- TOP
- ガーデン&ショップ
-

カメラマンが訪ねた感動の花の庭。北海道「大森ガーデン」
宿根草が主役のフォトジェニックな庭 北海道でご紹介する庭として第3弾となるのが、十勝・広尾町の宿根草ナーセリー「大森ガーデン」です。宿根草を1,000品種も扱っているこのナーセリーには、まさにマイブームの宿根草が主役のフォトジェニックな庭があり、ここでお見せする写真は、僕にとって宝物のようなものばかりです。 僕が大森ガーデンを訪ねたのは、今回が2度目になります。初めて訪ねたのは2011年6月の末。この時は、イラストレーターの藤川志朗さんに案内をしていただき、帯広周辺のガーデンを巡っていました。といっても、その日はあいにくの雨模様で、1軒目に訪ねた「六花の森」も、野草の見頃はすでに過ぎていて撮影できずじまいでした。 悪天候の中、初めての訪問 昼食の後、天気も悪いし、予定していたガーデンに行っても多分撮影は無理そう。どうしようか、と思っていると、藤川さんの提案で「ちょっと遠いですが、面白いナーセリーさんにでも行ってみますか」と。そうして連れて行ってもらったのが、大森ガーデンさんでした。その時は天気が回復する見込みもないし、広い庭に宿根草が咲いているのかなと思ったくらいだったので、カメラも出さずにショップに入っただけで、庭を見せていただくこともありませんでした。でも、ショップ内には、たくさんの宿根草の苗がきれいに並べられていて、こだわりが伝わってくる素敵なお店だなと思いました。 ちょうど社長さんもお店にいらして、藤川さんとは久しぶりの再会だったようで、いろいろなお話を聞かせてくれました。「十勝千年の森」のデザイナーである、ダン・ピアソン(Dan Pearson)氏も来道した時には訪ねてくるという、ご自宅のお庭まで見せていただきました。でも、当時の僕には(多分今も変わらずですが)知らない植物名があまりにも多く、話の内容も分からない点が多かったのが残念でした。 宿根草の魅力を知るきっかけ その後、何年か経った頃、BS放送でヨーロッパのガーデニング事情を伝える番組がありました。番組は2部構成のようになっていて、冒頭は、ドイツのケルンの話でした。工業化が過度に進んだケルンでは、華美な花や庭では人々は癒されることはなく、自然の緑が一番美しいとされていて、町中の公園は雑草だらけという解説で、ちょっとショッキングな内容でした。 次の特集は、オランダのガーデンデザイナーがニューヨークの廃線になった地下鉄の線路に、ナチュラルな宿根草の庭を作ってニューヨーカーの憩いの場になっているという「ハイ・ライン」が紹介されていました。今思えば、それってピート・アウドルフ(Piet Oudolf)氏の話だったのですね。ニューヨークの映像は、光も植栽もとても美しく、僕もニューヨークに行って、実際に撮影をしてみたいと思ったものでした。バラやクレマチスばかりでなく、宿根草の庭の魅力に改めて気づいた瞬間でした。 最近では千葉の佐倉市にある「草ぶえの丘バラ園」でも、きれいなグラス類の植栽エリアがあるし、個人の庭でも花壇の中にいろいろなグラス類が入っていることが多くなってきたように思います。Garden Storyにすでに掲載している長野の「GARDEN SOIL」は、ナチュラルにデザインされた、まさに“宿根草の庭”で、僕にとっては宿根草を教えてもらう「教室」のような場所。訪れるたびに学ばせてもらっています。 北海道の撮影地3カ所目となる「大森ガーデン」へ 今回ここにご紹介している写真は、2017年7月14日に撮影したものです。最近は毎年、北海道に行きますが、2017年は今までで一番遅い時期の来道。その狙いは2つ。1つは前々回ご紹介した「イコロの森」のバラ、ハイブリッド・ルゴサの撮影でした。2つ目は、前回ご紹介した「上野ファーム」のノームの庭の撮影でした。幸い天気にも恵まれて、2つの目的は無事クリアしたので、次はどこに行こうかなと考えた時に思いついたのが、宿根草の庭「大森ガーデン」でした。 藤川さんに連絡をして、僕が行くことを大森ガーデンに伝えてほしいとお願いをしたら、いざ十勝へと出発です。途中、北海道の美しい風景を存分に堪能しながらのロングドライブ。寄り道をしながら17時過ぎに大森ガーデンに到着しました。ショップに寄って, 社長夫人でガーデンデザイナーの大森敬子さんにご挨拶を済ませ、ガーデンへと向かいました。 他では見られない宿根草の海を美しく撮る ガーデンエントランスのアーチを抜けると、目の前には美しい宿根草の海! 早くも気分は最高潮です。後は撮影ポイントを探しながら、魔法の時間が訪れ、優しい光がガーデンを包み込むのを待つだけでした。やがてお店のスタッフさんたちも皆帰り、静まり返ったガーデンの中を僕一人で歩き回っていると、右を見ても左を見ても美しいシーンの連続。まだ光が強すぎるのは分かっていても、レンズを向けずにはいられません。 撮影ポイントを探しながらガーデンの中を何周かしていると、太陽が奥の林の向こうに沈みかけ、やがて辺りがオレンジがかった柔らかい光に包まれ始めました。18時30分にようやく撮影スタートです。先ほどから歩き回って決めていた撮影ポイントでファインダーを覗くと、30分前とは違った美しい宿根草の世界が広がっていました。 きれいなガーデンに美しい光が差し込んでくれば、カメラマンはただカメラを構えてシャッターを切るだけです。一人静かに興奮しながら、19時過ぎ、太陽が完全に沈むまで、幸せな時間が続きました。撮影が終わり、カメラを片付けていると、「帰り道はエゾシカに注意してください」と、藤川さんから注意喚起のメールが入っていました。 先日、1月20日は神奈川県横浜でPiet Oudolf氏のドキュメンタリー映画『FIVE SEASONS』の上映会がありました。次々と映し出される秋の黄金色に輝く素敵なガーデンをたくさん観たことが刺激となり、「今年は10月に北海道に行って、イコロの森、上野ファーム、大森ガーデンの秋の庭を絶対に撮ろう!」と、そう心に決めたのです。
-
北海道

春待つ冬の北海道から窓辺の花便り
今日も窓の外は銀世界です こんにちは。季節が春へ巡っていますね。先日は、九州に暮らす友人から「春のお届けです」と、満開紅梅の写真が添えられたLINEを受け取りました。ですが、私の暮らす北海道の2月はまだまだ厳冬期。気温は毎日マイナスで、窓から見える森の景色は純白に包まれています。 雪の季節は晩秋から始まります。 草葉が優しいベージュに染まり、穏やかながら物寂しくも思う頃、季節を先駆けるように初雪が舞い降ります。ベージュの世界が一転して純白に染まる朝…。毎年しばらく眺める雪景色にもかかわらず、その美しさに「わあぁ〜」と思わず声がもれます。もう思春期の一人息子も「お母さん! 雪だあっ」と弾む声。 この時期の雪は昼には溶けてしまう場合がほとんどです。まるで、空から届く冬の挨拶状のよう。 「しばらく大地が閉ざされますが、準備は大丈夫ですか…?」 雪は美しいけれど、やはり冬は長く厳しい季節です。まだ温もりがある日だまりに、ずっとそばに居て欲しくて…なんだか切ない季節です。 大切なバラが食べられないように一手間かけた冬支度を バラの枝が雪の重みで折れないように、支柱を中心に挿して株全体を麻紐でまとめるのが、庭最大の「冬支度」。ハサミを入れた場所は、皮がないので凍って傷みやすいため、剪定は早春に行います。 バラが好きなのは人間だけではありません。森の動物もバラが大好き。ネズミやリスは皮をカリカリむいてしまうし、シカは株ごと丸かじりです。どうやら、とっても美味しいみたい。 下からかじるネズミやウサギ避けのためには、上部を切った苗の保温容器が効果的です。また、バラを頭からムシャムシャ丸かじりするシカ避けには、ビニールのムシロで防御です。ワラのムシロを使ったら、逆に食事にお誘いしてしまうので要注意! バラをしっかり守った後の庭は、小さなティピーが並んだ小人の村のようです。半年も続く草花のない季節が、少しでも色のある世界になったら楽しいなぁ…と、余り布で作ったリボンをかけて回りました。 縫い物が大好きなので、余り布はふんだんに家にあります。冬囲い作業時に着ていたコートは、しなやかなウールの生地を見つけたので、裏生地に綿麻の生地を使って8年前に作りました。マフラーも10年前に作った一枚。いい布で動きやすく作った服は、流行も無くて飽きがこないうえ、とっても丈夫。ですから、縫い物はやめられず、あげく布好きなので、余り布は増える一方です。そろそろ断捨離しなくっちゃ。 庭のリボンに選んだ布は、できるだけ薄手のものを選び、色はブルー系のグラデーション。幅10cm、長さは布幅いっぱいの110〜140cmの大きなリボンにしてみましたが、雪囲いにちょうどよいサイズだったみたいです。 地面には、枯れ草で作った草木灰を撒いています。アルカリ性なので、土を中和してくれる肥料になるほか、不思議とネズミが寄りつきにくくなります。本能で火を避けるのでしょうか? 春を待つ時間は窓辺にミニガーデンを作ります 庭は今、深い雪の中。すべてを雪が覆い尽くしています。 すっぽり雪に覆われた地面ですが、ネズミのトンネルや、リスの食料庫となり、人の目にとまらない生活の跡が刻まれているはずです。さあ、今年の動物たちとの知恵くらべ。春にはどんな結果が待っているでしょうか? 雪に覆われた長い冬を彩ってくれるのが、窓辺の花たちです。長い間花を次々と咲かせるシクラメンと、香りのよいヒヤシンスがいつしか私の定番になりました。ヒヤシンスは、秋に鉢へ植え込み、霜が降りる寸前まで外で管理し、霜柱が立つ前に家の中に迎えます。 寒冷地の家は、高気密高断熱でポカポカです。十分寒さにさらされた球根は、家に入ると「春が来た〜!」と勘違いするみたい。 すぐに緑の芽を出して、スクスク大きくなっていきます。ブドウの房のようなつぼみがのぞくと、ワクワクドキドキ。部屋が暖かすぎると、せっかちなヒヤシンスは茎が立ち上がらないうちに、葉っぱの影で咲いてしまうんです。「ちょっと待ってよ〜」と言いながら、寒さにあてたり、光を遮ったり。 ちょうどいい高さにつぼみが上がるとウキウキワクワク。花が咲くと、小さな家は濃厚な香りが立ち込めて、春気分満点です。 花が終わった後のヒヤシンスは、ツン! と立った葉を観葉植物に見立てて、たまに液肥をあげながら、葉が茶色に枯れるまで大事に育てます。育てたいのは、来年も咲くプックリ太った球根です。 葉が映えるよう、鉢の上にエバーグリーンの松の小枝を載せて土を隠したり、マイクロシクラメンやアイビーと合わせたりしながら、グリーンの濃淡を主役に窓辺を彩りました。 私の心の中のテーマは「ホワイトガーデン」。こんなミニガーデニングもとっても楽しい! 何と何を合わせようかな? 小さな鉢や木の実などを、あっちに向けたり、こっちに持ってきたり。寄せ植え気分? いえフラワーアレンジ気分でしょうか? 光の方へと伸びていくので、リビングから一番よく見えるように、時折鉢の位置や向きをずらします。 でもね、ヒヤシンスは、これで終わりではありません。 長い冬を過ごしながらいつも花がそばにあるように 楽しみを長続きさせたくて、ヒヤシンスは全部をいっぺんに咲かせず、半分は冷蔵庫に入れて休眠させ、時期をずらして咲かせています。一番先の花はクリスマスから年末にかけて。花が終わった頃に冷蔵庫から出せば、だいたい2月に入ってすぐにまた花を楽しめます。 色も、最初が青と白なら、次はピンク系へと変えて、イメージチェンジ! 葉だけの球根が次第に増えていき、小さなグリーンのコーナーも広がっていきます。 写真のカゴの中は、春の野原のイメージ。ヒヤシンスの葉の鉢と、大きく広がるワイヤープランツ、切ったシクラメンを挿した小瓶を一緒に入れました。 冬中大切に育てた後、庭におろしたヒヤシンスは、分球を繰り返しながら少しずつ増えています。 森の中で自然に広がった野原のような庭を目指している私の庭。重たそうな花より、スズランのような花に育てたくて、過保護にしていた室内栽培から一転、肥料をあげずに育てています。見る人が見たら、貧弱なヒヤシンスかもしれませんが、お店に行っても見つからない、風が花を揺らすような小さなヒヤシンスが私は大好きです。 私にやすらぎをくれる春の庭をイメージして そんな調子で育てていても、いつの間にか庭は球根でいっぱいになりました。素朴な花で包まれた庭が私の安らぎです。 草葉の枯れる10月から、延々と続く長い冬。体が丈夫ではなく、移動には杖や車椅子が必要な私にとって、車椅子のタイヤが雪にめり込み身動きの取れない季節です。杖も雪にズボッ! 家に引きこもりがちになり、つい鬱々となりそうな日々ですが、小さな花たちに一喜一憂することで、私の脳内はいつも春! だからこそ、この長い冬を、飽きもせず美しいと思えるのかもしれません。 本格的な雪解けは、3月半ば頃から4月頭です。溶け始めた雪が水を含んで重たくなると、土が顔を見せる前からワクワク胸が高鳴ります。それまでずっと純白の世界に見慣れた目には、枯草も土も、すべてが新鮮です。土の香りを感じると、懐かしさと春の喜びが湧き上がります。 クロッカスがつんつん伸びて花の季節の到来を告げるのは4月半ば。大きな庭では見過ごすほどの小さな花ですが、鮮やかな色が目に染み入ります。 まだまだ先の春を待ちながら、家を心地よく整えて、ぬくぬく過ごす冬の家です。Garden Storyをお読みの皆様のもとへ、一日も早く明るい春が訪れますように♡
-

冬こそ身近なトロピカル・リゾート「植物園の温室」に行こう!
寒い冬にこそオススメしたい さまざまな植物に出合える温室巡り 寒い冬は、寒風の中での庭仕事も辛いし、外も冬枯れの景色で、あまり庭には出たくないのが本音。 そんな時期にこそオススメしたいのが、全国にある植物園の温室巡りだ。日本には植物園と名のつく施設、あるいは準ずる施設は300以上存在する。「日本の植物園」で検索するとヒットするはずだ。 植物園は、春の草花のシーズンやバラの季節は賑やかだが、寒い冬は閑散としているところが多い。冬の植物園は、身近にありながら意外と忘れられている存在だ。しかし、外は寒くても植物園の温室はトロピカル・リゾート。来園者が少ない冬に訪れると、ノンビリと植物観察をしたり、ゆっくりと「インスタ映え」する写真を撮ることができるので、この時期の温室は、トロピカル・リゾートとしてイチ押しだ。皆さんの住んでいる地域にも、きっと温室リゾートがあるはずだ。 温室リゾートの見どころプランツ 僕は現在、「川崎市緑化センター」という都市緑化植物園で、緑の相談員という仕事をしている。入場料無料の比較的小さな植物園だが、それでも温室にはさまざまなトロピカルからセミトロピカルの植物や多肉植物、チランジア(エアプランツ)、ランなどが所狭しと置かれ、日々、新しい発見がある。 今回は、「川崎市緑化センター」の温室で、冬に見頃を迎える注目の植物をご紹介したい。これから登場する植物は、きっと皆さんの地域の植物園にもあると思うので、ぜひ実際にお近くの植物園の温室を訪れ、それぞれの姿を楽しんでほしい。 神秘的な色合いのヒスイカズラ まずは、2〜3月の見所から。どこの植物園でも人気なのが絶滅危惧種に指定されているヒスイカズラである。その神秘的なヒスイ色の花は人々を魅了し、開花時期には大勢の人が詰めかける。つぼみの成長を観察するのも興味深い。 バニラエッセンスの原料となるバニラ 次に注目したいのは、バニラである。アイスクリームなどに使われるバニラの香りは、この植物の果実を発酵させて作るらしい。 このつぼみたちがどんな花を見せてくれるのか、楽しみに半月待ったら、2月中旬に初めて開花した! ランに似ているとは図鑑などで知ってはいたが、本当にランのような花を間近に見ることができて嬉しかった。香りはない。この後、バニラビーンズを発酵させたら香るらしい。このあと、果実はなるだろうか。ちなみに、1日花だというが、3日間咲いていた。 トロピカルな観葉植物の花々 日本で観葉植物が流行ったのは、住宅の暖房設備が普及した昭和時代だったと思う。その頃に流行したゴムの木とかサンセベリア、アナナス類など主だった植物は、ほぼ揃っているが、やはり花が咲くとトロピカルムードを醸し出す。 懐かしいエクメア・ファッシアータ。ピンクの苞は、長く美しさを保つ。 多様な葉を持つ観葉植物のクロトンには、ミモザを思わせる花が咲く。 定番のアンスリウムの仏炎苞はつやつやだ。 ストレプトカーパスの青い花。 「川崎市緑化センター」には、超巨大なビカクシダ(コウモリラン)が3株もある。葉の裏には胞子が付いている。ぜひ実物を見て確認してほしい。 そして、こちらも定番のストレリチア。花は鞘の中から扇が広がるように次々と出てくる。 自慢のオージープランツたち 「川崎市緑化センター」で、ちょっと自慢なのが、僕の得意のオージープランツたち。春先は、オージープランツが一斉に花を咲かせる季節で、2月以降が見頃だ。ほとんどが、この6年間に我が家から苗を寄付したものだが、温室という環境の中で、我が家にいた時よりも立派に育っているものも多い。 ブルーハイビスカスも1月中旬に咲き始めた。シルクのような光沢のある花弁が魅力的。 白銀の葉に淡いパープルの花を咲かせるエレモフィラ・ニベアは雨に弱いが、温室は雨が避けられるのでよく育つ。 ハーデンベルギアもすっかり増えた。 「川崎市緑化センター」では、挿し木にしたハーデンベルギアの苗も格安で販売している。 そして最近、人気のグレビレアも数種がまもなく開花。ちょうど、‘ムーンライト’がつぼみを持ち始めた。 グレビレア‘ムーンライト’は、開花するとこんなブラシのような姿が見られる。 ビニールポットに植えた一昨年の挿し木苗も、次々とつぼみを持ち、近々販売コーナーに登場する予定だ。 そして、温室の外ではそろそろオーストラリアの代表的な花木であるミモザ・アカシアも開花する。 まだまだ魅力的なオージープランツは紹介しきれないが、今回はこのあたりにしておこう。 人気の多肉植物&チランジア 前回ご紹介した、100年に一度咲くアガベ・ベネズエラが話題になった多肉コーナーも、この数年でずいぶん強化された。 多肉コーナーでは、僕が作った多肉の額やリースも展示中。 多肉植物と並んで人気の植物は、チランジア。多種展示中。 温室の春の華・ラン そして最後に、温室の春といえば、ランですね。ラン温室では、カトレアや、胡蝶蘭、オンシジウム、デンファレなどが咲き始めている。美しい花を咲かせているランの写真を、一部ご紹介しよう。 今回ご紹介したのは、温室リゾートの植物の一例だが、きっと皆さんのお住まいの近隣の植物園にも温室があり、それぞれに特色のある植物たちでトロピカル・リゾートがつくられていることと思う。 ぜひ、お近くの植物園の温室で、寒い冬に、暖かい南の島のリゾート気分を味わってはいかがだろうか? 川崎市緑化センター 川崎市多摩区宿河原6-14-1 044-911-2177 http://www.iei-kouen.jp/kawasakishiryokuka/ 併せて読みたい ・ 花の庭巡りならここ! 植物がテーマのミュージアム「三陽メディアフラワーミュージアム 千葉市花の美術館」 ・花の庭巡りならここ! 大人の社会見学スポット「富山県中央植物園」 ・花好きさんの旅案内 シンガポール「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」 Credit 写真&文/遠藤 昭 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー。 30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)。 ブログ「Alex’s Garden Party」http://blog.livedoor.jp/alexgarden/
-
イギリス

世界遺産にも登録された時代の中心地「ブレナム宮殿」【世界のガーデンを探る18】
一時代の中心となった庭 「ブレナム宮殿(Blenheim Palace & Gardens)」 数あるイギリスの庭の中にも、それぞれの時代ごとに、最もその話題の中心となってきた庭があるのではないでしょうか。今回取り上げるブレナム宮殿も、そんな印象を受ける庭の一つ。現在では世界遺産にもなっている由緒正しき庭をご紹介していきましょう。 ブレナム宮殿は、18世紀を代表するバロック建築の宮殿です。2,000エーカーを超える広大な土地を擁するこの宮殿は、後述のように、1705年初代マールボロ公爵ジョン・チャーチルが、ジョン・ヴァンブラに設計を依頼。アン女王のガーデナーであったヘンリー・ワイズも、ベルサイユ宮殿を手本としてこの庭の設計に加わっています。その後、アン女王からの援助が打ち切られて建築半ばで工事はストップしてしまいますが、さまざまな紆余曲折を経て、アン女王の死後にマールボロ公爵が自費で完成させました。しかし、建物の完成後も庭園は改造を重ね、1933年にようやく現在の姿になりました。 初代マールボロ公爵から宮殿の設計を依頼されたジョン・ヴァンブラは造園家でもあったので、その当時最先端であったフランス式やイタリア式のフォーマルガーデンを宮殿の周りに配置しました。残念ながら、当時の庭は、その後改修に当たったケイパビリティー・ブラウンによって跡形も無くなってしまっています。 もともとこの宮殿は、スペイン継承戦争の際、現在のドイツにあるブレンハイム(英語名でブレナム)という地で行われたフランスとの戦いに、初代マールボロ公爵のジョン・チャーチル率いるイギリス連合軍が勝利したため、当時のアン女王がこの土地と建築資金をマールボロ公爵に褒美として与えたことから、その歴史が始まります。この勝利は、イギリスをヨーロッパで二流国から一流国へとステップアップさせたものでもありました。ちなみに、イギリスで王室関係以外にPalace(宮殿)と名がついているのは、このブレナム宮殿だけ。個人所有としてはイギリス最大の広さであり、中世につくられたヨーロッパの宮殿の中でも指折りの壮麗さを誇っています。 ケイパビリティー・ブラウンの手による 広大なイギリス式風景庭園 ブレナム宮殿のガーデンは、18世紀半ばになって、かの有名な造園家のランスロット・ケイパビリティー・ブラウンにより、大々的な改修が行われました。彼はまず、宮殿の横を流れるグリム川を堰き止めて人工の大きな湖をつくり、広大なイギリス式風景庭園を生み出しました。 イタリア式庭園風にテラス状になった宮殿から降りてくると、ケイパビリティー・ブラウンがつくり出したピクチャレスクなランドスケープが眼下に広がります。この湖の先に、ジョン・ヴァンブラが設計した、半分水没した有名なヴァンプラの橋があります。 この風景は前回ご紹介したウィリアム・ケントのガーデンのように、まさにピクチャレスクな風景です。エデンの園から始まった西洋の庭の流れのフォーマルな整形式庭園は、前回のウィリアム・ケントと今回のケイパビリティー・ブラウンによって、自然復帰のイギリス式風景庭園に取って代わっていきます。 ところで、ランスロット・ブラウンを何故ケイパビリティー・ブラウンと呼ぶかというと、どんな場所でも彼流に風景式庭園をつくってしまうことに由来しています。アイルランドのお金持ちが彼に仕事を頼んだ時には、彼は「まだまだイギリスでやるべき仕事が終わっていないので」と断ったという有名な話もありますが、それほどイギリスで多くの庭を手掛け、それまでイギリス中にあったフランス式庭園を改修してしまいました。個人的なことですが、僕の一番尊敬するデザイナーは、このケイパビリティー・ブラウンです。ここで確認しておかなくてはいけないのは、ブラウンはランドスケーパーであるということ。ランドスケーパーというのは風景をつくり出す人という意味で、ガーデンデザイナーとは一線を画しています。皆さんがイングリッシュガーデンのイメージの一つとして思い描くボーダー花壇や花々が咲き乱れる植栽は、この後のもう一人の天才、ガートルード・ジーキル女史の登場を待たなくてはいけません。 話はブレナム宮殿に戻りますが、次にこのブレナム宮殿が歴史上に登場してくるのは1874年。イギリスの生んだ最も有名な政治家の一人、ウィンストン・チャーチルが生まれ育った場所として知られています。また、第一次・第二次世界大戦の時には、負傷者の病院としても活躍しました。 フォーマルガーデンから風景式庭園まで ブレナム宮殿のさまざまなガーデン ブレナム宮殿のガーデンは、ケイパビリティー・ブラウンによる改修後、20世紀には9代目のマールボロ公爵により2度目の大改造が行われました。その際、イタリアンガーデン、ウォーターガーデン、フォーマルガーデンなどがつくられ、現在に至っています。 宮殿の東側には、珍しい黄金キャラの生け垣とトピアリーが。その中にはフォーマルガーデンがつくられていますが、刈り込まれた生け垣が高くて外から全容を見ることはできません。その意味で、今もこの宮殿に住むマールボロ公爵のプライベートな庭というところでしょう。 フォーマルガーデンの奥にはオランジェリーが見えています。 宮殿から見たウォーターガーデン。幾何学模様に刈り込まれた生け垣と噴水に彩られたガーデンは、借景にもなっている緑の森に見事に溶け込むように見えます。この奥にはテラス状のイタリアンガーデンと、その向こうにケイパビリティー・ブラウンがつくったグリム川の池を望むことができ、この庭の広さを効果的に演出しています。 美しく管理された庭は、外壁のライムストーンの優しい色合いを見事に引き立てています。 宮殿の南東側には、イギリス特有の牧歌的風景が、無限の広がりを持って見る人を魅了しています。ケイパビリティー・ブラウンがつくり上げた風景式庭園は、まるで豊かな自然そのままの景色のよう。 宮殿の周囲には、100年先を見越したような新旧取り混ぜたパイネータム(針葉樹の森)が。森の中につくられた落ち着いた雰囲気のガゼボには、フジや常緑のクレマチスが絡んでいます。 敷地内の森の中にもいろいろな仕掛けがあり、訪れた人を楽しませています。斑入りギボウシやナンテンの赤い実が彩りを添え、その奥には斑入りのネグンドカエデなどが植えられています。 気まぐれなイギリスの天気に、日々さまざまな表情を見せるブレナム宮殿。その姿は、今なお訪れる人を魅了してやみません。 併せて読みたい ・イタリア式庭園の特徴が凝縮された「ヴィラ・カルロッタ」【世界のガーデンを探る旅5】 ・イギリス「ハンプトン・コート宮殿」の庭【世界のガーデンを探る旅11】 ・英国「シシングハースト・カースル・ガーデン」色彩豊かなローズガーデン&サウスコテージガーデン
-
福岡県

花の庭巡りならここ! 老若男女が集う花いっぱいの総合公園「響灘緑地(グリーンパーク)」
市民に愛されている総合公園は ガーデニングに関するイベントも多彩 「響灘緑地(グリーンパーク)」は、1991年に開催された第8回全国都市緑化フェア「グリーンルネッサンス北九州’91」の跡地に、1992年4月にオープンした公園です。面積は196ヘクタールで、周遊には大人の足で2時間ほどかかります。 公園の基本テーマは「水・緑・動物たちとのふれあい」。響灘の海洋と頓田貯水池の「水」、広大な芝生広場と樹林地などの「緑」、ポニーやカンガルーなどの「動物」とも親しめる自然に恵まれた公園は、市民の憩いの場となっています。 園内の花緑は、四季を通して開花リレーでつながれ、いつ訪れても花々で華やかに彩られる景色を楽しめます。その他、サイクリングコースやサイクルボート、グラウンドゴルフコースもあり、老若男女を問わず幅広い層が訪れて楽しめる総合公園です。 また、花や緑の講習会・教室など、一年を通して約80回の「Open Class」も開催。バラの育て方、野菜づくり、樹木の手入れ法などの講座のほか、開花が終了したチューリップの活用のため、チューリップ畑の球根をプレゼントする「チューリップほりほり体験」など、ガーデニングに関するイベントも多数催されています。 ほかにも週末を中心にコンサートやマーケットも開かれ、年間来場者数は49.3万人(2017年実績)にも上り、年々増加傾向! 市民に愛されている、花でいっぱいの総合公園にぜひ出かけてみませんか? いつ訪れても色とりどりの開花を楽しめ 季節に応じたイベントを多数開催 「響灘緑地(グリーンパーク)」では、3月上旬〜5月上旬に「ファミリーフラワーフェスティバル」を開催。この時期はチューリップやパンジー、ネモフィラ、キンギョソウなど、春の花々15万株が華やかに咲き誇ります。特にチューリップは2万1000株(2018年実績)が群植され、写真のように斜面を豊かに彩る景色は必見! この時期は「花と音楽と遊び」をコンセプトに、ミュージシャン出演の「ファミリーフラワーコンサート」などを開催しています。 「響灘緑地(グリーンパーク)」には1万3000㎡の敷地を持つバラ園があり、320種、約2,500株が植栽されています。見頃は、春が5月中旬〜6月中旬、秋が10月中旬〜11月中旬。日本のバラの発展を支えた育種家、故・鈴木省三さん作出の品種を集めた「鈴木省三コレクション」、皇室・王室の名前のついたバラを集めた「皇室・王室のバラコーナー」、世界ばら会連合世界大会で殿堂入りに選ばれた名花を集めた「殿堂入りのバラのコーナー」など、テーマ性のある植栽が見られます。 バラが見頃の時期には、地元の音楽団体のコンサート「Roses Garden Concert」や、バラ園をライトアップして夜間公開する「Night Roses Garden」、バラの苗木販売・栽培相談コーナーなど、楽しいイベントが開催されています。 また、春・秋のバラフェア期間限定のショップが登場。バラにちなんだ雑貨やお菓子などが販売されます。特に地元の若松区で「若松のお土産コンテスト」を受賞したお土産品がオススメ。主な価格帯は600円前後で手に取りやすく、来園の記念にぴったりです。 夏はアジサイ、コキア(緑)、ペチュニアなどによる開花リレーが、公園を華やかに彩ります。写真のヒマワリの見頃は、7月中旬〜8月下旬です。 夏は子ども向けイベントが充実しており、世界中から集められたカブトムシ・クワガタの展示、園内で幼虫から育てられたカブトムシとのふれあいや販売も行っています。園内の「じゃぶじゃぶ池」をはじめ、「サイバーホール」「滝プール」などの水場では水遊びイベントも開催。夏休みは、特にファミリー層で賑わいます。 9月中旬〜10月末にはコスモスが見頃を迎えます。約6万株(2018年実績)が植栽された花畑を背景に、記念写真を撮るのもいいですね。同時期にマリーゴールドやケイトウも咲いています。 秋はレジャーに適したシーズン。週末を中心に動物とふれあうイベント、食イベント、スタンプラリー、音楽とダンスの祭典「TOMATO FESTIVAL」など、さまざまな催事が目白押しとなっているので、ぜひホームページでの告知を参照して出かけてみましょう! 3棟の温室で熱帯の動植物を展示 冬のイルミネーション夜間開園も見応えあり 「響灘緑地(グリーンパーク)」には、3棟の温室があるのも注目ポイント。特に冬は暖かな室内にホッとするうえ、青々とした葉を元気いっぱいに茂らせる熱帯植物の生気から、エネルギーをもらえそうです。急に天候が悪くなった場合の雨宿りにもいいですね。 「熱帯生態園」は約1,500㎡もの建築面積を誇り、熱帯花木、ヤシ、熱帯果樹、水生植物など約130種4,000株が見られます。「第2温室」では熱帯に育つ珍しい植物やサボテンなどを展示、「第3温室」では熱帯生態園に舞うオオゴマダラの黄金に輝く蛹(さなぎ)を観察できます。 「熱帯生態園」では、ヤシや熱帯花木が壮大に枝葉を広げる姿を楽しめるだけでなく、熱帯地域に生息する鳥、爬虫類、日本一大きな蝶オオゴマダラなど、ふだん見ることのできない動物や昆虫類も展示。ほかにカピバラ、カワウソ、オニオオハシ、リクガメなどの動物も飼育しており、ふれあいイベントも実施しています。「熱帯生態園」は別途入場料として、一般300円、小・中学生150円(2019年4月1日より、一般350円、小中学生200円)が必要です。 「響灘緑地(グリーンパーク)」では冬季期間、週末を中心に夜間開園(雨天中止)を行っています。入場は17:00〜21:00で、最終入園は20:30。約13万球が灯されるイルミネーションのほか、樹木を照らし出す色とりどりのプロジェクションマッピングを実施、都市緑化センター内には巨大なリースも灯され、屋内外で楽しめます。2019年は2月24日までの土・日曜に開園、夜間の入園料は無料です。 地元の旬の味を楽しめるカフェはメニュー充実! 動物とふれあえるスポットは子どもに大人気 「響灘緑地(グリーンパーク)」園内には、地元産の旬の素材を使った地産地消カフェ「Agrizm Cafe」があります。園内の菜園で栽培された野菜も使われていますよ。営業時間は10:30〜16:30(L.O. 16:00)、冬季期間中(12〜3月中旬)は土・日・祝日のみの営業となります。屋内34席のほか、テラス席も12席あり、天気のよい日はテラス席で過ごすのもいいですね。 写真は、フライドチキンがメインのランチプレート(若松地KINGプレート)1,080円です。ランチプレートは、ほかにパスタ、フィッシュフライ、スープカレー、ピザトースト(平日のみ)が選べます。その他カレーライス、ケークサレ、フライドチキン、フライドポテト、ソフトドリンク、デザートなど、メニューは充実! サイドメニューをテイクアウトして、園内のベンチや芝生広場でゆったりいただくのもオススメです。 「響灘緑地(グリーンパーク)」内には「ポニー広場」があり、乗馬、馬車乗車、エサやり体験ができるので、子ども連れの家庭に人気です。福岡県ではここでしか体験できない「ヤギ&ポニーショー」も開催。障害物をジャンプで越える様子や、小さな足場に4本脚で乗るチャレンジを見られます。 乗馬料、馬車利用料は別途料金です。ポニーの乗馬は体重70kg以下、小・中学生300円、幼児200円、一般(高校生以上)500円。馬車は一般200円、中学生以下100円、乳児〜1歳無料(2019年4月1日から料金が変更となります。詳細はホームページをご確認ください)。
-
埼玉県

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪6 埼玉「フローラ黒田園芸」
ショップの目玉の一つ 来客の目を引く美しいサンプルガーデン シックでナチュラルな寄せ植えづくりで常に注目を浴びているスタッフの黒田健太郎さん。彼が花や雑貨で生み出す世界は透明感にあふれており、美しいものに敏感なガーデナーから絶大な支持を集めています。 そんな健太郎さんがつくるショップの見どころの一つが、“サンプルガーデン”。販売などの合間をぬって手入れしている、奥行きのある美しい庭です。季節を通して見どころが満載で、早春は瑞々しい葉が美しい宿根草や春咲きの球根植物、夏はインパクトの強いサルビアやダリア、カンナなどの宿根草、そして秋は落ち着いた大人色のキク科の花とグラス類など、季節の草花が競うように花壇を彩ります。 色鮮やかなのに自然に見えるのは、健太郎さんの計算によるもの。「植物は整然と揃えて並べて植えるのではなく、異なる草丈で高低差を出しながら植栽に凹凸をつけ、立体感のあるナチュラルな風景に見えるように工夫しています。植えたばかりの植物でも、植え込んでしばらく経過したように見えるよう、成長して枝が暴れたような苗を使うことが多いんですよ」と健太郎さん。草花のほか、コバノズイナやメギ、フィソカルパスなどの灌木を用いて、植栽にメリハリをつけています。 庭を盛り上げる数々のDIYも必見! サンプルガーデンや売り場を盛り立てているのが、小屋やあずまやなどのDIY。ツタが絡み、あしらわれた雑貨が見え隠れするさまは、こなれ感たっぷりでショップの見せ場の一つとなっています。これらは健太郎さんがデザインを考え、DIYが得意な社長さんがつくったもの。もともとは、高齢のお客様のために、休憩しながら花が選べるようにしつらえたものでしたが、今では絵になる点景物として、訪れた人の目を楽しませています。 かつては生産者だったからこそ 今にたどり着いた努力 「フローラ黒田園芸」は、かつてペチュニアやベゴニアなどをつくる生産農家でした。今から40年ほど前、生産した苗を社長さん(健太郎さんの父)が売り始めたのがショップの始まりです。そして数年後、健太郎さん兄弟が加わり、店はどんどんパワーアップしていきました。 もともとインテリアに興味があり、子どもの頃からおしゃれなインテリア雑誌などを眺めることが好きだった健太郎さん。そのせいもあって、学校卒業後は都内の観葉植物や花卉装飾を請け負う会社で老舗の料亭や高級紳士服店などの装飾に従事していました。当時会社には、スピーディーにきれいに装飾を行うタイプと、話術に長けたタイプの先輩2人がいて、彼らの動きがとても勉強になったといいます。 数年の修行から戻ってフローラ黒田園芸に入社。まず最初に取り組んだのは、「つくりすぎた苗や人気のない色の花苗をどうするか」ということでした。そこで修行で学んだディスプレイ感覚を生かし、人気のない花をディスプレイで魅力的に見せて、販売につなげることに注力。そうすることで、ただ店頭に並べるだけでは伝わらなかった花の魅力がお客様に届き、次々と手に取ってもらえるようになりました。そのとき健太郎さんは、ディスプレイ力が販売力に直結することを確信。これが今のショップの魅力につながる原点となります。 ショップが軌道に乗ると、苗の生産時に使っていたガラスハウスを店舗らしく改造。前面のガラスをレンガ積みのウォールに変えて、おしゃれな店構えにしつらえました。手を加えたのはほんの一部分ですが、イギリスのような雰囲気がほんのりと漂う空間に生まれ変わりました。 健太郎さん、社長であるお父様、弟の和義さんが数人のスタッフの協力を得て運営する「フローラ黒田園芸」。3人とも、何でも一通りできますが、得意分野を生かすために役割分担しています。健太郎さんは寄せ植えづくりや広報を、社長さんはDIY、和義さんは植物の仕入れを主に担当。それぞれの個性を尊重しながら、一丸となってショップを魅力的に見せる努力を重ねています。 売り場に点在する寄せ植えもチェック! 飾り方まで参考に 健太郎さんがつくる寄せ植えは、外の売り場に点在しています。ただ単にアレンジを並べただけでなく、雑貨と合わせてコーディネートも提案。「植物・コンテナ・背景」の3つの要素をしっかり考えることが重要だということが分かります。 建物内も見どころたくさん! グリーンや雑貨の使い方が学べる レンガの壁が印象的なガラスのハウス内は、インテリアグリーンや雑貨、資材売り場。こちらも屋外売り場同様、参考になるシーンにあふれています。これらのディスプレイを意識しながら店内を回れば、素敵なヒントがいくつも見つかります。 素敵なコーディネートの秘密は ドライフラワー使いにあり! 健太郎さんのコーディネートは、いずれも見る側の想像をかき立てる不思議な魅力をたたえています。例えば、深い森を思わせたり、フェアリーが出て来そうだったり……。ガーデニングの世界を超え、おとぎ話の世界に誘うような雰囲気があるのです。この独特な世界づくりに欠かせないのが、花壇の枝や実などを利用したドライフラワーです。 庭で咲いた花のうちドライフラワーに向くものは、はじめは切り花としてフレッシュを飾り、その後、枯れたものをドライとして生かすという健太郎さん。瑞々しい状態とは異なる魅力を放ってくれます。 ディスプレイで使うアイテムが並ぶ バックヤードも魅力的 園芸誌などから寄せ植えの取材・撮影依頼も多い健太郎さん。撮影時にアレンジと一緒に飾るアイテムにも、古びた雑貨やドライフラワーを多く使っています。これらのアイテムは、屋内の売り場の一角に無造作な雰囲気で並べられています。ややほこりをかぶったような雰囲気も味わいがあり、また一興。 社長さんが育てたおいしい実り。 ぜひ、お土産にどうぞ 「フローラ黒田園芸」では、店舗の周りにある畑で採れた収穫物が、花苗に交じってときどき店頭に並びます。冬季はショップの隣にある畑で穫れたミカンを販売。サツマイモや柿など季節の収穫物が並ぶことも。とてもお得な価格で、お土産に最適。 「フローラ黒田園芸」イチオシのグッズはコレ! ベンチプランター 健太郎さんがオススメするのは、社長さんお手製の「ベンチ型プランター」。コンパクトサイズで玄関先やベランダにぴったりです。植える部分がやや浅いので、小型の草花や多肉植物を育てるのに最適。色は9色ほどありますが、「手づくりなので、店頭にあったりなかったりします。興味のある方は、ぜひスタッフにお声がけください」と健太郎さん。大きさはワンサイズでW71.5×D32×H71cm。 抜群のコーディネートセンスで、地域密着型の園芸店を全国から人が集まる人気園芸店に成長させた「フローラ黒田園芸」。今もなお地域の人たちに愛され続ける理由は、近所の人が立ち寄りやすい“オープンな雰囲気”を常に意識しているから。家族経営の強みを最大限に生かし、アットホームな雰囲気が店内を包んでいます。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、JR大宮駅・北与野駅・埼玉新都心駅からバスで約10~15分。「円阿弥」下車・徒歩4分。 【GARDEN DATA】 フローラ黒田園芸 〒338-0007埼玉県さいたま市中央区円阿弥1-3-9 TEL: 048-853-4547 URL: http://florakurodaengei.com/ 営業時間:9:00~18:30春夏(3~10月)、9:00~18:00秋冬(11~2月) 定休日:無休(正月を除く) 併せて読みたい ・黒田健太郎さんに学ぶLesson3 数株で素敵に! シンプル寄せ植え&コーディネート ・一年中センスがよい小さな庭をつくろう! 英国で見つけた7つの庭のアイデア ・Junk sweet garden tef*tef*が教えるワンランク上の寄せ植えテクニック Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。 写真協力/黒田健太郎
-
富山県

花の庭巡りならここ! 大人の社会科見学スポット「富山県中央植物園」
研究植物園らしい植物収集数を誇り 市民に憩いの場を提供 1996年に全面オープンした「富山県中央植物園」は、研究植物園として植物の収集・展示を行うとともに、市民の憩いの場としても提供。24ヘクタール、外周2kmに及ぶ園内は、大人の足で1〜2時間の散策を楽しめます。 研究の成果を披露するという側面があるため、珍しい植物のコレクション数も多く、分類学、生態学などに基づいた展示が特徴です。植物のもともとの生育地である草原、森、海岸、水辺などの環境を再現した適材適所の植栽は、ショーガーデンとは対照的。より自然に近い自生する姿に親しむ「大人の社会科見学会」を満喫できそうですね。 園内は、「世界の植物ゾーン」「日本の植物ゾーン」に分かれています。「世界の植物ゾーン」では、温冷室が充実するほか、日本の植生と類似性のある「雲南省の植物エリア」「北米の植物エリア」があり、世界はつながっている、と実感できます。また、繊維を採って加工できるものや、香料やスパイスの材料となるものなど生活に役立つ植物も見られます。一方「日本の植物ゾーン」では、植生を再現してより自然な姿で育てながらも、春から秋まで開花リレーをつないで、いつ訪れても野趣あふれる花姿を楽しめるようにしています。 年間を通して約10万人が訪れる「富山県中央植物園」は、リピーターも多い癒しの場。「北アルプスの借景もいい」「芝生がきれい」「自然な景観ながらも、それぞれの植物が繁茂しすぎずに調和した、手入れの行き届いた管理が心地いい」といった声が届いています。季節によって企画展などさまざまなイベントも開催されているので、まめにホームページをチェックして出かけるのがオススメです。 雪に閉ざされる冬に元気をもらえる! 5棟が立ち並ぶ充実の温冷室 「世界の植物ゾーン」内には、5棟の温冷室が建っています。冬も緑の楽園「熱帯雨林植物室」「熱帯果樹室」「ラン温室」「雲南温室」の温室4棟と、冷室の「高山・絶滅危惧植物室」です。いずれも大変充実した展示となっているので、温冷室を目当てに訪れてはいかがでしょうか。月下美人を中心に夜に咲く花が多くなる季節など、年に数回は夜間開園する時期もあるので、甘い香り漂う夜の温室を堪能するのもいいですね。 写真の「熱帯雨林植物室」では、400種もの熱帯性植物を展示しています。冬に一歩足を踏み入れると、外の雪に閉ざされた景色から一変。むっと湿度のある草いきれが漂う、生命力に満ちた眺めに元気をもらえそうです。棟の高さは22mにも及び、巨竹やヤシの木が自由に枝を広げています。特に花がきれいなのは、春に咲く鮮やかなエメラルドブルーのヒスイカズラや、フォルムが美しいサガリバナ。香料として珍重されているビャクダンが生育する姿も見学できます。 「ラン温室」では、ランが好む湿潤な空調のなか、一年を通して華麗に咲く姿を楽しめます。コチョウランやシンビジューム、デンドロビュームなど、華やかな咲き姿を見せる洋ランを多数展示。ほかにも、楚々とした味わいを見せる野生系のランや、小笠原諸島で見られる亜熱帯性の植物など、コレクションは多岐にわたっています。 こちらは、中国の雲南省に生息する多様な植物を集めた「雲南温室」。写真は中国で親しまれているトウツバキの開花の様子で、2〜3月が見頃です。花径約15cmの大きな花が派手やかに咲く様子は、圧巻。侘び寂び感をまとった日本のツバキとは、また違った魅力がありますね。「雲南温室」では、ほかにもモクレンの仲間で香りが素晴らしい、キンコウボクやギンコウボクの観賞もオススメです。 植生を再現するアカデミックな展示のほか 植物園の研究成果も披露 「日本の植物ゾーン」では、日本各地の植物が見られます。春は写真のフクジュソウから始まり、カタクリ、サクラ、カキツバタ、ハナショウブへ。夏はオミナエシ、秋はフジバカマ、落葉樹の紅葉や、ドングリなど実をつけた木々の姿も観賞できます。ここでもう気づいた方がいらっしゃるかもしれませんね。この園内では華やかに改良された園芸植物ではなく、日本に古くから自生し愛でられてきた花々で開花リレーが構成されているのです。楚々とした花々の姿に、森歩きを楽しんでいるような気分を味わえますよ! 「富山県中央植物園」では、サクラのコレクションも見どころの一つです。野生では絶滅の危機にあるホシザクラや、北陸地方ならではの花弁が数百枚にも及ぶ菊咲き性品種など、その品種保有数は、なんと約120種類! サクラはこんなにも表情豊かな花木だったのかと、感嘆すること間違いありません。300mも続くソメイヨシノの花のトンネルは、開花期間中はライトアップが行われ、水面にもその花姿が映し出されて幻想的な景色を楽しめます。園内への飲食持ち込みはOKなので、花見を楽しむのもいいですね。ただし飲酒は不可、ゴミの持ち帰りは忘れずに、マナーを守りましょう。 夏は、屋外の広大な池の一角で、南米原産の巨大な水草として有名なオオオニバス(パラグアイオニバス)の群生が見られます。写真のように、直径1m近い葉が池の岸辺を埋め尽くす景色は圧巻です。ここで一つ疑問が浮かびませんか? 「熱帯植物のオオオニバスが、雪国の富山でどうやって越冬するの?」って。 それは「富山県中央植物園」が研究機関でもあることに由来します。一年草のオオオニバスのタネの採取から、タネ播き・育苗後の定植まで、雪国での育成に成功した研究成果が披露されているのです。もちろん北国では「富山県中央植物園」でしか見られない珍しい景色ですから、必見ですね。毎年8月中・下旬の3日間、子どもを対象に、オオオニバスに乗った姿を記念写真に収めるイベントも開催されています。 高山気候から熱帯性気候まで内包し、世界の植物の宝庫として知られる中国の雲南省。ランやトウツバキ、サクラソウ類の原産地としても知られています。「富山県中央植物園」では、現地機関と共同研究を行っている縁もあり、「雲南エリア」の展示が充実しているのも、特色の一つです。現在では持ち出すことができなくなった雲南省の貴重な石林の石を配置して、現地の風景を再現。甘い香りを持つウンナンザクラや、黄色い花を咲かせるチヨウキンレンをはじめ、珍しい雲南省の植物コレクションの数々を観賞できます。 北アルプスが借景のイギリス風景式庭園 景色を愛でられる喫茶室にも立ち寄りを 屋外は緑の美しい芝生や木立、広大な水面、曲線的な園路で構成され、自然への賛美を表現する「イギリス風景式庭園」となっています。手入れの行き届いた植物園ながらも、北アルプスの雄大な山々を借景に、野山を散策するような心地よさがあります。 冬はカモ類を中心に、多種多様な水鳥が飛来して越冬するため、白銀に化粧した北アルプスを背景にバードウォッチングを楽しめます。自然保護のためにも、餌やりはご遠慮くださいね。 「富山県中央植物園」には、喫茶「ココナッツアイランド」があり、紅茶やコーヒー、軽食などを楽しめます。営業時間は11:00〜16:00、木曜定休、テーブル席5席。大きく取られた窓の向こうには、広い池や野鳥の姿も見え、見晴らしがいいのが嬉しいですね。ランチは500〜1,000円くらいの価格帯で、サンドイッチ、蕎麦、カレーなどがあります。特に生のフルーツを使ったジュースやジェラートがオススメ。 Information 富山県中央植物園 所在地:富山県富山市婦中町上轡田42 TEL:076-466-4187 http://www.bgtym.org/ アクセス:バス/JR富山駅前(6番乗場)発→ファボーレ経由 萩の島循環線「中央植物園口」バス停下車、徒歩約15分 車/北陸自動車道 富山ICより婦中大橋経由約15分 オープン期間:通年 休園日:木曜日(ただし木曜日が祝日の場合、および4月の第1・2木曜日、ゴールデンウィーク、お盆の期間は開園)、年末年始(12月28日~1月4日) 営業時間:9:00~17:00(2〜10月、最終入園は16:30まで)、9:00~16:30(11〜1月、最終入園は16:00まで) 料金:大人500円(3〜11月、団体20名以上は400円) 大人300円(12〜2月、団体20名以上は240円) 高校生以下、70歳以上は無料 駐車場:普通乗用車332台、大型バス専用駐車場6台(無料) 併せて読みたい ・花の庭巡りならここ! 牧野富太郎コレクションを堪能「高知県立牧野植物園」 ・花の庭巡りならここ! 麗しき英国式庭園「みつけイングリッシュガーデン」 ・カメラマンが訪ねた感動の花の庭。北海道 イコロの森 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
-
和歌山県

花の庭巡りならここ! 貴重な絶滅危惧種も見られる「和歌山県植物公園 緑花センター」
子ども連れのファミリー層を中心に 県民に愛される憩いの植物公園 1979年にオープンした「和歌山県植物公園 緑花センター」は、11.17ヘクタールもの規模を持ち、大人の足でゆっくり歩いて2時間ほどの散策を楽しめます。和歌山県民の憩いの場として愛され、年間の来園者数は約19万人。自然の地形、木々を生かした公園では、樹木が約500種5,000本、草花は約1,000種、約2万株が見られます。 園内は、四季折々の草花で魅了する「パノラマ花壇」、ハーブ類や香りのよい植物を集めた「香りの森」のほか、梅園、バラ園、アジサイ園、ハス池、温室、芝生広場などにゾーニングされ、いつ訪れても見頃を迎えた花々が出迎えてくれます。特に、絶滅危惧種に指定されているハナガガシ、紀伊半島特産で絶滅が危惧されているキイジョウロウホトトギスは、この公園以外ではあまり見かけないので、必見です。 園内ではお弁当を広げる家族連れも多く、ベンチや屋根つきの休憩所、スロープなどが整備され、幅広い世代が安心してのんびり過ごせます。「わんぱく広場」では遊具が大変充実しており、子ども連れの家庭では花見も遊びも楽しめ、一日過ごしても飽きない、人気のレジャースポットです。 四季を通して花々で彩られ いつ訪れても旬の開花を楽しめる 「和歌山県植物公園 緑花センター」には広い梅園があり、45品種、69本のウメが植栽されています。まだ寒さの厳しい1月下旬から開花し始め、見頃を迎えるのは2月中旬〜3月中旬。ひと足早く春の訪れを感じさせてくれます。同じ頃に、園内ではクリスマスローズ、ツバキ、サザンカ、ロウバイ、スイセン、シクラメン、ビオラなどが開花。「古典植物と山野草展」のイベントも開催しています。 「和歌山県植物公園 緑花センター」では、14品種、340本の桜が各所に植栽されています。見頃は3月下旬〜4月上旬で、2019年は3月26日(火)と4月2日(火)に桜臨時開園が行われます。自由にレジャーシートを敷いてお花見でき、桜の下、数カ所には桟敷が設置されるので、そちらも利用できます。飲食物の持ち込みOK、飲酒も可能ですが、公共施設なので節度をもって楽しみたいですね。カラオケセットの持ち込みや、バーベキューなど火気の使用は禁止となっています。 「和歌山県植物公園 緑花センター」のメインスポットといえる「パノラマ花壇」は約3,500㎡の広さを誇り、約2万株の草花で彩られます。一年草を中心に季節ごとに模様替えされるので、季節感あふれる花や新しい品種の花々で、いつ訪れても爛漫たる景色。写真は、4月下旬にオレンジや黄色、白などのポピーが咲き広がる様子です。 「和歌山県植物公園 緑花センター」には、75品種、350株ものバラ園があります。見頃は春が5月中旬〜下旬、秋は10月中旬〜12月下旬。写真のような満開時には、漂う芳香にも癒やされます。バラ園を利用して、実践的に学べる「バラの手入れ教室」も開催。冬季剪定を中心に、植え付けや誘引方法、病害虫の種類と駆除、肥料の施し方など、年間の手入れ方法を解説しています。 「和歌山県植物公園 緑花センター」には50品種、約1,000株が植栽された「あじさい園」があります。見頃は6月上旬〜7月中旬。ブルー、紫、ピンク、白など多彩な花色と、ガクアジサイや西洋アジサイなど、さまざまな花姿を楽しめます。また、充実した「あじさい園」を利用して、アジサイの剪定方法をはじめ、特徴や種類、年間の管理方法や増やし方を、講習と実習を通して学べる「アジサイの剪定教室」が開催されています。 熱帯植物が多数お目見えする温室のほか、 土産物ショップも充実! 花が少なくなる冬の寒い時期には、ぜひ暖かい温室を訪ねてはいかが? サボテン、多肉植物、食虫植物、果樹類、ベゴニア類、ラン類など熱帯・亜熱帯の植物が見られます。特にフィリピン諸島のごく限られた熱帯雨林にしか自生していない、ヒスイカズラは見もの。花色が宝石の翡翠に似ていることから名づけられた、エメラルドグリーンの大きな花穂を下げて咲く姿は、一見の価値ありです。 「和歌山県植物公園 緑花センター」の本館には、和歌山県特産の優良土産品を扱う「紀州ふるさとの店」があります。雑貨、ガーデニング用品、お菓子、お寿司、ハチミツ、アイスクリームやジュースなど品揃えも多彩。主な価格帯は300〜700円でリーズナブルな設定です。ここでアイスクリームやパン、お饅頭、お寿司などを購入して、園内の花見を楽しみながら、もぐもぐタイムを満喫するのもいいですね。 人気の寄せ植え教室は早めの予約を! 週末を中心に多様なイベントが楽しめる 「和歌山県植物公園 緑花センター」では、月に1度開催される寄せ植え教室が大人気。約1時間半かけて、季節の草花と花木のアレンジのテクニックなどを学びます。材料や道具は揃っているので、手ぶらでOK、気軽に参加できますね(汚れが気になる方はエプロンや手袋を持参するのがオススメ)。チケット制なので、事前に寄せ植え参加チケットの購入が必要です。 寄せ植え教室のほかにも、週末を中心にクラフト教室、フリーマーケット、ハンドメイド作品展示即売会、郷土食カフェ、コンサートなどの各種イベントが開催されています。スケジュールは公式ホームページで随時更新されるので、事前にチェックして出かけるのもいいですね。写真は、クラフト教室「松ぼっくりでクリスマスツリーを作ろう」のひとコマです。 Information 和歌山県植物公園 緑花センター 所在地:和歌山県岩出市東坂本672 TEL:0736-62-4029 http://www.w-botanicalgarden.jp/ アクセス:公共交通機関/JR和歌山線 岩出駅より岩出市内巡回バス利用(東巡回コース)、バス停「緑花センター・根来公園墓地前」下車、約100m JR阪和線 和泉砂川駅より和歌山バス那賀利用(近畿大学経由 岩出駅前行)、バス停「緑花センター」下車、約100m 南海本線 樽井駅より和歌山バス那賀利用(近畿大学経由 岩出駅前行)、バス停「緑花センター前」下車、約100m オープン期間:通年 休園日:火曜日(ただし火曜日が祝日の場合は、翌平日) 営業時間:9:00~17:00(入園は16:30まで) 料金:無料 駐車場:約500台・無料 併せて読みたい ・「私の庭・私の暮らし」インスタで人気! 雑木や宿根草、バラに囲まれた大人庭 千葉県・田中邸 ・日本の春を彩る美しい花 桜の名所に出かけよう ・知っておきたい! 流行中のバラトレンドと、オススメ品種10選 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
-
北海道

カメラマンが訪ねた感動の花の庭。北海道 上野ファーム
僕にとって特別なガーデンの一つ「上野ファーム」 2016年に撮影した「サークルボーダー」。 2019年最初にご紹介するお庭は、北海道旭川の有名なガーデン「上野ファーム」です。この庭は、いつかしっかりと撮影させていただきたいと思っていた、僕にとっても特別なガーデンです。というのは、遡ること1996〜1997年。2年連続で6月に2〜3週間かけて巡ったイギリス取材でのこと。イギリスで知り合った「B&B for Garden Lovers」のまとめ役の女性、スー・コルクフーン婦人の案内で、毎日素敵なお庭に辿り着けるという夢のような毎日を過ごしていました。 2017年に撮影した「ミラーボーダー」。 そんな中で出合ったお庭の一つが、「上野ファーム」のガーデナーである上野砂由紀さんが当時ホームステイしていた「ブラムディン・ハウス」だったのです。 2017年に撮影した「ノームの庭」の一角。 「ブラムディン・ハウス」に伺った時はあいにく、上野砂由紀さんは留守でお会いできなかったのですが、とってもきれいなミラーボーダーや、ボーダーの中に白いクレマチスのインテグリフォリアを使っているのを初めて見るなど、とても印象深かったことを思い出します。その庭で働いていた日本人女性である上野さんのことは、頭の片隅にずっと残っていました。その時の取材については、単行本『イギリス家庭のガーデニングアイデア200』(編集/ビズ出版)として1998年に出版され、僕と家内との共著で夫婦デビュー作となりました。 白樺からの木漏れ日が美しい「上野ファーム」の小道。2016年撮影。 それから何年経ったか定かではありませんが、ある日、雑誌『BISES』後半の情報ページに「イギリス帰りの女性ガーデナーが、北海道で庭づくりをする実家に戻り、本格的なイングリッシュガーデンづくりをスタートさせる」という内容の記事が出ていました。家内に見せると「きっと、あの時にお会いできなかった女性よ」と教えてくれたのです。 「ノームの庭」では、多数の宿根草がコラボレーションする新鮮な風景が僕を驚かせた。 当時は憧れの雑誌からイギリス関連の本も出版したばかりだし、あちこちのきれいなお庭の撮影にも忙しく通っていたので、イギリス帰りの上野さんのイングリッシュガーデンは、イギリス通のカメラマンと自負していた僕が撮影をさせていただきたいと真剣に思っていました。 何人かの編集者に、そのことを話していたのですが、当時は北海道の取材は各出版社ともなかなかハードルが高かったのか、どこからもお声もかかりませんでした。そのうちに上野さんご自身が写真も撮りながら、『BISES』や『園芸ガイド』で連載をスタートしていて、「上野ファーム」の撮影の機会が巡ってこないかなと願っていました。 逆光が植物を浮き立たせる、夕暮れの美しい瞬間。 その後、北海道のオープンガーデングループ「OPEN GARDEN of HOKKAIDO」も人気になり、2010年からは毎年北海道へ撮影に行きましたが、個人のお庭のレベルが高くて個人邸をメインに撮影をしていました。2016年の6月末、この日も旭川の素敵な個人邸の撮影をして終了後に、お茶をいただきながら庭談義をしていたら「昨日、静岡でバラの庭づくりをしている素敵なご夫婦がお見えになりましたよ」と言うのです。「それはもしや大須賀さんじゃないですか?」と聞くと、僕も撮影に伺ったことのある大須賀さんだというので早速電話してみることに。 2017年6月末に撮影した「ノームの庭」。 大須賀さんは電話口で、「昨日訪ねた『上野ファーム』が素晴らしかったわ! 『ノーム』の庭は絶対に見るべきよ」と強く薦めてくれました。僕もいろいろな雑誌やFacebookなどで「上野ファーム」にできた新しいエリア、「ノームの庭」にも興味があったし、大須賀さんの強い薦めもあったので、急遽、午後の撮影は「上野ファーム」と決めました。 宿根草が伸び伸びとダイナミックに育つ景色も上野ファームの魅力。 そうして、午後3時過ぎに「上野ファーム」に到着。駐車場は車がいっぱいだし、お客さんもたくさんお越しになっているようなので、「これはすぐには撮影ができないな」と思いました。取りあえず入場券を買って中に入ってみると、思った通り、庭もたくさんのお客さんで賑わっていました。まずは上野さんに挨拶をしようと、庭を歩いていると目の前でリヤカーに荷物をいっぱい積んで通り過ぎる砂由紀さんの姿がありました。後を追ってご挨拶をし、閉園後も撮影をさせていただけないかとお願いをすると、「スタッフが残っているので、どうぞ」と了解を得て、まずは一安心。天気もよくて、夕方はきれいになりそうなので、ゆっくり撮影ポイントを探しながら、陰って光の状態がよくなったら本格的に撮影を開始することにしました。 宿根草とバラが美しいカラーコーディネートを見せる「サークルボーダー」。2016年撮影。 「ノームの庭」は太陽の光を遮るものがなく、夕方になってもまだ強い光が差しているので、まずは「マザーズガーデン」、「サークルボーダー」のエリアから撮影を開始。雑誌などで見て知っているつもりでいましたが、実際にガーデンに立ってみると、一つひとつの植物が伸び伸びと大きく育っていて、花色も鮮やか。やっぱり素晴らしいなぁと感心しながら、シャッターを切っているうちに、あっという間に時間が過ぎていきました。 2016年にグランドオープンした「ノームの庭」。とんがり屋根の建物が目印。2017年撮影。 17時近くなると、ガーデンを囲む白樺の林を抜けてきた優しい光が、細い小径を挟んだボーダーを照らして輝き出し、撮影は最高潮。太陽の位置を見ながら、サイド光や半逆光になるようにポイントを決めて、撮影は順調に進みました。太陽が沈みかけてきた頃に、いよいよノームの庭の撮影に移りました。 圧倒的な花数で迫力の庭風景がつくられていた。2017年撮影。 ノームの庭に行くと、もう何十年もイングリッシュガーデンを撮ってきて、分かっていたつもりでいた僕に、一瞬どう向き合ったら上手く撮れるのか分からないというとまどいが起こりました。それまで、僕が好んで撮っていたのはイングリッシュガーデンのほんの一部で、例えば、レンガの塀にピンクのつるバラが咲いていて、手前にはデルフィニウムやジギタリスのような宿根草のボーダー花壇みたいなものでしたが、「ノームの庭」では、半逆光に輝く植物は、名前すら分からないのに、とても魅力的です。こんなに試行錯誤しながら撮影したのは本当に久しぶりでした。結局、日が沈みかけて撮影ができなくなるまで何周も何周も「ノームの庭」を歩き回りながら、最後は上手く撮れた実感もあり、とても幸せな撮影でした。 2017年に日没直前まで撮影した「ノームの庭」の小道。 2017年の7月中旬。2016年より半月ほど遅く伺ってみると、「マザーズガーデン」も「サークルボーダー」も、さらには「ノームの庭」も咲いている花の量が増えたのか、花の色数が増えて、ボリュームも雰囲気も全然違っていました。 庭づくりを助ける守り神、ノーム(小人の姿をした妖精)が「上野ファーム」の植物の中でくつろいでいた! 宿根草が主体の上野ファームのようなお庭は、訪れる時期が少しでもずれると、まったく違う表情を見せてくれることを改めて知りました。次回は8月、その次は9月の秋の庭の撮影に伺いたい。マイフェイバリットのお庭が、また一つ増えてしまいました。 併せて読みたい
-
イギリス

イングランド式庭園の初期の最高傑作「ローシャム・パーク」【世界のガーデンを探る旅17】
地上の楽園とは、美しい自然の中にある 16~17世紀のイタリア・ルネッサンスやフランス式庭園のような、直線的で幾何学的な整形式庭園が、かつてはイギリスでも主流でしたが、緩やかな丘陵の自然風景に親しんできたイギリス人にとって、それはどこか、しっくりこなかったのではないでしょうか。 そこで、より自然な風景を創り出すことで、フォーマルなエデンの園から、インフォーマルなユートピア(理想郷)へと庭の形が変わっていきます。18世紀になると、ジョン・ミルトン作の叙情詩『パラダイス・ロスト(失楽園)』に記された、“地上の楽園とは、美しい自然の中にある”という考え方がイギリスに広がっていきました。 ウィリアム・ケントがつくり出した“ピクチャレスク”な庭園 また、“芸術は自然の模倣であり、庭園は自然に従う”という考えからも、イギリスらしい風景式庭園がつくられるようになっていきました。その代表作の一つとして今回取り上げるのが「ローシャム・パーク(Rousham Park House & Garden)」です。 この庭は、イギリスの造園家であり画家である、かの有名なウィリアム・ケント(William Kent、1685〜1748)によって、1738年からつくられ始めました。ケントは、庭園とはピクチャレスク(絵画的)であるべきだという考えから、イギリス人が理想とする美しい自然な風景を大地につくり出そうとしました。そしてこの地に彼の理想とする庭園が完成しました。幸運なことに現在の「ローシャム・パーク」では、ケントがつくった当時のままに近い形が残っています。 屋敷の前にはよく手入れされた芝生が広がり、今もイギリスで人気のスポーツ、ローンボウルズ(現代のテンピンボウリングの元となった)の競技場にもなっています。 ずっしりとした重厚なジャコビアン様式の屋敷は、1635年に建てられましたが、1738年にケントが改築し、建物の内部や絵画にまで手を加え、さらにその周りには、ピクチャレスク(絵のよう)な風景式庭園がつくられました。 ローシャム・パークは、平らな敷地があまりなく、不規則に蛇行しながら、ゆったりと流れるチャーウェル川を見下ろす丘の上にあります。今も当初の姿をほぼそのまま残すこの庭は、イングランド式庭園の初期の最高傑作といわれています。 イタリアルネッサンスへの憧れとイングリッシュ・ランドスケープが見事に融合した、ウピクチャレスクな空間。 植物がのびのびと生育し、花が彩る自然風な庭 重厚な庭門をくぐると、そこには草花がのびのびと生育する宿根草ボーダーが目の前に無限の繋がりのように城壁に沿って現れます(ウォールドガーデン)。 このデザインは、初期のボーダー花壇のスタイルをよく残しています。右側の白い花は、日本では見たことがない背が高くなるスカビオサ。ピンクの花はシュラブローズ、黄花は、リシマキアとバーバスカム。足元には少し、赤いジギタリスが頑張って咲いていました。左の白花はムスクマロウ(日本の土壌ではうまく育ちません)、足元にはアルケミラ・モリス。そして、手前にはヘメロカリスのつぼみが見えます。 ウォールドガーデン横のエリアは、「ピジョン・ハウスガーデン」。ノットガーデン風なローズガーデン で、バラの花の赤と白との単純な組み合わせが、ノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。 別の年に訪れた時のノットガーデンの花壇では、バラの背丈より高く咲くジギタリスが一面に。濃い色を避け、優しい色合いでまとめているのも、ウィリアム・ケントの作庭当時からの伝承なのでしょうか。ガーデンの中心を引き締めているのはサンダイアル(日時計)。 フォーマルな印象のノットガーデンには、自然風なアルケミラ・モリスとシレネが咲き、ベンチを包み込むように咲き乱れるイングリッシュラベンダーが……。6月上旬のこの季節、イギリスの村々には、むせかえるようなラベンダーの香りが満ち溢れます。僕の一番好きな季節です。 ピジョン・ハウス(鳩小屋)の壁面に放射状に這わせている植物は、なんと日本でもよく見かけるきれいな赤い実をつける西洋ザイフリボクです。足元には赤いケシが植えられていました。左奥の花は、ユッカの白花。 キッチンガーデンへの入り口のウォールドガーデンでは、左側の壁面にはシリンガ(ライラック)、つるバラ、クレマチスなどを這わせてあります。皆さんが思い浮かべるパッチワーク状のボーダー花壇の花の植え方は、ウィリアム・ケントからさらに時を経て現れる三巨頭のひとり、ガートルード・ジーキル女史まで待たなくてはいけません。この庭は、あくまでケントが意図した自然風な要素で構成されているので、より素朴な雰囲気が随所に見て取れます。 キッチンガーデンは現在も使われています。左の白い花はサルビア、手前にはシレネ、奥には白いモナルダ。右側の畑にはアーティチョークのザラザラした感触のシルバーリーフが茂り、足元にはナスタチウムが植えられていました。 自然との調和を示す池のあるガーデン 随所に花とベンチと人工的な池があります。自然との調和を目指していたウィリアム・ケントの意向が強く感じられます。宿根草のボーダー花壇の奥へ行くと、頭上をつるバラが囲み、中央に丸い池が配され、噴水から水音も響きます。足元の白い花は、シシリンチウム・ストリアツム、淡いピンクのジギタリスが優しい色を添えています。 これまでご紹介した花のエリアとは反対側にある森を思わせるエリアには、細い水路「リル」と八角形の池があります。ウィリアム・ケントの溢れ出る庭づくりのアイデアを反映したこのデザインは、200年を経た今も斬新さを感じることでしょう。 起伏に富んだ地形を楽しむかのようにつくられた「ヴィーナスの谷」。見事なまでに自然と調和したピクチャレスクな空間づくりです。ハーハー(牧草地に設けられる段差)を思わす2段の石橋の中はカスケード(連なった滝)、上にはビーナスの像があります。優しい起伏の斜面と周りの森が、あたかも一幅の絵のようです。 屋敷にはコンサバトリー風な温室も備えられています。この頃になると、オランジェリーではなく、板ガラスの温室が作られるようになりました。入り口の右手には、優しい色のバラが咲き、左手には白いガクアジサイ。イギリスには珍しいトウジュロも植えられています。 ウィリアム・ケントが目指したピクチャレスクなイングリッシュランドスケープには、心安らぐ理想郷が表現され、今もここ、ローシャム・パークには当時の様子そのままに維持されています。こんなベンチに座って、自然と一体となる贅沢な時間。庭を散策してその景色を楽しむだけでなく、自然と一体になる時間を提供するという新しい過ごし方を創造したのではないでしょうか。 併せて読みたい ・一年中センスがよい小さな庭をつくろう! 英国で見つけた7つの庭のアイデア ・イングリッシュガーデン以前の17世紀の庭デザイン【世界のガーデンを探る旅15】 ・スペイン「アルハンブラ宮殿」【世界のガーデンを探る旅1】
-
高知県

花の庭巡りならここ! 牧野富太郎コレクションを堪能「高知県立牧野植物園」
日本の植物分類学の父 牧野富太郎博士の業績を辿る植物園 「高知県立牧野植物園」は、高知県が生んだ「日本の植物分類学の父」、牧野富太郎博士の業績を顕彰するため、博士没後、翌1958年に高知市の五台山にて開園しました。「高知に植物園をつくるなら五台山がよい」という生前の博士の言葉からこの地が選ばれたといいます。 園内の広さは約8ヘクタール、大人の足でゆっくり歩いて1時間半〜2時間ほどかかります。広大な敷地内は「土佐の植物生態園」「50周年記念庭園」「温室」「さくら・つつじ園」「薬用植物区」などテーマを設けて展示。また「牧野富太郎記念館 展示館」があり、博士の功績をたどれるほか、年に数回の企画展を楽しむことができます。 園内では牧野博士と関わりの深い植物や土佐の植物をはじめ、四季折々約3,000種類の植物がみられます。3〜5月のツツジ類、5月末〜6月下旬のアジサイ類、7月のユリ類、11月上旬〜12月上旬のキク類など、そのコレクションの数々は必見。また薬用植物や貴重な絶滅危惧種なども見ることができます。植栽された植物の多くは来歴が明らかで、観察や観賞の対象のみならず「生きた標本」として、植物学の研究をする上で重要な情報をもたらしています。 植物を学ぶ人々にとっての聖地であり 四季の花が咲く憩いの場としても愛される 「高知県立牧野植物園」の春の遠景です。東洋の野生植物やそれらの園芸品種を中心に植栽している「50周年記念庭園」では、春になるとサクラ属の園芸品種‘仙台屋’やサトザクラ‘菊桜’などのサクラ類、ハナモモの園芸品種が咲き乱れ、足元をサクラソウの仲間が彩ります。園内では野生種・園芸品種を含め40種類ものサクラ類を植栽。これは、牧野博士が大の桜好きであったことにちなんでいます。 園内への飲食物の持ち込みは可能ですが、所定の場所に限られています。ゴミは持ち帰るマナーを守りましょう(館内への飲食物の持ち込みは禁止)。 「高知県立牧野植物園」では、温室も見どころの一つです。広い温室内は7つのテーマ「みどりの塔と回廊」「乾燥地の植物」「熱帯の暮らしと植物」「資源植物ゾーン」「ウォーターガーデン」「展望デッキ」「ジャングルゾーン」に分けられ、充実した展示が見られます。日本ではあまり馴染みのない熱帯植物の数々に魅せられ、時間を忘れての見学になりそう。特に周りに緑が少なくなる冬には、暖かい温室内で植物たちが健やかに茂る姿に、元気をもらえそうです。 温室入口にある「みどりの塔」は高さ9m、壁面には窓を設けてアコウを植栽。アコウはほかの木や岩などに張りつくように成長し、やがては張りついた木を覆い尽くして元の木は締めつけられ、朽ちていきます。みどりの塔はアコウの力強い根がこの塔の壁を網状に覆い、枝葉を広げていく姿をイメージしてつくられました。植物の生命力と勇壮な姿には、訪れる人を感嘆させるパワーがあります。 毎年テーマを決めて開催されているラン展は、人気の催事。ラン科は約2万5000種もある大きな科で、南極大陸を除くすべての大陸に分布。自生する環境も樹上、林床、草原、岩肌とさまざまです。原種だけでも大きさ、色、形が多様で、香りを放つ種類もあります。奥深いランの世界を堪能しましょう。 博士の業績を貴重な資料とともに展示 「牧野富太郎記念館 展示館」 「高知県立牧野植物園」内の「牧野富太郎記念館 展示館」では、常設展示のほか企画展示も行っています。常設展示の「牧野富太郎の生涯」コーナーでは、博士の人物像や業績、植物図、遺品など多類資料を展示しています。 企画展示は年に数回、さまざまな企画展を開催。あらかじめホームページをチェックして出かけるのもいいですね。 「牧野富太郎記念館 展示館」の中庭には、博士ゆかりの植物が植栽されています。博士が命名した植物をはじめ、植物図に描いた植物、こよなく愛した植物、交友のあった人物にまつわる植物など、約250種類にのぼるこれらの植物や展示を通して、博士をより身近に感じることができそうです。 季節の植物展示会や植物教室、ガーデンツアーなど 一年を通して多様なイベントを開催 「高知県立牧野植物園」では、「桜の宵」や「夜の植物園」など季節に応じて夜間開園も行っています。実施日はホームページで公開されているので、チェックして出かけてみましょう! 「高知県立牧野植物園」では、年間を通してさまざまなイベントや植物教室を開催しています。コンサートやクラフト教室、マーケットなど、そのラインナップは多彩です。写真は春と秋に開催されるガーデンツアーの様子。植物園のスタッフとともに園内を1時間ほどかけて散策し、さまざまな植物に関する目から鱗の解説を受けられます。詳細や日程はホームページで公表されるので、チェックを! フレンチスタイルのレストランやカフェ グッズ充実のミュージアムショップも併設 「高知県立牧野植物園」内には、「レストラン アルブル」と「カフェ アルブル」があります。「アルブル」はフランス語で「木」を意味します。園内の美しい植物の数々を借景に、口福のひとときを過ごしましょう。 「レストラン アルブル」は、地元の素材を使ったフレンチテイストの料理が楽しめます。営業時間は9:00〜17:00(ラストオーダー16:30)。ランチメニューの主な価格帯は、シェフのきまぐれランチ1,300円、鶏ひき肉と野菜のカレー1,100円など。 「カフェ アルブル」の営業時間は11:00〜17:00(ラストオーダー16:30)。スイーツやドリンクなど、こちらもメニュー充実です。 また、園内には、牧野植物園オリジナルグッズや、高知のアーティストなどの作品を販売するボタニカルショップ「nonoca(野の花)」があります。 牧野富太郎関連書籍やポストカード、クリアファイルなど、2,000円前後の価格帯で、「文具女子」をトリコにするセンスのいい小物を取り扱っていますよ! Information 高知県立牧野植物園 所在地:高知県高知市五台山4200-6 TEL:088-882-2601 www.makino.or.jp ●アクセス:公共交通機関/JR高知駅から車で20分。JR高知駅から牧野植物園正門前までの周遊観光バス「MY遊バス」の運行あり。 車/高知自動車道「高知IC」から五台山方面へ約20分 高知龍馬空港からは高知東部自動車道経由で約25分 ●オープン期間:通年 ●休園日: 12月27日〜1月1日 ※メンテナンス休園日あり(ホームページでご確認ください) ●営業時間:9:00~17:00(最終入園16:30) 料金:一般730円 (高校生以下無料)、 団体630円 (20名以上)、年間入園券2,930円 ※高知市・高知県長寿手帳所持者は本人のみ無料 ※身体障がい者手帳、精神障がい者保健福祉手帳、療育手帳、戦傷病者手帳、被爆者健康手帳所持者と介護者1名は無料 駐車場:無料 併せて読みたい ・小さな庭と花暮らし「Madeleine Floydの絵に魅せられて」 ・乙庭Styleの植物6 「冬の庭でも活躍する技アリ素材、和を感じるカラーリーフ常緑樹 10選」 ・一年中センスがよい小さな庭をつくろう! 英国で見つけた7つの庭のアイデア Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
-
兵庫県

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪5 兵庫「みどりの雑貨屋」
雑貨好きにはたまらないショップ「みどりの雑貨屋」 生活提案型の大型ショッピングモール・西宮ガーデンズ内にある「みどりの雑貨屋」。このショップではモールのコンセプトにふさわしく、グリーンと雑貨でつくる潤いある生活を提案しています。商品はマニアックというよりも、「ガーデニングの初心者も手軽に始めてもらいたい」という思いでスタッフが選んだものばかり。‘育てやすいグリーン×雑貨’に特化した、ありそうでなかなかないショップです。 ‘かわいい’がぎっしり詰まった宝箱のようなショップ ショップに一歩足を踏み入れると、たくさんのグリーンと愛らしい雑貨の森に入り込んだような、ファンタジーな世界にワープした感覚を覚える「みどりの雑貨屋」。100㎡ほどの空間には細い通路がめぐらされ、小さいながらもさまざまなシーンに出合えます。商品数はとても多いのですが、センス良く整然と並べられているので、気持ちよく売り場を見て回れます。 グリーンはすべて、鉢や雑貨と一緒に並べられています。コーディネートに不慣れなビギナーでもイメージしやすいよう、こまやかな提案がなされています。 ショップの中央に設けられたパーゴラが、売り場のシーンの切り替えに大活躍。いろいろなものを置いたり吊ったりと、楽しく飾った見どころの多い空間です。 マクラメやワイヤーバスケットなど、ハンギングアイテムもたくさん。 愛らしい寄せ植えも参考にしたいものの一つ。ベランダガーデンにオススメのオリーブの木も、実付きを考えて2品種以上選べるよう、いろいろな品種が用意されています。 悪条件の場所にオススメのフェイクのグリーンも充実 店内にはたくさんのグリーンがありますが、販売の回転が速いこともあり、どれも瑞々しい状態を維持。スタッフ全員で万全な管理を行っています。しかし、「玄関やトイレなど光が入らない空間にもグリーンを飾りたい」という声が多く寄せられたことから、フェイクのグリーンも多数扱っています。 「最近のフェイクはとてもよくできているので、植物と同じぐらい瑞々しさを感じさせてくれます。特に室内や、日当たりや風通しの悪いスペースなどにオススメですね」と、ショップのコーディネーターであるRIKAさん。悪条件になる場所では、こういったもので対応すればストレスなく過ごせますね。 室内での管理が難しい多肉植物。うまくいかない時は、本物のように瑞々しいフェイクを使ってみませんか? アートフラワーも充実。上品な色合わせで、アンティーク調の雑貨と親和性が抜群。ブーケ状になっているので、おもてなし時のコーナーづくりにぴったりです。 コンテナも什器も要チェック売り場にあるものすべてが商品 おしゃれなコンテナも充実。大きさ・色・形などバリエーション豊かに並びます。いずれもグリーンや雑貨に合わせやすいデザインのものが選ばれているので、ビギナーさんでも考え込まずに購入することができます。 大きなコンテナは土が入るとずっしりと重くなってしまうので、女性でも扱いやすい軽い素材のものも取り扱っています。色は植物や雑貨となじみやすいアイボリーやグレーのものが中心。使う側の目線に合わせた商品選びが感じられます。 また、コンテナを飾っている什器も販売されており、商品の雰囲気を引き立てるように黒や木製のもので統一されています。「ナチュラルなものやメンズライクなテイストは、グリーンが美しく映えるし、雑貨とも合わせやすいんです」とRIKAさん。 キャベツボックスは、オランダの農家で使われていたものを忠実に再現した、ショップのオリジナル商品。細部までこだわり、材を釘だけでなくカスガイでもとめて、底面をメッシュにした本格的な仕上がり。強度も抜群です。 おしゃれなコーナーづくりに欠かせないアイテムも 植栽に忍ばせたり、コンテナに添えたりと、シーンの雰囲気を高めてくれるアイテムもバラエティー豊富に揃っています。たくさんある中から、お気に入りの一点を探すのも楽しい時間です。 洋書の世界のようなお手本にしたいディスプレイ 小さなスペースを巧みに生かし、さまざまなテイストで提案している見ごたえのある‘グリーン×雑貨’の楽しみ方。ディスプレイは月に2~3回と頻繁に変えているので、行くたびに新たなシーンが楽しめます。眺めているだけでもセンスアップにつながること請け合い。 緑色の花瓶とボタニカルアート、ボックスなどを盛り込んだ、つややかなコーナー。 異なるテイストのコーナーが、スムーズに、そして自然に移り変わる見事なディスプレイ。小さなスペースでいろいろ楽しみたい人に、とても参考になる技です。 ガラスのケースに並ぶ、乙女チックな趣のアイテム。やさしい花色のバラと一緒に飾っても素敵。 クラフトのリースも大人気。リースひとつでシーンの雰囲気がガラリと変わるので、ぜひ季節ごとに替えてみて。 RIKAさんイチオシのグッズはコレ!ウッディボックスキャリー みどりの雑貨屋がオススメするのは、「グリーンを部屋に飾る時は鉢カバーにもこだわってほしい」という思いで作ったオリジナルの木製カバー。色は落ち着いたブラウンで、空間のスタイルやテイストを問わずに使えます。作りはキャベツボックスと同様で非常に丈夫。底部にキャスターをつけることができるのも、オススメポイントの一つです。 サイズはLとSの2つ。8号サイズが入るL(W29.5 × D29.5 × H31 cm)と、6号サイズが入るS (W23 × D23.5 × H24.5 cm)。 グリーンと雑貨で見せる‘かわいい’空間づくりにこだわった「みどりの雑貨屋」。‘おもちゃ箱をひっくり返したよう’をイメージして展開された店内には、植物から広がる楽しさのアイデアがたっぷり詰まっています。ぜひ、お気に入りのアイテムを見つけに訪れてみてください。アクセスは、阪急電鉄神戸線「西宮北口駅」から直結する阪急西宮ガーデンズ内。 【GARDEN DATA】 みどりの雑貨屋 所在地: 兵庫県西宮市高松町14-2 阪急西宮ガーデンズ 1階 東モールTEL: 0798-65-4187URL: http://midorinozakkaya.com/ 営業時間:10:00~21:00定休日:無休(正月を除く) 併せて読みたい ・素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪1 岩手・雫石「花工房らら倶楽部」・ガーデンデザイナーが教える「寄せ植え上手」のコツ・一年中センスがよい小さな庭をつくろう! 英国で見つけた7つの庭のアイデア
-
新潟県

花の庭巡りならここ! シャクナゲ&アザレアは日本一のコレクション「新潟県立植物園」
花卉生産が盛んな地域ならではの 品種コレクションが多彩な植物園 「新潟県立植物園」は、1998年8〜10月に開催された「全国都市緑化フェア にいがた緑のものがたり」の新津会場跡地に再整備されてオープンした、総合植物園です。新潟市秋葉区は、国内でも有数の花卉生産地で、また新潟県は約3,000種類の植物が自生する豊かな自然を誇る土地。「新潟県立植物園」ではそれらの特徴を生かした展示を行っています。 敷地面積は19.8ヘクタールで、大人の足で巡って1.5時間くらい。園内全体で約4,000種11万株もの植物が息づいています。3棟の観賞温室を持つほか、「シャクナゲ園」「ツツジ園」「さくらの山」「宿根草花壇」「ハーブ園」「にいがた植物園」「シーボルト園」など、エリアによってテーマをもたせた植栽が見られます。特にシャクナゲとアザレアは日本一のコレクションを誇っており、開花期には多くの人が訪れます。 四季を通して開花リレーがつながれ、いつ訪れても何かしらの花見が楽しめる「新潟県立植物園」は、2018年12月1日に開園20周年という節目を迎えました。メモリアル記念として、イベントが目白押し。「にいがたの花展」と題し、新潟県が誇る植物を紹介する3部作シリーズ企画展の「アザレア展」「チューリップ展」「シャクナゲ・ツツジ展」のほか、3月にはラストを飾る「サンクスフェスタ」を開催。この春は、ハタチになった「新潟県立植物園」のお祝いに、ぜひ駆けつけてはいかがでしょうか。 4,000種11万株の植物が集められた植物園 開花リレーによって、いつ訪れても爛漫の景色 「新潟県立植物園」では、毎年春先に温室内企画展「にいがたの花 チューリップ展」を開催しています。2019年は2月27日〜3月24日の日程です。期間合計30品種、1万5000本のチューリップが開花。開花時期を調整し、毎週展示を入れ替えているので、何度訪れても異なる品種や色合いを観賞できますよ! 一方、屋外チューリップ花壇の見頃は4月下旬で、4,000本が彩り豊かに咲き誇ります。 「新潟県立植物園」内の「さくらの山」の遠景です。見頃は4月下旬〜5月上旬、このエリアを含む植物園全体で、約40種320本のサクラが見られます。平均樹齢約30年というサクラが、樹冠いっぱいに開花する姿は壮観。園内への飲食物の持ち込みはOKなので、お弁当やおやつを広げて、お花見を楽しむのもいいですね。ただしゴミの持ち帰りなど、マナーは守りましょう(温室内は一部を除き、飲食物の持ち込みは禁止)。 ここで最新情報をご紹介しましょう! 「新潟県立植物園」では2018年春、屋外緑地に日本一の規模を誇る「シャクナゲ園」がオープンしました。高さ4〜6m級の大株約30品種150本が、4月下旬から5月中旬にかけて次々と咲き乱れます。写真の品種は‘サー・ロバート・ヒル’。珍しい品種の‘マリー・フォート’、‘マイケル・ウォータラー’、‘サッフォー’も見られますよ! 5月上旬〜中旬には、ボタンが見頃を迎えます。日本におけるボタン栽培、品種鑑定の第一人者だった故江川一栄氏のボタンコレクション、150品種1,000株を引き継いだ「ボタン保存園」は、一見の価値ありです。 日本一のアザレアコレクションを誇る「新潟県立植物園」では、毎年温室内企画展「にいがたの花 アザレア展」を開催しています。2019年は1月30日〜2月24日に開催。総コレクション数約250品種1,300鉢の中から、選りすぐりのアザレア120品種、約1,000株を展示する予定です。 国内最大級のドーム型の観賞温室 年2回のナイトタイムを見逃さずに! 「新潟県立植物園」内には、約550種4,000株の植物が息づく、国内最大級のドーム型の観賞温室があります。温室内には滝や洞窟、池があり、その間を縫うように整備された園路を進んで、ガジュマルやココヤシ、タイワンバナナ、ブーゲンビレアなどの熱帯植物を見学。香りのよい植物も集められているので、クリナム・ギガス、サンユウカ、ヘディキウム、パラグアイオニバス、デュランタなどの香り比べも楽しんでみましょう。 平日は、ガイドツアーを2回(10:40〜、14:40〜)、各30〜40分かけて行っています。希望者は入館券売場で申し込みを。土・日・祝日はスポットガイドを2回(10:40〜、14:40〜) 、各20分程度行っており、こちらは申し込み不要なので時間内に案内表示場所へ直接出向いてください(いずれも無料、但し入館料は必要)。 「新潟県立植物園」では年に2回のみ、夜間開園を実施しています。8月中旬の「夏の夜間開園」は観賞温室開館時間を20:30まで延長し、夜に甘い香りで満たされる温室内のガイドやトロピカルフルーツの試食会を実施。12月下旬の「クリスマス夜間開園」では、19:30まで延長し、クリスマスイルミネーションやコンサートなどを開催します。ロマンティックな夜の植物園観賞会にぜひ出かけてみませんか? 「にいがたコーヒープロジェクト」プロデュース 週末限定カフェで絶品コーヒーを味わおう 温室内には、週末限定カフェ「にいがたコーヒーラボ」があります。植物園と新潟県内のバリスタによる共同企画「にいがたコーヒープロジェクト」がプロデュース。県内のコーヒー専門店から毎週届く、新鮮なコーヒーをバリスタが丁寧にハンドドリップします。コーヒーの価格は400〜500円。県内有名カフェ店のクッキー、タルトなど手づくり焼き菓子を週替わりで提供するサイドメニューの価格帯は、300〜500円です(1〜2月は休業)。 Information 新潟県立植物園 所在地:新潟県新潟市秋葉区金津186 TEL:0250-24-6465 https://botanical.greenery-niigata.or.jp/ アクセス:公共交通機関/JR信越線古津駅から徒歩約25分 区バス/新津駅東口から「新津駅西口」行き「美術館・植物園前」下車徒歩約1分 ※区バスについて路線・時刻表は新潟市秋葉区のホームページをご覧ください。 新潟交通/新津駅東口から「矢代田経由白根・潟東営業所」行き「新津美術館入口」下車徒歩約10分 車/高速道路 磐越自動車道新津I.Cから国道403号三条・加茂方面へ約15分 一般道路 新潟方面から…国道49号茅野山I.Cから国道403号経由約20分 オープン期間:通年 休園日:なし 温室開館時間:9:30~16:30(入館受付は16:00まで) 料金:【温室】大人600円、65歳以上500円、高校生・学生300円、小中学生100円 ※小中学生は土日祝日無料 【屋外園地】入園無料 駐車場:300台、無料 併せて読みたい ・花の庭巡りならここ! ロザリアンの聖地「国営越後丘陵公園 香りのばら園」 ・花の庭巡りならここ! 広大な敷地でダイナミックに花が咲く「国営ひたち海浜公園」 ・花の庭巡りならここ! 麗しき英国式庭園「みつけイングリッシュガーデン」 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
-
イギリス

イングリッシュガーデン旅案内【英国】男爵夫人のデザインした庭 ヘルミンガム・ホール・ガーデンズ
赤レンガの屋敷を背景に広がる庭 名園として人気の高いヘルミンガム・ホールの庭。駐車場からガーデンに向かうと、濠に囲まれた赤レンガづくりの屋敷が見えてきます。 トルマッシュ家は大変古い家柄で、1066年のノルマン征服以前からサフォーク州に住んでいたといわれます。ジョン・トルマッシュがハーフティンバー様式の屋敷を建て始めたのは1480年。それから何度も改修が重ねられ、1760年頃に現在のような赤レンガとタイルを使ったつくりになりました。 幅18mの濠にかかる跳ね橋は、1510年以来、毎晩引き上げられて、朝になると下げられるとか。屋敷は夜間は濠に守られた「島」となるそうです。中世の習慣が脈々と続いているとは、驚きますね。 濠の脇を通る芝生の道には、セイヨウイチイの丸いトピアリーが並びます。モコモコと、森の妖精のようなユーモラスなトピアリーです。 きれいに刈り込まれたトピアリーに、メドウのような下草を合わせているのがおしゃれ。ナチュラルな雰囲気を醸し出しています。先を行く老夫婦の姿が、素敵でした。 さて、屋敷の西側に広がるメインのウォールド・ガーデンへと向かいます。 パーテアとハイブリッド・ムスク・ガーデン 屋敷の西側は、レンガ塀にぐるりと囲まれた、大きな長方形のウォールド・ガーデンになっていて、その中は、パーテア部分とキッチン・ガーデン部分に分かれています。 私たちをまず出迎えるのは、ツゲの低い生け垣が幾何学模様を描くパーテア。間には、サントリナが植わります。ツゲの生け垣自体は古くから残るものですが、現在の男爵夫人によって1978年に再設計され、今のような形になりました。 屋敷に伝わる資料によれば、15世紀末に屋敷ができる以前から、ここには家畜を守る場として、柵に囲まれた庭があったそう。ウォールド・ガーデンのレンガ塀は1745年にできたといわれ、長い歴史が感じられます。つるバラの絡んだアーバー(あずまや)がいい雰囲気。 レンガ塀に沿った花壇には、ラベンダー‘ヒドコート’に縁どられて、ハイブリッド・ムスク種のバラが植わっています。この花壇はハイブリッド・ムスク・ガーデンと呼ばれ、1965年につくられました。男爵夫人は、このような古い部分を守りつつも、より美しい庭となるよう、長い年月をかけて新しい要素を加えてきたといいます。 ユニークなトピアリーがいっぱい さて、パーテアとキッチンガーデンを分けるアイアン製のガーデンゲートをくぐり、キッチンガーデンの区画に入ります。まずは右へ進むと……カタツムリ発見! 面白いトピアリーが並ぶ、トピアリー・ボーダーです。 イヌツゲやセイヨウイチイのトピアリーを、ガーデナーが熱心に刈り込んでいます。トピアリーの間には、ラベンダーやデルフィニウム、アイリスなどが植わります。 ミツバチのトピアリーも! 羽根の立体感が見事です。かなり複雑に刈り込まれていますね。 花にあふれたウォールド・キッチンガーデン ガーデンゲートからの景色。ウォールド・キッチンガーデンの中心を芝生の小径が貫いていて、その両側に宿根草花壇がずっと伸びています。 小径を少し進んで、振り返ると、こちらには、ガーデンゲートと屋敷が背景となる、美しい庭景色がありました。宿根草花壇では、‘アルベルティーヌ’や‘ニュー・ドーン’、‘フェリシテ・エ・ペルペチュ’などのバラが、ワイヤーに誘引されて目の高さに咲いています。 そして、足元には、ポピーやアリウム、ゲラニウムなど、さまざまな宿根草や球根花が、優しい色合いで混ざり咲いています。 私たちが訪れた6月の花壇は、ピンク系のオールドローズに合わせて、ピンクやブルー、紫やクリーム色などの、柔らかな色合いでまとめられていました。ですが、盛夏に向かうにつれて、真っ赤や黄色、銅色など、インパクトのあるカラースキームに変わっていくとのこと。 中央の小径から脇に伸びる、スイートピーの長いトンネル。いろんな色のスイートピーが咲いていて、楽しさ満点です。他に、サヤインゲンとヒョウタンのトンネルもあります。ウォールド・キッチン・ガーデンは、芝生の小径とトンネルによって、8つのブロックに区切られています。 トンネルの先の壁際には、きっちりと刈り込まれたツゲの生け垣に囲まれて、優美なベンチが置かれていました。整形式庭園の要素とキッチンガーデンのナチュラルな要素が、うまく混ざり合っているのがこの庭の面白いところです。 この辺りは、野菜や果物を育てている区画です。たくさんの実をつけたスグリの木を発見。 こちらは、サラダによさそうな葉物。しっかりと葉を茂らせています。 園内には、来園者にも花の名前が分かるように、こんな看板が掲げてあります。気になった植物はこの看板でチェック。 そしてこちらは、花壇にどんな植物が植わっているかが分かる、デザイン図。各所に掲げられていました。 さて、キッチンガーデンを抜けて塀の外に出ると、小さな橋がありました。じつは、屋敷と同じように、ウォールド・ガーデン全体も濠でぐるりと囲まれています。この橋は、その濠にかかっているのです。 橋を渡った先には、男爵家の人々が楽しむのであろうテニスコートがあって、その周りは、グラスが軽やかに揺れるワイルドフラワー・メドウになっています。風を感じる、優しい花景色です。ここからは見えませんが、ヘルミンガムの庭園の外にはアカシカの棲む広大な草地が広がっていて、メドウとともに、野生生物の生態系を守るのに一役買っています。 華やかさ満点のスプリング・ボーダー 今度は、屋敷に戻る方向へ。ウォールド・ガーデンの外側を、南側のレンガ塀に沿って歩いてみます。すると、塀にはたくさんのつるバラが絡まり、その株元にはピオニーの見事なコレクションが! スプリング・ボーダーと呼ばれるこの花壇では、じつに豪華なバラとピオニーの競演が見られました。 ピンク、白、赤と、華やかなピオニー! 花心が盛り上がった大輪など、珍しい形もあります。重い花首が垂れないように、しっかり支柱がしてありました。5月から6月にかけてのピオニーの見頃に来られたのは、とてもラッキーでした。 クラシカルなノットガーデン 次は、屋敷の反対に回って、東側の庭に行きます。屋敷の正面、濠の脇道から階段を数段降りたところに、1982年につくられたという、ツゲのノットガーデンがあります。 手前の4つの正方形では、三角形の模様を埋めるように、ミントやタイムなどのハーブが低く茂っています。奥の4つの正方形には、トルマッシュ家にまつわる模様やイニシャルがデザインされています。 緑のツゲと赤レンガの屋敷が、美しいコントラストを見せています。歴史ある屋敷にふさわしい、クラシカルな雰囲気のノットガーデンは、屋敷の窓からも眺められるそうです。 甘い香りに満ちたローズガーデン ノットガーデンの先、紫のキャットミントが群れ咲く奥には、女神像を中心に、サークル状にバラが植わるローズガーデンが待っていました。 花と春の女神、フローラの像に見守られる、エレガントな雰囲気のローズガーデン。外側の大きな花壇には、さまざまな古い品種の、香りのよいシュラブローズが植わり、円を構成する内側の花壇には、たくさんの花をつけるデビッド・オースチン社作出のイングリッシュローズが植わっています。 セイヨウイチイの高い生け垣に囲まれている場所なので、バラの香りがとどまっているように感じます。辺りが甘い香りに満たされていました。 屋敷を背にした花景色。ヘルミンガム・ホールの庭は、やはりこの屋敷がポイントですね。赤レンガの美しい建物は、ヘルミンガム・ホールの庭を最も特徴づける要素といってよいでしょう。 さて、ガーデン散策を楽しんだ後は、ステイブル・ショップという小さなショップでハーブコーディアルのジュースを買って、ちょっと休憩。ショップでは、地元産の食べ物やクラフト、ガーデン用品などを扱っています。また、キッチンガーデンで採れた野菜なども販売。オーガニックとして登録されてはいませんが、伝統的な栽培方法で、化学肥料はほとんど使っていないそうです。 時間の都合で、一番外側にあるウッドランド・ガーデンなどは回れませんでしたが、ぐるりと巡って1時間半、充実の庭散歩でした。とてもよく手入れの行き届いた、花の風景が満喫できるガーデンでした。 〈ヘルミンガム・ホール・ガーデンズ〉 庭園情報 ロンドンから車で北東に約3時間。電車では、ロンドン、リバプール・ストリート駅からイプスウィッチ駅(Ipswich)まで約1時間。イプスウィッチ駅からタクシーで30分(約10マイル)。タクシーを使う場合はかなり距離があるので、往復を頼めるかなど、ご確認を。 イプスウィッチ駅から路線バスを使う場合は、駅近くのバス停(Railway Station)から、町中のオールド・カトル・マーケット・バス・ステーション(Old Cattle Market Bus Station)までバスで約8分移動。フラムリンガム(Framlingham)行きに乗り換えて、シェルター(Shelter)、もしくは、ホール(Hall)で下車、所要時間は約25分。庭園までは、徒歩約6~8分。乗り換えが複雑で、また路線バスのルートが変わることもあるので、事前によくお調べになってお出かけください。 2018年の開園期間は、5月1日~9月16日。火、水、木、日、祝(バンクホリデー)の11:00~16:30。料金は大人£7。 2019年は、5月1日から再び開園します。屋敷は非公開。 *2018年12月現在の情報です。 併せて読みたい ・玄関を花でコーディネート! 海外のおしゃれな玄関先8選 ・一年中センスがよい小さな庭をつくろう! 英国で見つけた7つの庭のアイデア ・世界のガーデンを探る旅15 イングリッシュガーデン以前の17世紀の庭デザイン
-
イギリス

イングリッシュガーデン旅案内【英国】王侯気分でアフタヌーンティーを! ハートウェル・ハウス
ロンドンから小1時間の別世界 ロンドンの喧騒から離れ、小1時間。オックスフォードに近いハートウェル・ハウスは、都会からのアクセスがよい場所にありますが、ひとたび敷地内に入ると、緑豊かで静かな別世界が待っています。 ハートウェル・ハウスの始まりは1,000年ほど昔に遡り、その長い歴史の中で、さまざまな王侯貴族がここで暮らしてきました。19世紀の初めには、亡命生活を送っていたフランス王、ルイ18世が5年間滞在したといいます。 20世紀に入ると、屋敷は億万長者のアーネスト・クックの手に渡り、第二次世界大戦中は軍の宿舎として使われました。その後、火災に見舞われるなどしましたが、1980年代に、寂れてしまった大邸宅をホテルとしてよみがえらせ経営する「ヒストリック・ハウス・ホテルズ」によって大規模な修復が行われ、ハートウェル・ハウスは美しいホテルに生まれ変わりました。 2008年、ホテルとしてよみがえったハートウェル・ハウスは、この先の未来も、屋敷と庭の美しい姿が維持され、開発の手から守られるようにと、英国ナショナル・トラストに寄贈されました。現在、ホテル経営による利益はすべて、ナショナル・トラストに寄付されています。 屋敷の周りには、広大な緑のスペースが広がっています。18世紀の初めに設計された、テンプルやオベリスクなどのモニュメントを配置した整形式庭園は、18世紀半ばになると、ケイパビリティ・ブラウンの系統を継ぐリチャード・ウッズによって再設計され、ランドスケープガーデン(風景式庭園)となりました。 敷地内には、静かに水をたたえる湖もあります。果樹園とベジタブルガーデンでは、古い品種のリンゴやアンズといった果物や野菜が栽培され、ホテルのレストランで提供されています。 よみがえった壮麗な屋敷 さて、17世紀のジャコビアン時代と18世紀のジョージアン時代の様式が混じる屋敷に入ってみましょう。ファサードの精巧な彫刻に思わず見入ってしまいます。 入り口にナショナル・トラストのマークがありました。ハートウェル・ハウスはトラストの他の庭園と違って、観光庭園として公開されているわけではありませんが、ホテルのお客さんは自由に庭園を散策することができます。 ローズピンクの壁紙と緑の絨毯、白いしっくい飾りが印象的な階段です。欄干にいくつもの彫像が立っています。 彫像は17世紀のジャコビアン時代のものと、現代のものが混じっているそうですが、素人目には見分けがつきません。その姿は、なんだかユーモラス! よく見ると、欄干を支える「手すり子」もすべて彫像になっています。この中に、英国の首相だったウィンストン・チャーチルに似せた彫像があるとのことですが、どれがそうでしょうか……。 豪華なライブラリーでアフタヌーンティーを 私たちが通されたのは、ロココ調の装飾が施され、大きな窓のある素敵なライブラリーでした。 窓の外には、ランドスケープガーデンの緑が広がっています。 窓から外を覗いてみると、木々の間に大きなトピアリーを発見。チェスの駒のようです。 トピアリーの前には、クローケー(クロッケー)ができる芝生が広がっていました。『不思議の国のアリス』にも出てくる遊びですね。日本のゲートボールは、クローケーを参考に考えられたものなのだとか。 ライブラリーの外はテラス席になっていて、ここでもお茶を楽しむことができます。右側の出窓の部分がライブラリーです。 再び、室内へ。大理石のマントルピースや、曲線を描くしっくい飾りが優雅です。ロココ調の装飾とはこういうものなのか、と実感。 本棚には、円をつないだデザインの、金箔を被せた真ちゅう製の針金細工が施されています。1760年頃に作られたもので、英国内でも貴重な古い針金細工です。 そして、待望のアフタヌーンティー! 3段トレイの上から、チョコレートケーキ、焼き菓子、スコーン。見ているだけで幸せになります。 小花柄の愛らしい食器や銀器を使ったテーブルセッティングに、気分も浮き立ちます。 キュウリ、トマト、サーモンなどのサンドイッチと、焼き立てスコーン。かなりボリュームのある内容で、紅茶をポットにたっぷり(コーヒーを選ぶこともできます)。これはどんな味、次はどれをいただこうと目移りしながら、時折外の風景を眺めつつ、優雅な気分で本場のアフタヌーンティーを満喫することができました。 こちらは違う年に訪ねた時の写真。この時はマカロンがあって、スコーンの形もちょっと違います。訪ねる時によって、トレイの内容が変わるのですね。クリスマス時期には、スパイスが効いたスコーンなど、クリスマス仕様のアフタヌーンティーをいただけるそう。 英国式の豪華な田園暮らしを体験 ホテルには、かつてのオランジェリー(温室)が改装されたスパやジムが完備されていて、テニスや釣りを楽しむこともできます。滞在すれば、都会を離れてのんびりと、しかし、優雅に自然の中でリフレッシュするという、英国貴族のような田園暮らしを体験できます。写真は、朝食、昼食、本格ディナーがいただける、本館のレストラン。 こちらは、イギリス・バロック様式の傑作、天井飾りが見事なグレートホール。1740年頃の完成以来、床を除いて変わらない姿を保っています。アフタヌーンティーをいただくのに、こちらの部屋に通されることもあるそう。どちらの部屋でも、優雅な気分が味わえますね。 本館には48部屋あり、それぞれ美しい調度品で設えられています。18世紀に馬小屋として使われていた所は、より豪華なスイートルーム専用の建物となっています。クラシカルな天蓋付きベッドのある部屋もありますよ。 併せて読みたい ・英国「シシングハースト・カースル・ガーデン」色彩豊かなローズガーデン&サウスコテージガーデン ・イギリス流の見せ方いろいろ! みんな大好き、チューリップで春を楽しもう ・花好きさんの旅案内【英国】 ベス・チャトー・ガーデン(1)乾燥に強い庭を実現



















