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皇室ゆかりのバラ〜皇居東御苑のバラとプリンセスローズ〜

皇室ゆかりのバラ〜皇居東御苑のバラとプリンセスローズ〜

東京・千代田区の皇居東側に付属する庭園「皇居東御苑」の一角では、雅子様のお印である「ハマナス」や眞子様のお印である「木香茨(もっこうばら)」をはじめとする15種のバラが栽培され、4月下旬から5月上旬に見頃を迎えます。ここでは、バラ文化と育成方法研究家で「日本ローズライフコーディネーター協会」の代表を務める元木はるみさんに、「皇居東御苑」に咲く15種のバラと皇族の方々のお名前を冠したバラを紹介していただきます。

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昭和から平成、そして令和へと引き継がれるバラ

モッコウバラ
バラの中でも早咲きのキモッコウバラ。Photo/Svetlana Mikhalevich/Shutterstock.com

「令和」の新しい時代が明けようとしています。”皇室とバラ”といえば、雅子様のお印が「ハマナス」、眞子様のお印が「モッコウバラ」。そして雅子様、眞子様のお持ち物には、この「ハマナス」、「モッコウバラ」が描かれているとのことです。

皇居東御苑の一角にあるバラ園には、この「ハマナス」や「モッコウバラ」をはじめ、全部で15品種のバラが植栽されています。もともとは、昭和天皇に献上され、育てておられたバラが大半で、上皇陛下のお考えから1996年(平成8年)に整備され、吹上御所からこちらに移植されたそうです。

皇居東宮御苑のバラ園エリア
皇居東御苑のバラ園エリア。

では、植栽されている15のバラをご紹介しましょう。

1.テリハノイバラ(ロサ・ウィクライアーナ)

テリハノイバラ(ロサ・ウィクライアーナ)
テリハノイバラ(ロサ・ウィクライアーナ)
東御苑では低く仕立てられている。

一季咲きで3~4cmほどの白い花を咲かせ、つる性のほふくする枝に光沢のある照り葉が茂るのが特徴です。20世紀初頭、ヨーロッパやアメリカに渡り、さまざまなランブラー、ハイブリッド・ウィクライアーナの作出に貢献しました。

原生地:日本、中国

2.イザヨイバラ(ロサ・ルクスブルギー)

イザヨイバラ(ロサ・ルクスブルギー)

繰り返し咲く約8cmの花は、花弁が多くとても美しい。満月が少し欠けたような花形から十六夜(いざよい)バラと呼ばれます。江戸時代には、葉の形状から、「サンショウバラ」と呼ばれていました。

原生地:中国の南西部から東南アジア

3.シロバナハマナス(ロサ・ルゴサ・アルバ)

3.シロバナハマナス(ロサ・ルゴサ・アルバ)

ハマナスの白花品種で、花径約8cmの花は繰り返し咲き、秋には大きな実を付けます。

原生地:カムチャッカ半島、千島列島

4.コウシンバラ(ロサ・キネンシス)

4.コウシンバラ(ロサ・キネンシス)

四季咲き性が強く、コンパクトな木立ち性の樹形。1309年、藤原氏の氏神である春日神の霊験を描いた絵巻「春日権現験記」(三の丸尚蔵館所蔵)の第5巻第2段に描かれた花が、このバラではないかといわれています。

原生地:中国

5.かのこ

一季咲きで、5枚弁の紅色の花弁は、中心が白く抜け、房咲きになります。

原生地:日本

6.フローレンス・ナイチンゲール

フローレンス・ナイチンゲール国際基金発足75周年を記念して作出されたバラ。2009年9月に国際看護師協会から贈られ、このバラ園には、上皇・上皇后両陛下がお手植えされました。

1989年、アメリカで作出されたシュラブローズ。

7.のぞみ

のぞみ

ほふく性の株でコンパクト。一重の可憐な薄いピンクの花は一季咲きです。

作出は1968年、小野寺透氏。

8.ハマナス(ロサ・ルゴサ)

ハマナス(ロサ・ルゴサ)

このバラが日本からヨーロッパへ渡ると、「耐寒性に優れ、返り咲き性があり、大きなローズヒップも楽しめる」ことから、北欧などの寒冷地向きのバラの交配に貢献しました。爽やかなスパイシー香があります。

原生地:日本

9.マイカイ

マイカイ

中国では、「マイカイ」(メイグイ)は、バラの総称に加え、薬や食用に使用される、このバラの個体名も指します。ダマスクにスパイシー香が混ざる心地よい香りの花は、お茶やお菓子に利用されてきました。

原生地:中国

10.サクラバラ(ロサ・ウチヤマナ)

サクラバラ(ロサ・ウチヤマナ)

5弁の花弁の先にピンクが乗る優しい雰囲気のバラは、つる性で一季咲き。日本のノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)と中国のコウシンバラ(ロサ・キネンシス)の交雑種とみられます。

原生地:日本(九州)

11.サンショウバラ(ロサ・ヒルトューラ)

サンショウバラ(ロサ・ヒルトューラ)

一季咲きの5弁の大輪。薄いピンクの花の中央にある豪華なシベが美しい。木立ちの大木になり、葉の形状から「山椒薔薇」、富士箱根地区が自生地であることから「箱根薔薇」とも呼ばれています。

原生地:日本

12.ナニワイバラ(ロサ・レヴィガータ)

12.ナニワイバラ(ロサ・レヴィガータ)

光沢のあるしっかりとした常緑の葉に、純白の5弁の大輪の花が美しい一季咲きのバラ。樹勢が強く、大きな株に育ちます。1700年頃、日本へ。

原生地:中国

13.ツクシイバラ(ロサ・ムルティフローラ・アデノカエタ)

ツクシイバラ(ロサ・ムルティフローラ・アデノカエタ)

5弁のハート形の花弁の先に優しいピンクが乗り、房咲きになる姿が愛らしい。一季咲き。

原生地:日本(九州)

14.キモッコウバラ(ロサ・バンクシアエ’ルテア’)

キモッコウバラ(ロサ・バンクシアエ'ルテア')

八重咲き(プレナ)の黄色(ルテア)のモッコウバラは、常緑のつる性で、温暖な場所で真価を発揮します。東御苑のバラ園では、陽当たりがよく、ベッド仕立てにしてあるため、とても花付きがよく、開花時には大変見事に咲き誇ります。

原生地:中国

東御苑のバラ園
東御苑のバラ園では、キモッコウバラがベッド仕立てに。他ではあまり見ない仕立て方。

15.モッコウバラ(ロサ・バンクシアエ)

白い(アルバ)八重咲きのモッコウバラは、キモッコウバラと同様、ベッド仕立てに。

19世紀初め頃、八重咲きの白いモッコウバラ(ロサ・バンクシアエ・バンクシアエ)は、スコットランドの園芸学者兼植物学者ウィリアム・カーによって、中国からヨーロッパに紹介されました。その際、イギリスのキュー・ガーデン所長、ジョゼフ・バンクスの妻の名を付けて、「レディ・バンクス・ローズ」という名で紹介されました。白の一重と八重、黄色の一重には香りがあることから、「木香薔薇」と呼ばれます(黄色の八重は微香)。

原生地:中国

以上のように、植栽されている品種を紐解けば、東御苑のバラ園には、中国との歴史や友好、記念など、日本の歴史、皇室の歴史、バラの歴史の一端が、凝縮されていることが見えてきます。

皇族の方々のお名前を冠したバラ

そして、東御苑バラ園には植栽されてはいませんが、皇族の方々のお名前を冠したバラもご紹介しましょう。

‘プリンセス・ミチコ’(F)

バラ プリンセス・ミチコ
1966年 イギリス、ディクソン作出

‘エンプレス・ミチコ’(HT)

‘エンプレス・ミチコ’(HT)
1992年 イギリス、ディクソン作出

‘プリンセス・マサコ’(HT)

‘プリンセス・マサコ
‘(写真協力/ローズファーム・ケイジ)

雅子様がご成婚前に直々に選ばれたバラ「プリンセス・マサコ」。滋賀のWABARA / Rose Farm KEIJIのバラ育種家、國枝啓司さんが1993年に作出しました(現在は非売品)。

‘マサコ(エグランタイン)’(S)

バラ マサコ(エグランタイン)
1994年 イギリス、デビッド・オースチン作出

‘ハイネス雅(みやび)’(HT)

ハイネス雅(みやび)(HT)
1997年 日本作出

‘プリンセス・サヤコ’(HT)

‘プリンセス・サヤコ’(HT)
1980年 フランス、メイアン作出

‘プリンセス・アイコ’(F)

‘プリンセス・アイコ’
2002年 日本、武内俊介作出

皇室と縁のあるバラ農家、長野県富士見町にある「アサオカローズ」さんでは、美智子様のお誕生日には、1980年から毎年、‘プリンセス・ミチコ’の花束を献上し、2013年からは、‘プリンセス・ミチコ’に3種のバラをブレンドしたローズウォーターを献上されています。

また、寛仁親王妃信子殿下は、公益財団法人日本ばら会の名誉総裁で、淡いローズピンクが美しい‘プリンセス・ノブコ’(HT/2001年 スコットランド アンG.クッカー作出)と名のついたバラもあります。

年号が変わるこの節目の年に、皇室にゆかりのあるバラに再注目してみました。これから全国でバラが咲き誇る季節。ぜひ、お近くのバラ園などでも、皇室にゆかりのあるバラの美しい咲き姿を愛でてはいかがでしょうか?

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