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英国の名園巡り、ウェールズの誇る世界的名園「ボドナント・ガーデン」

英国の名園巡り、ウェールズの誇る世界的名園「ボドナント・ガーデン」

120年ほど前のこと、英国の慈善団体ナショナル・トラストは、開発で失われていく自然や、歴史ある建物や庭といった文化的遺産を守り、後世に残そうと、活動を始めました。多くのボランティアの力によって守り継がれる、素晴らしい庭の数々を訪ねます。

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©National Trust Images/Arnhel de Serra
有名なキングサリのアーチのきらめく花景色。
©National Trust Images/John Miller
屋敷前に階段状に広がる5つのテラスガーデンのひとつ、リリー・テラス。18世紀に建てられたボドナント・ホールを池が映し出します。
©National Trust Images/John Miller
屋敷前にあるアッパー・ローズテラスから見えるのは、スノードニア国立公園の山々を遠く望むパノラマ。

緑豊かな、北ウェールズ。スノードニア国立公園の山々を見晴らす丘の斜面に、世界的に有名なボドナント・ガーデンはあります。年間19万人を集める、80エーカー(約32万㎡)の広大な庭園には、見どころがたくさん。格調高い5つのテラスガーデンや、壮麗なキングサリのアーチ、そして、小さな谷に沿って伸びる森。変化に富む庭園は、一日中巡っても見飽きません。驚きの景色が待っている、花と緑のワンダーランドです。

©National Trust Images/John Millar
つる植物の絡まる優美なパーゴラがアクセントとなっている、ローワー・ローズテラス。上と下に2つあるローズテラスは、パーゴラが覆う石階段と回廊によって繋がれています。
©National Trust Images/John Millar
第2代アバコンウェイ男爵によって、遠方から移築された18世紀のピン・ミル(くぎ工場)。
©National Trust Images/Arnhel de Serra
長細い、運河のような池のあるカナル・テラス。一端に建つピン・ミルが見事なフォーカル・ポイントに。

ボドナント・ガーデンは、ヴィクトリア朝時代の実業家、ヘンリー・ポーチンによってつくられました。1874年に屋敷と地所を買い取ったポーチンは、景観建築士エドワード・ミルナーの助けを得て、木と芝が生えるばかりの屋敷周りに庭をつくり始めます。彼の庭づくりへの情熱は、娘のローラ、そして、孫となる、第2代アバコンウェイ男爵のヘンリー・マクラレンに受け継がれ、庭園は発展を続けました。

孫のヘンリーは、屋敷の西側の、スノードニアの山々を見渡す斜面を切り崩して、階段状に5つのイタリア風テラスガーデンをつくり、庭園を現在の形に整えました。優美な2つのローズテラスや、池をうまく使ったテラスガーデンは、屋敷を見事に引き立て、風格を与えています。

©National Trust Images/Ian Shaw
屋敷の建つ丘の下には、〈デル〉と呼ばれる、小川の流れる小さな谷があって、川に沿って森の中を散歩できるようになっています。見どころの一つであるウォーターフォール・ブリッジが、華やかなロドデンドロンに彩られます。
キャプ)
©National Trust Images/Ian Shaw
森の大木を背景に、色とりどりのロドデンドロンやアザレアが咲き揃います。
©National Trust Images/John Millar
夏の川辺を楽しむ人々。小川沿いにはたくさんのアジサイが植わっています。
©National Trust Images/John Millar
夏の川辺を楽しむ人々。小川沿いにはたくさんのアジサイが植わります。

孫のヘンリーは、プラントハンターの支援者となって、世界中の珍しい植物を集めることにも力を注ぎました。そのため、この庭にはプラントハンターが中国から持ち帰った、モクレンやツバキ、ロドデンドロンといった、当時の最先端の植物や、ヒマラヤ原産のブルー・ポピーといった珍しい植物がたくさんあります。

ヘンリーはまた、ロドデンドロンの品種改良にも力を入れました。園内では、大きく育ったさまざまな色合いのロドデンドロンが、春になるとじつに鮮やかな姿を見せます。森には初代のポーチンや孫のヘンリーが植えた、樹齢100年を超す針葉樹などの大木が何十本とあって、見る者を圧倒します。

庭園はヘンリーの意向により、1949年にナショナル・トラストへ寄贈されました。

©National Trust Images/Arnhel de Serra 
キングサリのアーチは子どもにも大人気。
©National Trust Images/John Miller
見事な紅葉を迎えたカエデの林。
©National Trust Images/Megan Taylor

花木やロドデンドロンが満開を迎える春から初夏は、庭園全体が華やぐ季節。そして、そのハイライトとなるのは、まばゆいばかりのキングサリのアーチです。初代のヘンリー・ポーチンによって1880年につくられたアーチは英国で最も古いもので、55mというその長さも英国一。5月下旬から6月上旬にかけての花の見頃には、多くの人が訪れます。このアーチは手入れがとても大変で、真冬の剪定は、熟練ガーデナー2人がかりでも3週間かかるのだとか。

ボドナント・ガーデンは秋の景色も見事で、カエデなどの木々が燃えるような赤や黄に紅葉するさまは、まさに圧巻です。冬には真っ白な霜に凍る静寂の世界があり、その後に、スノードロップやモクレンが咲き始めて、また春が来る。一年を通じて、季節ごとの楽しみが途切れることはありません。

©National Trust Images/Arnhel de Serra
©National Trust Images/Arnhel de Serra
広い園内には野の花の咲くメドウや森もあります。さあ、探検に出かけよう。

ロンドンからボドナント・ガーデンまでは車で4時間半ほど。電車の場合は5時間ほどかかり、スランディドノ・ジャンクション駅(Llandudno Junction)からタクシーまたは路線バスで約20分(バスは本数が限られます)。ロンドンからだと長旅になるので、イングランド中部の観光都市、チェスターを経由するのもよいでしょう。

12月24~26日を除き、通年で開園していますが、時期によって開園時間が変わるので、HPで要確認。季節ごとに、ガイドウォークや家族向けのイベントがあります。食事や喫茶は、2つのティールームと園内の売店で。屋敷周辺のテラスガーデンや芝生以外なら、ピクニックもできます。併設のガーデン・センターや、ウェールズの手工芸品を扱うクラフト・センターもぜひ立ち寄りたいスポットです。

©National Trust Images/John Miller
赤や黄に染まる秋の宿根草花壇。夏とはまた違った、豊かな色彩です。

 

Text by Masami Hagio

Information

〈The National Trust〉Bodnant Garden ボドナント・ガーデン

住所:Tal-y-Cafn, near Colwyn Bay, Conwy, LL28 5RE

電話:+44 (0)1492-650460

https://www.nationaltrust.org.uk/bodnant-garden

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