食べ頃・採れ時を野鳥が教えてくれるミカンを、ぜひ庭で育ててほしい! と力説するガーデンプロデューサーの遠藤昭さん。自宅では、植えて25年になる温州ミカンの木に2022年もたくさんの実りがありました。家族も野鳥も愛犬も好物、自家栽培におすすめの温州ミカンの特徴や育て方のコツ、収穫体験について教えていただきます。
目次
野鳥も狙う⁉︎ 美味しい果物、ミカン
今年も庭のミカンの木に野鳥が集まるようになった。これは熟した証拠で、残りも早く収穫せねば! 我が家には、植えてから、かれこれ25年以上になるミカンの木がある。毎年、オレンジに色づいて自然の恵みを感じさせてくれる存在だ。庭にミカンの木を植えることをおすすめしたい。
自分が育てたミカンの木から、もぎ取ったばかりの果実の一房を口にしたときに広がる、甘酸っぱい快感は、至福そのものである。自分の庭で、大地や太陽の恵みを凝縮させた果実を口にするという行為は、自分も自然の中で生きている仲間であることを感じさせてくれるものだ。
果樹を育てるガーデニングの醍醐味
ガーデニングは植物を育て、その美しい姿や花を楽しむことがメインだが、果実を食べるという楽しみもある。「花より団子」というが、見るより食べるという人間の本能に訴える楽しみは、万人に対し、なかなかに説得力があり実感が伴う。
とかくガーデニングというと、視覚で楽しむ花ばかりに話題がいきがちだが、果樹を植えて結実させて味わうということは、子どもや男性にも分かりやすい楽しみ方であり、一方では果実栽培という奥の深い世界もあり、おすすめのガーデニングだ。
ひと昔前は、庭にレモンの木が植わっているとお洒落感もあって人気だった。私もかつてガーデンストーリーにレモンの記事を執筆したことがある。もちろん、レモンの木の人気は息が長いのだが、コロナ禍も3年目になり、ガーデニング=お洒落なライフスタイルという捉え方が少し変化してきたように感じている。
おうち時間が増えてガーデニングブームになり、人気なのは実用的な野菜づくりや、果樹栽培だ。このところの物価高の波もその実用路線を後押しし、より実用的なものに、お洒落感も移行しているように感じる。そんな時流にぴったりなのが、温州ミカンだ。
果樹栽培25年で確信した育てやすさダントツ1位
私の果樹栽培歴も25年。その間に、柿、桃、梅、梨、巨峰など、いろいろ挑戦してきたが、木が大きくなりすぎたり、虫がついたり、病気になったり……。正直、果樹栽培は素人には難しいと実感したが、そのなかでも、ほぼ放っておいても毎年確実に収穫できているのが、レモンとミカンである。
レモンも庭で採れるのは嬉しいが、そんなに大量には使い切れない。その点、ミカンは食べきれないほど収穫したとしても、不思議と食べきれてしまう。我が家は、この20年以上ミカンを買ったことがないほどだ。年金暮らしにとっては嬉しいことだ。
しかし、長年育てていると、デカいミカンを収穫してみたくなる。プロの農家は摘果をして、実の大きさを揃えたりしているが、正直、それは面倒なのでやっていない。だが毎年、1枝だけ摘果して大きなミカンづくりに挑戦している。
過去最高のビッグミカンの実績は322g。今年は307g。ちなみに、いただきモノのミカンで2Lサイズを測ったら148gだった。それでも、とてもビッグなのだ!
温州ミカンの成長を楽しむ四季
さて、ミカンは開花から熟するまで、どんな成長をするだろうか? それぞれに季節感があって、眺めていてウキウキするものだ。
まず、ミカンはどんな花が咲くでしょうか?「♪み~かんの花が咲いている~、思い出の道、丘の道・・・」という童謡があるが、これは5月中旬である。
そして6月1日になると、緑色のピンポン玉のような実が見られる。まだ、赤ちゃんで可愛い。
7月24日。つややかな緑の果実が雨に濡れて美しい。
9月27日には、すっかりミカンらしくなってきた。
10月17日には、多少黄色く色づき始めた。毎年、子どもの頃、初めてミカンを食べるのは運動会のときだった。「酸っぱい!」と感じた記憶が蘇る。でも、この時期の酸っぱいミカンもくせになる味なのだ。
10月21日になると、かなり色づいて、木の枝先も多少枝垂れて存在感が出てくる。
孫も野鳥も愛犬もミカンを楽しむ11〜12月
10月27日、収穫には少し早いタイミングだが、孫が来たのでミカン狩り。孫は初めてのミカン狩りに大興奮! 子どもには果物の収穫はいい経験になるだろう。ついたくさん採ってしまった。
11月になると甘みも増してくる。
枝ごと豪快に切り落とし、部屋の飾りにした。爽やかな香り。
そして甘みが増してくると、鳥がやってくる。毎年、全部は収穫しないで、小鳥用に残しておく。
リビングから見えるテーブルにミカンを置いておくと、メジロが毎朝ブレックファストに来る。
ミカンが好きなのは、人間や野鳥だけではない。我が家の愛犬は歴代、甘いミカンが大好きだ。朝、散歩から帰って喉が渇いたら、ミカンを1個、木からもぎ取って、私と分けて食べる。犬も美味しいものは知っているのだ。
収穫量の安定のために、やるべき2つの作業
庭で自然の恵みをたっぷり受け、実ったみかんは格別に美味しい。何といっても、あまり手間をかけずに、ほとんど放置状態で、毎年実ってくれるのが有難い。きっと、もっと世話をしたら、これ以上に立派なミカンが収穫できるかもしれないが、現状で十分満足だ。
ただ、私が必ずやっていることが2つある。
【必須作業1】
1月下旬~2月上旬に、ミカンの木の周りの地面に溝を掘り、発酵油粕の寒肥を与える。これは効果的。
【必須作業2】
3~4月に、徒長したり密集した枝を落とす。上から見たらドーナツ状になるように、木全体に太陽と風が当たるようにする。これは、メルボルンで家に来ていたガーデナーさんから学んだレモンの木の剪定方法だが、この方法をミカンに応用している。
育て方の本には、いろいろ難しいことが書いてあるように感じるが、まあ果樹栽培が素人の私にもできるのはこの程度。それでも毎年、たくさん実がなるので、これで満足だ。
素人にもできるミカンの栽培、始めてみませんか?
Credit
写真&文 / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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