家の愛しの我が家 ロンドンから車で南へ向かい、2時間余り。ウェスト・サセックス州の美しい田園風景を見渡す丘に、スタンデン・ハウス・アンド・ガーデンはあります。この屋敷は、19世紀の終わりに、ロンドンで成功した裕福な弁護士、ジェームズ・ビールの別宅として建てられました。7人の子を持つビール氏は、家族や友人が、週末や休暇を楽しく過ごすことのできる、居心地のよい田舎の家を求めたのです。 屋敷の設計は、モリスの友人で、アーツ・アンド・クラフツ運動の建築家として知られたフィリップ・ウェッブに任され、内装はモリス商会が手掛けました。風景に馴染む、落ち着いた外観の屋敷には、一方で、電気や暖房といった、当時の最新の設備がありました。住み心地がよく、美しい家具やテキスタイルで整えられた屋敷は、ビール夫妻の子や孫の代まで、楽しい我が家として愛されました。 アーツ・アンド・クラフツ運動を提唱したウィリアム・モリス ウィリアム・モリスは、19世紀の後半に、思想家、デザイナー、詩人、作家と多岐にわたって活躍した人物です。職人による昔ながらの美しい手仕事を愛したモリスは、産業革命の流れの中で失われつつあった、暮らしの中の芸術を取り戻そうと、自ら壁紙をデザインしたり、美しい装飾が施された本を出版したりしました。 一体感のある家と庭 モリスは「家は庭に(衣服のように)包まれるべきだ」という言葉を残しています。庭は家の延長であって、そのように使われるべきだと考えていたのです。その考えを受けて、スタンデンの屋敷と庭は、お互いを補い合う、一つのものとして存在していたのですが、じつは、その庭は長い時の流れの中で失われていました。 5年にわたる庭の修復プロジェクト 今から10年余り前のこと、庭にはびこる竹の下から、古い水遊び用の池が発見されました。その後も、塀やロックガーデンなど、かつての庭の名残が次々と発見され、2012年、ついに庭の修復プロジェクトが発足します。プロジェクトチームは、家族写真や地図、支払いの領収書、そして、ビール夫人のガーデンダイアリーといった膨大な歴史的資料から、ここにどんな庭があったのかを探りました。 広さ約5万㎡の庭を、屋外の部屋をいくつもつなげるように設計したのは、独学で園芸知識を身につけ、優れたガーデナーだったビール夫人でした。ピンクのチャイナ種のバラが植わるローズガーデンや、シナノキの並木道、時にパーティーが開かれたクロッケー用の芝生など、植物好きの夫人が設計し、世話をした庭の数々が、プロジェクトによって再発見され、美しくよみがえりました。 リンゴの古木が見守るキッチンガーデン 屋敷の食卓を支えたキッチンガーデンも修復され、野菜や果物の大きな花壇が整えられました。ここには、屋敷が建った当時に植えられたという、ブラムリー種のリンゴの古木が4本、残っています。扇を広げたような形をした見事なエスパリエ仕立てのリンゴは、今も秋になると、美味しい実をたくさんつけます。 18世紀の古い納屋にはカフェがあって、キッチンガーデンで栽培された、ポロネギ、ニンジン、ルバーブ、アスパラガス、イチゴ、リンゴといった、採れたての旬の野菜や果物を使った料理を楽しむことができます。美しい景色の中、ビール夫妻の客人になった気分で楽しむ食事は、格別の味わいに違いありません。 取材協力: 英国ナショナル・トラスト(英語) https://www.nationaltrust.org.uk/ ナショナル・トラスト(日本語) http://www.ntejc.jp/ Information 〈The National Trust〉Standen House and Garden スタンデン・ハウス・アンド・ガーデン ロンドンからは車で約2時間。電車の場合は、ロンドン・ヴィクトリア駅から最寄り駅のイースト・グリンステッド駅(East Grinstead)まで約1時間。駅からはタクシー(約3km、約10分)、または、クローリー(Crawley)行きのメトロバス84番に乗り、スタンデン・ナショナル・トラスト(Standen National Trust)で下車(日曜は運休)。バス停からは徒歩(約800m、約8分)。 12月25、26日を除き、通年開園。庭園の開園時間は、2~10月は10:00~17:00、11~1月は10:00~16:00。屋敷の開館時間は、2~10月は11:00~16:30、11~1月は11:00~15:30。 *2018年度の情報です。開園予定が変わることもあるのでHP等で確認してください。 住所:West Hoathly Road, East Grinstead, West Sussex, RH19 4NE 電話:+44(0)1342323029 https://www.nationaltrust.org.uk/standen-house-and-garden Credit 文/萩尾 昌美 (Masami Hagio) ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。5年間のイギリス滞在中に、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するようになる。神奈川生まれ、早稲田大学第一文学部・英文学専修卒。
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愛知県

花き生産高1位の地域に生まれた、旬の花と野菜が並ぶショップ「Marché&Cafe hana・yasai はなやさ…
2018年5月でオープン2周年を迎える、愛知県豊橋市にある「Marché&Cafe hana・yasai はなやさい」。車でのアクセスが便利な商業地帯にあり、お買い物のついでにも立ち寄りやすい立地です。エントランスには、ガーデニングの本場英国の自然石、コッツウォルドストーンを積み上げた大きなアーチが出迎えます。 お店に一歩入ると、カラフルに咲き誇る季節の花苗が目に飛び込んできて、花好きやガーデニングを楽しんでいるお客さんは、カゴを片手に、一瞬で苗選びのスイッチが入ります。植えどきの花苗やカラーリーフなど、ずらりと並ぶ植物は、その8割が地元で生産されているというのですから驚きです。 店内は、高い天井から自然光が差し込み、大きな木が葉を広げ、まるで外にいるかのような開放的な空間です。この大木は、5月になると幹に甘酸っぱい黒い実をつけるフトモモ科の熱帯果樹「ジャボチカバ」。オープン時からこの場所で成長し、お客さんを迎えています。 店内のワクワク感をさらに盛り上げるのは、ドライフラワーやガーデン雑貨がディスプレイされている2つの小屋。海外のポップアップストアを思わせる石張りの建物は、庭の中にミニチュアハウスなどをモルタル造形でつくることで話題のPiece of Mindが手がけました。 コッツウォルドストーンの石積みアーティストやモルタル造形のPiece of Mindなど、ガーデニング業界で話題の人々がお店づくりに関わり、新しい試みを実践する「Marché&Cafe hana・yasai はなやさい」。なぜ、この地域に新スタイルのお店が誕生したのか、店長の金澤光広さんにお話を伺いました。 「1909年に創業した地元の農業関連企業、イノチオグループの代表が、これからの時代にフィットしたガーデニング関連の新しい店をつくろうと、2015年に企画が浮上しました。そこで、アドバイザーとして迎えたのが、多数のガーデンイベントに関わっているガーデナーで造園家の竹谷仁志さんです。竹谷さんは、これまで園芸店の運営もしていた経験から、既存のスタイルを超えた新しい試みを取り入れていかなくてはいけないと、現在も店づくりを盛り上げてくれています。まずはじめに、竹谷さんは何度も通いたくなるような居心地のよい場所をつくろうと、天井が高い店舗デザインと、希望を叶える建築家を紹介してくれました。また、地元の花と野菜を最大限に生かすため、各所の生産者を訪ね回りました」。 そうして、この店の主役となるのは旬の花苗と地元の美味しい野菜や果物だと決まり、店づくりは着々と進んでいきました。 「定番品を置かず、旬のものが次々と入れ替わる店にする。そうすると、足を運ぶたびに新しい花が並んでいることに気がつき、よく見たら地元の花で、いっそう親しみと興味が湧く。そうすることで、地元の生産者や農家の刺激にもなると竹谷さんと意気投合しました。地元の生産者には、他の地域には珍しいこだわりのナーセリーや代替わりした若い生産者も増えています。彼らが生産する優秀な植物がこの地域に集まっていることや、世界に誇る技術をもった日本の花づくりをPRするアンテナショップでありたいと考えています」。 花きの一大産地「愛知・渥美半島」の 旬がいち早く届く店 渥美半島は日本のほぼ中央にあたる愛知県の東南端部に位置し、年間平均気温が16℃と温暖で、四季を通じて晴天の日が多く、日照時間が長いことから農業全般が盛んな地域です。主な生産品は、アジサイやカーネーション、シクラメン、ポインセチアなどの鉢物をはじめ、花壇苗や観葉植物、洋ラン、切り花の菊など、品目が多いうえ全国へ周年出荷できる物流のよさも強みです。そんな花きの生産額全国1位である愛知県の中でも、約4割(約224億円)の花が生産されている渥美半島の入り口付近に位置するのが「Marché&Cafe hana・yasai はなやさい」。この地の利を生かして、地元産にこだわった店が誕生しました。 地元産の旬の野菜と果実を たっぷり味わえるカフェメニュー カフェのメインメニューの一つが、具材たっぷりのサンドイッチ。写真は、季節の果実を使ったイチゴ大福サンドや、渥美半島キャベツ&みそカツ、豊橋大葉ゴマチキンなど。野菜や果実の旬の移り変わりに合わせ、定期的に新サンドが登場します。切り口が鮮やかでボリュームがあるサンドイッチは、インスタ映えすると女性たちにも人気。 カフェではスイーツも充実。2〜3月の旬はイチゴ。写真左から、イチゴ大福サンド350円、イチゴのバニララテ500円、イチゴワッフルボール650円。ほかにも、イチゴチーズケーキ、イチゴやミニトマトなどをいただく豆乳チョコフォンデュなど、オリジナルメニューが充実。家族や友人とおしゃべりも弾むカフェタイムが楽しめます。 生産者、農家、お客さんが交流する 季節のイベントを多数開催中 2月は冬のインドアグリーンとしても近年人気が高いオーストラリアの植物を集めたコーナーが登場。オーストラリア原産のカンガルーポーやエレモフィラニベア、プロテアなど、切り花で見かけることが多かった植物が根つきの大鉢で並び、お客さんを喜ばせました。こちらも地元にあるこだわりのナーセリーの一つ「渡会園芸」の苗です。 花と緑に親しむ イベントも充実 花と緑に親しんでもらうには、実体験が大切! というお店のコンセプトから、毎月催されるイベントは多岐に渡ります。例えば、園芸初心者さんを対象にした「はじめのいっぽ」から、先生を招いて行われる「寄せ植え教室」、地元の名物生産者による「農家ライブ」など、つくり手や栽培のプロとお客さんが直接つながる時間を設けて、植物の魅力を伝えています。また、消費者の生の声が聞けるとあって、農家や生産者の刺激にもなり、いい相互作用が生まれているとか。イベントは園芸関連に限らず「親子DEサンドウィッチをつくろう!!」や「朝の美と健康講座『はちみつ』」、「折り紙カフェ」、地元の食材をたっぷり使った「美腸ランチ会」などもあり、イベントに参加した人が意図せずに旬の花に触れる機会にもなっています。 店内には、花苗や観葉植物、ガーデングッズのほか、地元産の魅力的な食材も並び、ギフト用のフラワーアレンジをオーダーできるコーナーまで併設。カフェのついでに花を買ったり、プレゼント用の花に添えて美味しいお土産も購入できたりと、いろんな“ついで”が叶うのも嬉しいお店です。 Information Marché&Cafe hana・yasai 〜花と野菜といいくらし〜 はなやさい 所在地:愛知県豊橋市曙町測点157-2 TEL:0532-46-6509 http://www.hana-yasai.com/ 営業時間:8:00〜18:00 定休日:毎週水曜日 及び年始 Credit 写真&取材/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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京都府

日本庭園巡りの旅へ 京都・天授庵と高桐院
天授庵と高桐院 天授庵(てんじゅあん)は、京都でも指折りの格式を誇る臨済宗大本山南禅寺の塔頭の一つ。東庭の枯山水庭園と、南庭の池泉回遊式庭園の2つの庭園があります。数年前に、両親とこちらを訪ねた時、池泉回遊式園の幽玄で神秘的な景色に心を奪われました。以来、いつかもう一度訪れたいと思っていました。 そして、今回初めて拝観した高桐院(こうとういん)は、臨済宗大徳寺の竹林の片隅にひっそりと佇む塔頭。千利休邸の書院を移築した西庭と、本堂前の「楓の庭」があります。 天授庵〜庭園へ誘う木漏れ日の門 滴るようなカエデの新緑と、木漏れ日に輝く苔の絨毯に包まれながら敷石を進むと、木戸の門が見えてきます。ここが天授庵の池泉回遊式庭園の入り口。柔らかな光と心地よい静寂が心を鎮め、簡素な門が、訪れる者を優しく迎えてくれます。 天授庵〜神秘的な緑の世界 庭園に入ると、まず目に飛び込んでくるのが空を埋め尽くすほど鬱蒼とした樹木。重なり合う緑の隙間から見える青空とのコントラストの何と美しいことでしょう。その景色が、睡蓮が浮かぶ池の水面に映り込み、天と地が混ざり合うような幽玄美を醸し出していました。 また、池の桟橋に立ち水面を覗くと、空中に吸い込まれるような感覚に。しばらく眺めていると、不思議な力で守られているような安らぎを感じました。天授庵は、その名前の通り「天を授かれる」神秘的な体験ができる庭園です。 さらに、紅葉の頃には、この緑一色の世界が真っ赤に染まり、夕暮れにはライトアップされるのだとか。闇夜に浮かび上がる錦秋の天授庵….。きっと、燃えるようなパワーに満ちた景色に包まれることでしょう。 高桐院〜心地よい緊張感の一直線の参道 襖絵のような枝振りのよい松と苔が配置された高桐院の入り口は、何ともいえない品のよさが漂っています。ここから鍵の路に進むと見えてくるのが一直線に伸びた石畳の参道。高桐院で一番有名な景色です。 左右に植栽された真っ直ぐに伸びた竹とカエデ、一本の青竹の柵、エッジの効いた石畳の佇まいに、すっと背筋が伸び快い緊張感に満たされます。 高桐院〜「詫び」の精神を感じる庭 「利休七哲」の一人、細川忠興によって創建された高桐院には、かの有名な千利休邸から移築された書院のある庭があります。「詫び茶」を好んだ利休らしい簡素なつくりの書院は、当時の暮らしぶりを垣間見られる貴重な建物。室内から見える庭もまた、あっさりと落ち着いた雰囲気でした。 その中で、一際目を引いたのが一本のカエデの大木。瑞々しい青葉のカエデは見事な枝振りで、室内の何処にいても見えるように植栽されていました。今ならシンボルツリーというところでしょうか。きっと、四季折々に移ろうカエデの風情を室内から楽しんだことでしょう。 もう一つ目にとまったのが、細い竹を組み合わせてシュロ縄で結んだ利休垣。天然素材の程よい透け感の垣根は見た目も涼しげで、竹とカエデが多用されているこの庭にしっくりと馴染んでいました。簡素な書院と調和のとれた植栽や利休垣。閑寂(詫び)を好んだ庭主の精神と暮らしぶりが身近に感じられました。 高桐院〜「楓の庭」に見る余白の美 高桐院の本堂前に作庭された「楓の庭」は、竹薮を背景にカエデと苔のみを植栽した、これまで見た日本庭園の中で最もシンプルな様式です。本堂の深い軒下に設えられた縁側に座ってこの景色を見ると、カエデの配置や枝振り、葉の一枚一枚までが明確で、足元に絶妙に配された一基の石灯籠が圧倒的な存在感を放っていました。 それは、削ぎ落とされたシンプルな植栽デザインだからこそ際立つ、まさに余白の美。日本画に見るような日本人特有の美意識が表現されていました。その美しさの中に、わたしは深い寛容と無限の癒しを感じました。「楓の庭」は、静かに自身の心と向き合いながら、いつまでも眺めていたくなる庭でした。 『イングリッシュガーデン旅行を終えて〜日本庭園への想い〜』 『日本庭園巡りの旅へ 京都・東山「永観堂禅林寺」』 もご覧ください。 Credit 写真&文/前田満見 高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。 Instagram cocoroba-garden
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群馬県

花の庭巡りならここ! ため息がこぼれる美景を堪能! 「東武トレジャーガーデン」【閉園】
約8万㎡の敷地をもつ「東武トレジャーガーデン」は、「芝桜のガーデン」、「シーズナルガーデン」「水辺のローズガーデン」と、大きく3つのエリアに分けて構成。約4,000種100万株の植物が息づく花園は、「美しきバラと千の花々」というコンセプトのもとに、息をのむような美しいシーンが次々と登場し、自然に奥へと歩みを進めたくなるようランドスケープデザインされています。また、隣接する野鳥の森と茂林寺沼低地湿原を借景に取り込んだ自然豊かな景色が広がり、まるで別世界を訪れたような気分に。2018年は4月1日〜6月10日の期間に春季フェスタを開催。花々が咲き競うこの時期に、ぜひ足を運んでみてください。期間中はイベントも多数開催しており、4〜6月に100万人のクラシックライブのほか、オリジナルブレンドのハーブティー教室や、多肉植物や小物づかいでステップアップコンテナガーデン、ローズガーデンツアーなどを予定しています。 広大な敷地を生かし、面で魅せる「芝桜のガーデン」と「シーズナルガーデン」 「東武トレジャーガーデン」内の「芝桜のガーデン」エリアの見頃は、4月中旬〜下旬頃。ピンク系と白の芝桜5品種が約20万株植栽され、見事なピンクのグラデーションをつくり出します。背景には53本のソメイヨシノが植えられており、どちらも満開を迎えた際には、絶好のフォトスポットとして人気を呼んでいます。 「シーズナルガーデン」エリアの見頃は4〜6月頃。草花を混植したエリアで色鮮やかな約80万株の花々が、季節が進むごとに順次美しく咲き誇ります。 写真のように面で魅せるエリアの中心に立つ樹木は、輝くような黄色いカラーリーフが目を引く、ネグンドカエデ‘ケリーズゴールド’。その手前のブルー一色で大地を埋める花は、ネモフィラです。 「シーズナルガーデン」の左の写真は、紫のラークスパー、ホワイトレースフラワー、ヤグルマギクが咲き競う、ブルー系の花色でまとめた一角。背景のレンガ造りの構造物は、展望台として全景を見渡せます。館林の茂林寺に伝わる「分福茶釜」と同様のご利益(開運出世・寿命長久)があるという茶釜のオブジェも置かれているので、ぜひ立ち寄ってみましょう。 右の写真は、「シーズナルガーデン」の混植エリアで、4月下旬頃の風景です。オレンジ、黄色、ピンクなどの暖色系でカラーコーディネートし、リナリア、デージーなどを植栽。後ろに少し見えているネモフィラのエリアとのコントラストが楽しめます。 7つのシーンで構成される「水辺のローズガーデン」で、バラの魅力を存分に味わう 「水辺のローズ」の見頃は5月中旬〜下旬。このエリアは、さらに7つのシーンに分けられています。「初夏のさくらのトンネル」、「ブルーローズのラヴィリンス」、「心を癒すフラグラント・ローズ・ガーデン」、「イングリッシュローズが咲き誇るペレニアルボーダー」、「風にバラが唄うナチュラルガーデン」、「清き白バラの天蓋」、「エントランス・ボーダーガーデン」です。タイトルからもロマンティックなガーデンの様子が伝わってきます。 写真は「初夏のさくらのトンネル」のシーン。淡い桜色のバラ‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク・ランブラー’のアーチを連ねてトンネルに仕立て、桜が爛漫に咲く季節をイメージさせる植栽となっています。 写真は「イングリッシュローズが咲き誇るペレニアルボーダー」。バラのナーセリー、「デビッド・オースチン・ロージズ」が生み出したブランド「イングリッシュローズ」の品種群は、四季咲きで花つきがよく、優美な花姿が魅力です。それらの特性を生かし、バラの花色をより引き立たせるために、組み合わせる下草は脇役として控えめにしています。手前でたわわな房咲きになっている、オレンジイエローのイングリッシュローズは‘モリニュー’です。 写真は「清き白バラの天蓋」のシーン。園路へダイナミックに渡したパーゴラには、白バラの‘つるアイスバーグ’、‘ボルティモア・ベル’などが仕立てられ、青空によく映える清楚な景色をつくり出しています。パーゴラの下には多数のベンチが配されており、休憩可能です。ただし、園内への飲食物の持ち込みは不可となっています。喫煙も不可(所定の位置に喫煙所あり)、ペットの同伴はカート限定利用でOK(小型犬に限る。有料でカート貸し出しあり)。 写真は「心を癒すフラグラント・ローズ・ガーデン」のワンシーン。香りが強く、花姿もグラマラスなバラばかりを集めた、癒しを誘う一角です。バラは花が開いたばかりの頃に最も強く香るので、このエリアを楽しみたいなら午前中の早い時間帯を狙うのがオススメ。曲線を描いた園路のため、歩を進めるたびにシーンが変わり、奥行きを感じる演出がなされています。手前の赤いバラは‘ドゥフトボルケ’、オレンジ色のバラは‘ジャスト・ジョーイ’。 「エントランス・ボーダーガーデン」の入り口には、石づくりのアーチがしつらえられています。このアーチを優美に彩るのは、数ある品種のバラの中でも高い人気を誇る‘ピエール・ドゥ・ロンサール’。アーチをくぐると、宿根草を中心としたボーダーガーデンを両脇にもつ「ロングボーダーガーデン」の景色に場面転換されます。 レストランで舌鼓を打ったら、オリジナルグッズが揃うショップをのぞいてみよう! 「東武トレジャーガーデン」の花々で彩られた美しい景色を観覧するには、大人の足でゆっくり歩いて1時間くらいかかります。少し歩き疲れたなと感じたら、レストラン「ヴィクトリアンハウス」で休憩するのもオススメ。営業時間は、10:00〜16:00、ラストオーダー15:30、テラス席は9:30〜17:00、開園期間中(4月1日〜6月10日)のみオープンしています。コース料理やパスタのほか、フルーツパフェやパンケーキなどスイーツも揃い、充実したメニュー内容。右の写真は人気メニューの「ヴィクトリアンプレート」です(価格帯は季節によって変動)。 土産物店も2店舗あるので、ぜひのぞいてみましょう。ガーデンショップ「Mary’s Room」は、花苗のほかテキスタイル、ガーデン用雑貨、ハーブティーなどガーデニングの枠にとらわれない多様な品揃え。土産物ショップ「こるり」では、地元群馬県館林の名物品などを販売。バラ餡とシソ餡の2色の餡が入った「ちゃがまんじゅう」が人気商品です。 Information 東武トレジャーガーデン【閉園】 所在地:群馬県館林市堀工町1050 TEL:0276-55-0750 http://treasuregarden.jp Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/


















