素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪4 大阪「Kanekyu金久」
一口に園芸店といっても、今やさまざまなスタイルのショップがあります。それぞれのショップの個性が色濃く反映されたこだわりの空間は、私たちのイマジネーションを刺激し、ガーデニングのセンスを磨ける最高の場所。今回は、全国から仕入れた豊富な植物揃えと品質維持にこだわった園芸ショップ「Kanekyu金久」を訪ねました。
目次
寄せ植え好きにはたまらないショップ「Kanekyu金久」
店頭にずらりと並ぶたくさんの花々が、広い通りで目を引くショップ「Kanekyu金久」。春には外壁を覆うつるバラ‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’の美しい花が、華やかに出迎えてくれます。この店の開店時間は、園芸店には早い午前9時。オープンと同時に次々とお客様が訪れています。
お客様を飽きさせない
工夫を凝らしたショップづくり
「Kanekyu金久」は、かつて主に盆栽や山野草を扱う店でしたが、オーナーである父から経営を任された神藤直行さんが、草花や雑貨まで幅広く扱うガーデニングショップとして、今から20年ほど前にリニューアル。以前からあった売り場にショップの建物を加え、それをぐるりと囲むように回遊式の売り場を設けました。
何台もある花苗台の中央には、オススメの草花を植えた大鉢や寄せ植えをディスプレイ。その下にはポット苗がきれいに並んでいます。また、ハンギングバスケットや雑貨類を飾ったアーチやウォールで空間を区切り、小部屋が次々に現れるような構成に。決して広くはないスペースですが、パーゴラやアーチ、花台を巧みに使った立体感のある演出が、ショップ奥への見通しを阻み、新たに広がる売り場への期待感をいっそう高めています。そのめくるめく展開は、まるでアミューズメントパークのようです。
最近人気のさまざまなビカクシダやカラーリーフに囲まれたコーナーは、植物園の温室にいるような気分になります。
常に植物にとってベストな場所を選んでディスプレイ。パーゴラの桟にかけたスパニッシュモスが、奥のエリアを隠すスクリーンの役目を担っています。
苗の状態はピカいち!
スタッフ全員で行う徹底した管理
売り場に所狭しと並ぶ花苗は、どれも非常に状態がよい印象。「植物は元気なものをもちろん仕入れていますが、入荷後の管理も徹底しています」とオーナーの神藤さん。蒸れやすい植物は、トレイにひとマスずつ飛ばして並べて風通しを確保するほか、少しでも状態が悪くなれば店の奥で養生するなど、常に苗の状態に目を光らせて、こまめなチェックを行っています。また、販売後にお客様のところで100点満点になるよう、生産者と出荷のタイミングを図ったり、鉢やポットに土増しや施肥をして苗のクオリティを上げる努力も。仕入れ数も徹底管理し、最良の状態の植物を提供することに力を注いでいるのです。
日本中の生産者を回って仕入れた
こだわりの植物がずらりと並ぶ
注目している植物が旬を迎える少し前になると、全国どこでも生産者の所に直接足を運び、市場からはもちろんのこと、育種家や生産者からも苗を仕入れている神藤さん。ほかでは見られないような花も並びます。展示会などにも頻繁に顔を出すよう努め、信頼関係を築いていることで、生産者が特別自信を持って勧める希少な株を入手できるのです。
特に神藤さんが力を入れている植物の一つがクリスマスローズ。年内から全国を駆け回り、国内で屈指の育種家に良質な株を注文。1~2月には店中、クリスマスローズでいっぱいになります。売り場は育種家ごとに分けて株を陳列。花や葉の個性は育種家によって少しずつ異なるので、見比べながら自分の好みを見つけられます。期間中は、この店特有の「ドラフト会議」というくじ引き大会のイベントが開かれ、大いに盛り上がるのだそう。また、旬の育種家によるトークイベントなども毎年開催されています。
植物だけじゃない!
店の最大の‘売り’は寄せ植え提案
「良質で豊富な品揃え」に加えて力を入れているのは、寄せ植えづくりの提案です。‘Kanekyu金久スタイル’と称するこの店の寄せ植えのメソッドは、いろいろな種類を盛り込みすぎずにシンプルに仕上げ、ワンシーズンずっと楽しめることを大切にしたアレンジづくり。美しいデザインであることはもちろん、健やかな状態を維持できる組み合わせであることにも重点を置いています。「花だけでなくカラーリーフを積極的に使うと、きれいが長もちするだけでなく、表情がぐっと深まりますよ」と、スタッフで寄せ植え担当の植田英子さん。
多肉植物コーナーに瑞々しい彩りを添えている寄せ植え。アレンジの提案だけでなく、売り場の盛り上げ役としても。
寄せ植えにオススメのカラーリーフも充実。花よりもリーフを多めに盛り込むのが‘Kanekyu金久スタイル’。
大小さまざまなコンテナもたくさん取り揃えています。グリーンが頭上を覆う売り場の中でのショッピングもなかなかオツなもの。
Kanekyu金久スタイルの寄せ植え
かわいらしい・華やか・シックなど、さまざまな雰囲気の寄せ植えが揃っています。どれもシンプルで育てやすいものばかり。ぜひ参考にしてみて。
◆あでやかでいてナチュラルな寄せ植え
【使った花】
ペンタス、クレロデンドロム、ヒポエステス(白斑)、のミスカンサス、ワイヤープランツなど
◆カップ型の鉢でフォーマルな寄せ植え
【使った花】
左/コルディリネ‘ピンクパッション’、斑入りサザンクロス‘フィオリーナクイーン’、ペルネッティア、ヒューケラ
右/コルディリネ‘ピンクパッション、’ヘミジギア‘ピンクサファイア’、ハツユキカズラ
◆色味を抑えたシックな寄せ植え
【使った花】
ビオラ、コクリュウ、エリカ‘バレリーグリフィス’、プリムローズジャスミン
◆繊細で淡雪のような寄せ植え
【使った花】
左/エリカ‘エアリーホワイト’、コロキア、ヒサカキ‘ミスティホワイト’
右/カルーナ、ヒサカキ‘ミスティホワイト’
◆カラーリーフのみのしっとりとした寄せ植え
【使った花】
左/ヒューケラ、アスパラ、コクリュウ、ヘミグラフィス
右/ヒューケラ、シダ、アイビー
インドアグリーンも充実
ギフトにも最適
建物の中は、インドアグリーン売り場です。毎年、沖縄に仕入れに行き、定番品種から変わった種類まで豊富なバリエーション。どれもおしゃれなコンテナに丁寧に植え込みがされているので、ギフトにも最適です。希望があれば植え替えや取り寄せも可能なので、ぜひ相談してみて。
神藤さんイチオシの植物はコレ!
砂糖菓子のように愛らしいミニシクラメン
冬に注目なのが、最近変わった種類が多く出回っているミニシクラメン。「お気に入りの鉢に、ひと株ポンと入れるだけで、シーンがぐっとおしゃれになりますよ」と神藤さん。一般的なシクラメンより丈夫で育てやすく、冬は霜や寒風の当たらない明るい場所で、夏は水を切りながら涼しい場所で管理すれば、翌年また楽しめます。
【フリルがかるシクラメン】
【コロンと咲くシクラメン】
【つぼみがユニークなシクラメン】
【ツートンカラーの品種】
【葉が変わっている品種】
【そのほかの愛らしいシクラメン】
育種家がこだわって生み出した植物を求めて日本各地を回り、自分の目で確かめながら入荷するスタイルにこだわり続ける店「Kanekyu金久」。植物の管理にも一切妥協をしないといった姿勢が生み出した、信頼と珠玉の逸品が詰まったショップです。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、JR阪和線日根野駅から徒歩15分。 阪神高速4号湾岸線「泉佐野南」IC、または 阪和自動車道「泉佐野・上之郷IC」から約10分。
【GARDEN SHOP DATA】
Kanekyu金久
〒598-0021 大阪府泉佐野市日根野2545
TEL: 072-467-2413
URL: http://kanekyu.sblo.jp/
営業時間:9:00~18:00
定休日:無休(正月を除く)
併せて読みたい
・素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪3 神奈川「苔丸」
・まだまだ買い時! パンジー・ビオラでつくる バスケットの花かごとリースの寄せ植え
・ガーデンデザイナーが教える「寄せ植え上手」のコツ
Credit
写真&文/井上園子
ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
新着記事
-
ガーデン&ショップ
都立公園を新たな花の魅力で彩る「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」は秋深まる
新しい発想を生かした花壇デザインを競うコンテスト「東京パークガーデンアワード」。第2回のコンテストは、都立神代植物公園(調布市深大寺)を舞台に一般公開がスタートしています。ここでは、5つのコンテストガ…
-
ガーデン&ショップ
里帰りした宿根草「アスター‘ジンダイ’」が初めての開花! 東京パークガーデンアワード@神代植物公園で観…
今、ガーデンに関わる人たちの間では、温暖化や病害虫の影響を受けない植物のセレクトや、手のかからないローメンテナンスな庭づくりを叶える優れた植物を求めて日々チャレンジが続いています。そんななか、アメリ…
-
イベント・ニュース
【秋バラが本格的に開花!】秋の風情が深まる「横浜イングリッシュガーデン」へ出かけよう!PR
希少なアンティークローズから最新品種まで、国内外でも屈指のコレクション数を誇る「横浜イングリッシュガーデン」は、秋に色香を増すバラも続々開花が進んでいます。11月2日(土)からは、季節を先取りしてクリス…