- TOP
- ガーデン&ショップ
ガーデン&ショップ
-
東京都
東京のKawaiiが見つかる花屋さん! 東京・表参道『カントリーハーベスト』 今日はてくてく「花屋さん日和…
記念すべき1軒めのショップは、東京・表参道にある『カントリーハーベスト』。『花時間』でも、活躍している深野俊幸さんが24年前に開いたお店です。 青山通りから1本離れた路地を進んでいくと、小さな庭のある、かわいらしいお店が見えてきます。ここが『カントリーハーベスト』。若々しい緑色の葉をつけ始めたニセアカシアの木を愛でつつ、さあ、店内へ入りましょう。 入口そばの小さな窓辺には、ビタミンカラーの草花が小さな花畑のように咲いています。訪ねた日には、ラナンキュラスやナデシコやヤグルマギクなど。ヒマワリが早くもスタンバイしていました。そう、なんてきれいなんだろう…と、ここで、たいていの人はハートをわしづかみにされちゃいます(笑)。棚にはヨーロッパとアメリカで仕入れたブロカントの缶や空き瓶など。こうやって飾るとかわいいんだ、なんて部屋に花を飾るときのヒントが入手できたりします。 そして、切り花の品揃えたるや驚きです! 全体で、約200種。そのじつに5割以上が草花です。ショップコンセプトは「田舎で収穫した花たち」。だから、野原に咲くような自然な風情の花から、原種系のアルストロメリアなどの珍しい花まで、少量多品種の品揃え。かつて、バラやユリばかりがもてはやされた時代から、市場でそうした花々を見つけ出しては、ここに並べていたそうです。 これは取材の日にあったフラワーギフト。『カントリーハーベスト』お得意のマルチカラーのアレンジにも、水色のニゲラやピンクのアスチルベなど、可憐な草花が顔を出しています。 『カントリーハーベスト』は、ギフト用のオーダーも多いショップです。店内奥のキーパーには、いつも15~20種のバラと、ダリア、ランの切り花に出会えます。 訪ねたら、穴が開くほど、あちこち見てこその『カントリーハーベスト』時間です。棚の奥、マントルピースの上、それから天井。いたるところに花と雑貨のディスプレイを発見して、おもちゃ箱の中にいるみたい? なんて思える体験ができますよ! Information Shop Data:カントリーハーベスト(COUNTRY HARVEST) ホームページ/http://www.countryharvest.co.jp 住所/東京都港区南青山3-13-13 電話/03・5410・1481 営業時間/10~20時。日曜、祝日は~18時 定休日/なし アクセス/地下鉄東京メトロ銀座線・千代田線・半蔵門線 表参道駅A4出口より徒歩約2分 Credit 記事協力 構成・撮影・文/鈴木清子
-
東京都
皇室ゆかりのバラ〜皇居東御苑のバラとプリンセスローズ〜
昭和から平成、そして令和へと引き継がれるバラ 「令和」の新しい時代が明けようとしています。"皇室とバラ”といえば、雅子様のお印が「ハマナス」、眞子様のお印が「モッコウバラ」。そして雅子様、眞子様のお持ち物には、この「ハマナス」、「モッコウバラ」が描かれているとのことです。 皇居東御苑の一角にあるバラ園には、この「ハマナス」や「モッコウバラ」をはじめ、全部で15品種のバラが植栽されています。もともとは、昭和天皇に献上され、育てておられたバラが大半で、上皇陛下のお考えから1996年(平成8年)に整備され、吹上御所からこちらに移植されたそうです。 では、植栽されている15のバラをご紹介しましょう。 1.テリハノイバラ(ロサ・ウィクライアーナ) 一季咲きで3~4cmほどの白い花を咲かせ、つる性のほふくする枝に光沢のある照り葉が茂るのが特徴です。20世紀初頭、ヨーロッパやアメリカに渡り、さまざまなランブラー、ハイブリッド・ウィクライアーナの作出に貢献しました。 原生地:日本、中国 2.イザヨイバラ(ロサ・ルクスブルギー) 繰り返し咲く約8cmの花は、花弁が多くとても美しい。満月が少し欠けたような花形から十六夜(いざよい)バラと呼ばれます。江戸時代には、葉の形状から、「サンショウバラ」と呼ばれていました。 原生地:中国の南西部から東南アジア 3.シロバナハマナス(ロサ・ルゴサ・アルバ) ハマナスの白花品種で、花径約8cmの花は繰り返し咲き、秋には大きな実を付けます。 原生地:カムチャッカ半島、千島列島 4.コウシンバラ(ロサ・キネンシス) 四季咲き性が強く、コンパクトな木立ち性の樹形。1309年、藤原氏の氏神である春日神の霊験を描いた絵巻「春日権現験記」(三の丸尚蔵館所蔵)の第5巻第2段に描かれた花が、このバラではないかといわれています。 原生地:中国 5.かのこ 一季咲きで、5枚弁の紅色の花弁は、中心が白く抜け、房咲きになります。 原生地:日本 6.フローレンス・ナイチンゲール フローレンス・ナイチンゲール国際基金発足75周年を記念して作出されたバラ。2009年9月に国際看護師協会から贈られ、このバラ園には、上皇・上皇后両陛下がお手植えされました。 1989年、アメリカで作出されたシュラブローズ。 7.のぞみ ほふく性の株でコンパクト。一重の可憐な薄いピンクの花は一季咲きです。 作出は1968年、小野寺透氏。 8.ハマナス(ロサ・ルゴサ) このバラが日本からヨーロッパへ渡ると、「耐寒性に優れ、返り咲き性があり、大きなローズヒップも楽しめる」ことから、北欧などの寒冷地向きのバラの交配に貢献しました。爽やかなスパイシー香があります。 原生地:日本 9.マイカイ 中国では、「マイカイ」(メイグイ)は、バラの総称に加え、薬や食用に使用される、このバラの個体名も指します。ダマスクにスパイシー香が混ざる心地よい香りの花は、お茶やお菓子に利用されてきました。 原生地:中国 10.サクラバラ(ロサ・ウチヤマナ) 5弁の花弁の先にピンクが乗る優しい雰囲気のバラは、つる性で一季咲き。日本のノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)と中国のコウシンバラ(ロサ・キネンシス)の交雑種とみられます。 原生地:日本(九州) 11.サンショウバラ(ロサ・ヒルトューラ) 一季咲きの5弁の大輪。薄いピンクの花の中央にある豪華なシベが美しい。木立ちの大木になり、葉の形状から「山椒薔薇」、富士箱根地区が自生地であることから「箱根薔薇」とも呼ばれています。 原生地:日本 12.ナニワイバラ(ロサ・レヴィガータ) 光沢のあるしっかりとした常緑の葉に、純白の5弁の大輪の花が美しい一季咲きのバラ。樹勢が強く、大きな株に育ちます。1700年頃、日本へ。 原生地:中国 13.ツクシイバラ(ロサ・ムルティフローラ・アデノカエタ) 5弁のハート形の花弁の先に優しいピンクが乗り、房咲きになる姿が愛らしい。一季咲き。 原生地:日本(九州) 14.キモッコウバラ(ロサ・バンクシアエ'ルテア') 八重咲き(プレナ)の黄色(ルテア)のモッコウバラは、常緑のつる性で、温暖な場所で真価を発揮します。東御苑のバラ園では、陽当たりがよく、ベッド仕立てにしてあるため、とても花付きがよく、開花時には大変見事に咲き誇ります。 原生地:中国 15.モッコウバラ(ロサ・バンクシアエ) 白い(アルバ)八重咲きのモッコウバラは、キモッコウバラと同様、ベッド仕立てに。 19世紀初め頃、八重咲きの白いモッコウバラ(ロサ・バンクシアエ・バンクシアエ)は、スコットランドの園芸学者兼植物学者ウィリアム・カーによって、中国からヨーロッパに紹介されました。その際、イギリスのキュー・ガーデン所長、ジョゼフ・バンクスの妻の名を付けて、「レディ・バンクス・ローズ」という名で紹介されました。白の一重と八重、黄色の一重には香りがあることから、「木香薔薇」と呼ばれます(黄色の八重は微香)。 原生地:中国 以上のように、植栽されている品種を紐解けば、東御苑のバラ園には、中国との歴史や友好、記念など、日本の歴史、皇室の歴史、バラの歴史の一端が、凝縮されていることが見えてきます。 皇族の方々のお名前を冠したバラ そして、東御苑バラ園には植栽されてはいませんが、皇族の方々のお名前を冠したバラもご紹介しましょう。 ‘プリンセス・ミチコ’(F) ‘エンプレス・ミチコ’(HT) ‘プリンセス・マサコ’(HT) 雅子様がご成婚前に直々に選ばれたバラ「プリンセス・マサコ」。滋賀のWABARA / Rose Farm KEIJIのバラ育種家、國枝啓司さんが1993年に作出しました(現在は非売品)。 ‘マサコ(エグランタイン)’(S) ‘ハイネス雅(みやび)’(HT) ‘プリンセス・サヤコ’(HT) ‘プリンセス・アイコ’(F) 皇室と縁のあるバラ農家、長野県富士見町にある「アサオカローズ」さんでは、美智子様のお誕生日には、1980年から毎年、‘プリンセス・ミチコ’の花束を献上し、2013年からは、‘プリンセス・ミチコ’に3種のバラをブレンドしたローズウォーターを献上されています。 また、寛仁親王妃信子殿下は、公益財団法人日本ばら会の名誉総裁で、淡いローズピンクが美しい‘プリンセス・ノブコ’(HT/2001年 スコットランド アンG.クッカー作出)と名のついたバラもあります。 年号が変わるこの節目の年に、皇室にゆかりのあるバラに再注目してみました。これから全国でバラが咲き誇る季節。ぜひ、お近くのバラ園などでも、皇室にゆかりのあるバラの美しい咲き姿を愛でてはいかがでしょうか?
-
東京都
素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪7 東京「渋谷園芸」
ガーデニングライフに、‘アイデア’と‘美しさ’を提案するショップ 住宅街の中に広がる、緑したたる渋谷園芸。夏には、敷地内に点在するケヤキの大木が心地よい緑陰を落とします。渋谷園芸がオープンしたのは約43年前。そして今から7年前に隣の敷地からこの場所に移設し、現在に至っています。 街道沿いの店頭には、大きなテラコッタをのせたイギリス製の車、クーパーがお出迎え。道行く人の目を引いています。これは、渋谷園芸の看板商品・ウィッチフォード社の鉢のユニークな宣伝カー。でも、実際には走っていません。 農家の面影を感じさせる ノスタルジーあふれるショップ もともとは地主・農家で、その広い敷地を生かして店舗をのびやかに展開している渋谷園芸。ショップのシンボルツリーであるケヤキは、オープン当時からここを見守っている100年を超える大木。その傍らに建つ明治元年築という木造の納屋もまた、重鎮の貫録を放っています。この150年ほど経つ建物は現在、売り場兼ギャラリーとして活用され、まだまだ現役として活躍中です。 納屋の中はほの暗く、白い漆喰の壁や太い木の梁が昔の面影をしのばせています。そこに、渋谷園芸が直輸入するイギリス・ウィッチフォード社の鉢を並べて展示。納屋の雰囲気を壊さぬよう、かつて使われていた飾り棚や素朴な台、什器などを利用して、雰囲気よくディスプレイされています。ウィッチフォード社の鉢の扱い数は日本一を誇り、厳選したショップにも卸しています。 ガーデナーのあこがれであるウィッチフォード社の鉢。手づくりならではのぬくもりや深みのあるつややかな色合いが魅力です。どんな植物にもよく合い、品のあるシーンを演出してくれます。 太い梁には、アンティークの照明(商品)やドライフラワーをハンギング。納屋の中は見所たっぷりです。 通常、ウィッチフォード社の鉢がメインのディスプレイになっていますが、時によって季節の催しを祝う演出にすることも。取材した2019年2月は桃の節句にちなんで、45年もののお雛様が、華やかな情緒を放っていました。 こだわりの植物が並ぶ 大樹の下でショッピング 渋谷園芸の理念の一つに、「誠実を第一とし、創意工夫を心掛け、世に必要とされる会社であること」があります。その理念に沿って、来店するすべての園芸家に満足してもらえるよう、小さな草花から樹木に至るまで鮮度はもちろん、種類が豊富であることにこだわっています。 以前ショップの近くに花卉市場があったことから、関係者や生産者との深いつながりを、今もなお大切に維持している渋谷園芸。その強みを生かし、お客様への還元につなげています。「大抵のものが取り寄せ可能です。売り場になければ、ぜひご相談ください!」と店長の伊藤能久さん。店頭販売のほか、リース、ディスプレイ、造園など幅広く事業を展開し、学校での花壇づくりなど、地域にも貢献できるよう努めています。 2階建ての店内も充実 あらゆるものがずらりと揃う 清潔感のある明るい店内には、雑貨や園芸資材、観葉植物、切り花やプリザーブドフラワーなどが美しく並びます。屋外売り場同様、ゆったりとスペースが取られているので、子ども連れでも安心。 吹き抜けで天井が高い売り場。植物にも人にも心地よい、明るく清潔感あふれる空間です。 雑貨売り場も頭上をグリーンが覆い、まるで温室の中にいるような気分に浸れます。 2階は、白い空間に爽やかに映えるインドアグリーンの売り場。コンパクトなものから尺鉢まで勢ぞろい。 インテリアショップのような雰囲気 コンテナ&資材コーナー 2つ目の理念に「生活をより良くするために、商品を企画・提案する能力を培い、高めること」があります。その理念の通り、売り場には普段の生活がもっと潤うよう、随所に楽しい提案を散りばめて展開。特に、一番奥にあるコンテナやアイアン製品、小物類を扱うコーナーでは、インテリアショップにでもいるかのような徹底した雰囲気づくりがなされ、目を楽しませてくれます。 オーナーの思いが詰まった レストラン‘樹藝夢’で本物の良さを味わって 3つの理念の最後が「好奇心、好対応、好感、貢献の4Kを大切にすること」です。園芸売り場に加え、その理念がより強く感じられる場所が、敷地内にあるカフェ&レストラン‘樹藝夢’(じゅげむ)。7年前のショップ移設の際にオープンしたクラシカルなレストランで、イタリアン・フレンチベースのコース料理のほか、気軽なワンプレート、スイーツが楽しめます。 レストランに一歩足を踏み込むと、重厚感のある調度品が至る所に。園芸店とは思えないほどの上質感が漂う異空間は、海外のレストランにでもいるかのような気分です。ここには、お客様に休憩の場を提供するだけではなく、「美のある生活を提案したい」というオーナー、渋谷忠司さんの思いがたっぷり詰まっています。 調度品に飾られた品々は、美術館やギャラリーで見かけるようなものばかり。それらのほとんどがアールヌーボー期の美術品です。これは、芸術に造詣が深いオーナーの渋谷忠司さんが世界各地で見つけたもので、本物が醸し出す優雅な佇まいが、芳しい空間を演出しています。 ウィスキーなどが並ぶボード中央には、20世紀・アールヌーボー期に活躍したドイツの建築家でデザイナーでもあるペーター・ベーレンス作のテーブルライトが。これは、ルードヴィッヒ大帝のために1902年に作られたもの。最上段に並ぶ銅製のケトルが、ドイツにいるような雰囲気を漂わせています。 こちらは、フランスで活躍したガラス工芸家・エミール・ガレ作のライトが3つ下がるコーナー。 作品に描かれたgalléのサインに、テンションが上がります。 カップボードの上には、フランスのオーギュスト・ロダン作の彫刻「バラの帽子の少女」が。 そして隣の飾り棚の中には、同じくフランスで活躍したガラス工芸家・ドーム兄弟のブドウ柄の花瓶などが収められています。 重厚感あふれる室内に軽やかさを与えているのが、壁に飾られたやさしいタッチの水彩画。これは、アートを愛する渋谷さんの趣味の一つ。 専属シェフが作るフレンチ・イタリアンのメニューは、軽食のケーキから本格的コース料理まで、お腹のすき具合に合わせて選べます。どれも色彩豊かに美しく仕上げられており、眺めているだけで、春の花畑にいるような浮き立つ気分に。こだわりのワインと一緒なら、さらにフレイバーな時間を味わうことができます。 前菜やスイーツには、可憐なエディブルフラワーがあしらわれています。食べるのがもったいないほどの愛らしさに、うっとり。エディブルフラワーは、それを専門に扱う横山園芸のもの。 渋谷園芸イチオシのグッズはコレ! ウィッチフォード鉢・ブルーカラー 今までウィッチフォードの塗り鉢は、モスグリーン、オリーブグリーン、ハニーの3つのカラーがありましたが、昨年そこにブルーが加わりました。どんな草花にも上品にマッチし、日本の山野草にもよく合います。 農家ののどかな風情を残しながら、45年もの間、ここで園芸店を営む渋谷園芸。掲げた経営理念にのっとり、随所ににじませた‘ノスタルジック’で‘クラシック’な雰囲気が、人々の好奇心を刺激しつつ、ほっとひと息つける時間を提供しています。ぜひ、楽しいアイデア、本物の美しさが詰まった渋谷園芸の世界を味わいに、訪れてみてください。 パーキングは40台駐車可能。アクセスは西武池袋線・都営有楽町線・都営大江戸線練馬駅より約13分、西武新宿線野方駅より約14分。 【GARDEN DATA】 渋谷園芸 176-0013東京都練馬区豊玉中4-11-22 TEL: 03-3394-8741 URL: http://www.shibuya-engei.co.jp 営業時間:9:00~17:00 定休日:無休(正月を除く) 併せて読みたい ・素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪5 兵庫「みどりの雑貨屋」 ・素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪6 埼玉「フローラ黒田園芸」 ・一年中センスがよい小さな庭をつくろう! 英国で見つけた7つの庭のアイデア Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。 写真協力/渋谷園芸
-
東京都
秋バラが咲き誇る都会のバラ園「神代植物公園」の歴史と見どころ
昭和36年から数々のバラの名花を植栽 神代植物公園のバラ園は、1961年(昭和36年)につくられました。歴史あるバラ園には、約400品種、5,200株のバラが植栽され、本園の整形式沈床庭園では、主にモダンローズを数多く見ることができます。また、その横には、野生種が植栽されたオールドローズ園や国際ばらコンクール花壇があります。 世界バラ会連合より「優秀庭園賞」が贈られた庭 2009年(平成21年)には、世界41カ国のバラ会が加盟する「世界バラ会連合」より、バラの育成、維持管理、展示様式が高い水準であると評価されたバラ園に贈られる「優秀庭園賞」を受賞しています。 かつての「日米親善のバラ園」の面影を今に伝える「本園」 「本園」内をゆっくり見て回っていると、高芯剣弁咲きのバラが多いことと、作出国がアメリカのバラが多いことに気がつきます。その理由は、1959年(昭和34年)に、アメリカ・ロサンゼルスより、同地の中央公園のバラ園で採取した約80品種のバラの接ぎ穂が「日米親善のバラ」として東京都へ贈られたことから縁ができたためといわれています。 1959年当時の名花であったハイブリッドティーローズやフロリバンダローズが東京都へ贈られ、「日米親善のバラ園」として、ここ神代植物公園に植栽されたとのことです。当時の日米親善のバラは、現在13品種が残っていて、2018年10月に訪れた時、ちょうどそのバラたちの咲く姿を見ることができました。 ‘フロリック’(F)1953年作出 ‘ワイルド・ファイアー’(F)1955年作出 ‘ヘレン・トローベル’(HT)1951年作出 ‘ピース’(HT)1945年作出 ‘クイーン・エリザベス’(Gr)1954年作出 ‘レディ・ラック’(HT)1956年作出 ‘レッドキャップ’(F)1954年作出 ‘ファンファーレ’(F)1956年作出 ‘リリベット’(F)1953年作出 ‘ヒート・ウェイブ’(F)1958年作出 ‘ルビー・リップス’(F)1958年作出 ‘グリーン・ファイヤー’(F)1958年作出 ‘ムーン・スプライト’(F)1956年作出 また、本園内では、1961年に植栽され、57年が経った現在も花を咲かせる‘クイーン・エリザベス’の古木も見ることが出来ます。 バラの歴史と系譜をたどる「野生種・オールドローズ園」 「野生種・オールドローズ園」に向かうと、春の一季咲きのバラが多いせいか、本園に比べて秋はひっそりとした雰囲気です。その中でも花を咲かせているバラたちは、中国原産で18世紀から19世紀初めにかけてヨーロッパへ持ち込まれ、ヨーロッパのバラたちに四季咲き性をもたらしました。 現在、当たり前のように、秋に多くのバラの花を見ることができるようになったのは、このバラたちのおかげだと、しばし見入っていました。ふと周りを見渡せば、秋には花を咲かせない一季咲きのバラたちも、ローズヒップという美しく可愛らしい置き土産を残してくれています。 世界中の育種家の未発表の新品種が並ぶ「国際ばらコンクール花壇」 こちらは、「国際ばらコンクール花壇」です。このコンクールは、1963年から始まり、以来毎年、日本国内や世界中の育種家から未発表の新品種を公募し、2年間の試作を行う中で、「公益財団法人 日本ばら会」の審査員が審査を行い、入賞花を選出しています。 本園の温室寄りの花壇には、歴代のコンクール入賞花が植栽されています。この‘クイーン・オブ・神代’(HT)は、2009年度コンクールの四季咲き大輪金賞受賞花です。2011年の開園50周年を記念して、名前を公募し命名されました。 秋は春よりも気温が低くなるため、バラの開花時間が少し長くなり、さらに寒暖の差で生じる花色の深みが加わって、何ともいえない美しさを感じる時が多くあります。春より濃く感じられる香りと共に、じっくりと一輪の花と向き合って観賞するには、秋はベストシーズンかもしれません。 ぜひ、秋バラの咲くバラ園へ出かけてみてください。
-
東京都
素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪2 「庭道具屋 toolbox」
閑静な住宅街の中に小さな店を構える「toolbox世田谷」(2018年10月21日〜「庭道具屋 toolbox」として移転)。古い倉庫を都会的にリノベーションし、シンプルにしつらえた店内には、オーナーが厳選したガーデンアイテムがところ狭しと並びます。その商品の本格的な重厚感と豊富さに、初めて訪れた人はみな圧倒されます。 目利きのオーナーが現地で見つけた 世界の選りすぐりがズラリ 店内に並ぶアイテムは、イギリスやドイツ、フランスなど、ヨーロッパのものが中心。商品が美しく見えるよう、それぞれ専用のラックが設けられ、整然と展示されています。 ツール類はみな用途が異なり、形も大なり小なり異なっています。たくさんの中から自身が求めているアイテムを選ぶのは至難の業ですが、心配はいりません。ショップオーナーの黒田明雄さんが、工房やその国のガーデニング事情などの話も交えて、詳しく説明してくれます。各工房のこだわりの違いなどを知ると、品を選びやすくなるだけでなく、ガーデニングの楽しさがぐっと膨らむものです。 世界各国の本物に触れた経験が 「toolbox」の誕生につながる もともとエクステリア会社でエクステリア&ガーデンデザイナーとして活躍していた黒田さん。約5年間デザインに従事し、その後ポストやライトなどのガーデンエクステリアプロダクトの輸入・開発の部署を立ち上げました。世界のガーデンプロダクトを研究するために、イギリスやオーストラリア、ドイツ、北欧など、各国のガーデンショーや工房、メーカーなどに足を運んで、職人やデザイナーにも会い、技術、歴史などについても学びました。「イギリスのチェルシーフラワーショウやハンプトンコートのガーデニングショーは数えきれないぐらい行ったよ。当時は何もかもが珍しく、とにかく楽しかったね」。 もともと建築も含めてデザインの世界にいたというだけあって、あらゆるものを効率よく吸収しながら‘確かな目’を養っていきました。そして、今から約10年前に独立。自身の世界を集約させたショップ「toolbox」をオープンしたのです。 工房ごとに異なる個性を 国ごとに比べてみよう 以前は、イギリス製のガーデンツールがメインでしたが、最近はオーストリアやオーストラリア、オランダなどのツールも多数取り扱っています。最近、他国に生産を任せて安く量産するメーカーも増えてきたそうですが、ここで扱うものはいずれも、伝統的な製法で職人が丁寧に作った「ぬくもりを感じる逸品」にこだわっています。 上の写真はオーストリアのPKS Bronze社のもので、あたたかみのある輝きを放つ銅合金製。オーストリアの自然科学者・ヴィクトル・シャウベルガー氏の「銅合金の農具は土壌を改善し、農作物の品質を高める」という1950年の実験結果に基づいてつくられています。滑らかな取っ手部分はブナ材。 オーストリアの繊細な印象のものとは大きく異なり、がっしりとした印象があるオランダ・スネーブル社のガーデンツール。100年以上の歴史がある工房で、園芸農家の声を受けながら改良を重ねてきたツールです。材質はステンレス製で錆びる心配がなく、エッジがシャープで使いやすいのが特徴。握りやすい柄はタモ材など。 ハサミも充実のラインナップで、アメリカや日本、スイス製があります。切れ味はどれも甲乙つけ難い優れものばかりなので、握った感じや重さなど、実際に触れて好みのものを選べるのも、この店ならでは。さらにスイス製のフェルコのハサミは、すべてのパーツに分解してメンテナンスできるのが大きな魅力。バラの愛好家たちに支持されている理由が分かります。さすが精巧なモノづくりが得意なスイスの技ですね。 黒田さんがデザインした 秀逸アイテムも必見! エクステリア&ガーデンプロダクト開発業務をショップとは別に継続していることもあり、自身で手がけたオリジナルホースリールを販売しています。これは日本製で、重厚感のあるボディはアルミ合金。劣化しづらく長もち。3色のボディの色と装飾ディスクの種類も豊富でカスタマイズされています。さらに、「ノズルがずば抜けて優れているんですよ」と黒田さん。「水の勢いを調節しつつ、それを固定できる」という設計で、使っていて疲れません。この機構を採用した散水ノズルは、日本ではこの会社の製品だけです。 どれも素敵で目移りしてしまいますが、シックなカラーの「オリジナル(中段)」はクラシックな印象を、メタリックな輝きを放つ「コスモシリーズ(上段)」はモダンな印象があり、よく見比べると醸し出す雰囲気が異なるので、自庭に合ったものを選びましょう。 庭をおしゃれに見せてくれる アイテムも充実 プランツタグや麻ひもなど、植栽シーンを素敵に演出するために欲しいアイテムも充実。実用性と遊び心を兼ね備えたデザインに、眺めているだけで園芸意欲が膨らみます。「見映えも重視したい」という、オープンガーデンなどをしている方に特にオススメです。 緯度が高いことに加えサマータイムもあり、夏は夜遅くまで日が沈まないヨーロッパ。庭が広いだけでなく、職場が自宅から近い人が多い、蚊がいないなど、さまざまな条件が揃い、夜もガーデンで家族や友人と過ごす人が多いそうです。「だから、日本人よりも庭に居心地の良さを求めるんですよ」と黒田さん。おしゃれだけど飽きのこない庭をつくるためには、見映えのよい添景物が必須。ガーデンオーナメントだけでなく、バードフィーダーなどもデザイン的なものが求められています。 シーンづくりの参考にしたい! 洗練されたディスプレイ 小さなショップ空間を有効活用したディスプレイも見逃せません。天井や壁面を巧みに活用し、見ごたえたっぷりにコーディネートされています。店内の見通しや動線を妨げずに、ここぞという場所に強弱をつけて飾るテクニックは、やばりデザイナー出身の黒田さんだからこそなせる技。“商品の使い方が想像できるように”意識されたディスプレイは、ベランダやインテリアのコーナーづくりに大いに参考になります。 店内中央で目を引いた、吊り下げ型物干し。愛らしい絵柄のタネ袋や手袋を吊り下げて、空間を軽やかに演出しています。これは18~20世紀の頃、一般の家庭で使われていた伝統的なデザインの物干しの形をそのまま復活させた製品です。付属の滑車を天井に取りつけて、長いロープで本体を上下させるので、手の届かない高い場所にも設置が可能です。ハーブ&フラワードライヤーとして活用したり、インテリアのアイテムとしていろいろ使えそうです。 おしゃれなガーデンブーツを手に入れたら、ブーツラックにもこだわると、素敵に見せながらの収納が可能。ブーツを逆さに吊るすので、ホコリが入るのを防げます。ガーデンブーツはデンマークからやってきたイルセ・ヤコブセン社のもの。編み上げがおしゃれで、タウン用としても愛用できそうです。ラックは英国・クレモアミル社の3足かけられるもの。 階段の上の空間には、異なる形・素材のバスケットを組み合わせた、シンプルなコーディネート。表皮をそのまま生かした木の巣箱も合わせて遊び心を加えています。すっきりと素敵に見えるのは、色のトーンを揃えているからなのでしょう。木製のバスケットは英国・ロイヤル・サセックス社のガーデントラッグ。ワイヤー製のものはフランスのコンブリション社のワイヤーバスケット。スクエアのバスケットは、オランダ製と、ここも国際色豊かなコーナー。 繊細さピカイチ! 日本のアイテムにも注目 商品は、海外製品に限らず、日本製のものも並んでいます。繊細な技術と手入れを必要とする盆栽は、我が国が生んだ誇るべき文化。それを支える道具類も繊細であることが求められます。黒田さんはそこに着目し、盆栽用の華奢な銅製土入れや銅製熊手なども、多肉植物やミニ盆栽などの細かい作業にオススメのアイテムとして揃えています。 黒田さんイチ押しはコレ! ドイツ製の黄色いガーデンブラシ 50年程前からドイツでつくられているガーデンブラシ。ブラシ部分がカーブしているのが大きな特徴です。ブラシは固すぎず柔らかすぎないところがポイント。熊手とは違い、芝生に引っかかることなく落葉を掻き出してくれます。もちろん、レンガや石のアプローチの掃除にもオススメ。化学繊維なので劣化しづらく、庭の掃除が格段に楽になります。 世界にはさまざまなガーデンツールがあり、庭の楽しみ方も千差万別。一つの道具を通して異国の園芸文化のほんの一端に触れるだけで、ガーデニングの時間がぐっと楽しくなるものです。「toolbox世田谷」はそんな機会を与えてくれる場所。ぜひ、奥深いガーデニングの世界をのぞきに訪れてみてください。アクセスは、東急田園都市線・用賀駅から徒歩約10分。ご紹介の実店舗に並ぶツールは、ネットショッピングも可能なので、ぜひアクセスしてみてくださいね。 併せて読みたい ・素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪1 岩手・雫石「花工房らら倶楽部」 ・マーク・チャップマンさんもオススメ! デザイン性の高いガーデングッズ5選 【GARDEN SHOP DATA】 庭道具屋 toolbox 世界のこだわりのガーデンツールやアイテムを扱う、園芸ショップ。逸品がずらりと並ぶ品ぞろえに、本格派ガーデナーの熱い支持を得ている。2019年1月、世田谷・用賀から移転して、埼玉県越谷市にオープン予定。 住所:埼玉県越谷市恩間413-10 TEL: 048-971-7814/FAX: 048-971-7815 URL: https://www.rakuten.co.jp/toolbox/ Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
-
東京都
アジサイの名所が銀座に登場!新品種も勢揃い
2019「初夏のあじさいガーデン」 梅雨の季節を前に、ファンケル銀座スクエア10階の空中庭園に登場するのは、色とりどりのアジサイが咲き乱れるアジサイのガーデン。今年のテーマは「アンダルシアに想いを寄せて」。風情溢れるアジサイの花々が、都心の庭園を優美に彩ります。 全国から集められた、アジサイの希少品種の数々も必見です。 2019年の「初夏のあじさいガーデン」は5/31(金)~6/7(金)まで。入場無料で楽しめます。 以下は2018年のあじさいガーデンの様子です。 都心に現れたアジサイの園 『木々が光を遮る深い森の奥、濃密な緑がふと開けた明るい場所に、美しい湖とともに現れるアジサイの花園。青緑色の水をたたえた湖の湖面を白鳥達がすべるように進み、その奥の小高い丘には“白鳥城”の名を持つノイシュヴァンシュタイン城*がひっそりとそびえ立ち………。』 (*ドイツロマンチック街道の奥にあり、若き美しきバイエルンの王、ルートヴィッヒ2世が莫大な資金とその生涯をかけ、作り上げた世界一美しい城) ファンケル 銀座スクエア10階の空中庭園では、そんなロマンチックなストーリーで構成された「初夏のあじさいガーデン」が開催中です。アジサイといえば、雨を脇役としつつも控えめに季節の主役を演じてきた「和」のイメージが定着していますが、今回この庭に登場するのは、「エレガント」「ゴージャス」「ドラマチック」といった形容詞が似合う新品種。日本全国から集められた30種類以上の新品種が初夏の宿根草とともに庭を華麗に彩ります。 アジサイは近年、日本の育種家たちによって次々に新しい品種が生み出され、花弁の縁が別の色で彩られたピコティや繊細なグラデーション、フリルのようにたっぷりとした八重咲き、劇的な色変わりを見せるアンティークアジサイなど、その表情は多種多様な広がりを見せています。この庭を企画、制作した渡辺さくらさんは、今回の展示もそんな新しいアジサイのイメージを感じてもらえるように演出にも趣向をこらしたと話します。 「近年、日本で生まれる新品種のアジサイは、アジサイ寺などこれまで私たちが抱いていた、いわゆる水色の手まり状の花というイメージから飛躍し、花色も花形も驚くようなユニークな花がたくさん登場しています。そうした新品種ならではのアジサイの魅力を演出するために、あえてヨーロッパを舞台にした“あじさいガーデン”をつくることにしました。今回の庭は、白鳥を象った素敵な鉢との出合いからイメージを膨らませ、白鳥城といわれるドイツのノイシュヴァンシュタイン城と、その城が見下ろすアルプ湖をデザインコンセプトにしています」(渡辺さん) ここには、アジサイの育種が盛んな群馬県の「さかもと園芸」や「小内園芸」、常緑アジサイを生み出した「久保田花園」、秋色アジサイで有名な福岡県の「鬼木園芸」、‘万華鏡’や‘銀河’など優良品種を次々に生み出している島根県アジサイ研究会など、日本を代表するアジサイの育種・生産者たちの名品、新品種が一堂に会しています。ガーデン全体の雰囲気を楽しみながら、一つひとつの花に目を向けてみると、これらの新しいアジサイは、華麗でありながら、日本独自の感性による花の育種文化を色濃く反映していることが分かります。 例えば、「さかもと園芸」の代表品種でフラワー・オブ・ザ・イヤーを受賞した‘KEIKO’は、咲き始めは白の花弁にピンクの濃い縁取りがあり、次第に縁取りの色が溶け出るように全体がピンクがかって、さらにグリーンを帯びたアンティークカラーに変化するという複雑な色変わりが楽しめる花です。花形も最初はガクアジサイのように花の中心があいていますが、咲き進むに従ってふんわり手まり状に変わっていきます。こうした新しいアジサイは一見すると、その艶やかさに気を取られがちですが、そればかりでなく花の表情は繊細で緻密、そして時の移り変わりを楽しませるという趣向は、日本的な美意識のもとに生み出された花であることを感じさせます。今回の展示では新品種の‘ピンキーリング’もお目見えしています。 日本で生み出される新しいアジサイは、梅雨以降の庭の風景を変える重要な素材になりつつあり、今回の展示では庭のみならず寄せ植えやハンギングバスケットなど、アジサイのさまざまな演出方法が提案されています。 開催中はアジサイの鉢苗を販売しているほか、最終日には展示品の一部販売も行われます。市場ではあまりお目にかかれない希少種を手に入れるまたとないチャンスでもあるので、銀座にお出かけの際は足を運んでみては。これまでのアジサイのイメージを大きく変える日本の新しいアジサイの世界をご堪能ください。 Information 初夏のあじさいガーデン 5月26日(金)~6月1日(木) 会場:ファンケル 銀座スクエア10F スカイガーデン 問い合わせ:TEL 03-5537-0231(インフォメーションカウンター) http://www.fancl.jp/sq/ Credit 写真&文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
-
東京都
武蔵野の小麦畑の一角にオープンした市民のための憩いの庭「タネニハ」
花の生産農家が育てる「タネニハ」の庭 小麦の青い穂が初夏の風にそよいでいる。その広大な小麦畑の一角に、市民のための憩いの庭、タネニハが2017年秋のプレ・オープンを経て、2018年3月正式にオープンした。東京の多摩地区東部、東久留米市にある花の生産農家、秋田緑花農園の秋田茂良さんが3年前に企画し、自ら基本設計した庭だ。 400㎡の敷地内には、農園で生産された花苗や多摩地区に自生している野草など、多彩な植物が植えられている。タネニハという名前の「ニハ」は、古語で場を意味する。人と人、人と植物が出会い、さまざまなタネが育ってほしいという思いを込めて名づけられた。 秋田緑花農園のある一帯は、約300年前、江戸時代の半ばに開拓された農地で、茂良さんは農家の12代目にあたる。小麦やさつま芋畑は主に父親の貞夫さんが担当し、茂良さんは17年前から本格的に温室での花卉(かき)栽培を始めた。 温室ではゼラニウム、ビオラ、ヒューケラなどのポット苗が並び、中でも農園で育種し、第66回関東東海花の博覧会で金賞を受賞した極小ビオラ「多摩の星空」がひときわ可憐な姿を見せていた。 12代続く農家ならではの庭づくりを模索 秋田さんは小学生の頃、作文に「街を緑でいっぱいにしたい」と書いたが、その思いを強くしたのは、2011年の東日本大震災がきっかけだった。その年の7月から3年間、ヒマワリなどの苗を届け、被災した多くの人に喜ばれた。花によって人々の心が和らぐのを目の当たりにして、改めて植物の持つ癒しの力を教えられたという。 そうした経験から、「誰もが訪れて庭いじりに参加でき、のんびりと散策もできる、花農家ならではの庭をつくりたい」と思い立ったのが、タネニハ誕生の物語だ。農園のスタッフや友人のガーデナーたちに、多くの市民ボランティアが加わり、園内にある自宅付近の木々を移植。芝生の庭を囲むように季節の花々が植栽された。 東久留米は「平成の水100選」に選ばれた南沢湧水のある地で、その湧水池をイメージした池も設置された。農園やタネニハの水やりも、地下深くから汲み上げた豊富な地下水を利用しており、丈夫な植物が育つ一因になっている。 花農家は卸売りが中心だが、タネニハの前には直売コーナーが設けられた。自転車や車で通りかかった人たちが、鮮やかなゼラニウムの色に誘われるように足をとめ、時間をかけて花苗を選んでいく。 庭は人をつなぎ、新しい街の形を創造していく 植物の寄せ植えや、ハボタンの苗などを使ったリースづくり、またヒンメリ(麦のストロー・アート)づくりなどのワークショップも共催。農園の無農薬の小麦粉で、天然酵母のパンづくりをしているプチ・フールの宮沢ロミさんをはじめとして、東久留米の地域の仲間とのネットワークも充実し、公園でのマルシェ開催や、アートプロジェクトの実現などにも取り組んでいる。 「街と社会は人でつくられている。花から生まれた人との関係が広がってくれたら嬉しい」と語る秋田茂良さん。タネニハの芝生に寝転んで空を見上げていると「武蔵野の自然の中にいる」…そんな心地よさに包まれる庭だ。 Information タネニハ(taneniwa) 所在地:東京都東久留米市南町2-3-19 TEL:042-452-3287(受付8:00〜17:00) Blog: http://blog.kaobana.com/ Email:info@kaobana.com アクセス:公共交通機関/西武池袋線「ひばりヶ丘駅」または西武新宿線「田無駅」からバスで「イオンモール東久留米南下車」徒歩約10分。 車/「イオンモール東久留米」を目指し、所沢街道「南町4丁目交差点」から約600m。 オープン期間:火~土曜日、12:00〜16:30 閉園:日・月曜日、雨天・荒天日 季節閉園:1〜2月、7〜8月
-
東京都
花の庭巡りならここ! エキゾチックな植物の宝庫「夢の島熱帯植物館」
冬になると、ほとんどの植物が休眠して庭やベランダは寂しくなり、みずみずしいグリーンの葉が生い茂る景色に飢えてしまう……。そんなガーデナーにご紹介したい、とっておきの場所が、東京都の「夢の島熱帯植物館」。冬も21〜22℃に保たれた温室では、約900種の熱帯植物が生き生きとした表情を見せてくれます。熱帯植物の圧倒的な生命力に触れて、寒さで鬱々とした気分を吹き飛ばしましょう! 都会のオアシス、トロピカルガーデンにようこそ 高層ビルを借景に建つ都会のオアシスが、「夢の島熱帯植物館」です。1988年のオープン以来、魅力ある展示やイベントを続け、現在の年間来場者数は約10万人。近年は外国人観光客も多く、癒しのスポットとして人気を集めています。植物が展示されている大温室のドームは、A棟の「木生シダと水辺の景観」、B棟の「ヤシと人里の景観」、C棟の「小笠原の植物とオウギバショウ」の3つのテーマで構成されています。冬は特に外気温との差を感じやすいので、脱ぎ着できる服装で出かけるのがオススメです。 「夢の島熱帯植物館」のエントランス。最寄り駅の新木場駅からは徒歩約15分で、夢の島公園敷地内奥の海側に建っています。43ヘクタールにも及ぶ夢の島公園内に入ると、急に空が大きく開けて清々しい景色が広がるので、植物園までの散歩をゆったりと楽しむのもオススメ。熱帯雨林の環境を維持するために温室で使われる暖房エネルギーは、新江東清掃工場のゴミの熱焼却で発生する余熱を利用してまかなわれているそうです。 ガラス張りの温室内の天井は一番高い所で28mもあり、ヤシの林や太いものでは直径30㎝にもなる象竹、タコノキなど、熱帯植物ならではの迫力ある風景が楽しめます。エキゾチックな花姿のトロピカルフラワーに魅了されるほか、バナナやマンゴー、カカオ、バニラなど、普段おいしく食べている「食材」としてしか見かけない植物も多く、「本来はこんな姿で生きているのね!」と改めての感動を覚えること請け合いです。 温室内には傾斜を付けた水路が張り巡らされ、滝の流れるシーンも見られます。この水路が温室内の湿度を高める役割を果たしており、熱帯らしい草いきれの臨場感も魅力の一つです。滝の裏側は通路になっていて、シダやモンステラなどが壁面を覆い尽くすように生い茂っています。 「年中変わらずこのような景色が続くのだろうな」というイメージを持つかもしれませんが、さにあらず。人工的に熱帯環境が整備されているものの、ここは四季のある日本で温度差があるうえ、太陽の光量や軌跡によって植物も反応するので、温室内にも四季があるというのです。季節ごとに開花リレーが見られ、違った雰囲気が味わえるそう。「見頃を迎えた花」が毎月発表されているので、ぜひチェックして出かけてみましょう。 シベが長く伸び、花弁が反り返ってフワフワとした可憐な花を咲かせるフウリンブッソウゲは、12月に見られる花です。 ガイドツアーやバラエティーに富んだイベントを多数開催、リピーター続出! 今回は館長の榎本浩さんに、手厚いガイドツアーをしていただきました。コンゴの衣装をまとった姿で登場、さらにムードが盛り上がります。珍しい熱帯植物の紹介はもちろん、香り、触感なども織り交ぜながら、詳しい解説が展開され、目からウロコの発見の喜びでいっぱい。ガイドを務める係員によって話の内容が異なり、それぞれに持ちネタがあるそうで、何度でも通いたくなります。 「夢の島熱帯植物館」では、毎週末を中心に楽しいイベントが開催されています。そのコンテンツがバラエティーに富んでいるのも、リピーターが多い理由の一つ。寄せ植え講習会や食虫植物の捕虫実験、ここで飼育されているミツバチの巣箱の観察、イモ掘り、チョコレートづくり、ハロウィン、音楽コンサートなど、枚挙に暇がありません。写真は大人気のイベント、空中散歩の様子。温室の天井から垂らしたロープを自身で登り、鳥になった視点で熱帯植物館の全景を見渡します。 そして、ナイトガーデンの公開をしているのも、「夢の島熱帯植物館」ならではの魅力。毎年、夏の週末と冬(1日だけのクリスマスコンサート)に開催しています。これは、夜に開花する熱帯植物の魅力を知ってもらおうという試みでスタートしました。開館時間を20:30まで延長してクラフト体験やミニ縁日、コンサートなどさまざまなイベントを開催。また、館内のカフェがバーに変身し、オリジナルカクテルがメニューに登場するバータイムも盛況です。写真は、冬のクリスマスコンサートの様子。 トロピカルメニュー充実のカフェ&オリジナルグッズや雑貨が揃うショップ 「夢の島熱帯植物館」には「夢の島カフェ」があり、トロピカルな雰囲気を味わえる、なんとも魅力的なメニューが揃うので、ぜひご紹介しましょう。食事メニューは、ロコモコ(ハンバーグごはん、750円)、グリーンカレー(800円)、ドライカレー(750円)、スパムライス(500円)など。 デザートは温室で見られる植物にちなんだラインナップで、熱帯フルーツアイス(タロイモ、マンゴー、ココナッツ、各380円)、ベン&ジェリーズアイスクリーム(バニラ、チェリーガルシア、チャンキーモンキーなど全6種、各380円)が大人気とか。 ドリンクもコーヒーや紅茶などのスタンダード以外に、グァバジュース、マンゴージュース(各400円)、バジルシードドリンク(マンゴー、ライチなど4種、各290円)と、どれをオーダーしようか迷ってしまう充実ぶり! オープンは11:00〜16:00で、持ち込みや休憩のみもOKです。 館内には熱帯植物にまつわる書籍や、園内の風景を切り取ったポストカードのほか、文房具、雑貨などを扱うショップも併設。熱帯植物の苗の販売もあります。そして「夢の島熱帯植物園」でしか手に入らない、2種類のオリジナルの手ぬぐい(870円)も揃い、こちらは記念のお土産にぴったりです。 Information 「夢の島熱帯植物館」 所在地:東京都江東区夢の島2-1-2 TEL:03-3522-0281 http://www.yumenoshima.jp/ アクセス:JR京葉線、東京メトロ有楽町線、りんかい線「新木場」駅より徒歩15分 Open 9:30~17:00(入館は16:00まで) 休館日:月曜(祝日、都民の日に当たる場合はその翌日)、12月29〜1月3日 入園料:大人250円、65歳以上120円、中学生100円(小学生以下と都内在住在学の中学生は無料) 併せて読みたい 神秘の色のヒスイカズラ、その魅力とは 花好きさんの旅案内、シンガポール「ナショナル・オーキッド・ガーデン」 オージーガーデニングのすすめ「オーストラリアの木生羊歯」 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが、醍醐味ですね。https://twitter.com/passion_oranges/