えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
遠藤 昭 -「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー-
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
遠藤 昭 -「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー-の記事
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育て方
【プロが伝授】「日本一ガーデニングを楽しむ男」がイチ押しのガーデニングの楽しみ6選
ガーデニング歴27年の幸せ体験 コロナ禍が4年目に突入し、ガーデニングが静かなブームだが、2017年から当サイト「ガーデンストーリー」に記事を書き続けて、今回の原稿が通算100本目になる。ガーデニングの趣味嗜好は百人百様だが、ほんの少しの工夫でガーデニングはもっと楽しめるようになるものだ。さまざまなガーデニングを経験した私から、そのアイデアをご紹介しよう。 私は、現在73歳。趣味でガーデニングを始めたのは45歳の時だった。オーストラリア、メルボルンに駐在していた5年間、住んでいた家は300坪の広い庭付きで、専属のガーデナーが隔週手入れに来てくれた。「庭っていいなあ~」と思ったのが興味をもつきっかけだったかもしれない。帰国してまもなく、猫の額ほどの庭付きのマイホームを購入。本格的にガーデニングを始めた。 それ以来、27年もガーデニングを続けたことになる。60歳でサラリーマンを定年退職し、ガーデニングの専門学校に通ってプロになり、早いもので12年が経った。アマチュアの趣味のガーデナーを15年、趣味+プロとして12年、ガーデニングを楽しんだことになる。 上/当時の庭写真。下左/ハワイにて。下右/ニュージーランドにて。 プロを目指したきっかけは、全国規模の2つの異なるガーデニングコンテストで2年連続グランプリを受賞したこと。賞品のハワイ旅行とニュージーランド旅行を満喫し、その他コンテストでも入賞したことで、ついその気になってしまった。 プロになってからは、個人宅のガーデンレッスンや庭のデザインを手掛け、日本庭園からオージーガーデンまで幅広く庭づくりを楽しませていただいた。 上左から時計回りに、サクラソウ展、椿展、ハナショウブ展、クリスマスローズ栽培。 さらに並行して8年間は、植物園に勤務して相談員をしながら、広い園内を自分の庭のごとく花壇を作ったり、寄せ植えを作ったりして楽しませていただいた。自宅のガーデニングでは叶わなかったであろう伝統園芸植物の「サクラソウ」「ハナショウブ」「ツバキ」などの品種保存や、クリスマスローズの促成栽培の研究もさせていただいた。振り返れば、恵まれた環境だった。 当サイトを中心に執筆活動を続けてきたことも手伝って、2021年には『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版社)を出版し、日本におけるオージープランツの栽培ハウツーを世に伝えることもできた。 ブログ「Alex’s Garden Party」 この執筆活動の原動力といえば、27年間、毎朝書き続けているブログ「Alex’s Garden Party」だ。塵も積もれば山となるというか、継続は力なのである。27年間の膨大な量の写真と文章は、私の宝だ。こんな具合で、自分は日本一ガーデニングを楽しんだ男だと自負している。 楽しむ基本は「チャレンジすること」、楽しみの幅を広げようじゃないか! 人生も園芸も失敗を恐れずチャレンジ! 園芸のみならず、人生を楽しむ基本は「チャレンジすること」だと思う。何か新しいことをするには、一歩を踏み出さないと始まらない。やはりチャレンジして成功すると楽しい! チャレンジというと大げさに聞こえるから、「試してみる」「やってみる」でよいと思う。例えば、ベランダや玄関先、空き地などに「お花があったらいいなぁ~」「ミニトマトやハーブが収穫できたらいいなぁ~」「クリスマスローズやバラ、オージープランツも育ててみたいなぁ〜」という願望はないだろうか。ガーデニング以外でも「ピアノが弾けるようになりたい!」と思えば、まずは「やってみる!」ことだ。何事も行動を起こさないと、何も始まらない。そこにも当然、失敗はある。 私のガーデニングのきっかけは、「オーストラリアの植物を日本で育ててみたい!」「オーストラリアの植物に囲まれて、当時の豊かなライフスタイルを再現したい!」というものだった。ユーカリの木の下でBBQをやり、オージーワインが飲みたい! そんな動機だったのだ。 約30年前というと、日本ではオージープランツは入手が難しく、またインターネットもなかった。ファックスを使って、現地の種苗業者とのやりとりに苦労したのを覚えている。 100種以上の種子を個人輸入したが、成功したのはほんの数種だった。 種子から育てたピンク花のユーカリ(左)と胞子から育てた木生シダ、ディクソニア。 それでも、種子を播いて数年が経ち、当時日本にはなかったピンク花のユーカリが咲いた時は感動だった。また、同時に輸入した木生シダのディクソニアの胞子が、最初は苔のような状態から、シダの葉が出てきた時も感動だった。あれから27年ほど経ち、すっかり木々は成長したが、あの時、育つかどうか分からないものの、オーストラリアの植物を輸入するというチャレンジをしていてよかったと、つくづく思うのである。あの時のチャレンジがあって、充実した楽しい今がある。 おすすめガーデニング①果樹や野菜にチャレンジ 僕がおすすめしてお客様が成功体験しているのが、花に加えて実のなる「レモンの木」や「ブルーベリー」、「ミニトマト」や「イチゴ」などの食べられる「楽しみの実感作り」だ。食べるという人間の本能に訴えるものは強力である。今も家庭菜園がブームだが、時流に適っていると思う。そして、私が、このレモンやミニトマトなどの栽培をおすすめする理由は、「育てて楽しむ」園芸の醍醐味を経験することで、その後の草花の栽培力が身につき、結果としてガーデニングがもっと楽しくなるからだ。 そして、じつはもう一つ理由がある。長年仕事をしていて気づいたのだが、夫婦で、あるいは家族でガーデニングをやっている家庭は、ガーデニングのレベルアップも早く、より楽しそうなのである。そして、旦那さんや、お子さんにガーデニングに興味を持ってもらうには、このレモンの木やミニトマトなど、口にできる実がなる植物が絶対強力なのである。 旦那さんの多くは、「すっぱい初恋の味」なのか、なぜかレモンに弱い。殿方をガーデニングに引きずり込むきっかけには「レモンの木」が有効なのである。今の時代に、男だ女だと言うと叱られるが、男は「薔薇やひらひらしたお花」より、果実や多肉植物、オージープランツなどのカッコイイ系が好みなのだ。それゆえ、夫婦でガーデニングを楽しむには、幅広い分野の植物にチャレンジすることをおすすめする。老後は、夫婦で共通の趣味としてガーデニングや家庭菜園を楽しめると、とっても幸せですよ。 おすすめガーデニング②増やして育てるガーデニングにチャレンジ! 私が長年ガーデニングをしてきて「楽しい!」と思った瞬間は、庭で採取した種子を播いて翌年に芽が出たとき。また、挿し木や取り木をして根が出てきたとき。株分けをして子株が育ったとき等々。「増やして育てる」という行為は、これまた人間の本能なのかもしれないと思ったりする。 我が家の庭は、すでに飽和状態なのに、貴重なオージープランツに花が咲くと、衝動がおさえられず、種子を採取して播いて増やしてしまう。挿し木に向くアジサイやキク、バラなどもつい増やしてしまう。育てた苗は、ガーデンレッスンのときに使用したり、知人に譲ったりしているが、珍しいものが多いからか、とても喜ばれる。歳を取ると他人が喜んでくれるのが嬉しい。 自分の好きな植物を増やして、誰かにプレゼントすることは、微力ではあるが、ガーデニングや園芸の確実な普及啓蒙活動だと思う。ただし、品種によっては増殖が禁止されているものもあるので注意が必要だ。 上/ホスタ(ギボウシ)の株分け。下/ニューサイランの株分け。 株分けできるニューサイランやホスタなども、鉢がパンパンになると株分けして増やしてしまう。 取り木したグレビレア。 ガーデンレッスンでも、ときどき挿し木や取り木、株分けの指導をさせていただくが、成功すると、とても喜んでくださる。誰でも植物を増やすことは、なぜか楽しいのだ。 ぜひ、増やす園芸にチャレンジして欲しい。 おすすめガーデニング③自分の庭は自分で剪定にチャレンジ ガーデニングの楽しみ方は多彩だが、簡単なのに多くの人が諦めてしまっているのが樹木の剪定だ。植木屋さんに頼むと数万円かかるが、松の木など、特殊なものを除けば、意外と簡単で楽しいのだ。私は専門学校で、ほんの数時間しか剪定の授業実習は受けていないが、自分の庭はもちろん、仕事でもやっている。 きちんと樹木ごとの剪定時期や方法を学習し、センスを磨けば問題ない。もちろん、熟練の植木屋さんよりスピードは落ちるが、自分の庭なら時間をかけてやればよいのだ。樹木の剪定や伐採はガーデニングとは異なる"格闘系”の体力を使う作業だが、それゆえに楽しい部分がある。ぜひ、男女問わずチャレンジしてほしい。 右、剪定後の地面を覆うものは切り落とした枝葉。結構な量、切り落としたことが分かる。 自分のセンスで、時間をかけて樹木を丁寧に美しい姿に仕上げるのは、本当に楽しいのだ。出来上がりは技量とセンスの結果なので、自分の「努力の結果」が正直に反映されて面白い。何事も、失敗を重ねると上達する。ただ、高所などの危険な作業は避けて、できる範囲で。私はもう歳なので、ハシゴを使用しないで剪定できる範囲に樹木をダウンサイジングしている。 おすすめガーデニング④ネットでガーデニングにチャレンジ 今更ではあるが、私がガーデニングを楽しむのを後押ししてくれたのが、インターネットだった。20年以上前は「インターネットガーデニング」の創成期だった。当時、インターネットはまだ普及しておらず、ネットでガーデニングのサイトを自分で作っている人はかなりマニアックで、ある意味、時代の最先端を行く、尖った人たちだった。 同時に英文サイトも作ったので、オーストラリアの人々とも交流ができた。今でも何人かとは繋がっているが、会社でガーデニングを話題にするサラリーマンなどいない時代。ネットで知り合った人たちとのコミュニティが楽しかった。ガーデニングという趣味は、案外孤独な趣味で、私自身はインターネットと共に成長できたと思う。 ブログはかれこれ22年ほど継続して更新していて、ほぼ毎朝、写真を撮ってアップしてきた。基本は、その日の朝、「感動した植物」の写真4枚と愛犬の写真1枚を撮り、文章を加えて、出勤前の忙しい時間に制限時間15分でやる習慣をつけた。 正直なところ、毎朝、感動する植物があるわけではない。しかし、感動を求める感性と、撮影技術は27年間で鍛えられたと感じている。ガーデニングは栽培力プラス感性やセンスが必要だが、いずれも努力で鍛えられるのである。日々、よりよいものを求め、より高きに挑戦することである。 参画した、オーストラリア大使館の庭。 27年間ネットで情報を発信し続けてよかったことといえば、メディアの目に留まり、テレビや雑誌に大変お世話になったことだろう。また、ネットを通じてオーストラリア大使館の庭づくりにも参画した。近年は、作庭やガーデンレッスンの問い合わせも、ほぼネット経由である。ネットなしでは今の自分はなかった。 近年、インスタやYouTubeにもチャレンジはしているが、昔ながらのブログが中心である。ブログは、すっかり老人のメディアになってしまい、現在の1日のアクセス数は約300人。最盛期の1/6程度である。しかし、20年以上継続してきたブログに今も訪れてくれる人がいて、役に立っているなら嬉しいものだ。これからも、量より質を保ちたいと思う。 ネットには園芸情報も溢れており、情報入手に苦労はない。ネットで珍しい植物も簡単に手に入る時代だ。だからこそ、質を求めなければいけないと思う。 おすすめガーデニング⑤コンテストにチャレンジ 2010年日本園芸協会ガーデニングコンテスト・ゴールドメダルの拙庭。 上級者やプロを目指す人におすすめしたいのは、ガーデニングやハンギング、寄せ植えなどのコンテストへのチャレンジである。参加することで自分の実力を知り、第三者に認められる機会にもなるだろう。私は「賞品に燃える」人間なのか、海外旅行がかかると必死になって、火事場の馬鹿力が出たようだ。最初は火事場の馬鹿力でも、その後は、馬鹿力は平常時であっても楽々出せるようになるものだ。自分自身、数々のコンテストを経験し、幸いほとんど入賞できたことが自信につながった。人間、必死になれば潜在能力が発揮できるのだ。 おすすめガーデニング⑥幅広い趣味にチャレンジし感性を育む 最後にもう一つ。私は、かつてある人に言われた言葉が忘れられない。もう一つの趣味のバイオリンで「趣味だと思っていると、いつまで経っても趣味だ。だが芸術だと思うと、求めるレベルが違って上達できる」と言われたのである。趣味ではなく芸術だと思い、求める目標レベルは常に上に置くということだ。 確かに! である。僕はその言葉で、「ガーデニングは芸術だ~」と確信したのである。 その後、なぜか楽器演奏とガーデニングが自分の中では、芸術を追求する、かなりの部分が共通した感性だと感じるようになり、相乗効果があるように感じている。バイオリン歴は30年になるが、自分のガーデニングの先生は、じつはバイオリンだったと感じているくらいだ。 ピアノも子どものころにやっていたが、やはり音楽などの情操教育で養った感性は、ガーデニングの感性を磨くのにとてもプラスになると感じている。下手の横好きで、燻製料理やそば打ちなどの料理も楽しんでいるが、小さなことでも「成功体験」すると、他のことにチャレンジしてみたくなるものだ。 人間の感性は、さまざまな経験を積むことで、より一層磨き上げられるものだ。 ガーデニングを趣味にして充実した人生を 私の人生を変え、充実した老後を送れているのはガーデニングのお陰だと思っている。そろそろ庭仕事によって、足腰が痛くなったりもする。それでも庭に出て、植物が生き生きと葉を広げ、花を咲かせていると、手が抜けないと励まされる。ガーデニングはまだまだやめられない。 昔は少なかったガーデニング用の植物も、本当に幅が広がり、あらゆる植物が手軽に入手できるようになった。また、気候変動に対応して耐暑性がある植物も、病害虫に負けない品種も続々登場している。一方、日本の伝統園芸植物も英国の園芸家がうらやむレベルの、素晴らしい世界がある。特に品種のネーミングは、当時の園芸家の知的レベルと感性の物凄さを感じさせる。 ガーデニングは、植物を育てるばかりでなく、文学や絵画、環境保全など、あらゆる事象につながっている。ぜひご紹介した「チャレンジ・ガーデニング」を一つでも試してもらいたい。
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クラフト
【クリスマススワッグ】おしゃれ花材「オージープランツ」で手作りする方法
花材に選ぶ「オージープランツ」が生きる土地、オーストラリアのクリスマス Bellelen/Shutterstock.com クリスマスといえば、ホワイトクリスマスとか寒い冬にやってくるものと当たり前に思っていますが、南半球ではクリスマスは真夏! 私もメルボルン駐在中は、サマーホリデーにあたるクリスマスやお正月は、子供たちと海岸に海水浴に行ってBBQをしていました。オーストラリアでもクリスマスは一大イベントで、家々ではクリスマスを祝い、クリスマスの飾りつけをします。 オーストラリアのパインツリー。taewafeel/Shutterstock.com クリスマスツリーといえばモミの木ですが、暖かいオーストラリアにはモミの木やコニファー類はなく、パインツリー(松の木)で代用するか、人工のモミの木を使うことが多かったと記憶しています。最近は日本でもオージープランツが人気で、寒い土地の植物に限らず、ユーカリをクリスマスリースやスワッグに使用していますよね。今年は、我が家の庭で育つ自家採取のオージープランツを使ってクリスマススワッグを作りました。 庭で育つオージープランツを使ってスワッグを作る まず、庭からドライにしても見栄えがするスワッグ作りに使用できそうな植物を箱いっぱいに集めました。 上写真は、庭のオージープランツです。左から、ユーカリ、グレヴィレア‘ムーンライト’、アカシア・ブアマニー。オージープランツは常緑でドライにしやすいので、庭で育てていればスワッグ作りの素材には困りません。 テーブルに花材を広げてみると、こんなバリエーションになります。中央のキングプロテアはドライフラワー、ピンクッションはアーティフィシャルを用意しました。素材を眺めて、完成イメージを想像します。ちなみに、キングプロテアの原産地は南アフリカですが、オーストラリアでは一般的に育てられている植物です。 まず、大きくしなやかな感じで広がっているグレヴィレア‘ムーンライト’を一番下に置きます。 次は葉が広くて量感があるユーカリです。これは、ユーカリ・シデロキシロン‘ロゼア’という品種です。葉の香りがとても素敵です。平たく置きます。 次はアカシア・ブアマニーを上に重ねます。この時期の葉の先端付近には、つぼみがたくさんついて、絶妙な色合いです。 再びユーカリを重ねますが、ピンクの花と実を生かすので、葉を減らして使用します。 次は、いよいよメインのキングプロテアとピンクッションをのせ、最後にグレヴィレア‘ロビンゴードン’を加えます。 これですべての花材がひとまとめになったので、根元にビニタイを巻いて仮留めします。本締めは麻ひもでもいいですが、今回は重量もある大型のスワッグなので、より強固にするためにワイヤーでしっかり留めました。 仕上げのリボン飾りを2パターンで作ってみました。選ぶリボンと飾りの鈴の違いだけでも、随分とイメージが変わりますね。 以上、オーストラリアンスワッグ作りでしたが、妻がメルボルンで作った思い出のクリスマスリースがあるので、ご紹介しましょう。 オーストラリアの素材で作ったリース リースを飾る実ものは、すべて当時住んでいたメルボルンの近所の公園で拾ったものを使いました。仕上げに、ニスを全体に塗って、防腐効果を高めておいたので、今も健在。 上写真:Tegan T/Shutterstock.com オーストラリアといえば、ユーカリが象徴的ですが、現地ではユーカリの実をガムナッツと呼び、リース飾りなどクラフト素材によく使用するようです。 定番花材のクリスマススワッグの作り方 オージープランツは最近、苗もドライフラワーも入手しやすくなってきました。しかしまだ、どこでも手軽に手に入るとはいえません。そこで、今年人気のナチュラル素材を使った、定番花材のクリスマススワッグを2つ目にご紹介します。 使用する植物は、右端のモミの木をメインに、コニファー(クジャク)、ユーカリ、コットン、シルバーグルニア、サンキライを用意しました。 次に、アクセントになるモチーフ飾りですが、こちらも自然素材にこだわりました。 リリーフラワー(中央)、松ぼっくり(ゴールド&ホワイト)、姫リンゴ、ドライオレンジです。そして、ゴールドのリボン2m、赤と緑のラッピングペーパー、麻ひも、ビニタイを用意します。 定番クリスマススワッグの作り方手順 ①まず、ベースとなるモミの木を置きます。長さ60cmの枝を使用しましたが、大きすぎるので50cmで切りました。枝を整えながら置きます。根元の葉は落としておきます。 ②次にコニファーを置き、モミの木の枝とバランスを取ります。 ③コットンの枝を置きます。向きが難しいですが、調整しながら置きます。向きの調整が難しい枝ぶりでしたら、表が見えなくなる実は切り取って、後で取り付ければよいでしょう。 ④ユーカリです。枝を追加するごとに全体のバランスを見ながら微調整してください。次にサンキライ、シルバーグルニアを順に重ねて置きます。 ⑤枝ものの組み合わせは終わりなので、仮留めとして、根元付近をビニタイで巻きます。そして本留めの前に、今一度バランス調整をしましょう。 ⑥本留めは、麻ひもでしっかり巻きます。太い輪ゴムでもOKです。右写真のような太いゴムを使用するときは輪にして巻くのではなく、枝先の一カ所に輪ゴムの端を掛け、2本取りの状態で伸ばして巻きつけ、最後に1本の枝に引っ掛けて留めます。これは、花屋さんで見る留め方です。 ⑦しっかり結べたら、枝の長さを切り揃えます。次は、飾りつけです。まずは仮置きをしてバランスを取り、針金で固定していきます。 ⑧松ぼっくりやリリーフラワーは、針金をU字にして、巻きつけ、固定します。 ⑨姫リンゴは、リンゴの軸に巻きつけます。ドライオレンジは異なる房の2カ所に針金を通して固定します。 ⑩そして、仕上げに包装します。まずは、2色が見えるように包装紙を少しずらして重ねておきます。その上にスワッグを置きます。 ⑪包装紙をバランスよく巻けたら、壁に掛けるための紐を兼ねて、包装紙ごと麻ひもで結んで固定します。最後に、リボンを蝶結びにして完成です。 今回使用したアクセントになる各パーツです。 左上から時計回りに、リリーフラワー、ドライオレンジ、金色に塗られた松ぼっくり、雪化粧のようにペイントされた松ぼっくり、サンキライとコットン、モミの木とコニファークジャク。 では皆さま、メリークリスマス!
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果樹
初心者でも簡単に自宅でどっさり収穫できる美味しい「温州ミカン」
野鳥も狙う⁉︎ 美味しい果物、ミカン 今年も庭のミカンの木に野鳥が集まるようになった。これは熟した証拠で、残りも早く収穫せねば! 我が家には、植えてから、かれこれ25年以上になるミカンの木がある。毎年、オレンジに色づいて自然の恵みを感じさせてくれる存在だ。庭にミカンの木を植えることをおすすめしたい。 自分が育てたミカンの木から、もぎ取ったばかりの果実の一房を口にしたときに広がる、甘酸っぱい快感は、至福そのものである。自分の庭で、大地や太陽の恵みを凝縮させた果実を口にするという行為は、自分も自然の中で生きている仲間であることを感じさせてくれるものだ。 果樹を育てるガーデニングの醍醐味 A3pfamily/Shutterstock.com ガーデニングは植物を育て、その美しい姿や花を楽しむことがメインだが、果実を食べるという楽しみもある。「花より団子」というが、見るより食べるという人間の本能に訴える楽しみは、万人に対し、なかなかに説得力があり実感が伴う。 とかくガーデニングというと、視覚で楽しむ花ばかりに話題がいきがちだが、果樹を植えて結実させて味わうということは、子どもや男性にも分かりやすい楽しみ方であり、一方では果実栽培という奥の深い世界もあり、おすすめのガーデニングだ。 ひと昔前は、庭にレモンの木が植わっているとお洒落感もあって人気だった。私もかつてガーデンストーリーにレモンの記事を執筆したことがある。もちろん、レモンの木の人気は息が長いのだが、コロナ禍も3年目になり、ガーデニング=お洒落なライフスタイルという捉え方が少し変化してきたように感じている。 果実が実る庭風景。左はレモン、右は温州ミカン。 おうち時間が増えてガーデニングブームになり、人気なのは実用的な野菜づくりや、果樹栽培だ。このところの物価高の波もその実用路線を後押しし、より実用的なものに、お洒落感も移行しているように感じる。そんな時流にぴったりなのが、温州ミカンだ。 果樹栽培25年で確信した育てやすさダントツ1位 私の果樹栽培歴も25年。その間に、柿、桃、梅、梨、巨峰など、いろいろ挑戦してきたが、木が大きくなりすぎたり、虫がついたり、病気になったり……。正直、果樹栽培は素人には難しいと実感したが、そのなかでも、ほぼ放っておいても毎年確実に収穫できているのが、レモンとミカンである。 ほとんど放置状態でも、こうして立派なミカンが収穫できる。 レモンも庭で採れるのは嬉しいが、そんなに大量には使い切れない。その点、ミカンは食べきれないほど収穫したとしても、不思議と食べきれてしまう。我が家は、この20年以上ミカンを買ったことがないほどだ。年金暮らしにとっては嬉しいことだ。 しかし、長年育てていると、デカいミカンを収穫してみたくなる。プロの農家は摘果をして、実の大きさを揃えたりしているが、正直、それは面倒なのでやっていない。だが毎年、1枝だけ摘果して大きなミカンづくりに挑戦している。 左/今年の1位は307g。右/過去最大記録の322g。 過去最高のビッグミカンの実績は322g。今年は307g。ちなみに、いただきモノのミカンで2Lサイズを測ったら148gだった。それでも、とてもビッグなのだ! 温州ミカンの成長を楽しむ四季 さて、ミカンは開花から熟するまで、どんな成長をするだろうか? それぞれに季節感があって、眺めていてウキウキするものだ。 まず、ミカンはどんな花が咲くでしょうか?「♪み~かんの花が咲いている~、思い出の道、丘の道・・・」という童謡があるが、これは5月中旬である。 tamu1500/shutterstock.com そして6月1日になると、緑色のピンポン玉のような実が見られる。まだ、赤ちゃんで可愛い。 7月24日。つややかな緑の果実が雨に濡れて美しい。 9月27日には、すっかりミカンらしくなってきた。 10月17日には、多少黄色く色づき始めた。毎年、子どもの頃、初めてミカンを食べるのは運動会のときだった。「酸っぱい!」と感じた記憶が蘇る。でも、この時期の酸っぱいミカンもくせになる味なのだ。 10月21日になると、かなり色づいて、木の枝先も多少枝垂れて存在感が出てくる。 孫も野鳥も愛犬もミカンを楽しむ11〜12月 10月27日、収穫には少し早いタイミングだが、孫が来たのでミカン狩り。孫は初めてのミカン狩りに大興奮! 子どもには果物の収穫はいい経験になるだろう。ついたくさん採ってしまった。 11月になると甘みも増してくる。 枝ごと豪快に切り落とし、部屋の飾りにした。爽やかな香り。 そして甘みが増してくると、鳥がやってくる。毎年、全部は収穫しないで、小鳥用に残しておく。 リビングから見えるテーブルにミカンを置いておくと、メジロが毎朝ブレックファストに来る。 ミカンが好きなのは、人間や野鳥だけではない。我が家の愛犬は歴代、甘いミカンが大好きだ。朝、散歩から帰って喉が渇いたら、ミカンを1個、木からもぎ取って、私と分けて食べる。犬も美味しいものは知っているのだ。 収穫量の安定のために、やるべき2つの作業 庭で自然の恵みをたっぷり受け、実ったみかんは格別に美味しい。何といっても、あまり手間をかけずに、ほとんど放置状態で、毎年実ってくれるのが有難い。きっと、もっと世話をしたら、これ以上に立派なミカンが収穫できるかもしれないが、現状で十分満足だ。 ただ、私が必ずやっていることが2つある。 【必須作業1】 1月下旬~2月上旬に、ミカンの木の周りの地面に溝を掘り、発酵油粕の寒肥を与える。これは効果的。 【必須作業2】 3~4月に、徒長したり密集した枝を落とす。上から見たらドーナツ状になるように、木全体に太陽と風が当たるようにする。これは、メルボルンで家に来ていたガーデナーさんから学んだレモンの木の剪定方法だが、この方法をミカンに応用している。 育て方の本には、いろいろ難しいことが書いてあるように感じるが、まあ果樹栽培が素人の私にもできるのはこの程度。それでも毎年、たくさん実がなるので、これで満足だ。 素人にもできるミカンの栽培、始めてみませんか?
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ガーデンデザイン
在日オーストラリア人のお庭改造に密着!【オージーガーデニングのすすめ】
オージーガーデニングの腕を振るう作庭 私は定年退職後、それまで趣味だったガーデニングを「仕事」にして、早12年近くになる。その期間は、植物園の相談員をしながら細々とオージーガーデンの作庭をしてきた。以前、オーストラリア大使館の「自然庭園」の庭づくりの手伝いをしたこともあったが、2022年春、東京郊外のテラスハウスに住む、在日オーストラリア人からオージーガーデンの作庭の依頼を受けたのだ。以前も在日オーストラリア人のガーデンレッスンは数件実施したことがあるが、作庭は初挑戦となる。 庭の施主は、私がかつて駐在したメルボルン郊外の出身の方ということもあり、意気投合し、とても楽しく仕事をさせていただいた。庭にカンガルーとコアラの置物を配した陽気なオージーガーデンが出来上がったので、ご紹介したいと思う。 なお、この庭のオリジナリティーに貢献してくれたカンガルーとコアラの置物は、施主様がコツコツと通販で買い集めたコレクション! 庭づくりは2021年秋にスタート 最初にお声がかかったのは、2021年の10月である。これから寒くなっていくという10月にオージープランツを植え付けるのは植物にとって好ましくないので、植え付け作業は暖かくなる春に実施することにした。それまでは既存の植物の中から不要なものを撤去し、来春に備えて伐採・伐根と整地をすることにした。10月に、さっそく私と施主様で一緒に作業をしたのだが、オーストラリアの男性はパワーがある。私の3倍くらいのスピードで、瞬く間に不要な植物を伐採・伐根してくれた。 オージーライフスタイルを実現する庭デザインとは そして春3月がやってきた。冬の間にきれいに整地を済ませていてくれていたので、穴を掘って軽石などで水はけをよくし、植え付けるだけだ。テラスハウスの庭はほぼ正方形の10坪程度だが、日当たりのよい恵まれた環境。オージープランツにはもってこいの庭だ。事前に植栽したい植物を打ち合わせして決めておいた。 施工にあたっては、庭に接するリビングからの眺めや、庭に出ても心地よくオーストラリアの爽やかな風が感じられることを大切にした。オーストラリアでは日常的な「オージーBBQとワイン」が楽しめる、オージーライフスタイルが実現する庭だ。 テラスハウスという条件のため、隣家との境界や目の前に建つ棟からの視線を遮り、プライバシーを確保するために、ある程度の高さに育つアカシアやユーカリ、メラレウカなどを周辺に配置した。 そして、リビングからはBBQが楽しめる芝生越しに、低木のバンクシアやグレヴィレアの花が眺められるように植栽計画を考えた。 さて、植物の植え付けだが、オージープランツは水はけがよいことが大事である。そのため、必ず植え穴の底に軽石を敷いてから植え付けるようにしている。 植え付ける時の用土は、種類によってブレンドを変えるのも丈夫に育てるためのコツだ。例えば、メラレウカ、ユーカリ、アカシアは庭土に腐葉土を3割程度混ぜ込むような普通の植木の用土同様でよいが、バンクシアやグレヴィレアは、腐葉土・軽石・鹿沼土を各々2割程度混ぜ込むようにしている。また、庭に植える場合には肥料は必要ない。 今回セレクトした植物たちは、どれも我が家で育つものばかり。 植えた植物リストは下記の通り。オージープランツを中心に16種を揃えた。 コーストバンクシア/カリステモン/グレヴィレア‘ピーチ&クリーム’/ジャカランダ/アカシアブルーブッシュ/木生羊歯ディクソニア/ドドナエア/コルディリネ・オーストラリス‘レッドスター’/メディカルティーツリー/シルバーティーツリー/ハーデンベルギア/ニューサイラン/アガパンサス/カンガルーポー/ウェストリンギア/フェスツカ・グラウカ 3月中旬に知人にも手伝ってもらい、丸1日で植え付けを完了することができた。そして芝を張り、バークを敷き詰めた。昨年の10月の状態から大きく変化を遂げた。 オーストラリアでは、広い芝生の庭は基本だ。そして一般家庭でも、公園、学校などの公共施設でも地面が露出していることは滅多にない。必ず芝生かウッドチップ、あるいはグラウンドカバープランツで表面を覆うので、今回もそのようにした。 オーストラリアの住宅事情と比べると、日本の住宅の庭は猫の額ほどでしかないが、それでも施主様は喜んでくれた。 庭づくり完了後のお土産には、懐かしいオージーミートパイをいただいた! 美味しかった。 華やかさを増す4月以降の庭 植栽を終えた1カ月後には、芝生も緑になった。バークを追加し、フランネルフラワーやハナカンザシなどを植えて、華やかで落ち着いた雰囲気になった。各コーナーの見所をご紹介しよう。 左からアカシアブルーブッシュ、白い花はフランネルフラワー、ニューサイランの明るい剣葉がアクセントとなって引き締め役に。 何といってもカンガルーの像が存在感大です。その右は、グレヴィレア‘ピーチ&クリーム’。下草にグラス類のフェスツカ・グラウカを植え、自然らしさを演出。 右手前のドドナエアの葉が4月はまだ銅色。その奥が、カリステモン、角地にはコルディリネ・レッドスターで引き締めた。 たくさんのカンガルーとコアラたちが、このオージーガーデンの立て役者だ。右がコーストバンクシア、その奥にジャカランダを植えたが、4月はまだ棒のような状態。手前にカンガルーポーやウエストリンギアも見える。 その後、ジャカランダとコーストバンクシアが開花した。 今回セレクトした植物を解説! それでは、今回植栽した植物について触れておきましょう。そのほとんどが、これまでに筆者が当サイトでご紹介してきた植物なので、それらも併せてご紹介します。 木にしがみつくコアラの横には、最近人気のコルディリネ・オーストラリスを植栽。 ●スタイリッシュな庭づくりに必須「コルディリネ・オーストラリス」 カンガルーがまるで動き出しそう⁈ 伸び上がる斑入りの葉が雰囲気を引き締めてくれるのがニューサイランです。 ●「ニューサイラン」スタイリッシュな植栽に不可欠な葉 グレヴィレア‘ピーチ&クリーム’はオレンジからグリーンのグラデーションが美しい四季咲き性で、真冬以外4〜11月に咲き続けるのでおすすめです。 ●人気上昇中のオージープランツ「グレヴィレア」 中央の小さなカンガルーを取り囲むように赤と黄色の花をつけているのは、カンガルーポーです。ピンク花もポピュラーになりました。 ●ダンディーな花が咲く宿根草「カンガルーポー」 バンクシアは、日本ではまだなかなか入手が難しく高価ですが、やはりオーストラリアの代表的な植物ですから、今回の庭に必須となりました。 ●これからの庭木「バンクシア」に注目! 育て方と種類をオージープランツ栽培の達人が伝授 写真左は、シルバーティーツリーと呼ばれていますが、メラレウカではなく、レプトスパルマンの仲間です。シルバーリーフがきれいな庭木です。 写真右は、最近人気のアカシアの仲間、アカシアブルーブッシュです。シルバーブルーの葉が魅力的。 ドドナエアは蒸し暑さにも比較的強く、寒さもマイナス5℃程度まで耐える常緑低木。関東以西では庭木としてもおすすめです。冬に銅葉になるのが魅力。 ●庭木や寄せ植えに活躍する「ドドナエア」 オーストラリア東海岸が原産のハーデンベルギアはつる性なので、フェンスに絡めて育てます。白花もありますが、今回は紫をチョイス。 ●「ハーデンベルギア」の魅力と育て方 ハナカンザシはコンパクトな株姿で、最近は寄せ植え用花材としても人気です。花はドライフラワーにもなります。地際付近の彩りとして活躍してくれるでしょう。 ●耐寒性もある春の花「ハナカンザシ」 花弁に細かい産毛が密生してフランネル生地のような優しい感触の花びらと、銀白色の葉が織りなすモダンアートのような雰囲気のフランネルフラワーは、オージープランツの代表品種です。 ●造形的でアートな花「フランネルフラワー」 そして、植え付けから半年経過した9月の庭では、植栽が猛暑に枯れることもなく、すくすくと見違えるほどに成長していて、ひと安心。日本の住宅事情であっても、故郷を身近に感じる陽気なオーストラリア人のオージーガーデン。とても楽しい庭づくりとなりました。 施主様は、この庭についてレポートを公開しています。異国で、故郷のオーストラリアの庭づくりを成し遂げて、喜んでいる様子が目に浮かびます。
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樹木
今、見直したいつる性植物!「ツルハナナス」がおしゃれ
丈夫なツルハナナスとの出会いはオーストラリア ツルハナナスという植物をご存じでしょうか? あまりメジャーではないかもしれませんが、つる性で丈夫で花期が長く、トレリスなどに絡めて咲かせてもお洒落。壁面緑化などにも向く植物です。私が初めてツルハナナスに出会ったのはオーストラリアのメルボルンに住んでいた時のこと。お隣さんの広い芝生の庭で、ウッドデッキのフェンスに絡み、白と紫の花が咲いていて、とても洒落た植物に見えました。 それがツルハナナスだったということを知ったのは、帰国して数年経って、園芸店で見つけた時でした。メルボルンでは、とてもお洒落な植物の印象だったので、「ツルハナナス」という和名には正直、ちょっとガッカリした記憶が。なんで、茄子なの? と思いました。 とは言うものの早速購入して、我が家のフェンスと擁護壁を緑化しようと植え付けました。すると、成長が早く、凄い勢いでフェンスと擁護壁を覆うようになりました。今では、すっかり擁護壁に蔓延って壁面緑化をしてくれています。 冬でも咲くことがあるほど年中咲いてくれるし、丈夫で長もち。コンクリートの擁護壁を緑で隠してくれているので、ありがたい存在です。 私は「名前は花がナスに似ているから、ツルハナナスというのだろう」くらいにしか思っていなかったのですが、ツルハナナスの学名がSolanum jasminoidesで、野菜のナスの学名がSolanum melongenaと、同じナス科の植物であることを知ったのは、少々、驚きでした。そしてSolanumには何と世界に1,700種もあり、それらには草本、低木、高木、つる性があって全世界に分布する一大グループであることも分かったのです。 ツルハナナスの基本情報 学名:Solanum jasminoides 和名:ツルハナナス(蔓花茄子) 科名 / 属名:ナス科 / ナス属(ソラナム属) 原産地:南米のブラジル、エクアドル、パラグアイ 形態:つる性木本 花は集散状に付き、紫がかった水色と白があり、白から水色に変化するものもあります。我が家の斑入り品種Solanum jasminoides 'Variegata'の花は白のみで、変化はしません。 これが、斑入り品種Solanum jasminoides 'Variegata'です。 ツルハナナス=ヤマホロシではない! じつは、今回この記事を書くにあたっていろいろ調べていると、国内ではツルハナナスとヤマホロシが同一視され、ネット上でも苗の流通でも、実態はツルハナナス=ヤマホロシとして扱われていることが分かりました。 本来のヤマホロシの基本情報は以下です。 学名:Solanum japonense 和名:ヤマホロシ 別名、ホソバノホロシ 原生地:中国、朝鮮半島、日本 ヤマホロシの花は淡紫色で5つに深く分裂し、花径1cm程度で、はじめは平たく開花しますが、のちに各裂片は強く反り返ります。裂片の中央には黄緑色の腺体があります。 ということで、ツルハナナスとヤマホロシは別の品種なのです。 ツルハナナスの魅力 【魅力1】さまざまな花との相性がよくてお洒落 我が家のツルハナナスは、育て続けてかれこれ20年以上になりますが、さまざまな植物とコラボする写真が残っています。 まずは、つるバラの‘ピエール・ドゥ・ロンサール’とコンボルブルスとの競演です。 青いコンボルブルスの花と入り乱れて咲き、‘ピエール・ドゥ・ロンサール’の華やかさを引き立てています。 つる性のナニワイバラもツルハナナスもどちらも成長が早く、やや暴れますが、両方とも丈夫で白花同士で清楚に競演してくれました。 半つる性のルリマツリも垂れ下がるので、白と水色の花が爽やかでもあり、量感もたっぷりで見た目もゴージャスです。 【魅力2】立体的に育てられる つる性なので、トレリスや行燈仕立て、さらには擁護壁などの壁面緑化に最適。花壇や植え込みのアクセントとしてトレリスに仕立てるのもお洒落です。 我が家は公道より住宅が高い位置に建っていて、歩道に面してコンクリートがむき出しの擁護壁が見苦しかったのですが、敷地の縁沿いに植えたツルハナナスは、数年で壁面を覆い隠してくれました。こんな緑化が低コストで自分でできて、花もきれいなので道行く人にも好評です。 ツルハナナスの育て方 最後に、ツルハナナスの育て方と手入れについて解説します。 育てる場所 原産地がブラジル、エクアドル、パラグアイで熱帯~亜熱帯の植物なのですが、耐寒性があり、私が住む神奈川・横浜でも冬に葉が散ることがありません。耐寒温度はマイナス5℃とされています。関東以西地域ならば、鉢植えでも冬に屋内に取り込む必要はありません。日当たりのよい所で育てます。日照不足になると他の植物同様に花数が少なくなります。我が家は、西日の当たるコンクリートの擁護壁を隠すように上部から垂らしていますが、西日にも耐えています。 栽培用土 庭に植える場合は、一般的な植木や草花のように腐葉土を漉き込んで植えこみます。鉢植えの場合は、通常の赤玉土:腐葉土=3:2または、市販の園芸用土でOKです。 日頃の水やり 地植えで成長すれば不要ですが、鉢植えは通常の植物同様に表土が乾いたらしっかり与えます。 施肥 地植えは、発酵油粕を寒肥として与えるとよいでしょう。鉢植えは、液肥、または置き肥を成長期に施します。 剪定 生育旺盛でかなり暴れるので、地植えの場合は花後の秋にバッサリ剪定しておくとよいでしょう。成長期にはつるがあちこちに伸びてくるので、随時誘引して、よけいな枝を剪定します。 増やし方 挿し木で比較的簡単に増やせます。他の挿し木と同様に、長さ10cm弱の枝を穂木とし、葉を減らして鹿沼土などの清潔な土に挿します。熱帯植物で発根には温度が必要なので、6~7月が適期です。 病害虫の心配 まずありません。20年間でゼロでした! ツルハナナスの仲間をご紹介 付録的情報として、ツルハナナスの仲間、Solanumをご紹介しましょう。 まずはナスから(学名:Solanum melongena) ツルハナナスは本当にこのナス(茄子)の仲間なのです。ナスは、ナス科ナス属の灌木性多年草です。ナスの原産地はインドの東北地方で、中国から8世紀以前に日本へ伝わったとされています。 ツノナス(学名:Solanum mammosum) よく花材に使用されますが、これも原産はブラジルです。ツノナスもツルハナナスの仲間だったとは驚きです。 ルリヤナギ(学名:Solanum melanoxylon=Solanum glaucophyllum) 我が家の庭にある常緑で小低木のルリヤナギ(琉球柳)もツルハナナスと同じ仲間とは……。確かに花は似ていますね。 このように一つの植物を深く調べると、派生した情報までたどり着きます。植物って、知れば知るほど面白いですね。秋ナスの美味しい季節ですが、食卓で秋ナスに出会ったら、ツルハナナスなど仲間のことも思い出すと、もっと美味しく召し上がれるのでは?
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樹木
トロピカルで優美な植物「デュランタ」 庭木としての魅力と育て方
夏が似合う植物と温暖化の関係 夏はトロピカルなハイビスカスやプルメリア、ブーゲンビリアなどの熱帯花木が人気だが、残念ながらこれらの熱帯花木は、比較的温暖な地域である東京近辺でも外では冬越しができず、屋内に取り込まなければならない。しかし、近年の温暖化のせいか、20年ほど前は、多くの園芸書が「冬は屋内で……」と注意していた熱帯・亜熱帯花木が、庭木として定着し始めている。 私が今まで解説してきたオージープランツや南アフリカ原産の花木もこれに該当するのだが、南アメリカ原産のジャカランダやデュランタも同様だ。今回は、デュランタについて解説しよう。 秋まで開花するデュランタのプロフィール 学名:Duranta erecta またはDuranta repens 和名:タイワンレンギョウ、ハリマツリ 英名:. Golden dew drop、Sky flower 科名・属名:クマツヅラ科 デュランタ属 原産地:アメリカ・フロリダからブラジルにかけての熱帯アメリカ 分類:半耐寒性常緑低木(半つる性)*寒いと冬に落葉する場合がある 開花時期:7〜11月 私が20年以上育てているデュランタ 我が家のデュランタは、育ててかれこれ20年以上になる。入手当時は、デュランタ‘ライム’が観葉植物として人気だった。開花しやすいデュランタ‘タカラヅカ’はあまり流通していなかったと思う。じつは当時、私は観葉植物のデュランタ‘ライム’と花のきれいなデュランタとが品種が異なることを知らなかった。 知人からデュランタの苗をもらったが、当時主流だった観葉植物のデュランタ‘ライム’の苗だと思い込んでいたのだ。2〜3年鉢植えにして冬は屋内で育てていたが、ある日、都内の住宅街でデュランタが冬に庭で育っているのを発見したのをきっかけに、我が家でも翌年から庭に地植えにしてしまった。 すると冬は寒さで枯れたように見えたが、初夏に復活。9月には花を咲かせた。今でこそデュランタの花は知られているが、当時は見たことがなく、開花に感動したものだった。この時初めて、今育てているのはデュランタ‘ライム’ではなく、デュランタであったのだと気がついたのだ。 まさか、こんなに優美な色彩の花が咲くとは思っていなかった。そして花の咲くデュランタは、観葉植物のように室内で育てたのでは開花せず、開花には太陽が必要であることも学んだ。 デュランタの仲間3種 あれから20年が経ち、最近は住宅街の庭で咲いている姿を見かけるようになった。沖縄などでは、以前から生け垣に利用されていたようだ。デユランタの生け垣なんて、とても素敵だと思うが、残念ながら東京近辺では年中常緑とはいかないようである。 ここで、デュランタには主に下記3種があることを確認しておこう。 品種バリエ1 デュランタ(Duranta erecta またはDuranta repens) 花が濃青紫色で、花弁に白い覆輪が入るDuranta erecta ‘Takarazuka’が有名。樹高は2〜6m。 品種バリエ2 白花デュランタ(Duranta erecta ‘Alba’) 純白の花を咲かせる白花のデュランタは、「ホワイトラブ」という名前で見かけることがある。 品種バリエ3 デュランタ‘ライム’(Duranta ‘Lime’) 観葉植物扱いで葉がライム色。開花はしにくい。 デュランタが秋に開花のピークを迎える理由 ハイビスカスやプルメリアなどの熱帯花木を加温設備のない一般家庭で育てると、冬は屋内に入れても葉が落ちてしまう場合が多い。そしてハイビスカスやプルメリアは、夏になっても、ある程度葉が付いて枝が充実しないと開花しないようである。したがって、我が家での栽培経験では、これらの熱帯花木は、お盆過ぎから初秋にかけてようやく開花することが多かった。 デュランタも屋外で育てると、冬は葉を落としてしまう。初夏に葉が復活して、開花するのは9月頃の場合が多い。横浜にある我が家の場合、育てて20年以上になるが、幾度か寒さで枯れそうになった。しかし、初夏には根元から新芽が出て復活するたくましさがある。暖かい年は常緑の時もあった。近年は、暖冬のせいか、あるいは株が太くなったからか、冬も葉が落ちないことが多い。冬に葉が落ちなければ、8月頃から開花が見られる。 園芸店では初夏から開花株のデュランタが販売されているが、おそらく温室栽培のものだと思われる。 長い枝は2m以上あり、枝先につぼみをつける。半つる性の低木なので、たわわに咲く姿が美しい。開花が9月頃からのせいか、暖かい年は霜が降り始める12月上旬まで咲き続ける。我が家は西日もカンカンに射す所だが、負けじと咲いている。 長年、ガーデニングをやっていると、「丈夫で長もち」の植物が、やはり楽でよい。今年もデュランタが咲き始めた。これから11月頃まで咲き続けるだろう。 日本では実がなりにくいが、原産地では花後にたわわに実る。 デュランタの育て方 地植えの場合 神奈川・横浜にある我が家では地植えで育てているが、関東以西地域の太平洋側では、日当たりがよく、北風が当たらない場所なら地植えが可能だと思う。数年経って大きな株になれば、もし冬に葉が落ちたり、小枝が寒さで枯れたりすることがあっても、春には復活して秋には開花する。地植えの場合、ほとんど手がかからず、作業は、花後の剪定と寒肥を施す程度。なんて丈夫で長もちの優等生なんだろう。 鉢植えの場合 【置き場】屋外では日当たりのよい場所に置き、関東以北では冬は室内で管理を。霜の心配のない時期は屋外で日に当てて育てる。例えば、東京近郊の南向きのマンションのベランダなら、よほどの寒波が来ない限り、屋内に取り込まなくても大丈夫。真夏のピーカンの日は、鉢に直射日光が当たらない半日陰程度がよいだろう。 【肥料】成長期に10日に1回程度液肥を与える。置き肥でもOK。 【水やり】成長期には表面が乾いたらたっぷり。冬は控えめに。 【用土】赤玉土と腐葉土を7:3の割合で。一般的な植物と同様、市販の園芸培養土を使ってもよい。 【その他】病害虫は、ほぼ見かけない。鉢増しは、2年に1回程度を目安に、春に行う。株が乱れたり大きくなりすぎていたら、花後に屋内に取り込む前に剪定しよう。 デュランタの増やし方 挿し木で簡単に増やせる。方法は、春から初夏にかけて、一般的な挿し木同様に、15cm程度の挿し穂を鹿沼土などの清潔な土に挿し、明るい日陰に置く。乾燥しないよう水やりを忘れずに管理すると、1カ月程度で根が出て新芽が出始める。 寒さに気を付ければ、丈夫で優雅な花を咲かせるデュランタ。ベランダやテラスなどの都会的な場所にもマッチすることでしょう。冬も室温を保てば観葉植物としても活躍しますので、ぜひ育ててみてください。
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宿根草・多年草
奇怪だけどカワイイ⁉︎ オージープランツ「デザート・ピー」【オージーガーデニングのすすめ】
奇怪な花もいつしかカワイイに変わる オーストラリア大陸に育つオージープランツの花の多くは、独自の進化を遂げているので、変わった様相を呈しているものが多いが、極端に奇怪な花姿といえば、今回ご紹介するデザート・ピーだろう。日本ではあまり知られていないが、1961年に南オーストラリア州の州花にもなったほど、有名な花なのだ。日本でも都道府県の木や花に制定されているものは、いずれもポピュラーな植物ですよね。 我々は多分、初めて目にする珍しい植物を、最初は好奇の目で見るものだ。面白い! きれい! と感じることもあるが、逆に奇怪に感じて、恐怖心を抱くことすらある。 私自身、初めてオーストラリアでグレヴィレアやバンクシアに出会ったとき、奇怪に感じたことも思い出す。メルボルンで借りた家の庭に咲くグレヴィレア‘ロビンゴードン’を見て、花に毒があるのではないか? と触ることすらためらったものだ。 しかし、やがて見慣れて親しんでくると、奇怪と思った花を、カワイイと感じるようになるから不思議だ。今では大好きな、大好きなグレヴィレア‘ロビンゴードン’である。 デザート・ピーのプロフィール このデザート・ピーも最初は驚きだった! しかし、育てていると、もう可愛くて仕方がなくなる。名前の通り、砂漠に育つマメ科の植物だ。 ■ 学名:Swainsona Formosa ■ 俗名:Sturt's Desert Pea ■ 和名:デザート・ピー ■ 科名:マメ科 ■ 分類:多年草 ■ 形態:つる性 学名が以前はClianthusだったが、近年、Swainsonaに変更になった。Swainsonaは英国の園芸家Isaac Swainson(アイザック・スゥェインソン/1746–1812) に因む。 また、俗名のSturt's Desert Peaは、英国人探検家Charles Sturt(チャールズ・スターツ/1795 – 1869)に因む。 原生地では、デザート・ピーは多年生植物で、つる性の茎から生じる絹のような灰緑色の羽状の葉が特徴だ。葉と茎は綿毛で覆われている。花の長さは約9cmで、短くて太い直立した茎に6〜8個の花が固まって咲く。 花びらは通常、赤または緋色で、最上部の花びらの基部に光沢のある黒い目玉のようにも見える塊がある。花の色は、基本は緋色で、黒い塊がない場合もある。サヤは長さ約5cmのマメ科植物の代表的な形で、成熟すると裂けて、いくつかの平らな腎臓形の種子を放出する。 デザート・ピーの種まきに挑戦 幾度か実生をトライしたが、発芽後に枯れてしまった。発芽はするが、梅雨越しができなかった。日本国内でデザート・ピーを見たのは2004年。オーストラリア大使館で育てていたものだが、その後しばらくはお目にかかることがなかった。2011年に、大手園芸店の店頭で見つけて連れ帰ったことがある。 デザート・ピーを育てたオーストラリア大使館のガーデナーさんに聞いた話では、砂で育てて、施肥は油かすだけだということだ。砂漠に育つ植物なので、日当たりがよく乾燥した環境を好み、土壌は痩せていたほうがよいのは想像がつく。 未知の植物と出会う喜び また、デザート・ピーが州花になっている南オーストラリア州は、ワイナリーが沢山あることでも有名で、夏に乾燥し冬は温暖湿潤な地中海式気候である。デザート・ピーが原生するのは、内陸部の砂漠であるが、他のオージープランツ同様、日本の蒸し暑い夏に弱いことは明らかである。 また寒さにも弱いので、日本の一般家庭での栽培はハードルが高いかもしれない。それが分かっているだけに、花を咲かせた時の感動はさぞや大きいに違いない。 私は、かれこれ20年以上ガーデニングをやっているが、我が家で育てた奇怪な花ナンバーワンは、間違いなくこのデザート・ピーだ。 バラや一般的な草花の栽培に飽きた方には、おすすめである。 このデザート・ピーを眺めていると、本当に地球上にはさまざまな植物があるものだと思う。まだまだ未知の植物も多く、その多様性に好奇心が刺激され、もっともっと奇怪な植物に出会いたいと夢が膨らむ。
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宿根草・多年草
人気品種を解説! シャープな葉がクールかっこいいユッカの魅力発見
見直したい魅力たっぷり「イトユッカ」 僕自身が最近注目していて、まずおすすめしたいのが斑入りイトユッカ(Yucca filamentosa var.smalliana)だ。葉を縁取る白斑が見た目に明るく、お洒落な姿。狭い庭にも使いやすく、他の植物と組み合わせがしやすいので、「ツンツンの植物は苦手」と思い込んでいる人たちにもおすすめしたい。 葉の縁に糸のような繊維が出ることから「イトユッカ」と呼ばれるようだが、この糸がなんとも可愛い。 イトユッカの魅力① 花がゴージャスで魅力的 まず最大の魅力は、たとえ株が小さくても見事な花を咲かせることだ。イトユッカは、別名イトランとも呼ばれているが、まるで洋ランのような華やかな花だ。 「キミガヨラン(君が代蘭/Yucca recurvifolia)」と呼ばれるユッカも花は咲くが、株が大型で小さな庭では存在感がありすぎる。また、その花は下向きに咲くのに対し、このイトユッカは横を向いて咲くので、まるで洋ランのように見えるのだ。 じつは、私もイトユッカが、こんな小さな株で開花するとは知らなかった。今年の4月に、なんとなく8号鉢のイトユッカを"葉を楽しむつもり”で、園芸店で購入。開花するとは思わなかったのだが、5月末にいきなり花芽が伸びて開花したのだ。イトユッカは10年くらい経たないと開花しないとされていたが、この株はせいぜい3~4年の若い株だと思う。なんとも感動の開花である。 こんな花が咲くと、毎朝、庭に出るのが楽しみだし、庭は一気に明るくなった気がする。なかなかパワーのある花だ。 イトユッカの魅力② まるで「グラス」のように扱いやすい 多くのユッカの葉は硬く尖っていて、触れると痛い。ところが、イトユッカは尖ってはいるが比較的やわらかく、刺さることはない。そして、他のユッカのように幹になって背が高くなることがないので、花壇にも「グラス」のような扱いで利用できるのが魅力でもある。小型のニューサイラン程度に考えたらよいと思う。 海外の雑誌では、花壇にグラスのように植えられている写真をよく目にする。庭が狭い我が家には花壇はないが、他の鉢植えと“寄せ置き”すると、シャープな葉が雰囲気を引き締めてくれる。 どうですか? イトユッカというと、なんとなくメキシコ原産だと思いがちだが、じつはアメリカ合衆国のノースカロライナやフロリダ州といった南部の湿潤気候の地域原産だ。したがって、本来、ドライガーデンではなく、普通の庭に向く植物なのだ。 人気絶頂の「ユッカ・ロストラータ」 さて次にご紹介したいのは、人気絶頂のユッカ・ロストラータ(Yucca rostrata)。 今、最も「カッコイイ」とされている植物かもしれない。確かに初めて目にしたときは、その卓越した風貌に圧倒された。そしてお値段を見て、また圧倒されたのだ。 まあ、ドライガーデンの代表選手みたいな植物だ。 多くは土のない状態で輸入し、国内で養生してから販売されているようだ。こちらはメキシコ原産で、寒さ暑さ、乾燥にも強く丈夫で育てやすいとされているが、2株育てた僕自身の経験では、年々、葉が小さく痩せ細ってしまった。 鉢植えで乾燥気味にして、太陽にも十分当てたつもりなのだが……。本当に丈夫で育てやすいか否かは、僕自身の中では未知数。でもカッコイイね。 その他のユッカたち5選 ユッカは正直なところ、分類がとても難しく、残念ながらネット上の写真と品種名は、まずあてにならない。学名も変更されたりする場合もあるため、何が本当の情報であるか、なかなか判断が付きにくい。 ここでは、国内で流通している品種をご紹介しよう。 ①ユッカ・グロリオーサ 元祖ユッカともいうべき、学校の校庭や公共施設にある「キミガヨラン(君が代蘭=Yucca recurvifolia / 旧学名Yucca gloriosa)」。イトユッカとの花の比較でも登場した、花が下向きに咲くユッカだ。アメリカ・メキシコ原産で樹高は4~6m、葉は長さ40cmほどで先端が針のように尖り、縁に細かい鋸歯がある。 明治時代に国内に入ってきたようだ。誰もが知っているキミガヨランの仲間で、特に葉が尖って硬いアツバキミガヨランは防犯植物として利用されているように、うっかり触ると痛くて危険で扱いにくい。 ② ユッカ・グロリオーサ・バエリガータ(Yucca gloriosa vaerigata) こちらは、グロリオーサの斑入り品種。 ③ ユッカ・グロリオーサ‘ブライトスター’(Yucca gloriosa ‘Bright star') ユッカの園芸品種で、とても明るい色をしている。 ④ ユッカ・アロイフォリア・バエリガータ(Yucca aloifolia vaerigata) ⑤ ユッカ・フィリフェラ(Yucca filifera) ユッカの基本的な育て方 ●栽培環境や水やり 原産地の多くは、メキシコなど乾燥地帯なので、日当たりがよく、水はけのよい場所で育てる。暑さには強く、耐寒性はおおよそマイナス5℃とされている。経験上、アガベ類よりはユッカのほうが耐寒性があるように感じる。冬は水やりを控える。春~秋は表土が乾いてから2〜3日してからたっぷりと与える。施肥は、成長期に2回程度。成長期は気温が約20℃以上とされている。 ●株の増やし方 実生は各品種共通だが、幹ができないイトユッカなどは、周りから子株が出るので、株分けで切り取って増やす。また、幹ができる品種は、逆に子株が出にくいので、幹を20cmほどに切って挿し木すると増やせる。 ●挿し木の例 巨大挿し木の手順 昨年6月に剪定作業で伺った庭で、大きなユッカを整理した際、剪定ゴミの中に、ユッカを発見。ふとゴミで捨てるのにはもったいないと思い、持ち帰って「挿し木」に挑戦した。何と成功したのだ。凄い生命力だ。 2021年6月19日に剪定枝の葉を落としてから、一晩、メネデール液に浸ける。そして、あくる日に、鹿沼土の鉢に挿し木をした。 2カ月後の姿。頂点に新芽が伸び出ている。 挿し木を開始して1年後の2022年6月16日。見事復活。 2021年11月4日には、幹を挿し木にしたユッカも芽を出した。 2022年6月16日、順調に成長しているのを確認。 人気絶頂のユッカ・ロストラータや、見た目ほど硬くないイトユッカに加え、元祖ユッカのキミガヨランやその仲間たちをご紹介しました。 街中で見かけて身近なようで、意外と知られていない一面があるユッカ。これまでいくつかの仲間を育ててきた結果、ご覧の通り、特にイトユッカはバラや草花とも相性がよいことがお分かりいただけたのではないでしょうか。ぜひ、ちょっとタイプの違う植物にチャレンジしたいときには、ユッカを思い出してほしいと思います。
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樹木
赤く炎のように燃えるオージープランツ「ダーウィニア」【オージーガーデニングのすすめ】
未知のオージープランツに何度も驚かされる 日本に住んでいると、例えば桜とか菊など日本で馴染みの深い花々と初めて出会ったのは何時だったか記憶にはないが、オージープランツに関しては、「はじめての出会い」をはっきり覚えている。多分、大人になってから出会ったからであろう。 オージープランツとの出会いの多くは、もう30年も昔になる。メルボルンに5年間駐在し、初めて花屋で見かけたバンクシアや、住んでいた家の庭に咲いていたグレヴィレア、出張でシドニーに行ったときに見たジャカランダなど、どの出会いも衝撃的で、その風景は今も鮮明に覚えている。 5年間もオーストラリアに住んでいれば、今、日本で流通しているオージープランツのエレモフィラニベアや初恋草などは、ほとんど現地で見たことがあるのではと思うかもしれないが、意外と現地のナーセリー(園芸店)では見かけたことがなく、日本に帰国後に園芸店で初めて出会って、その個性的な姿に衝撃を受けたということも多い。 今回取り上げるダーウィニアも、初めて出会ったのはメルボルンではなく、横浜の園芸店だった。図鑑で見たことがあったが、やはり現物の迫力は違う。炎のように燃えるような色彩を放つダーウィニアは、20年くらい前に初めてエレモフィラ・ニベアを都内の園芸店で見た時と同じ衝撃と感動があった。 見ていると元気が出る鮮やかカラーのダーウィニア オージープランツは、大抵日本での流通初期は、希少価値が高いからなのか、かなり値が張り、なかなか手が出ない。しかし数年も経つと、庶民も手が出る価格に落ち着くようである。我が家も昨年、庶民価格になったダーウィニアを連れ帰った。シルバーグリーンの細かい針のような葉と赤い花とのコントラストがなんとも美しい。この炎のような花を見ていると元気が出てくる。 コンパクトで育てやすいダーウィニア ダーウィニアは約70種あるといわれているが、多くは西オーストラリア原産。しかし、日本で流通しているのは、東海岸のニューサウスウェールズ州原産のダーウィニア・タクシフォリア(Darwinia taxifolia)という品種で、東海岸の気候は比較的日本の暖地に近いため育てやすい。今から約200年前の1825年に、ニューサウスウェールズ州のブルーマウンテンで発見された品種である。 ユーカリと同じフトモモ科の植物だが、ユーカリのように大きくなることはなく、せいぜい1mほどの低木なので、日本の狭い庭や、鉢植えにしてベランダで育てるのに向いている。匍匐(ほふく)性なのでロックガーデンにもよい。英名はmountain bell。開花期は、横浜の自宅2階のベランダで育てて4~5月である。園芸店での流通は3月頃からだ。また、名前はダーウィンに因んでつけられたとされる。 我が家のダーウィニアのある風景を幾つかご紹介しよう。 炎のように見えるようにと、燭台風の白い鉢にシンプルに。背景が白い壁だと映える。 オージープランツ仲間の赤いカンガルーポーと。 そしてオージー仲間のフェアリーピンクと共に、左後方の巨大な羊歯はディクソニア。 バラの開花期と同じ時期に咲く。テーブルに飾れるくらいのサイズ感で、左のバラは、‘クィーンエリザベス’。 最近、もう一品種、同じくニューサウスウェールズ州原産でダーウィニア・プロセラ(Darwinia procera)という品種も日本で入手できるとの情報もある。このプロセラは、やや背が高く、3m程度まで伸びる。 ダーウィニアの育て方 【日照条件】日陰でも育つ まず多くの場合、オージープランツの基本的な育て方は、必ず日当たりがよく、水はけのよい弱酸性の土に植え、夏は風通しのよい場所に置く。冬は霜よけをして、肥料は控えめに。であるが、このダーウィニアの特徴は、オージープランツには珍しく半日陰でも育つところである。逆に夏のピーカン照りや西日に当てると枯れやすい。オージーガーデンの木陰のグラウンドカバーに利用できるのだ。 【栽培のコツ】暑さ・寒さ・乾燥対策にマルチング オーストラリアの一般家庭の庭は、大抵芝生に覆われていて、周辺の植栽スペースにはウッドチップが敷かれている。マルチングは、夏には乾燥防止と共に、根を涼しく保つ効果があり、また冬は根を温かく保護するからだ。特にダーウィニアには、マルチングをおすすめしたい。なお、耐寒性はマイナス4℃とオーストラリアのウェブサイトに解説があったが、できるだけ霜よけをするなど、霜に当てないほうが無難だと思う。 【施肥】地植えは施肥不要 痩せた土地でも育つので、地植えの場合は不要。鉢植えの場合は春の成長期に発酵油かすの置き肥をする。 【剪定】花後に軽く刈る 5月以降、花が終わったら軽く刈り込むが、比較的自然にコンパクトにまとまる。また、梅雨時には風通しをよくするため、混み合った枝を間引く透かし剪定を。 【増やし方】挿し木が可能 花後の剪定枝を活用するなどして、挿し木で増やせる。 まだ日本では珍しいダーウィニアですが、未知の植物を身近に育ててみませんか? 赤い炎のような花が、驚きと元気を与えてくれます。 Credit 写真&文/遠藤 昭 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー。 30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。 ブログ「Alex’s Garden Party」http://blog.livedoor.jp/alexgarden/
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究極の美しさに輝く大輪花 ピオニー
牡丹とピオニー 牡丹という言葉のイメージは、私の中では、花札を連想してしまい、ボタンッ! という濁音の響きと共に、何となく古くさい、あまりよいイメージがなかった。きっと私の育ちがヨロシクないからだと思う。 ところが、ある時、海外の園芸雑誌でピオニーを見た時に、あまりの美しさに衝撃が走った。あの牡丹が、西洋の建物を背景に英語の説明文を見ると、まるで別物に見えたのだった。…これが牡丹? 日本人として恥ずかしいことだが、ピオニーと英語でいわれると別物のようで、新鮮なイメージになる。潜在的な西洋コンプレックスを持っているからだろうか? 一昔前は、園芸よりもガーデニングといったほうがカッコよくお洒落に感じた人も多かったと思う。ちなみに、英語のピオニーには、牡丹とともに芍薬も含まれる。 そんな、カルチャーショックのような経験の後に、「ピオニー」を育て始めた。この牡丹、いやピオニーは、欧米では高貴で美しい「高嶺の花」のようである。 ピオニーと花々の組み合わせ 以前にオーストラリアのGlobal Gardenというガーデニングサイトのレポ-トで、庭のオージーのハーデンベルギアを背景に牡丹を写した写真をアップしたら、とても好評で、数通のメールをいただいた。The peonies are beautiful - especially combined with the hardenbergia.…と、やはりハーデンベルギアとの組み合わせは意外だったのだろう。まあ、オーストラリアのバンクシアなどとは対照的な花姿である。その時の品種は、‘花王’という豪華なピオニーだった。 このピオニーであるが、本当の魅力はまだ知られていないと思う。直径が23cmほどもあるこの‘花王’というピオニーは、ご覧の通り、横のストレリチア(極楽鳥花)でさえ小さく見えてしまうほどの迫力と豪華さなのだ。極楽を超える花…。このくすんだピンクもとても高貴な色だと思う。 そして何よりもピオニーの魅力は、このどこまでも薄い花びらの美しさ。 その後、調子に乗って、普通はピオニーと一緒に写真に収める人はいないであろう、オージープランツのエレモフィラ・ニベアやグレヴィレア‘ロビンゴードン’、羊歯のディクソニアとも撮ってみた。とっても新鮮! もう一つ、ニューサイランと共に撮ってみよう。ニューサイランを引き立て役に、ピオニーを浮き上がらせてみた。 そして、もう一つの主役級の花、バラとも組み合わせてみた。 モッコウバラとも。 この‘花王’の実物を見たら、きっとロザリアンたちもピオニーに魅せられてしまうに違いない。バラが大人気の日本のガーデニングだが、流行にとらわれずにさまざまな植物に目を向けると、自分らしいガーデニングが楽しめるようになると思う。鉢の置き場を変えるだけで、雰囲気も大分変わる。 こんなことをやって遊んでいるうちに、ふと、これがガーデニングの醍醐味だな! と真面目に感じた。 花や植物を組み合わせ、より美しい世界を創り上げるガーデニング。オージープランツとピオニーを組み合わせることで誕生する、今までに見たことのない新しい風景。自分の個性や創造性で作るガーデニングの世界。海外の園芸雑誌に掲載された「牡丹」=「ピオニー」をきっかけに、確実に自分のガーデニングの楽しみ方の世界が広がったことを実感した。 ピオニーの育て方 さて、最後に、ピオニーの育て方に触れておこう。 バラの育て方をご存じの方は多いと思うが、植え付け・植え替え時期と、剪定時期以外は、ほぼ同じと考えていい。植え付け・植え替えは9月の彼岸過ぎから11月頃が適期、そして剪定は9月に行う。 バラ同様に水はけのよい土で、日当たりのよい場所で育てる。ただし、真夏の西日や真冬の寒風は寒冷紗などで防いだほうがよい。植え付ける際は、50cm程度の穴を掘り、腐葉土・堆肥などのほか、元肥も入れる。肥料食いなのもバラと同じなので、芽出し肥、花後のお礼肥、そして9月に追肥をする。 発生しやすい病害虫もバラと似ていて、うどん粉病、黒斑病、そしてカイガラムシがつくため、適宜殺菌剤を散布し、カイガラムシは歯ブラシなどでの処理をしよう。 育て方の難易度はバラ程度だと思うので、気軽に「究極の美しさを放つピオニー」を育ててみませんか?