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東京都
素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪2 「庭道具屋 toolbox」
閑静な住宅街の中に小さな店を構える「toolbox世田谷」(2018年10月21日〜「庭道具屋 toolbox」として移転)。古い倉庫を都会的にリノベーションし、シンプルにしつらえた店内には、オーナーが厳選したガーデンアイテムがところ狭しと並びます。その商品の本格的な重厚感と豊富さに、初めて訪れた人はみな圧倒されます。 目利きのオーナーが現地で見つけた 世界の選りすぐりがズラリ 店内に並ぶアイテムは、イギリスやドイツ、フランスなど、ヨーロッパのものが中心。商品が美しく見えるよう、それぞれ専用のラックが設けられ、整然と展示されています。 ツール類はみな用途が異なり、形も大なり小なり異なっています。たくさんの中から自身が求めているアイテムを選ぶのは至難の業ですが、心配はいりません。ショップオーナーの黒田明雄さんが、工房やその国のガーデニング事情などの話も交えて、詳しく説明してくれます。各工房のこだわりの違いなどを知ると、品を選びやすくなるだけでなく、ガーデニングの楽しさがぐっと膨らむものです。 世界各国の本物に触れた経験が 「toolbox」の誕生につながる もともとエクステリア会社でエクステリア&ガーデンデザイナーとして活躍していた黒田さん。約5年間デザインに従事し、その後ポストやライトなどのガーデンエクステリアプロダクトの輸入・開発の部署を立ち上げました。世界のガーデンプロダクトを研究するために、イギリスやオーストラリア、ドイツ、北欧など、各国のガーデンショーや工房、メーカーなどに足を運んで、職人やデザイナーにも会い、技術、歴史などについても学びました。「イギリスのチェルシーフラワーショウやハンプトンコートのガーデニングショーは数えきれないぐらい行ったよ。当時は何もかもが珍しく、とにかく楽しかったね」。 もともと建築も含めてデザインの世界にいたというだけあって、あらゆるものを効率よく吸収しながら‘確かな目’を養っていきました。そして、今から約10年前に独立。自身の世界を集約させたショップ「toolbox」をオープンしたのです。 工房ごとに異なる個性を 国ごとに比べてみよう 以前は、イギリス製のガーデンツールがメインでしたが、最近はオーストリアやオーストラリア、オランダなどのツールも多数取り扱っています。最近、他国に生産を任せて安く量産するメーカーも増えてきたそうですが、ここで扱うものはいずれも、伝統的な製法で職人が丁寧に作った「ぬくもりを感じる逸品」にこだわっています。 上の写真はオーストリアのPKS Bronze社のもので、あたたかみのある輝きを放つ銅合金製。オーストリアの自然科学者・ヴィクトル・シャウベルガー氏の「銅合金の農具は土壌を改善し、農作物の品質を高める」という1950年の実験結果に基づいてつくられています。滑らかな取っ手部分はブナ材。 オーストリアの繊細な印象のものとは大きく異なり、がっしりとした印象があるオランダ・スネーブル社のガーデンツール。100年以上の歴史がある工房で、園芸農家の声を受けながら改良を重ねてきたツールです。材質はステンレス製で錆びる心配がなく、エッジがシャープで使いやすいのが特徴。握りやすい柄はタモ材など。 ハサミも充実のラインナップで、アメリカや日本、スイス製があります。切れ味はどれも甲乙つけ難い優れものばかりなので、握った感じや重さなど、実際に触れて好みのものを選べるのも、この店ならでは。さらにスイス製のフェルコのハサミは、すべてのパーツに分解してメンテナンスできるのが大きな魅力。バラの愛好家たちに支持されている理由が分かります。さすが精巧なモノづくりが得意なスイスの技ですね。 黒田さんがデザインした 秀逸アイテムも必見! エクステリア&ガーデンプロダクト開発業務をショップとは別に継続していることもあり、自身で手がけたオリジナルホースリールを販売しています。これは日本製で、重厚感のあるボディはアルミ合金。劣化しづらく長もち。3色のボディの色と装飾ディスクの種類も豊富でカスタマイズされています。さらに、「ノズルがずば抜けて優れているんですよ」と黒田さん。「水の勢いを調節しつつ、それを固定できる」という設計で、使っていて疲れません。この機構を採用した散水ノズルは、日本ではこの会社の製品だけです。 どれも素敵で目移りしてしまいますが、シックなカラーの「オリジナル(中段)」はクラシックな印象を、メタリックな輝きを放つ「コスモシリーズ(上段)」はモダンな印象があり、よく見比べると醸し出す雰囲気が異なるので、自庭に合ったものを選びましょう。 庭をおしゃれに見せてくれる アイテムも充実 プランツタグや麻ひもなど、植栽シーンを素敵に演出するために欲しいアイテムも充実。実用性と遊び心を兼ね備えたデザインに、眺めているだけで園芸意欲が膨らみます。「見映えも重視したい」という、オープンガーデンなどをしている方に特にオススメです。 緯度が高いことに加えサマータイムもあり、夏は夜遅くまで日が沈まないヨーロッパ。庭が広いだけでなく、職場が自宅から近い人が多い、蚊がいないなど、さまざまな条件が揃い、夜もガーデンで家族や友人と過ごす人が多いそうです。「だから、日本人よりも庭に居心地の良さを求めるんですよ」と黒田さん。おしゃれだけど飽きのこない庭をつくるためには、見映えのよい添景物が必須。ガーデンオーナメントだけでなく、バードフィーダーなどもデザイン的なものが求められています。 シーンづくりの参考にしたい! 洗練されたディスプレイ 小さなショップ空間を有効活用したディスプレイも見逃せません。天井や壁面を巧みに活用し、見ごたえたっぷりにコーディネートされています。店内の見通しや動線を妨げずに、ここぞという場所に強弱をつけて飾るテクニックは、やばりデザイナー出身の黒田さんだからこそなせる技。“商品の使い方が想像できるように”意識されたディスプレイは、ベランダやインテリアのコーナーづくりに大いに参考になります。 店内中央で目を引いた、吊り下げ型物干し。愛らしい絵柄のタネ袋や手袋を吊り下げて、空間を軽やかに演出しています。これは18~20世紀の頃、一般の家庭で使われていた伝統的なデザインの物干しの形をそのまま復活させた製品です。付属の滑車を天井に取りつけて、長いロープで本体を上下させるので、手の届かない高い場所にも設置が可能です。ハーブ&フラワードライヤーとして活用したり、インテリアのアイテムとしていろいろ使えそうです。 おしゃれなガーデンブーツを手に入れたら、ブーツラックにもこだわると、素敵に見せながらの収納が可能。ブーツを逆さに吊るすので、ホコリが入るのを防げます。ガーデンブーツはデンマークからやってきたイルセ・ヤコブセン社のもの。編み上げがおしゃれで、タウン用としても愛用できそうです。ラックは英国・クレモアミル社の3足かけられるもの。 階段の上の空間には、異なる形・素材のバスケットを組み合わせた、シンプルなコーディネート。表皮をそのまま生かした木の巣箱も合わせて遊び心を加えています。すっきりと素敵に見えるのは、色のトーンを揃えているからなのでしょう。木製のバスケットは英国・ロイヤル・サセックス社のガーデントラッグ。ワイヤー製のものはフランスのコンブリション社のワイヤーバスケット。スクエアのバスケットは、オランダ製と、ここも国際色豊かなコーナー。 繊細さピカイチ! 日本のアイテムにも注目 商品は、海外製品に限らず、日本製のものも並んでいます。繊細な技術と手入れを必要とする盆栽は、我が国が生んだ誇るべき文化。それを支える道具類も繊細であることが求められます。黒田さんはそこに着目し、盆栽用の華奢な銅製土入れや銅製熊手なども、多肉植物やミニ盆栽などの細かい作業にオススメのアイテムとして揃えています。 黒田さんイチ押しはコレ! ドイツ製の黄色いガーデンブラシ 50年程前からドイツでつくられているガーデンブラシ。ブラシ部分がカーブしているのが大きな特徴です。ブラシは固すぎず柔らかすぎないところがポイント。熊手とは違い、芝生に引っかかることなく落葉を掻き出してくれます。もちろん、レンガや石のアプローチの掃除にもオススメ。化学繊維なので劣化しづらく、庭の掃除が格段に楽になります。 世界にはさまざまなガーデンツールがあり、庭の楽しみ方も千差万別。一つの道具を通して異国の園芸文化のほんの一端に触れるだけで、ガーデニングの時間がぐっと楽しくなるものです。「toolbox世田谷」はそんな機会を与えてくれる場所。ぜひ、奥深いガーデニングの世界をのぞきに訪れてみてください。アクセスは、東急田園都市線・用賀駅から徒歩約10分。ご紹介の実店舗に並ぶツールは、ネットショッピングも可能なので、ぜひアクセスしてみてくださいね。 併せて読みたい ・素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪1 岩手・雫石「花工房らら倶楽部」 ・マーク・チャップマンさんもオススメ! デザイン性の高いガーデングッズ5選 【GARDEN SHOP DATA】 庭道具屋 toolbox 世界のこだわりのガーデンツールやアイテムを扱う、園芸ショップ。逸品がずらりと並ぶ品ぞろえに、本格派ガーデナーの熱い支持を得ている。2019年1月、世田谷・用賀から移転して、埼玉県越谷市にオープン予定。 住所:埼玉県越谷市恩間413-10 TEL: 048-971-7814/FAX: 048-971-7815 URL: https://www.rakuten.co.jp/toolbox/ Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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神奈川県
環境省『みどり香るまちづくり』を受賞したラベンダーの小径
公園から海まで約2km、草花が咲き香る散歩道 藤沢市の北部から、南にある相模湾に向かって流れる引地川沿いには、ウォーキングを楽しむのにうってつけの緑道が整備されています。そのうち、川沿いにある長久保公園から海までの約2kmにわたっては、ラベンダーに加え、ローズマリーやセージ、ハニーサックルやシャリンバイなど、香りのよい植物が多種植えられて、ことさら楽しみの多い散歩道です。 2014年、長久保公園を管理する「公益財団法人 藤沢市まちづくり協会」は、環境省が主催する第9回『みどり香るまちづくり』企画コンテストに、この香りあふれる散歩道の植栽企画を応募し、見事入賞を果たしました。そして翌年、「ながくぼグリーンサポーターハーブ部会」に属する市民ボランティアの協力で、約2㎞に及ぶ川沿いの花壇に苗の植えつけが行われ、香りの小径が実現したのです。 五感で楽しむ散歩道に込められた思い 雑草取りなどの日頃の管理は、総勢80名ほどが所属する市民ボランティアによって、3年に渡り行われてきました。植えたばかりの頃はとても小さかったラベンダーも、今では大きく生長し、遠くまでラベンダー色に染まるほどの見事な香りの小径となっています。この小径は、ラベンダーを見るだけに止まらず、香りを嗅いだり、風にそよぐ音やハチの羽音を聞いたり、手に触れるなど、五感すべてで味わうことができる場所。企画者と管理者による“植物をより身近に感じてほしい”という願いが込められています。 満開を迎えたラベンダーの小径には、どこから来たのか、驚くほどたくさんのミツバチやクマバチが、蜜を集めようと飛び交います。首都圏の市街地であるこの辺りは、普段これほど多くのハチを見かけることはありません。軽やかなミツバチの羽音を聞いていると、この小径が地域の生態系を守る、一助となっていることを感じます。 収穫したラベンダーでクラフトづくり 植え込みから3年が経過し、立派に咲くようになったラベンダー‘グロッソ’の花は、クラフトづくりの材料として収穫できるまでになりました。収穫時の6月、長久保公園では、ながくぼグリーンサポーターハーブ部会の会員でJHS上級ハーブインストラクターの池田貴美子さんを講師に招いて、市民向けのラベンダーバンドルズ講習会を開催しています。バンドルズとは、ラベンダーの束にリボンを編み込んでつくるクラフトのことで、作業をしていると部屋中が花の香りに満たされます。癒し効果もたっぷりの、楽しい香り体験です。 近隣の小学校に広がる香りの輪 ラベンダーバンドルズづくりの講習は、2017年からは近隣の小学校のPTAとの連携によって、児童向けにも行われるようになりました。この日参加したのは、高学年の児童30名ほど。「みなさん、ラベンダーを知っていますか?」。ボランティアで講師を務める、アロマテラピストの角本久美さんが、子どもたちに語りかけます。 それぞれ好きな色のリボンを選んで、児童のバンドルズづくりが始まりました。ながくぼグリーンサポーターハーブ部会のボランティアが側について、手ほどきします。子どもたちはみな熱心に、そして、器用にリボンを編み込んでいきます。 教室に広がるラベンダーの香りにうっとりする子もいれば、「うちの親はこの香りが苦手なんだ」と残念がる子もいます。中には、持ち帰ったバンドルズを家族中が喜んで、ラベンダーを庭に植えることにした、という子もいました。フレッシュな花の香りに触れることは、子どもたちの「植育」にもなっています。 *ラベンダーバンドルズのつくり方はこちら 取材協力: 公益財団法人 藤沢市まちづくり協会 http://f-machikyo.or.jp/ 藤沢市長久保公園都市緑化植物園 https://nagakubokouen.jp 角本久美 Herb & Aroma Kumincure主宰 https://ameblo.jp/kumincure/ 併せて読みたい ・‘ハーブの女王’ラベンダーの香りの楽しみ方 ・ガーデンセラピー活動レポート〜憩いの場となる屋上庭園づくり〜 Credit 写真&文/ 萩尾昌美 (Masami Hagio) 早稲田大学第一文学部英文学専修卒業。ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。20代の頃、ロンドンで働き、暮らすうちに、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するように。神奈川生まれ、2児の母。
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神奈川県
世界バラ会連合会議で「横浜イングリッシュガーデン」が栄誉ある賞を受賞!
2018年は世界バラ会連合発足50周年の記念の年 1968年にイギリス、ロンドンにて発足し、今年で50周年を迎えたバラ愛好家たちの世界的組織「世界バラ会連合(The World Federation of Rose Societies ※以下WFRS)」は、バラに関する知識や情報交換などを目的として、会議や展示会を行い、3年に一度、バラの歴史が長い国・都市で「世界バラ会連合会議(World Rose Convention)」を開催し、「バラの栄誉の殿堂」や「優秀庭園賞」などの賞の付与なども行っています。発足50周年となる2018年は、6月28日~7月4日にデンマーク・コペンハーゲンを開催地として大会が行われました。 大会で注目される権威ある賞「バラの栄誉の殿堂(Rose Hall of Fame)」 大会で授与される注目の賞の一つである「バラの栄誉の殿堂」は、世界中のどの環境でも育てやすいことや、誰が見ても美しい品種であること、多くの国で長く愛されていることなどが審査基準となり、第1回の‘ピース’をはじめ、‘アイスバーグ’や‘ニュー・ドーン’、‘ピエール・ドゥ・ロンサール’など、日本でも人気がある品種が多数選ばれています。 2018年に「バラの栄誉の殿堂」に選ばれたのは、2000年にアメリカのラドラー氏によって作出された‘ノック・アウト’です。バラにとってダメージとなる黒星病やうどんこ病に強い抵抗力があり、地域によっては無農薬栽培で育てることができるほど耐病性に優れています。また、春から晩秋まで咲き続けるブッシュローズ(木立性)で、バラには珍しく花がら摘み以外のメンテナンスが少なくてよいので、バラ栽培の初心者だけでなく、公共空間の景観をつくるバラとしても活用されています。 優れた庭園に贈られる「優秀庭園賞」 大会で授与される「優秀庭園賞」は、数あるローズガーデンの中から、歴史的、教育的、景観的な各視点により特に優れた庭園に贈られるもので、庭園としての美しさに加え、メンテナンスの質がよいことや、学術的に価値がある品種を栽培しているなどの総合的な評価により選ばれます。 「優秀庭園賞」の表彰は、1998年からスタートし、2018年開催のコペンハーゲン大会までで世界各地の64カ所の庭園が受賞。日本では、岐阜県「花フェスタ記念公園」、広島県「福山市バラ園」、大阪府「靭(うつぼ)公園」、東京都「神代植物公園ばら園」、千葉県「京成バラ園」、千葉県「佐倉草ぶえの丘バラ園」、静岡県「アカオハーブ&ローズガーデン」の7つの庭園が受賞してきました。 日本で8つめの「優秀庭園賞」は神奈川「横浜イングリッシュガーデン」 日本ばら会から推奨を受けたWFRSのケルビン・トリンパー会長とヘルガ・ブリシェ元会長は、2017年11月に横浜イングリッシュガーデンを視察訪問しました。その際、ケルビン会長からあがった評価点は以下の項目でした。 6,600m² と小さな庭園であるが、バラだけでなく数多くの花木や宿根草、一年草などが組み合わされた美しいデザインである。 オールドローズ、つるバラ、シュラブ、各種の四季咲き性のバラや野生種のコレクションは、1,800品種を超え、どれも良好な生育をしていて、管理水準が非常に高い。 自国品種の保護の観点からも、その中に500種以上の日本のバラのコレクションが含まれていることは、とても素晴らしい。 品種プレートは正確に表示されていて、来園者にも分かりやすくなっている。 季節のテーマに合ったプログラムや子ども向けの教育プログラムを運営している。 これらの評価により見事受賞となった神奈川「横浜イングリッシュガーデン」から、2012年よりスーパーバイザーとしてガーデンデザイン、植栽管理を行っている河合伸志さんが、デンマーク、コペンハーゲンへ駆けつけ、第18回「世界バラ連合」、「優秀庭園賞」授与式に出席しました。 これまで「優秀庭園賞」を受賞してきた世界各地の庭園に、「横浜イングリッシュガーデン」が仲間入り。WFRSのホームページ内「Award of Garden Excellence」でも紹介されています。 この度見事受賞となった「横浜イングリッシュガーデン」では、先にご紹介した「バラの栄誉の殿堂」入りのバラも多数見ることができます。 横浜イングリッシュガーデンの一年を追った『横浜イングリッシュガーデンの四季【花巡り・ガーデン案内 〜神奈川〜】』の記事もご覧ください。
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群馬県
花の庭巡りならここ! 四季折々の花が紡ぐように咲く美しい森「赤城自然園」
「赤城自然園」は、「豊かな森を次世代に引き継ぐ」を理念に、約40年前から植生に手を入れて整備されてきた森です。60haもの広大な敷地は、「自然生態園」「四季の森」「セゾンガーデン」の3つにゾーニングされており、すべてを巡るには、大人の足でゆっくり歩いて2時間くらいかかります。 園内の森には、花木や山野草、宿根草、球根植物が絶妙なバランスで植栽されており、四季折々の開花リレーでつながれて、いつ訪れても見頃の花に出合えます。多くの植物の中でも改良された園芸品種は取り入れず、森の中でこそ映える在来種の楚々とした魅力を味わえるのも特徴。植物園や観光ガーデンとは趣が異なり、人工的な添景物を排した自然そのものの景観が、この「赤城自然園」の魅力です。ハイキングに出かけるつもりで、野鳥の声にも耳を傾けつつ、四季折々の花の景色を楽しみましょう。 12万球を超えるカタクリが群れ咲く姿を堪能! 5月はツツジやシャクナゲで華やぐ景色に 5月になるとツツジやシャクナゲをはじめ、たくさんの花が咲き競い、特に華やぐ季節です。「赤城自然園」は標高600〜700mで、低地と高地の中間くらいの環境。そのため、高地で見られるシラネアオイやオオヤマレンゲ、低地で見られる12万球を超えるカタクリなどが共生する景色を楽しめます。 「赤城自然園」の植物は、大本類152種、草本類510種が確認されています。ほかに鳥類77種、哺乳類15種、昆虫類が1,810種など。 新緑の季節は雑木林の緑陰の下を歩くのはすがすがしく、植物の息吹からヒーリング効果を得られることでしょう。整備された遊歩道は約10㎞に及んでいますが、それほど疲れを感じません。なぜなら、アスファルトではなくバークチップ(木の皮)が敷き詰められているため、ふかふかの感触で足あたりがよいからです。ぜひ歩きやすい服装&靴を着用し、時間を忘れて散策を楽しみましょう。 一日2回開催されるガイドツアーは内容充実! 子どもと一緒に生態系のサイクルを学ぼう 「赤城自然園」では、毎日ガイドツアーが行われています。一日2回の開催で、スタート時間は10:00と13:00、無料です。15名定員で、当日の台帳に申し込んだ順の早い者勝ちなので、参加希望の方はお早めに。約1時間かけて園内を散策し、見頃の花をはじめ鳥や昆虫などについても詳しく解説してもらえます。季節やガイドをするスタッフによって解説内容も変わるので、何度参加しても楽しめますよ。 7月中旬〜8月上旬になると、アジサイ類が見頃を迎えます。アジサイは、さんさんと日差しが照りつける日向よりも、雑木の足元など半日陰のしっとりとした場所でこそ魅力が増すもの。適した環境でのびのびと生育するアジサイの姿を見に出かけましょう。夏は希少で人気が高く、「森の妖精」と呼ばれるレンゲショウマが園内全域で観られるのをはじめ、ヤマユリやキツネのカミソリ、カワラナデシコ、キキョウなどが次々と開花し、その清楚な花姿を楽しめます。 お子さんのいる家族なら、夏休みを利用して園内の「自然生態園」ゾーンをじっくり回ってはいかがでしょうか。「昆虫広場」や「昆虫館」「カブトムシの森」「チョウのはらっぱ」「トンボ池」「ミズスマシの池」などがあり、生態系のサイクルを学ぶことができます。「赤城自然園」には年間約8万人の来園者があり、毎週のように訪れるリピーターもいるとか。自然に触れる機会が少なくなっている現代、手入れの行き届いた豊かな森で、子ども時代の思い出を重ねていくのに理想の場所ではないでしょうか。 秋の山野草に、紅葉が織りなす色鮮やかな絶景 深まっていく秋の景色を満喫しよう 秋はオミナエシ、ワレモコウ、ツリフネソウ、キバナアキギリ、フジバカマ、ホトトギスなどが次々と開花をつなぎ、オータムカラーのしっとりとした風情を楽しめます。初秋には、1,000㎞以上も移動するといわれるチョウ「アサギマダラ」が数千羽もやってきます。その生態はいまだよく分かっておらず、「赤城自然園」では毎日マーキング調査を実施。そのマーキング体験も、期間中は毎日無料で参加できます。美しいチョウの姿を子どもと一緒に観察するのもいいですね。 そして森の景色が黄色や赤に染まる紅葉の見頃は10月下旬〜11月中旬。少し標高の高い場所ならではの、発色の素晴らしい紅葉シーンをぜひ写真に収めてください。 備え付けられたベンチに座って、鮮やかな紅葉を心ゆくまで眺めていたいところですが、「赤城自然園」内には、レストランやカフェなどの飲食店は入っていません。飲食物の持ち込みはOKなので、ハイキングに出かけるつもりで、各自飲み物やお弁当、おやつを持参しましょう。飲食できるのは、6カ所の休憩広場、9カ所の東屋です。ゴミは各自持ち帰ることも忘れずに。園内へのペット同伴は不可、禁煙です。 「赤城自然園」では、12月〜翌年3月の冬季期間中も、土・日曜のみオープン。雪景色の森のなか、野鳥や動物たちがたくましく生き抜く姿を見ることができます。年間パスポートが3,000円で発行されているので、四季を通して出かけるのもオススメです。 Information 赤城自然園 所在地:群馬県渋川市赤城町南赤城山892 TEL:0279-56-5211 http://akagishizenen.jp アクセス:公共交通機関/JR渋川駅よりシャトルバス、またはタクシーで約20分 車/関越自動車道赤城I.Cより約10分 オープン期間:通年 休園日:火曜(5月は無休)、12月〜翌年3月平日、年末年始 営業時間:9:00〜16:30(最終入園15:30) 料金:大人(高校生以上)1,000円、子ども(中学生以下)無料 駐車場:400台(無料) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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茨城県
花の庭巡りならここ! 広大な敷地でダイナミックに花が咲く「国営ひたち海浜公園」
広大な敷地を誇る都市公園「国営ひたち海浜公園」 1991年にオープンした「国営ひたち海浜公園」は、総面積が約350ha、開園面積が約200haにも及ぶ、広大な都市公園です。園内では四季を通してさまざまな花々が咲くほか、林間アスレチック広場やバーベキュー広場(要予約)、乗り物やアトラクションが充実しているプレジャーガーデン(遊園地)、サイクリングコース、自然観察ができる場所などがあります。一日いても全ては回りきれない広さなので、訪れたい場所はどのエリアか、園内マップを参照し、ターゲットを絞ってから出かけるのがオススメです。 敷地の広さを生かして季節の草花を群稙し、ダイナミックに面で魅せるのがこの公園の特徴。特に春のネモフィラと夏〜秋のコキアは、もはや誰もが知る人気スポットになっていますね。2017年度は約227万人が訪れたという実績があり、花好きさんにとっては何度でも見に行きたい花の名所になっています。 春はネモフィラが有名ですが約25万本のチューリップも見逃さないで! 「国営ひたち海浜公園」では、なんと真冬の1月からチューリップが開花します。これらは「アイスチューリップ」と呼ばれる、特殊な方法で冷蔵処理した球根を植え付けたものです。アイスチューリップは真冬に開花し、開花期間が大変長いのが特徴で、「グラスハウス」前の池のほとりに約1万5000本が咲き競います。ガーデナーにとって、花が咲く姿に飢えている冬。ぜひアイスチューリップに癒されに出かけ、春の訪れを楽しみに待ちましょう。 「国営ひたち海浜公園」の春の見どころは、なんといってもチューリップ。見頃は4月中旬〜下旬です。「たまごの森フラワーガーデン」では、約240品種25万本のチューリップが開花。毎年さまざまな品種を楽しめ、リピーターも多いとか。早咲きと遅咲きの品種を組み合わせて植栽し、時間の経過とともに変化するよう工夫されています。 「国営ひたち海浜公園といえば、ネモフィラ」。そんなイメージが定着してきましたね。見頃は4月中旬〜5月上旬。園内の「みはらしの丘」に、ネモフィラ‘インシグニスブルー’が約450万本植栽され、一面がブルーで彩られます。空と海、そしてネモフィラのブルーに囲まれたすがすがしい景色を、ぜひ一度は味わいたいものです。 「国営ひたち海浜公園」内にある「常陸ローズガーデン」では、約120品種3,400本のバラが植栽されています。見頃は春が5月中旬〜6月上旬、秋が10月下旬〜11月上旬です。写真の「ローズレリーフガーデン」は、園路によって一輪の大きなバラを表現。大観覧車から眺めると、目を引くデザインポイントになります。また、バラの原種の一つのハマナスは、茨城県が太平洋側の自生地の南限ということもあり、約1,600本が植栽されています。 バラが見頃を迎える期間は「茨城バラまつり」を開催。ガイドスタッフによる解説が聞ける「常陸ローズガーデンツアー」が行われるほか、フォトレッスンやコンサート、バラにまつわるクラフト体験など、さまざまなイベントに参加できます。 また、バラと同時期に「BMXコース周辺」のカリフォルニアポピー、「大草原フラワーガーデン」のリナリア、シャーレーポピーが楽しめるので、これらのエリアへもぜひ足を運びましょう。 夏はヒマワリ&もこもこコキアを満喫!秋は紅葉して真っ赤に染まるコキアの丘が大人気 8月中旬には、ヒマワリが見どころに。「みはらしの里」では約4,700㎡の敷地に咲く約3万本のヒマワリが楽しめます。「ヒマワリの迷路」がつくられているので、ゴールを目指してヒマワリ畑の散策を楽しみましょう。一方、「泉の広場フラワーガーデン」では、40品種ものヒマワリを植栽。色、形、大きさなど、育ててみたいヒマワリを見つけに足を運ぶのもオススメです。 7月上旬頃は、「国営ひたち海浜公園」の「みはらしの丘」に約3万2,000本が植栽された、グリーンのコキアが見られます。このモコモコっぷり、なんだかカワイイと思っちゃいませんか? 青空をバックに、たくさんのグリーンのモコモコと一緒にぜひ写真を撮りましょう。インスタ映えすること間違いありません! 8月中旬から約1週間の期間限定で、コキアが見られる「みはらしの丘」エリアのみ夜間開園が行われます。楽しいBGMが流れる中、LEDによるカラフルなライトアップが見どころ。毎年テーマを設けて繰り広げられる、光と音楽の演出を堪能しましょう。さまざまな屋台が現れる、グルメブースの特設会場にもぜひ寄り道を。 そして、コキアが本領を発揮するのが10月中旬から。グリーンから、なんと真っ赤に紅葉するんです。なだらかな丘一面が真っ赤に染まる景色は一見の価値あり。ぜひ秋のコキアを見に出かけましょう。同時期に、赤、白、ピンクのコスモス、ススキ、オギなど、楚々とした秋の花も見頃になります。 広すぎる園内では、周遊する「シーサイドトレイン」の活用を!オシャレなレストランやカジュアルなカフェも充実 「国営ひたち海浜公園」では、園内10カ所の停留所を周遊する「シーサイドトレイン」が運行しています。3歳以上が有料で一人500円の一日周遊券を購入すれば、乗り降り自由で乗り放題。敷地が大変広いので、普段あまり歩き慣れていない方にはオススメ。1周約40分かけて回るので、まずは「シーサイドトレイン」で園内をぐるりと巡って、見たい場所の目星をつけるのもいいですね。ただし、ペットの同伴は不可となっています。 「国営ひたち海浜公園」内には、レストラン1店舗、軽食店(飲食スタンド・カフェ)が6店舗入っています。写真は、海が見えるガラス張りのカフェテラス「Sea Side Café」。営業時間は9:30〜閉園1時間前まで(季節によって異なる)、ラストオーダーは閉園1時間15分前まで。軽食はドライカレー570円、ナポリタン620円など。 「Sea Side Café」のスイーツは、写真のカボチャのチーズケーキのほかに、メープルチーズケーキ、クルミのタルト、リンゴとサツマイモのパイがあり、いずれも390円。常陸野ハニードーナッツ、ソフトアイス(バニラ、抹茶、チョコレート、ストロベリー)いずれも300円。ドリンクはオレンジジュース、紅茶、コーヒー(ホット、アイスともに)310円。カジュアルな値段設定が嬉しいところです。 ちなみに、園内では飲食店が充実していますが、飲食物の持ち込みもOK。青空の下でお弁当やおやつを広げて、休憩するのもいいですね。 Information 国営ひたち海浜公園 所在地:茨城県ひたちなか市馬渡字大沼605-4TEL:公園029-265-9001 バーベキュー広場予約029-265-9002 プレジャーガーデン(遊園地) 029-265-8185http://www.hitachikaihin.jp 英語サイト/http://en.hitachikaihin.jp アクセス:公共交通機関/JR常磐線「勝田駅」東口より、バスロータリー2番乗り場茨城交通バス「海浜公園行き」にて約15分(タクシー15分)、「海浜公園西口」または「南口」下車すぐひたちなか海浜鉄道湊線「阿字ヶ浦駅」下車、徒歩約20分(海浜公園南口)車/東京方面:常磐自動車道~(友部JCT)~北関東自動車道経由、常陸那珂有料道路「ひたち海浜公園IC」より県道247号線 約1㎞いわき方面:常磐自動車道「日立南太田IC」より約15㎞ 休園日:月曜(祝日にあたる場合は翌日の火曜)、12月31日、1月1日、2月の第1火曜日からその週の金曜日まで ※但し、3月26日~5月31日、7月21日~8月31日、10月1日~10月31日、12月25日~30日は無休 営業時間:9:30~17:00 ※但し、夏期7月21日~8月31日は18:00まで、冬期11月1日~2月末日は16:30まで 料金:大人(高校生歳以上)450円、シルバー(65歳以上)210円、小人(小中学生)無料 ※のりもの券は別途料金 駐車場:4,350台(普通車510円/1日)
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神奈川県
横浜とバラの歴史を刻み続ける「港の見える丘公園」
バラが最もふさわしい場所 2016年(平成28)4月に、バラ園がリニューアルされた横浜・山手の「港の見える丘公園」には、現在、約330種2,200株のバラが植栽されているそうですが、元々こちらの公園にバラが植えられたのは、1962年(昭和37)のこと。「港の見える丘公園」内にあるイギリス館に合わせて、イギリスの国花であるバラが植えられました。そしてその後、開港130周年にあたる1989年(平成1)、市制100周年を記念して、市民投票で一番人気が高かったバラを横浜市の花として制定したことに加え、最もバラがふさわしい場所として「港の見える丘公園」が選定されたのでした。 バラが最もふさわしい場所とは、一体どんなところなのでしょうか。今回は、その「港の見える丘公園」についてご紹介します。 横浜とバラの関わりを知る歴史 「バラが最もふさわしい場所」をひもとくには、横浜の歴史に目を向けることが大切です。まずは、横浜とバラの歴史の年表をご覧いただきましょう。 1859年(安政6)7月1日、横浜港開港。 1867年(慶応3) 山手地区が外国人居留地(きょりゅうち)として開放され、西洋館の街が完成 居留地制度は1899年(明治32)まで続きました。 1868年(明治1) 明治維新。 1870年(明治3) 山手公園が開園。フラワーショーが開かれました。 1872年(明治5) 英国商社ヴィーチ商会のクラマー氏が、モダンローズの赤いバラを出品して、居留人に注目されます。バラが居留地の庭園に植えられ、近くに住む日本人からは、「イバラボタン」と呼ばれます。バラは当時、なかなか入手出来ない高嶺の花でした。 日本初の近代バラの広告「英国産のバラ売ります。横濱山六十三番スミス」という広告が出ました。 1885~1888年(明治18~21) かつて山手にあったゲーテ座でフラワーショーが開催され、多くのバラが出品されました。 *ゲーテ座とは、「居留地外国人たちの憩いの場」であり、演劇、音楽会、舞踏会、読書会、宗教活動など、さまざまな催しがそこで行われました。 1885年からは、バラを含めた植物の品評会「草木花卉品評会」が、計4回行われ、アレンジメント、盆栽、シクラメンやベゴニアなどの鉢植えが出品され、賞が与えられました。 1回目の1等賞は、W.B.ウォルター夫人のバラのアレンジメント。ジェームス夫人のバラのコレクション。この頃は、まだティーローズが多かったようです。2回目以降は、日本のご婦人たちによる出品が増え、生花、鉢植え、バラの出品が増えていったそうです。 同時期、有名な英国人建築士のジョサイア・コンドル氏(1852年9月28日 ~ 1920年6月21日)が設計を手掛けた「鹿鳴館」(ろくめいかん)が、1883年(明治16)日比谷に完成しましたが、鹿鳴館の夜会において、バラの切り花が贅沢に使用されていたそうです。 こうして、当時の目新しいバラは、外国人や外国人と関わりのある職業の方やそのご夫人方(いわゆる当時横浜での上流社会の催しなどにおいて、中心的な役割を担っていた人たち)の間にまず広まり、徐々に一般庶民にも広まっていったのでした。 震災を受けてからの横浜とバラ 1923年(大正12) 関東大震災により山手地区の街は壊滅状態へ。 1929年(昭和4) 関東大震災時にアメリカのシアトル市から受けた援助のお礼として、桜の苗木3,500本を贈り、その返礼として、200種3,000本のバラが贈られました。それらのバラは、当時の野毛山公園、山下公園、横浜市児童遊園地に「日米親善のバラ」として植えられました。その中には、‘ラ・フランス’、‘フラウ・カール・ドルシュキー’(新雪)、‘オフェリア’などがあったと伝えられています。 1935年(昭和10)から「バラ祭り」が開催され、「バラ行進」などは現在の「国際仮装行列」の原形になりました。 戦争に突入してからの横浜とバラ 戦争のために「バラ祭り」などのイベントは中止され、バラもほとんどが姿を消してしまいました。 1937年(昭和12) 英国総領事公邸としてイギリス館が建てられ、1969年(昭和44)まで使用されます。 今もなお、「港の見える丘公園」内にある「イギリス館」についてもご紹介しましょう。 1937年(昭和12)、東アジアに散在する英国公館の施設を預かる上海の大英工部総署の設計により、英国総領事公邸が建てられました。建物北側玄関左に、「1937年ジョージ6世時代」を示す「GRⅥ 1937」と印した紋章がはめ込まれています。その後、1990年(平成2)に横浜市が旧英国総領事公邸を買収し、「イギリス館」として市の文化財に指定しました。 1939年(昭和14) 第二次世界大戦始まる。 1945年(昭和20) 8月15日、第二次世界大戦終戦。 終戦を迎えてからの横浜とバラ 1949年(昭和24) 3月15日、野毛山公園を会場に「日本貿易博覧会」が開催。横浜市と日本ばら会の共催による日米のバラの展示会では、サンフランシスコのバラ会より空輸された‘ピース’、‘ショーガール’、‘アームストロング’などが出品され、注目を浴びました。 1962年(昭和37) イギリス館の周囲にイギリスの国花であるバラが植栽されました。 1989年(平成1) 開港130周年、市制100周年を記念して、横浜市の花として「バラ」が制定され、バラを植栽するバラ園をつくるために、最もふさわしい場所として「港の見える丘公園」が選定されました。 港の見える丘公園内にバラ園が誕生 このような歴史的背景を持ち、横浜港を見下ろす「港の見える丘公園」に以前からあったバラが整備されて「港の見える丘公園内バラ園」は、1991年(平成3)5月に開園しました。 そして、2016年(平成28)に、「港の見える丘公園内バラ園」は、イギリス館前が「イングリッシュローズガーデン」に、大佛次郎記念館前が「香りの庭」に、そして111番館前にかけてが「バラとカスケードの庭」へとリニューアルされ、宿根草や一年草との混植のガーデンとなりました。さらには、2017年(平成29年)に横浜で大々的なイベント「第33回全国都市緑化よこはまフェア」が開催され、多くの人が横浜を、そしてバラの咲くガーデンを訪れたのです。 このように、これまで横浜は、バラと深い歴史でつながってきました。これからも「市の花」である「バラ」と共に、共存、発展していくことと思います。
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神奈川県
バラの庭づくり初心者が育んだ5年目の小さな庭
庭づくりのはじまりは2株のバラ 神奈川県藤沢市、一戸建てが立ち並ぶ閑静な住宅街に、Yさんの小さな庭はあります。玄関前の花壇を中心に、道路に面したスペースに鉢植えをたくさんレイアウトしたオープンなつくりで、バラの季節になると、道行く人はその美しさに思わず目を向けていきます。 Yさんのバラ物語が始まったのは5年前、新築の家に越して来た時でした。それまで園芸にはさほど関心がなく、庭植えが唯一可能な玄関前の花壇も、業者にお任せでした。しかし、そこに転機が訪れます。花壇に植わっていたコニファーを目にしたお母様が「コニファーは大きく育つから、この場所にあるといずれ困るはず」と、すっぽり抜いてしまったのです。 花壇にあいた穴に困ったYさんは、憧れのバラでも植えてみようかと思い立ちます。そして、バラ専門店の「京成バラ園」に赴いて、初心者でも育てやすい丈夫なバラを教えてもらいました。すすめられたのは、明るいピンクの‘バイランド’と、優美な白バラ‘ボレロ’。どちらも病気に強い四季咲きのフロリバンダ種で、コンパクトなサイズ感も玄関先のこの場所にぴったりでした。 ‘バイランド’は日当たりのよい花壇を気に入ってくれて、順調に育ちました。今もよく咲くその姿は、通りがかる人々に陽気に挨拶する看板娘のようです。白い‘ボレロ’のほうは、日当たりがよすぎたからか一時弱りましたが、郵便受け脇の半日陰に移すと健やかに成長するようになりました。 はじめの2株がうまく花開いたことで、バラは思ったよりも丈夫で、意外と簡単に育つのかな、と感じたYさんは、バラの世界にどんどん魅せられていきました。 赤いバラに心惹かれて庭づくり それからは気になるバラを、一つ、また一つと増やしていきました。玄関前の花壇にはスペースがなくなったため、鉢植えでの栽培も始めました。手塩にかけたバラがきれいに咲いた時の喜びと達成感を知ったYさんは、バラの栽培にますます熱中していきました。 ある年は、赤いバラに心惹かれて、赤いバラばかりを買い求めました。ドイツ語で「赤ずきんちゃん」という名の通り、赤いケープをまとったような愛らしい姿の‘ロートケプヘン’に、明るく華やかな赤が印象的な‘ジークフリート’。「赤いバラは、白やピンクの柔らかな色合いの景色を、ぐっと引き締めてくれるんですよ」と、Yさん。 家の周りをバラの回廊に 鉢植えの置き場所もなくなったので、今度は家の外周の地面を利用しようと土を耕し、つるバラを植え込んでアーチやオベリスクに立体的に仕立ててみることにしました。玄関脇から家の西側の壁沿いを彩るのは、フェンスに絡まる白バラ‘ブノワ・マジメル’と、ピンクの‘ビアンヴニュ’。柵の左側にあるお隣さんの花壇とコラボレーションしています。 家を囲む通路の幅は、わずか80㎝。隣家の半日陰になる場所ではありますが、Yさんの日頃の観察と手入れによって、バラたちはよく花をつけ、美しい花の回廊が実現しました。 鉢植えトラブルを乗り越えてバラの庭を充実 Yさんのバラコレクションは、5年の間に鉢植えは30株、地植えが20株、計50株を超すまでになりましたが、鉢植え栽培ならではのトラブルもいろいろと体験しました。ある時、6鉢のバラの様子がおかしくなりました。花が咲かず、シュートも出ず、葉にも元気がなくて、成長が止まってしまったかのよう。鉢から出してみると、なぜか土がドロドロになっていて、根腐れをしていると気がつきました。 さらによく鉢の中を調べてみると、各鉢に決まって2匹のミミズがいました。ミミズは益虫と思って当初は気づきませんでしたが、調べてみると、どうやらそのミミズが犯人。鉢にいたのは、庭の土を耕して土作りをするといわれるフトミミズではなく、頭の尖った細いシマミミズでした。 有機物を食べるシマミミズが、堆肥や肥料といった餌を求めて近くの鉢にもぐり込み、粘り気のある糞をして鉢土をドロドロにしてしまった、というのが事の真相。シマミミズは、ミミズコンポストに使うには最適ですが、鉢植えに入り込まれるとやっかいなことになってしまうようです。 バラが休眠期の冬になるとYさんは、被害を受けたバラの根や鉢をきれいに洗って植え替えをしました。虫が苦手だったYさんですが、いまや愛するバラを救うためなら、シマミミズやコガネムシの幼虫退治もできるように。美しく咲くバラの姿を求めて、手探りの試行錯誤が続きます。 バラの庭が広げてくれる世界 バラの季節になるとYさんは、次々と咲く花を惜しげもなく摘んではブーケをつくって、友人やご近所さんに贈ります。「庭咲きのバラは、いろんな色を合わせても不思議とうまくまとまるんですよ」とYさん。うっとりするようなブーケのおすそ分けは、みんなを幸せな気持ちにします。 庭作りを始めたことでYさんには、園芸の師匠と仰ぐご近所さんや、憧れのナチュラルガーデンを持つマダムといった、素敵な花友だちができました。最年少の花友さんは、近所に住まう幼稚園児の男の子。パンジーの押し花を教えてあげたり、一緒にローズマリーのハーブの香りを嗅いだり、小さな庭で花好き同士の楽しい時間が生まれます。Yさんにとってこの庭は、日々のささやかな幸せとみんなの笑顔を運んでくれる、かけがえのない空間です。 併せて読みたい ・平成園芸を彩った三種の神器「バラ」「クレマチス」「クリスマスローズ」 ・「私の庭・私の暮らし」インスタで人気! 雑木や宿根草、バラに囲まれた大人庭 千葉県・田中邸 ・バラの専門家が教える! 鉢植えバラの剪定方法
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東京都
アジサイの名所が銀座に登場!新品種も勢揃い
2019「初夏のあじさいガーデン」 梅雨の季節を前に、ファンケル銀座スクエア10階の空中庭園に登場するのは、色とりどりのアジサイが咲き乱れるアジサイのガーデン。今年のテーマは「アンダルシアに想いを寄せて」。風情溢れるアジサイの花々が、都心の庭園を優美に彩ります。 全国から集められた、アジサイの希少品種の数々も必見です。 2019年の「初夏のあじさいガーデン」は5/31(金)~6/7(金)まで。入場無料で楽しめます。 以下は2018年のあじさいガーデンの様子です。 都心に現れたアジサイの園 『木々が光を遮る深い森の奥、濃密な緑がふと開けた明るい場所に、美しい湖とともに現れるアジサイの花園。青緑色の水をたたえた湖の湖面を白鳥達がすべるように進み、その奥の小高い丘には“白鳥城”の名を持つノイシュヴァンシュタイン城*がひっそりとそびえ立ち………。』 (*ドイツロマンチック街道の奥にあり、若き美しきバイエルンの王、ルートヴィッヒ2世が莫大な資金とその生涯をかけ、作り上げた世界一美しい城) ファンケル 銀座スクエア10階の空中庭園では、そんなロマンチックなストーリーで構成された「初夏のあじさいガーデン」が開催中です。アジサイといえば、雨を脇役としつつも控えめに季節の主役を演じてきた「和」のイメージが定着していますが、今回この庭に登場するのは、「エレガント」「ゴージャス」「ドラマチック」といった形容詞が似合う新品種。日本全国から集められた30種類以上の新品種が初夏の宿根草とともに庭を華麗に彩ります。 アジサイは近年、日本の育種家たちによって次々に新しい品種が生み出され、花弁の縁が別の色で彩られたピコティや繊細なグラデーション、フリルのようにたっぷりとした八重咲き、劇的な色変わりを見せるアンティークアジサイなど、その表情は多種多様な広がりを見せています。この庭を企画、制作した渡辺さくらさんは、今回の展示もそんな新しいアジサイのイメージを感じてもらえるように演出にも趣向をこらしたと話します。 「近年、日本で生まれる新品種のアジサイは、アジサイ寺などこれまで私たちが抱いていた、いわゆる水色の手まり状の花というイメージから飛躍し、花色も花形も驚くようなユニークな花がたくさん登場しています。そうした新品種ならではのアジサイの魅力を演出するために、あえてヨーロッパを舞台にした“あじさいガーデン”をつくることにしました。今回の庭は、白鳥を象った素敵な鉢との出合いからイメージを膨らませ、白鳥城といわれるドイツのノイシュヴァンシュタイン城と、その城が見下ろすアルプ湖をデザインコンセプトにしています」(渡辺さん) ここには、アジサイの育種が盛んな群馬県の「さかもと園芸」や「小内園芸」、常緑アジサイを生み出した「久保田花園」、秋色アジサイで有名な福岡県の「鬼木園芸」、‘万華鏡’や‘銀河’など優良品種を次々に生み出している島根県アジサイ研究会など、日本を代表するアジサイの育種・生産者たちの名品、新品種が一堂に会しています。ガーデン全体の雰囲気を楽しみながら、一つひとつの花に目を向けてみると、これらの新しいアジサイは、華麗でありながら、日本独自の感性による花の育種文化を色濃く反映していることが分かります。 例えば、「さかもと園芸」の代表品種でフラワー・オブ・ザ・イヤーを受賞した‘KEIKO’は、咲き始めは白の花弁にピンクの濃い縁取りがあり、次第に縁取りの色が溶け出るように全体がピンクがかって、さらにグリーンを帯びたアンティークカラーに変化するという複雑な色変わりが楽しめる花です。花形も最初はガクアジサイのように花の中心があいていますが、咲き進むに従ってふんわり手まり状に変わっていきます。こうした新しいアジサイは一見すると、その艶やかさに気を取られがちですが、そればかりでなく花の表情は繊細で緻密、そして時の移り変わりを楽しませるという趣向は、日本的な美意識のもとに生み出された花であることを感じさせます。今回の展示では新品種の‘ピンキーリング’もお目見えしています。 日本で生み出される新しいアジサイは、梅雨以降の庭の風景を変える重要な素材になりつつあり、今回の展示では庭のみならず寄せ植えやハンギングバスケットなど、アジサイのさまざまな演出方法が提案されています。 開催中はアジサイの鉢苗を販売しているほか、最終日には展示品の一部販売も行われます。市場ではあまりお目にかかれない希少種を手に入れるまたとないチャンスでもあるので、銀座にお出かけの際は足を運んでみては。これまでのアジサイのイメージを大きく変える日本の新しいアジサイの世界をご堪能ください。 Information 初夏のあじさいガーデン 5月26日(金)~6月1日(木) 会場:ファンケル 銀座スクエア10F スカイガーデン 問い合わせ:TEL 03-5537-0231(インフォメーションカウンター) http://www.fancl.jp/sq/ Credit 写真&文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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東京都
武蔵野の小麦畑の一角にオープンした市民のための憩いの庭「タネニハ」
花の生産農家が育てる「タネニハ」の庭 小麦の青い穂が初夏の風にそよいでいる。その広大な小麦畑の一角に、市民のための憩いの庭、タネニハが2017年秋のプレ・オープンを経て、2018年3月正式にオープンした。東京の多摩地区東部、東久留米市にある花の生産農家、秋田緑花農園の秋田茂良さんが3年前に企画し、自ら基本設計した庭だ。 400㎡の敷地内には、農園で生産された花苗や多摩地区に自生している野草など、多彩な植物が植えられている。タネニハという名前の「ニハ」は、古語で場を意味する。人と人、人と植物が出会い、さまざまなタネが育ってほしいという思いを込めて名づけられた。 秋田緑花農園のある一帯は、約300年前、江戸時代の半ばに開拓された農地で、茂良さんは農家の12代目にあたる。小麦やさつま芋畑は主に父親の貞夫さんが担当し、茂良さんは17年前から本格的に温室での花卉(かき)栽培を始めた。 温室ではゼラニウム、ビオラ、ヒューケラなどのポット苗が並び、中でも農園で育種し、第66回関東東海花の博覧会で金賞を受賞した極小ビオラ「多摩の星空」がひときわ可憐な姿を見せていた。 12代続く農家ならではの庭づくりを模索 秋田さんは小学生の頃、作文に「街を緑でいっぱいにしたい」と書いたが、その思いを強くしたのは、2011年の東日本大震災がきっかけだった。その年の7月から3年間、ヒマワリなどの苗を届け、被災した多くの人に喜ばれた。花によって人々の心が和らぐのを目の当たりにして、改めて植物の持つ癒しの力を教えられたという。 そうした経験から、「誰もが訪れて庭いじりに参加でき、のんびりと散策もできる、花農家ならではの庭をつくりたい」と思い立ったのが、タネニハ誕生の物語だ。農園のスタッフや友人のガーデナーたちに、多くの市民ボランティアが加わり、園内にある自宅付近の木々を移植。芝生の庭を囲むように季節の花々が植栽された。 東久留米は「平成の水100選」に選ばれた南沢湧水のある地で、その湧水池をイメージした池も設置された。農園やタネニハの水やりも、地下深くから汲み上げた豊富な地下水を利用しており、丈夫な植物が育つ一因になっている。 花農家は卸売りが中心だが、タネニハの前には直売コーナーが設けられた。自転車や車で通りかかった人たちが、鮮やかなゼラニウムの色に誘われるように足をとめ、時間をかけて花苗を選んでいく。 庭は人をつなぎ、新しい街の形を創造していく 植物の寄せ植えや、ハボタンの苗などを使ったリースづくり、またヒンメリ(麦のストロー・アート)づくりなどのワークショップも共催。農園の無農薬の小麦粉で、天然酵母のパンづくりをしているプチ・フールの宮沢ロミさんをはじめとして、東久留米の地域の仲間とのネットワークも充実し、公園でのマルシェ開催や、アートプロジェクトの実現などにも取り組んでいる。 「街と社会は人でつくられている。花から生まれた人との関係が広がってくれたら嬉しい」と語る秋田茂良さん。タネニハの芝生に寝転んで空を見上げていると「武蔵野の自然の中にいる」…そんな心地よさに包まれる庭だ。 Information タネニハ(taneniwa) 所在地:東京都東久留米市南町2-3-19 TEL:042-452-3287(受付8:00〜17:00) Blog: http://blog.kaobana.com/ Email:info@kaobana.com アクセス:公共交通機関/西武池袋線「ひばりヶ丘駅」または西武新宿線「田無駅」からバスで「イオンモール東久留米南下車」徒歩約10分。 車/「イオンモール東久留米」を目指し、所沢街道「南町4丁目交差点」から約600m。 オープン期間:火~土曜日、12:00〜16:30 閉園:日・月曜日、雨天・荒天日 季節閉園:1〜2月、7〜8月
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茨城県
カメラマンが訪ねた感動の花の庭。茨城「つくばローズガーデン」
今から10年ほど前に雑誌の企画で「オープンガーデンつくば」さんに取材に伺った際、何人かの方から「オープンガーデンのグループではないですけど、元市長の藤澤さんがつくった、なかなか立派なバラ園がありますよ」と教えていただいたことがありました。その時はそのまま忘れてしまっていましたが、オープンガーデンの取材も終わり、お世話になった方にお礼の電話をしている時に「来年は藤澤さんのお庭にぜひ行かれたらいいですよ」と改めて薦めていただいたことがお付き合いの始まりでした。 とはいっても、元市長さんに電話をするのは気後れして、大きな白いお屋敷にハイブリッドティーだらけのバラ園という勝手なイメージも邪魔をして、なかなか電話をできずにいました。しばらくどうしたものかと考えた末、やっと電話をかけてみると、藤澤さんはとてもていねいな優しい口調の方で、「写真に撮っていただけるような庭かどうか分かりませんが、それでもよかったらお越しください」と言ってくださいました。 最初の電話から半年が過ぎ、いよいよ再びバラのシーズンが始まり、藤沢さんのバラ園の撮影当日、どんな庭だろうと思いながら伺ってみると、目の前に現れたその庭は無数のバラが咲き乱れる、僕の勝手な想像とはまったく違う夢のような庭でした。 中央の緑の芝生のスペースを囲むように、左側にはツゲのヘッジに囲まれたオールドローズのエリア、その向こう側には大小さまざまなパーゴラが立ち並ぶイングリッシュローズのエリア。さらに奥には、フレンチブルーに塗られたトンネルに、フレンチローズが咲き乱れています。またまた奥のフェンスには、満開のつるバラ。右側のヘッジの中はミニバラのスタンダードとイングリッシュローズが咲き乱れ、見渡す限りすべてのバラが今が盛りと5月の優しい光の中で美しく咲いています。 バラ園の入り口で藤澤さんに挨拶をすませ、早速中へ。午後3時半の少し傾きかけた太陽の位置を確認して、撮影ポイントを探しながら歩き回ると、つるバラのアーチの下をくぐるときも、イングリッシュローズのパーゴラの脇を通るときも、さまざまな心地よいバラの香りに包まれます。きれいに咲いた花を見つけては、まず顔を近づけて香りを嗅いでから数枚のシャッターを切り、心の中で「ありがとう」とつぶやいてから次の花へ。そんな幸せな気分で過ごした日暮れまでの3時間でした。 藤澤さんは市長を務めている頃、つくば市にバラ園があるといいなと考えていたそうですが実現することはなく、ならば自宅の前の畑をバラ園に変えようと行動したそうです。バラ園をつくると決めた藤澤さんは、毎日のようにガーデニング誌『BISES』やDVDの『オードリー・ヘプバーンの庭園紀行』を見ながら構想を練り、馬ふん堆肥やウッドチップを使った土づくりから、パーゴラやアーチの製作、2,500株に及ぶバラの植え付けまで、1人ですべてをやってしまったというから驚きます。 バラの選定は千葉県のバラ園「草ぶえの丘」に通って、すっかり気に入ったオールドローズでと決めていましたが、知り合いからの意見もあり、ちょうどその頃流行りだしたイングリッシュローズを主流にしたそうです。それから13年間、毎年毎年4トンの馬ふん堆肥を入れ、米ぬかやカニ殻を自分流にブレンドした有機肥料を使いながらバラ園を育ててきた藤澤さん。 「バラを育てるのは難しいです。剪定も毎年悩みながらやっています。うまくいった年もあるし、うまくいかなかった年もあります。だからうまくいったら嬉しいし、うまくいかなかったら悔しいです。だからまた頑張れる。何といっても、きれいに咲いた時にお客様が喜んでくれるのが一番嬉しいです」と、いつもの笑顔で教えてくれました。 このバラ園での一番の思い出は、2014年に藤澤さんの発案で、福島県にあった「双葉ばら園」の写真展を開催できたことです。きっかけは、3.11の東日本大震災で被災された「双葉ばら園」の園主、岡田勝秀さんの仮住まいがご近所だったこと。岡田さんがときどき藤澤さんのバラ園にも来てくださることもあって、岡田さんへのエールの気持ちも込めた写真展企画でした。2013年発行の『BISES』No.87で双葉ばら園の特集を掲載していただいた八木編集長にも写真展への協力をお願いしたところ、快く引き受けていただき、「一瞬で幻となった双葉ばら園の43年間の記憶」という特集タイトルを写真展でも使わせていただきました。また、心のこもった挨拶文までいただいたのは、僕だけでなく藤澤さんにも岡田さんにも、本当に忘れられない思い出です。 先日、この記事を執筆することをお伝えするために藤澤さんを訪ねました。「原稿は今井さんにお任せしますよ。今年はつぼみがたくさんつきましたから楽しみです」と、いつもと変わらない笑顔で迎えてくれました。
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栃木県
花の庭巡りならここ! 世界一の藤棚が見られると海外からの呼び声が高い「あしかがフラワーパーク」
「あしかがフラワーパーク」の前身は、1968年に開園した「早川農園」で、「250畳の大藤」を持つ藤の名所として地元の方々に愛されてきました。再開発により1997年に現在の場所へ大藤とともに移転し、敷地も規模拡大して9万4,000㎡の観光庭園となっています。 「あしかがフラワーパーク」では一年を8つの花の季節に区切り、1月上旬〜2月下旬の「早春〜春のいぶき」の冬咲きボタン、寒紅梅、ロウバイの見頃からスタートし、「春の花まつり」「レインボーガーデン」「ブルー&ホワイトガーデン」など次々と旬の開花リレーを楽しめます。 特筆すべきは、やはり大藤が満開となる4月中旬〜5月中旬の「ふじのはな物語」の期間。1,000㎡に及ぶ藤棚から豪華に花房が咲き枝垂れるさまは、一見の価値ありです。アメリカのニュースチャンネル、CNNのトラベルスタッフより「2014年の世界の夢の旅行先10カ所」に日本で唯一選ばれたこともあり、世界中から注目を集め、海外からの観光客も増加の一途。2017年には約150万人が訪れました。人々の感動を誘う「世界一美しい藤」を見に、ぜひ出かけてみませんか。 春の喜びでいっぱい! 2万球のチューリップ&世界が恋する神々しいほどの藤棚 「春の花まつり」期間は、3月上旬〜4月中旬。特に人気の高いチューリップの見頃は3月上旬〜4月下旬で、毎年約2万球が咲き競う姿は圧巻。配色や品種も毎年変わり、この期間を楽しみに多くのリピーターが訪れます。このほか、ユキヤナギが3月下旬〜4月中旬、サクラが3月下旬〜4月上旬に見頃となります。 「ふじのはな物語」期間は4月中旬〜5月中旬。「あしかがフラワーパーク」のシンボルともいえる藤の花が最も美しい時期です。古いものでは樹齢150年の大木があり、うす紅藤、むらさき藤、長藤、八重の藤、白藤、きばな藤などさまざまな品種が開花をつなぎ、1カ月以上も満開の姿を披露します。移植時は72㎡でしたが、年々規模を広げて、いまや1,000㎡にも及ぶほどに。「世界一美しい藤の庭園」として海外からも熱い視線を浴び、多くのツーリストが訪れます。 園内には藤の花のトンネルを2カ所に設置。きばな藤と白藤がそれぞれ高さ約3m、奥行き約85mにもわたってダイナミックに咲き誇ります。ここでしか撮影できない、フォトジェニックなシーンをぜひ記念に残しましょう。「ふじのはな物語」期間は、夜間もオープンしています。 この時期は、ほかにツツジが4月中旬〜5月上旬、シャクナゲが5月に盛りの時を迎えます。 バラにシャクナゲ、クレマチスの咲く花の楽園 一度は訪れておきたい、日本が誇るフラワーパーク バラ、シャクナゲ、クレマチスなどが満開になる「レインボーガーデン」の期間は5月中旬〜6月上旬。ローズガーデンは2015年にリニューアルされ、約400品種2,500株が植栽されています。つるバラをオベリスクや壁面にダイナミックに仕立て、空間を豪奢に彩る演出が見どころです。 この期間は、約1,000本のシャクナゲ、約500株のクレマチスも次々と咲いて、園内が色彩豊かに華やぎます。 「ブルー&ホワイトガーデン 花菖蒲 あじさいまつり」は、毎年6月に開催。夏に向けてブルー&ホワイトに花色を絞り、涼しげなシーンを演出。花菖蒲は6月中、あじさいは6月上旬〜7月上旬が見頃になるので、両方が同時に開花しているタイミングが、特にオススメです。 「水辺に浮かぶ花の妖精たち」の期間は7月上旬〜9月下旬。写真は熱帯性スイレンで、白、黄色、ピンク、赤、紫など、花色、品種もさまざまに、約1,500株が植栽されています。桟橋から眺めると馥郁とした香りが立ちのぼり、うっとりと見とれてしまうことでしょう。 10月上旬〜11月下旬にはアメジストセージが満開になる「パーブルガーデン」。紫一色で彩られる面で魅せる豪華な演出は、撮影スポットとして人気です。 園内をゆっくり歩いて、ひと通り散策し終えるまでには、大人の足で90分くらいかかります。少し疲れたら、休憩を。園内にはレストラン「ウェステリア」「あじさい」「マロニエ」の3店舗があります。中でも「ウェステリア」は200名収容の大型レストランで、和食、洋食など、多様なメニュー構成です。 冬はあたたかな光で花園を演出 日本三大イルミネーションスポットを楽しもう! 毎年10月下旬〜2月上旬はイルミネーション期間となり、ナイトガーデンも楽しめます。「光の花の庭」をテーマに400万球のLEDで彩られ、藤の花房をイメージした「奇蹟の大藤」をはじめ、「光のバラ園〜ハピネスガーデン〜」など光の花畑をイメージさせるファンタジックな世界は必見。水面に映り込む「光のピラミッド」、クリスマスを演出する高さ25mの「イルミネーションタワー」、光の壁画「スノーワールド」「レインボーマジック」なども人気で、「日本三大イルミネーション」に認定されているほどの規模を誇ります。 春や秋にはバラの育て方教室や、園芸家を迎えての講習会などのイベントが各種催されるほか、花苗売り場も充実。土産物店もプライベートブランドの藤の香水、藤染のストール、藤饅頭など、ここでしか買えない品々が多数揃っています。 Information あしかがフラワーパーク 所在地:栃木県足利市迫間町607 TEL:0284-91-4939 http://www.ashikaga.co.jp アクセス:JR両毛線あしかがフラワーパーク駅より徒歩1分 【東北自動車道】佐野藤岡IC、国道50号前橋・足利方面進行約18分 【北関東自動車道】太田桐生ICより国道122号経由、国道50号足利・小山方面進行約20分/足利ICより国道293号経由、県道67号佐野方面進行約15分/佐野田沼ICより、県道16号経由、県道67号足利方面進行約12分 オープン期間:通年、無休(但し12月31日、2月第3水曜、木曜は休園) 営業時間:9:00~18:00(通常期、「ふじのはな物語」期間を除く)、10:00~17:00(夏季・冬季、イルミネーション期間を除く) 【ふじのはな物語期間】7:00〜21:00(4月14日〜5月13日)、7:00〜18:00(5月14日〜5月20日) 【光の花の庭期間】15:30〜21:308(10月27日〜2月5日土・日・祝日)、15:30〜21:00(10月27日〜2月5日平日)※季節、開花状況によって異なる 入園料:【昼の部】大人300〜1,200円・子ども200〜600円(1月1日〜4月17日)、大人900〜1,800円、子ども500〜900円(4月14日〜5月20日)、大人500〜1,200円、子ども300〜600円(5月21日〜6月30日)、大人300〜900円、子ども100〜500円(7月1日〜12月31日) 【夜の部】大人900円、子ども500円 (10月下旬〜2月上旬) ※開花状況により変動あり。昼の部・夜の部は入替制ではありません。 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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群馬県
花の庭巡りならここ! 一日過ごしても飽きない「ぐんまフラワーパーク」
1992年に開園した「ぐんまフラワーパーク」は、18万4,000㎡の敷地に約3,000種以上、約50万株の植物が息づいています。四季折々の草花が植栽された庭園はいつ訪れても花々が咲き競い、年間の来場者は約23万人(2017年度)。車椅子のままでも触れて楽しめるハーブ園や、子ども向けアスレチックなどの遊具もあり、幅広い年齢層に愛されています。 庭園内は、メインガーデンとなるフラトピア花壇を中央に、東エリアにイングリッシュガーデン、ハーブ園、バラ園、ロックガーデン、山野草コーナー、西エリアに観賞温室、日本庭園、つつじヶ丘など、大きく3つのエリアに区分けされています。大人の足でゆっくり歩いて90分くらいで、ペット同伴もOK(入場料200円)。レストランが充実しているほか、寄せ植え教室やバラの講演会などのイベント、押し花やアロマ石けんづくりなどのクラフト教室も開催されているので、一日遊び尽くすつもりで出かけるのにちょうどいい総合公園です。 四季の開花リレーで見どころが移ろう 何度でも訪れたい観光ガーデン 写真は、2017年の改修工事によって完成したフラトピア大花壇。球根類、一年草、バラなど四季を通して楽しめるように多数の草花で彩っています。フランス庭園に見られる左右対称、幾何学模様や唐草模様などを表現した植栽も見どころ。中央の整形花壇は、季節が進むたびに年4回の植え替えが行われています。 写真は園内中央、高さ18mの展望台「パークタワー」から見下ろした4月のチューリップ花壇。毎年配色デザインを変え、約70種20万球が開花します。 「ぐんまフラワーパーク」では、毎年5月下旬〜6月には、バラフェスタを開催。園内には香り高いバラを中心に、約400品種1,600株が植栽されています。バラ園では作出された国別に分類し、このエリアの木立バラやオベリスク仕立てのバラなどからは、美に対するお国柄を垣間見ることができそう。園路を進むと、スタンダードローズ、つるバラのアーチやオベリスク仕立て、ウィーピングスタンダード仕立てなどが次々と現れ、立体感のある演出を楽しめます。写真、手前のピンクのバラは‘マチルダ’。 6月中旬〜下旬はアジサイの季節。アメリカアジサイの‘アナベル’は、普通のアジサイよりも華奢な草姿に、グリーンがかった白い花色がたわわに咲く、近年の人気品種です。 夏の花壇はブルーやイエローをテーマカラーに、季節感を演出するよう植栽のカラーコーディネートをしています。 7月中旬と9月下旬〜10月上旬には、ダリアが見頃を迎えます。約200品種1,500株が植栽され、紫や赤をベースに秋らしいシックな花色でまとめています。 このほか、10月になるとフロトピア大花壇に群植されたサルビア・レウカンサが満開になり、紫色の絨毯を敷いたようなナイスビューが広がります。 「ぐんまフラワーパーク」の園内には5棟の温室があります。「予定していた日が雨で残念だったけれど、温室の景色だけでも十分楽しめました」との声が寄せられるほどの充実ぶり。特にイベント温室では、年間7回の入れ替えを行うディスプレイガーデンがあり、毎回30種300株がテーマに沿って植栽されています。写真は1月1日〜2月12日開催のアザレア展で、150種350株が華やかに彩りました。 写真はイングリッシュガーデンの一角。英国王立園芸協会会員、ガーデンデザイナーのサラ・フェイスフル氏が設計した、フォーマルガーデンとコートヤード(箱庭)の伝統的な整形庭園です。フォーマルなテラスから左右対称のボーダー花壇へと歩みを導き、ホットカラーからクールカラーへと花色が変化していく景色は、ため息がこぼれるばかり。トレリスなどによって仕切られた典型的な英国式庭園は、群馬県特有の「上州からっ風」と呼ばれる強風から植物を守ってくれる役割もあるとか。強風対策に悩まされている土地にお住まいの方には、参考にしたいアイデアが見つかりそうです。 ガイドツアー「チュウチュウトレイン」でラクラク見学 イルミネーションの季節もオススメ! 季節の花を楽しみながら、のんびりとガイドツアー「チュウチュウトレイン」を利用するのもオススメ。写真は4月中旬頃で、桜の散歩道を人が歩くくらいの速度で進みます。園内を約20分かけて回り、料金は300円(3歳以下は無料)。52名定員で、車椅子専用が2席あります。 毎年11月上旬〜1月下旬には、「妖精たちの楽園」をテーマにしたイルミネーションが設置されます。約100万球のLEDで装飾された幻想的な風景に、プロジェクションマッピングやレーザーショーも加わり、素晴らしいライトアップが楽しめます。 地場産の旬を取り入れたメニュー満載のレストランや カジュアルな軽食コーナーなど休憩どころも充実 広い園内には、レストランや軽食コーナーなど4店舗があります。写真は地場の食材にこだわり、オリジナル料理を提供するレストラン「花みずき」のメニューの一例。ダリアフェスタの時期限定、ダリアの花を丸ごと揚げた天ぷらが添えられた「ダリア天ぷらそば」です。ランチは11:00〜15:00、ディナーは16:30〜19:00(特別な夜間開園時のみ)、ラストオーダーは15分前まで。団体利用OKで、120席あります。価格帯はランチが1,000円前後、スイーツメニューはクリームあんみつ500円、フォンダンショコラ680円、季節限定パンケーキ780円など。 ほかに土産物を扱う売店も充実しており、群馬県の特産品や、ぐんまちゃんグッズ、農産物など多数揃っているので、ショッピングを楽しむ時間もとっておきましょう! Information ぐんまフラワーパーク 所在地:群馬県前橋市柏倉町2471-7 TEL:0120-1187-38 http://www.flower-park.jp/ アクセス:上毛電鉄大胡駅から約6㎞(乗り合いタクシーで約15分) 関越自動車道より赤城IC下りて前橋・赤城方面へ約22㎞ 車で約30分 北関東自動車道より伊勢崎IC下りて前橋・渋川方面へ約15㎞ 車で約30分 オープン期間:通年、無休 営業時間:9:00~17:00(3月~10月)、9:00~16:00(1月~2月) 入園料:700円(4〜6月)、600円(7月〜3月) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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神奈川県
神奈川「生田緑地ばら苑」ボランティアが支える天空のばら苑
2018年に60周年を迎えた歴史あるばら苑 東京「新宿駅」から小田急線に乗って急行電車で約25分と、都心から近いにもかかわらず、緑豊かな丘の上にあることから、川崎生田緑地ばら苑は「天空のばら苑」とも呼ばれています。 かつて小田急・向ヶ丘遊園地がこの緑多き多摩区の山の上にできたのは1927年。幼稚園や小学校の遠足先として、また、ファミリー向けの憩いの場として人気を博しました。当時、来訪者を迎えるために入り口斜面につくられた、よく手入れの施された大きな花時計は、今でも訪れた方の思い出の中に残っているのではないでしょうか。 遊園地開園30年後の1958年、東洋一のばら苑としてこの遊園地内につくられたのが、「旧向ヶ丘ばら苑」、現在の「生田緑地ばら苑」です。 1958(昭和33)年といえば、今上天皇陛下と皇后陛下(美智子様)がご婚約された年であり、一万円札ができた年です。また、12月には、東京タワーが完工しました。高度経済成長時代まっただ中、勢いのある時代に、当時の人々にとって繁栄と文明の象徴でもあるモダンなバラたちが集められ、60年の時を経て現在に至っています。 ボランティアが支えるばら苑 その後、向ヶ丘遊園地は、2002年3月に残念ながら閉園を迎えますが、ばら苑の存続を求める川崎市民の多くの声によって、川崎市がばら苑の保全をすることになりました。同年4月より、「川崎市生田緑地ばら苑」として多くの市民ボランティアが協力し支えています。 私も、このばら苑の近くに住む市民のひとりとして、6年前から時折ボランティア活動に参加しています。普段は庭のバラと一人で向き合い、全て一人で作業していますが、こちらでは皆で力を合わせ、一緒にバラを育てている一体感が感じられます。剪定、誘引、花がら摘み、草取りなど、地元に暮らすバラを愛する皆さんと一緒に行う作業の時間も、また楽しいものです。 古いばら苑ならではの雰囲気と希少品種を保有 60年の歴史あるばら苑ですので、どこか懐かしい雰囲気が漂う苑内では、他のバラ園では見かけないような古い希少種のモダンローズを見ることができます。 “ロイヤル“にちなんだバラの品種が充実 各国の要人にちなんだ名前を持つバラたちが植栽された「ロイヤルコーナー」は、他のバラ園でもよく目にすることができますが、こちらのばら苑のロイヤルコーナーの充実ぶりは、特筆すべきものがあります。 ロイヤルコーナーに植栽されているこの‘スルタン・カブース’というバラは、中東のオマーン・スルタン国の現在の国王陛下の名を冠したバラです。このバラをオマーン・スルタン国駐日大使ご夫妻が見に来られるなど、バラがつなぐ民間国際交流の輪も広がりを見せています。 新しいバラや注目のバラ苗も植栽 古いばら苑であっても、各国の新しいバラ、世界バラ会連合選出の殿堂入りのバラなど、常に新しいバラの品種や注目のバラに目を向け、新しく苗を植栽しています。 オールドローズが充実のボランティアガーデン ボランティアガーデンには、オールドローズが多く植栽されています。その結果、モダンローズが多い生田緑地ばら苑の品種のバランスを保つことに繋がっています。モダンローズのルーツを探ることはオールドローズを知ることでもあり、原種のバラへたどり着くことでもあります。バラの歴史は、壮大なストーリーを秘めていることに、来訪者が気づけるような、さりげない工夫でもあるのです。 簡単ではありますが、川崎市の生田緑地ばら苑の見どころをご紹介させていただきました。 こちらのばら苑では、春と秋のバラの開花シーズンのみ一般公開を無料で行っています。 いよいよ、今年の春の一般公開の日が近付いてきました。 春の一般公開日程は、http://www.ikuta-rose.jp/をご覧下さい。 最寄駅:小田急「向ヶ丘遊園」駅南口より徒歩約20分 住所:川崎市多摩区長尾2丁目8番1号ほか(旧 向ヶ丘遊園内) 公開中は、バラの講習会、ボランティアによる庭園ガイド、庭園での演奏会等が開催予定です。(雨天中止の場合有り)
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群馬県
花の庭巡りならここ! ため息がこぼれる美景を堪能! 「東武トレジャーガーデン」【閉園】
約8万㎡の敷地をもつ「東武トレジャーガーデン」は、「芝桜のガーデン」、「シーズナルガーデン」「水辺のローズガーデン」と、大きく3つのエリアに分けて構成。約4,000種100万株の植物が息づく花園は、「美しきバラと千の花々」というコンセプトのもとに、息をのむような美しいシーンが次々と登場し、自然に奥へと歩みを進めたくなるようランドスケープデザインされています。また、隣接する野鳥の森と茂林寺沼低地湿原を借景に取り込んだ自然豊かな景色が広がり、まるで別世界を訪れたような気分に。2018年は4月1日〜6月10日の期間に春季フェスタを開催。花々が咲き競うこの時期に、ぜひ足を運んでみてください。期間中はイベントも多数開催しており、4〜6月に100万人のクラシックライブのほか、オリジナルブレンドのハーブティー教室や、多肉植物や小物づかいでステップアップコンテナガーデン、ローズガーデンツアーなどを予定しています。 広大な敷地を生かし、面で魅せる「芝桜のガーデン」と「シーズナルガーデン」 「東武トレジャーガーデン」内の「芝桜のガーデン」エリアの見頃は、4月中旬〜下旬頃。ピンク系と白の芝桜5品種が約20万株植栽され、見事なピンクのグラデーションをつくり出します。背景には53本のソメイヨシノが植えられており、どちらも満開を迎えた際には、絶好のフォトスポットとして人気を呼んでいます。 「シーズナルガーデン」エリアの見頃は4〜6月頃。草花を混植したエリアで色鮮やかな約80万株の花々が、季節が進むごとに順次美しく咲き誇ります。 写真のように面で魅せるエリアの中心に立つ樹木は、輝くような黄色いカラーリーフが目を引く、ネグンドカエデ‘ケリーズゴールド’。その手前のブルー一色で大地を埋める花は、ネモフィラです。 「シーズナルガーデン」の左の写真は、紫のラークスパー、ホワイトレースフラワー、ヤグルマギクが咲き競う、ブルー系の花色でまとめた一角。背景のレンガ造りの構造物は、展望台として全景を見渡せます。館林の茂林寺に伝わる「分福茶釜」と同様のご利益(開運出世・寿命長久)があるという茶釜のオブジェも置かれているので、ぜひ立ち寄ってみましょう。 右の写真は、「シーズナルガーデン」の混植エリアで、4月下旬頃の風景です。オレンジ、黄色、ピンクなどの暖色系でカラーコーディネートし、リナリア、デージーなどを植栽。後ろに少し見えているネモフィラのエリアとのコントラストが楽しめます。 7つのシーンで構成される「水辺のローズガーデン」で、バラの魅力を存分に味わう 「水辺のローズ」の見頃は5月中旬〜下旬。このエリアは、さらに7つのシーンに分けられています。「初夏のさくらのトンネル」、「ブルーローズのラヴィリンス」、「心を癒すフラグラント・ローズ・ガーデン」、「イングリッシュローズが咲き誇るペレニアルボーダー」、「風にバラが唄うナチュラルガーデン」、「清き白バラの天蓋」、「エントランス・ボーダーガーデン」です。タイトルからもロマンティックなガーデンの様子が伝わってきます。 写真は「初夏のさくらのトンネル」のシーン。淡い桜色のバラ‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク・ランブラー’のアーチを連ねてトンネルに仕立て、桜が爛漫に咲く季節をイメージさせる植栽となっています。 写真は「イングリッシュローズが咲き誇るペレニアルボーダー」。バラのナーセリー、「デビッド・オースチン・ロージズ」が生み出したブランド「イングリッシュローズ」の品種群は、四季咲きで花つきがよく、優美な花姿が魅力です。それらの特性を生かし、バラの花色をより引き立たせるために、組み合わせる下草は脇役として控えめにしています。手前でたわわな房咲きになっている、オレンジイエローのイングリッシュローズは‘モリニュー’です。 写真は「清き白バラの天蓋」のシーン。園路へダイナミックに渡したパーゴラには、白バラの‘つるアイスバーグ’、‘ボルティモア・ベル’などが仕立てられ、青空によく映える清楚な景色をつくり出しています。パーゴラの下には多数のベンチが配されており、休憩可能です。ただし、園内への飲食物の持ち込みは不可となっています。喫煙も不可(所定の位置に喫煙所あり)、ペットの同伴はカート限定利用でOK(小型犬に限る。有料でカート貸し出しあり)。 写真は「心を癒すフラグラント・ローズ・ガーデン」のワンシーン。香りが強く、花姿もグラマラスなバラばかりを集めた、癒しを誘う一角です。バラは花が開いたばかりの頃に最も強く香るので、このエリアを楽しみたいなら午前中の早い時間帯を狙うのがオススメ。曲線を描いた園路のため、歩を進めるたびにシーンが変わり、奥行きを感じる演出がなされています。手前の赤いバラは‘ドゥフトボルケ’、オレンジ色のバラは‘ジャスト・ジョーイ’。 「エントランス・ボーダーガーデン」の入り口には、石づくりのアーチがしつらえられています。このアーチを優美に彩るのは、数ある品種のバラの中でも高い人気を誇る‘ピエール・ドゥ・ロンサール’。アーチをくぐると、宿根草を中心としたボーダーガーデンを両脇にもつ「ロングボーダーガーデン」の景色に場面転換されます。 レストランで舌鼓を打ったら、オリジナルグッズが揃うショップをのぞいてみよう! 「東武トレジャーガーデン」の花々で彩られた美しい景色を観覧するには、大人の足でゆっくり歩いて1時間くらいかかります。少し歩き疲れたなと感じたら、レストラン「ヴィクトリアンハウス」で休憩するのもオススメ。営業時間は、10:00〜16:00、ラストオーダー15:30、テラス席は9:30〜17:00、開園期間中(4月1日〜6月10日)のみオープンしています。コース料理やパスタのほか、フルーツパフェやパンケーキなどスイーツも揃い、充実したメニュー内容。右の写真は人気メニューの「ヴィクトリアンプレート」です(価格帯は季節によって変動)。 土産物店も2店舗あるので、ぜひのぞいてみましょう。ガーデンショップ「Mary’s Room」は、花苗のほかテキスタイル、ガーデン用雑貨、ハーブティーなどガーデニングの枠にとらわれない多様な品揃え。土産物ショップ「こるり」では、地元群馬県館林の名物品などを販売。バラ餡とシソ餡の2色の餡が入った「ちゃがまんじゅう」が人気商品です。 Information 東武トレジャーガーデン【閉園】 所在地:群馬県館林市堀工町1050 TEL:0276-55-0750 http://treasuregarden.jp Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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群馬県
カメラマンが訪ねた感動の花の庭。長年通ったアンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン【閉園】
「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」は、今から16年前の2002年4月に日本初の本格的イングリッシュガーデンとして群馬県太田市にオープンしました。 僕の家からは車で約3時間、決して近いという距離ではないのですが,この18年間で一番多く撮影に訪れたガーデンは、間違いなくこの「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」だと思います。 アンディ・マクルーラとウィリアム・ウルフの2人のイギリス人によってデザインされたこの庭は、イギリスのガーデンのエッセンスが随所にちりばめられていて、春、夏、秋、冬、どの季節も期待を裏切らない、僕にとってかけがえのないガーデンです。そして、多くのことを勉強させていただきました。 初めてこのガーデンを訪れたのは、おそらく2002年の5月だったと記憶しています。大型ホームセンターの「ジョイフル本田」新田店に付随した施設として、なんと群馬県にイングリッシュガーデンがオープンしたという噂を聞きつけました。当時イギリスのガーデニング関連の本を2冊手がけたカメラマンとしては、どんなガーデンなのか、この目で見ない訳にはいかないぞ! と、さっそく車を走らせたのを思い出します。 東北自動車道の館林I.Cを下りてから約1時間。とにかく遠い、というのが第一印象でした。しかし、いざ着いてみると、そこはまさにイギリスのガーデンにしか見えないではないですか。アンティーク調のレンガとアイアンの大きなゲート、その奥にはきれいに刈り込まれたツゲのヘッジと噴水……。長い時間をかけて駆けつけた甲斐がありました。 三脚をかついで小走りにガーデンに入り、夢中で撮影を始めました。ガーデン内は、白を基調にしたホワイトガーデンやサンクンガーデンにデザイナーのお子さんの名がついた2本の小径など、20のテーマに沿って一つずつ部屋のようにデザインされています。一つのガーデンを撮っては次へ、また次へと撮影はとてもシンプルに進みました。それはなぜなら、正しい立ち位置を理解して、まっすぐに立てば、自然と美しいガーデンフォトになってしまうという、カメラマンにとって夢のようなガーデンだったからです。 当時はイングリッシュガーデンが流行りだして、宿根草のボーダー花壇をキーワードにした特集が園芸関連誌をにぎわせていました。しかし日本では、イギリスの雑誌のような美しいガーデンにある宿根草の写真がなかなか撮れないことが悩みで、常にいい撮影ができる庭を探していたのです。 そんな僕にとって、「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」は最高の庭で、今まで憧れていたボーダー花壇の中には、美しく咲く宿根草が撮り放題! それどころか、撮影した花の品種名が分からなければ、イギリス仕込みのガーデナーさんが丁寧に教えてくれるし、さらに分からない時は調べてから連絡までしてくれるという、まさに天国のようなガーデンでした。 翌年からは毎年必ず足を運び、宿根草に限らず、バラやクレマチスなど、いろいろなガーデンシーンを撮影させていただきました。今の基本的な撮影スタイルは、このガーデンから学んだような気がします。 その後、2代目ヘッドガーデナーの福森さん、3代目ヘッドガーデナーの太田さんには、さらにお世話になりました。早春には、スノードロップやクロッカスなどの小球根の可愛らしさを見せてもらったり、冬にはイギリスの雑誌でよく登場していた凍った庭の撮影をするために、寒い真冬の早朝、裏のゲートを開けてもらったりもしました。春の花木の美しさや、秋の紅葉したガーデンの美しさまで、日本にいながらイギリスの庭を撮影しているかのような、さまざまな経験を重ね、学ばせてもらいました。 Information アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン 2002年4月に開園して以来多くの来園者があった「アンディ&ウィリアムスボタニックガーデン」(群馬県太田市、ジョイフル本田新田店に併設)は、2020年12月20日(日)に閉園いたしました。 掲載の記事は、2018年2月5日公開のものです。 併せて読みたい イギリス流の見せ方いろいろ! みんな大好き、チューリップで春を楽しもう 花の庭巡りならここ! 22のガーデンスタイルが楽しめる「名古屋港ワイルドフラワーガーデン“ブルーボネット”」 カメラマンが訪ねた感動の花の庭。滋賀「English Gardenローザンベリー多和田」のパンジービオラフェスティバル Credit 写真&文/今井秀治 バラ写真家。開花に合わせて全国各地を飛び回り、バラが最も美しい姿に咲くときを素直にとらえて表現。庭園撮影、クレマチス、クリスマスローズ撮影など園芸雑誌を中心に活躍。主婦の友社から毎年発売する『ガーデンローズカレンダー』も好評。