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カメラマンが訪ねた感動の花の庭。栃木県那須町「コピスガーデン」

カメラマンが訪ねた感動の花の庭。栃木県那須町「コピスガーデン」

これまで長年、素敵な庭があると聞けばカメラを抱えて、北へ南へ出向いてきたカメラマンの今井秀治さん。カメラを向ける対象は、公共の庭から個人の庭、珍しい植物まで、全国各地でさまざまな感動の一瞬を捉えてきました。そんな今井カメラマンがお届けするガーデン訪問記。第16回は、那須市で宿根草やバラ苗なども取り扱うガーデンショップの「コピスガーデン」。5月末のバラの最盛期に撮影した、フランスのナーセリー、「ギヨー」社(GUILLOT)の美しいバラの写真などとともに、撮影秘話をご紹介します。

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クリスマスローズも多数扱うナーセリー

コピスガーデン
紅葉の木々も素敵な「コピスガーデン」。

今回ご紹介する庭は、栃木県那須町にあるガーデンショップ「コピスガーデン」です。この庭に初めて行ったのは2015年の2月。この時は、バラが目的ではなく、クリスマスローズの取材でのことでした。「コピスガーデン」の母体は、宿根草や球根、クリスマスローズのナーセリーとしても有名な「大森プランツ」です。クリスマスローズが大好きな僕にとっては、大森プランツといえば、堀切園の樋口規夫さんの「ウィンターシンフォニー」というくらいクリスマスローズの印象が強い会社で、この時の取材もクリスマスローズのイベントに合わせて樋口さんの撮影をするのが目的でした。

クリスマスローズ ウィンターシンフォニーシリーズ
栃木県にあるナーセリー「コピスガーデン」の冬に咲く「ウィンターシンフォニー」のクリスマスローズ(写真/大森プランツ)。

フレンチローズが咲くバラ園の一つ

バラ‘プリ・P.J.ルドゥーテ’
「ギヨー」社のバラの中でも人気が高い‘プリP.J.ルドゥーテ’。

取材が終わって、お世話になった当時の担当だった鈴木さんにご挨拶をした時、「5月末のバラもきれいですから、一度お越しください」とお誘いを受けました。「大森プランツ」でフランスのバラナーセリーである「ギヨー」社などのバラも扱い始めたことは知っていましたし、僕の重要な仕事である『ローズカレンダー』用に、フレンチローズを撮影できるバラ園を探していたこともあり、「5月末、コピスガーデン、ギヨーのバラ」と頭の中にインプットして帰路につきました。

撮影は5月末の15時にスタート

ギヨー社のバラ ‘エリアーヌ・ジレ’
「ギヨー」社のバラ ‘エリアーヌ・ジレ’。赤いつぼみが開くと現れる幾重も花弁が重なる白花が優雅。

毎年5月末になると、新潟にある「国営越後丘陵公園」のバラの撮影が恒例になっていて、この年も29日に新潟に行き、夕方のバラ園を撮影し、一泊して翌日の早朝のバラ園の撮影を済ませて、お昼から「コピスガーデン」へと向かうことにしました。「コピスガーデン」までの道のりは、日本海側を北陸自動車道を北上して、磐越自動車道に乗り、会津を抜けて東北自動車道を少し南に走るという、総距離約260km、3時間ほどのドライブです。当日は天気も良くて快適なドライブで、15時過ぎに「コピスガーデン」に予定通りに到着。前述の鈴木さんにご挨拶をして、すぐにバラ園へ向かいました。

個性的で主張するバラの魅力をカメラに収める

ネペタ‘シックスヒルズ・ジャイアント’が咲く道
ネペタ‘シックスヒルズジャイアント’の紫花の間に無数の花を咲かせるバラ風景。

高い木々に囲まれたショップの建物の間を抜けて、階段を数段下りて道なりに右に進んでいくと、目の前に突然バラの庭が現れました。そこには、さっきまで新潟の越後丘陵公園で見ていたバラとは違う、いつも見慣れているオールドローズとも全然違うバラが。それは、色の強さも形も、咲き方もそれぞれのバラ一本一本が主張し合っているように感じさせる「ギヨー」社のバラが見事に咲いていました。バラの間にはネペタやラムズイヤーの宿根草も自由に咲いていて、大げさに表現するなら「見たこともない美しい世界が広がっていた!」のです。

 ギヨー社のバラ ‘アンスティチュ・ルミエール’
「ギヨー」社のバラ ‘アンスティチュ・ルミエール’。上品な香りもある。

カメラを担いでワクワクした気分でバラの庭をぐるりと下見をしながら、何周も歩き、バラを眺めながら品種名を覚えたりもして、光が良くなった17時から撮影を開始しました。今回初めて見る「ギヨー」社のバラも多数あって、ファインダーの中のバラを見ては「個性的なバラが多いな」と改めて思ったりしながら、独特な「ギヨー」社のバラの魅力をとらえようと、その日も陽が沈むまで撮影しました。

翌年のバラの最盛期も再び訪れる

コピスガーデン

翌年の2016年の5月は撮影が立て込んでいて、「コピスガーデン」の様子も気になっていたものの、結局行くことができずにいました。しかし6月上旬のある日、当時、ガーデニング雑誌『BISES』の副編集長だった倉重さんから「今『コピスガーデン』のバラが丁度きれいと聞いたので、撮影をお願いできませんか?」と電話が入りました。『BISES』は花の撮影を始めた頃から憧れの雑誌で、花や庭の撮影のきっかけを作ってくれた媒体なので、断るなんてことはできません。

コピスガーデン

天気予報を見ると那須の天気は翌日の午前中だけ晴れで、その後はずっと雨マーク。ピークのバラ園に長雨が降ったらバラは終わってしまうし、翌日は午後から別の撮影が入っています。ということは……。暗い内に家を出て、早朝に「コピスガーデン」に到着したら2時間も撮影して帰れば可能だと判断。倉重さんには「大丈夫です!」と返事をして後は翌朝の天気を祈るだけでした。幸い、翌日の「コピスガーデン」は朝から晴天! 美しいバラの庭を前にして『BISES』に載せる写真を撮るぞッと、いつもより高揚した気分で撮影を進め、日が高くなってきた8時過ぎには撮影を終了しました。

ガーデニング雑誌と写真展で注目された一枚

ハークネス作出のバラ‘カリオペ’
このバラはイギリスの「ハークネス」社作出の‘カリオペ’。美しいグラビア印刷のガーデニング雑誌で大きく取り上げられた思い出深い一枚。

この時の写真は、自分でも納得の写真で、『BISES』掲載の後、東京・六本木の「FUJIFILM SQUARE」で開催された写真展「バラ大国 日本 輝くバラたちの庭」にも大きく引き伸ばされて展示された、僕にとっても記念すべき一枚になりました。

デビッド・オースチンのバラ ‘ムンステッド・ウッド’
イギリス、「デビッド・オースチン・ロージズ」社のバラ ‘ムンステッド・ウッド’。

その翌年からは、「コピスガーデン」の皆さんもガーデニング雑誌に掲載された写真を見て喜んでくれたことがきっかけとなって、何度も写真講座を企画してくれたりと、良いお付き合いをさせていただいています。美しいバラやクリスマスローズの咲く「コピスガーデン」。マイフェイバリットなお庭の一つです。

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