素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪7 東京「渋谷園芸」
一口に園芸店といっても、今やさまざまなスタイルのショップがあります。それぞれのショップの個性が色濃く反映されたこだわりの空間は、私たちのイマジネーションを刺激し、ガーデニングのセンスを磨ける最高の場所。今回は、数本のケヤキの大木が作る、街の中の緑のオアシス「渋谷園芸」を訪ねました。
目次
ガーデニングライフに、‘アイデア’と‘美しさ’を提案するショップ
住宅街の中に広がる、緑したたる渋谷園芸。夏には、敷地内に点在するケヤキの大木が心地よい緑陰を落とします。渋谷園芸がオープンしたのは約43年前。そして今から7年前に隣の敷地からこの場所に移設し、現在に至っています。
街道沿いの店頭には、大きなテラコッタをのせたイギリス製の車、クーパーがお出迎え。道行く人の目を引いています。これは、渋谷園芸の看板商品・ウィッチフォード社の鉢のユニークな宣伝カー。でも、実際には走っていません。
農家の面影を感じさせる
ノスタルジーあふれるショップ
もともとは地主・農家で、その広い敷地を生かして店舗をのびやかに展開している渋谷園芸。ショップのシンボルツリーであるケヤキは、オープン当時からここを見守っている100年を超える大木。その傍らに建つ明治元年築という木造の納屋もまた、重鎮の貫録を放っています。この150年ほど経つ建物は現在、売り場兼ギャラリーとして活用され、まだまだ現役として活躍中です。
納屋の中はほの暗く、白い漆喰の壁や太い木の梁が昔の面影をしのばせています。そこに、渋谷園芸が直輸入するイギリス・ウィッチフォード社の鉢を並べて展示。納屋の雰囲気を壊さぬよう、かつて使われていた飾り棚や素朴な台、什器などを利用して、雰囲気よくディスプレイされています。ウィッチフォード社の鉢の扱い数は日本一を誇り、厳選したショップにも卸しています。
ガーデナーのあこがれであるウィッチフォード社の鉢。手づくりならではのぬくもりや深みのあるつややかな色合いが魅力です。どんな植物にもよく合い、品のあるシーンを演出してくれます。
太い梁には、アンティークの照明(商品)やドライフラワーをハンギング。納屋の中は見所たっぷりです。
通常、ウィッチフォード社の鉢がメインのディスプレイになっていますが、時によって季節の催しを祝う演出にすることも。取材した2019年2月は桃の節句にちなんで、45年もののお雛様が、華やかな情緒を放っていました。
こだわりの植物が並ぶ
大樹の下でショッピング
渋谷園芸の理念の一つに、「誠実を第一とし、創意工夫を心掛け、世に必要とされる会社であること」があります。その理念に沿って、来店するすべての園芸家に満足してもらえるよう、小さな草花から樹木に至るまで鮮度はもちろん、種類が豊富であることにこだわっています。
以前ショップの近くに花卉市場があったことから、関係者や生産者との深いつながりを、今もなお大切に維持している渋谷園芸。その強みを生かし、お客様への還元につなげています。「大抵のものが取り寄せ可能です。売り場になければ、ぜひご相談ください!」と店長の伊藤能久さん。店頭販売のほか、リース、ディスプレイ、造園など幅広く事業を展開し、学校での花壇づくりなど、地域にも貢献できるよう努めています。
2階建ての店内も充実
あらゆるものがずらりと揃う
清潔感のある明るい店内には、雑貨や園芸資材、観葉植物、切り花やプリザーブドフラワーなどが美しく並びます。屋外売り場同様、ゆったりとスペースが取られているので、子ども連れでも安心。
吹き抜けで天井が高い売り場。植物にも人にも心地よい、明るく清潔感あふれる空間です。
雑貨売り場も頭上をグリーンが覆い、まるで温室の中にいるような気分に浸れます。
2階は、白い空間に爽やかに映えるインドアグリーンの売り場。コンパクトなものから尺鉢まで勢ぞろい。
インテリアショップのような雰囲気
コンテナ&資材コーナー
2つ目の理念に「生活をより良くするために、商品を企画・提案する能力を培い、高めること」があります。その理念の通り、売り場には普段の生活がもっと潤うよう、随所に楽しい提案を散りばめて展開。特に、一番奥にあるコンテナやアイアン製品、小物類を扱うコーナーでは、インテリアショップにでもいるかのような徹底した雰囲気づくりがなされ、目を楽しませてくれます。
オーナーの思いが詰まった
レストラン‘樹藝夢’で本物の良さを味わって
3つの理念の最後が「好奇心、好対応、好感、貢献の4Kを大切にすること」です。園芸売り場に加え、その理念がより強く感じられる場所が、敷地内にあるカフェ&レストラン‘樹藝夢’(じゅげむ)。7年前のショップ移設の際にオープンしたクラシカルなレストランで、イタリアン・フレンチベースのコース料理のほか、気軽なワンプレート、スイーツが楽しめます。
レストランに一歩足を踏み込むと、重厚感のある調度品が至る所に。園芸店とは思えないほどの上質感が漂う異空間は、海外のレストランにでもいるかのような気分です。ここには、お客様に休憩の場を提供するだけではなく、「美のある生活を提案したい」というオーナー、渋谷忠司さんの思いがたっぷり詰まっています。
調度品に飾られた品々は、美術館やギャラリーで見かけるようなものばかり。それらのほとんどがアールヌーボー期の美術品です。これは、芸術に造詣が深いオーナーの渋谷忠司さんが世界各地で見つけたもので、本物が醸し出す優雅な佇まいが、芳しい空間を演出しています。
ウィスキーなどが並ぶボード中央には、20世紀・アールヌーボー期に活躍したドイツの建築家でデザイナーでもあるペーター・ベーレンス作のテーブルライトが。これは、ルードヴィッヒ大帝のために1902年に作られたもの。最上段に並ぶ銅製のケトルが、ドイツにいるような雰囲気を漂わせています。
こちらは、フランスで活躍したガラス工芸家・エミール・ガレ作のライトが3つ下がるコーナー。
作品に描かれたgalléのサインに、テンションが上がります。
カップボードの上には、フランスのオーギュスト・ロダン作の彫刻「バラの帽子の少女」が。
そして隣の飾り棚の中には、同じくフランスで活躍したガラス工芸家・ドーム兄弟のブドウ柄の花瓶などが収められています。
重厚感あふれる室内に軽やかさを与えているのが、壁に飾られたやさしいタッチの水彩画。これは、アートを愛する渋谷さんの趣味の一つ。
専属シェフが作るフレンチ・イタリアンのメニューは、軽食のケーキから本格的コース料理まで、お腹のすき具合に合わせて選べます。どれも色彩豊かに美しく仕上げられており、眺めているだけで、春の花畑にいるような浮き立つ気分に。こだわりのワインと一緒なら、さらにフレイバーな時間を味わうことができます。
前菜やスイーツには、可憐なエディブルフラワーがあしらわれています。食べるのがもったいないほどの愛らしさに、うっとり。エディブルフラワーは、それを専門に扱う横山園芸のもの。
渋谷園芸イチオシのグッズはコレ!
ウィッチフォード鉢・ブルーカラー
今までウィッチフォードの塗り鉢は、モスグリーン、オリーブグリーン、ハニーの3つのカラーがありましたが、昨年そこにブルーが加わりました。どんな草花にも上品にマッチし、日本の山野草にもよく合います。
農家ののどかな風情を残しながら、45年もの間、ここで園芸店を営む渋谷園芸。掲げた経営理念にのっとり、随所ににじませた‘ノスタルジック’で‘クラシック’な雰囲気が、人々の好奇心を刺激しつつ、ほっとひと息つける時間を提供しています。ぜひ、楽しいアイデア、本物の美しさが詰まった渋谷園芸の世界を味わいに、訪れてみてください。
パーキングは40台駐車可能。アクセスは西武池袋線・都営有楽町線・都営大江戸線練馬駅より約13分、西武新宿線野方駅より約14分。
【GARDEN DATA】
渋谷園芸
176-0013東京都練馬区豊玉中4-11-22
TEL: 03-3394-8741
URL: http://www.shibuya-engei.co.jp
営業時間:9:00~17:00
定休日:無休(正月を除く)
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Credit
写真&文/井上園子
ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
写真協力/渋谷園芸
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