冬こそ身近なトロピカル・リゾート「植物園の温室」に行こう!
庭仕事が億劫になりがちな寒い冬の間も、暖かな場所で植物を楽しめる穴場スポットが「植物園の温室」。トロピカルな印象の熱帯植物やランなど、温室内には冬に見頃を迎える植物もたくさんあります。神奈川県で25年間ガーデニングを楽しみ、都市緑化植物園で相談員も務めるベテランガーデナー、遠藤昭さんに、冬から早春に見ておきたいオススメの温室プランツを教えていただきました。
目次
寒い冬にこそオススメしたい
さまざまな植物に出合える温室巡り
寒い冬は、寒風の中での庭仕事も辛いし、外も冬枯れの景色で、あまり庭には出たくないのが本音。
そんな時期にこそオススメしたいのが、全国にある植物園の温室巡りだ。日本には植物園と名のつく施設、あるいは準ずる施設は300以上存在する。「日本の植物園」で検索するとヒットするはずだ。
植物園は、春の草花のシーズンやバラの季節は賑やかだが、寒い冬は閑散としているところが多い。冬の植物園は、身近にありながら意外と忘れられている存在だ。しかし、外は寒くても植物園の温室はトロピカル・リゾート。来園者が少ない冬に訪れると、ノンビリと植物観察をしたり、ゆっくりと「インスタ映え」する写真を撮ることができるので、この時期の温室は、トロピカル・リゾートとしてイチ押しだ。皆さんの住んでいる地域にも、きっと温室リゾートがあるはずだ。
温室リゾートの見どころプランツ
僕は現在、「川崎市緑化センター」という都市緑化植物園で、緑の相談員という仕事をしている。入場料無料の比較的小さな植物園だが、それでも温室にはさまざまなトロピカルからセミトロピカルの植物や多肉植物、チランジア(エアプランツ)、ランなどが所狭しと置かれ、日々、新しい発見がある。
今回は、「川崎市緑化センター」の温室で、冬に見頃を迎える注目の植物をご紹介したい。これから登場する植物は、きっと皆さんの地域の植物園にもあると思うので、ぜひ実際にお近くの植物園の温室を訪れ、それぞれの姿を楽しんでほしい。
神秘的な色合いのヒスイカズラ
まずは、2〜3月の見所から。どこの植物園でも人気なのが絶滅危惧種に指定されているヒスイカズラである。その神秘的なヒスイ色の花は人々を魅了し、開花時期には大勢の人が詰めかける。つぼみの成長を観察するのも興味深い。
バニラエッセンスの原料となるバニラ
次に注目したいのは、バニラである。アイスクリームなどに使われるバニラの香りは、この植物の果実を発酵させて作るらしい。
このつぼみたちがどんな花を見せてくれるのか、楽しみに半月待ったら、2月中旬に初めて開花した! ランに似ているとは図鑑などで知ってはいたが、本当にランのような花を間近に見ることができて嬉しかった。香りはない。この後、バニラビーンズを発酵させたら香るらしい。このあと、果実はなるだろうか。ちなみに、1日花だというが、3日間咲いていた。
トロピカルな観葉植物の花々
日本で観葉植物が流行ったのは、住宅の暖房設備が普及した昭和時代だったと思う。その頃に流行したゴムの木とかサンセベリア、アナナス類など主だった植物は、ほぼ揃っているが、やはり花が咲くとトロピカルムードを醸し出す。
懐かしいエクメア・ファッシアータ。ピンクの苞は、長く美しさを保つ。
多様な葉を持つ観葉植物のクロトンには、ミモザを思わせる花が咲く。
定番のアンスリウムの仏炎苞はつやつやだ。
ストレプトカーパスの青い花。
「川崎市緑化センター」には、超巨大なビカクシダ(コウモリラン)が3株もある。葉の裏には胞子が付いている。ぜひ実物を見て確認してほしい。
そして、こちらも定番のストレリチア。花は鞘の中から扇が広がるように次々と出てくる。
自慢のオージープランツたち
「川崎市緑化センター」で、ちょっと自慢なのが、僕の得意のオージープランツたち。春先は、オージープランツが一斉に花を咲かせる季節で、2月以降が見頃だ。ほとんどが、この6年間に我が家から苗を寄付したものだが、温室という環境の中で、我が家にいた時よりも立派に育っているものも多い。
ブルーハイビスカスも1月中旬に咲き始めた。シルクのような光沢のある花弁が魅力的。
白銀の葉に淡いパープルの花を咲かせるエレモフィラ・ニベアは雨に弱いが、温室は雨が避けられるのでよく育つ。
ハーデンベルギアもすっかり増えた。
「川崎市緑化センター」では、挿し木にしたハーデンベルギアの苗も格安で販売している。
そして最近、人気のグレビレアも数種がまもなく開花。ちょうど、‘ムーンライト’がつぼみを持ち始めた。
グレビレア‘ムーンライト’は、開花するとこんなブラシのような姿が見られる。
ビニールポットに植えた一昨年の挿し木苗も、次々とつぼみを持ち、近々販売コーナーに登場する予定だ。
そして、温室の外ではそろそろオーストラリアの代表的な花木であるミモザ・アカシアも開花する。
まだまだ魅力的なオージープランツは紹介しきれないが、今回はこのあたりにしておこう。
人気の多肉植物&チランジア
前回ご紹介した、100年に一度咲くアガベ・ベネズエラが話題になった多肉コーナーも、この数年でずいぶん強化された。
多肉コーナーでは、僕が作った多肉の額やリースも展示中。
多肉植物と並んで人気の植物は、チランジア。多種展示中。
温室の春の華・ラン
そして最後に、温室の春といえば、ランですね。ラン温室では、カトレアや、胡蝶蘭、オンシジウム、デンファレなどが咲き始めている。美しい花を咲かせているランの写真を、一部ご紹介しよう。
今回ご紹介したのは、温室リゾートの植物の一例だが、きっと皆さんのお住まいの近隣の植物園にも温室があり、それぞれに特色のある植物たちでトロピカル・リゾートがつくられていることと思う。
ぜひ、お近くの植物園の温室で、寒い冬に、暖かい南の島のリゾート気分を味わってはいかがだろうか?
川崎市緑化センター
川崎市多摩区宿河原6-14-1
044-911-2177
http://www.iei-kouen.jp/kawasakishiryokuka/
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Credit
写真&文/遠藤 昭
「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー。
30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)。
ブログ「Alex’s Garden Party」http://blog.livedoor.jp/alexgarden/
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