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花好きさんの旅案内【英国】チェニーズ・マナー・ハウス・アンド・ガーデンズ
チェニーズ・マナーは隣接するチェニー村とともに、中世から存在するとても古い場所です。マナーは12世紀から350年の間、村の名の由来となっているチェイン家の所有であり、16世紀に入ると、ヘンリー8世の廷臣、ジョン・ラッセルの手に渡って、その後400年ほど、ラッセルの子孫となるベッドフォード伯爵(のちに侯爵)家の屋敷として使われました。 さて、まずは15世紀から16世紀にかけて建てられたという、歴史あるレンガ造りのお屋敷の中を、現オーナーのマシューズ夫妻に案内していただきました。 屋敷にヘンリー8世やエリザベス1世が訪れたという話を聞きながら、大小の部屋を20分ほどかけて巡ります。はるか昔の王様や女王様が登場する話は、想像を超える歴史物語ですが、当時の建物が今もそのまま残され、また、数々の逸話が語り継がれていることに、驚かされました。 屋敷では、時に階段を降りる不気味な足音が聞こえるという幽霊話もあって、それは、足の悪いヘンリー8世が、妻キャサリン・ハワードの不貞を探る足音なのだとか……。英国人は本当に幽霊話が好きです。 さて、庭巡りに移りましょう。 チューダー朝の頃から屋敷の周りには庭があって、16世紀末に暮らした第3代ベッドフォード伯爵夫人のルーシーは園芸が得意だったといわれています。 しかし、長い歴史の中で庭は変わり続け、半世紀ほど前には修復が必要な状態になっていました。 現在の庭は、1950年代後半から現オーナーの母であったエリザベス・マックレオド・マシューズ夫人が手をかけて整えたものです。夫人はチューダー朝のレイアウトを基に庭を修復し、また、新しい庭を創作しました。 屋敷の外壁にはつるアジサイが隙間なく伝い、柔らかい印象です。訪れた7月中旬は、どの庭でもつるアジサイが花盛りでした。 屋敷に面したローズ・ローン(Rose Lawn)。美しい芝生の緑を囲むように、ユーモラスな形に刈り込まれたツゲのトピアリーがポイントとなって植わり、その間をスタンダード仕立てのバラが彩ります。株元には、ふわふわと軽やかな小花が咲いていました。 その昔はチェニーズ・パレスと呼ばれ、歴史の舞台ともなった2階建ての屋敷。立派な胸壁や塔、煙突があります。 装飾性の高い煙突は、ヘンリー8世の城、ハンプトン・コート・パレスにあるのと同様のもの。16世紀、ヘンリー8世の廷臣であったジョン・ラッセルは、城の豪華な煙突とまったく同じように、おそらくは同じ職人を使って、これらの煙突をつくらせたといわれています。 屋敷に沿った細長い芝生の庭は、一見平らな大地に見えていましたが、奥まで行くと、実は少し傾斜地だったと判明。傾斜の途中には、まるでだまし絵のように3段の階段があります。苔むした石造りの階段にアルケミラモリスが茂って、さりげなく可愛いコーナーになっていました。 屋敷の周りの庭をぐるりと眺め、生け垣や柵に仕切られた区画をいくつか通ると、開けた区画にたどり着きました。ここは敷地の中心付近に位置するサンクンガーデン(Sunken Garden / 沈床庭園)です。中世の頃に流行りはじめたデザインスタイルだとか。春はチューリップがカラフルに咲いていましたが、訪れた頃はアルケミラモリスやギボウシが生き生きと茂り、ゲラニウムの花は終わりかけていました。ちょうど端境期で、庭のあちこちで何人ものガーデナーが植え替え作業をする様子を見ることができました。 ティールームの前には芝生の広場があって、庭を堪能しながらお茶や軽食が楽しめるよう用意されています。なんとも贅沢なティータイムです。 ティールームに面したボーダー花壇には、赤系や青系に色分けされた宿根草が混ざり咲いていました。ちょうど大輪の八重咲きピオニー(シャクヤク)が花盛り。花火のように放射状に花が咲くアリウム・シューベルティと美しい競演を見せています。 ナーセリーやショップを見るのも庭巡りの楽しみの一つです。庭ごとにオススメの植物やディスプレイの方法が違って、それを見比べるのも新鮮です。日本でもお馴染みの植物を見つけると、英国でも親しまれているのね、と嬉しくなります。 チェニーズ・マナーのショップには、ハサミや靴の泥落とし、オーナメントなどのガーデングッズのほか、小鳥や草花が描かれたマグカップなどのオリジナル製品や、庭で採取された手作り感のある種子袋なども並んでいました。 キッチンガーデンの手前で、芝生の中に道が浮かび上がる、ラビリンス(迷宮)が見えてきました。かつてこの庭にあったと思われるものを再現したラビリンスで、道に沿って中心に向かって歩いていると、いつのまにか円の外側へ向かい、通り抜けてしまいます。中世では祈りや懺悔の場として使われていました。 この庭にはほかに、高さ2mのイチイの生け垣が幾何学模様に刈り込まれた、立派なメイズ(迷路)もあります。20年ほど前、ハンプトン・コート・パレスの有名なメイズの100周年を祝ってデザインコンペが行われ、それを基につくられたものです。17世紀に編み出された数学の定理にのっとってデザインされたという幾何学模様は、とても複雑。入ってみたいけれど迷ってしまいそうで、忙しい庭巡りの旅の途中ではチャレンジし難い迷路でした。 ダイナミックに絡むライムグリーンのつる植物がアーチを彩るキッチンガーデンの入り口。キャットミントの紫花に縁取られた小道を進みます。 スグリやリンゴ、洋ナシの木がぐるりと囲むキッチンガーデンの中には、これからぐんぐん大きくなりそうなナスタチウムやレタス、スイートコーンの若い芽がびっしりと育っていました。 ここで全てのコーナーをお見せできないのは残念ですが、植物名と効用がひとつずつ表示されているフィジック・ガーデン(薬草園)や、女王が木陰で休んだ際に宝石を無くしたという逸話から〈エリザベス1世のオーク〉と呼ばれる、樹齢千年を超えるオークの巨木など、チェニーズ・マナーの見どころはたくさんあります。きれいに形づくられたたくさんのトピアリーなども大変よく手入れされていて、庭での散策はとても気持ちがよいものでした。 チェニーズ・マナーでは、室内から外の緑や花の風景を見て楽しむことができるように、母屋の近くには美しいガーデンが広がっています。一方、敷地の奥では、キッチンガーデンや薬草園で、食べたり利用したりする植物をたくさん育てていて、広大な敷地を活用していることが分かりました。 チューダー朝の暮らしが感じられる、歴史あるチェニーズ・マナーをぜひ楽しんでください。 〈チェニーズ・マナー・ハウス・アンド・ガーデンズ〉 庭園情報 ロンドンから車でも電車でも1時間ほど。電車の場合、ロンドン・メリルボン駅からチャルフォント&ラティマー(chalfont & Latimer)駅に向かい、駅からはミニキャブで15分ほどです。 開園は、4月から10月の水、木、祝日、14:00~17:00。 4月末から5月初めにかけて、数千球のチューリップが一斉に咲くチューリップ祭が、また、8月の終わりにはダリア祭が行われます。 入場料(屋敷と庭)は£8。*2017年現在の情報です。
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英国の名園巡り、ビアトリクス・ポターの愛した暮らし「ヒル・トップ」
緑豊かな山々と、静かに水をたたえる湖。丘の斜面に広がる牧草地と、その脇に伸びる、風情のある石垣。そんな昔ながらの、美しくのどかな風景が残されている湖水地方は、英国人が最も愛する田舎の一つ。人々はくつろぎと、ウォーキングなどの野外の楽しみを求めて、この地にやってきます。 さて、17世紀に建てられた石造りの田舎家、ヒル・トップは、この湖水地方のニア・ソーリー村にあります。小さいけれど、この家はとても有名で、年間10万人もの観光客が訪れます。というのも、ここは、世界中の子どもたちに読み継がれる絵本『ピーターラビットのおはなし』の著者、ビアトリクス・ポター(1866-1943)が暮らした家なのです。 ポターは今から150年ほど前、ロンドンの裕福な中産階級の家に生まれました。幼い頃から聡明で画才があり、小動物や草花を、じっくり観察して描くのが好きだったといいます。一家は夏になるとロンドンを離れ、緑豊かな北部の田舎で長い休暇を過ごしました。ポターは16歳の時、初めて湖水地方に滞在し、以来、この地の自然に魅せられていきます。 1905年、39歳の時に、ポターは『ピーターラビットのおはなし』の成功から資金を得て、ヒル・トップ農場を買い取ります。じつはその時、愛する婚約者を病気で亡くしたばかりでした。失意の底にあったポターにとって、湖水地方の自然と自分だけの場所は、大きな慰めとなるものでした。彼女は未婚女性として両親とロンドンに暮らしつつも、ヒル・トップに足しげく通って、大切な自分の城をつくっていったのでした。 ヒル・トップはポターにとって、自分のお気に入りだけを集めた、愛すべき空間でした。ガーデニングにも精を出して、家に続く小径沿いに伸びる花壇や、石塀に囲まれた菜園、果樹園をつくります。そして、絵を描くように、宿根草や球根花、ハーブや野菜、花や実のなる灌木を配して、実用的で美しい、見事なコテージガーデンをつくり上げました。 ここはまた、彼女のアトリエであり、創作のインスピレーションを得る場でもありました。ポターにはきっと、「おはなし」に登場する動物たちの遊ぶ姿が見えていたのでしょう。ヒル・トップの庭景色は、ピーターラビットシリーズの『こねこのトムのおはなし』などに描かれています。 ポターはその後結婚して、新しい住まいを持ちますが、ヒル・トップを生涯大切にしました。 晩年は、この地特有の希少種の羊を守り育てることと、湖水地方の美しい景観を開発から守ることに力を注ぎます。彼女は絵本の売り上げで土地を買い足し、亡くなる際に、4,000エーカー(約1,600万㎡)の土地と、ヒル・トップを含む15の農場をナショナル・トラストに遺しました。 ヒル・トップの家と庭は、ポターの願った通りに、彼女の生きていた頃のままに再現され、公開されています。また、15の農場は今も昔のままに営まれ、周辺の牧草地も守られています。その眺めは、今となってはとても貴重なもの。ポターは自らが愛した湖水地方の景色を、後世の私たちにそのまま遺してくれたのです。 ロンドンから湖水地方までは、車で5時間ほど。電車の場合は、ロンドンのユーストン駅から湖水地方の入り口となるウィンダミア駅に向かい、そこから路線バスやフェリーなどの公共交通機関を使って、主な観光スポットを回ることができます。 ヒル・トップの開館は2月中旬から10月末まで。近くの村、ホークスヘッド(Hawkshead)には、ビアトリクス・ポター・ギャラリー(Beatrix Potter Gallery)があって、ポターの遺した絵画やイラストを見ることができます。また、近隣のパブやホテルでは、美味しい食事やアフタヌーンティーが待っています。 詳細情報 店舗・施設名 The National Trust - Hill Top(ヒル・トップ) 住所 Near Sawrey, Hawkshead, Ambleside, Cumbria, LA22 0LF 電話番号 +44 (0)1539-436269 ホームページ https://www.nationaltrust.org.uk/hill-top
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個人のお庭が見られるオープンガーデン・イギリスの賢い仕組み
英国ナショナル・ガーデン・スキームの物語 The Story of the National Garden Scheme 英国でオープンガーデンを始め、広めたのは、ナショナル・ガーデン・スキームという慈善団体です。 ことの始まりは1926年。当時、まだ今ほど一般的ではなかった、看護師という職業を支援する団体が、その育成と、引退した看護師の生活支援を目的に、特別な基金を立ち上げようとしました。資金を集めるにはどうしたらいいだろう? 委員会のメンバーが考えを巡らせていると、参加していた1人の女性に名案が浮かびました。 「あなたの素晴らしい庭をみんなに見せてください。そして、ささやかな入園料を集めて、どうぞ私たちに寄付してください」。それは、ガーデニング好きな英国人にぴったりの、じつにユニークな方法でした。こうして、全国の美しい庭を持つオーナーたちに向けて、オープンガーデンの呼びかけが始まったのです。 1927年、オープンガーデンを実行するために、慈善団体ナショナル・ガーデン・スキーム(以下、NGS)が設立され、初めての試みが行われました。呼びかけに応じ、イングランドとウェールズで公開された庭の数は609。〈1人当たり1シリング(英国の旧貨幣)〉の入園料から、総額8,000ポンドもの寄付金を集めることに成功しました。4年後にはスコットランドでも、姉妹団体スコットランズ・ガーデンズ(Scotland’s Gardens)による同様の活動が始まり、オープンガーデンは徐々に広まっていきました。 それから90年後の2017年、イングランドとウェールズで公開される庭の数は3,700に増え、また、2016年度の寄付金総額は、300万ポンド(約4億3200万円)という驚くべき額となりました。現在、それらの寄付金は、看護師の支援団体だけでなく、がん患者や在宅医療への支援を行う、いくつもの医療系慈善団体に贈られ、その活動を支える大きな力となっています。 NGSのオープンガーデンには、じつにさまざまな庭が参加しています。古城やマナーハウスなどの観光庭園もありますが、その多くは、オープンガーデンでなければ決して見ることのない、個人の庭。よそ様の素敵なお庭を覗ける、めったにない機会だからこそ、公開日には多くの人が集まります。ガーデンオーナーの多くは年に1度か2度の公開日を設けますが、1日で400人もの来訪者を迎えることもあるのだそうです。 NGSガーデンには、田舎にある広々とした変化に富む庭もあれば、ロンドンの町中にあるコンパクトな庭もあります。参加の審査基準に、庭の大きさは関係ありません。NGSは、「自分の庭を、質が高く、個性があって、興味深いと思うなら、ぜひ人々と庭を分かち合って、私たちの活動を手伝って」と、呼びかけています。大事なのは、見ごたえのある庭かどうか、なのです。 毎年3月になると、NGSからその年に公開される庭の情報を載せたハンドブックが発行されます。団体のイメージカラーである黄色の装丁から‘イエローブック’の愛称で親しまれているハンドブック。それを片手に、今年はどこに出かけようか、と思いを巡らせるのが、英国の庭好きたちの春の楽しみです。 NGSのオープンガーデンに参加する、つまり、イエローブックに載るには、地域を管轄するスタッフによる、なかなかに厳しい審査に通らなくてはなりません。英国のアマチュア・ガーデナーにとって、自分の庭がそこに掲載されるということは、大変な名誉なのです。 2017年は、NGSにとって90周年を迎えるメモリアル・イヤー。5月末にはイングランドとウェールズにある370の庭が一斉に公開される「アニバーサリー・ウィークエンド」のイベントが行われ、お祝いムードが盛り上がりました。驚くことに、その中には、写真のハイ・グラノー・マナーのように、1927年の第1回オープンガーデンを経験している庭が12もありました。脈々と続く、英国の庭の歴史が感じられます。 オープンガーデンで見知らぬ人々を庭に招き入れるのは、かなり勇気のいることですが、参加したオーナーの多くは、来訪者から感謝や励ましの言葉をもらって、大変だけれど素晴らしい経験をしたと、充実感を得ています。来訪者は庭を楽しみ、オーナーはやりがいを感じながら、寄付によって人々を助け、喜ばせる。庭が生み出すこの好循環は、まさに園芸大国イギリスならではの奇跡といえるでしょう。
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憧れのイングリッシュガーデン、ヒドコートマナーガーデンを訪ねる
コッツウォルズ滞在2日目は、いよいよヒドコートマナーガーデンへ。ここは、アメリカ人のフローレンス・ジョンストンが40年もの歳月をかけて作庭した、20世紀のイギリスを代表する有名な庭園。現在は、ナショナルトラストが所有し一般公開されています。かれこれ20年ほど前、ガーデン雑誌でこの庭園の写真を見たときからずっと、私の憧れの場所でした。 庭園のエントランスには、蜂蜜色の石壁に白いクレマチスモンタナが絡む立派な建物があり、そこを通り抜けると、何と29もの小庭園が続いています。「The Old Garden」「The Red Border」など、一つひとつに名前がつけられた趣の異なる小庭園は、緑の生け垣で仕切られているので、外からは中の様子が見えません。迷路のような細路を進むたびに現れる別世界に、ワクワクドキドキ。目に映るすべてが夢のような美しさでした。その中で、特に印象に残った光景をご紹介します。 オリエンタルな植栽と藤の美しさ 「The Maple Garden」は、コッツウォルズ地方の古い茅葺き屋根の家を背景に、緑葉や赤葉の楓と、下草のシダ、アマドコロ、ゲラニウムが植栽された、しっとりとした風情の庭。中でも目を引いたのが、石塀に誘引された藤の花でした。花穂が短く、日本の山藤に似ています。どこかオリエンタルな植栽に、ほっと心が和みました。また、ここ以外にも藤の花をあちらこちらで見ることができました。 その一つが、庭主のジョンストンさんのガーデンシェッドの屋根を覆い尽くさんばかりに咲いていた藤。花穂が長い野田藤のようでした。長い花穂を揺らしながら優雅に枝垂れ咲き、何と美しいこと。あまりの美しさに、「わが家のガーデンシェッドにも、藤を誘引できたらどんなに素敵だろう〜」と、妄想が膨らんで、しばらくその場から動けなくなりました。 更にもう一つ、「The Rose Walk」の樹木に誘引されていた白藤です。バラは、まだ三分咲きでしたが、混植されているアリウムやジギタリス、アルケミラモリスの花と華やかに競演していました。純白の花穂の下には白いガーデンチェアーが置かれ、溜め息がでるほどエレガント。どこを切り取っても絵になるシーンに、次から次へと椅子に座ってたくさんの人が写真を撮っていました。もちろん、わたしもそのひとり。今でも思い出す度に幸せな気持ちになります。 小川が流れるナチュラルガーデン ヒドコートマナーガーデンの真ん中に位置する「The Upper Stream Garden」は、緩やかな斜面に小川が流れる自然味溢れる庭。湿地を好むシダや大葉ギボウシ、葉の大きさが50cmほどもあるグンネラなどが、小川に沿って緑豊かに植栽されていました。 水辺には、ひと際鮮やかに色とりどりのクリンソウが。まるで森の妖精のような愛らしさに、心を奪われました。実は昔、わが家の庭にもオレンジクリンソウを植えていました。けれども、翌年には絶えてしまったのです。その後も諦めきれず、もう一度場所を変えて植えてみましたが、やっぱりダメでした。それ以来、クリンソウは片想いし続けている大好きな花。もう想いは届かないと諦めかけていたけれど、もう一度アタックしてみたくなりました。 コッツウォルズの絶景へと誘う ナチュラルガーデン 「The Upper Stream Garden」の先にある「The Wilderness Garden」は、木々が鬱蒼と茂る野趣溢れる庭。木陰はひんやりとした空気に包まれ、小径の両脇には、庭の奥へと誘うかのように白いアストランチアや野花が群生していました。 さらに進むと、マーガレットやシレネが咲く白とピンクのメドウガーデンが。柔らかな木漏れ日に照らされて、何と清らかなこと。そこは森の中のオアシスのようでした。薄暗い小径を抜けると、緑が眩しい野原のような景色が現れました。 足元には、素足で歩きたくなるようなフサフサの芝生、その上に何気なく置かれていたブルーのベンチに座ると、見渡す限りコッツウォルズの絶景が広がっていました。そう、ここがヒドコートマナーガーデンの南端。ガーデンとコッツウォルズの原風景が一体化した素晴らしい景色に、言葉では言い尽くせないほどの開放感と幸福感で胸がいっぱいになりました。 Credit 写真&文/前田満見 高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。 Instagram cocoroba-garden
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イングリッシュガーデン旅案内【英国】バートン・ハウス・ガーデン
バートン・ハウスは16世紀から伝わる古い地所で、長い歴史の中で、多くの人の手に渡ってきました。18世紀に建てられた屋敷を囲む、広さ3エーカー(約1万2,000㎡)の現在の庭は、前オーナーのペース夫妻によって、1983年からつくられたものです。夫妻は、その頃寂れた状態にあった屋敷と庭を修復するとともに、優れたガーデナーたちの助けを得ながら、新しい庭をつくり上げていきました。庭は見事に成熟し、2006年には、HAA(歴史的家屋協会)の栄えあるガーデン・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。 さあ、ロートアイアン製の門扉をくぐって、庭散策を始めましょう。 庭への入り口となるのは、16世紀にはちみつ色のコッツウォルズ・ストーンを使って建てられた、古い石造りの納屋です。ティールームのあるこの納屋を通り抜けて、重厚な扉の外に出ると、目の前に広がるのは、青々としたきれいな芝生。思わず、「わぁ!」と歓声を上げてしまいます。大樹の木陰には、思い思いにくつろぐ人々の姿が見えます。のんびり庭で過ごすには、今日はじつに快適なお天気です。 ふかふかと感触のよい芝を踏みながら、石階段の向こうに進みます。 まず、私たちを出迎えるのは、トピアリー・ウォーク(Topiary Walk)です。その名の通り、渦巻き形やまん丸、台形、円錐など、さまざまな形に整えられた、たくさんのトピアリーが、広場をぐるりと囲んでいます。 芝や、トピアリーを形作るツゲやイチイ、そして、遠くで高く伸びる木々。さまざまな色合いの緑と青い空が清々しい空間です。 幅の広い、白い砂利の小径がまっすぐに伸びて、その両脇に、白い花を咲かせる植物がこんもりと植わります。足元の白い砂利がよい引き立て役となって、白い花をより美しく見せています。写真では見えませんが、小径の中央には長方形の池があって、フォーカルポイントの役割を果たしています。 ロートアイアン製の門扉の外には牧草地が広がっていて、奥行きのある景色です。 ロートアイアンの扉を見ると、鍵がしっかりとかかっていました。小さな鍵には繊細な装飾が施されていて、細部まで妥協しないという、庭づくりへのこだわりが感じられます。時々、風の音に混じって、牛の鳴き声が聞こえてきます。ゆっくり座って遠くの景色を眺めていたいところですが、限られた時間でガーデンのすべてを見なくては! 名残惜しい気持ちを抑えて、先に進みましょう。 屋敷の窓からきっと一番よく見えるであろう、芝生の大空間、メイン・ローン(Main Lawn)に入ると、花壇に見慣れないものを見つけました。これからぐんぐんと育っていく植物が乱れないようにする、支柱のようです。初夏は、植物ごとに工夫された、さまざまなタイプのサポートが添えられる時期。こういった発見は、庭づくりの参考になりますね。 メイン・ローンを挟んで、屋敷の反対側にある、18世紀のレイズド・ウォーク(18th century raised walk)に来ました。芝生より数段高くなった、ボーダー花壇のある石造りの小径で、ここからお屋敷を眺める景色は、じつに絵になります。 花壇にはブッシュローズやポピー、ゲラニウム、ペンステモンなど見慣れた宿根草が多種類混植されていて、とってもカラフル。隣の丘から吹いてきた風に植物が揺れる姿も美しく、ここも見応えのあるコーナーでした。 花壇に植わる植物の種類と組み合わせは、レイズド・ウォークの大きな見どころですが、18世紀につくられたという構造物も必見です。花壇を囲む石材や、小径のペイビングのデザイン、コーナーのアクセントとなる柱の丸い飾り。どれも興味深いもので、味わいのある石材の表情に、時の流れを感じます。そして、つる植物がびっしり絡みついて骨組みが隠れてしまった、ベンチのあるガゼボも、すごい存在感! 中央に楕円形の池があって、その両脇に、ツゲの刈り込みが配置されています。四角い迷路のような刈り込みは、ところどころにピラミッド形のトピアリーが立っていて、直線的なデザインです。刈り込みには全く剥げたところがなく、その完璧な仕上がりは、植物でつくられていることを疑ってしまうほどです。籐かごの形をした池は、1851年のロンドン万国博覧会で展示されたもの。古い物を大切にし、そこに価値を見出す英国人気質を感じます。 少し日差しが強くなってきたので、大樹の木陰に入るとほっとします。 他のコーナーに比べて、それぞれにボリュームのある植物が、芝生の周りを縁取ります。シダやギボウシなど、緑の変化がおしゃれ。奥にはさわさわと風に揺れる、丈高い笹のような茂みがあります。 次は、屋敷の西側にあるファウンテン・ガーデン(The Fountain Garden)。シックな佇まいの噴水を囲んで、ここにもまた、形の違うツゲの刈り込みやトピアリーがありました。 屋敷を背に立つと、奥にクロッケー・ローンが見えます。芝生を縁取る植栽の優しい花色が、緑の中に明るく浮かびます。 屋敷の北側に回ると、またまた、これまで見たことのない複雑な形をしたトピアリーや刈り込みが出現しました。ここは、屋敷の正面を飾る、パーテア(The Parterre)と呼ばれる庭です。この手の込んだ庭は、屋敷に招かれた多くの客人を驚かせ、喜ばせてきたに違いありません。直線的なデザインのノット・ガーデンとは対照的に、曲線だけで構成されているのが印象的です。この難しい刈り込みを維持するために、きっと何人もの熟練ガーデナーが手入れに励んでいるのでしょう。 次々と現れる、部屋のように仕切られた、それぞれの庭。花と緑で、こんなにも幅広い変化を見せられることに驚きを感じた、充実の庭散策でした。時々出会うガーデナーたちの熱心に働く姿に、「この庭は、人の手が入って、その庭づくりの情熱が続いたことで、美しく保たれてきたのだ」と実感します。 アガパンサスとフジ、そして、終わりかけのバラに彩られた庭は、季節が移ろうにつれて、次はどんな植物を主役に据えるのでしょう。違う季節にまた訪れてみたいと、親しみがわいた庭散策でした。
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英国の名園巡り、ウェールズの誇る世界的名園「ボドナント・ガーデン」
緑豊かな、北ウェールズ。スノードニア国立公園の山々を見晴らす丘の斜面に、世界的に有名なボドナント・ガーデンはあります。年間19万人を集める、80エーカー(約32万㎡)の広大な庭園には、見どころがたくさん。格調高い5つのテラスガーデンや、壮麗なキングサリのアーチ、そして、小さな谷に沿って伸びる森。変化に富む庭園は、一日中巡っても見飽きません。驚きの景色が待っている、花と緑のワンダーランドです。 ボドナント・ガーデンは、ヴィクトリア朝時代の実業家、ヘンリー・ポーチンによってつくられました。1874年に屋敷と地所を買い取ったポーチンは、景観建築士エドワード・ミルナーの助けを得て、木と芝が生えるばかりの屋敷周りに庭をつくり始めます。彼の庭づくりへの情熱は、娘のローラ、そして、孫となる、第2代アバコンウェイ男爵のヘンリー・マクラレンに受け継がれ、庭園は発展を続けました。 孫のヘンリーは、屋敷の西側の、スノードニアの山々を見渡す斜面を切り崩して、階段状に5つのイタリア風テラスガーデンをつくり、庭園を現在の形に整えました。優美な2つのローズテラスや、池をうまく使ったテラスガーデンは、屋敷を見事に引き立て、風格を与えています。 孫のヘンリーは、プラントハンターの支援者となって、世界中の珍しい植物を集めることにも力を注ぎました。そのため、この庭にはプラントハンターが中国から持ち帰った、モクレンやツバキ、ロドデンドロンといった、当時の最先端の植物や、ヒマラヤ原産のブルー・ポピーといった珍しい植物がたくさんあります。 ヘンリーはまた、ロドデンドロンの品種改良にも力を入れました。園内では、大きく育ったさまざまな色合いのロドデンドロンが、春になるとじつに鮮やかな姿を見せます。森には初代のポーチンや孫のヘンリーが植えた、樹齢100年を超す針葉樹などの大木が何十本とあって、見る者を圧倒します。 庭園はヘンリーの意向により、1949年にナショナル・トラストへ寄贈されました。 花木やロドデンドロンが満開を迎える春から初夏は、庭園全体が華やぐ季節。そして、そのハイライトとなるのは、まばゆいばかりのキングサリのアーチです。初代のヘンリー・ポーチンによって1880年につくられたアーチは英国で最も古いもので、55mというその長さも英国一。5月下旬から6月上旬にかけての花の見頃には、多くの人が訪れます。このアーチは手入れがとても大変で、真冬の剪定は、熟練ガーデナー2人がかりでも3週間かかるのだとか。 ボドナント・ガーデンは秋の景色も見事で、カエデなどの木々が燃えるような赤や黄に紅葉するさまは、まさに圧巻です。冬には真っ白な霜に凍る静寂の世界があり、その後に、スノードロップやモクレンが咲き始めて、また春が来る。一年を通じて、季節ごとの楽しみが途切れることはありません。 ロンドンからボドナント・ガーデンまでは車で4時間半ほど。電車の場合は5時間ほどかかり、スランディドノ・ジャンクション駅(Llandudno Junction)からタクシーまたは路線バスで約20分(バスは本数が限られます)。ロンドンからだと長旅になるので、イングランド中部の観光都市、チェスターを経由するのもよいでしょう。 12月24~26日を除き、通年で開園していますが、時期によって開園時間が変わるので、HPで要確認。季節ごとに、ガイドウォークや家族向けのイベントがあります。食事や喫茶は、2つのティールームと園内の売店で。屋敷周辺のテラスガーデンや芝生以外なら、ピクニックもできます。併設のガーデン・センターや、ウェールズの手工芸品を扱うクラフト・センターもぜひ立ち寄りたいスポットです。 Text by Masami Hagio Information 〈The National Trust〉Bodnant Garden ボドナント・ガーデン 住所:Tal-y-Cafn, near Colwyn Bay, Conwy, LL28 5RE 電話:+44 (0)1492-650460 https://www.nationaltrust.org.uk/bodnant-garden
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イギリスで3代にわたって受け継がれる庭園「キフツゲイト・コート・ガーデンズ」
その始まりは1920年頃。キフツゲイト・コートに住まうヘザー・ミュアは、お隣にある名園、ヒドコート・マナーをつくったジョンストンの良き友人でした。ヘザーは彼から多くの刺激を受けて庭づくりに励み、この庭園の原形をつくり上げます。その後、庭は1950年代に娘のダイアニー・ビニーに受け継がれて発展し、一般公開されるようになりました。現在は、孫娘のアン・チャンバースの手によって、時代の流れに沿った新しい庭が加えられ、さらなる魅力を持った庭園へと進化しています。 人々をまず出迎えるのは、屋敷のジョージ王朝様式のポルチコ(柱廊玄関)の前に広がる整形式庭園です。ツゲに縁取られた4つの四角い花壇の中央に日時計が置かれたテラスで、初代ヘザーの手によって生まれました。 整形式庭園のスタイルではあるものの、「きっちり計画するよりも、ある程度自然に任せる」のがヘザーの流儀でした。その流れを受けてか、おおらかさが感じられる植栽です。ピオニーやバラ、ゲラニウムが、生き生きと茂っています。 花壇には、年間を通じて楽しめるようにと、さまざまな種類の珍しい灌木や宿根草が植えてあります。6月上旬は、ピオニーの大株が花盛りを迎えていました。これほど状態のよい開花を、日本では見たことがありません。こんな大株に育つのに、どれほどの年月がかかったのだろうかと、先人に想いを巡らせます。 芝生の縁がカーブを描き、その両側をリズミカルに宿根草が彩る、ダブルボーダーの庭。小木や灌木もある、変化に富んだ植栽です。夏の花壇のテーマカラーは、ピンク、藤色、紫で、アクセントに銀葉が加えられています。一歩進むたびに現れる愛らしい花々は、どれも興味深いものばかり。芝生もフカフカと優しい踏みごこちで、ゆったりした気分になります。 花壇にはゲラニウム、ヒューケラ、ホスタ、ハクセンなどの宿根草に混じって、コンパクトに仕立てられたつる植物のハニーサックルも見られました。真紅のマルタゴンリリーの繊細な花姿に、目を奪われます。 周囲より数段下がるようにつくられた、このサンクン・ガーデン(沈床庭園)は、初代ヘザーによりつくられ、2代目ダイアニーの時に再設計されました。庭にあるウツギなどの主な灌木がすべて白花を咲かせるため、ホワイト・ガーデンの名が付いていますが、下生えの宿根草はカラフルでチャーミング。大きな紫のアリウムは、こぼれ種で増えたものです。 ホワイト・サンク・ガーデンを抜けると、その先にはまた違った景色が広がります。 白い縁取りのホスタを白花のゲラニウムが包み込む脇で、鮮やかなピンクの一重のピオニーが目を引きます。その奥は、蕾をつけたアジサイと銀葉のホスタ。季節が進むと、この区画はまた違った色に染まるのでしょう。 バンクとは斜面のこと。じつは、キフツゲイトの庭は、イヴシャムの谷を西に見下ろす崖の上にあります。屋敷から離れて庭の外れに来ると、急斜面を切り開いてつくられた階段に行き当たります。吹き上げる風を受けながら、導かれるままに下へ下へと降りていきます。 すると、その先にキラキラと輝く半円形のスイミング・プールが見えてきました。 オープンスペースに芝生と水面で構成される、端正なこのロウワー・ガーデンは、2代目ダイアニーの手によるものです。断崖という難しい立地を最大限に生かしたデザインから、彼女の豊かな創造性が感じられます。 芝生に囲まれた池の先には、イヴシャムの谷ののどかな風景がどこまでも広がります。遠くに小さく羊の群れも見える、開けた景色を前に、清々しい気分。 地面は池の先で突然切れますが、その先にも景色は続いて見えます。これは、見晴らしを妨げないように地面を掘り下げて垣根をつくる、ハーハーと呼ばれる構造に似ています。 下りてきたのとは別の石造りの階段を上っていくと、大きな屋根のサマーハウス(東屋)がありました。4人は座れる大きなブランコがあって、そこからまた違った景色が眺められるので、つい長居をしてしまいます。 1930年代のヘザーの時代には、もうこの階段とサマーハウスがつくられていました。高低差が激しいこの敷地に階段を作り、池を掘り、芝を張って、粗野な空間を、植栽豊かな空間に変えていく。それには相当の体力と精神力を要したことだろうと、感動を覚えます。 ツゲの生け垣に囲まれた四角い池の端に、ブロンズ製の葉っぱが浮かぶ、モダンな空間です。2000年に、現オーナーのアンによって、古いテニスコートがあった場所につくられました。 この庭は閉ざされていて、ツゲの生け垣にあけられた小窓から覗き見るような仕掛け。時折、噴水が上がって、静かな水音を楽しむこともできます。白、黒、緑を基調とした、抑制の効いたデザインの庭で、他の区画で見られる豊かな色彩の庭と、とても良いコントラストを見せています。 膝丈以下に低く仕立てられたピンクのロサ・ムンディが、両側を鮮やかに彩るという、ローズ・ボーダー。しかし、残念ながら、バラの時期には早すぎました。 彫像が置かれている、シダやグラスの茂る奥のエリアは、以前はガーデンの突き当たりでしたが、今は右に行くとロートアイアンの扉があって、新エリアへと続きます。 扉の先には、咲き終わったアリウムのまん丸の花殼も可愛い、メドウがありました。季節が合えば、黄色いキンポウゲと紫のアリウムの、対照色のキュートな競演が見られます。 メドウはなかなか管理が難しく、この庭はまだまだ発展途上とのこと。試行錯誤の結果、今後は二年草の野草を育てていくそうです。 メドウを進んで10段ほどの階段を上ると、今年オープンを迎えたばかりの新エリアが出現します。馬蹄形に築かれた土手には芝生が張られ、その周りに、ピンクと白の半八重の花を咲かせるロサ・ルゴサの垣根が巡らされています。シンプルな構造ですが、遠くまで見渡せて気持ちのよい庭です。じつは、この土手は、2000年にウォーター・ガーデンをつくった際に出た、大量の土を使ってできたもの。果樹園に置かれたままだった土は、数年かけて有効利用されました。 構想を着実に形にしていく、アンのエネルギッシュな庭づくりは、急斜面を切り開いてこの庭園をつくった、先の2人に通じるものがあります。 Kiftsgate Court Gardens(キフツゲート・コート・ガーデンズ) キフツゲイトは、美しい村が点在するコッツウォルズ地方の北に位置し、すぐ隣に、英国ナショナル・トラストの名園、ヒドコート・マナーがあります。シェイクスピアで有名なストラットフォード・アポン・エイボンにも近く、楽しい旅程が組める場所です。 ロンドンからは車で約2時間。電車で行く場合は、ロンドン・パディントン駅からハニーボーン駅(Honeybourne)まで1時間50分程度、駅からタクシーで約15分、というのが庭園お勧めのルートです。 入園料は£8.50。開園期間は4~9月の夏季のみで、開園する曜日と時間は月によって変わります。 庭をゆっくり見て回るには、1時間半は欲しいところ。下の庭に下りる階段は相当急なので、足に自信のない方は無理のないようにご注意ください。併設のティールームでは、手作りのスコーンやケーキ、サンドイッチが頂けます。また、ガーデングッズを取り揃えたショップに立ち寄るのも、どうぞ忘れずに。 *2017年の情報です 詳細情報 店舗・施設名 Kiftsgate Court Gardens(キフツゲート・コート・ガーデンズ) 住所 Chipping Campden, Gloucestershire GL55 6LN 電話番号 01386 438 777 +44-1386-438777 営業時間 4月と9月:月、水、日の14~18時。 5~7月:月、火、水、土、日の12~18時。 8月:月、火、水、土、日の14~18時。 ホームページ http://www.kiftsgate.co.uk/
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憧れのイングリッシュガーデン コッツウォルズ地方へ旅する
湖水地方を後に、私たちが次に向かったのは、憧れのコッツウォルズ地方。ウィンダミア駅から電車を乗り継ぎ、チェルトナム・スパ駅に到着しました。そこからタクシーで宿泊先のあるアッパー・スローター村へ向かいます。 途中、車窓から見える可愛らしい石積みの家々、小高い丘が連なる長閑な田園風景は、おとぎの国に迷い込んだよう。高鳴る胸に何度も手を当てながら、景色に見とれました。小さな村々をいくつも通り過ぎ、いつの間にか、景色は見渡す限りの牧草地へと変わっていきました。車一台ほどの狭い一本道を、タクシーの運転手さんは猛スピードで走ります。 行けども行けども変わらない景色に、「本当に、こんな場所に宿泊先があるのかな」と、不安になった頃、ようやく「Upper Slaughter」という看板が見えました。 宿泊先は地図にも載っていない 小さな村Upper Slaughter それもそのはず、アッパー・スローター村は、地図にも載っていない小さな村なのです。そこからひと走りした先に、私たちの宿泊先「Lords of the Manor」がありました。門を入った途端、そこはまるで別世界。味わい深い蜂蜜色の重厚な建物は、辺りに点々と佇む素朴な民家や景色からは、違和感を感じてしまうほど、優美な風格を放っていました。 この「Lords of the Manor」は、17世紀の教区牧師の邸宅を利用した、広さ8エーカー(約9,700坪)の閑静な庭園と緑地に囲まれたマナーハウス。何年か前に雑誌で写真を見た時から、「いつか、もしコッツウォルズを訪れることがあったら、ここに宿泊したい」と、夢見ていました。 タクシーを降り建物の中に入ると、笑顔の素敵な若い女性が迎えてくれました。無事チェックインを済ませ案内された部屋は、美しい中庭が見える廊下を進んだ先の角部屋。イギリスらしい上品な内装と、清潔感あるバスタブ付きの浴室に感動しました。部屋の中に用意されていたエルダーフラワーのドリンクを飲み、暫し旅の疲れを癒やした後、庭園へ。 Lords of the Manorと絵画のような村の家々 広い庭園は、手入れの行き届いた青々とした芝生とキャットミントやサルビア、フウロソウ、オダマキなどのピンク色、さらには紫色のグラデーションのエレガントな植栽。まん丸のアリウムがリズミカルなアクセントになり、背景の蜂蜜色の建物が、それらをより引き立てています。 庭園の先は、白と黄色の可憐な野花が咲く緑地が広がり、顔の黒いコッツウォルズ羊がのんびりと草を食んでいました。聞こえてくるのは、彼らの「メェー」という鳴き声と、これまでに聞いたことのない美しい野鳥の声。そして、心地よい鐘の音だけでした。 その鐘の音に誘われてマナーハウスの敷地の外に出ると、近くに小さな教会がありました。教会の脇には細い小道があり、カウパセリという白い野花が満開。あまりに素敵な景色だったので、小道を下って行くと、アイ川という小川が流れていました。 浅瀬の透き通った水は、ひんやりと冷たく湧き水のよう。野鴨たちが、心地よさそうに泳いでいました。そして、川を渡った突き当たりの空き地の脇に、素敵な庭のある家が点々と並んでいました。不思議なことに、きちんとお手入れされているのに、全く人の気配がありません。まるで絵画のような美しい佇まいに引き込まれ、暫く動けなくなりました。 アイ川沿いのPublic footpath 散策の途中、思いがけず「Public footpath」と書かれた看板も見つけました。そう、イギリスで有名な「公衆が自由に歩ける自然歩道」です。嬉しくて、木製のゲートを開けて歩いてみることに。 アイ川沿いに続くフットパスは、まず、木々の間を縫うように進みます。きらきらと差し込む木漏れ日の中、聞こえるのは、清らかな川のせせらぎと青草を踏みしめる足音、そして野鳥たちの奏でる美しいメロディーだけ。歩きながら「このまま時が止まってしまえばいいのに…」と心の中で呟いていると、今まで味わったことのない感動と幸福感で胸がいっぱいになりました。 しばらく歩くと、緩やかな丘の上へ。そこから、何とLords of the Manorが見えました。その景色は、17世紀から変わっていないアッパー・スローター村の原風景のようでした。丘の上は牧草地になっていて、羊が何頭も放牧されています。彼らはとても穏やかで、近づいても全く気にする様子がありません。こんな場所で過ごせるなんて、なんて幸せな羊たちでしょう。 再び木製のゲートを開け、更に道を進むと、広い草原に出ました。そこは、黄色の野花が敷き詰められた花畑。私たちは「天国だね〜!」と、思わず両手を広げて叫びました。それほど美しい場所だったのです。天国の花畑を抜けると、お隣のロウアー・スローター村へ着きました。 後に解ったことですが、私たちが歩いたアッパー・スローター村からロウアー・スローター村までのフットパスは、あのチャールズ皇太子とダイアナ妃が、好んで何度か訪れた「ロイヤル・フットパス」だったようです。お二人と同じ景色を見て歩いていたなんて…。やっぱりここは、イギリスで数あるフットパスの中でも特別な場所だったのですね。今でも、あの時の感動が鮮明に甦ってきます。 Credit 写真&文/前田満見 高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。 Instagram cocoroba-garden



















