ひと口に園芸店といっても、今やさまざまなスタイルのショップがあります。それぞれの個性が色濃く反映されたこだわりの空間は、ガーデニングのセンスを磨ける最高の場所。今回は、多くの花や庭の専門家たちに支持される山野草の店「安藤農園」を訪ねました。

Print Friendly, PDF & Email

卸し中心の玄人向けの
知る人ぞ知る農園

川崎の北西部の緑豊かな多摩丘陵エリアに位置する「安藤農園」。ウグイスやホトトギスの鳴き声が響き、のどかな雰囲気に満たされています。

安藤農園
住宅街の中にあるので、とても静か。

600坪もの広い敷地一面に花が並ぶ風景は、まるで圃場のよう。この農園は卸しがメインなので、買付の卸業者やこだわりのある造園家、園芸店の人たちが出入りしており、一般客は全体の1割程。お茶の先生や寄せ植え講師、近所の花好きな人たちなど、いろいろな方が訪れています。

安藤農園
安藤農園
左/四角い水槽にはスイレンやコウホネなどの水性植物が。水の中にはメダカなどが泳いでおり、それをついばみにカモが飛来することもある。
右/首都圏では珍しいイトトンボも見られる。

戦後すぐに近所の農家に野菜や花の種子を販売していた安藤農園。今のような苗の販売スタイルになったのは昭和30年代に入ってからだそう。その後約60年、茶花に使えそうな雰囲気のある花木や山野草などを扱い続けています。山野草は主にここの環境でしっかりと育つ種類を扱っており、低地で育ちにくい高山植物などはほんの一部です。

安藤農園

「一般的な園芸店では見かけないものが多いと思いますが、特別珍しいものにこだわっているわけではありません。珍しいというよりは見慣れないものと言ったほうがいいかな。近年出回らなくなった古来の植物も、良いと思うものは積極的に並べています。最近は、楚々とした洋の山野草や花木も並べていますよ」と、代表取締役の氏家修司さん。

安藤農園
敷地の一角は強い日差しを好まない、日陰におすすめの植物コーナー。一年を通して寒冷沙で覆われている。

1シーズンに約500種類、年間3回ほど入れ替えているので計1,000種類ほどの苗が並んでいます。ここに並ぶ7割ほどの苗は、日本全国の信頼する生産者から取り寄せられており、1種類1~2パレットと少量でなるべく多品種を揃えるようにしています。これも玄人に人気の秘密。例えば汎用性・人気の高いギボウシ、特に小葉タイプは数パレットに渡りたくさん並んでいます。「流通上の関係から、まだ花芽の無い時期のものも取り寄せています。並べてしばらくすると花芽が上がってくる。成長の段階を見るのも楽しいよね」と氏家さん。

安藤農園の山野草

つる植物コーナーも充実。見慣れない植物がたくさん並んでいますが、どれもナチュラルな庭にぴったり。苗は基本的に支柱に誘引されています。旺盛に茂る中で、斑入りイワガラミが目を引いています。

安藤農園の山野草

売り場には落葉植物が9割、1割ほどが常緑植物です。樹木苗のなかでも面白いのは、枝が「ぐねり」と曲がったタイプや松ぼっくりから芽が出たマツなど、今どきの手軽に楽しむ盆栽におすすめの苗がたくさん揃っています。

松ぼっくりつきの苗
松ぼっくりは空になって落ちるものですが、これは2~3粒の種子を松ぼっくりに戻し、土の上に置いて発芽させたもの。写真のようなスタイルでしばらく楽しめる。
樹形のかっこいいマツ
左/「ぐねり」と捻じ曲げられた黒松の根を上に少しずつ引っ張りながら育て、厳しい自然の中で育つ根上りした状態を再現。
右/くねくねとしたナナカマドの苗。かっこいい鉢に1本植えるだけで絵になりそう。
安藤農園の鉢植え
ある程度大きく育ったものが欲しい人のために、鉢に植えられたものも用意。

見ていて楽しい
農園内あれこれ

売り場の通路にはいろいろな植物がこぼれ種から芽を出し、自然なシーンを楽しませてくれます。これらの植物は丈夫でこの地域でよく育つものとして、農園で鉢上げされて店頭に並んでいます。

蛍袋
釣り鐘形のピンクの花を下げるホタルブクロ。
安藤農園の草花
左/切れ込みの入る白花が、野趣がありながらノーブルな印象のカワラナデシコ。
右/八重のドクダミやフジバカマ、シュウカイドウなどが自然に茂る園路。そのまま切り取って帰りたい素敵な花合わせ。

楽しみ方の参考にと、売り場のところどころに寄せ植えが並んでいます。この状態でも購入できるので、贈り物などにも最適。ギフト用のラッピングは対応していません。

安藤農園の寄せ植え
左/野洲ハナセキショウ、ダイモンジソウ、斑入りギボウシ。
右/ハコネギク、タンナチダケサシ、アサギリソウ。
安藤農園の山野草
雑木や山野草を軽石鉢に植えて販売。お気に入りの小皿に載せて飾りたい。
安藤農園の鉢

素焼き鉢や角鉢、軽石鉢などの鉢も販売されています。お手頃価格でカラフルに揃うので、まとめ買いしたくなってしまいます。

売り場で見つけた
おすすめプランツ・初夏

訪問時に咲いていた魅力的な植物をご紹介します。

【花が愛らしい宿根草】

赤花イワダレソウ、濃紅大輪フウロソウ、パンダスミレ
左から/赤花イワダレソウ、濃紅大輪フウロソウ、パンダスミレ
ジュズネタツナミソウ、センジュガンピ、モモイロヒルサキツキミソウ
左から/ジュズネタツナミソウ、センジュガンピ、モモイロヒルザキツキミソウ
越路シモツケソウ、白花カワラナデシコ、ナミキソウ
左から/越路シモツケソウ、白花カワラナデシコ、ナミキソウ
エンビセンノウ、白山オミナエシ、マキエハギ
左から/エンビセンノウ、白山オミナエシ、マキエハギ
洋種南部トラノオ、ツクシカラマツ、浜ナデシコ
左から/洋種南部トラノオ、ツクシカラマツ、浜ナデシコ
白花キキョウ、八重ホタルブクロ、ソバナ
左から/白花キキョウ、八重ホタルブクロ、ソバナ

【球根植物】

桃色タマスダレ、斑入りツルベキア、三寸アヤメ
左から/桃色タマスダレ、斑入りツルベキア、三寸アヤメ

【斑入りリーフ】

斑入りヤブレガサ、斑入りユキノシタ・七変化、白斑入りタガネソウ
左から/斑入りヤブレガサ、斑入りユキノシタ・七変化、白斑入りタガネソウ
ハンゲショウ、斑入りノアザミ、斑入りホウチャクソウ
左から/ハンゲショウ、斑入りノアザミ、斑入りホウチャクソウ
紫葉フジバカマ、斑入りハタザオナズナ、斑入りイタドリ
左から/紫葉フジバカマ、斑入りハタザオナズナ、斑入りイタドリ

【花がきれいな樹木】

源平シモツケ、日の丸バイカウツギ、穂先ナナカマド
左から/源平シモツケ、日の丸バイカウツギ、穂先ナナカマド

【実をつける樹木】

ハスカップ、ヤブサンザシ、ナナカマド
左から/ハスカップ、ヤブサンザシ、ナナカマド
斑入りクマヤナギ、西洋カマツカ、樺太大実コケモモ
左から/斑入りクマヤナギ、西洋カマツカ、樺太大実コケモモ

【アジサイ】

天城アマチャ、ヤマアジサイ・藍姫、‘アナベルピンク’
左から/天城アマチャ、ヤマアジサイ‘藍姫’、‘アナベルピンク’

【つる植物】

五色ノブドウ、エビヅル、サンキライ
左から/五色ノブドウ、エビヅル、サンキライ

「卸し中心なので一般的な店舗と異なり、作業に追われて十分な接客ができないこともありますが、植物は自生地の環境に合わせて育てることが大切ですので、分からないときは近くにいるスタッフに声をかけてくださいね。春や秋が特に楽しいですよ」と氏家さん。

安藤農園

細やかな管理で少量多品種を徹底し、たくさんのプロに支持され続けている「安藤農園」。‘今らしさ’を感じさせる日本古来のものから洋種のものまでを揃えた山野草の宝庫です。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、JR南武線「稲田堤」から徒歩約5分、京王相模原線「京王稲田堤」駅より徒歩で約8分。

【GARDEN DATA】

安藤農園

神奈川県川崎市多摩区菅北浦3-3-8

TEL :044-944-2984

営業時間:8:00~17:00

定休日:なし(お盆と年末年始のみ)

Credit

写真&文/井上園子
ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』、近著に『簡単で素敵な寄せ植えづくり』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。

Print Friendly, PDF & Email