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大分県

花の庭巡りならここ! 高原に広がる圧巻の花畑!「くじゅう花公園」
くじゅう連山に囲まれるロケーションの下 感動的に広がる花畑の景色は理想郷そのもの 1993年にオープンした「くじゅう花公園」は、九州の中心に位置する久住高原にあります。くじゅう連山が目の前に鎮座し、遠くには阿蘇五山、祖母山・傾山を望める絶好のロケーション。約22万㎡の園内を巡るには、大人の足でゆっくり散策して2時間ほどかかります。 「くじゅう花公園」は「若者からお年寄りまで、大自然に囲まれた非日常な癒しの世界に浸ってもらいたい」という目的のもとに整備された公園です。園内には約500種500万本の植物が植栽され、ガーデンエリア、花畑エリア、森のエリア、温室エリア、果実エリアに分けられた園内では、春・夏・秋、いつ訪れても花々が織りなす迫力ある景色を楽しめます。年間約100万ポットの苗を自社生産する「花苗生産センター」も強みの一つで、ダイナミックな花の景色づくりを支えています。 「くじゅう花公園」では、花の季節に合わせて、チューリップの球根掘り上げイベントや、ラベンダーの摘み取り体験を開催。クラフト作家が集合する「花公園クラフトフェア」も人気です。年間来園者数は20万人にものぼり、訪れる人々に美しい花々の景色を披露し、安らぎと感動をもたらしています。 春霞のたなびく高原に浮き立つのは 花々で彩られた夢のような絶景 「くじゅう花公園」のチューリップの見頃は4月中旬。写真のように花の絨毯が広がり、ため息がこぼれるような景色を楽しめます。配色デザインは毎年変わり、2019年は「四季彩の丘」エリアに展開。1,200㎡に3万本を植栽しており、珍しい品種を揃えた「チューリップコレクション」は必見です。「チューリップフェスティバル」は、4月20〜29日に開催予定(暖冬により、1週間ほど前倒しになる可能性があります)。 写真は「シバザクラの丘」エリアの4月中旬〜5月上旬の景色です。1,500㎡に1万株を植栽。斜面になっているので、下から見上げるとダイナミックな花の景色が広がります。2019年はリニューアルのため観覧休止となっていますが、2020年から再開される素晴らしい景色に期待しましょう。 ポピーは4月下旬〜5月に見頃を迎えます。毎年植栽する場所や株数を変えており、2019年に登場するのは「四季彩の丘」エリアです。約1,600㎡と約1,200㎡の2カ所のエリアに約3万株を植栽。チューリップやシバザクラのように花色を面で見せる演出とは対照的に、オレンジ、黄色、白の花色をバランスよくミックスさせた花畑も見応えがあります。 写真は、「くじゅう花公園」の「久住ガーデン」エリア。他のエリアの面で魅せる演出とは異なり、一年草、多年草、花木を組み合わせた、ナチュラルガーデンをつくっています。つる植物を仕立てたアーチやオベリスクなど、立体感を演出する構造物も随所に配してアクセントに。開花期を合わせた花の組み合わせ術や、草丈の高低差を生かした植栽なども、庭づくりのヒントになりそうです。 初夏から秋にかけても開花リレーがつながれ いつ訪れても、魅惑の花畑を満喫できる 「ローズガーデン」では、3,500㎡に350種、3,500株のバラが楽しめます。2019年は5月25日〜6月9日に「ローズガーデン祭」を開催。期間中はバラの花苗市が立ち、専門スタッフが品種に応じた栽培法を教えてくれます。咲き姿を確かめて購入できるのは嬉しいですね。5月25・26日、6月1・2日には、バラの専門家を招いて「バラ教室」を開催。参加は無料です。また、同じ日程で「バラのフレグランス作り体験」(参加料金1,000円。材料費込み・要予約)も行われます。 「くじゅう花公園」のサルビアの見頃は9月中旬から10月下旬です。3,500㎡に2品種、赤、白、青紫の3色を使って約4万株を植栽。毎年配色のデザインを変えているので、サルビアのカーペットを楽しみに、リピーターが多く訪れます。園内では、ペットの同伴OK。一緒にフォトジェニックな写真を撮影して、SNSで披露するのもいいですね。 9月下旬〜10月中旬にはコスモスが見頃を迎えます。5,000㎡に、なんと100万本が咲き競う規模! 空気が澄んで空が高くなる秋は、くじゅう連山の雄大な景色もよく見通せます。「くじゅう花公園」の園内には、飲食物を持ち込んでもかまいません。頰をなでる高原の風を感じながら、お弁当やおやつを広げてピクニック気分を味わいましょう! レストランやカフェの店舗数が多く 雑貨店や土産物店の品揃えも充実! 「くじゅう花公園」には、レストラン、カフェ、ドライフラワーショップ、アロマグッズショップ、豆の専門店、雑貨店、土産物店など計15店舗があり、食事やお買い物の楽しみがあるのもうれしい! 写真のドライフラワーショップ「Rose de Mai(ローズ・ド・メイ)では、予約不要で「リースづくり体験」に参加できます。料金は1,200円〜。 土産物店では、地元の特産品などが販売されているので、ぜひお立ち寄りを。訪れた記念にオススメなのは、「くじゅう花公園花畑オリジナルカレンダー」1,000円です。 写真は「久住高原お菓子工房 シャーロット」で手作りしているバラのジェラート。くじゅう高原産の搾りたて生乳100%で作った、こだわりのミルクジェラートをベースに、旬のフルーツを使ったフレーバーを季節限定で販売。何度でもリピートしたくなります! 座席数20、テラス席もあり。 Information くじゅう花公園 所在地:大分県竹田市久住町4050 TEL:0974-76-1422 www.hanakoen.com アクセス:豊肥本線 豊後竹田駅より タクシーで約30分 オープン期間:3月~11月 休園日:なし 営業時間:8:30~17:30(最終入園17:00) 料金:大人(高校生以上)1,300円、小人(5歳以上)500円 駐車場:300台(無料) 併せて読みたい ・春のおでかけお花見スポット〜城山かたくりの里〜 ・天野麻里絵さんの「やってみよう!初めてのガーデニング」小さな花壇で育てる一年の花サイクル ・花の庭巡りならここ! 牧野富太郎コレクションを堪能「高知県立牧野植物園」
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フランス

世界の庭に見る、花の植え方の違いと各国の特徴【世界のガーデンを探る20】
各国の特徴が現れるガーデン植栽 前回まではヨーロッパの庭の遍歴を見てきました。メソポタミアからイスラムの庭、イタリアルネッサンスからフランスの貴族の庭、そしてドーバー海峡を渡ってイギリスのブルジョアジーの庭まで、主に庭のスタイルが中心でした。今回は少し視点を変えて、植物の使い方を中心に歴史を探ってみましょう。 イスラムの庭 ・スペイン「アルハンブラ宮殿」【世界のガーデンを探る旅1】 イタリアルネッサンスの庭 ・イタリア「チボリ公園」【世界のガーデンを探る旅2】 ・イタリア「ボッロメオ宮殿」【世界のガーデンを探る旅3】 ・これぞイタリアの色づかい「ヴィラ・ターラント」【世界のガーデンを探る旅4】 ・イタリア式庭園の特徴が凝縮された「ヴィラ・カルロッタ」【世界のガーデンを探る旅5】 フランス貴族の庭 ・フランス「ヴェルサイユ宮殿」デザイン編【世界のガーデンを探る旅6】 ・フランス「ヴェルサイユ宮殿」の花壇編【世界のガーデンを探る旅7】 ・フランス「リュクサンブール宮殿」の花壇【世界のガーデンを探る旅8】 イギリスのブルジョワジーの庭 ・イギリス「ハンプトン・コート宮殿」の庭【世界のガーデンを探る旅11】 ・イギリス「ペンズハースト・プレイス・アンド・ガーデンズ」の庭【世界のガーデンを探る旅12】 ・イギリスに現存する歴史あるイタリア式庭園【世界のガーデンを探る旅13】 ・イギリス発祥の庭デザイン「ノットガーデン」【世界のガーデンを探る旅14】 ・イングリッシュガーデン以前の17世紀の庭デザイン【世界のガーデンを探る旅15】 ・プラントハンターの時代の庭【世界のガーデンを探る旅16】 ・イングランド式庭園の初期の最高傑作「ローシャム・パーク」【世界のガーデンを探る旅17】 ・世界遺産にも登録された時代の中心地「ブレナム宮殿」【世界のガーデンを探る18】 ・現在のイングリッシュガーデンのイメージを作った庭「ヘスタークーム」【世界のガーデンを探る19】 上に挙げた4枚の写真は、現代の各国それぞれの特徴的な庭の写真です。庭がつくられた当時は、地球も今よりはもっと寒かっただろうし、植えられていた植物もこんなに派手ではなかったろうと思います。現在植えられている植物は、品種改良された園芸品種がほとんど。また、それぞれの庭のガーデナーが自分の好みにアレンジしているかもしれません。そのような時代による変遷も考えながら、植栽に注目して庭の歴史を感じ、つくられた当時の庭の植栽に思いをはせてみるのもまた面白いものです。 それでは、各国のガーデンと植栽を見ていきましょう。今回はスペイン、イタリア、そしてフランスの庭に見る、各国の植栽の特徴をご紹介します。 <スペイン> 水を主役に構成されたアラブの庭 アルハンブラ宮殿ができた時代は、もちろんプラントハンターが世界中にいろいろな植物を求めて世界の隅々まで出かけていった時代よりもはるかに前だったので、つくられた当時の庭は、おそらく今よりももっと地味だったのでしょう。もともとアルハンブラ宮殿の庭の主役は、植物よりも水のように感じられます。それは、遠く西アジアの乾燥地帯から乾燥した北アフリカを経由して、この地にやってきたイスラムの人たちの、豊かな水への憧れが強く表れているのではないでしょうか。 右から大きく枝垂れているのはブーゲンビレア、噴水の両側に植えられているのはバラです。 この庭では豊かな緑と水とのコントラストが見事に強調されていますが、植栽面ではこれといった特徴は見受けられません。基本は地中海性の乾燥した気候に合ったコニファーや常緑低木類がいまだに多く使われていて、ある程度は当時の姿をしのばせてくれています。 <イタリア> 世界の富が集まったイタリアルネッサンスの庭 イタリアの庭は、写真でも見られるようにはっきりとした色使いが特徴です。 特にイタリアンレッドとも呼ばれるビビッドな赤が印象的です。サルビアやケイトウ、ゼラニウムの赤が目を引きますが、もちろんこの庭ができた時代には新大陸からの花々はまだヨーロッパには紹介されていませんでした。したがって、つくられた当時にどのような花が植わっていたのかはとても興味深いものの、今はそれを知るすべもありません。 湖と空の青をバックに、ベゴニアとスタンダード仕立ての白バラがセレブな雰囲気を醸し出しています。 個人の住宅のベランダにも、プランターからあふれんばかりのペチュニアが咲き誇っています。これほど立派なハンギングは、他ではなかなか見ることができません。きっと丹精込めて管理されているのだと思います。抜けるような青空を背景にした原色系の色合いは、いかにもイタリア人好みです。 街の中も、とってもオシャレな雰囲気です。 <フランス> いまだにモネの色合いが色濃く残る配色 フランスには今でも印象派、特に植物が大好きだったモネの影響が色濃く残っています。 ヴェルサイユ宮殿の花壇。デルフィニウムのブルーが効果的に全体を引き締めています。その中に小型の赤のダリアを入れて、はっきりした組み合わせになっています。 フランスの花の植え方の特徴は、いくつもの異なる種類の植物を混ぜ合わせることです。いろいろな植物を組み合わせることにより、優しい色合いを作り出しています。 重厚なヴェルサイユ宮殿を背景に、少し高すぎるツゲヘッジ(生け垣)の中には、白のマーガレットやクレオメ、セージ、ルドベキア、ガウラなどが混植されています。 広々としたフランス式毛氈花壇。 イタリアでは見られなかった、優しいパステル調の組み合わせです。 イタリアでも使われていた赤と黄色の組み合わせでも、フランス人の手にかかると落ち着いた色になってしまいます。 このような混植花壇は他の国では見たことがありません。フランス恐るべし! ただただ感心するばかりです。 花壇では混ぜ合わせるのにとても難しい、自己主張の強いマリーゴールドも、オレンジと薄黄色を混ぜ合わせることで優しい色合いになっています。中心に背の高いブルーのサルビアを入れることにより、立体的な植栽にもなっています。そして1ピッチごとに銅葉のヒマ‘ニュージーランドパープル’を入れてボリュームをつくっています。 優しくカーブする園路に合わせ、背丈の低い花壇が両側につくられています。ここではピンクのペチュニアを中心に、オレンジのジニアや濃緋色のコリウス、ヘリオトロープなどを混ぜ合わせることで、浮いてしまいそうなピンクのペチュニアとの素敵なコンビネーションをつくっています。 写真では分かりにくいかもしれませんが、ランダムに混色されているように見える花壇も、数メートルごとのピッチで植えられています。どのようにして植物の組み合わせを決定し、植え方を決めるのかは分かりませんが、そのムダもなく他では見ることのできない混植方法には、ただ驚くばかりです。このようにさまざまな花色やテクスチャーの違う植物を混ぜ合わせることで、独特な印象派の雰囲気をつくっていると感じるのは僕だけではないはずです。 今回は、イスラムからイタリア、そしてフランスと、ヨーロッパ諸国の花や植物の植え方を見てきました。次回はイングリッシュガーデンの本場イギリス。ジーキル女史からチェルシーフラワーショウまでの現代の花の植え方と、僕の植え方について話をしていきたいと思います。
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イギリス

イングリッシュガーデン旅案内【英国】21世紀を代表するガーデンデザイン「ブロートン・グランジ」
広大な敷地にある広大な庭 ブロートン・グランジは、1992年に現在のオーナーが購入するまで、200年間にわたってモレル家が所有していました。庭は、ヴィクトリア朝時代のものもありましたが、現在の庭園の姿は、今のオーナーの手によって生み出されたものです。ブロートン・グランジの敷地の総面積は350エーカー、なんと東京ドーム約30個分という広さ。広大な草地や農地に囲まれて、25エーカー(同約2個分)の庭園と、80エーカー(同約7個分)の樹木園があります。 訪れたのは6月上旬。「21世紀を代表するモダンな庭」があると聞いて、期待が膨らみます。車を降りると、辺りには草原が広がっていました。サワサワと軽やかな草の間に、真っ赤なポピーが咲いて、穏やかな雰囲気です。 木々の枝が頭上を覆って日差しを遮る、心地よい森の小道を進んでいくと、開けた場所に到着しました。 案内板に導かれて入ると、ヘッドガーデナーのアンドリュー・ウッドオールさんが、明るく出迎えてくれました。 ウッドオールさんの話によれば、起伏のある広大な敷地を、どのように変化のあるガーデンにしていくか、今も試行錯誤が続いているとのこと。遠くに望む景色を生かし、周辺の景色と調和するガーデンづくりに力を注いでいるそうです。 「珍しい木々も多数入れて、それぞれ樹木や植物には品種名を表示しているので、よく見ながら散策をしてみてください」という案内を聞き終え、どんな庭が待っているのか楽しみに歩き出しました。 水彩画で描かれたガーデンの全体図を見ていると、庭園が広大であること、そして、エリアごとの見所もたくさんあることが伝わってきます。庭園の中心には、トム・スチュワート=スミスの手による正方形のウォールドガーデンも描かれています。さあ、地図を手に進みましょう。 キングサリの葉が茂る長いトンネルを通り抜けて、さらに進んでいくと…… 直線的な石で縁取られた小川が、エリアを仕切るように流れている場所に出ました。「あ! あの場所だ」。以前、ガーデニングの雑誌に「イギリスで最新の庭」として紹介されていた、そのページを思い出しました。写真で見ていた庭に自分が立っていることを実感するのも、海外のガーデニング巡りの嬉しい瞬間です。さあ、その奥の景色はどうなっているのでしょうか、さらに小道を進みます。 現代の名作 ウォールドガーデン ここが、トム・スチュワート=スミスのデザインした、ウォールドガーデンです。かつてパドック(馬の小放牧地)として使われていた、南に向かって開けたゆるい斜面に作られています。60×60mの正方形の庭は、それぞれに異なるデザインテーマを持つ3つのテラス(20×60m)から成り、それらが階段状に配置されています。 ウォールドガーデン(塀に囲まれた庭)といっても、塀があるのは北と西の2辺だけで、南側と東側は開けています。スチュワート=スミスは、庭の外側にある草地や野山、遠くの建物といった周囲の風景を生かし、それらと結びつくようデザインすることが大切だと考え、このようなスタイルを選びました。 大草原の雰囲気を持つアッパーテラス まず、最初に出合うのは、アッパーテラス(上段のテラス)です。低く茂る植物の中で、背の高いトピアリーがリズムよく並ぶ、北米の大草原地帯、プレーリーの雰囲気を持つ植栽デザインです。 小川の水は、北から南、斜面の高いほうから低いほうへと流れています(写真では手前から奥へ)。 低く茂るグラス類に交じって、明るい黄色のフロミス・ラッセリアナ、紫のサルビア・ネモローサ、紫のタンチョウ・アリウム(アリウム・スファエロセファロン)が花を咲かせます。直立するトピアリーは、「ペンシル・ユー」と呼ばれるヨーロッパイチイ‘フェスティジャータ’。 秋、そして冬になると、立ち枯れたグラス類や宿根草のシードヘッド(種子が残った花の部分)がモノトーンの造形の美という、また違った面白さを見せます。 四角い池のあるミドルテラス 次に現れるのが、中央に四角い池を配したミドルテラス(中段のテラス)です。池はウォールドガーデン全体の中心にあって、周りを豊かな植栽に囲まれています。 四角い池には、視線を対角線に導いて、遠くの景色につなげる役割があります。 池には真四角の飛び石が浮かんで、印象的なシーンを作ります。一段高いところを流れるアッパーテラスの小川から、水が滝となって注がれる様子も、このエリアのアクセントとなって目を引きます。そして、池に映り込む周囲の木々のシルエットも、風景の一部となっています。 池から横に伸びる道を行くと、背丈を越すほどの草花が隙間なく茂り、辺りを覆い尽くしていました。左右の花壇からはみ出すほど勢いよく成長する植物の迫力に、圧倒されます。ミドルテラスの植栽テーマは、湿り気のあるメドウ。池のほとりに生えているような植物が選ばれています。 白いアスチルベのような花を咲かせる、タデ科のジャイアント・フリース・フラワーに、レティクラータ・アイリス、それから、ヤグルマソウに似たロジャーシア・ピンナタといった植物が生い茂り、そこに、カラマグロスティス、ヌマガヤ、ミスカンサスといったグラス類が交じっています。ポコポコと飛び出ているのは、ヨーロッパブナのトピアリーで、16本あります。 目の前は植物の海。他のガーデンにはない植物がつくる新鮮な景色に、ガーデンデザインの進化を感じました。 ミドルテラスの東側は塀がなく、広々とした緑の景色が広がっています。手前の草地は、夏が近づくにつれて、ワイルドフラワーの咲き広がるメドウへと変化します。その景色も、ぜひ見てみたいもの。その向こうには、森林植物園の針葉樹が見えます。 新感覚のパーテア 次に眼下に現れたのは、不思議な形に仕立てられたツゲのエリアです。ローアーパーテア(下段のパーテア)と呼ばれる庭です。 生け垣は、モコモコと、なにやら有機的な形をしています。抽象的なデザインに見えますが、じつは、これは自然界にあるものの形。周辺に自生するヨーロッパブナ、セイヨウトネリコ、オークの葉の細胞構造を、そのまま拡大したものなのです。ツゲの低い生け垣の合間に草花を植える、パーテアという造園技法では、伝統的には幾何学模様を描きます。しかし、トム・スチュワート=スミスは新しいアプローチによって、新感覚のパーテアを生み出しました。 ツゲの間には、若い苗が植えられていました。黒葉の植物や白花のマリーゴールド。これらが成長したら、また面白い景色になるだろうなぁと、想像が膨らみます。ここにもガーデンデザインの新しい試みを感じます。 夏の花壇のカラースキームは年ごとに変わるそうですが、パープル・ケールやニコチアナ、ヘリオトロープ、コスモス、ルドベキアなど、中心となる植物は毎年植えられます。 毎年10月になると、夏の草花が取り除かれて、5,000球のチューリップの球根が植えられるといいます。そして、春になると、赤や紫、ピンク、黄色といった、色とりどりのチューリップの咲く圧巻の景色に。12種ほどの品種は、4月末~5月初めに行われる、ナショナル・ガーデンズ・スキームのチャリティ・オープン・デーにタイミングを合わせて咲くよう、吟味されるそうです。 花後の球根は掘り上げられて、保管され、その後、ワイルドメドウのエリアに植えられて、野生化するようそのまま放っておかれます。 ローアーパーテアを西側から見たところ。等間隔に並ぶシナノキがフレームの役割を果たして、風景を切り取ります。 奥に見える緑の塀のようなものは、ブナの木を刈り込んで作られたトンネルです。夏の間は、このようなみずみずしい緑の塀となりますが、秋から冬にかけてブナが紅葉すると、豊かな赤茶色の塀へと変わります。そして、その色は、草花がなくなって生け垣の間にむき出しになった、赤味がかった土と呼応します。ウォールドガーデンの植栽は、そこまで計算されているのです。 同じ場所に立って、小道を来た方向に振り返ると、3つのテラスに段差があるのが分かります。 植物のパワーにすっかり驚かされながら、今度は、反対側にある、ヨーロッパブナを刈り込んだトンネルを抜けてみます。すると、シチュエーションがガラリと変わって、開けた場所に出ました。 ベンチに腰掛けて、遠くに広がる大地を眺めて、ちょっと休憩。 小道を進むたびに景色がどんどん変わっていく、場面転換のスピード感も、このガーデンの面白さだなぁと感心しながら、次のエリアに向かいます。 もう随分と驚かされる庭デザインの数々でしたが、道はさらに先があり、再び下りながら先へ進みます。 セイヨウイチイのトピアリーが並ぶテラスが見えてきました。写真の右側のほうはトピアリーが整列していますが、左のほうは、酔っぱらっているかのようにトピアリーがランダムに並んでいて、視線が丘の連なる開けた風景へと導かれます。 ぽこぽこと並ぶトピアリーの間を通っていくと、足元はふかふかな芝生。先ほどまでの石敷きの小道から一転して、柔らかな芝の上を歩くことになります。その感触の違いも、新たなエリアに踏み入れたことを教えてくれました。 さて、庭園の東側にある、石造りのお屋敷のエリアに到着しました。こんな絶景の中に住まうとは、なんて羨ましい! テーブルや椅子の配置から、庭を日頃から愛でていらっしゃるのだろうなぁと想像しつつ、お屋敷の周囲に取り入れている植物を見せていただきました。 お屋敷の入り口付近には、フォーマルな雰囲気のノットガーデンが。アリウム・ギガンチウムの紫の花玉が、緑のツゲと美しいコントラストを見せています。 お屋敷前に広がる芝生のエリアの先には、両脇を野の花に可愛く縁取られた道が続いています。森林植物園とポニー用のパドックの間を抜ける、スプリング・ウォークと呼ばれるこの小道には、たくさんの球根花や宿根草が植わっていて、早春のクリスマスローズから、春のスノーフレーク(オオマツユキソウ)やブルーベルなど、四季折々の景色を見せてくれます。 緩やかな斜面はまだまだ下へと続いていきます。 ヘッドガーデナーのウッドオールさんが「今も作り続けているエリアがある」と話していたのはここでしょうか。枯れ木が植物の間に配された、不思議な雰囲気のエリアです。 切り株を使った庭「スタンプリー」 ここはスタンプリーと呼ばれる庭で、2007年に作られました。スタンプとは切り株のことなので、「切り株園」といったところでしょうか。古い切り株の周りに、ホスタやシダ、ヘレボレスやユキノシタ、アルケミラ・モリスなどが植えられています。 スタンプリーという庭園スタイルはヴィクトリア朝時代に生まれたもので、19世紀のガーデンシーンではよく見られました。プラントハンターによって世界中から新しい植物が次々に英国へと持ち込まれていた当時、シダもさまざまな種類のものが導入されました。スタンプリーは、これらのシダを栽培するのにちょうどよい形態だったのです。 大きく葉を茂らせるシダに、赤葉のモミジ。背景には、大株のユーフォルビアがあります。個性的なフォルムの切り株がアクセントになった、美しい取り合わせです。切り株を使った植栽は、ウサギやミツバチなど、野生生物のすみかにもなっています。 スタンプリーの近くには、ピート・ウォール・テラスや、ヴィクトリア朝時代のサンクンガーデン(沈床庭園)、竹の生えるバンブーゾーン、ボグガーデン(湿地の庭)といったエリアがあって、現在も作り続けられています。 ピート・ウォールを利用した花壇を見つけました。ピートとは、野草や水生植物が炭化した泥炭のことで、ウイスキーの香りづけに使われることで知られています。そのピートのブロックを石垣のように積んだのが、ピート・ウォールです。ここはどんな場所へと変わっていくのでしょう。 お屋敷周りはクラシカルな雰囲気 新しいデザインが印象的なブロートン・グランジの庭ですが、お屋敷の正面にあたる南側には、クラシカルなパーテアや、イギリスらしいナチュラルな雰囲気のボーダーガーデンがありました。2階の居室から望む眺望は、きっと素晴らしいものでしょう。 さて、残りの見学時間が少ないことに気がつき、足早に、感動したポイントをおさらいしながら戻りつつ、ヘッドガーデナーさんがいた元の場所へと向かいます。 最初の場所へ到着すると、コーヒーと手作りマフィンがテーブルに用意されていて、短いカフェタイム。一緒に巡っていた仲間たちと、「素敵な庭だったねー」などと話しながら、ガーデンシェッドに伝うバラの素朴な風景にホッと和みました。 新しい庭デザインが次々と出現する庭でしたが、お屋敷の周辺ではイギリスらしい庭デザインも見られました。植物の使い方で、ここまで幅広く風景の変化を作り出せることに感動を覚えた、とても印象に残る庭でした。 併せて読みたい ・一年中センスがよい小さな庭をつくろう! 英国で見つけた7つの庭のアイデア ・カメラマンが訪ねた感動の花の庭。イギリス以上にイギリスを感じる庭 山梨・神谷邸 ・個人のお庭が見られるオープンガーデン・イギリスの賢い仕組み
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広島県

花の庭巡りならここ! 期間限定の花畑観光スポット「Flower village 花夢の里」
Spring has come! ─春が来たよ! 草花たちがその喜びを表現する花畑 2017年にオープンした「Flower village 花夢の里」は、毎年4月上旬〜5月中旬の期間限定でオープンする、花畑の観光スポット。4万㎡もの敷地に、ピンク・白・赤・青紫の芝桜が綾なす芝桜のエリア、ブルー一色に染まるネモフィラのエリア、輝くような黄色で埋め尽くされる菜の花のエリアが登場します。ゆっくり歩いて、1時間30分ほどの散策を楽しめますよ! オープン以来、要望に応えて配色のメリハリを工夫したり、混雑を解消するために散策ルートを網の目に変えたりと、年々進化を続けている花畑です。丘の斜面にあるために、面を埋め尽くすように植栽された花々がダイナミックに映え、写真撮影にも熱が入りそう。豊かな里山の借景も素晴らしく、ヒバリの楽しそうなさえずりも近くに聞こえて、自然のリラクゼーションを誘います。 「Flower village 花夢の里」には食事を提供する「あおぞら食堂」があり、気取らずになごめる、田舎風の雰囲気にこだわっています。屋根つきのテラス席には飲食物の持ち込みもOK。敷地内にはショップもあり、地元の特産品がずらり。旅の記念やお土産に、ぜひ立ち寄ってみましょう! 芝桜の鮮烈なピンクに生命力を感じ ネモフィラのパステルブルーに癒される エントランスから入ってセンター通路の右手に見えるのが、芝桜のカーペット。約45万株、ピンクをメインに赤、白、青紫の花色でアクセントをつけています。ピンク一色に染め上げたエリアもあれば、花色を組み合わせてアーティスティックな文様を描いたエリアも。這うように茎葉を広げる芝桜が、すっかり地面を覆い尽くす壮大な風景です。風がそよぐと、優美な甘い香りに包まれますよ! 後方には菜の花がつくる黄色のエリアもあります。 センター通路の左手に見えるのは、西日本最大級を誇るネモフィラの花畑。なんと100万本が植栽されています! パステルブルーの花色と、空の青とのコンビネーションが素晴らしいですね。自然豊かな土地で、借景に人工物が一切ないのも花畑の美しさを引き立て、癒し効果を高めるのに一役買っています。 毎年配色やデザインを変えて制作している、フォトスポットの「芝桜ウォール」で、記念撮影をどうぞ。幅5×高さ3mのサイズなので、グループでもきれいに写真に収まります。2019年の開園期間は元号が変わる5月1日を挟んでいるので、このおめでたい機会を祝して、新たな芝桜のウォールデコレートを計画中です! 写真は高さ3m、長さ20mの「展望通路」です。芝桜のカーペットの景色を写真に収めるのにちょうどいい高さを導いて作ったもので、これより高くても低くてもダメなんです! フォトジェニックな写真が撮れると、大人気のエリア。高い場所が苦手な方や、体力のない方、車椅子の方に向けて手前にも幅広でゆるやかなスロープがあり、2ルートを確保しています。 週末を中心に、クラフト体験コーナーや 子ども向けのポニー乗馬などイベントも多彩 2019年は、ゴールデンウィークを除く月・金・土に、クラフト体験イベントの「ハーバリウムアロマディフューザーづくり」を開催。ハーバリウムとしても芳香剤としても楽しめます。予約不要、材料や道具は揃っているので手ぶらで参加OK。制作時間は15〜20分、参加費1,500円。4月27・28日には「ハーバリウムづくり」(体験料2,000円)も行われます。 2019年5月3・4・5日には「ポニーこども乗馬体験」が催されます(雨天中止)。時間帯は10:00〜15:00、料金は300円。ポニー3頭が登場し、プロの調教師がついてサポートしてくれるので安心です。毎年子どもたちに大人気のイベントで、みんな最高の笑顔で写真に収まりますよ! 地場産品が大集合する土産物店は必見 気取らない田舎風食堂の昼ごはんもおいしい! 「お土産処 なごみ」では、地元の特産品が豊富に揃うので、ぜひお立ち寄りを。主な価格帯は500〜1,000円で、手に取りやすい値段で揃えているのが嬉しいところ。「あれも、これも!」と目移りしてしまいそうです。オススメはオリジナル商品の「ネモフィラクッキー」600円、香りのよい桜餡を使った「芝桜大福」600円。 食事処もあり、「あおぞら食堂」のメニューは8種類。カレーや天丼など価格帯は600〜800円。オススメは「桜うどん」700円で、桜の葉を練り込んだ、桜色の麺を使っています。麺をすすると桜の香りがふわりと鼻に抜ける、上品な味わいです。「里の男前セット」800円は山賊握りにおかず7品目がついてボリューム満点! 隣接のテラス席で景色を楽しみながらの食事は会話も弾み、いっそうおいしく感じます。 Information Flower village 花夢の里 所在地:広島県世羅郡世羅町上津田3-3 TEL:0847-39-1734 https://sera.ne.jp/ オープン期間:4月上旬~5月中旬 休園日:なし 営業時間:9:00~17:00 ※大型連休中は8:00~18:00に延長する場合あり 料金:大人800円、小人(4歳~小学生)400円 駐車場:700台(無料) 併せて読みたい ・花の庭巡りならここ! 四季を通して花のカーペットで彩られる「国営備北丘陵公園」 ・初めてのガーデニング!育てやすい「春を告げる」旬の宿根草オススメ5選 ・小さな庭と花暮らし「春を知らせる球根花、スイセンとチューリップ」 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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神奈川県

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪8 神奈川「Buriki no Zyoro湘南T-SITE」
グリーンライフをトータルコーディネートしてくれるショップ 湘南の海風が吹きわたる藤沢で、2014年にオープンしたカルチャースポット「湘南T-SITE」。大型書店を中心とした、新しいライフスタイルを提案するこだわりのショップが集まった注目の商業施設です。 3棟のモダンな2階建ての建物には、すべて書店が入っており、売り場は本の分野ごとにエリア分けがされています。各書店には、その分野と関連性があるものを扱うショップやレストランが隣接。本好きの人も、そうでない人も、感覚で楽しめるスポットとなっています。今回ご紹介する「Buriki no Zyoro」は、植物やフラワーアレンジ、庭づくりに関連する本が集まるエリアに面して展開しています。 普段の生活をワンランク上げるための 商品・提案を心がけて この店のコンセプトは「グリーンのある暮らしをトータル的に提案」すること。さまざまなガーデニングの旬をいち早く届けられるよう、草花や樹木、インドアグリーン、切り花、ドライ、多肉植物、雑貨など、生活に取り込みやすい身近なアイテムすべての「これぞ」というものだけをセレクトしています。 空間を巧みに使い、インドアグリーン、多肉植物などの緑に心地よく包まれる店内。什器には、アンティークテーブルやプランターシェルフなど、インテリアにそのまま使えるアイテムを選び、手軽に実践できるような参考にしやすい提案がなされています。 ウッドボックスを重ねて、今人気のビカクシダや銅葉のゴムの木など、個性的なグリーンを飾ったコーナー。ボックスの高さや向きを少しずつ変えることで、立体感のある空間を提案しています。売り場に置いていない植物は、取り寄せ可能。 基礎工事などに使う格子状のワイヤーは、丈夫で悪目立ちしない優れもの。店内の随所で、ディスプレイに活用しています。ここではガーデンツールとエアプランツのスパニッシュモスをハンギング。 コンテナは、グリーンをより美しく見せるフォルム、色、質感を備えた、厳選されたものが揃っています。 自身の感性と性分を生かし またたくまに人気のショップに成長 「Buriki no Zyoro」のオーナー勝地末子さんは、グリーンスタイリストとして、多方面で活躍中。華がありながらもナチュラルなスタイリングは、著名人にも多くのファンがいるほどの人気ぶりです。 勝地さんがショップを始めたのは今から23年ほど前で、当時3人の息子さんの⼦育てが一段落し、何か自身の感性を生かせる仕事を始めたいと思ったことから。20代で大好きなファッションを扱うアパレルメーカーを経営していた経験を生かし、長年学んでいたガーデニングとフラワーアレンジメントを生業に選びました。 オープンする前は、週1~2日でこぢんまりとやっていけたらと考えていましたが、いざ始めると順調に仕事が運び、ほぼフル回転でショップを営業。仕事だけでなく、勉強にも明け暮れました。 「なんでもやり出したら、とことんやりたくなるんです」と勝地さん。トレンドに敏感な勝地さんは時代に先駆け、グリーンや白を基調とした大人っぽい雰囲気のショップづくりを意識し、当時まだそれほど出回っていなかった多肉植物も充実させました。ワークショップもいち早く手掛けていたことで、おしゃれに感度が高い人が集まる場として、どんどん注目を浴びていきます。 多忙な毎日ですが、今でも自身で仕入れを行っています。「生産者さんと話したり、新しい変わった品種を見つけたりすると、どんなに疲れていても、仕事のモチベーションがぐんと上がるんですよ」と勝地さん。 勝地さんが最も大切しているのが、‘ディスプレイ’。スタッフと相談しながらこまめに模様替えをして、常に美しく新鮮な空間を提案するよう心がけています。「せっかく来てくださったのに、楽しく新しい提案がないとつまらないでしょう」。 勝地さんオススメの苔のテラリウム。蓋つきの瓶の中では苔に必要な湿度が保たれるので、このまま飾るだけで、苔が作る小宇宙を身近に楽しむことができます。詳しくはショップ、または勝地さんの著書『はじめてのテラリウム 多肉植物、エアプランツ、苔、蘭でつくる』(エクスナレッジ)で。 無機質でモダンな空間に 心落ち着く有機的な演出を 勝地さんが空間づくりで意識していることは、ディスプレイの美しさだけでなく、居心地の良さの追求。ここの建物は無機質でややハードな印象があるため、勝地さんの世界観を出すには、一工夫が必要でした。そこで勝地さんは、人の背丈を超えるほどの大きな木の幹や枝を要所にレイアウト。直線的な建物に曲線のデザインを加えることでやわらかさが出て、森の中にいるような囲まれ感も生まれています。 日々の暮らしに寄り添うよう 花選びを心がけて ショップの中央のテーブルでは、愛らしい切り花が軽やかな彩りを添えています。この店舗にはナチュラル志向の人が多く来ることもあり、あまり派手さがない自然体な花姿のものがメイン。自由が丘店では勝地さんの感性を求めて来る常連さんからの「贈り物用の花束」の依頼が多いのですが、ここ湘南では、これ! と思う1本、または数本を自分で選んで自宅用として購入していく方が多いのだとか。「生活に花やグリーンで潤いを添えようと思う人が増えているようです」と勝地さん。一輪でも絵になる花材を意識して仕入れています。 ドライフラワーで提案する 最後まで花を楽しむ方法 「Buriki no Zyoro」では、ドライのリースやスワッグも販売しています。飾られているものはスタッフが作ったもので、どれもあたたかみを感じさせるものばかり。植物の本来の魅力を伝えようとする思いが伝わってくる、シンプルで飽きのこないデザインが魅力です。 折れたり、盛りを過ぎたりした花を、スタッフが吊るして飾ったコーナー。「花を最後まで慈しむ気持ち・姿勢が嬉しいんです」と勝地さん。こういった花への思いが伝わり、これが欲しいというお客さまも。 ショップの前には、 厳選した苗ものが並ぶ 「Buriki no Zyoro」では、庭に植える植物ももちろん扱っています。ショップの前のウッドデッキまわりには、植栽をグレードアップさせてくれるイチオシの植物を陳列。また、庭の設計・施工の相談も受けており、こだわりのある美容室やマンションで施工したおしゃれな植栽が注目を浴びています。 今人気のオリーブやオーストラリア原産の樹木類も多数販売。クールな建物にサラサラと揺れる葉が美しく映え、訪れた人の目を潤しています。 リーフガーデンづくりに欠かせない、ユッカやシキミアなどの常緑プランツも充実しています。 今大人気のおしゃれなラナンキュラスやアネモネなど、華やかな花鉢や苗も扱っています。 勝地さんイチオシのグッズはコレ! ハンギングで飾るプランツやアイテム 今までガーデニングに興味のなかった人たちにも、グリーンの重要性が認識され始め、インテリアや玄関まわりなどに少しずつ植物が取り入れられるようになりました。現在需要が伸びているのが、吊るして飾るつる性のグリーン。丈夫で個性的なものが多く、一鉢あるだけで、空間につややかな潤いがもたらされます。 「単に植物を売るだけでなく、一歩先を行く新しい提案で訪れる人々の感性を刺激し、潤いに満ちたライフスタイルを発信し続ける」という施設のコンセプトに準じながら、ほかのショップにはない「瑞々しい癒しの空間」を提供している「Buriki no Zyoro」。ここには、23年間、東京・自由が丘で培った豊かな感性をさらに進化させた、勝地さんの新しい世界が広がっています。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、小田急線本鵠沼駅より徒歩15分 小田急線・JR藤沢駅より無料シャトルバス運行中。 【GARDEN DATA】 Buriki no Zyoro湘南T-SITE 神奈川県藤沢市辻堂元町6-20-1 湘南T-SITE 2号館 TEL:0466-53-8783 https://www.buriki.jp/ 営業時間:10:00~19:00(施設に準ずる場合あり) 定休日:無休(正月を除く) 併せて読みたい ・素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪7 東京「渋谷園芸」 ・「私の庭・私の暮らし」インスタで人気! 雑木や宿根草、バラに囲まれた大人庭 千葉県・田中邸 ・一年中センスがよい小さな庭をつくろう! 英国で見つけた7つの庭のアイデア Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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神奈川県

春のお出かけお花見スポット〜城山かたくりの里〜
待ちに待ったお花見の季節 御殿場ザクラ。 うららかな休日は、日帰り可能なお花見スポットに足を伸ばして、春を満喫したくなります。いくつかある気に入りのお花見スポットに、2018年の春、偶然インスタグラムで見つけた「城山かたくりの里」が新たに仲間入りしました。 「城山かたくりの里」は、神奈川県相模原市にある個人所有の山村で、カタクリの花が咲く春のみ一般公開されています。また、所有者で花守人の小林一章氏が、昭和50年頃から始めたカタクリの自生地保護と増植の努力で、今では400坪に30万株が自生し、南関東随一の群生地として知られています。 山の斜面に群れ咲くカタクリの花 カタクリやユキワリソウ、コイワウチワが寄り添うように咲く様子を間近に見ることができます。 「城山かたくりの里」を訪れたのは、2018年の4月1日。残念ながら、カタクリの花は満開を過ぎていましたが、山林のほぼ3分の1が群生地。そこには、今まで見たことのない景色が広がっていました。 山の斜面に咲いているカタクリの花は、散策路から見上げると一輪一輪うつむきがちな花の可憐な表情がよく見え、クルンと反り返った花びらのなんと可愛らしいこと。「春の妖精」と多くの人に親しまれていることがよく分かります。背景のツツジの花も色鮮やかで、満開時には辺り一面が赤紫色に染まり、さぞ美しい光景が広がることでしょう。想像するだけでうっとりします。 キバナカタクリが咲き始めていました。 赤紫色のカタクリの花に代わって、ちらほら咲き始めていたキバナカタクリも見ることができました。黄花はやや遅咲きの希少種だそうで、黄緑がかった透明感のある花が、柔らかな木漏れ日に輝いていました。その清らかさは、一株を今すぐにでも庭に植えてみたいと思ったほどです。 素朴で愛らしいアズマイチゲ。 とはいえ、恥ずかしながらこの時まで、わたしはカタクリの生態をほとんど知らなかったのです。調べてみると、カタクリは北海道や本州の北中部に自生しているユリ科の多年草。樹木が目覚める前の早春に花を咲かせ、春が深まり草木に葉が茂る頃には葉を落とし、再び土の中で長い眠りにつくのだとか。 ニリンソウ。 さらに、タネから花が咲くまでに最短でも7年かかるそうです。7年もかけてじっくりと球根に栄養を蓄えて花を咲かせる準備をするなんて驚きですね。また、日本では自生地が激減し貴重な花となっているようです。 生態を知れば知るほど、どこか神秘的でその健気さが愛おしく感じます。と同時に、約45年もカタクリの保護と増植に時間と手間を費やしてこられた花守人の方々の情熱に、只只、感服するばかりです。 山野草の愛らしさに魅せられて 林床に咲くユキワリソウ。 カタクリの花以外にも、山林のそこかしこにさまざまな山野草の花が咲いていました。例えば、ニリンソウ、ユキワリソウ、イワウチワ、アズマイチゲ、ユキワリイチゲ、ショウジョウバカマ、オオバキスミレ…。地面に積もったフワフワの枯れ葉の間から覗かせる可憐な花たちは、「わたしを見て〜!」と言わんばかり。その姿を、何度腰をかがめて覗き込んだことでしょう。 オオイワウチワ。 じつは、山野草といえば、園芸店で売られているポット苗や庭植えのものしか見たことがなく、こんな風に自然に咲く姿を見たのは、この時が初めてでした。顔を近づけて見れば見るほど、個性的で繊細な花に釘付けに。そのうえ、どの葉っぱも愛らしく、花が終わった後も十分楽しめそう。そう思うと、わが家の庭にも植えてみたいなと思いましたが、居心地良さげに咲いている姿をしばらく眺めているうちに、ちょっと可哀想な気もしてきました。やっぱり山野草は、自然の中で愛でるのが一番なのかもしれませんね。 咲き誇る春の花木 山野草の群生地を抜け、山林の奥へと散策路を進むと、今度はサクラやツツジ、ツバキ、ヤマブキ、ミツマタなど、花木が一斉に花を咲かせていました。赤、桃、黄、白…。 色とりどりの無数の花々が織りなす景色は、まさに春爛漫。中でも、清楚な一重咲きのおかめ桜や御殿場桜、ふくよかな花びらのヤシオツツジ、シベと花びらのコントラストがハッとするほど美しいト伴椿(ボクハンツバキ)など、ふだん滅多に見られない花木の種類の多さに胸が高鳴りました。 ト伴(ボクハン)椿。 紅ヤシオツツジ&ヒカゲツツジ。 それにしても、これほど春咲きの花木のみ植栽している場所は、他に見たことがありません。 さらにその先に広がっていたのは、目を見張るほどの箒桃(ホウキモモ)の群生。真っ直ぐ上に伸びた枝いっぱいの艶やかな大輪八重咲きの紅や白、桃色の花。それぞれが競い合って春霞の空をつかもうとしている壮観さは、感動の一言。その力強さに自然と心が奮い立ちました。 そんな箒桃の下では、写真を撮る人や椅子に腰掛けて絵を描いている人、お弁当をひろげてにこやかに寛いでいる家族の姿も。まるで名画のような幸せに満ちた光景でした。 30万株のカタクリと山野草、そして、春の花木が咲き誇る「城山かたくりの里」は、まさにこの世の桃源郷。今春も、この時季ここでしか見られない景色と感動を味わいに出かけたいと思います。 「城山.かたくりの里」公式ホームページhttps://www.katakurinosato.com/
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岐阜県

花の庭巡りならここ! 広大な花畑を楽しめるレジャースポット「ひるがの高原 牧歌の里」
標高1,000mの高原に広がる花畑 花色が冴え冴えとし、見応え満点! 1996年にオープンした「ひるがの高原 牧歌の里」は4万㎡の敷地を持ち、大人の足でゆっくり歩いて1時間半ほどかかるレジャー施設です。標高約1,000mの高原には、自然に恵まれたロケーションを借景に、四季を通して彩り豊かな花畑が広がります。 花畑のエリアは、「名古屋から車で1時間半という立地で、広大な敷地の強みを生かした、北海道のようなラベンダー畑を楽しんでもらいたい」という思いからスタートしたもの。今や四季の花畑を楽しみに訪れる、リピーターの姿も多く見られます。主な開花リレーは、春はチューリップ、初夏はラベンダー、夏はアルストロメリア、サンパチェンス、秋はマリーゴールド、ゴールデンピラミッド、コキアなどです。 花畑のほかにも、クラフト体験コーナーや動物と触れ合えるスポット、老若男女が楽しめるさまざまなレジャー施設が揃っています。5店舗のバラエティーに富んだ飲食店、オリジナル商品のスイーツが大人気の土産物ショップにも、ぜひ足を運びましょう! 年に数回の植え替えを行う花畑は シーズンによって表情がガラリと変わる 「ひるがの高原 牧歌の里」では、広大な敷地を生かした花畑が大人気。年に数回の植え替えを行っており、いつ訪れても花々に彩られるダイナミックな景色を満喫できます。それでは、園内の四季をご紹介しましょう。 写真は5月上旬〜中旬に見頃になるチューリップの花壇。23種類30万球を植栽しています。毎年配色デザインを変えて、インスタ映えする写真が撮れるスポットを用意。春はほかに、スイセンが4月中旬〜下旬、ムスカリが5月上旬〜中旬に見頃になります。 写真は6月下旬〜8月上旬に見頃を迎える、ラベンダー一色に染まった花畑です。7種類、約1万株を植栽。そよ風とともにラベンダーの甘い香りがフワッと漂ってきて、癒し効果抜群! 後ろの建物は、実際にウェディングも行われる教会で、園内のシンボル。ツタの這う三角屋根を背景に、フォトジェニックな写真が撮れそうです。 写真はアルストロメリアの花畑で、7〜9月中旬が見頃。ロマンティックなピンクでまとめて、花のカーペットをつくりだしています。高原の涼しい風が心地よく吹きわたり、耳をすませば小鳥のさえずりが聞こえてくる、自然豊かなロケーションです。 写真は7月中旬〜10月中旬に満開になる、サンパチェンス。約4,000株が植栽されています。白や赤の花色を組み合わせたボーダーがきれいですね! 園内では飲食施設以外なら食べ物の持ち込みOKなので、青空の下でランチやスイーツを広げて味わうのもいいですね。 写真はチューリップの後に植栽されるマリーゴールドの花壇。マリーゴールド2種類、スーパーチュニア3種類、サルビア1種類が咲き競います。 「ひるがの高原 牧歌の里」の四季を彩る花畑の景色はいかがでしたか? 標高の高い地域では昼と夜の気温差が大きいので、花が冴え冴えと発色するのも魅力。平地では真夏の暑さで開花が少なくなる時期も、元気に咲き誇っています。美しい花々の景色を見に、ぜひ出かけましょう! 一日かけて遊んでも飽きない! 老若男女が楽しめる多様なレジャーが揃う 広い園内では、蒸気機関車を模した2台のロードトレインが運行しています。ちゃんと名前がついているんですよ! 写真の赤い列車は「ドット君」で、別の緑色の列車は「マックス君」。10分かけて園内をゆっくりと巡るので、幼い子ども連れやシニア世代にオススメです。料金は300円。 「ひるがの高原 牧歌の里」の広大な牧場では、たくさんの動物たちが草を食む、ほのぼのとした姿を見学できます。牧場にいるウマ、ウシ、アルパカ、ヒツジ、ウサギ、モルモット、ヤギと触れ合えるイベントも。写真はアルパカのだいや君(左)とバンビ君(右)で、2019年の春〜秋は「ふれあいテント」にて、15:00から写真撮影なども行います。いい思い出づくりができそう! 親子で楽しめるクラフト体験が人気! 飲食店は5店舗、土産物店も充実の品揃え 「ひるがの高原 牧歌の里」では、クラフト体験コースのイベントも行っています。写真は「ハーバリウムづくり」の完成品。予約なしでOK、当日体験会場にてお申し込みを。20〜30名までの定員制です。時間は20〜30分で料金は\1,500と\2,500。ほかに「ネームプレートづくり」、「ネームストラップづくり」、「スノードームづくり」などがあり、いずれも親子で楽しめる内容となっています。 「ひるがの高原 牧歌の里」では、飲食店や土産物店も充実。飲食店は「屋内型バーベキュー ハウス 味広場」、「イタリアンレストランヒルトップ」「ファストフード ぱっくん」「ミルクハウス ムー」「高原のぱんやさん」の5店舗があります。 写真は「屋内型バーベキュー ハウス 味広場」の飛騨牛のバーベキューが楽しめる「ぼっかセット」3,200円。営業時間は11:00〜15:30、450席。麺類や軽食のメニューもあります。土産物店では、牧場ならではのオリジナルスイーツが大人気です。 Information ひるがの高原 牧歌の里 所在地:岐阜県郡上市高鷲町鷲見2756-2 TEL:0575-73-2888 https://www.bokka.co.jp/ アクセス:東海北陸自動車道「ひるがの高原SAスマートIC(ETC専用)」から約4分 オープン期間:グリーンシーズン/4月20日~11月23日 ウインターシーズン/12月21日~3月31日 休園日:グリーンシーズン/無休 ウインターシーズン/火曜 営業時間:グリーンシーズン/10:00~17:00(土・日・祝日は9:00~)※季節により変動あり ウインターシーズン/10:00~15:30 料金:グリーンシーズン/大人1130円、中高生920円、小人(4歳以上小学生)610円 ウインターシーズン 中学生以上 600円、小人(4歳以上小学生)300円 駐車場:約2,000台(無料) 併せて読みたい ・花の庭巡りならここ! 花々で彩られるレジャー施設「東京ドイツ村」 ・花の庭巡りならここ! 植物がテーマのミュージアム「三陽メディアフラワーミュージアム 千葉市花の美術館」 ・「私の庭・私の暮らし」インスタで人気! 雑木や宿根草、バラに囲まれた大人庭 千葉県・田中邸 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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栃木県

カメラマンが訪ねた感動の花の庭。栃木県那須町「コピスガーデン」
クリスマスローズも多数扱うナーセリー 今回ご紹介する庭は、栃木県那須町にあるガーデンショップ「コピスガーデン」です。この庭に初めて行ったのは2015年の2月。この時は、バラが目的ではなく、クリスマスローズの取材でのことでした。「コピスガーデン」の母体は、宿根草や球根、クリスマスローズのナーセリーとしても有名な「大森プランツ」です。クリスマスローズが大好きな僕にとっては、大森プランツといえば、堀切園の樋口規夫さんの「ウィンターシンフォニー」というくらいクリスマスローズの印象が強い会社で、この時の取材もクリスマスローズのイベントに合わせて樋口さんの撮影をするのが目的でした。 フレンチローズが咲くバラ園の一つ 取材が終わって、お世話になった当時の担当だった鈴木さんにご挨拶をした時、「5月末のバラもきれいですから、一度お越しください」とお誘いを受けました。「大森プランツ」でフランスのバラナーセリーである「ギヨー」社などのバラも扱い始めたことは知っていましたし、僕の重要な仕事である『ローズカレンダー』用に、フレンチローズを撮影できるバラ園を探していたこともあり、「5月末、コピスガーデン、ギヨーのバラ」と頭の中にインプットして帰路につきました。 撮影は5月末の15時にスタート 毎年5月末になると、新潟にある「国営越後丘陵公園」のバラの撮影が恒例になっていて、この年も29日に新潟に行き、夕方のバラ園を撮影し、一泊して翌日の早朝のバラ園の撮影を済ませて、お昼から「コピスガーデン」へと向かうことにしました。「コピスガーデン」までの道のりは、日本海側を北陸自動車道を北上して、磐越自動車道に乗り、会津を抜けて東北自動車道を少し南に走るという、総距離約260km、3時間ほどのドライブです。当日は天気も良くて快適なドライブで、15時過ぎに「コピスガーデン」に予定通りに到着。前述の鈴木さんにご挨拶をして、すぐにバラ園へ向かいました。 個性的で主張するバラの魅力をカメラに収める 高い木々に囲まれたショップの建物の間を抜けて、階段を数段下りて道なりに右に進んでいくと、目の前に突然バラの庭が現れました。そこには、さっきまで新潟の越後丘陵公園で見ていたバラとは違う、いつも見慣れているオールドローズとも全然違うバラが。それは、色の強さも形も、咲き方もそれぞれのバラ一本一本が主張し合っているように感じさせる「ギヨー」社のバラが見事に咲いていました。バラの間にはネペタやラムズイヤーの宿根草も自由に咲いていて、大げさに表現するなら「見たこともない美しい世界が広がっていた!」のです。 カメラを担いでワクワクした気分でバラの庭をぐるりと下見をしながら、何周も歩き、バラを眺めながら品種名を覚えたりもして、光が良くなった17時から撮影を開始しました。今回初めて見る「ギヨー」社のバラも多数あって、ファインダーの中のバラを見ては「個性的なバラが多いな」と改めて思ったりしながら、独特な「ギヨー」社のバラの魅力をとらえようと、その日も陽が沈むまで撮影しました。 翌年のバラの最盛期も再び訪れる 翌年の2016年の5月は撮影が立て込んでいて、「コピスガーデン」の様子も気になっていたものの、結局行くことができずにいました。しかし6月上旬のある日、当時、ガーデニング雑誌『BISES』の副編集長だった倉重さんから「今『コピスガーデン』のバラが丁度きれいと聞いたので、撮影をお願いできませんか?」と電話が入りました。『BISES』は花の撮影を始めた頃から憧れの雑誌で、花や庭の撮影のきっかけを作ってくれた媒体なので、断るなんてことはできません。 天気予報を見ると那須の天気は翌日の午前中だけ晴れで、その後はずっと雨マーク。ピークのバラ園に長雨が降ったらバラは終わってしまうし、翌日は午後から別の撮影が入っています。ということは……。暗い内に家を出て、早朝に「コピスガーデン」に到着したら2時間も撮影して帰れば可能だと判断。倉重さんには「大丈夫です!」と返事をして後は翌朝の天気を祈るだけでした。幸い、翌日の「コピスガーデン」は朝から晴天! 美しいバラの庭を前にして『BISES』に載せる写真を撮るぞッと、いつもより高揚した気分で撮影を進め、日が高くなってきた8時過ぎには撮影を終了しました。 ガーデニング雑誌と写真展で注目された一枚 この時の写真は、自分でも納得の写真で、『BISES』掲載の後、東京・六本木の「FUJIFILM SQUARE」で開催された写真展「バラ大国 日本 輝くバラたちの庭」にも大きく引き伸ばされて展示された、僕にとっても記念すべき一枚になりました。 その翌年からは、「コピスガーデン」の皆さんもガーデニング雑誌に掲載された写真を見て喜んでくれたことがきっかけとなって、何度も写真講座を企画してくれたりと、良いお付き合いをさせていただいています。美しいバラやクリスマスローズの咲く「コピスガーデン」。マイフェイバリットなお庭の一つです。
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鹿児島県

花の庭巡りならここ! 南国ならではの植生が楽しめる「フラワーパークかごしま」
島々を入れると南北に長い鹿児島県ならではの 珍しく、貴重な植物コレクションを楽しめる 1996年にオープンした「フラワーパークかごしま」は、「花・風・光のシンフォニー」をテーマにした、花と緑であふれる公園。花き生産の盛んな地域性を生かし、花き生産者と市民の交流の場として設立されました。敷地面積は36.5ヘクタール(東京ドーム7個分)にも及び、大人の足でゆっくり歩いて2時間ほど。年間約12万人が訪れ、市民の憩いの場となっています。 園内には2,400種、およそ40万本の植物が。1月から開花する桜‘イズノオドリコ’から始まり、チューリップ、ポピー、ダリアなど、季節を通して満開の花畑が楽しめます。また、「シャクナゲの森」「ツツジの森」「バラ花壇」「ジャングル花の谷」など、エリアごとにテーマ性のある展示があり、それぞれに異なるスタイルの花壇やガーデンを観賞できます。 「フラワーパークかごしま」では、一年を通してさまざまなイベント、園芸教室、カルチャー教室が開かれており、参加型の企画をたくさん用意しているのも特徴です。売店では地元特産品が充実しており、サツマイモのアイスクリームが大人気。園内には飲食店は入っていないので、一日かけて遊ぶつもりならお弁当やおやつ、飲み物を持参するのがオススメです。売店でパンや飲み物、お菓子を購入するのもいいですね! 敷地の広さを生かした、面で魅せる花畑は圧巻 写真映えする添景物を置いたフォトスポットも人気 写真の‘イズノオドリコ’は、1月中旬から2月中旬まで約1カ月咲き続ける、早咲きの桜です。熱海で造園業を営んでいた石井武夫さんが発見し、命名した品種で、「フラワーパークかごしま」に寄贈されました。樹齢40年ほどで、花色は色鮮やかなピンク。約60本が植栽されており、いち早く桜の花見が楽しめます。 2月〜3月中旬になると、「フラワーパークかごしま」は5万本のチューリップで彩られる「チューリップ祭り」が開催されます。開花調整して長く満開の景色を楽しめるように演出。ユリ咲きや原種など、珍しい品種も揃い、同時期に咲くビオラやパンジーとの共演も見どころです。また、イベント期間内には「チューリップ展示会」のコーナーが設けられ、終了後には恒例の開花株即売会が開かれています。 3月末から4月にかけては、オレンジや黄色、白などのポピーが花盛りになり、1万本以上で花畑を埋め尽くします。この写真にも写っている通り、風車などの添景物を取り入れて、インスタ映えスポットを作っているので、ぜひご利用を! 同じ時期には、シャクナゲ、ハヤトミツバツツジも見頃になります。 「西洋庭園」のエリアは、ツゲのトピアリーで幾何学模様を描いた、イギリス式ガーデンです。敷地内にある、標高の高い展望回廊から眺めると、美しい幾何学模様が浮き立ちますよ! 背景にある白い建物では、園内で収穫したハーブを使って、ハーブティーの入れ方やハーブを使ったデザートの作り方、ハーブの虫除けスプレーづくりなど、体験講座のイベントが開催されます。 5月の「花広場」エリアは、ダリアの季節。約10品種、10万本が満開になります。イベントとして、「ダリア収穫祭」も。1回目は花を摘み取って持ち帰ることができ(開花状況によって変更あり)、2回目は開花が終わる頃のタイミングで行われ、球根ごと掘り上げて10株ずつ持ち帰ることができます。気に入った品種を選んで自庭に植えれば、翌年開花するとあって、毎年人気の高いイベントです。 島々を抱く南国鹿児島ならではの植生を再現 トロピカルな花々の景色を楽しもう こちらは「ジャングル花の谷」のエリア。鹿児島県は、島々を入れると南北約600kmにも渡り、東洋のガラパゴスといわれるほど珍しく貴重な植物が見られます。ここでは、奄美や種子島、屋久島の植物を入り口に、だんだんと北上していくように植物を配置。南北に長い鹿児島県を実感する、多彩なジャングルの景色を楽しめます。 「屋内庭園」エリアは、明るい透明な屋根が設けられた、ウィンドウスルー形式の半人工的な環境の庭園です。防風壁、自然の山の尾根に囲まれているため、オープンエアながらも冷たい風や寒さから植物が守られ、バナナやヤシの木が枝葉を大きく伸ばしています。大型コンテナの寄せ植えは季節によって草花を模様替えし、四季を通してカラフルに演出しています。 「屋内庭園」の春から秋にかけては、トロピカルフラワーのハイビスカスやブーゲンビリアがこぼれるように咲き続け、南国ならではの景色を楽しめます。このエリアの隣には、ヒメショウジョウヤシが迫力たっぷりに植栽されている温室もあるので、悪天候の際の雨宿りにちょうどいいスポットですね。 展望回廊から海を望むナイスビューを楽しんで 園内では年間を通して多彩なイベントを開催 展望回廊は標高約40mで錦江湾を一望できるビュースポット。すがすがしい潮風が感じられ、大隈半島が見渡せるほか、種子島宇宙センターから打ち上げられるロケットも見ることができます。天候に恵まれた日は、ここでお弁当を広げるのもいいですね。写真中央の海に突き出している「竹山」は、地元では「スヌーピー山」と呼んで親しまれています。「スヌーピーが仰向けに寝ているようだから」ということですが、スヌーピーのお昼寝姿、ぜひ見に行ってみましょう! 「フラワーパークかごしま」では、さまざまなイベントが開催されています。12月上旬〜1月上旬はイルミルーションで彩られ、優しい光に包まれるナイトガーデンを満喫できます。写真は毎年冬に開催されるクリスマスローズ展の様子で、1,000株が品種によって系統立てて展示され、コレクターの熱い視線が集まります。ほかに定期的に園芸教室やカルチャー教室も開催されており、ホームページでその都度告知されます。参加希望の場合は、事前に予約が必要です。 Information フラワーパークかごしま 所在地:鹿児島県指宿市山川岡児ヶ水1611 TEL:0993-35-3333 http://www.fp-k.org/ アクセス:公共交通機関/JR鹿児島中央駅から指宿駅まで約80分、JR指宿駅からバスで約35分 JR山川駅からバスで約20分 車/鹿児島市内から車で約90分(約60km) 山川港から車で約15分 オープン期間:通年 休園日:12月30、31日 営業時間:9:00~17:00(最終入園16:30〜) 料金:高校生以上620円 小・中学生300円 幼児無料 駐車場:525台(無料) 併せて読みたい ・花の庭巡りならここ! 全エリアを見渡せる屋根つき回廊が斬新!「とっとり花回廊」 ・花の庭巡りならここ! インスタ映えする景色の宝庫「淡路島国営明石海峡公園」 ・カメラマンが訪ねた感動の花の庭。芝とハーブとバラがコラボする庭 愛知・寺田邸 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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イギリス

現在のイングリッシュガーデンのイメージを作った庭「ヘスタークーム」【世界のガーデンを探る19】
いかにも“イングリッシュガーデン”らしい庭 ヘスタークーム(Hester Combe Gardens) ロンドンから西へひた走りに走り、ウェールズの手前、ブリストルから少し南西に下ったサマセット州に、今回ご紹介するヘスタークームはあります。この庭はおそらく、数あるイギリスの庭の中でも、日本人の持つイングリッシュガーデンのイメージに最も合っている庭のように思います。まとまりもよく、大きさ的にも色合い的にも、いかにも我々が持っているガーデンのイメージに当てはまるイギリス庭園です。 現在のガーデニングに大きな影響を与えた ガートルード・ジーキルのコテージガーデン 前回ご紹介したように、18〜19世紀のイギリス式風景庭園は、多くの富裕層の屋敷につくられ、その権力の象徴的存在でした。しかし、18世紀中頃から19世紀にかけて始まった産業革命によって、富の主役が貴族や王室の手からブルジョアジー(中産階級)へと移っていきます。それに伴い、庭の形態も広大な敷地のピクチャレスクな庭から、見える範囲にまとめられたガーデニスクな庭へと移り変わり、植栽に使われる植物にも変化が生じます。プラントハンターたちによって世界中から集められた珍しい植物ではなく、世界中からのアトラクティブな植物を含めイギリス本来の土地にあった宿根草が使われるようになったのです。 このような時代を背景にして、現れるべくして登場するのがガートルード・ジーキル女史(Gertrude Jekyll)です。彼女はもともと美術工芸家だったのですが、目が不自由になってきたこともあって、大好きだったガーデニングの世界へと入ってきました。 彼女の持っていた植物への知識と思い入れ、それと芸術家としての配色と組み合わせが、建築家のラッチェンス(Edwin Lutyens)と融合したことで、素晴らしい庭の数々を後世の我々に残してくれました。それまでのランドスケープ的な男性的で広大な風景式庭園から、ジーキル女史の出現によって、花咲くコテージガーデンが誕生したのです。 土地の傾斜をうまく利用したテラスガーデン、その向こうにこぢんまりとした屋敷があります。何人かのオーナーを経て、今はサマセット州の消防本部になっているため、庭の管理も消防署がやっているとのことです。この庭も、ジーキル女史とラッチェンスが出現する前には風景式庭園でしたが、オーナーが変わり、20世紀初めに2人によって今のような素敵な庭がつくられたのです。 そもそも、この庭の歴史は9世紀ごろから始まります。ワーレス一族が管理するようになった14世紀頃に庭の原形ができ、18世紀には15ヘクタールにも及ぶ広大な風景式庭園がつくられました。その後オーナーが変わり、1904年からラッチェンスとジーキルによって、この庭は改めてつくり直されました。第二次世界大戦の頃には、荒れて廃墟同然になってしまったのですが、1997年から復興プロジェクトが始まり、ジーキル女史の書いた図面をもとに、現在はほぼ当時のままに再現されています。 フォーマルな雰囲気漂う 色彩にあふれたメインガーデン ヘスタークームのメインガーデンでは、石で作られたパーゴラにより、庭の向こうに広がる田園風景に繋がる景色をクローズさせながら、まとまった空間を作り出しています。これはラッチェンスの得意な手法の一つです。メインガーデンでは、園路を十文字に配するのではなく対角線状に配することにより、メソポタミアから連綿と受け継がれてきたフォーマルガーデンのスタイルをラッチェンス風に見事にアレンジさせ、そこにジーキル女史の花が咲き乱れる世界最高のコンビネーションを作り出しています。 この庭では、嬉しいことに、今も当時のままに再現された植栽を見ることができます。修景バラの向こうには、はっきりした青紫のデルフィニウムやオレンジのヒューケラが。その間をラベンダーがつなぎ、2つの色彩を優しくミックスさせています。遠くに見える薄い黄色の大きな花はバーバスカムの塊、その横のもっこりとした赤い色は日本のベニシダレモミジです。 庭の随所に散りばめられたジーキル女史の植栽センスと ラッチェンスのハードランドスケープ メインガーデンへと続く階段。もともとあった傾斜にストーンウォールでうまく変化をつけながら、ガーデンへ降りていくように設計されています。ゆったりとした石の階段には、エリゲロン(源平小菊)がぎっしり生えています。また、ジーキル女史のお気に入りのシルバーリーフプランツや淡い色彩で、彼女らしい雰囲気を作り出しています。 石垣に埋もれるようにベンチを置くことで、落ち着いたスペースができています。このベンチに座っていると、庭に溶け込んでしまいそうに感じられます。 さまざまなサイズの平石を組み合わせて、とかく単調で堅くなりがちなペイビング(舗装)のテイストを和らげると同時に、エリゲロンで石の断面を優しく隠しています。石材の小端積みにも所々隙間を空けて、植物の入るスペースを作っています。 階段脇の樽のポットも、全ての段に置かず、途中が抜けていることで、重々しさをなくして開放感が感じられます。手前の両脇にはシダが植えられていて、エリゲロンとうまく調和しています。 庭の奥の壁泉から続くのは、これぞ2人で共作したからこその見せ場ともいえる立体的な水の流れです。角ばった石にうまく立体的に植物を絡ませて、一つながりの素晴らしい空間を作り出しています。純白の花を多く使い、周りの宿根草ボーダーとのコンビネーションも絶妙です。ジーキル女史は芝の遠路とボーダーの幅、それと植物の高さにはかなりこだわりを持っていました。 オランジェリーの前に広がる花壇の植栽は、シルバーリーフを多く使ったジーキル女史らしいカラースキーム(配色)です。少し前までは、ここでしかジーキル女史の植栽が見られなかったのですが、最近は彼女が手がけた多くの庭が、残された植栽図によって、当時のように復元されてきたことは嬉しい限りです。 彼女の植栽方法が、今のイングリッシュガーデンのほぼ全てに強い影響を及ぼしていることは、疑う余地のないところです。このヘスタークームのガーデンでは、そんな彼女のセンスと色彩感覚が存分に発揮されています。 現代につながるイングリッシュコテージガーデンの基礎を作ったジーキル女史とラッチェンス、2人の最高傑作ともいえる「ヘスタークーム」いかがでしたでしょうか? 次回は、今まで見てきた花の植え方や庭のスタイルについて、イタリア、フランス、イギリス、そして日本と比較してみたいと思います。 併せて読みたい ・イングランド式庭園の初期の最高傑作「ローシャム・パーク」【世界のガーデンを探る旅17】 ・英国「シシングハースト・カースル・ガーデン」色彩豊かなローズガーデン&サウスコテージガーデン ・美しき家と庭 英国モリス・デザインの世界を体感する「スタンデン・ハウス・アンド・ガーデン」
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東京都

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪7 東京「渋谷園芸」
ガーデニングライフに、‘アイデア’と‘美しさ’を提案するショップ 住宅街の中に広がる、緑したたる渋谷園芸。夏には、敷地内に点在するケヤキの大木が心地よい緑陰を落とします。渋谷園芸がオープンしたのは約43年前。そして今から7年前に隣の敷地からこの場所に移設し、現在に至っています。 街道沿いの店頭には、大きなテラコッタをのせたイギリス製の車、クーパーがお出迎え。道行く人の目を引いています。これは、渋谷園芸の看板商品・ウィッチフォード社の鉢のユニークな宣伝カー。でも、実際には走っていません。 農家の面影を感じさせる ノスタルジーあふれるショップ もともとは地主・農家で、その広い敷地を生かして店舗をのびやかに展開している渋谷園芸。ショップのシンボルツリーであるケヤキは、オープン当時からここを見守っている100年を超える大木。その傍らに建つ明治元年築という木造の納屋もまた、重鎮の貫録を放っています。この150年ほど経つ建物は現在、売り場兼ギャラリーとして活用され、まだまだ現役として活躍中です。 納屋の中はほの暗く、白い漆喰の壁や太い木の梁が昔の面影をしのばせています。そこに、渋谷園芸が直輸入するイギリス・ウィッチフォード社の鉢を並べて展示。納屋の雰囲気を壊さぬよう、かつて使われていた飾り棚や素朴な台、什器などを利用して、雰囲気よくディスプレイされています。ウィッチフォード社の鉢の扱い数は日本一を誇り、厳選したショップにも卸しています。 ガーデナーのあこがれであるウィッチフォード社の鉢。手づくりならではのぬくもりや深みのあるつややかな色合いが魅力です。どんな植物にもよく合い、品のあるシーンを演出してくれます。 太い梁には、アンティークの照明(商品)やドライフラワーをハンギング。納屋の中は見所たっぷりです。 通常、ウィッチフォード社の鉢がメインのディスプレイになっていますが、時によって季節の催しを祝う演出にすることも。取材した2019年2月は桃の節句にちなんで、45年もののお雛様が、華やかな情緒を放っていました。 こだわりの植物が並ぶ 大樹の下でショッピング 渋谷園芸の理念の一つに、「誠実を第一とし、創意工夫を心掛け、世に必要とされる会社であること」があります。その理念に沿って、来店するすべての園芸家に満足してもらえるよう、小さな草花から樹木に至るまで鮮度はもちろん、種類が豊富であることにこだわっています。 以前ショップの近くに花卉市場があったことから、関係者や生産者との深いつながりを、今もなお大切に維持している渋谷園芸。その強みを生かし、お客様への還元につなげています。「大抵のものが取り寄せ可能です。売り場になければ、ぜひご相談ください!」と店長の伊藤能久さん。店頭販売のほか、リース、ディスプレイ、造園など幅広く事業を展開し、学校での花壇づくりなど、地域にも貢献できるよう努めています。 2階建ての店内も充実 あらゆるものがずらりと揃う 清潔感のある明るい店内には、雑貨や園芸資材、観葉植物、切り花やプリザーブドフラワーなどが美しく並びます。屋外売り場同様、ゆったりとスペースが取られているので、子ども連れでも安心。 吹き抜けで天井が高い売り場。植物にも人にも心地よい、明るく清潔感あふれる空間です。 雑貨売り場も頭上をグリーンが覆い、まるで温室の中にいるような気分に浸れます。 2階は、白い空間に爽やかに映えるインドアグリーンの売り場。コンパクトなものから尺鉢まで勢ぞろい。 インテリアショップのような雰囲気 コンテナ&資材コーナー 2つ目の理念に「生活をより良くするために、商品を企画・提案する能力を培い、高めること」があります。その理念の通り、売り場には普段の生活がもっと潤うよう、随所に楽しい提案を散りばめて展開。特に、一番奥にあるコンテナやアイアン製品、小物類を扱うコーナーでは、インテリアショップにでもいるかのような徹底した雰囲気づくりがなされ、目を楽しませてくれます。 オーナーの思いが詰まった レストラン‘樹藝夢’で本物の良さを味わって 3つの理念の最後が「好奇心、好対応、好感、貢献の4Kを大切にすること」です。園芸売り場に加え、その理念がより強く感じられる場所が、敷地内にあるカフェ&レストラン‘樹藝夢’(じゅげむ)。7年前のショップ移設の際にオープンしたクラシカルなレストランで、イタリアン・フレンチベースのコース料理のほか、気軽なワンプレート、スイーツが楽しめます。 レストランに一歩足を踏み込むと、重厚感のある調度品が至る所に。園芸店とは思えないほどの上質感が漂う異空間は、海外のレストランにでもいるかのような気分です。ここには、お客様に休憩の場を提供するだけではなく、「美のある生活を提案したい」というオーナー、渋谷忠司さんの思いがたっぷり詰まっています。 調度品に飾られた品々は、美術館やギャラリーで見かけるようなものばかり。それらのほとんどがアールヌーボー期の美術品です。これは、芸術に造詣が深いオーナーの渋谷忠司さんが世界各地で見つけたもので、本物が醸し出す優雅な佇まいが、芳しい空間を演出しています。 ウィスキーなどが並ぶボード中央には、20世紀・アールヌーボー期に活躍したドイツの建築家でデザイナーでもあるペーター・ベーレンス作のテーブルライトが。これは、ルードヴィッヒ大帝のために1902年に作られたもの。最上段に並ぶ銅製のケトルが、ドイツにいるような雰囲気を漂わせています。 こちらは、フランスで活躍したガラス工芸家・エミール・ガレ作のライトが3つ下がるコーナー。 作品に描かれたgalléのサインに、テンションが上がります。 カップボードの上には、フランスのオーギュスト・ロダン作の彫刻「バラの帽子の少女」が。 そして隣の飾り棚の中には、同じくフランスで活躍したガラス工芸家・ドーム兄弟のブドウ柄の花瓶などが収められています。 重厚感あふれる室内に軽やかさを与えているのが、壁に飾られたやさしいタッチの水彩画。これは、アートを愛する渋谷さんの趣味の一つ。 専属シェフが作るフレンチ・イタリアンのメニューは、軽食のケーキから本格的コース料理まで、お腹のすき具合に合わせて選べます。どれも色彩豊かに美しく仕上げられており、眺めているだけで、春の花畑にいるような浮き立つ気分に。こだわりのワインと一緒なら、さらにフレイバーな時間を味わうことができます。 前菜やスイーツには、可憐なエディブルフラワーがあしらわれています。食べるのがもったいないほどの愛らしさに、うっとり。エディブルフラワーは、それを専門に扱う横山園芸のもの。 渋谷園芸イチオシのグッズはコレ! ウィッチフォード鉢・ブルーカラー 今までウィッチフォードの塗り鉢は、モスグリーン、オリーブグリーン、ハニーの3つのカラーがありましたが、昨年そこにブルーが加わりました。どんな草花にも上品にマッチし、日本の山野草にもよく合います。 農家ののどかな風情を残しながら、45年もの間、ここで園芸店を営む渋谷園芸。掲げた経営理念にのっとり、随所ににじませた‘ノスタルジック’で‘クラシック’な雰囲気が、人々の好奇心を刺激しつつ、ほっとひと息つける時間を提供しています。ぜひ、楽しいアイデア、本物の美しさが詰まった渋谷園芸の世界を味わいに、訪れてみてください。 パーキングは40台駐車可能。アクセスは西武池袋線・都営有楽町線・都営大江戸線練馬駅より約13分、西武新宿線野方駅より約14分。 【GARDEN DATA】 渋谷園芸 176-0013東京都練馬区豊玉中4-11-22 TEL: 03-3394-8741 URL: http://www.shibuya-engei.co.jp 営業時間:9:00~17:00 定休日:無休(正月を除く) 併せて読みたい ・素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪5 兵庫「みどりの雑貨屋」 ・素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪6 埼玉「フローラ黒田園芸」 ・一年中センスがよい小さな庭をつくろう! 英国で見つけた7つの庭のアイデア Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。 写真協力/渋谷園芸
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原料は紅花のみ! 世界唯一の紅屋が作る「紅」を紅ミュージアムで体験
紅は日本でたった2人の職人が作る究極のナチュラルコスメ! 『キスミーフェルム』や『ヒロインメイク』でおなじみの化粧品会社、伊勢半。そのグループ会社である伊勢半本店の創業は、なんと江戸時代、文政8年(1825年)までさかのぼります。 紅は、黄色の花を咲かせる“紅花”の花びらに、たった1%だけ含まれる赤い色素。何十工程もかけて手作業で、この1%を抽出して完成します。紅花の色素以外、なにも含まない、まさに究極のナチュラルコスメなのです。 こうして作られる紅は、不思議なことに、赤ではなく“玉虫色”の輝きを放ちます。質が高ければ高いほど、この玉虫色が強くなるそう。伊勢半本店の作る『小町紅』も、みごとな玉虫色で、じっと見ていると吸い込まれそうになるほどの美しさ! 紅は江戸時代、金と等価交換されることもあったほど貴重でした。製法は“一子相伝”で、口伝によってのみ、現会長である7代目まで受け継がれてきたのだとか。現在は、秘伝の製法をもとに、日本でたった2人の職人さんにより創業当時と変わらない製法で作られているのです。 玉虫色に輝く紅ができるまで 山形県の最上紅花の花弁を、朝露に濡れた早朝に1枚ずつ丁寧に手摘みするところから、紅づくりはスタートします。紅花が1/3ほど赤くなったら、摘みどき。ガクには棘がたくさんあって痛いので、朝露で棘が湿って柔らかなときに摘むのだとか。そのため、いつも早朝5時くらいから作業を始めるそう。 おちょこは、優秀すぎるコスメ容器だった! この紅餅から紅を取り出すのが、紅屋の仕事。その技は秘伝中の秘伝です。水に紅餅を浸して紅液を作るところから始まり、いくつかの工程を経て、最後は羽二重をかけたセイロに流し入れて濾していきます。すると、ヨーグルトのようにトロトロな状態になった紅が出現。これを、おちょこや小皿の内側に刷毛で塗って売ったのです。 おちょこに塗った赤い紅は、乾燥するとみごとな玉虫色に。しかし、空気や光に触れると、だんだん紅色に戻ってしまいます。そこで、使わないときはおちょこを伏せて光をシャットアウト。おちょこや小皿で売るシステムは、簡単なのに保存度を高めることができる、理にかなった販売方法だったんですね。江戸時代は、紅がなくなると、またおちょこを持って紅屋にいき、紅を塗って購入できるので、エコでもありました。 おちょこ1つで6~7万!? 気になる紅のお値段は… いま伊勢半本店で売られている紅は、有田焼の器を使った「小町紅『手毬』」9,000円や、「小町紅『季ゐろ』」12,000円(いずれも税抜き)など、1万円前後のお値段ですが、江戸時代の価格は、おちょこひとつでいくらぐらいだったと思いますか? 高いものだと6~7万円、安いものだと300円と、かなりの幅があったようです。 しかしプチプラ紅は、やはり発色があまりよくなかったんだとか。プチプラでも優秀な口紅がたくさんある現代に生まれて、ほんとによかった! 3色だけでメイク完了! 江戸時代のお化粧事情とは いまでは、ありとあらゆる色を肌にのせてメイクをする私たちですが、江戸時代のお化粧で使った色は3色のみでした。それが、おしろいの“白”、眉墨とお歯黒の“黒”、そして紅の“赤”の3つ。 紅は、唇にのせるだけでなく、頬紅として、またアイシャドウとして、さらには耳たぶにも塗ったそう。いまもある、“耳たぶにチークを塗って、上気したような血色感を出す”テクニックは、なんと江戸時代から存在していたんですね! また、爪に紅でドットを描いたり、爪の内側を赤く染める使い方もしたそうです。これは、ネイルアートとしての意味だけでなく、魔除けの意味があったのだとか。“悪いものは穴のあいているところから入ってくる”と考えられていたので、魔を祓う色とされてきた紅を塗って、悪いものをシャットアウトしていたんですね。 江戸時代のトレンドはメタリックグリーンの唇!? そんな江戸時代のメイクにも、やはりトレンドがあったそうです。文化・文政期には、下唇にのみ何度も紅を塗り重ねて、玉虫色に光らせる“笹紅”というメイクテクが大流行しました。 玉虫色に輝く紅は、ただでさえ高級品。なのに、緑色に光るまで唇に重ねるには、おちょこ1/3~1/2ほどの紅が必要になり、いまの値段に換算すると、1回数万円くらいはかかった超セレブメイク! もともとは花柳界の遊女や歌舞伎役者などが、贅沢なお化粧をすることでそのステイタスを誇示するために施したお化粧なのですが、1回数万円なんて、リッチな階級の女性しかできませんよね。 そこで笹紅に憧れた庶民は、“ベースに墨を塗り、その上から安い紅を重ねる”という技を生み出しました。これが不思議と、緑色に見えたんですって! いつの時代も女性は、キレイのための努力と創意工夫を惜しまないんですね。いじらしい女心! 江戸時代から変わらない心ときめく色…「紅」を初体験 併設されているサロンでは、誰でも紅を体験できます。日本女性に生まれてきたなら、一度くらいは紅を点(さ)してみたいもの。伊勢半本店本紅事業部の阿部恵美さんに、タッチアップしていただきました。 玉虫色に輝く『小町紅』は、水を含ませた筆でなぞると、一瞬であでやかな赤に変わります。本当に不思議で、本当に美しい! 「その人の肌色を反映するので、同じ紅でも一人ひとり違った赤になるんですよ。オレンジがかったり、ピンクっぽくなったり。だから、とても肌馴染みがいいんです。徳永さんは、とてもキレイに赤が出ますね。せっかくだから、下唇にもう少し重ねてみましょうか」(阿部さん=以下「」内同) 重ねてもらったところ、下唇が光の角度によってチラチラと玉虫色に光りました。なのに、ギラギラせず、とても上品な輝きです。必ずその人に似合う赤に発色してくれるとあって、女性への贈り物に買っていかれる男性もいるそう。 「小町紅は、すぐに乾くのが特徴です。乾いたあとは、カップやマスクにつかないんですよ。なのに、石けんで簡単に落ちてくれます」 つまり、ロングラスティングなのに簡単にオフできる超優秀リップというわけです。取材帰りに、近くのファーストフード店で油たっぷりのフライドポテトを食べましたが、紅が落ちずにしっかり色が残っていたのには驚きました! 便利すぎる! 現代女性にこそ紅がオススメ 携帯用として、小さなコンパクトに紅を刷いてある『板紅』という種類も。化粧ポーチに入れてもかさばらず、PCや資料などでなにかと荷物が重くなりがちな現代女性の味方ともいえるアイテムです。2019年3月1日には、携帯用の紅『板紅』も3種、数量限定で登場しました。 板紅とは、外出時に紅を簡単に持ち運びしやすいよう、薄い形状にした紅のこと。パッケージの唐紙は、「雲母唐長(KIRA KARACHO)」のもの。1624 年に京都で創業し、日本で唯一途絶えずに11代続く唐紙屋「唐長」の唐紙師であるトトアキヒコ氏と千田愛子氏がプロデュースする、唐長を継承し次世代を担うブランドです。 日本で唯一、約400年の歴史を継承する唐紙屋と、約200年の歴史を繋ぐ紅屋「伊勢半本店」の稀なるコラボから生まれた、まさに芸術作品のような小町紅です。 【商品概要】 (手前から時計回りに) 小町紅『板紅』小柄雲鶴、小町紅『板紅』桜草唐草、小町紅『板紅』瓢箪唐草 サイズ:板紅サイズ約6.4×6.4×1.6cm/紅面サイズ約5.0×5.0cm 価格:21,000円(税抜き) 一生を彩る…紅に思いを込めた日本人 古より紅は、“魔を祓う”として、日本人の人生の節目に行われるさまざまな儀礼(初宮参り、七五三、婚礼、還暦など)に使われてきました。 赤ん坊が生まれたときは、“おくるみ”の隅を赤で染めたり、婚礼では、角隠しの裏地に紅絹(もみ)を用いたり。還暦で着るのも、赤いちゃんちゃんこですよね。これらは全部、悪しきものを寄せ付けないための“守りの赤”なのです。 関東にある某神社の結婚式場では、婚礼のとき、支度の仕上げに“花嫁の紅を母親がさす”という儀式があるそう。これは、“結婚したあとずっと幸せに暮らせるように”との祈りを込めたもの。 このように、日本人の一生に寄り添ってきた紅。人生の節目を迎える大切な人へ、贈り物にするのも素敵ですね。 江戸時代より変わらぬ技法で守られ続けている紅。その色は、日本人のDNAにしっかりと刻まれているようで、見れば見るほど、つけてみればつけてみるほど、不思議と心惹かれる色でした。ミュージアムの入館も、紅のタッチアップ体験も無料なので、一度訪れてみてはいかがでしょうか。 ■伊勢半本店紅ミュージアム ○ 所在地:〒107-0062 東京都港区南青山6-6-20 K's南青山ビル1F ○ TEL:03-5467-3735 ○ 開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで) ※ただし、企画展開催中は開館時間に変更が生じる場合があります。 ○ 休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日または振替休日の場合は、翌日休館)、年末年始 ○公式サイト:http://www.isehanhonten.co.jp/museum/ 併せて読みたい ・サボテンにブロッコリー…植物生まれの原料で安心! 潤いも発色も優秀な自然派ルージュ3選[ボタニカル・パワー] ・浮世絵で見る江戸の庶民のガーデニングスタイル 展覧会「江戸の園芸熱-浮世絵に見る庶民の草花愛-」開催中 ・大正ロマン~昭和モダンのファッションとバラ Credit 写真&文/徳永 幸子(とくなが さちこ) 早稲田大学卒業後、美容専門の編集プロダクション「レ・キャトル インターナショナル」でライター・エディターとしてのキャリアをスタート。『non・no』、『MORE』、『LEE』、『ar』 といった女性誌でライティングや、『美レンジャー』、『美的.com』などの美容系webメディアで編集に従事。エイジングケアコスメとチョコレートに目がない44歳。 「Garden Story」LINE@の友だち追加はこちらから!
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鳥取県

花の庭巡りならここ! 全エリアを見渡せる屋根つき回廊が斬新!「とっとり花回廊」
全天候型がうれしい花いっぱいのフラワーパーク 年2回のみ公開の「秘密の花園」も見逃さないで! 「とっとり花回廊」は、50ヘクタールにも及ぶ規模で、大人の足で1時間半ほどの散策が楽しめる、花いっぱいのフラワーパークです。花卉園芸振興の拠点、鳥取県の観光振興の場、県民の憩いのための場として整備されました。園内には420種、約76万4000本の植物が見られます。 直径50mという温室のフラワードームを中心に、園内を一周できる屋根つきの展望回廊がこのフラワーパークの最大の特徴。「水上花壇」「ハーブガーデン」「霧の庭園」「グレイスガーデン」「花の丘」「ヨーロピアンガーデン」「花の谷」など、エリアごとに分けられ、趣向を凝らした花壇やガーデンを最短ルートで結んでいます。 そして、ここだけのお話を。じつは園内mapにも書かれていない「秘密の花園」のエリアがあるんです! それは、ユリが1万球咲く花園と、コスモスの群植を見られる花園で、初夏と秋の年2回のみオープン。ユリは「とっとり花回廊」のメインフラワーで、日本で自生する野生種15種を、すべて保有しています。 「とっとり花回廊」では、園芸教室やカルチャー教室、ガイドツアー、自然観察会、クリスマスローズ展など、年間を通して魅力的なイベントを開催。そのためリピーターも多く、年間の集客数は約35万人にも上ります。実は、2019年は開園からちょうど20周年の節目となることもあり、特別なイベントがさまざまに計画されていますよ! 広大な花畑にショウガーデン、日本最大規模の温室! 花好きさんなら終日過ごしてもまだ飽きないフラワーパーク エントランスを入ってすぐの西館テラス前からの通路では、3月下旬〜ゴールデンウィークにかけて、ショウガーデンが展示されます。毎年テーマに沿った内容で華やかに彩られており、2019年のテーマは「Bloom!」。「とっとり花回廊」の20歳の誕生日を祝して「花開く」を表す言葉をテーマに掲げ、「お祝いの花のケーキ」をイメージして華やかに盛り上げる予定です。 4月中旬〜5月上旬は、「チューリップまつり」が開催され、230種20万球が開花します。中でも、この期間の見どころは、「花の谷(キューケンホフコーナー)」です。ここは、オランダの花の名所として知られる「キューケンホフ公園」の園長が、花壇の配置などをデザインしたエリア。まるで実際にキューケンホフ公園を訪れているような、異国情緒あふれる光景が広がります。実際にオランダから直輸入したチューリップが植栽され、日本ではなかなか見ることのできない珍しい品種も開花していますよ! なだらかな斜面にある「花の丘」は、1万㎡の広さの花畑で、草花を群植して面で魅せる演出が見どころ。写真は春にパンジーで市松模様を描いた風景で、毎年デザインや配色などを変えて植栽されています。植え替えは年に3回行われ、春はパンジー&ビオラとアイスランドポピーが各5万本、夏はブルーサルビアとルドベキアが各5万本、秋はサルビアが10万本植栽されます。 これは、回廊の様子。「とっとり花回廊」の名前の由来となっている、名物の空中回廊です。中心のフラワードームと、周囲にある「南館」、「西館」、「北館」、「ゆりの館」を、屋根つきの回廊で1kmにわたって円形に結びます。フロアは水平に保たれているので歩きやすいユニバーサルデザイン。雨の日はもちろん、暑い夏の日などにもよく利用されます。お気に入りの場所で休憩できるように、ベンチがたくさん置かれていますよ! 写真は、10月頃の「花の丘」の景色で、10万本の赤いサルビアのカーペットが広がります。背景の大山とも相まって、インスタ映えのスポットです。真ん中に見えるのはフラワートレイン。西館前の広場から発着し、15分で園内を一周してガイドしてくれます(大人300円、小・中学生150円)。園内は広いので、まずはフラワートレインを利用し、ゆっくり見物したい場所を決めるのも一案ですね。約1時間かけて、じっくりガイドしてくれるフラワーカート(大人1,000円、小・中学生500円)もあります。 初夏、夏、冬の夜間開園もお楽しみの一つ 冬のウィークエンド&祝日には花火の打ち上げも 「とっとり花回廊」では、「ムーンライトフラワーガーデン」と題し、バラが美しい時期の5月下旬〜6月上旬、夏休みの8月に、日没から21時まで夜間も開園しています。日本を代表する照明デザイナー、石井幹子さんが手がけた、月明かりをイメージした優しい光の演出は必見。 そして、11月中旬〜翌1月中旬は「フラワーイルミネーションin とっとり花回廊」として、140万球のライトを使った中国地方最大級のイルミネーションを披露。週末には、約400発の花火が打ち上げられます。 写真は、園内中央に位置する花回廊のシンボルドーム内。直径50m、高さ21mで、熱帯・亜熱帯の植物、1,000株以上の洋ランなどがコレクションされています。「フラワーイルミネーション in とっとり花回廊」では、このドーム内もシャンデリアでダイナミックに装飾。音と光が連動するショウタイムのスタート時には、点灯体験もできます(平成30年度)。ドーム内の一角では、梨、ミルク、白桃、ブルーベリー味(時期により異なる)のソフトクリームが販売されていますよ! 品揃え充実の園芸ショップ レストランでは地元産の旬の和食に舌鼓を 園内には園芸ショップがあり、花苗、球根類、園芸資材などが多様に揃っています。職員が直接買い付けに行っているため質がよく、珍しい品種も集められているので、花苗の最新トレンドが垣間見えますよ! ガーデニング愛好家なら必ずパトロールしておきたいスポットですね。専門知識のあるスタッフが常駐しているので、初心者さんも、気兼ねなく育て方の質問ができます。 土産物ショップでは、ポプリ、ハーブグッズのほか、花をモチーフにした便箋やしおりなどの雑貨類、地元名産品、土産物グッズなどを販売。オリジナル商品も多数あり、菜の花が入っている佃煮「花しぐれ」が人気です。とっとり花回廊のオリジナルキャラクター、ユリの妖精の「ピロロ」と「ポロロ」のキャラクターグッズも揃えています。 園内にある「レストラン花かいろう」は、「プチリゾート」がコンセプト。窓の向こうには大山が見えます。約110席の規模で、地元の旬の食材を取り揃えた和食メニューが充実。ランチは11:00〜14:30(ラストオーダー)、喫茶は14:30〜16:00(ラストオーダー)。主なメニューは、鳥取県産大山豚使用ロースカツ御膳1,300円、鳥取県産「大地のハーブ鶏」唐揚げ御膳1,080円、南部町産黒毛和牛カレー930円、日南町産そば定食1,080円など。デザートはケーキセットが750円です(2019年2月現在)。 写真は5名以上の団体メニューで、予約が必要な「松花堂」1,650円。季節によって食材の内容が変わり、食べられる花、エディブルフラワーも華やかにあしらわれます。ちょっぴり贅沢なひとときを! Information とっとり花回廊 所在地:鳥取県西伯郡南部町鶴田110 TEL:0859-48-3030 http://www.tottorihanakairou.or.jp/ アクセス:公共交通機関/JR米子駅から無料シャトルバスで25分 車/米子自動車道溝口I.C.より約10分 オープン期間:通年 休園日:4~6・9~11月無休、7・8・12~3月毎週火曜(一部開園あり) 営業時間:9:00~17:00 ※夜間営業時は21:00まで 料金:大人 1,000円、小中学生500円、幼児無料 ※夜間及び冬期は大人700円、小中学生350円 駐車場:2,000台(無料) 併せて読みたい ・花の庭巡りならここ! 3県にわたって敷地が広がる日本一大きな公園「国営木曽三川公園」内「木曽三川公園センター」 ・カメラマンが訪ねた感動の花の庭。スタイリッシュな園芸店 長野・GARDEN SOIL ・編集部厳選・国内名ガーデン案内「神奈川・横浜イングリッシュガーデン」の四季 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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千葉県

花の庭巡りならここ! 花々で彩られるレジャー施設「東京ドイツ村」
花に特化したレジャースポット 斜面を彩る壮大な花畑を見に出かけよう! 2001年にオープンした「東京ドイツ村」は、広さ91万㎡ (東京ドーム19個分)の敷地を持つ観光施設。四季を通して美しい花々で彩られる、花の名所としても知られています。春は菜の花、シバザクラに始まり、晩春にはキンギョソウ、ジギタリス、バラが見頃に。夏はヒマワリ、ペチュニア、バーベナ、もこもこのコキアで彩られ、秋はコスモスと真っ赤に紅葉したコキアが見どころになります。冬は壮大なイルミネーションが登場し、まばゆいばかりの光の演出は感動的です。 広い園内には、フラワースポット以外にも、さまざまなアトラクションやこども動物園、わんちゃんランド、パターゴルフ場などがあります。広くて移動に時間がかかるので、車に乗ったまま入園でき、目的地ごとに駐車場が整備されているのもユニークです。 「東京ドイツ村」はSNSでその魅力が拡散され、外国から訪れる人々は年間100万人にも上ります。飲食店は10店舗が入っており、和食、洋食、パン屋さんなど、食べ歩きも楽しい充実度。ショップではソーセージ、ドイツビール、バウムクーヘンなどドイツ由来の品々のほか、千葉県物産品も多数揃えています。 四季を通して花の絨毯が登場! 壮大な景色を背景に、ぜひ写真に収めよう 「芝桜の丘」では、5万㎡に25万株のシバザクラが植栽されています。見頃は3月下旬〜4月上旬。這うように茎葉を伸ばし、小さな花を株いっぱいにびっしりと咲かせて地面を覆い尽くします。傾斜のある広い敷地を生かした演出は壮観! 春色の絨毯を背景に、ぜひ写真に収めましょう。同じ頃に、菜の花の満開も楽しめます。 5月は、約1万㎡の敷地に3万5000株で彩るキンギョソウが見頃を迎える季節。写真は、パステルピンク、白、黄色の3色を組み合わせてドーム状に仕立て、一面をカラフルに彩った風景。毎年配色を変え、趣向を凝らした花のパレットが登場するので、リピーターも楽しみにしています。同じ時期にジギタリス、バラ、ギガンチウムも見頃に。さらにその先は、ユリへと咲き継がれます。 写真は「東京ドイツ村」の夏の景色。背景の建築スタイルもあいまって、異国情緒たっぷりですね。手入れの行き届いたグリーンの芝生がみずみずしく、縁取るようにヒマワリやバーベナ、ベゴニアなどが彩ります。もこもことしたフォルムが愛らしい、グリーンのコキアの群稙も必見です。芝生の中に入ってくつろぐこともできるので、お弁当やおやつを広げて休憩するのもいいですね(レストランへの飲食物の持ち込みはNG)。 グリーンのコキアが真っ赤に紅葉するのは、9月下旬〜10月中旬。2万株が植栽されており、コキアを目当てにやって来た多くの人々で賑わいます。斜面を生かして植栽され、面を彩る見せ方をしているので、とても写真映えがしますよ! 同じ時期に、ガーデンマムも見頃を迎えます。 「四季の丘」では、5,680㎡に300万本のコスモスが植栽されています。「秋桜」の別名の通り、秋を彩る代表的な花です。草丈1mほどのたおやかな花が秋風にゆらゆらと揺れる様子は、大変優美。花畑の中に整備された小道をゆっくり散策して、ピンクや白、赤紫、オレンジや黄色に彩られた景色を楽しみましょう! 冬はイルミネーションで幻想的に演出! 収穫体験は子どもと一緒に参加すると楽しい 11月〜3月は、ウィンターイルミネーションのイベントが開催されます。音楽に合わせてイルミネーションが変化する「光と音のショー」、全長70mにも及ぶ「虹のトンネル」、壮大なスケールの「3Dイルミネーション」は圧巻の一言。関東最大級の規模で、外国から訪れる人々からの人気も高いイベントです。 「東京ドイツ村」では、ここで育った野菜や果物の収穫体験も行っています。春はタケノコ、初夏はジャガイモ、秋はラッカセイ、サツマイモ、秋から冬にかけてはミカン狩りが楽しめて、料金はそれぞれに異なります。写真は、7〜8月以外ならいつでも楽しめるしいたけ狩り。子ども向けの食育に利用してもよさそうですね。 ドッグランのある「わんちゃんらんど」で犬と遊ぼう! 動物と触れ合える「こども動物園」も人気 写真は、敷地内にある「わんちゃんランド」。全面芝生の広大なドッグランがあり、夏期限定で「ドッグプール」が開放されます。利用料は1日800円、当日に限り再入場可能です。「わんちゃんランド」以外でのペット連れは不可となっているため、ほかのアトラクションを楽しみたい方に向けて、一時預かり(500円)も行っています。また「わんちゃんランド」には14匹がいて、ふれあい(500円)&レンタル(15分500円)も。都会でペットを飼えない方々の利用が多く、散歩体験が大好評です。 園内には「こども動物園」があり、動物との触れ合いや餌やり体験ができるので、子ども連れで訪れる方に人気です。モルモット、ヤギ、ヒツジ、リス、マーラなどが待っています。写真は、「東京ドイツ村」のマスコットキャラクター、マイクロミニブタです。スマイルが愛らしいですね! 「東京ドイツ村」内には、飲食店が10店舗入っているので、リピートして全制覇するのもアリ。写真は「レストラン・カフェテリア」の店舗で、バーベキューが楽しめるのがセールスポイントです。ドイツのソーセージ、「ミュンヘナーヴァイスヴルスト」1,290円、「オーバークライナー」1,290円は、ぜひ味わっておきたいもの。もちろんドイツ産生ビールや瓶ビールも充実していますよ! Information 東京ドイツ村 所在地:千葉県袖ケ浦市永吉419 TEL:0438-60-5511 http://t-doitsumura.co.jp/ アクセス:館山自動車道「姉崎袖ヶ浦IC」より約3km(約5分) オープン期間:通年 休園日:なし 営業時間:9:30~17:00(最終入園16:00) ※季節により変動あり 料金:大人800円、小人(4歳~小学生)400円 駐車場:約3,000台(1台1,000円) ※季節により変動あり 併せて読みたい ・花の庭巡りならここ! 体験教室のプラン充実の観光ガーデン「田沢湖ハーブガーデン『ハートハーブ』」 ・花の庭巡りならここ! 世界一の藤棚が見られると海外からの呼び声が高い「あしかがフラワーパーク」 ・カメラマンが訪ねた感動の花の庭。イギリス以上にイギリスを感じる庭 山梨・神谷邸 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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シンガポール

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイとシンガポール植物園でランを巡る旅
国花のランを使った、「シンガポール植物園」のランのガーデン シンガポールは通年、一日の気温が25〜30℃程度と、熱帯植物が育つにはうってつけの気候。そんなシンガポールだけに、「国花」もやはり、熱帯植物のランです。 シンガポールの国花はバンダという種類のランですが、その中でも特に、‘ミス・ジョアキム’という品種が国の花として定められています。この‘ミス・ジョアキム’は、19世紀の末にシンガポールで作出された品種。作り出したのは、品種名にその名を残すアグネス・ジョアキムという女性です。 ヴァンダ・テレスとヴァンダ・フーケリアナの2つの種類を交配してつくられた‘ミス・ジョアキム’は、両親の性質を受け継いだ、濃淡のピンクの花色が美しい品種。栽培に適した環境では草丈2mにも及ぶ大株になり、旺盛に花を咲かせます。また、‘ミス・ジョアキム’は、単にシンガポールで生まれただけでなく、シンガポールから初めて品種登録されたラン。歴史的な花でもあります。 ユネスコ世界遺産にも登録されている「シンガポール植物園」には、有料エリアであるナショナル・オーキッド・ガーデンの一角に‘ミス・ジョアキム’をフィーチャーしたコーナーを設けているほか、無料エリアにも「バンダ・ミスジョアキム・ガーデン」がつくられています。 「バンダ・ミスジョアキム・ガーデン」は、ヨーロッパの整形式庭園を思わせる整然とした植栽をされていて、周囲の斜面に植えられているのも、その多くがラン。日本国内ではバスケット仕立てや着生仕立てにして育てることが多いヴァンダの仲間ですが、ここでは2m近い草丈の‘ミス・ジョアキム’が地植えにされており、ほかではなかなかお目にかかることができないランのガーデンになっています。 ※ヴァンダ・テレス(Vanda teres)、ヴァンダ・フーケリアナ(Vanda hookeriana)は現在はパピリオナンテ属(papilionanthe)に分類が変わっています。 ‘ミス・ジョアキム’も正しくは「パピリオナンテ・‘ミス・ジョアキム’」ですが、現在でも「バンダ‘ミス・ジョアキム’」として親しまれています。 今でもランの品種改良の取り組みは、国を挙げて行われており、ボタニックガーデンの一角にあるボタニーセンターには、ランの交配や繁殖を行う研究所が置かれています。ここでは日々、新しい魅力的なランの作出を目指して研究が続いていますが、その様子を見学することもできます。 「ナショナル・オーキッド・ガーデン」も必見! これだけランとの深いゆかりを持つシンガポールの植物園だけに、ランを集めた「ナショナル・オーキッド・ガーデン」もあり、こちらも見逃せません。園内の各所にはその時期に咲いている種類のポットが配置されているだけでなく、樹木やオブジェに着生させたものもあり、ほかの熱帯植物に囲まれ、自然な姿で咲いている景色を見ることができます。 日本では、ランを育てる場合には一鉢に一株だけを植えたり、あるいはランばかりをたくさん並べてディスプレイとして使ったりするのを目にすることが多いはず。しかしこのガーデンでは、ほかの植物と調和するように、ランが使われている姿を楽しむことができます。 また、株姿や草丈に合わせて、ガーデン草花のような使い方をしているコーナーもあるのは、さすが南国ならではの使いこなし方といえそうです。運よく訪れる時期が合えば、ランがプルメリアなどのほかの花と咲き競っているのを目にすることもできます。 花盛りのオーキッド・ガーデンでひときわ目を引くのは、色とりどりのバンダの仲間。お気に入りのバンダを探すもよし、‘ミス・ジョアキム’以来、ここまでバリエーションを増やしてきた歴史に思いをはせるもよし。百花繚乱のバンダを楽しんでみてはいかが? 人気の「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」にもランがいっぱい! シンガポールのベイエリアに2012年にオープンした植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」。園内に建てられた樹木のようなオブジェ「スーパーツリー」はたびたびメディアで紹介されているので、見かけたことがあるという方も多いのでは? このガーデン・バイ・ザ・ベイでは、あちこちでランの花を見ることができますが、なんといっても注目は「クラウド・フォレスト」。 「クラウド・フォレスト」は、いわば大型のガラス温室です。 その内部には高さ30mにも及ぶ人工の小山がつくられており、山の各所からは滝が落ちているというダイナミックなもの。温室内部はミストやファンで湿度や通風がコントロールされており、標高0〜2000mまでの熱帯植物が育てられています。また、山の周囲には空中回廊が巡らされており、山の内部からだけでなく外からも植物を観察できるようになっています。 この山の外壁には、アンスリウムやフィロデンドロンなどのサトイモ科の観葉植物やネペンテスなどの食虫植物、ブロメリア科の植物、ベゴニアやシダなどが着生させてあり、もちろんランもあります。 「クラウド・フォレスト」の壁面に植えられた植物は、花壇のように簡単に株の入れ替えができないので、一般的な栽培品のように常に万全の状態で開花しているわけではありません。しかし、ほかの植物と混ざり合って育ちながら、けなげに花を咲かせる姿は、ランもまた本来は野山に咲く花なのだということを思い出させてくれます。 また、温室内ではランの特設展示を行うコーナーが設けられています。展示はシーズンごとに切り替わるので、訪れる度に違うランと出合うことができます。写真は2019年の初めに行われた展示、「Orchids of Andes(アンデス山脈のラン)」のもの。 こうして「クラウド・フォレスト」の植物を見て回った後は、出口に通じる地下の通路に向かいます。 すると、最後に姿を見せるのが、「シークレットガーデン」です。「シークレットガーデン」は熱帯雨林の林床をイメージしてつくられた、石灰岩が立ち並ぶ屋内庭園。ひんやりとした風がゆっくりと流れ、熱帯高地の雨林に迷い込んだかのような空間が広がります。 このガーデンにも、こうした環境に自生するシダやベゴニアなどとともに、ランが展示されています。その多くはミニチュア・オーキッドと呼ばれる、レパンテスやプレウロタリス、スカフォセパルムなどの小型のラン。いずれも花の直径が数cm、ものによっては1cm未満という極小の花を咲かせるものばかり。 でも、ご心配なく。花のそばにルーペを添えて展示してあるので、小さな花の細部までじっくり観察することができるようになっています。 ランで巡る、シンガポール植物園とガーデンズ・バイ・ザ・ベイ、いかがでしたか? ここでご紹介したのは、あくまでも2019年1月に訪れたときの様子。時期によっては異なる種類の花を楽しむことができるはず。シンガポールを訪れた際には、ぜひランを楽しんでみてください。



















