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牧野富太郎博士ゆかりの植物に出合える「練馬区立牧野記念庭園」
練馬区立牧野記念庭園を訪ねて 牧野富太郎博士が描いた植物画集とポストカード(高知県立牧野植物園刊)。特注の細筆で描写したという植物画の緻密さは驚嘆に値する。 子どもの頃、父の本棚にあった植物図鑑を飽かず眺めていた。その図鑑の著者が、日本の植物分類学の基礎を築いた牧野富太郎博士と知ったのは、ずっと後のことだ。植物との付き合いが今も続いているのは、図鑑の植物画が記憶のどこかに残っているからかも知れない。 ‘染井吉野’とほぼ同時期に開花する、庭園内の桜‘仙台屋’。牧野博士が名付けたとされる。 『東京 桜100花』(2015年、淡交社刊)という本を出版するにあたり、2年ほど桜三昧の日々を過ごしたことがある。桜に関するあらゆる書物を読み、都内の桜を撮影し、さらに原木のある北海道など各地にも足をのばした。その折に、牧野博士が名付けたとされる‘仙台屋’という桜があることを知ったが、開花のタイミングに合わず、撮影できなかったことが心残りだった。 左/‘仙台屋’と並んで咲く‘染井吉野’。右/‘仙台屋’から数日遅れて開花するヤマザクラ。いずれも大木だ。管理室・講習室棟の前では、等身大の博士のパネルが迎えてくれた。 今年も桜の季節が到来し、わが家のバルコニーでも‘河津桜’、‘陽光’に続き、‘染井吉野’が咲き始めた。仙台屋も染井吉野と同じ頃の開花のはずと、西武池袋線大泉学園駅に近い、練馬区立牧野記念庭園を訪ねた。そこには牧野富太郎博士が晩年の30年あまりを過ごした私邸跡地に設けられた庭園と記念館がある。折しも牧野博士が主人公のモデルとなる、NHKの朝ドラ「らんまん」が始まるというタイミングで、園内は思いのほか賑わいを見せていた。 武蔵野の面影を残す庭園 庭園内には、アカマツ、エゴノキなど武蔵野の雑木林に以前からあった大樹と、博士収集の植物が今も残されている。 牧野富太郎博士は、その生涯で1,500種類以上の植物を発見・命名している。出身地の高知県には雄大なスケールの県立牧野植物園があるが、練馬の庭園も博士が「我が植物園」と呼んでいたように、各地から集めた植物など、300種類以上の多彩な草木を見ることができる場所だ。 庭園入り口に咲く早咲きの桜、‘大寒桜’。薄紅色の花は終わりに近づくにつれ濃い紅色に変化していく。 今では周辺は住宅地だが、かつては武蔵野の雑木林だった地で、その面影を残す大木も見られ、草木も野にあるような自然な佇まいを見せている。博士は桜を好み、園内では仙台屋以外にもカンヒザクラ、ヤマザクラなどの野生の桜、さらに大寒桜、‘染井吉野’、‘福禄寿’などの栽培の桜が開花する。 桜‘仙台屋’の由来を辿る 咲き始めの可憐な花姿を見せる桜‘仙台屋’。 ‘仙台屋’は淡い紅紫色で、5弁の楚々とした花姿を見せていた。原木はかつて高知市の仙台屋という店の庭にあったもので、その屋号にちなみ牧野博士が名付けたとされている。桜の由来については、高知の園芸家、武井近三郎氏の著書『牧野富太郎博士からの手紙』(高知新聞社刊)に以下のような記述がある。「佐伯さんという人が仙台から移動してきて、中須賀で仙台屋という屋号で商売を始めたのですが、その屋敷の庭へ移植した桜です」。 満開時の‘仙台屋’と‘染井吉野’(左)。‘仙台屋’の横には地下根が伸びて育った若木が寄り添うように立っている。 桜の種類は、東北から北海道にかけて分布する野生種のオオヤマザクラ(ベニザクラ)の栽培品種ではないかとされているが、定かではない。牧野博士はこの桜を気に入り、武井氏に「高知の名物の桜にするべし」と書き送り、また苗木ができたら自分へも送ってほしいと再三手紙を出している。 庭園内の‘仙台屋’は博士自ら植栽した桜で、樹齢70年と推定される。 武井氏は博士の熱意に応え、桜の小枝1,000本を挿し木して苗木を育てた。その苗木が博士に送られたという高知新聞の記事が残っている。1953年12月4日の記事で、それによると庭園の‘仙台屋’は樹齢70年ということになる。 これは推測だが、仙台屋のあるじは望郷の念に駆られ、宮城から桜の苗木を移植したのではないだろうか。桜は高知に根付き、やがて博士が故郷を偲ぶ桜となった。そんな風に花に寄せる思いをたどることができるのも、桜ならではと思えるのだ。 牧野富太郎博士の生涯 記念館の常設展示室に飾られた牧野博士の肖像。笑顔が印象的だ。 牧野富太郎(1862-1957)は、1862年(文久2)に高知県高岡市佐川村(現佐川町)の酒造業を営む裕福な家に生まれた。子どもの頃から植物に興味を示し、小学校を中退、植物採集に励んだという。22歳で上京し、本格的に植物研究の道に進んだが、ほとんどが独学といえるものだった 記念館、常設展示室の展示資料。植物標本と博士愛用の採集道具が並ぶ。 1889年(明治22)、土佐で発見した新種「ヤマトグサ」に学名をつけ、友人と創刊した雑誌に発表するなど、創生期であった日本の植物学に大きな足跡を残している。それまで日本では、植物の学名を付けることを海外の学者に依頼していたのだ。1888年(明治21)に『日本植物志図篇』、1900年(明治33)に『大日本植物志』の刊行を始めた。さらに集大成となる『牧野日本植物図鑑』を1940年(昭和15)に刊行。この図鑑は植物研究のバイブルとして、今も多くの人々に愛用されている。 妻に捧げるスエコザサ 牧野博士胸像を囲むスエコザサ。妻への感謝と愛をこめて博士が名付けた笹だ。 博士は妻、寿衛との間に13人の子どもをもうけている。研究のために必要な経費と家族を養うために大変な苦労をしたことが、『牧野富太郎自叙伝』(日本図書センター刊)に残されている。研究に没頭する博士を支え続けた妻亡きあと、博士は仙台で見つけた笹を新種としてSasa suwekoanaと命名し、和名をスエコザサとした。スエコザサは庭園の博士の胸像を囲むように植えられている。 博士の植物画 記念館の常設展示室に置かれた、牧野博士のさまざまな著書。 牧野博士は植物画を自ら描いている。『牧野富太郎植物画集』(高知県立牧野植物園刊)によると、その数は約1,700 点という。特注の細筆や面相筆で描かれた絵は、草木の息吹まで伝わってくるような、細密で生気に満ちたものだ。『日本植物志図篇』を自費出版するにあたっては、石版印刷の技法を学び、自ら印刷を手掛けたという。日本各地で植物を採取し、描き、出版する、それは驚嘆に値する仕事量だ。 庭園の植物 300種類以上の植物が生育する庭園は、周囲を住宅に囲まれながら、そこだけは別天地の様相を見せている。 庭園では季節ごとにさまざまな植物が開花し、それを楽しみに通う人も多い。私が訪ねた3月下旬には、ヤブツバキ、ボケ、カタクリ、コブシ、ヒロハノアマナ、シュンラン、バイモなどの花を見ることができた。 左上から時計回りに/クサイチゴ、バイモ、ヤマブキソウ、カタクリ、ヒロハノアマナ、ボケ。 牧野博士が植栽した樹木には、樹名板に独特のマークが添えられている。そのマークは博士の印鑑と同じく、巻いた「の」(マキノを意味する)が描かれていて、博士のユーモアあふれる人柄が感じられる。 庭園内の施設 庭園内には、企画展示室と常設展示室のある記念館、書屋展示室、講習室などがある。常設展示室には博士の遺品や資料が展示され、その生涯と業績をたどることができる。博士愛用の植物採集道具を見ていると、野山を駆け巡っている姿が目に浮かぶようだ。 書物が積み上げられた書斎は、博士が執筆し、植物画を描いた当時を再現している。 木造の家の一部がそのまま建物に覆われた書屋展示室は、今年(2023年)4月3日にリニューアルオープンし、書斎と書庫内部が当時の様子に近い状態に再現されている。 植物に寄せる思い 採集道具の中でも印象的な牧野式胴乱。 牧野博士は学問の世界に留まらず、各地の植物採集会の講師を務め、全国に植物愛好家が増えるようにと願っていた。植物への愛は尽きることなく、著書で繰り返し語った。「私は植物の愛人としてこの世に生まれ来たように感じます。或いは草木の精かも知れんと自分で自分を疑います。ハハ、、」というユーモアたっぷりの一文も残されている。 著書の表紙写真。左/『牧野富太郎自叙伝』(1997年、日本図書センター刊)、右/『好きを生きる 天真らんまんに壁を乗り越えて』(2023年、興陽館刊) 初期の自叙伝の最後を締めくくる句は「草を褥に木の根を枕、花を恋して50年」。後に「今では私と花との恋は、50年以上になったが、それでもまだ醒めそうもない」と綴っている。 植物を愛し、愛された牧野富太郎の94年の生涯。そのゆかりの庭園を散策し、あらためて植物と在ることの幸せを感じた。 庭園内の顕彰碑。「花在れバこそ、吾れも在り」という博士の言葉が刻まれている。 Information 練馬区立牧野記念庭園面積:2,576.22㎡開園:1958年(昭和33)12月1日場所:東京都練馬区東大泉6-34-4電話:03-6904-6403開園時間:9時~17時 休園:毎週火曜日、年末年始入園料:無料アクセス:西武池袋線大泉学園駅(南口)歩5分HP: https://www.makinoteien.jp
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埼玉県

【お出かけ情報】新しい仲間が加わった春のムーミン谷をのんびり散策しませんか?
ゆったりリラックスした一日を過ごせる「メッツァ」 ムーミンバレーパークは埼玉県飯能市の宮沢湖畔にある「メッツァ」の一部にあります。「メッツァ」とはフィンランド語で、森。北欧をお手本にしたライフスタイル提案型の複合型施設で、北欧のライフスタイルを感じられるマーケットやアクティビティが体験できる「メッツァビレッジ」と、ムーミンの物語をテーマにした「ムーミンバレーパーク」の2つのゾーンから構成されています。どちらもペットと一緒に入場ができ、お散歩や食事(テラス席)、ショッピングを楽しむことができます(※入場可能な施設・店舗はHPをご確認ください)。 フィンランドの陶器ブランド「ARABIA」の食器で提供されるカフェレストラン「nordics」。湖を望みながら食事ができる。 入り口からほど近い「メッツァビレッジ」は入場無料のエリア。季節ごとに移り変わる森と、野鳥が訪れる湖の景色を眺めながら、ゆったりと一日を過ごすことができます。湖のほとりに広がる芝生の広場にはデッキチェアが点在し、寝そべってキラキラ輝く湖面を見ているだけで、心も身体もリフレッシュ。もっとアクティブに過ごしたい人には、カヌーやクリアカヤック、アイランドボートなどのアクティビティがおすすめ。パラソル付きのアイランドボートにはテーブルが設置されており、湖上のピクニックが楽しめます。湖の周囲にはカフェやレストランが設けられているので、ランチもおやつも持たずに手ぶらでお出かけOKです。 カヌーはレンタルのほか、カヌー作り体験もできる。 北欧のヴィンテージアイテムなどが並ぶ「森と湖のマルシェ」 2023年4月22日(土)・23日(日)、メッツァビレッジで北欧のアイテムと自然が楽しめる「森と湖のマルシェ」が開催されます。北欧のヴィンテージアイテムや植物店、伝統料理を販売するキッチンカーなどが出店します。湖のほとりでゆったりショッピングを楽しみませんか? 第19回森と湖のマルシェ 開催日時/2023年4月22日(土)・23日(日)10〜16時場所/メッツァビレッジ特設会場*雨天中止 物語の世界を堪能できるムーミンバレーパーク 湖のほとりを歩いてメッツァビレッジの奥へと進むと、「ムーミンバレーパーク」にたどり着きます。「本」の形をしたウェルカムゲートをくぐり抜ければ、ムーミンの物語の舞台、ムーミン谷が待っています。フィンランドの作家トーベ・ヤンソンによるムーミン・シリーズは、ムーミン一家と個性的な仲間たちが、美しい自然に囲まれ平和でのんびりとした日常生活を過ごしながらも、冒険を通じて成長し自立していく姿が描かれています。 ムーミン一家と仲間たちが暮らすムーミン屋敷。素朴で上品なインテリアは必見。 ムーミンパパの作った水浴び小屋。 戦いやアクションといった派手な展開はない代わりに、日常の暮らしの喜びと厳しくも豊かな自然と対峙する方法や他者との調和、自立といった、どの時代にも普遍的なテーマで人々を魅了し、世界中で愛されている物語です。舞台となるムーミン谷は、海と山に囲まれ、春にはムーミンママが丹精する庭が花いっぱいになる美しい場所です。 春の花がいっぱいのムーミン屋敷の庭。 この物語が生まれた北欧フィンランドでは、人々は幼い頃から自然と共生し、自然から多くのことを学んで暮らしています。春のイベント「スプリングフェスティバル」では、植物採集が好きなヘムレンさんをムーミンバレーパークの新しい仲間として迎え入れ、フィンランドのような身近に「学び」を体験できる「Hemulen‘s academy(ヘムレンズアカデミー)」を行っています。アカデミーでは湖畔の周りを彩る季節の植物や水辺を訪れる野鳥の観察など、ムーミンバレーパークの自然や生き物を学ぶことができるフィールドワークに参加できます。 植物学者のヘムレンさん。デスクの上に並ぶのはヘムレンさんの収集物?©︎Moomin CharactersTM 夢いっぱいのアトラクションとかわいいムーミングッズ ©︎Moomin CharactersTM 園内では、若き日のムーミンパパたちの冒険を一緒に体験できる「海のオーケストラ号」や、ムーミンやムーミン谷の仲間たちによる歌とダンスのエンターテイメントショーなど、夢いっぱいのアトラクションが待っています。ほかにも、ここでしか買えないリトルミイのグッズが集合した「リトルミイの店」や、約400冊のムーミン関連書籍がずらりと並ぶ「ライブラリー カフェ」、売り場面積・商品数が世界最大級のショップ「ムーミン谷の売店」など、ショッピングの楽しみも満載。 おしゃれな「ライブラリー カフェ」。ムーミンのマシュマロを浮かべたキュートなラテ。 豊かな自然の中で、のんびりそれぞれのペースで過ごせて、かわいいムーミンたちにも出会えるメッツァへ、春のお散歩に出かけてみませんか。 メッツァ ■住所/埼玉県飯能市宮沢327-6■HP https://metsa-hanno.com■アクセス/西武線飯能駅から「メッツァ」行き直行バス、または「メッツァ経由武蔵高萩駅」行き路線バスで13分 メッツァビレッジ ■営業時間/平日10:00〜18:00 土日祝10:00〜19:00■入場料/無料 ムーミンバレーパーク ■営業時間/平日10:00〜17:00 土日祝10:00〜18:00※お正月、お盆休み、GWなど、施設が指定する日において営業時間が異なる場合があります。HPでご確認ください。■入場料/1デーパス 【2023年4月30日までの料金】大人(中学生以上):前売り販売3,000円 通常販売3,200円子ども(4歳以上小学生以下):前売り販売1,800円 通常販売2,000円【2023年5月1日からの料金】大人(中学生以上):前売り販売3,400円 通常販売3,600円子ども(4歳以上小学生以下):前売り販売2,000円 通常販売2,200円
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東京都

カメラマンが訪ねた感動の花の庭。「東京競馬場」のナチュラリスティックガーデン
今、最も関心のあるガーデンデザイン 長い花壇の一番西側、コニファーを背に、右半分は日陰、左半分は逆光という環境下で、ミューレンベルギア・カピラリスとアマランサスが全く違う表情を見せる。 2019年1月に横浜でPiet Oudolf氏の映画「Five Seasons」を鑑賞して以来、僕にとってナチュラリスティックガーデンが一番興味のあるガーデンの形になりました。映画を見る前にも、長野県須坂市の園芸店「ガーデン・ソイル」の田口勇さんにPiet Oudolfの本を見せてもらい、それまで全然知らなかった美しい世界があることを知りました。それからは、北海道の大森ガーデンや上野ファーム、十勝千年の森などでグラス類と宿根草のガーデンを撮りまくり、秋には山梨・清里のポール・スミザーさんが手がけた「萌木の村」で紅葉したグラスと宿根草のシードヘッドを夢中で撮ったりしていました。ただ、その時はまだはっきりした「ナチュラリスティック」という認識はなく、今までの花中心のガーデンから新しい形のものが生まれてきたんだろうというくらいにしか思っていませんでした。 皆が関心を寄せる「ナチュラリスティック」 手前で黄色く紅葉する株は、アムソニア・フブリヒティ。花期は短いが株の姿を楽しむ植物。隣のミューレンベルギアの後ろは羽衣フジバカマで、晩秋に寒暖差が大きくなるとこげ茶色に変化し、ガーデンのアクセントになる。羽衣フジバカマの後方の白い穂はミスカンサス‘モーニングライト’。さらに後方のルドベキア・マキシマは、縦の白い線がアクセントになっている。 「Five Seasons」を観て以降、「ナチュラリスティック」という概念を意識しだすと、SNSのあちこちで自然志向、消毒をしないバラ、化学肥料を使わない庭の話などが目につくようになりました。Facebookでは平工詠子さんのグラスを多用した美しい庭の写真を見せていただき、知り合いのガーデナー、さつきさんのFacebookで服部牧場を見たときには、今最も撮影したいテーマはこれだ! と確信しました。 綺麗な光に浮かび上がる庭をベストなタイミングで撮りたい このエリアには、ミューレンベルギア・カピラリスをはじめ、センニチコウ‘ファイヤーワークス’、アマランサスのスムースベルベットや黒葉のミレット、小型のグラスのペニセタム‘JSジョメニク’、ルドベキア・マキシマなどが茂っている。線路手前のグリーンは、ユーフォルビア・ウルフェニー。 いつも言っていることですが、僕が撮影のときに一番に思うのは「綺麗な光で撮る」ことで、その意味でも「ナチュラリスティックガーデン」の撮影は、まさに僕にぴったりのテーマ。朝日や夕日に浮かび上がるグラスや宿根草の花壇を撮影しているときは、まさに至福の時間です そして2022年10月上旬に、以前僕に服部牧場を教えてくれたガーデナー、さつきさんのFacebookに登場していたのが、今回ご紹介する「東京競馬場」でした。この東京競馬場の庭の手入れに、服部牧場の平栗智子さんが行っていることは知っていましたが、頭の中で競馬場とグラスの庭がうまく結び付かなかったことから、さつきさんにそうコメントすると「今井さん、本当に綺麗ですからぜひ行ってください」と返信がありました。 花壇の中央付近に立ち、レンズを西に向けた完全に逆光の写真。こげ茶色の葉を持ち、コーン状の実が立ち上がるミレットと、穂を立ち上げるペニセタム‘レッドボタン’、さらに後ろのミューレンベルギア・カピラリスが西日を受けて輝く。 その1週間後に秋の服部牧場へ撮影に行くと、今度は平栗さんが「東京競馬場、今が一番綺麗だから、今井さんに撮ってほしいと思っていたんですよ」と。平栗さんが競馬場の手入れに行く日程まで教えてくれたので、2人のガーデナーさんがそこまですすめてくれるならばと、天気のよい日の午後に伺う約束をしました。 美しく捉えるにはどうするか、しばし悩む 「この写真、まるで花火大会の最後の乱れ打ちのよう」と植栽を担当した平栗智子さん。確かに賑やかで楽しい景色だ。 撮影日となった2022年11月18日は、夕方までずっと晴れの予報。グラスの撮影には最適の天候でした。競馬場の入り口に迎えにきてくれた平栗さんが運転するモスグリーンのしゃれた車に先導してもらい、場内を走ってトンネルを抜け、内馬場(コースの内側)に到着。すると、そこは広い芝生のエリアで、子どもたちのためのいろいろな遊具が並んでいました。その外側には、子ども用のミニ新幹線のレールが敷いてあり、競走馬が走るコースとの間が、グラスと宿根草の花壇になっていました。 まだ少し日差しが強いので、花壇の周りを下見しながら「これは大変だ」というのが第一印象でした。なぜなら、写真を撮影するときに、プロカメラマンとアマチュアカメラマンとの一番の違いは、写真の中に無駄なものが写り込んでいるか、いないか。プロのカメラマンは、シャッターを切る前にファインダーの隅々まで見て余計なものが入っていないことを確認し、初めてシャッターを切るものです。 日が沈むまでたった15分の撮影に挑む この写真も花壇中ほどからレンズを西へ向けたカット。プレーリーブルース(中央の大きな白い穂)から後方のミューレンベルギアまで続くグラスが美しく、特に赤いアマランサスがよいコントラストを見せている。 ところが、目の前には緑の芝生にピンクに染まったミューレンベルギアと真っ赤なアマランサス。これだけなら言うことのない景観ですが、その後ろには馬場のコースを縁取る白い柵があり、手前にはコンクリートで舗装された帯の上を線路が通っています。これらの構造物を全部入れずに構図を決めるのは不可能だし、2人が口を揃えて言うように、グラス類は本当に綺麗です。 コニファーによる日陰のグリーンバックで、植物の美しさが際立つ1枚。 太陽がだんだん低くなってくるなか、「どこをどう撮ればいいのだろう」「気になる構造物が少しでも入らないアングルは?」と気持ちは焦るばかりで、一向に撮影が始められませんでした。そして、あっちへ行ったり、線路に降りたりしながらアングルを探しているときに気がついたのです、「線路をガーデンの園路に見立てればいい」のだと。夕日に輝くグラスの花壇と線路をファインダーの中に収めてみると、金色に輝くグラス類が圧倒的に綺麗で、線路すら気にならないと思いました。 ガーデンの一番東側のエリア。何株も植えられているミューレンベルギア・カピラリスが、沈む夕日の最後の光を受けて赤く輝き幻想的だ。 「夕陽に輝くグラス類を綺麗に撮る」「線路などの構造物は、なるべくグラス類の邪魔にならないように入れる」と決めて、そこから日が暮れるまでのわずか15分ほどでしょうか、沈みそうな夕日の位置を確認しながら、長い花壇の周りをあちらに行ったりこちらに来たり。夢中でシャッターを切って、気が付けば夕日は西側の高い木々の向こうに消えていました。
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第1回 東京パークガーデンアワード 代々木公園【舞台裏レポ】5つの庭づくり大公開
コンテストの舞台は都立代々木公園の花壇 コンテストガーデンが作られる以前のオリンピック記念宿舎前広場。2022年10月中旬の様子。 都市公園を新たな花の魅力で彩るプロジェクトとしてスタートした「東京パークガーデンアワード」。第1回の舞台となるのは、都内でも屈指の利用者数がある「都立代々木公園」の中です。アクセスがとてもよく、JR山手線「原宿」駅から徒歩3分の原宿門から入ってすぐ右手の「オリンピック記念宿舎前広場」に、5つのコンテストガーデンと吉谷桂子さんによるモデルガーデン「the cloud」があります。 通路に沿った細長い敷地を花壇に変え、A〜Eの5つの植栽スペースが設けられました。1エリアにつき広さは72〜85 ㎡。 コンテストガーデンが作られる以前、この場所は通路に沿ってハナミズキやオリーブが植わり、地面は芝生に覆われていましたが、2022年10月には今回のコンテスト開催に先駆けて、5つのエリアが同じ土壌条件になるように花壇スペースが整地されました。 10月、花壇スペースを縁取る木枠を設置する様子。 花壇の整地は、既存の表土にある雑草とその種子を駆除する意味から厚み5cm分取り去ったあと、花壇用土には人工軽量土壌を厚み20cm客土し、ベースの土壌として整えられました。 木枠で縁取られた花壇内に所々ある四角い石は、既存の照明設備。灰色に見える土が人工軽量土壌。 「第1回 東京パークガーデンアワード」第1回作庭【12月】 「持続可能なロングライフ・ローメンテナンス」をテーマに、各ガーデナーが提案するガーデンコンセプトは、各人各様。それぞれが目指す庭のコンセプトに沿って、2022年12月5日から9日まで行われた第1回目の庭づくりの様子をレポートします。 *コンテスト開催の概要や各庭の月々の様子は、こちらをチェック! コンテストガーデンAChanging Park Garden ~変わりゆく時・四季・時代とともに~ 畑や かとうふぁーむ 渡部陽子(新潟県新潟市)さん率いる作庭チーム。 Aエリアは、培養土と肥料(かんとりースーパー緑水)を全体に敷き詰め、表面をならして基本の用土づくりは完了。この段階で耕さないのは植え付け時に耕すことを想定したためで、手間を最小限にしています。 平らにならした表土に、次々と苗が配置されて、あっという間に地面が隠れるほど数々の植物で埋め尽くされました。Aエリアは、大苗に仕立てられた根張りのよい丈夫な宿根草を用意。品種によって異なりますが、圃場で1~3年以上育てられた苗なので、一般で販売されているサイズの何倍も大きな株ばかりです。 大苗は育成管理に時間がかかりますが、その分株が充実しているといいます。大苗を使う利点は、4つ。① 既存植物とのバランスがとりやすく、周囲の環境にすぐに馴染む。② 植えた年から植物本来の個性が発揮され、しっかり開花する。 ③ イメージがすぐにカタチになるので、庭施工の際もお客様の満足度が高い。④ 大苗なら1ポットで十分ボリュームがでる場合も、市販の小さなサイズの苗だと数多く植栽しがちで、経済的にも苗の生育環境的にもよい。さらに、見頃を迎えた大苗は、ショーガーデンでも活用されることからも、この花壇には大苗が多数使われています。 配置が終わったら、端から順に次々と植え付けを開始。苗は、現地の土壌にスムーズに活着できるよう根の処理(根をほぐしたり、根きりをするなど)を事前に施していたため、現場では、ポットから抜いてすぐに植栽でき、作業時間短縮とストレス軽減になりました。 選ばれた植物は、春から秋に次々とバトンタッチして花を咲かせるものや、風に揺れるグラス類、雑草抑制が期待できるグラウンドカバープランツなど。どれも、特徴や性質を見極めることができる花卉生産者により選ばれているので、ロングライフでローメンテナンスでありながら、美しい花壇となる組み合わせ。 苗を植え付けたあと、原種チューリップやアリウム、カマシア。エレムルスなど、1,500球の球根も植え付けられました。 中段左から/スティパ・イチュー/ストケシア・ラエヴィス/スタキス・ビザンティナ(ラムズイヤー)/ユーフォルビア・ウルフェニー 下段左から/オレガノマルゲリータ/エリムス・アレナリウス/スタキス・オフィシナリス/ペンステモン‘ハスカーレッド 配置にこだわり、交互や列植、斜めなど、ほどよい距離感で植わる小さな植物は、小さいながらも青みがかった緑や銀がかった緑、赤や黄など彩り豊か。合計84種の植え付けが完了しました。 1回目の作庭が終了して1週間後、12月中旬の様子。 コンテストガーデンBLayered Beauty レイヤード・ビューティ 鈴木 学(宮城県伊具郡)さん率いる作庭チーム。 Bエリアは、作庭前の花壇の土壌を独自に検査した結果、pH調整用として無調整ピート(ラトビア産ピート)をまいた上に、肥料もちを高めたい理由から培養土(ベストブレンド)を追加して耕運機で攪拌。 平坦な花壇を山状に盛り上げるためにも、40ℓ200袋という多くの用土が追加されました。結果、元の地表よりも15〜10cm高い土壌が完成。植物を配置するガイドとして、グリッド状に水糸が張られました。 上写真の白く囲まれた部分(図内A)に、パニカム、ユーパトリウムやアガスターシェなどが配置されている。 「さまざまなレイヤーを組み合わせて美しさを構築する」という考えのもと、季節を感じる宿根草ガーデンを作庭。背の高いグラス類と宿根草で作る4つの島(図内A)が通路から眺めた時に奥行きを感じられるような視覚効果も狙って配置されました。 上左/用意された苗の一部。上右/花壇の中には、天然石のステッピングストーンを配置。下左/植物の配置が記された図面。下右/多くの苗がどんどん配置されていきます。 3月から10月まで、月ごとに見頃が移り変わるように選ばれた植物は、合計142種。丈夫な植物、持久性のある植物、病害虫予防、密植に耐える植物、耐陰性の高い植物、観賞期間の長い植物などを考慮して選ばれています。また、こぼれ種で増えたり、宿根草の生育の邪魔にならない一年草も入っています。 球根は、拳以上の大きなアリウムから、小さなクロッカスまで、全部で約5,200球。小球根は、器に小分けしてから配置したことで、植え付け位置の手直しや微調整がしやすい効果がありました。写真左上のオレンジ色の器具は、アリウムやフリチラリアなどを深く植える際に穴を掘るホーラー。フリチラリアは、高温の影響を受けずに長生きさせるため、通常より一段深く植えられました。 3月までに咲くフリチラリアとクロッカスなどの小球根、遅れて咲くアリウムやカマッシアを置いた後、最後にチューリップ、スイセン、アリウム‘パープルセンセーション’をばらまきし、配置具合を確認したあと植え付けられました。アリウム‘サマードラマー’のみ、このタイミングで植え付けると翌年(審査のある2023年)に開花しないと予想して、芽出しのポット苗を植え付けています。 球根の植え付けがすべて完了した後、表土に有機質肥料の「グアノ」と「モルト滓」を散布。どちらも長期的な効果を狙ったもので、グアノはリン酸とカルシウムで植物を丈夫にする目的、モルト滓はチッソ分の補給と土壌の微生物環境の改善を目的としています。最後にバーク堆肥でマルチングをして終了。所々にラベルがついた小枝が刺さっているのは、2月末に行われる2度目の作庭で植え付ける予定の植物の場所を示しています。 1回目の作庭が終了して1週間後、12月中旬の様子。 コンテストガーデンCGarden Sensuous ガーデン センシュアス GreenPlace(埼玉県朝霞市)代表の高橋三和子さんと山越健造さん(山越健造デザインスタジオ、宮城県仙台市)率いる作庭チーム。 園路を挟んで、対になったL字形のCエリアは、黒土と小粒の軽石、バーク堆肥、木酢液入り木炭を表土にまいたあと、耕運機で耕して基本の用土づくりは完了。基本用土は乾燥すると砂状になり、マウンドや窪みといった高低差を付けるのが難しそうだったため、造形をしやすいように黒土を追加。軽石は、黒土を加えたので通気性の向上のために、木炭と堆肥は保水性をよくし、有機物を足すことで土中微生物を増やすために加えられました。 丸の中に印を。「−(マイナス)」が書かれている場所は穴を掘り、「+(プラス)」の場所は盛り上げる。 土を攪拌してフカフカにしたあと、山越さん自ら有機石灰が入ったボトルを手に、図面を見比べながら花壇に数カ所、丸印が描かれました。これは、多様な植生と生物の場を創出するために作られる「マウンド(築山)」と「低地(レインガーデン)」、「フラット(平地)」という、凹凸のある地盤作りのためのガイドラインとなります。 この庭でいう「マウンド(築山)」とは、Hugel mound(Mound culture:ドイツなどが発祥の農法)と雑木林の循環管理方法を融合させたもので、土中に剪定枝などを埋めてから土を盛り上げて山のようにします。このマウンドを作ることで、① ゴミを焼却することにより、発生する二酸化炭素を削減する。② 保水性を高めることにより、水の使用を軽減。③ 微生物など生き物の棲処になる。④ 高さを出すことで周囲の低地に水が集まり、植生の異なる豊かな植栽が可能になるという4つの効果を狙っています。 窪ませた場所の底には、さらに軽石、木炭を入れて透水性を高める。 「低地」は、窪ませることで ① 降雨時の急激な下水道への排水を緩和。② 植栽や土壌によって水質を浄化。③ ヒートアイランド現象の緩和という3つの効果が期待できるレインガーデンとしてのデモンストレーションになっています。 起伏のある地盤が完成すると、全体にニームケーキ(植物性土壌改良材)と元肥をまいて、植物を配置するガイドに沿ってポット苗を配置し、1株ずつ植え付け。 図は審査時に対象だったBエリアの現状分析をベースにした植生ゾーニング例。実際に施工したCエリアに合わせたゾーニングで配置された。 植物は、地表面の形状や湿度、日照などを考慮したA〜Eの5つのエリアに区分され、それぞれに適したものを配置。 上左/築山とその周辺部分。下左/低地とその周辺部分。上右/用意された苗の一部。下右/小さな苗の生育を補うため、木酢液(キクノール)と天然活性液(バイオゴールドバイタル)を希釈した液を仕上げに散布。 盛り上がった築山には、乾燥に耐え、あまり背の高くならないレモンバームやオレガノなどを。窪んだ低地には、アスチルベやユーパトリウムなど、湿度や水に耐性のある種類が選ばれています。また、平地には、築山と低地との緩衝地帯としても機能する安定した植栽スペースとして、多様な表情が見られるようにと、エキナセアやイトススキ、ガウラ、バーベナなどが選ばれ、2〜3月の最終植え付けまでに合計65種が植えられます。 1回目の作庭が終了して1週間後、12月中旬の様子。 コンテストガーデンDTOKYO NEO TROPIC トウキョウ ネオ トロピック 西武造園 永江晴子 (東京都豊島区) さん率いる作庭チーム。 Dエリアは、植物性完熟堆肥(黒い堆肥)と赤玉土、ピートモスを表土にまき、しっかりスコップで耕して基本の用土づくりが行われました。有機質を混ぜ込む土壌改良を行って保水力や保肥力を高め、根を生育させることで、翌年からの灌水を抑える効果を狙っています。 レイズドベッドの枠に使うヤマハギの枝を仕分ける作業を行いながら、枠作りも進行。 また、土づくりと同時進行で、自然素材を使った「ウィービングレイズドベッド」作りもスタートしました。レイズドベッドとは、枠を設けて地面より高い位置に植える場所を作る手法で、ここでは地温を確保し、冬の寒さによるダメージを軽減する目的や、花壇をリズミカルに表現する目的で設置されました。 今回、この「ウィービングレイズドベッド」のイメージに近づけるためには、曲がりが少ない枝を見つける必要がありました。現場での枝選びの後、さらに事前にモックアップ制作。施工の手順やイメージ通りの仕上がりになるように太さの確認をしてから、実作業に臨んだといいます。レイズドベッドやコンポストの位置を決める角棒が枠の四隅に立てられたあと、黒竹を等間隔で挿し、その間を縫うようにヤマハギの細い枝を下から順に編み上げながら縁取りを作ります。手作業でレイズドベッドが1つ、また1つと組み上がっていきます。 レイズドベッドの枠を自然素材にしたことで、周囲の植物とも馴染み、通気性や排水性を確保。枠の内側に防草シートを張り、底には約10〜20cmほど軽石を敷き詰めてから用土を入れていきます。 高さや形状が異なるレイズドベッドが9個完成。金網の枠(写真上右)はコンポスト用で、この花壇から出る枯れ葉や枯れ枝、花がらなどを堆肥化するために設けられます。レイズドベッドの上とその外側などに苗と球根を配置。高低差がある花壇の中に次々と植え付けられました。 選ばれた植物は、ローメンテナンス・ロングライフであるコンセプトに合わせた宿根草を中心に、サブトロピカルな植物をポイントにしています。個性豊かな植物が東京の地で力強い姿を見せてくれるのを予想し、アロカシア、パンパスグラス、カンナ、アスパラガス、アガベなど合計40種超の植物が選ばれました。昆虫の棲処にもなるバイオネストの設置や一部のサブトロピカルの植物、芝生などは2月の作業で追加されます。 通常、亜熱帯系の植物は、暖かい時期に植栽すれば問題なく越冬するものですが、今回指定された施工時期(12月、2月)は亜熱帯系植物の植栽時期としてはベストなタイミングではありませんでした。そこで、屋外での植え付け時に植物がなるべくダメージを受けないようにと、養生も温室から無加温の温室に移動するなどの配慮がされました。 仕上げに、針葉樹の樹皮(バーク)を粉砕加工したリサイクルマルチング材(ランドアルファ)を表土全体に敷き、金網の内側に不織布が設置されたあと、レイズドベッドを作る際に出た不要な枝などをコンポストに投入して、作業は完了しました。 1回目の作庭が終了して1週間後、12月中旬の様子。 コンテストガーデンEHARAJUKU 球ガーデン 平間淳子(東京都目黒区)さん率いる作庭チーム。 コンテストガーデンのエリアで一番奥に位置し、「オリンピック記念宿舎」の前にあるエリアE。初日は雑草を丁寧に取り去ったあと、根が伸びやすくなるように、また、排水性を高めるためにシャベルで全体を掘り起こしました。それから日頃の庭づくりで使い慣れているという赤玉土と腐葉土を40ℓずつ各12袋を投入。少量のくん炭と元肥もプラスして、基本の用土づくりは完了。 ずらりと揃った植物を前に、どの場所に何を配置するか、段取りを整理しながら、傷んだ部位を切除するなど、苗の手入れも同時進行しました。 多数の植物の中から、まず骨格となる植物を選び、その配置からスタートします。このガーデンの作品タイトルは「HARAJUKU 球ガーデン」。某超有名ガーデンを原宿ならではの遊び心でもじったタイトルで、初夏にはまん丸の花が咲くアリウム、そして秋にポンポン状の花がダイナミックに咲くダリアまで、球状の花を多数組み合わせました。ポップに楽しく見せる植物が選ばれています。 配置図を頼りに、まず苗を配置。離れて見たり、角度を変えて眺めたりしながら、育った姿を想像して位置を微調整。植え付けて半年で見応えが出るように、骨格となるニューサイランやディエテスなどは、一般的なサイズよりも大きな株が用意されました。また、これらの草丈が高く大きな縦のラインとなるニューサイランやディエテス、グラスなどを多めに入れることで、メインとなる丸い花々を引き立てる効果を狙っています。 地面に置かれたレンガは、植え付け時の足場として。植え付けるまでに苗がいたずらされないようにと、一時的にカラス除けのCDが吊されました。 霧のような穂を立ち上げているのは、ミューレンベルギア・カピラリス。ほかにもディスカンプシア‘ゴールドタウ’など、秋にダリアが咲いた頃、幻想的に調和する効果を狙ったグラスが選ばれました。普段は“甘やかさず育てる派”ですが、テーマ通りの庭に最短で仕上げるため、1つずつ植え穴に肥料を入れながら植え付けています。また、植物によっては排水性を高めるために、パーライト、軽石などを植え込みました。 最終日は、全体に球根を配置して一気に植え付け。仕上げにバーク堆肥でマルチングして冬に備えます。特に多くの種類を植えたのがアリウムで、開花期間が少しでも長くなるようにと、球根で16種、苗は2種の合計18種が植えられました。 長く伸びていたディスカンプシアなどは短く切り戻し、常緑のニューサイランやカレックス‘エヴェレスト’などは、そのまま越冬させます。 1回目の作庭が終了して1週間後、12月中旬の様子。 日々成長するコンテストガーデンに注目を ご紹介の「第1回 東京パークガーデンアワード」は、5つの庭の魅力を競うコンテストですが、参加するガーデナーたちは、仕上がっていく互いの庭を見て刺激を受けたり、人手が足りないチームの植え付けを助ける場面もありながら、期間内に無事1回目の作庭が完了しました。 代々木公園を舞台に行われた「第1回 東京パークガーデンアワード」。5つの庭を一度に見学できるこの場所は、公共ガーデンに新しい息吹を吹き込むことが期待された2023年において東京の最新のガーデンでした。2023年11月からは舞台を神代植物公園(東京・府中市)に移し、「第2回 東京パークガーデンアワード」が開催されています。
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【ホリデーシーズン・おすすめ植物園】冬に咲く! カラフルなアイスチューリップが魅力の「花菜(かな)ガ…
園芸から収穫体験までできる植物園 神奈川県立花と緑のふれあいセンター「花菜ガーデン」は、2010年3月、園芸や農業を楽しみながら学べる施設としてオープン。園内は約9.2haと広大で、サクラやバラ、クレマチスなど約3,280品種の花々が植栽された「フラワーゾーン」、野菜の植え付け・収穫などの体験ができる「アグリゾーン」、展示室や図書室などがある「めぐみの研究棟」の3つのゾーンで構成されています。 ■花菜ガーデンのシンボル“カレル・チャペック”とは 『園芸家12か月』の著者であるチェコの作家で、園芸家としても知られるカレル・チャペック。プラハに現存するチャペックの家と庭をイメージし、「カレル・チャペックの家と庭」として園内に展示されています。 かつて“バラの切り花日本一”と言われた平塚市 花菜ガーデンのある神奈川県平塚市は、戦後いち早く温室でバラの切り花生産を開始し、昭和50年代には「日本一のバラの産地」と呼ばれていました。温室で花苗を育てている花の農家が現在でも多いのが特徴です。 関東有数の品種数を誇る花菜ガーデンバラ園のバラは、野生種から近年のバラまで合わせて約1,300品種。「風ぐるま迷図(フラワーゾーン)」にある[香りのバラ]には、モダンローズの中でも特に芳醇な香りの品種が集められ、クレマチスと一緒に展示されています。 これから春に向けて、バラの剪定と誘引作業が行われます。この時季になると、自宅でバラを育てている人から「誘引作業を見学したい」という声をいただくそう。もちろん、誘引作業の見学(入園料はかかります)は大歓迎。ご興味のある方は、自宅のバラ誘引の参考にされてみては。 カラフルで可愛いアイスチューリップに気分が上がる! 花菜ガーデンでは、毎年クリスマスシーズンに向けてアイスチューリップの植え付けをしています。2014年からスタートして9回目となる今年は、約7千球のアイスチューリップがフラワーゾーンの[花菜ガルデン]を中心に植え付けられ、来園者の目を楽しませてくれています。 花菜ガルデンに植え付けられたアイスチューリップは‘イルデフランス’(赤)、‘ピンクツイスト’(桃)、‘プリンセスイレーネ’(赤&白)、‘イエローフライト’(黄)、‘ダーウィスノー’(白)など16品種。 普通のチューリップの球根をポットの土に植え付けて根を成長させ、その後冷蔵施設に保存。一定期間低温管理した後、自然の環境下に戻すと「春が来た」と勘違いをして花を咲かせたのが“アイスチューリップ”。冬は気温が低いため花もちがよく、開花時期を長く楽しむことができます。 クリスマスの装飾で可愛いフォトスポット アイスチューリップの開花時期に合わせて園内には、クリスマスの装飾で飾られたワゴンやリース、ツリーなどの写真スポットがいっぱい。自分好みの写真スポットを見つけてくださいね。※クリスマス装飾は27日(火)まで。 新鮮な神奈川県産農水産物を使用したレストランやショップ [みのりの棟](めぐみの研究棟ゾーン)には、神奈川県産の農水産物を使用したレストラン「キッチンHana」とショップ「Dear CAPEK(ディア・チャペック)」があります。 レストラン「キッチンHana」は、シーズンやイベント限定のメニューもあり、バラエティー豊富。なかでもスペシャルメニューで、スパイスやフルーツを組み合わせた自家製の “ホットワイン(グリューワイン)”がおすすめ。アルコール入りとノンアルコールがあり、ノンアルコールはグレープ100%のウエルチジュースに、スパイスやフルーツを加えたホットワイン風。ほどよい甘さとクリスマスらしい香りでとても飲みやすく、冷えた体が温まります。 同じ[みのりの棟]には、ショップ「Dear CAPEK」があります。神奈川県の特産物や、バラに関連した雑貨がたくさん置いてあります。 Information ◆神奈川県立花と緑のふれあいセンター「花菜ガーデン」◆ ・開園時間:午前9時~午後4時(3月~11月は午後5時) ・休園日: 12月~2月は毎週水曜日(祝日の場合は翌日)および年末年始(12月28日~1月4日) ※2023年1月11日(水)は開園 ・入園料:[12月]大人550円、シニア(65歳以上)400円ほか、[1月] 大人200円、シニア(65歳以上)150円ほか ※2023年1月8日(日)は神奈川県民感謝の日のため、お得料金に ※開園時間・休園日・入園料はシーズンや年により変動するため、詳細はHP参照 ・所在地:平塚市寺田縄496-1 ・交通案内:JR平塚駅北口より神奈川中央交通バス「秦野駅(北口)行き71・74・75系統」で所要時間約20分「平塚養護学校前」下車徒歩約5分、小田急線秦野駅北口より神奈川中央交通バス「平塚駅(北口)行き 71・74系統」で所要時間約25分「平塚養護学校前」下車徒歩約5分 ・電話番号:0463-73-6170 ・HP:https://kana-garden.com Credit 取材・文・写真/ガーデンストーリー 編集部
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ピィト・アゥドルフ氏デザインが提案する ‘生命の輝きを放つガーデン’を訪ねて5
【「PIET OUDOLF GARDEN TOKYO」の植栽図】 アゥドルフ氏のガーデンの真骨頂が見られる季節・秋 昨年2021年12月に植えてから初めての秋を迎えた「PIET OUDOLF GARDEN TOKYO」。ガーデンのまわりのサクラがすっかり葉を落とし、生き生きと成長していた植物たちも落ち着きを見せ始めています。 まわりの紅葉・黄葉する木々と同様、植栽も茶色い枯れ穂などがあちこちに点在し、カラフルな花はポイントで色を添えている程度。牧歌的でロマンチックな趣は、この時季にクライマックスを迎えます。 ピンクのアネモネ‘クイーンシャーロット’が奔放に育ち、明るい彩りに。 秋の庭の見どころは、植物の‘終わり’と‘盛り’の対比が見せる「生命の営み」の美しさ。終わりを感じさせる枯れた穂や枝と、まだまだ咲き続ける花が見事に調和し、秋の爽やかなそよ風や澄んだ陽光が渾然一体となる、おおらかで自然な風景が広がっています。 花壇のコーナーに軽やかに広がる、カラミンサ・ネペタとフェスツカ・マイレイ。 ペルシカリア・アンプレクシカウリス‘アルバ’の花×アスチルベの枯れ穂が見せる、勢いのあるシーン。 常に自然からインスピレーションをもらいながら、植物それぞれに敬意を払って向き合うアゥドルフ氏。自然を眺めて感じたことを再創造してデザインしています。彼のデザインの大きな特徴である‘植物の色・葉色だけでなく、フォルムや構造、テクスチャーなどの個性を見極め、斬新なレイヤーで配置した組み合わせ’は、そういった自然へのまなざしから生まれるものでしょう。 ミューレンベルギア・カピラリスの赤みを帯びた穂を背景に、エキナセア・テネシーエンシスのユニークな花と枯れ穂が強調されている。 昨年植栽を手伝った上野ファームの上野砂由紀さんは、「植栽プランをひと目見て、すぐに春~秋まで季節を追って美しく変化していくことがよく分かりました。さまざまな植物をいろいろな角度から引き立てる、たくさんのオーナメンタルグラスたちに、とてもワクワクしますね」。 咲き終わったアスター‘レディインブラック’と、まだ瑞々しいアルソニア・フブリヒティのこんもりとした量感のある組み合わせ。 花後はすぐに次の植物に交換するのではなく 終わりに向かう‘味わい’‘おもしろさ’をも生かすのがアゥドルフ氏の信条。開花期以外の植物がつくる‘間や余白’が何ともいえない余韻を漂わせ、観る人の感情を揺さぶります。秋はそれを最も感じられる季節かもしれません。 ツルバキア・ビオラセアの細長い花茎の先につけたピンクの小花と瑞々しい緑葉が植栽のアクセントに。植えっぱなしでも毎年よく咲く強健種。 一度植えたら基本的に植え替えをしないアゥドルフ氏。今まで環境保護やサステナビリティについての主張を植栽に込めてきたわけではありませんが、結果として彼の提案するガーデンが今の時流に重なり、世界の庭園デザインのムーブメントとなっています。彼があるべき姿を早々と見抜き、それを当たり前のように自然に行っていたことが分かります。 リアトリス・スピカタ‘コボルト’の枯れた穂が直線的なラインを描き、植栽のデザイン性を強めている。 この庭の設置の立て役者であるランドスケープデザイナーの永村裕子さんがアゥドルフ氏の庭の一年を振り返る 「日本の気候は、特に梅雨以降から長期にわたって蒸し暑く、欧米とはまったく異なります。その間ずっと心配で、気温や天気、雨後の水はけの様子、その他の気づきなどをスタッフの日報で教えてもらいながら、植物の生育を遠隔で見守りました。 地上が枯れたリシマキアの退廃的な姿が芸術的。切り取らずにそのままにして独特な世界観を生み出している。 これからの心配は、暖地でのだらだらとした‘衰退の美モードの移行’。「なかなか凛とした冬景色になりません。緑の葉で花をぽつぽつつけたまま越冬するものと、夏に弱ってうどんこ病など不健康な状態で休眠に入ったものなどが混ざって景色がまとまらないんです。私の熊本の現場では、ドライフラワーの冬景色として残すものと、切り戻して緑のロゼット状で冬越しさせるものとを選別し、秋の景色を「強制終了」させます。そのほうが庭としての体裁が保てるのですが、本場をまねてすべて枯れた藪のような姿のままシーズン1を終えさせるか、いまだに逡巡しています」。 ヘレニウムやアガスタシェ‘ブラックアダー’(左)、パルテニウムなどの枯れ穂のフォルムが、ふわりと広がるエグロスティスを背景に効果的に浮かび上がっている。(右) 「ナチュラリスティックを通すのも、勇気がいりますね。現場のみんなや日本全国のガーデナー仲間を頼って、最適解へ導けたらいいなと思います。今年は初年度にしては想像以上にアゥドルフ氏の作品らしい景色をところどころ見られるようになりました。次はもっと全体にムラなく展開できるように、みんなと考えながら取り組んでいこうと思います。日々の植物の手入れを前向きに頑張ってくれたスタッフ、各方面からのさまざまなサポートに感謝しています」 パルテニウム・インテグリフォリウムなど似た姿の穂が連なり、シーンの印象をより深めている。 世界各地の庭のデザインを手掛けているアゥドルフ氏。いずれもオランダからは簡単に現地に赴くことができません。しかし、考え抜かれて選ばれた多年草によるガーデンは、一般の花壇のように植え替える必要は基本的にありません。庭を管理するスタッフたちと思いを共有しながら、ガーデンの維持と進化を図っています。もちろんここ「PIET OUDOLF GARDEN TOKYO」も永村さんやスタッフと連携を取りながら、多摩丘陵に広がるガーデンらしい世界を発信していきます。 秋の庭にさまざまな彩りを添える個性的な多年草たち 左から/エキナセア‘フェイタルアトラクション’、ルドベキア‘リトルヘンリー’、アネモネ‘クイーンシャーロット’ 左から/フロックス‘ブルーパラダイス’、ツルバキア・ビオラセア、ストケシア‘ブルースター’ 左から/ペロブスキア‘レイシーブルー’、スタキス ‘ハメロ’、ベロニカ・ロンギフォリア‘フェアリーテイル’ 左から/サクシセラ‘フロステッドパールズ’、アスター‘リトルカーロウ’、アスター‘トワイライト’ 左から/ペルシカリア・アンプレクシカウリス‘アルバ’、エリンジウム・ユッキフォリウム、パルテニウム・インテグリフォリウム 左から/カラミンサ、リモニウム・ラティフォリウム、ミューレンベルギア・カピラリス 左から/クランベ・マリティマ、エリンジウム・ブールガティ、アキレア‘ウォルターフンク’ 「PIET OUDOLF GARDEN TOKYO」以外の場所にも見どころがたくさん! いつも季節の草花で華やかに彩られている園路脇の花壇は見応えたっぷり。ぜひ、花合わせの参考にしてください。こちらはHANA・BIYORIスタッフによる植栽です。 艶やかな赤いダリアが主役のレイズドベッド。メインの建物前です。 入り口の園路脇の花壇では、春まで楽しめるストックがやさしい彩りでまとめられている。 敷地奥のスペースでは、季節感のある植栽が、見応えたっぷりに広がっている。 世界的に多くのガーデンを手掛けているピィト・アゥドルフ氏のアジア初のガーデンとなった「PIET OUDOLF GARDEN TOKYO」。欧米とは異なる「高温多湿」といった問題に配慮して選ばれた植物は、今年の猛暑を乗り越え、春に向かおうとしています。アゥドルフ氏によって再構築された自然が織り成す芸術性あふれる風景を、ぜひ堪能してください。 【ガーデンデザイナー】 ピィト・アゥドルフ (Piet Oudolf) 1944年オランダ・ハーレム生まれ。1982年、オランダ東部の小さな村フメロに移り、多年草ナーセリー(植物栽培園)を始める。彼の育てた植物でデザインする、時間とともに美しさを増すガーデンは、多くの人の感情やインスピレーションを揺さぶり、園芸・造園界に大きなムーブメントを起こす。オランダ国内のみならず、ヨーロッパ、アメリカでさまざまなプロジェクトを手掛ける。植物やガーデンデザイン、ランドスケープに関する著書も多数。2017年にはドキュメンタリー映画「FIVE SEASONS」が制作・公開された。
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埼玉県

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪39 埼玉「沼ノ上農園」
効果的に配された植物苗に高揚感がアップ! 格好いい建物にとりどりのカラーリーフが映える、園芸ベテランも心浮き立つ店構え。多くのガーデナーに支持されるここ沼ノ上農園は、創業100年を超える園芸店です。敷地内には37台を収容する駐車場があり、毎朝オープン時から車がひっきりなしに出入りしています。 ショップのフロントには、ボリュームのあるカラーリーフの苗がウェルカムグリーンに。建物側面には寄せ植えに使いやすい小さめのポット苗が3段シェルフにずらりと並びます。ショップを美しく彩る陳列と、多品種を見比べやすい陳列をはっきり使い分け、お客さまに気持ちよくショッピングしていただけるよう工夫を凝らしています。 ゴールド葉のプリペットやノルウェーカエデ、さまざまな葉形のアカシアなど、人気のリーフ類が多彩に揃っている。 奥に広がる2つのハウスは花やオージープランツでいっぱい! 敷地奥のエリアには、季節の花苗を陳列する大きなハウスが2基。2つのハウス共通のエントランス周辺は、植物や雑貨類を巧みに組み合わせたディスプレイコーナーで、ワクワク感が高まります。 種類の豊富さに加え、求めやすい価格で提供することを第一に心がけている「沼ノ上農園」。オーナーの日暮浩司さんが良質な苗をタイミングよく仕入れ、お客様に喜んでいただける価格で販売しています。この努力が評判を呼び、初心者からベテランまで幅広い層のお客様に支持されています。 大人ほどの高さのあるハロウィン用の人形と、ジーンズをリメイクしたパラソルが目を引く。 大人っぽい空間づくりに活躍する樹脂製のコンテナも充実。 植物が映える空間づくりが徹底されている。 「苗の回転がとても速いので、週5回も仕入れに出ているんですよ」と息子の準さん。「父と一緒に仕入れに行くんですけれど、よいものを見つけ出す目、どんどん買い付けていく手際のよさなどに、いつも本当に感心させられます」。 季節の草花が並ぶ手前側のハウス内。ひと苗ずつ間隔をあけ、日当たりや風通しを確保して管理している。 あちこちに展示されている多彩な寄せ植え。繊細で愛らしい花合わせ。 もう一つのハウスは、近年注目されているオージープランツの売り場です。今人気のバンクシアやプロテア、グレヴィレアなどが揃っています。 オージーコーナーにも古いドラム缶やトランクなどを使い、メンズライクな楽しいディスプレイが施されています。 今、準さんが一番力を注いでいるのがオージープランツ。「日本の環境に合うものと難しいものがあり、同じ属でも地域が異なれば、好む環境が変わってきます。例えば一番人気のプロテアの場合、銀葉のクイーン系よりも緑葉のキング系のほうが断然育てやすい。個人的にはプロテアよりも育てやすいバンクシアがおすすめですが、バンクシアでもオーストラリアの西部・東部で性質や形が異なってきます。西部原産のもののほうが育てやすいものが多いですね」。 東京農業短期大学在学時代から芸人を目指し、5年の芸人生活を経て沼ノ上農園に入社した準さん。父・浩司さんに追いつくべく、ベテランの両親に厳しく鍛えられながら、日々あらゆる勉強を続けているそう。 【準さんおすすめのオージープランツ選】 ■プロテア 左/プロテア‘ポッサムマジック’(クイーン系)右/キングプロテア‘リトルプリンス’(キング系) ■バンクシア・グレヴィレア 左/バンクシア・アエムラ(光沢のある葉で、花穂の色はライムグリーン)右/バンクシア‘バースデーキャンドル’(細葉が特徴で、花穂の色は黄~オレンジ) 左/バンクシア‘ピグミーボッサム’(東部原産。枝を横に広げて育ち、とても丈夫)右/バンクシア・ブレクニフォリア(西部原産。ほふく性で比較的育てやすい) 左/バンクシア・スピヌロサ ‘ヘアピン’ (東部原産。花穂の色はオレンジ。細葉で丈夫)右/グレヴィレア‘ピーチアンドクリーム’(花色がきれいで、花付きがよく丈夫) メインの建物の中は見応えある品揃えとディスプレイ ショップの顔でもある建物は、屋内のほうが管理しやすい植物と資材類の売り場です。風雨をしのぐためのクリアパネルの天井が備え付けられた場所は、まるで植物園を思わせる温室仕様。観葉植物やサボテン、多肉植物がイキイキと葉を広げています。 こちらでは、あらゆるスタイルに対応できるよう、陶器や樹脂、プラスチックなどさまざまな素材の鉢が大小いろいろ揃っています。きっとお好みの鉢が見つかるはず。 カジュアル度の高いブリキのバケツ型コンテナ。鉢カバーとして使っても。 メンズライクにしつらえられたコーナーにはどんな空間にも合う雑貨がいっぱい ショップ内はまるでワンダーランド。ひしめくように雑貨とグリーンが飾られています。印象的なのは、フェイクグリーン。植物が育てにくい暗い場所や屋内はフェイクがおすすめ、効果絶大です。 長いタイプのさまざまなフェイクグリーンをいくつかまとめて吊すと、青々とした独特な空間を演出できる。 花瓶に挿すようなタイプも充実。いま流行のビカクシダやアガベなども並んでいる。 大小の観葉植物でいっぱいのエリア。ハンギングタイプやチランジアなどが青々と頭上を覆っているさまは、まるで熱帯温室のワンシーンのよう。冬の寒い日はここに来れば、植物たちから元気がもらえるはず。 大型の観葉植物コーナーの脇には、大小の鉢カバーが陳列。植物をおしゃれに彩るアイテムが揃っています。 雑貨感覚で植物に親しめる、楽しいガラス類のアイテムも充実。 多種多様なエアプランツがワイヤーラックにカッコよく収められている。 どこもかしこも、センスよく感心させられるディスプレイ。これは主に浩司さんと奥様の美智代さんの好みで統一されています。浩司さんは、かつて結婚式場のディスプレイ業の経験もあり、人目を引くメリハリの効いた飾り方が得意です。メンズライクテイストを好む美智代さんの助けも得て、「沼ノ上農園」の洒脱な空間づくりが徹底されています。 「沼ノ上農園」のディスプレイにひと役買っているのが、カジュアルな絵の額縁。こまごましたものが多く、雑然としがちな空間の‘間’や‘背景’になるだけでなく、見せたくないものを隠してくれる優れものアイテムです。いろいろ便利に使っています。 英国のHAWSのジョーロなど、ガーデンツールも揃っています。使わないときはかけておくだけでも絵になる、おしゃれなアイテムが目白押しです。 沼ノ上農園・日暮準さんのおすすめYouTubeチャンネル 「沼ノ上農園」では、YouTubeチャンネルの充実に力を注いでいます。寄せ植え、花壇の植え込み、観葉植物の管理方法などの動画をメインに随時アップ。案内役は ‘花屋のせがれのジュン’こと準さん。元芸人ならではのユニークなトークで、初心者にも分かりやすく教えてくれます。 「分からないことがありましたら、動画のコメントやインスタなどにお気軽にご質問ください。オージープランツは『どこよりも分かりやすい』を意識してご案内しています」 寄せ植えの動画も人気。 「新鮮」「お求めやすく」「分かりやすく」「おしゃれに」が、多くのガーデナーの支持を受けている「沼ノ上農園」。野菜などはホームセンターに任せ、専門家にしかできない方法を追求し、ガーデニングの今を提供しています。ぜひ訪れてみてください。 アクセスはJR「南浦和」駅から国際興業バス(南浦55・柳崎循環・南浦和東口行、柳崎先回り)で約6分、「二十三夜」停留所下車徒歩約2分
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栃木県

自然との調和が美しい秋の庭 栃木「コピスガーデン」を訪ねて
雑木の庭がつくられて約10年になる「コピスガーデン」 9月下旬、栃木県那須町にある「Coppice GARDEN (コピスガーデン)」を訪れました。 「コピス」とは、「雑木林」のこと。那須の雑木林を、まるで魔法をかけたかのように素敵なガーデンにつくり替えたのは、「大森プランツ」の代表、佐々木清志郎さん。 「大森プランツ」は、フランス、ギヨー社のバラをはじめ、樹木や宿根草、クレマチス、クリスマスローズなど、苗の卸販売、造園工事の設計施工、各種イベントの企画立案を、長年手掛けています。じつは、2011年の東日本大震災によって、本社のある福島県南相馬市から、ここ那須町に避難され、新たにこの地に美しいガーデンをつくられたという経緯があります。広大な那須の土地に「コピスガーデン」が生まれたのは、2013年春のことでした。 秋の草花が咲き競うガーデンをご案内 雑貨ショップとカフェの間を通って入場すると、初秋のガーデンではすでに咲き始めた秋の草花が元気に出迎えてくれました。 「季節のガーデン」のエリアでは、夏の名残の宿根フロックスと、残しておいてくださったバラの花が彩りを添えていました。 季節毎の宿根草が次々花咲くこちらのエリアでは、秋の七草の一つオミナエシやアスター、シュウメイギクなどの宿根草が、タイミングを待っていたかのように生き生きと花を咲かせていました。 池の鏡に映る木々や空の青さに癒やされて 池の周囲の木々も、早くも紅葉が始まりつつあり、秋ならではの景色を見せてくれていました。 池の周囲には、時間を忘れてのんびりと腰かけていたいベンチや、癒やしをふりまく愛らしいアヒルの姿も見られて、寛ぎの時間を過ごすことができました。また、芝生広場では、ゆったりと空を流れる雲や風を感じながら、爽やかな秋の空気に身を置くことができました。 こちらでは、アスター‘パープルドーム’やルドベキア‘リトルヘンリー’、クジャクアスター(白孔雀)、コレオプシス‘ムーンビーム’などの宿根草が満開に咲き誇り、秋の光を浴びて美しく輝いていました。 グラスも、秋の空に向かって穂を上げ始めていました。 これから見頃の秋バラもお見逃しなく ここまでは、初秋の「コピスガーデン」の表情をご紹介しましたが、これから秋も深まる10月中旬に近づくと、秋バラが満開のシーズンを迎えます。 背景の植物も秋色が増し、秋の光をまとったバラの姿は、なんとも言えない美しさです。 春とは全く異なる秋ならではのバラの風景…この世界を、ぜひ多くの皆様に見ていただき、感動を分かち合いたい瞬間です。 ガーデン散策のあとは、苗や雑貨のお買い物ができるのも魅力の一つです。「コピスガーデン」の広い苗売り場では、バラはもちろん宿根草やクレマチス、クリスマスローズなど、年間を通して2,000点を超える商品が並び、苗選びも楽しむことができます。 また、庭や植物にちなんだ雑貨が並ぶショップや、テラス席を備えたカフェもありますので、お買い物はもちろん、旬の料理やお菓子も味わうことができます。 秋が深まると、写真のような美しい紅葉をガーデンのいたるところで目にできるようになります。 実りの秋を「コピスガーデン」で過ごしませんか? 2022年10月8日(土)、9日(日)は、多数のマルシェが出店する「収穫祭」が開催されます。開催時間は、10:00〜16:00(最終入場:15:30)。 「食」と「芸術」をテーマに、美味しいものを販売するお店や、ハンドメイド作品を販売するお店が大集合。また、楽しいワークショップも企画されています。ぜひ、この機会に秋の風が心地よい「コピスガーデン」を訪れてみてはいかがでしょうか? ウィリアム・モリスの言葉を借りれば、「美しくよいものは自然と調和している」。 まさに、「コピスガーデン」にぴったりな言葉ではないでしょうか。 見事に自然とマッチしたナチュラル感溢れる、美しく心地よいガーデンを、ぜひ、訪れていただきたいと思います。 Information GREEN&CAFE Coppice GARDEN コピスガーデン 所在地/栃木県那須郡那須町高久甲4453-27 TEL/0120-377-228 http://coppicegarden.info/ 車でのアクセス/東北自動車道 那須ICより約10分。「コピスガーデン」看板左折。 営業時間/10:00~17:30(最終入場時間17:00) (営業時間は季節により変動。詳しくは上記HPをご確認ください) ガーデン入園料/一般500~800円、中学生以下300円、就学前・乳幼児/無料、ペット200円(2匹目から100円)※料金は季節により変動します 年間パスポート一般2,000円 ※苗販売・雑貨販売の売店とカフェは、 通年入場料無料。 ※障害者手帳・ミライロID画面をご提示の方は、ご本人様のみ入園料無料。 (ペット入場の際の詳細は、ホームページよりご確認ください。) 写真協力/大森プランツ(*)
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神奈川県
![よみうりランド「HANA・BIYORI(はなびより)」花苗・野菜の展示即売会を初開催! [お出かけ情報・東京ボタニカルライフ]](https://gardenstory.jp/wp-content/uploads/2022/10/733294f05f6b32387946ff7774a49df3.jpg)
よみうりランド「HANA・BIYORI(はなびより)」花苗・野菜の展示即売会を初開催! [お出かけ情報・東京ボ…
たくさんの花に出会えるフラワーパーク「HANA・BIYORI」 よみうりランドに隣接する日本庭園に、2020年3月にオープンしたエンターテインメント型フラワーパーク「HANA・BIYORI」。花々が咲き誇る約1,500㎡の温室や、日本初となる「花」と「デジタル」技術を融合したプロジェクションマッピングショーが私たちを幻想的な世界に誘います。さらに花の香りや彩りを体感できるワークショップ、花や緑に囲まれたカフェなどエンタメ要素がふんだんに盛り込まれたフラワーパークが堪能できます。 圧巻の300鉢を超えるフラワーシャンデリア(吊り花) 「HANA・BIYORI」の中心に位置する温室内には、日本最大級となる300鉢超のフラワーシャンデリアが咲き誇ります。壁面には長さ20m、高さ2mを超す「壁面花壇」があり、床面を彩る花々も含め、360度花に囲まれた空間が広がります。いつ行っても満開に咲く季節の花々を楽しむことができるのが最大の魅力。360度花に囲まれた空間を心ゆくまで楽しめます。 「花」と「デジタル」が融合した「マルチエンディング」型アートショー ガラスの温室が暗転すると、60m(総長)にせまる壁面3面を使った「花」と「デジタル」が融合したプロジェクションマッピングがスタート。「イマーシブ(没入型)空間の創造」をテーマに、2つの異なるエンディングを用意したマルチエンディングを採用。最新の感情分析システムにより、観客の感情をリアルタイムでデータ化。その結果がエンディングに反映され、観客自身も参加しながら楽しむことができます。 現在、秋限定バージョン「色づく紅葉と花景色」が上映中。空に舞う紅葉や舞い散る雪など、深まる秋と冬の始まりの景色を楽しめます。上映スケジュールなど詳細は、HANA・BIYORI公式サイトをご確認ください。 コラボイベント「秋のPW (ピーダブリュー)花苗即売会」を初開催 10月7日(金)~10日(月/祝)の4日間、植物の国際ブランド「PW (ピーダブリュー)」とのコラボイベント「秋のPW花苗即売会」が開催されます。PWの新品種や今後注目の花、多肉植物や観葉植物を観賞したり購入することができます。ほかにも四季の庭などで、見本展示が行われます。スタッフが丁寧に商品の説明をしてくれるので、花に詳しくない方は気軽に相談してみては。 PW(PROVEN WINNERS=プルーブンウィナーズ)とは アメリカ・日本・ドイツ・オーストラリアなどの企業20社が参加する、世界の園芸業界を代表する植物の国際ブランド。それぞれの地域の育種家が開発した新品種を集め、気候条件が異なるアメリカ・ドイツ・日本で試験栽培を行い、日本の気候に合う高い基準をクリアした品種を厳選し、PWブランドとして発売しています。 展示・販売予定の花はこちら これらは展示・販売予定の花のほんの一部。会場でお目当ての花や育ててみたいと思うものを探してくださいね。 「PW×HANA・BIYORI 秋のPW花苗即売会」開催概要 ■開催期間:10月7日(金)~10日(月/祝) ■時 間:10:00~17:00 ■場 所:HANA・BIYORI館内「おみやげびより」前 ※要HANA・BIYORI入園料 「HANA・BIYORIマルシェ」で野菜や宿根草などを販売 10月14日(金)~16日(日)の3日間、「HANA・BIYORIマルシェ」が開催されます。JA東京むさしの新鮮な「東京産野菜」や、HANA・BIYORIのロスフラワー(廃棄予定の花)を使用したハンドメイドグッズ、宿根草などが販売されます。 「HANA・BIYORIマルシェ」開催概要 ■開催期間:10月14日(金)~16日(日) ■時 間:10:00~17:00 ■場 所:HANA・BIYORI館内「おみやげびより」前 ※要HANA・BIYORI入園料 ■参加予定店舗 ・JA東京むさし(管内の武蔵野市・三鷹市・小金井市・小平市・国分寺市で生産された野菜やその他の商品) ・はるはなファーム(日本でも有数の生産者が生産した宿根草) ・espoir(モイストポプリ、バスソルトなどHANA・BIYORIの花を再利用した商品) ・ハクサンインターナショナル(観葉植物、多肉植物など) ・HANA・BIYORI特設ブース(ロスフラワー、切花など) 花と緑に囲まれたカフェ「スターバックス」 植物園に日本初出店となるスターバックスは、本物の植栽でSTARBUCKSのサイネージ(看板)を表現。「New life style with coffee」をデザインコンセプトにした店内は、心地よく響く水音と花と緑に囲まれたボタニカルな新しいカフェ体験を提供。南側の屋内テラス席からは、一年中花が咲き誇る「四季の庭」が望め、毎日がお花見日和。コーヒーとともに、季節によって変わる花や植物を愛でられる至福の空間が楽しめます。 ぜひ秋の行楽シーズンに訪れてみてはいかがでしょう。 HANA・BIYORI情報 ■営業時間:10:00〜17:00 ※時期により変動 ■入園料:大人(中学生以上)1,200円、シニア(65歳以上)1,000円 小人(3歳〜小学生)600円 ■住所:東京都稲城市矢野口4015-1 ■公式サイト:https://www.yomiuriland.com/hanabiyori/ Credit 文/ガーデンストーリー 編集部 写真提供/よみうりランド
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神奈川県

ブーケセラピー 花摘みで癒やす花屋「ガーデンバウム」
癒やしがテーマの新しい体感型の花屋 100種以上のオーガニックハーブ&フラワーが咲く庭 神奈川県座間市の住宅街のはずれにある花屋「ガーデンバウム」。川沿いに連なる林を望む小さな丘の上、100種類以上のハーブや花の咲く庭が「ガーデンバウム」の花の供給源です。この庭は店主の山口裕子さんが仲間とともにオーガニックで育てており、ワークショップでは花かごを持って庭を巡りながら季節の花を摘み取ることができます。あるときはさまざまなミントの香りを楽しみながら、またある時はラベンダーの香りに癒やされながら、またある時は庭に実るベリーを口に入れながら、お客さんは季節の花でカゴを満たしていきます。 ガーデンブーケやガーデンリースなどを作るワークショップでは、自然に育った草花のユニークな姿を生かしたブーケ作りのレッスンが受けられます。レッスンの前には、山口さんが庭を案内。「ハーブだったらその植物の効能をお話ししたり、『赤毛のアン』や『ピーターラビットのおはなし』に登場する植物を話題に、物語に浸ってもらえるようにしたり。ただ花を摘む、買うのではなくて、ここで豊かな時間を過ごしてもらえるように庭をご案内しています」(山口さん)。 ハーブの絨毯に寝転んでお昼寝とアーシング 木陰にはテーブルと椅子が用意され、山口さんセレクトの本を読んで過ごすこともできます。また、ガーデンにはローマンカモミールとタイム、2つの香りの丘があり、ワークショップには「ハーブの丘でお昼寝とアーシング(無料)」というメニューも。「アーシングというのは素足や素肌で大地とつながることで、身体に帯びた電気を解放する健康法の一つとされています。ぜひ、ハーブの丘で香りの絨毯に寝転んでみてください。香りはもちろん、地面のひんやりした感触や光、風の音など、身体中で自然を体感できますよ」。 自身の経験を生かして そんな体感や体験こそが、山口さんが大切にしている「ガーデンバウム」のコンセプト。「私自身が体験してきて、今もなお感じている自然から得られる心地よさや安心感を共有したいと思って、ガーデンバウムを作り続けています」。山口さんが「ガーデンバウム」を作り始めたきっかけは、自身の心身の不調です。30代の頃、シングルマザーとして子育てや仕事へ邁進するうちに、心身のバランスを崩してしまいました。 オーガニックハーブ&フラワーの栽培を通して癒やしを体験 さまざまな自然療法を試すうちに、たどり着いたのがハーブ。一つひとつのハーブの持つ薬効を知り、アロマやハーブティーとして取り入れるとともに、植物そのものに触れることや、自然のなかに身を置くことが、健やかな心身を取り戻すことにつながっていると気がつきました。 「自分が健康でいるためにはどうすればいいのか、対処法が分かったというのは大きな安心でした」 しかし、山口さんがハーブと出会った当初は、ブームに乗じた産地偽装や成分知識の未熟さなどからくる健康被害も起きていました。そこで、安全なハーブを自分の手でつくろうと思ったことが、ガーデンバウムへとつながっていきます。2013年、風の吹き抜ける牧場の跡地に1本の木を植え、ごろんと寝転ぶ香りの絨毯、ハーブの丘をつくることから庭づくりが始まりました。無農薬無化学肥料で花やハーブを栽培し、その庭を「風の谷のハーブ畑」と名付けました。なるべく自然にまかせ、鳥や虫たちとも共存しながら季節の花を育て、収穫するという一連の作業は、山口さん自身に限りない癒やしをもたらしました。その経験を多くの人とシェアしようと、2020年にガーデンを一般に開放し、庭のあるオーガニックフラワーショップ「ガーデンバウム」をオープンさせたのです。 「コロナ禍などで不安の多い昨今、誰にとっても安全で安心して過ごせる場所がより必要になっていると思います。ですから、庭をもっと充実させて、ガーデンバウムを癒やしの場としてより有効に利用するために、ガーデンカフェなどさまざまな計画を温めています」。 その計画の一つとして、所属している企業において今年新たに開始したのが、障害福祉サービスの一つ「就労継続支援B型(*)『庭と森』」です。障害や心身に不調を抱えた人々が安心して働き、社会とつながって活躍できる場所になるよう、ガーデンの維持管理や苗の生産を利用者とともに行っています。 「これまでの人生で、さまざまな出来事がありましたが、その度に、園芸療法やメディカルハーブ、コミュニティガーデン学など知識を得る機会に恵まれました。より具体的に療法的観点からのガーデンの有用性を知り、ハーブガーデンをいつか福祉に活かすことも私の夢だったので、それが実現してとてもうれしいです」 *一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行う(厚生労働省HPより) 心に寄り添う安心できる居場所 「以前ハーブの丘の手入れをしていた利用者のお一人は、最初誰とも会話をせず、言葉を発することがなかったんです。でも、いつもとっても丁寧に水やりをしてくれて、おかげで春を迎えた時に花がすごくきれいに咲いたんです。それを眺めながら見事だなあって感動していたら、その方がトントンと私の肩を叩いて『これを家族に見せたい』って一言。初めてその方の声を聞いた瞬間でした。そして実際、ご家族もいらして、とても喜んでくださったんです。ああ、この場所を作ってよかったなぁと思いました」 山口さんはこれまで障害や疾患を抱えた人々と接するなかで、自身を否定してしまうケースも多く見てきました。「自分なんか、と思ってしまっている人が少なくないんですね。そう思っている人が、自分の仕事によって人を喜ばすことができると知ることは、どれほど大きな力になるかしれません。でも、誰だって仕事で失敗したり、家族とケンカしちゃったり、つまずいたり自信を喪失することはあります。そんな時に、大丈夫だよ、と寄り添って、また元気な自分に戻れるように背中をそっと押してあげられるような場所でありたいと思っています」。 花と心の共鳴「ブーケセラピー」 コロナ禍に、ガーデンバウムの庭を一般にオープンして2年あまり、こうした場所の必要性を改めて強く感じていると話します。 「花を摘むって他愛もない作業のようにも思えますが、いろいろな花が咲いている中でその一輪に目がとまって、その花を摘もうと手が動くって、美しいなって心が動いている瞬間なんですよね。それって、今咲いている花と今の心が、きっと共鳴しているんです。私はそれを花摘みのマジック、ブーケセラピーと呼んでいます。疲れていたり、悲しみを抱えていたとしても、人には美しいと思える力があり、思わせてくれる力が花にはあるんですよね。 これからも、子どもからお年寄り、障害のあるなしにかかわらず、老若男女みんなが楽しく過ごせて元気になれる居場所と体験を提案していきたいと思っています」 「ガーデンバウム」は、自身にとってもなくてはならない場所だと山口さんは話します。バウムとは年輪。多くの人に癒やしの場を提供し、その輪を広げながら、「ガーデンバウム」は、はじまりからもうすぐ10年目の年輪を刻みます。 Information gardenbaum 風の谷のハーブ畑 住所:神奈川県座間市栗原1750 TEL:046-204-7841 Mail:garden.baum.shop@gmail.com 営業日・営業時間の最新情報はインスタグラムよりご確認ください。 https://www.instagram.com/gardenbaum/ Credit 写真提供/ガーデンバウム 文/3 and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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東京都

ピィト・アゥドルフ氏デザインが提案する‘生命の輝きを放つガーデン’を訪ねて 4
【「PIET OUDOLF GARDEN TOKYO」の植栽図】 暑さの中に涼しげに広がる ここならではのメドウ 今年は梅雨明けが異常に早く、猛暑日の連続という過酷な初夏を迎えたピィト・アゥドルフガーデン。アゥドルフ氏はアジアでの高温多湿を想定して植物を選定していますが、この暑さは、多少なりともこたえているのでは…。しかし、多摩丘陵地を渡る涼風と緑で、なんとか持ちこたえているようです。 今年は初めての夏ということで、開花はやや少なめ。一年草を多用する一般的な花壇に比べるとかなり地味に感じると思いますが、自然の姿を楽しむのがアゥドルフ氏のガーデンスタイル。今は株がまだ十分に大きく育っていないので、植栽に近寄って観てみるといいでしょう。 この時季は見頃を過ぎた植物がちらほら見られますが、これもアゥドルフ氏の計算のうち。花後の枯れた穂は切らずにそのままにし、盛りの花と組み合わせることで、アーティスティックなシーンが展開されています。 ここでは、夏の植栽でよく見られる熱帯のトロピカルな植物はありません。それは地植えで越冬できる植物を使って、自然な風景をデザインしているから。基本的に北半球の温帯地域のものだけで構成しているので、夏でもメドウのような牧歌的な風景になっているのです。 1種類を数株まとめて植えることでボリューム感を出し、見応えのある植栽に仕立てるのもアゥドルフ氏のスタイル。例えば、うねるように穂を伸ばすテウクリウム・ヒルカニカムと霞のような穂のエラグロスティス・スペクタビリスを隣り合わせて、ふわりとした幻想的なシーンを生み出しています。 夏をあざやかに彩る 多年草たち 【最前列で彩りを添えるもの】 【色鮮やかで目を引くもの】 【長い花穂がデザインに動きを添えているもの】 【造形美を発揮する白花】 【軽やかさを放つエアリーなもの】 「PIET OUDOLF GARDEN TOKYO」 以外の場所にも見どころがたくさん! いつも季節の草花で華やかに彩られている園内は、どこも見応えたっぷり。これらはHANA・BIYORIスタッフによる植栽です。今回は園内中央にある「HANA・BIYORI館」をご紹介。ここには新しい感覚で楽しめるアミューズメントがぎっしり詰まっています。冷暖房完備なのも嬉しいポイント。 「HANA・BIYORI館」の中は、300鉢を超えるフラワーシャンデリア(ハンギングバスケット)をはじめ、空間360度、季節の花々で彩られています。また、中央には樹齢推定400年を超える大樹、パラボラッチョの木が据えられ、人間の力をはるかに超えた植物の力強さをアピールしています。 ベゴニアをはじめ、フクシア、ペチュニア、ゼラニウム、サクソルムが植えられたフラワーシャンデリア。その総数は日本最大級だそう。 明るいフラワーシャンデリアの空間は一日数回、映画館のような空間へと暗転し、「花とデジタルのアートショー」が開催されます。四季に合わせた自然風景や花の映像が次々に展開されるショーは、まさに新感覚。次の季節も観たくなるはず。 館内奥で目を引くのは、たくさんの魚が泳ぐ2基の大きな水槽。幅8mの水槽ではナンヨウハギ、デバスズメダイ、キンギョハナダイなど沖縄の彩り豊かな魚たち約50種1,200匹が、幅3mの水槽ではネオンテトラなど淡水の小魚が気持ちよさそうに泳いでいます。透明感のあるキラキラとしたシーンに、すっと心癒やされます。 HANA・BIYORI館の一角では、子どもに大人気の「コツメカワウソ」が見られます。愛らしい姿に、花とはまた異なる癒やしが。 暑さの中、丘陵を吹き渡る風を味方にして、健気に成長している宿根草。植物のたくましさを感じる風景に元気がもらえます。このアゥドルフ氏によって再構築された自然が織り成す芸術性あふれる風景を、ぜひ堪能してください。 【ガーデンデザイナー】 ピィト・アゥドルフ (Piet Oudolf) 1944年オランダ・ハーレム生まれ。1982年、オランダ東部の小さな村フメロに移り、多年草ナーセリー(植物栽培園)を始める。彼の育てた植物でデザインする、時間とともに美しさを増すガーデンは、多くの人の感情やインスピレーションを揺さぶり、園芸・造園界に大きなムーブメントを起こす。オランダ国内のみならず、ヨーロッパ、アメリカでさまざまなプロジェクトを手掛ける。植物やガーデンデザイン、ランドスケープに関する著書も多数。2017年にはドキュメンタリー映画「FIVE SEASONS」が制作・公開された。 Information 新感覚フラワーパーク HANA・BIYORI 東京都稲城市矢野口4015-1 TEL:044-966-8717 https://www.yomiuriland.com/hanabiyori/ 営業時間:10:00~17:00 ※公式サイト要確認 定休日:不定休(HPをご確認下さい) アクセス:京王「京王よみうりランド駅」より徒歩10分(無料シャトルバスあり)、小田急線「読売ランド駅」よりバスで約10分「よみうりランド」下車徒歩約8分 Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』、近著に『簡単で素敵な寄せ植えづくり』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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東京都
![おしゃれなカフェと花が楽しめる青山フラワーマーケット 南青山本店[お出かけ情報・東京ボタニカルライフ]](https://gardenstory.jp/wp-content/uploads/2022/07/45c48cce2e2d7fbdea1afc51c7c6ad26-6.jpg)
おしゃれなカフェと花が楽しめる青山フラワーマーケット 南青山本店[お出かけ情報・東京ボタニカルライフ]
花と花雑貨、カフェ、スクールが一体になった花の複合おしゃれスポット 今年、南青山・骨董通り側に最大面積のフラッグシップショップとしてリニューアルオープンした「青山フラワーマーケット 南青山本店」。花と緑にあふれるフラワーショップや、国内外からセレクトされた約1,000種類の花瓶が並ぶフラワーベースギャラリー、エディブルフラワーを使ったメニューが大人気のティーハウスのほか、デイリーフラワーを気軽に楽しむコツを教えてくれるフラワースクールも併設。都内にいながら花に囲まれ、癒やしのひとときが楽しめます。 高感度の大人を魅了するセンスあふれる花と緑 国内122店舗を展開する青山フラワーマーケットのフラッグシップショップとしてリニューアルオープンした南青山本店。花のセレクトは店舗ごとに異なり、その土地の文化や人々の求めるものに応じて店長がそれぞれ仕入れをしています。南青山といえば、ファッションやアート、美食の最先端エリア。東京で最も感度の高い大人たちが集う街の花屋として、南青山本店には常時ハイセンスでユニークなセレクトの花が数多く並びます。夏はモカラやデンファレ、バンダなど花もちのよいラン類やクルクマ、ヒマワリがおすすめ。国内外のコンテストで受賞した花のコーナー「THE FLOWER」にはこの夏、グラマラスなリシアンサスが登場します。育種家の情熱が注がれた超進化系の花も見逃せません。 都会でヒマワリ畑が体験できる「青山ヒマワリ祭り」 8月1日(月)~8月7日(日)までは、ヒマワリが青山フラワーマーケット、ティーハウス、ハナキチの店内を埋め尽くす「青山ヒマワリ祭り」が開催されます。夏の太陽に向かって元気に花を咲かせる大輪花というイメージのヒマワリですが、近年はアレンジしやすい小輪や中輪、ふわふわした八重咲き、色もレモンイエローからクリーム、テラコッタ、2色咲きなど、そのバリエーションはとても豊か。新しいヒマワリの魅力が発見できます。遠方の方にも一緒にヒマワリ祭りを楽しんでもらうため、Aoyama DIRECT(オンラインショップの産地直送サービス)や、高速バス輸送サービスを活用したヒマワリの販売が、この時期限定で南青山本店でも実施されます。 夏の花を長もちさせるコツも伝授!「ケアツールフェア」 夏は切り花のもちが悪くなりがちですが、その原因は水の汚れと栄養不足。切り花を長くもたせるコツは、スパッと切れ味のよい花ばさみと清潔な水。8月は、花のある暮らしに役立つ選りすぐりのツールをテーマにした「ケアツールフェア」が開催され、限定オリジナル花ばさみの黒バージョンが並び、花を長もちさせるオリジナル切り花鮮度保持剤「フレッシュフラワーフード」のタンクやミストメーカーなどが、いつもよりお求めやすく購入できます。ヒマワリなどは茎に産毛が多く水が汚れる原因となるバクテリアが発生しやすいので、抗菌剤と糖分が主成分のフレッシュフラワーフードを使いつつ、花瓶の水を茎の先端が4〜5cm浸かる程度に加減すると、夏でも花が長もちします。 平日が狙い目の大人気カフェ「青山フラワーマーケット ティーハウス」 移転前の店舗時から常に行列ができていた大人気のカフェ、「青山フラワーマーケット ティーハウス」は、“花農家の温室”がコンセプト。天井や窓辺などにディスプレイされた観葉植物が店内を瑞々しい空気感で満たし、まさに都会のオアシスといった雰囲気。そんな癒やし空間のなかで提供されるメニューは「花かんむりのフレンチトースト」や「フラワーパフェ」、フレッシュハーブをたっぷりブレンドした「フレッシュハーブティー」、色とりどりの美しい花を加えた「フランス紅茶」など、エディブルフラワーやハーブを使った見目麗しい一皿ばかり。リニューアル後は席数を拡大していますが、休日のランチどきは並ぶので平日が狙い目です。 自分のために花を飾ろう。デイリーフラワーのための花教室 ティーハウスの奥には、フラワースクール「ハナキチ」も併設。青山フラワーマーケットのコンセプト「Living Wtih Flowers Every Day」を実践するための、素敵に飾るコツや季節の行事に合わせた花あしらい、ブーケの作り方などを教えてくれます。また、外部のスペシャリストを招いた「花とワインの会 Flower Wine Night」などバラエティに富んだクラスも用意。素敵な大人のたしなみとして、季節の花をササッとあしらうテクニックを身につけてみませんか。 花を買って、食べて、学べる青山フラワーマーケット 南青山本店。花のある素敵な暮らしの扉を開きに、週末お出かけしてみませんか。 Information 青山フラワーマーケット 南青山本店 住所/東京都港区南青山5-4-41 グラッセリア青山1階・2階 電話/03-3486-8787 営業時間/10:00~20:00、日祝 10:00~19:00 青山フラワーマーケット ティーハウス 南青山本店 電話/03-3400-0887 営業時間/8:00-19:00 ハナキチ 電話/03-3797-0704 営業時間/火-金:10:00-21:00 土日祝:10:00-18:00 定休日/月曜日 ※変動あり Credit 文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。 写真提供/パーク・コーポレーション
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神奈川県

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪38 神奈川「安藤農園」
卸中心の玄人向けの 知る人ぞ知る農園 川崎の北西部に広がる緑豊かな多摩丘陵エリアに位置する「安藤農園」。ウグイスやホトトギスの鳴き声が響き、のどかな雰囲気に満たされています。 600坪もの広い敷地一面に花が並ぶ風景は、まるで圃場のよう。この農園は卸がメインなので、買い付けの卸業者やこだわりのある造園家、園芸店の人たちが出入りしており、一般客は全体の1割ほど。お茶の先生や寄せ植え講師、近所の花好きな人など、いろいろな方が訪れています。 戦後すぐに近所の農家に野菜や花の種子を販売していた安藤農園。今のような苗の販売スタイルになったのは、昭和30年代に入ってからだそう。その後約60年、茶花に使えそうな雰囲気のある花木や山野草などを扱い続けています。山野草は主にここの環境でしっかりと育つ種類を扱っており、低地で育ちにくい高山植物などは、ほんの一部です。 「一般的な園芸店では見かけないものが多いと思いますが、特別珍しいものにこだわっているわけではありません。珍しいというよりは見慣れないものといったほうがいいかな。近年出回らなくなった古来の植物も、よいと思うものは積極的に並べています。最近は、楚々とした洋の山野草や花木も並べていますよ」と、代表取締役の氏家修司さん。 1シーズンに約500種類、年間3回ほど入れ替え、いつも1,000種類ほどの苗が並んでいます。ここに並ぶ7割ほどの苗は、日本全国の信頼する生産者から取り寄せており、1種類1~2パレットと、少量でなるべく多品種を揃えるようにしています。これも玄人に人気の秘密。例えば、汎用性があって人気の高いギボウシ、特に小葉タイプは、数パレットにわたりたくさん並んでいます。「流通上の関係から、まだ花芽のない時期のものも取り寄せています。並べてしばらくすると花芽が上がってくる。成長の段階を見るのも楽しいよね」と氏家さん。 つる植物コーナーも充実。見慣れない植物がたくさん並んでいますが、どれもナチュラルな庭にぴったり。苗は基本的に支柱に誘引されています。旺盛に茂る中で、斑入りイワガラミが目を引きます。 売り場には落葉植物が9割、1割ほどが常緑植物です。樹木苗のなかでも面白いのは、枝が「ぐねり」と曲がったタイプや松ぼっくりから芽が出たマツなど、今どきの手軽に楽しむ盆栽におすすめの苗がたくさん揃っています。 見ていて楽しい 農園内あれこれ 売り場の通路には、いろいろな植物がこぼれ種から芽を出し、自然なシーンを楽しませてくれます。これらの植物は、丈夫でこの地域でよく育つものとして、農園で鉢上げされて店頭にも並んでいます。 楽しみ方の参考にと、売り場のところどころに寄せ植えが並んでいます。この状態でも購入できるので、贈り物などにも最適。ギフト用のラッピングは対応していません。 素焼き鉢や角鉢、軽石鉢なども販売されています。お手頃価格でカラフルに揃うので、まとめ買いしたくなってしまいます。 売り場で見つけた おすすめプランツ・初夏 訪問時に咲いていた魅力的な植物をご紹介します。 【花が愛らしい宿根草】 【球根植物】 【斑入りリーフ】 【花がきれいな樹木】 【実をつける樹木】 【アジサイ】 【つる植物】 「卸が中心なので一般的な店舗と異なり、作業に追われて十分な接客ができないこともありますが、植物は自生地の環境に合わせて育てることが大切ですので、分からないときは近くにいるスタッフに声をかけてくださいね。春や秋が特に楽しいですよ」と氏家さん。 細やかな管理で少量多品種を徹底し、たくさんのプロに支持され続けている「安藤農園」。‘今らしさ’を感じさせる日本古来のものから洋種までを揃えた山野草の宝庫です。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、JR南武線「稲田堤」から徒歩約5分、京王相模原線「京王稲田堤」駅より徒歩で約8分。 【GARDEN DATA】 安藤農園 神奈川県川崎市多摩区菅北浦3-3-8 TEL :044-944-2984 営業時間:8:00~17:00 定休日:なし(お盆と年末年始のみ)
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東京都

小説家・林芙美子のやすらぎの家と庭【松本路子の庭をめぐる物語】
晩年の安住の地 『放浪記』『浮雲』など、映画や舞台でも知られる小説の作者、林芙美子(はやし ふみこ1903-1951)。彼女が晩年の10年間を過ごした家と庭が、新宿区中井にあり、現在、林芙美子記念館として公開されている。長い放浪生活の果てに得た、安住の地ともいえる家や庭。その瀟洒な佇まいの中に、作家の想いや人生が色濃く漂っている。 自ら設計した家 それまで借家住まいだった芙美子が、下落合(現・中井)に300坪の土地を購入したのは、1939年のこと。家を建てるにあたり、200冊近くの建築の本を買い込み、自ら100枚近く設計の青写真を描いた。それを当時の気鋭の建築家、山口文象に託し、時間をかけて図面を完成させている。 文献だけでなく、建築士や大工を伴い、京都に10日間滞在して、寺社や民家を見てまわった。彼女は「家をつくるにあたって」と題した一文に「東西南北風の吹き抜ける家と云うのが、私の家に対する最も重要な信念であった。〈中略〉生涯を住む家となれば何よりも、愛らしい美しい家をつくりたいと思った」と書き残している。 数寄屋造りの特色と、「茶の間と風呂と台所に力を入れた」という、住み手の暮らしを重視した京風の民家の色合いを併せ持つ家は、1941年8月に完成。台所や茶の間のある生活棟と、芙美子の書斎や画家であった夫・緑敏のアトリエのある棟からなる、よく考えられた間取りだ。各部屋の中から南側に広がる庭を見渡すことができる、開放的な平屋造りになっている。 竹林のある庭 京都の庭を見てまわった芙美子は、ことのほか竹林と苔の庭に惹かれたという。苔の庭は気候的に無理とのことであきらめたが、庭一面に孟宗竹を植えることは叶った。 さらに、柘榴、寒椿、おおさかづきもみじ、カルミアなど、彼女が愛した木々が植えられた。『風琴と魚の町』という尾道を描いた著作に「この家の庭には柘榴の木が4、5本あった」と書き残している。最初に柘榴を植えたのは、それを懐かしんでのことだろうか。 芙美子亡き後、庭には夫の好んだ山野草が多く植えられ、竹林は玄関付近にしか残されていないが、これらの木々は今も健在だ。6月には柘榴がオレンジ色の花をつけて、迎えてくれた。 5月に訪ねた時には、北側の斜面の、家を見下ろすような場所にカルミアの白い花が咲き誇っていた。カルミアの傍には、いくつかのバラが開花していた。 庭への思い 現在は展示室となっているアトリエで、2022年4月から5月にかけて「林芙美子 花への思い」という展示がなされ、芙美子が花の手入れをしている写真を見ることができた。夫の緑敏の柘榴の絵とともに、芙美子の描いた桜草の絵も並び、その傍らには彼女が好んで書いた「花のいのちはみじかくて 苦しきことのみ多かりき」という自筆の色紙が添えられていた。 尾道の家 1903年に山口県下関市(福岡県門司市ともいわれる)で生まれた芙美子は、実の父親からは認知されず、行商人の養父と母とともに各地の木賃宿を転々とする幼少期を過ごした。 一家がようやく落ち着いたのは、12歳から18歳までの6年間を過ごした尾道。尾道市立高等女学校へ進学し、周囲からその文才を評価された。尾道には親子3人が間借りしていた離れの2階が残されている。私は十数年前に「レストランカフェ おのみち芙美子」(現・おのみち林芙美子記念館)を通り抜けたところに建つ、その家に立ち寄っている。およそ5畳の部屋は、親子3人が暮らすのにはあまりに狭く見えたが、彼女にとって、木賃宿暮らしではない、安らぎの場所だったのかも知れない。 『放浪記』の中で「私は宿命的に放浪者である。私は古里をもたない」とした芙美子だが、「海が見えた。海が見える。五年振りに見る、尾道の海はなつかしい」とも書き残している。私はその言葉に救われる思いがした。 ベストセラー作家への道 恋人を追って尾道から上京した後も、女工やカフェの女給などの職業を転々として、苦闘の日々を送っていた。その中で書き続けた日記をもとに、著した自伝的小説が『放浪記』だ。1930年に出版され、『続放浪記』と合わせて60万部というベストセラーとなった。一躍売れっ子作家となった芙美子は、次々に作品を発表。パリやロンドンに長期滞在して、紀行文を書いたりもしている。 終の棲家 何人かの男性と同棲を繰り返した後、画学生の手塚緑敏と暮らし始めたのが1926年。下落合の新居では、生後間もない男児を養子に迎え、緑敏とともに林家に入籍させて、ちゃぶ台を囲んでの一家団欒の日々を送っている。放浪の果てに得た家族との平穏な生活。仕事の合間に食事を作り、漬物を漬けるなど、料理好きな一面もあったという。台所には当時の食器が残されている。 執筆活動は精力的に続けられ、この家で『うず潮』『晩菊』『浮雲』などの代表作が生み出された。だが、仕事の無理がたたり、1951年に心臓まひで急逝。47年の生涯だった。立て続けに依頼される仕事を断ることができなかったという。それもあるだろうが、「誰も語らない、市井の人々を書きたい」という欲求が彼女を突き動かしていた、そのようにも思いたい。 庭のバラ園 2022年5月のアトリエの展示では、バラの庭の写真も飾られていた。家の北側の斜面を登った高台に、かなり広いバラ園があり、おもに夫の緑敏が手入れをしていた。その土地は人手に渡り、今は記念館の斜面に植えられた数本のバラが、往時をしのばせる。 バラ園では、当時切り花として市販されていなかった種類のバラが栽培されていた。そのバラを愛した洋画家の梅原龍三郎のもとに、定期的に花が届けられた。梅原龍三郎の描くバラの花は、芙美子たちの庭で咲いたものなのだ。バラ園は無くなったが、バラは絵の中で永遠に生きている。 芙美子の生涯もまた、その著作の中に息づいている。残された家を訪ね、ひとりの女性の生き方に思いを馳せる、そんな庭めぐりもよいものだ。 Information 新宿区立 林芙美子記念館 住所:東京都新宿区中井2-20-1 電話:03-5996-9207 Fax:03-5982-5789 HP:https://www.regasu-shinjuku.or.jp/rekihaku/fumiko 休館日:月曜日 入館料:一般150円、小・中学生50円 アクセス:都営地下鉄大江戸線・西武新宿線「中井駅」より徒歩7分 アトリエ展示:「小さきもの*可愛いもの」(2022年6月1日~8月31日) 取材協力:新宿区立 林芙美子記念館
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千葉県

千葉「佐倉草ぶえの丘バラ園」5月の散策
復活したバラ園 今年5月、数年ぶりに千葉県佐倉市の「佐倉草ぶえの丘バラ園」を訪れた。アーチやパーゴラ、スクリーンなどの立体的なつるバラの設えが充実し、バラの香りに包まれながらの散策は、以前にもまして、至福の時間をもたらしてくれた。 2019年9月、台風15号で壊滅的な被害を受けたバラ園が、クラウドファンディングなどの復旧支援プロジェクトを経て、見事に復活した様子は聞き及んでいたが、その後もコロナ禍ですっかりご無沙汰してしまった。今回、あらためて野生のバラやオールドローズを中心とするバラ園の景観に魅せられた。また、このバラ園の前身ともいえる「ローズガーデン・アルバ」を訪ねた時のことを思い起こしていた。 ローズガーデン・アルバ 友人に誘われて、佐倉市の「ローズガーデン・アルバ」を訪ねたのは、2003年頃だった。畑の中に忽然と現れたバラ園のユニークな佇まいと、初めて見るバラの種類が多かったことが記憶に残っている。園内の道具小屋の手前のアーチに咲くつるバラ‘シティ・オブ・ヨーク’に惹かれ、帰ってから早速苗を求めた。以来、わが家では鉢植えながら、このバラが7mほど枝を伸ばしている。 「ローズガーデン・アルバ」はNPO法人バラ文化研究所により、野生バラやオールドローズの収集・保存・研究を目的としてつくられた。わが国の「バラの父」と称される育種家・研究者の鈴木省三(1913-2000)のコレクションが母体となっている。 「佐倉草ぶえの丘バラ園」開園 「ローズガーデン・アルバ」は2004年に閉じられ、その後、現在の場所で新たに「佐倉草ぶえの丘バラ園」として開園された。佐倉市の公共施設の中にあり、バラ園の管理、運営はNPO法人バラ文化研究所に委託されている。面積は13,000㎡と広く、現在1,250種、2,500株のバラを見ることができる。 園内は15のエリアに分けられ、鈴木省三コーナー、植物画家ルドゥーテが描いたバラを集めたルドゥーテコーナー、歴史コーナー、ヨーロッパ、中国、日本それぞれの野生バラコーナー、香りのコーナーなど、テーマ別に植栽されている。 「とどろきばらえん」のこと 鈴木省三コーナーでは、彼が生み出した「天の川」「万葉」「乾杯」「ひなまつり」など、日本語の名前がつけられたバラを見ることができる。「とどろき」というバラを見つけ、鈴木省三が1937年に24歳で開いたという「とどろきばらえん」に思いを馳せた。 かつて私の父がバラの話になると、いつもなつかしそうに語ったのが、「とどろきばらえん」のことだった。第二次世界大戦後すぐのことで、若かった父がバラを育てるようになったきっかけの場所だという。父の語り口が鮮やかだったので、私は自分が訪れたことのあるバラ園のような気がしている。 ルドゥーテコーナー ルドゥーテは、ナポレオン皇妃ジョゼフィーヌの命を受け、彼女の居城マルメゾンのバラを描いたほか、当時のバラのほとんどを網羅した『バラ図譜』3巻を出版したことで知られる。このコーナーには、ロサ・ガリカ・オフィキナーリスや‘スレイターズ・クリムズン・チャイナ’など、『バラ図譜』に登場する野生バラやオールドローズが植えられている。 中国のバラ 中国のバラが東インド会社を経由してヨーロッパに渡り、四季咲きのバラや、真紅色のバラを生み出すもととなったことは、バラの歴史の中でも特筆すべきことだろう。中国のバラコーナーでひときわ目についたのが、‘オールド・ブラッシュ’。18世紀、最初にヨーロッパにもたらされた4種類のバラのうちの一つで、それまでヨーロッパに無かった四季咲きのバラの誕生に貢献している。 日本のバラ 日本にはハマナスやノイバラなど、十数種の野生のバラが自生している。2012年に『日本のバラ』(淡交社刊)を出版した時、「佐倉草ぶえの丘バラ園」でいくつかのバラを撮影させてもらった。熊本県の球磨川河岸などに自生するツクシイバラ、本州や北海道の高山でしか見られないカラフトイバラなど、稀少なバラを見ることができる。 NPO法人バラ文化研究所の協力で、江戸時代に作られた植物図鑑『本草図譜』から、当時描かれたバラの図を写真に収めたことも忘れがたい。 ホワイト&ピンクコーナー オールドローズにもっとも多く見られるのが、白色とローズ色のバラ。同じ白やローズでも、色は微妙に異なるので、この2色のグラデーションが幻想的な情景を生み出している。東屋を覆うように咲く‘ホワイト・ミセス・フライト’がとりわけ見事だ。 「インドの夢」と「サンタ・マリアの谷」 比較的新しくできた2つのエリア。「インドの夢」では、インドの亜熱帯地域に自生するロサ・クリノフィラを使い、亜熱帯地方でも丈夫に育つようにと改良された苗が植栽されている。世界的に温暖化が進む中で、これから暑さに強いバラは、より必要とされるだろう。 「サンタ・マリアの谷」は、北イタリア、サンタ・マリアのバラ研究家、ヘルガ・ブリッシェから贈られたバラが植栽されている。バラ園の入り口付近から、谷を下りる形で散策できるエリア。 つるバラとコンパニオンプランツの設え バラの歴史や分類を辿る楽しみもさることながら、回廊式の小道を歩くと、さまざまに展開するバラの設えが眼福で、次第に気持ちが弾んでくる。‘ボビー・ジェームス’ ‘トレジャー・トロープ’などのバラが巨大な姿を見せるオールドローズガーデンや、いたるところのパーゴラやスクリーンに見られるつるバラが特に秀逸。‘ニューポート・フェアリー’のようにパーゴラの屋根とスクリーンに連なり、こぼれんばかりに咲く花もある。 景観を際立たせているのが、宿根草をはじめとする、一年草や球根植物など、さまざまなコンパニオンプランツ。ジギタリス、デルフィニウム、オルレア、カモミールなど、淡い色の花や葉がバラの株元にそよぐさまは、風薫る野原を連想させ、心地よい空間を生み出している。



















