えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
遠藤 昭 -「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー-
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
遠藤 昭 -「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー-の記事
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樹木
【四季を楽しむ花木】見直したい伝統の庭木「サルスベリ」
サルスベリとは Matthewshutter/Shutterstock.com 夏の花木といえば、代表格はサルスベリ。近年はさまざまな品種が出回っていて、洋風ガーデンでも人気が復活していることをご存じでしょうか。花が長期間(100日間も!)咲くので百日紅と書き、サルスベリ、またはヒャクジツコウと読ませます。サルスベリという名前は、木登りのうまい猿でも滑るほど幹がスベスベしているという意味でつけられたといわれています。 我が家のサルスベリには巣箱を設置しているので、シジュウカラが毎年、巣作りをして雛が飛び立つ姿が見られます。 花の色は主に赤、ピンク、紫、白の4色ですが、近年、交配品種の登場によって他の色も誕生しているので、今後もますます楽しみな花木です。 koro / PIXTA 赤花の代表的な品種である、‘カントリーレッド’。 昔ながらの代表的なピンクの花。 drsuntzu/Shutterstock.com そして、最近人気急上昇の紫系の花。 Flyingbird YF /Shutterstock.com 純白の花は、夏に涼しげです。 海外でも人気のサルスベリ サルスベリが咲き誇るサマーパティオ。Olesia Bilkei/Shutterstock.com さて、このサルスベリ、海外でも近年人気ですが、英名はCrape myrtleで、Monkey slipperとはいわないようです。そう、先進国で猿がいるのは日本だけで、ヨーロッパや北アメリカにはいないのです。Crapeは、夏のリラックスウェアでもあるステテコにもよく使われている素材のクレープのことで、つまりシワシワという意味。花弁がシワシワのmyrtle=ギンバイカといったところでしょうか。 dtateiwa/Shutterstock.com 花期が長く、なかなか優れた花木だと思うのですが、サルスベリ(百日紅)という日本での呼び名がイケテナイのか、今ひとつお洒落感に欠ける印象があるかもしれません。もともとをたどると中国の花木です。海外では、カリフォルニアのディズニーランドやスペインのグラナダでも見たことがあります。「Crape myrtle」で検索すると、欧米ではなかなかに有望視されている花木と見てとれます。 Linda Jensen/Shutterstock.com 特に画像検索で「Crape myrtle」を見ると、我々が持つサルスベリのイメージが変わるかもしれません。植物をネット検索する場合、日本名だけでなく、英名や学名で検索すると、素敵で新鮮な画像に出会えたりします。 日本では平凡なヤツデやアオキ、そしてモミジが海外で人気なのと同じように、サルスベリも国内より海外での評価のほうが高いように見受けられます。 以前、カリフォルニアのディズニーランドでサルスベリを見かけたときは驚きました。 そして、こちらがスペインのグラナダ・アルハンブラ宮殿の庭園で見かけたサルスベリ。素敵な剪定です。まさかスペインでサルスベリに遭遇するとは、驚きでした。日本ではサルスベリというと、コブを作る剪定が多いですが、スペインではこんな素敵な剪定をするんですね。サルスベリの枝は混雑すると曲がるといわれていますが、その性質をうまく利用した素晴らしい剪定です。 サルスベリが咲くアルハンブラ宮殿。Sergii Figurnyi/Shutterstock.com 海外旅行で日本の伝統植物に出会うと、なんだか嬉しいですね。 サルスベリのプロフィール 学名:Lagerstroemia indica英名:Crape myrtle和名:サルスベリ、ヒャクジツコウ(百日紅)科名:ミソハギ科属名: サルスベリ属原産地:中国南部、世界の熱帯各地に分布 原産地が中国南部で世界中の熱帯地域に分布していることから察せられますが、常緑樹ですが耐寒性もあり、日本や温帯地域では落葉する性質です。春に出る新芽はやや遅く、熱帯花木の名残が感じられます。 2階から撮った我が家のサルスベリ。 我が家には30年近くになるサルスベリが3本ありますが、夏中咲いてくれて、丈夫な優等生です。夏は屋外の草花の手入れが大変ですが、サルスベリのような花木は手入れがほとんどいらず、楽な点もいいですね。植えて30年近く経ち、今ではすっかり大きくなって2階から花が楽しめます。 ユーカリの木を背景にしたサルスベリもおしゃれ。 樹齢30年の我が家のサルスベリ 30年前というと、私はまだオージープランツにも手を出しておらず、ガーデニング初心者でした(30年前はガーデニングという言葉すらなかったですね。「ガーデニング」は1997年の流行語大賞です!)。ちょうど庭づくりを始めた頃で、植木屋さんで勧められたのが、このサルスベリです。現在ある我が家のその他の庭木は自分で植えたのですが、このサルスベリだけは植木屋さんに植えてもらいました。 30年も経過すると周りの樹木も変化して風景が変わり、面白いものですね。上写真は、左からネグンドカエデ、サルスベリ、ユーカリですが、下写真は、右側手前にレモンの葉、右にジャカランダの葉が見えます。いずれも2階からの風景です。2階から楽しめるのもサルスベリの魅力。 すっかり大きくなって、お隣に飛び出しそうな枝は切って壺に活けています。ただし、サルスベリは花弁が散りやすいので、屋内に飾るのは避けたほうがよいでしょう。我が家では玄関の外に置いています。 花屋に売っていない、自宅で咲いた枝ものを飾ることができるのもガーデニングの醍醐味。 サルスベリの花 街路樹などのサルスベリは、遠くて花の細部がよく見えません。上写真は房咲きのサルスベリですが、 近寄って観察してみると、花の間につぼみがあります。 花弁は6枚、黄色く一見雄しべに見えるのは昆虫を引き付ける役の「餌雄しべ」といわれるもの。さらに実際に受粉効果のある長い雄しべが6本、そして雄しべに紛れて、雌しべが1本です。面白い花ですね。 サルスベリの四季の移り変わり サルスベリは花だけでなく紅葉もきれいです。秋の青空に映えるサスルベリも風情があります。上写真は9月20日撮影。7月に咲き始め、本当に100日近く咲き続けます。 さらに2カ月ほど経った11月20日頃には紅葉します。 そして写真下のように、12月には落葉し、実が残ります。この実も魅力的で、クリスマスリースなどにも使用できます。 冬の実のアップ。 弥七 /PIXTA そして、冬は幹の美しさが目立ちます。猿が滑るほどの滑らかさなので、光沢感もあり、ともすると寂しい冬の庭の景色の中で、ひときわ幹の美しさが目を引きます。 我が家の冬のサルスベリ。 サルスベリの栽培ポイント Feng Cheng /Shutterstock.com ご紹介してきたように、夏の花に限らず、一年中魅力のあるサルスベリですが、最近は、街路樹にも多く利用されています。大きく育つとサルスベリの並木道も素敵になるでしょうね。 神奈川県某所の街路樹。 では実際に、庭木として育てるとどうでしょう。私が30年間育ててきた経験では、地植えして大きくなった成木は2月に剪定をするくらいで、特に水やりも施肥も不要です。 鉢植えでも育てていますが、日当たりのよい場所に置き、表土が乾いたらたっぷり水やりを忘れずに。鉢植えの場合は、2月に寒肥を施します。 なお、詳しい育て方は、以下の記事もご参照ください。 ●サルスベリ(百日紅)に注目しているあなたへ! これを読んで栽培に挑戦しよう うどんこ病が発生したバラ。Bunina Darya /Shutterstock.com 病害虫で、一つ注意したいのは、バラやキュウリにも発生するうどんこ病です。 6月頃に発生することが多いので、風通しをよくして用心しましょう。もし発生したら、早めに殺菌剤を散布するとよいでしょう。 Noel V. Baebler/Shutterstock.com サルスベリについて、知っているようで知らなかった発見があったでしょうか。一年中楽しめて、優雅で丈夫で長もち。ぜひ、お気に入りの花色を見つけて、あなたのお庭の仲間に入れてあげてください。きっと、これから長年にわたって、素敵でおしゃれな庭風景を演出してくれますよ。
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おすすめ植物(その他)
【プロが選ぶ】神秘的な美しさ! 育てたい魅力あるシダ“マストバイ”10選
人気が高まりつつあるシダ植物 NHKの朝ドラで放送中の、牧野富太郎さんがモデルになった「らんまん」のおかげで、園芸業界も少々活気づいているうえ、ドラマの中では、幾度か私の好きなシダ類が登場していて嬉しい日々です。 私自身も、コロナ禍で自粛していた旅行を4年ぶりに再開し、世界遺産白神山地・奥入瀬渓谷で大自然に触れ、特に多くのシダ類に巡り合うことができました。久々に「羊歯愛」が蘇ったこともあり、今回は、魅力的なシダをご紹介したいと思います。 奥入瀬渓谷に自生するシダ類。 大人シックなガーデンづくりにイチオシの「シダ」 シダというと、なんとなく日陰に育って花も咲かない、暗いイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、シダは4億年の悠久の歴史の中で磨かれた究極の美しさを見せてくれる植物。特に品種改良などもされず、大自然の神秘の美しさを届けてくれます。庭の中では、カラーリーフとも相性がよく、洋の印象が強いデルフィニウムやバラとも調和します。 園芸愛好家は、まず「花もの」の栽培から始めて、長い人生の中で行き着くところは、「素朴で渋い」部類にあたるシダだといわれます。私自身、シダの魅力に引き込まれたのは50歳を過ぎてからでしょうか? と言いながらも、30代の頃からシダは好きで、当時流行った観葉植物のアジアンタムやボストーンファーン(玉シダ)をマンションで育てていました。 20年以上にわたり、世界で最も権威のある園芸雑誌とされる、The Royal Horticultural Society(英国王立園芸協会)の機関誌『The Garden』を購読していますが、ほぼ完璧に毎号、シダの含まれる写真が掲載されています。もちろん、シダ特集もありました。かつて英国ではシダの大ブームもあり、ガーデンにおいて欠かせない存在となっています。日本のガーデニングブームは花いっぱいの路線で来てしまいましたが、もともと和の庭は樹木や葉ものが中心でしたし、シダもたくさん使用されています。今こそシダを見直してガーデニングにも活用すると、大人の雰囲気漂う、日本人の感性にマッチしたガーデンづくりができるかと思います。 なお、イギリスでのシダについては、以下を参考にしてください。 ●人気の木生羊歯「ディクソニア」イギリスでの使われ方 今回は、庭に植えて素敵! インテリアグリーンとしても楽しめる! 筆者の長い園芸人生の中で実際に育てた経験からおすすめのシダ10種をご紹介しましょう。 1.ディクソアニア・アンタルクティカ(学名:Dicksonia antarctica) オージープランツ愛好家として、まずおすすめしたいのは、ディクソニア・アンタルクティカです。ご覧のように、バラ咲く季節には新緑が綺麗です。もちろんディクソニア自体も美しいのですが、シダの柔らかな緑はバラをはじめとする花々を引き立ててくれます。 上写真のディクソニア・アンタルクティカは、28年前に胞子を輸入して育てたものです。オーストラリアの南東部、及びニュージーランドに自生する品種ですが、イギリスの庭でもよく見かけますし、もちろん自宅のある横浜でも越冬できる耐寒性のある木生羊歯です。ディクソニアはメルボルン駐在中に住宅街でよく見かけ、「カッコいいなぁ~」と魅了され、帰国後に胞子を個人輸入して育てました。 そうして育て続けた我が家のディクソニアは、28年の間に巨大化してしまいましたが、鉢植えなら巨大化は防げますし、部屋で観葉植物として育てることもできます。常緑で、寒さにも強く、葉も硬く、シダというよりヤシのようなイメージです。もちろん日向でも育ちます。 最近は、通販や大型の園芸店でも苗を入手することができます。巨大化して、あまりにもジャングル的になってしまったので、周りにジギタリスなどの草花を入れて、少し都会的雰囲気をプラスしてみました。 自生地の様子をご紹介しておきましょう。1枚目はメルボルン郊外のアルフレッド・ニコラスガーデン、2枚目が郊外のダンデノン丘陵の野生のディクソニアです。私は自庭のディクソニアを眺めては、このオーストラリアの雄大な庭や自然風景を思い起こしています。 ●オーストラリアの木生羊歯【オージーガーデニングのすすめ】 【育て方】 明るい日陰を好み、あまり暗くても発育が悪くなります。乾燥するオーストラリア原産といえども、南東部の湿潤な気候のユーカリ林の下草として育っていますので、鉢植えの場合には水は切らさないようにします。施肥も控えめに。 次に、日本の伝統的なシダを何種かご紹介しましょう。 2. クサソテツ(学名:Matteuccia struthiopteris) ジギタリスやツルニチニチソウとコラボしたクサソテツ。 おそらく、一般に庭で育てられているシダの中では最もポピュラーな種類だと思います。 名前のとおり、ソテツのような姿です。宿根草で冬は枯れてしまいますが、新緑の季節に、明るく繊細で綺麗な黄緑色の葉を広げます。単独の姿よりも、他の草花の引き立て役に重宝します。 デルフィニウムを引き立てるシダ。白やブルーの花が、いっそう鮮やかに見えます。 ハードでシャープな印象のアーティチョークのシルバーリーフとのコントラストが美しい。 なお、クサソテツは「コゴミゼンマイ」と呼ばれることもあります。若芽はコゴミという山菜の一つですが、コゴミとゼンマイとは別種。コゴミとは、小さくしゃがんだ姿を指す「こごむ」の意です。 【育て方】 もともと、森や林の湿潤な日陰に生えているため、乾燥と直射日光には弱いです。湿り気のある腐葉土たっぷりの土に植え、日陰から半日陰で育てましょう。肥料は控えめにします。 3.ニシキシダ(学名:Athyrium niponicum) 私はシダ類の中で、このニシキシダが最も美しいシダだと思います。英名がJapanese Painted Fernで、いかにも絵画的で美しいフォルムです。また、海外の園芸雑誌で最も多く登場する日本原産のシダが、このニシキシダ。外国でも好まれる色合いなのかもしれません。かれこれ鉢植えで20年以上育てていて、ほぼ放置状態でも枯れることなく育っています。 シダ全般にいえることですが、和風でも洋風でも風景に溶け込み、鉢植えを配置する場合、砂利の上でもレンガの上でも調和します。庭をお洒落に演出するのに、ぜひ1株欲しいシダです。冬には葉が落ちる宿根草。 【育て方】 国内に広く分布し、林床などに生えている場合が多いので、気候的には暑さにも寒さにも強いものの、鉢植えの場合は水切れに注意。 4.リョウメンシダ(学名:Arachniodes standishii) とても繊細な葉が展開する美しいシダです。地植えにして上手に育てると、株張りが60〜150cmにも達する大型のシダですが、我が家では写真のとおり鉢で育てており、草丈30cmで収まっています。 通常シダの葉の裏は、明らかに表とは異なる色形ですが、このリョウメンシダは、その名のとおりに、裏もまるで表のようです。冬には枯れる宿根草。 奥入瀬渓谷のリョウメンシダ。 自然散策にて先日出会った奥入瀬渓谷の野生のリョウメンシダはじつに見事で、まさかこんなにも大きく育つものだとは、それまで知りませんでした。このような群生を見たのも初めてで、その美しい大自然の姿に大感動。下写真は、山野草のヤグルマソウとのツーショット。奥入瀬渓谷は昼間でも木々が覆いかぶさり、かなり暗く湿っており、まさにこの環境がリョウメンシダの生育にぴったりなのだと納得。 奥入瀬渓谷で出会った山野草のヤグルマソウとリョウメンシダのツーショット。 【育て方】 日陰で湿った場所が適するので、直射日光や乾燥に注意。我が家のリョウメンシダは10年以上、鉢に植えっぱなしで育っていますが、鉢植えの場合は、2~3年ごとに鉢増し、または株分けをしたほうが調子がよいでしょう。施肥は控えめに。 5.マツザカシダ(学名:Pteris nipponica) プテリスという名で観葉植物として売られていることが多いですが、西日本原産の日本のシダです。 なお、プテリスは世界で約250種もあるとされ、観葉植物として売られるているプテリスは、必ずしもマツザカシダではない場合もあります。 常緑で耐寒性もあるヒューケラと一緒に下草として庭で使ったことがありますが、植栽の下草としても面白いと思います。ヒューケラのような使い方をするのもおすすめです。 それぞれのシダの特色を生かして、独自の使い方を考えるのも楽しいですね。 白い斑が暗い庭を明るくする効果もある。 【育て方】 シダなので日陰か半日陰で育てますが、我が家では雑草化しているほど丈夫なので、ほぼノーケアで育ちます。鉢植えの場合は、乾燥にだけ気をつけます。 6.トキワシノブ(学名:Davallia tyermannii) 日本では昔から夏の風物詩として出回る「つり忍」でもお馴染みのシダです。私が育ててきたシダ類の中で最強に丈夫なシダで、常緑で寒さ暑さにも強いです。一般には湿ったところで、直射日光にも当てないほうがよいとされていますが、我が家で写真のような板付けのハンギングにしているものは、直射日光に当てて乾いても、若干葉焼けする程度で枯れることはありません。なお、トキワシノブは、よく風鈴とともに軒下にぶら下げるので「ノキシノブ」と勘違いして広まっていると聞きますが、ノキシノブはこれとは別種です。 【育て方】 繊細な姿に反して強靭ですが、やはり美しく育てるには、直射日光や乾燥は避けます。 ハンギングの場合、水やりが難しいので、バケツに水を張ってその中にしばらく浸けると完璧です。 7.タマシダ(学名:Nephrolepis cordifolia) タマシダにもたくさんの品種があり、観葉植物としてネフロレピスという名で流通している場合が多いです。昭和時代にもハンギングの素材として流行したことがあり、根強い人気があります。 器を和風にすると和の庭にもマッチするし、ハンギングで洋風インテリアとして飾るのも素敵です。 Oraood/Shutterstock.com 【育て方】 いわゆるタマシダは日本原産の常緑種で、かつ冬の寒さにも強いのですが、ネフロレピスとして流通しているものは冬の寒さに弱い場合がありますので、屋内で越冬させます。 8.コウモリラン(学名:Platycerium) 近年、人気が続いているコウモリラン。ビカクシダともいわれますが、漢字で書くと「麋角羊歯」。つまり鹿の角のようなシダという名称で、シダの仲間です。英名は、「Elkhorn Fern」または「Common Staghorn Fern」で、こちらも共通して鹿の角という意味ですね。シダなのに、何故ランなのか? などなど、詳しくは以下参考記事をご覧ください。 ●個性的なビカクシダ(コウモリラン)をカッコよく飾ってみよう! 参考記事では壁掛けの作り方もご紹介しています。 【育て方】 ビカクシダの原生地は熱帯から亜熱帯地域で、ジャングルに生えている樹木に着生しています。つまり、ある程度の太陽光と気温、そして湿度を保つ必要があります。また、冬は屋内で管理します。ハンギングで育てることが多く、水やりの管理が難しいのですが、バケツに水を溜めて1分間ほど浸ける方法が簡単です。 ⚫︎個性的なビカクシダ(コウモリラン)をカッコよく飾ってみよう! 9.オオタニワタリ(学名:Asplenium antiquum) 紀伊半島を北限とするシダで、一般に観葉植物として扱われ、国内のほとんどの地域では鉢植えにして冬は屋内で管理します。一般的なシダの葉とは形状が異なり、光沢のある幅広の大きな葉が特徴です。常緑性なので、観葉植物として一年中緑の葉を楽しめ、人気があります。鉢植えでも上手に育てれば、葉の長さが1mほどの大株になります。 幅広の大きな葉が、オオタニワタリの魅力です。 コタニワタリ。 類似のシダとしてコタニワタリというものがあり、こちらは東北や北海道にも原生しています。寒さに強いので、庭で育てたい場合はコタニワタリがおすすめ。 【育て方】 オオタニワタリはシダとはいいながら、やや明るめの半日陰を好みます。夏の間は、木漏れ日の射すような場所だと管理がラクです。成長期には水をたっぷり与えましょう。 10.アジアンタム(学名:Adiantum raddianum) Tibesty/Shutterstock.com イギリスの園芸店でディスプレイに使われていたアジアンタム。 たしか45年くらい前に、私が結婚して入居したマンションで育てていた記憶があるので、かなり古くから観葉植物として人気でしたね。最近ではフラワーアレンジメントなどにも使用され、再び人気が出ているようです。小型で小さく繊細な葉が人気のシダで、流通しているのはさまざまな園芸品種です。 じつはベテラン向きのアジアンタム。Lja_Lja/Shutterstock.com 日本にもホウライシダが類似のシダとして自生しており、江戸時代から観葉植物として親しまれてきました。クジャクシダもホウライシダの一種です。下写真は、野生のクジャクシダ。 クジャクシダ。 【育て方】 とても繊細な葉で乾燥に弱いので、部屋で育てる場合は、水やりと同時に、1日に1回は葉に霧吹きをして湿度を保つとよいといわれています。 ここまで、イチオシ10種として、容姿の異なる魅力的なシダをご紹介しました。シダと一口に言っても、さまざまな姿と個性があり、ガーデニングやインテリアの素材としてもいろいろな使い分けができることもお分かりいただけたかと思います。 たくさんあるシダの中から、ぜひ、お気に入りの種類を育ててみませんか? きっと花の咲く草花とは違った神秘的な魅力を発見できると思います。 【オマケ】 バイオリンやチェロなど、弦楽器のフィドルヘッドと呼ばれる部分のデザインが、シダの新芽をモチーフにしていることはご存じですか? バイオリンの起源となる楽器は8世紀頃に作られたといわれていますが、その時代から、シダは知的な植物とされ、弦楽器のデザインにも使われたのです。
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おすすめ植物(その他)
【プロが選ぶ】ドライガーデン向き植物“マストバイ”7種+草花7種
ドライガーデンとは? Simone Hogan/Shutterstock.com ドライガーデンが最近人気だ。一般にドライガーデンというと、北米のメキシコや合衆国西部の乾燥地帯に育つ植物を基本にした、スタイリッシュなデザインの庭を指す。しかし、じつは、日本の伝統的な庭園形式である枯山水や、オーストラリアの庭でいうとドライリバーと呼ばれるものもその一つである。 枯山水の例。EWY Media/Shutterstock.com ドライリバーの例。Sheri Fresonke Harper/Shutterstock.com あくまで私見だが、流行の「ドライガーデン」は、やや画一的な印象を受ける。せっかく日本では恵まれた気候のもと、たくさんの植物が育つ条件が整っているのに、あえて、荒野の砂漠にしか育たない植物に限定するのはもったいない。いろいろな植物を楽しんだほうが面白い。 私の庭づくりのコンセプトは個性と創造性なので、流行の「ドライガーデン」を、少し日本の気候に合う豊富な植物を使って発展させてみたいと思う。 オーストラリアのドライリバー オーストラリア大使館のドライリバー。 ドライリバーという庭デザインについては、私自身、オーストラリア大使館の庭づくりに参画した際に、大使館のガーデナーがデザインしたものを見て知ることになった。 このとき、初めて、ドライリバーという造園手法を知った。ドライリバーとは、水の流れない乾いた川だ。そこに橋をかけ、ドライリバーの縁にはカンガルーポーや、グレヴィレア‘ロビンゴードン’を植えた。 ちょっと、日本の枯山水に近い発想かもしれない。 またメルボルンでは、長年、慢性的な水不足という深刻な事情から、散水の不要な「ドライガーデン」が以前から推奨されているので、ドライリバーは、ドライガーデンのいわば先輩格といえるだろう。今回は、単に流行のドライガーデンにとどまらない、季節感や潤いをも感じられる、日本風ドライガーデンを提案したいと思う。 メルボルンのドライガーデン実例 オーストラリア、メルボルンにあるロイヤル・ボタニカル・ガーデン(ビクトリア州王立植物園)。Javen/shutterstock.com 私がかつて5年間住んだメルボルンは庭園都市とも呼ばれ、緑豊かな街ではあるものの、じつは夏の水不足で、ドライガーデンがずいぶん前から推奨されていた。メルボルンの植物園の一つ、ロイヤル・ボタニカル・ガーデンでは、ドライガーデンの見本エリアがあった。そこに植わる植物を、まずは見てみよう。 手前に植えこまれた黄花が咲く茂みは、クリソセファラム(chrysocephalum apiculatum)という、乾燥に強い植物だ。ゴロゴロと岩や自然石が配置された奥には、ユッカやアガベが見られる。 グレーの石肌に色を添えている緑や銅葉は、リューゼツランや、アガベ・アテナータ、ニューサイラン、コルディリネなどだ。 小高い斜面地にユッカ・ロストラータやソテツなどが大きく育ち、手前にはオージープランツのウェストリンギア‘スモーキー’なども見える。 コルディリネ‘’レッドスター’と黒法師。このような植物は、街中の植栽としてもよく見かける。 メルボルンには数々の公園があるが、なかでもフィッツロイ公園は150年の歴史があり、各所に素敵な植栽がなされている。 そこにもドライガーデンのエリアがあり、白い化粧砂の地面に浮かび上がるように、アガべ・アテナータ、ニューサイラン、ユッカ・グロリオーサ、黒法師などが植っている。これらドライ系の植物を背景にして、マリーゴールドやケイトウが咲き、華やかな雰囲気になっている。 クランボンのボタニカル・ガーデン。 ご紹介したメルボルンのロイヤル・ボタニカル・ガーデンとは別に、十数年前に、クランボンという郊外に新しいボタニカル・ガーデンをオープンさせた。植物園という割にはドライな風景だ。 クランボンのボタニカル・ガーデン。 アガパンサスも、メルボルンではよく見かける植物だ。 メルボルンのドライガーデンをダイジェストでご紹介した。今、日本で流行しているドライガーデンでもよく使われているアガベやユッカ類などは、ほぼ共通しているが、メルボルンでは草花と組み合わせて華やかで、潤いも感じさせている。 これは、日本でドライガーデンをつくる際のヒントになるだろう。 さて、「ドライガーデン」と呼んでいいのか判らないが、我が家は、ユッカやアガベ、コルディリネに加え、オージープランツのグレヴィレアや、南アフリカ原産のリュウカデンドロン、さらには、アガパンサス、ヘメロカリス、ジャカランダなどを植え込み、季節感と華やかさを表現している。 季節によっては、鉢植えのアガベ系を寄せ鉢状態にしたりして楽しんでいる。 以上、オーストラリア大使館、メルボルン植物園、そして拙宅のドライガーデンをご紹介したが、上記に使用されている植物を7種と、それを引き立てる草花7種をご紹介したい。また、今回はドライガーデン用の植物としての紹介だが、日本の庭でも一般に育てられているものなので、あえて我が家に育っていることを示す写真を中心にご紹介したいと思う。 ドライガーデンのマストバイ7選 ① ユッカ・ロストラータ ドライガーデンの定番とでもいうべき地位を確保した人気の植物だ。 耐寒性は強いが、地植えにする場合は根株の下に軽石を敷いて、水はけをよくしておくこと。もともとメキシコの乾燥地帯で育つ植物なので、日当たりのよい場所で育てて、過湿や多肥に要注意。 ② アガベ・アテナータ あまりトゲトゲしておらず、優雅でカッコいい草姿。やや耐寒性が他のアガベに較べて劣るものの、神奈川・横浜では寒冷紗をかければ越冬する。一般的な草花とも相性がよい。 ③ アガベ・アメリカーナ(斑入り) これもドライガーデンの代表格。古くから日本でも普及していて、耐寒性もあり丈夫。成長が早く、かなり大きくなる。葉先が鋭いので、通路にはみ出ないようにするなど、植え場所に注意が必要。斑入り種が明るい印象となる。 ④ アガベ‘ハクセンコウ’ 丈夫で育てやすく、成長も早い。強い霜にあたると傷むので、寒冷紗で保護するほうが無難。地下茎で子株が増え、親株の周りに多数生えてくる。植えて3年で10株ほどになり、株分けができるのもお得。 株分けしたアガベ‘ハクセンコウ’。 ⑤ コルディリネ‘トーベイダズラー’ コルディリネはニュージーランド、オーストラリア原産。 バリバリのメキシコ原産系のアガベに比べると、葉の色もさまざまあって、優雅でエキゾチックな庭が演出できる。 写真の品種は、葉の縁に白いラインが入り、明るく都会的な印象だ。 参考記事/『スタイリッシュな庭づくりに必須「コルディリネ・オーストラリス」【オージーガーデニングのすすめ】』 ⑥ ニューサイラン‘レインボークィーン’ ニュージーランド原産でコルディリネに似ているが、樹木ではなく草なので、幹はできない。 ニューサイランにはさまざまな品種があるが、写真の‘レインボークィーン’は明るく華やかである。 参考記事/『「ニューサイラン」スタイリッシュな植栽に不可欠な葉物【オージーガーデニングのすすめ】』 ⑦ 黒法師 ドライガーデンに向く植物はツンツンした葉が多いなかで、黒い花のような草姿は、カッコいい系ではありながらも、柔らかな印象を与えてくれる。 春に黄色い花が咲き、季節感もある。強い霜を避けるために、冬は寒冷紗などで保護する。 参考サイト/『多肉植物の黒法師(クロホウシ)がカッコいい季節到来!』 上記7種に共通する育て方のコツは原産地に学ぶことから考えると、メキシコとオーストラリアとで差はあるものの、いずれも日本に比べればどちらも乾燥地であることから、日当たりと水はけのよい土壌であることが必須条件になる。比較的耐寒性は強いが、強い霜にあたると傷むことがある。地植えにする場合は、植え付け前に根株の下に軽石を敷いて、水はけをよくしておくこと。 日本のドライガーデンに加えたい草花マストバイ7 上記で選んだ7種を主役として、日本の季節感や潤いを演出する脇役植物として、草花マストバイ7種をプラスαでご紹介しよう。これらも、乾燥に強く、ドライな環境下でも育つ植物たちだ。 ① アガパンサス 南アフリカ原産で、乾燥にも強く、一度植えれば毎年ブルーの花を梅雨時に咲かせてくれるので、ドライガーデン用の植物にもマッチするイチオシの植物だ。日照が十分でないと花数が減る点は注意。 参考記事/『長寿の宿根草「アガパンサス」【オージーガーデニングのすすめ】』 ② へメロカリス デイ・リリーとも呼ばれる、東アジア原産の球根植物。ニッコウキスゲなどの仲間だが、ヘメロカリスと呼ばれる品種群はアメリカで改良されて逆輸入されたもので、原種よりも華やかな花が多い。乾燥にも強く丈夫で、これも一度植えると毎年、6~7月に開花する。 参考記事/『令和に期待の花「ヘメロカリス」魅力と育て方』 ③ ローズマリー Maren Winter/Shutterstock.com 潤い感を出すために、香りがある植物で、花も楽しめ、乾燥に強いという条件を満たすのがローズマリーだ。一株あれば、料理にも使用できて、庭のある楽しみが増す。 ④ ネリネ 花の少ない秋に長く咲いてくれる、別名ダイヤモンドリリーとも呼ばれる球根植物。ただ一つ、強い霜にはあてないようにすること。 ⑤ オステオスペルマム 春と秋に開花する南アフリカ原産の宿根草で、丈夫。日当たりと水はけのよい場所で育てる。 ⑥ マリーゴールド 夏の暑さに強い定番の一年草。オレンジと黄色が元気の出るビタミンカラーだが、色合いを控えめにしたい場合はクリーム色がおすすめ。花がら摘みと施肥をしっかりすると、次々と秋まで咲き続ける。 控えめカラーのマリーゴールド。 ⑦ ベラドンナリリー(アマリリス) Zidan - Dailer/shutterstock.com 一般にアマリリスと呼ばれるのは、幅広い品種が含まれますが、ドライガーデンにおすすめしたいのは8~9月ごろ開花するホンアマリリス(Amaryllis belladonna)とも呼ばれる、ベラドンナリリー。 Tisha Razumovsky/shutterstock.com 南アフリカ原産で、乾燥に強い球根植物。花後に葉が伸びて越冬し、初夏に落葉する変わったライフサイクルで庭を彩ってくれる。 流行のドライガーデンにひと工夫プラスして、オリジナリティと創造性を発揮した、日本ならではのドライガーデンに挑戦してみよう!
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樹木
【プロが選ぶ】大注目! 密かにブーム到来中の新感覚な庭木 “マストバイ”7選
感度の高い人々が選ぶ先端の庭木 スモークツリーとアカシア。 趣味のガーデニングが高じて、定年退職後専門学校に通い、プロのガーデナーとなった。それから既に10年以上になるが、私のガーデニングはオーストラリア原産の「オージープランツ」が中心である。そして、仕事をしてきたなかで、オージープランツを好む客層は、かなり先進的なライフスタイルを好む人々であると感じている。お客様は、在日のイギリス人やオーストラリア人、海外生活経験者、そしてパイロットや海外出張の多い人、あるいはデザイナーや感度の高い職業の人などさまざまだ。 私が選ぶオージープランツの庭木の記事も参考に。『庭木におすすめ! オージープランツ“マストバイ” 7選』 そんな彼らから学ぶことはたくさんあるのだが、特にオージープランツと同時に注文をいただく樹木が、とても興味深い。私自身が密かに、「これ、いいなあ~」と思っている樹木がズバリ、注文されることが多いのだ。それも一人ではなく、カブる。こうした樹木の多くは、私が海外旅行などで目にして気になったもので、注文主のきっかけも、やはり“海外で見て”欲しくなったというケースが目立つ。ある意味、彼らが選ぶ樹木は世界の先端を行くものたちなのだ。 今回は、そんな先端的でマストバイな樹木を7種ピックアップしてみよう。 おすすめ①西洋ニワトコ‘ブラックレース’ 黒葉の西洋ニワトコを初めて目にしたのは、約15年前のオーストラリア旅行でのこと。私にとって「一目ぼれ」で、ネームタグを写真に残し、帰国後に探したが、日本では当時入手できなかった。 その後、5年前にイギリスのガーデン巡りのツアーで再会し、やはりカッコいいなあ~と写真を撮ったが、日本では入手できないモノと思い込んでいた。 ところが昨年、ベテランガーデナーのお客様から西洋ニワトコの注文をいただき、遅ればせながら国内でも流通していることを知った。 その後、ほかのお客様からも西洋ニワトコの注文をいただき、いろいろ調べてみると、いまアメリカで人気らしい。黒葉の庭木としては、20年くらい前にネムノキ‘サマーチョコレート’が話題になったことがあったが、この西洋ニワトコや後述するスモークツリーなどにも黒葉種があり、これから人気が出ると確信している。 学名:Sambucus nigra ‘Black Lace’別名:西洋ニワトコ、エルダーフラワー科名:スイカズラ科原産地:ヨーロッパ、北アフリカ分類:落葉低木 【育て方】 日当たりのよい場所、あるいは明るい半日陰でも育つ。肥沃な土壌を好むため、鉢植えの場合は赤玉6:腐葉土3:堆肥1の割合でブレンドした用土に植え付け、成長期に追肥を施す。西日は避けたほうがいいだろう。落葉樹なので、剪定は落葉の2月末ぐらいまでに済ませよう。 おすすめ②ロシアンオリーブ Whiteaster/Shutterstock.com ロシアンオリーブとの初めての出会いは、4年前の中央ヨーロッパ旅行だった。まずハンガリーで見かけ、シルバーリーフのオリーブのようだと思い、そのしなやかな枝ぶりが印象に残った。その後、スロバキアやオーストリアでも目にした。 旅行中、ガイドさんに尋ねたが、樹種は不明だった。帰国後に調べ、ロシアンオリーブであることが判明。一見オリーブに似ているが、じつはグミ科の植物なのだ。 ロシアンオリーブのよいところは、寒さに強いことである。一般的なオリーブの耐寒性はマイナス3℃程度とされているが、ロシアンオリーブはマイナス20℃ともいわれる。グミの仲間なので、実った果実はジャムにして食べることもできる。 ロシアンオリーブの花。 学名:Elaeagnus angustifolia別名:ヤナギバグミ、ホソバグミ科名:グミ科原産地:中央アジア分類:落葉樹 【育て方】 丈夫で耐寒性もあり育てやすいが、成長が早いため、剪定はマメにしたほうがよい。 地植えにする場合は日当たりのよい場所に植える。 鉢植えの場合は、水はけのよい土(例:赤玉7、腐葉土3)を使用し、表土が乾いたらたっぷりと水を与える。施肥は地植えの場合は不要だが、鉢植えの場合は2月に緩効性化成肥料か発酵油かすを与えるとよい。 害虫はアブラムシが発生するので、オルトランなどを散布して対処する。 おすすめ③スモークツリー スモークツリーはかなりポピュラーな部類だが、さまざまな品種があり、まだまだ人気の出る庭木だと思う。日本ではあまり大木は見たことがないが、海外に行くと驚くほどの大木に出くわして、「カッコいい~」と思う。私が見たのは、イギリスのコッツウォルズ。スモークツリーがこんな高木になるのに驚いた。 スモークツリーの魅力は、言うまでもなく煙のようなふわふわとした不思議な花だが、銅葉の品種もあり、花の咲かない季節も庭木として魅力的である。 スモークツリーは、アカシア・ブルーブッシュなどのシルバーリーフと合わせるとカッコいい。紅葉も綺麗だ。 学名:Cotinus coggygria別名:ケムリノキ、カスミノキ科名:グミ科原産地:南ヨーロッパ~中国分類:落葉樹 【育て方】 スモークツリーは、日当たりと水はけのよい場所に植えるとよい。比較的、横にも広がりやすいので、植えるときにスペースを確保しておこう。寒さ暑さともに強いので、育てやすいが、原産地が南ヨーロッパなので、乾燥気味に育てたほうがよいだろう。 おすすめ④シルバーティーツリー 最近、オージープランツブームで、庭木にメラレウカやユーカリ、ブラシノキなどが使用されることが増えてきた。メラレウカやブラシノキは育てやすく、おすすめだが…ちょっとポピュラーになりすぎた感じがする。ティーツリーというとメラレウカを指すが、今回取り上げたシルバーティーツリーはメラレウカではなく、レポトスパルマム、分かりやすく言うとギョリュウバイと同じ仲間である。 シルバーティーツリーの魅力は、なんともいえない細長く美しいシルバーグリーンの葉だ。しなやかな枝がそよ風に揺れる姿には、とても癒やされる。そしてギョリュウバイのような可愛い花を咲かせる。東オーストリア原産なので日本でも育てやすく、寒さにも強い。 シルバーティーツリーの花。Cheng Wei/Shutterstock.com 学名:Leptospermum brachyandrum別名:ウィーピング・ティーツリー科名:フトモモ科原産地:オーストラリア・ニューサウスウェールズ州分類:常緑低木 【育て方】 オージープランツなので、日当たりのよい場所で水はけのよい土を使用するのは定番だが、意外と乾燥に弱いので、鉢植えの場合、水切れには注意が必要。 おすすめ⑤ジャカランダ この数年、急に人気が出てきた庭木だ。葉も花も美しく、世界三大花木としても有名だ(他の2種はカエンボクとホウオウボク)。以前は寒さに弱いとされてきたが、太い木になるとマイナス3℃程度までは十分に耐えるようである。「ジャカランダフェスティバル」が開催される熱海が、近年ジャカランダの名所として有名だ。 「熱海ジャカランダフェスティバル」にて。 実生苗だと開花に10年以上かかるといわれるので、花を楽しみたいなら接ぎ木苗を買うことをおすすめする。観葉植物として売られているジャカランダは、鉢植えのままの開花は期待できない。 earlyg/Shutterstock.com ブリスベンのジャカランダ。こんなに巨大に育つので、一般家庭には矮性品種をおすすめする。 ジャカランダに関しての記事もご参照いただきたい。 学名:Jacaranda別名:キリモドキ科名:ノウゼンカズラ科原産地:中南米分類:落葉樹 【育て方】 寒さには比較的強く、東京以西の太平洋岸では露地植えが可能だが、厳しい寒さの年は枝が傷み、細い枝は枯れこむ。大きな木になると耐寒性も出てくるが、苗木のうちは鉢植えで育て、冬は屋内に取り込むか、軒下や霜のあたらない場所で越冬させるほうが無難。 日当たりと水はけのよい場所で育てる。つぼみにアブラムシが付きやすいので注意。肥料は、成長期に液肥を2週間に1度程度与える。 おすすめ⑥アカシア・コグナータ えっ? これがミモザの仲間? と驚くほど優美な樹形。ヤナギのように枝垂れる姿が特徴的だ。多くの人が、まだ見たことがないであろう、期待のアカシア・コグナータである。現物を見たら、きっと惚れ込んでしまうに違いない美しさだ。風にそよぐ姿は、見ていて本当に癒やされる。花色は上品なクリームイエロー。 アカシア・コグナータの花。 アカシアの仲間はオーストラリアだけでも700種以上あるといわれるが、私は最も美しいアカシアだと思う。オーストラリア南東部の原産なので、比較的日本でも育てやすい。 学名:Acacia cognata別名:リバーワトル科名:マメ科原産地:オーストラリア南東部分類:常緑低木 【育て方】 一般のオージープランツ同様に、日当たりと水はけのよい場所で育てる。栽培の際は支柱を必ず立てること。耐寒性は比較的あるが、強い霜にはあてないほうがよい。樹形の問題か枝が密集すると枯れこむことがあるので、風通しがよくなるよう剪定を行う。カイガラムシが発生しやすいので注意。肥料は控えめでよい。 おすすめ⑦グレヴィレア・エレガンス オージープランツブームの中でもグレヴィレアは人気だが、その中でも有望株が、このグレヴィレア・エレガンス。名前の通りエレガントな樹木だ。グレヴィレアの花は、咲いてすぐに散ってしまう品種が多いが、このエレガンスは花もちがよい。開花時は赤だが、日々ピンクに変化してゆく。Grevillea longistyla とG. johnsonii の交配種で成長が早く、丈夫で高さ4m程度になる。シンボルツリーにぴったりだ。 2週間くらい経ってもほとんど色褪せない。 雨に濡れる細い葉も美しい。 学名:Grevillea longistyla x johnsonii 、 Grevillea ‘Elegance’科名:ウアマモガシ科原産地:オーストラリア東部分類:常緑樹 【育て方】 一般のオージープランツ同様に、日当たりと水はけのよい場所で育てる。耐寒性は比較的あるが、強い霜にはあてないほうがよい。病害虫はめったにない。成長が早いので、地植えの場合はスペースを確保しておくこと。鉢植えの施肥は、リン酸分の少ない肥料を控えめに。地植えの場合、肥料は不要。 成長すると大きく育つ。Hans wrang/Shutterstock.com 今回ご紹介した7種は、いずれも葉や花、全体の姿にも個性があって、毎日眺めても見飽きない、これから日本での人気が期待できる樹木です。一足先に、新感覚な庭木をガーデンに取り入れてみませんか?
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宿根草・多年草
【実録!】丈夫で長生き! 20年間開花経験アリの宿根草マストバイ7
1 アガパンサス 我が家の宿根草の最優等生は、なんといってもアガパンサスである。 以前も「20年間育てて判る宿根草の醍醐味」と題して、アガパンサスをご紹介した。 今年で栽培して28年目。思い起こせば、私が庭づくりを始めてすぐの頃、小さなビニールポットに植わるアガパンサスを買い、まずは鉢植えで育て始めた。みるみる成長し、数年後には直径50cmほどの大鉢に植え替え、それからなんと20年くらい、そのまま植えっぱなしだったのだ。 さすがにこの数年、花付きが悪くなり、昨年、思い切って株分けをした。毎年、春先に、発酵油カスと鶏ふんを与えた程度で、水やり以外は、本当に植えっぱなし。開花時期以外は庭の隅でほぼ放置状態だった。それでも、立派に毎年咲いてくれている。なんて手がかからない子だろう。 大きな鉢でも育つので、ベランダ園芸でもダイナミックな演出ができるはず。 2 ヘメロカリス へメロカリスは、日本ではあまり普及していないが、オーストラリア、メルボルンではよく見かけた。20年くらい前にメルボルン・フラワーショーに行ったとき、ヘメロカリスの専門店があって、2株ほど購入し、今でも元気だ。 アガパンサスと同じく、鉢植えでほとんど放置状態でも大株に育ち、毎年、たくさんの花を咲かせてくれる。 ヘメロカリスの詳しい育て方については『令和に期待の花「ヘメロカリス」魅力と育て方』をご覧いただきたい。当時、新年号発表の頃で、「令和に期待の花」と記した。ぜひ、丈夫で長もちの宿根草へメロカリスに引き続き期待したい。 3 シュウメイギク 秋を代表する花で、名前はシュウメイギク(秋明菊)だが、じつはキク科ではなくキンポウゲ科である。 何を隠そう、我が家にある植物のほとんどは28歳。つまり、1995年に庭づくりを始めて、最初の2年間くらいで庭中が植物で覆い尽くされ、新しい植物を入れる余地が無くなったのである。 このシュウメイギクも確か28歳。もう高齢であるが、宿根草の中でも最も安定して毎年咲いてくれる花だ。すっかり、我が家の秋の庭の定番となった。毎年、同じ頃に同じ花が咲く庭というのは、安心感がある。長年、園芸をやっていると、次第に冒険して新しい植物を育てることも減っていくのもあるが、庭は庭主が安らげる場所であるのが一番だと思い至る。 丈夫で育てやすいが、夏の西日に弱いので、半日陰程度の場所に植えるとよい。また地植えでも乾燥には要注意。花が太陽の方向を向いて咲くので、植える場所によっては花が見えにくくなるので気をつけよう。肥料は少なめのほうが、本来の山野草らしい姿に育つ。 4 クリスマスローズ 毎年、新しい品種が出回り、ずいぶん長いこと人気があるクリスマスローズだが、植えっぱなしで育てる場合は、昔ながらの一重で素朴な花が咲く品種が特に丈夫で長もちするようである。我が家のクリスマスローズの多くは、他の宿根草同様に25年以上経っており、こぼれ種でも育っている。 種を採取して育てたことも。自家採取で育てることは楽しいです。 クリスマスローズを植えるときに注意したいのが、通路に面したところに植えたほうが花を観賞しやすいということ。また、地植えでも数年ぐらい経つと根が固まり木質化するので、できたら、2~3年で株分けをしたほうがよい花を咲かせる。なんといっても、花期が長いのが魅力。 季節ごとの育て方のコツは、「平成園芸を彩った三種の神器「バラ」「クレマチス」「クリスマスローズ」」を参照してください。 5 アカンサス 写真左のギザギザの葉がアカンサス。 多くの宿根草は、春に芽生えて花を咲かせ、秋には地上部は枯れるものが多い。しかしアカンサスは、地中海性気候に育つ植物なので、5月頃に花を咲かせて、夏枯れする。 そして、秋から新芽が出て、真冬は美しい緑の葉を湛える。真冬に嬉しい美しい緑だ。我が家で20年以上放置状態のまま育っている元気者だ。 アカンサスの葉は60cmほどに伸びるので、株の直径は1m以上になる。花茎は180cmほどの高さまで伸びるので、育てる際は、ある程度のスペースの確保が必要だ。育て方は、「イングリッシュガーデンの名脇役「アカンサス」の魅力と育て方」を参照してください。 6 エリゲロン 我が家の庭には、オーストラリア原産のいわゆる「オージープランツ」が多いが、メルボルンに住んでいたとき、庭に生えていた思い出の欧米の草花も多い。このエリゲロン・カルビンスキアヌス(Erigeron Karvinskianus)も、その一つ。 メルボルンの家の門からガレージに至る10m程度の車寄せの両脇に茂って、たくさんの花を咲かせていた。 コンクリ―トの、ほんの少しの隙間にも生える。上写真は、擁壁の隙間に咲いている写真。こぼれ種でも生えて、雑草のように強い。ハルジオンやヒメジョオンの仲間で、雑草っぽいが、その飾らぬさりげなさが可愛い。 ちょっとした隙間を埋めるのに最適だ。幅5cm程度あれば、ご覧のようにボリュームが出る。本当に雑草のような丈夫な性質の植物なので、増えすぎたら抜けばよいし、放置していても十分咲く。 7 ホスタ(ギボウシ) 最後に選んだのは、新緑が美しく、日陰でも育ってくれる、丈夫で長もちのホスタだ。 シェードガーデンの優等生とでも言おうか。日本に古くから自生している植物で、株分けでどんどん増える。園芸仲間の間では株を交換したりして、知らず知らずの間に増えてしまうホスタである。 我が家でも自分で購入した記憶はないのに、10種くらいのホスタが生息している。いずれも、育て始めて20年ほどは経っており、株分けをしては知り合いにプレゼントしたりしている。 仲間内で交換したりすると、問題は品種名が不明の場合が多いこと。実際、我が家のホスタも品種がはっきりしているのは、「寒河江」くらいで、ほかは不明。まあ、品種が判らなくても、美しさには変わりないので、良しとしている。 夏の直射日光や西日は、葉焼けを起こすので避けたほうがよい。適した場所は、半日陰から明るい日陰。 株分け、植え付けや植え替えは、休眠中の2〜3月に済ませる。夏を除く成長期には施肥を。鉢植えの場合は、水切れしないようにするのが注意点だ。 オージープランツのカンガルーポーとコラボするヘメロカリス。奥にはアガパンサスの青も。 アガパンサス、ヘメロカリス、シュウメイギク、クリスマスローズ、エリゲロン、アカンサス、ギボウシの7種は、自分が20年間育てた経験のある、マストバイ宿根草です。葉や花が造形的で少し大ぶりの宿根草が多いですが、庭の景色を引き締め、季節ごとにフォーカルポイントになってくれる頼もしい植物です。ぜひ、長く付き合える宿根草を仲間に入れてみてください。
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樹木
【プロ選出】庭木におすすめ! オージープランツ“マストバイ” 7選
オージープランツ大ブーム到来 S.O.E/Shutterstock.com このところオージープランツがブームである。カフェやレストラン、ショッピングモールなど昨今の新店舗の植栽は、必ずといっていいくらい、オージープランツが植えられている。 しかし、夏に蒸し暑く、冬は寒い日本では育てにくいものが多くあり、庭木には向いていない品種も出回っているというのが栽培経験者としての実感だ。そこで、さまざまオージープランツの中から、初心者でも安心して育てられるうえ、魅力的なマストバイ7選をご紹介しよう。選んだオージープランツは、神奈川県横浜の狭い我が家の庭で約20年、地植えで育ててきた経験に基づいている。 おすすめ① グレヴィレア 最近人気上昇中の‘ピーチ&クリーム’。 最近、オージープランツで特に人気なのがグレヴィレアだ。この数年で流通する品種も増え、手に入れやすくなった。オーストラリアには、約250の品種が分布しており、高木になる品種、低木や匍匐(ほふく)性などさまざまな形状と花の色が存在する。そのため、苗で購入する場合は、成長が進んだ将来的な樹高もチェックしておくこと。ロブスタ、‘ムーンライト’などは、成長が早く高木になるので、狭い場所には向かない。 <基本データ> 学名:Grevillea和名:グレヴィレア英名:Grevillea科名 : ヤマモガシ科属名: グレヴィレア属原産地:オーストラリア <参考記事> ●春夏秋冬一年中咲く! 驚異の花木「グレヴィレア‘ロビンゴードン’」 ●ファッショナブルな花木、グレヴィレア‘ムーンライト’に注目 ●人気急増中のオージープランツ「グレヴィレア」 ズバリ、この品種がおすすめ!グレヴィレア‘ロビンゴードン’ Grevillea 'Robyn Gordon' 我が家で25年以上、元気に育っているのが‘ロビンゴードン’である。我が家の看板娘でもある。オーストラリアでも1973年に品種登録されたGrevillea banksii × Grevillea bipinnatifidaの交配種で、最もポピュラーな品種だ。 グレヴィレアのみならず、オージープランツを選ぶときに欠かせないのが「耐寒性」である。最近、人気の‘ピーチ&クリーム’、‘ココナッツアイス’なども耐寒性があって魅力的だが、‘ロビンゴードン’は、やはり25年以上、横浜の庭で地植えで元気に育ってきたという実績がモノをいう。 おすすめ②カリステモン カリステモンは日本での栽培の歴史は古く、キンポウジュ(金宝樹)という名で明治時代から育てられてきたオージープランツの最古参だが、ほとんどが赤花の品種だった。最近はさまざまな花色が流通している。ホワイトやグリーンの花の咲く品種も出回っており、それらも魅力的だ。オーストラリアでは、花の蜜が小鳥を呼び寄せる庭木として人気だ。 <基本データ> 学名: Callistemon和名:金宝樹(キンポウジュ)、ブラシノキ、ハナマキ英名:Bottlebrush科名 :フトモモ科属名:マキバブラシノキ属(カリステモン属)原産地:オーストラリア <参考記事> ●ブラシノキで鳥がさえずる心地の良い庭づくり ズバリ、この品種がおすすめ!カリステモン‘ピンクシャンパン’ Callistemon speciosus ‘Pink Champagne’ おすすめは何といっても、四季咲き品種のカリステモン‘ピンクシャンパン’だ。日本に古くからあるキンポウジュは、1年に1度しか咲かない(まれに秋にも開花することがある)が、この‘ピンクシャンパン’は5月頃から12月上旬まで、淡いピンクの花を咲かせ続け、我が家では25年以上、楽しませてくれている。暑さ、寒さに強い丈夫な品種で、比較的成長が早いが、剪定にも強く、整枝しやすいのもよい。 おすすめ③メラレウカ 左/メラレウカ‘レッドジェム’ 右/メラレウカ‘レボリューションゴールド’ 最近、庭木に大人気なのが、ティーツリーと呼ばれるメラレウカ。常緑で小さな葉をつける繊細な枝ぶりで、葉の色もさまざまある。主張が強くないので、狭い庭にも取り入れやすい。葉の香りが甘くフルーティな‘レボリューションゴールド’や、葉色が美しいシルバーティーツリー、秋から冬に葉が銅色に変色する‘レッドジェム’など、おすすめしたい品種はたくさんある。育てやすくて、これからの庭木に最も有望なオージープランツだといえる。 <基本データ> 学名:Melaleuca和名:メラレウカ英名 : Melaleuca 科名:フトモモ科原産地:オーストラリア <参考記事> ●アロマオイルでもおなじみのティーツリーを育ててみよう ズバリ、この品種がおすすめ!メラレウカ‘スノーインサマー’ Melaleuca linariifolia ‘Snow in Summer’ alybaba/Shutterstock.com 花の量感で選ぶなら、‘スノーインサマー’。名前の通り、夏に雪が降ったように樹冠が白い花で覆われて、それは見事だ。 おすすめ④ウエストリンギア ウエストリンギア‘スモーキー’ メラレウカと並んで、最近、庭木として人気なのが、ウエストリンギア。オーストラリアン・ローズマリーとも呼ばれ、ローズマリーに似た低木で、新築住宅の植え込みなどでも見かけるようになった。国内で多く流通しているのは、シルバーリーフで花色は白の‘スモーキー’と、葉が緑または斑入りで花が淡いブルーの‘モーニングライト’の2種類。 <基本データ> 学名:Westringia和名:ウエストリンギア、オーストラリアン・ローズマリー英名: Australian rosemary, coastal rosemary科名 :シソ科属名: ウエストリンギア属原産地:オーストラリア <参考記事> ●庭木として丈夫に育つ! ウエストリンギア ズバリ、この品種がおすすめ!ウエストリンギア‘モーニングライト’ Westringia ‘Morning Light’ 花を年中咲かせてくれるのは‘モーニングライト’。花色も淡いブルーで、おしゃれ感がある。オーストラリアらしい明るい雰囲気なので、この品種をおすすめする。 おすすめ⑤コルディリネ・オーストラリス ‘レッドスター’ 日本にも古くからニオイシュロランとして緑葉の品種が流通している。モダンな雰囲気が好まれて洋風庭園には使用されてきたが、最近は銅葉や斑入りの品種が人気。よくニューサイランと混同されているサイトを散見するが、コルディリネは樹木で幹が伸びてくるのに対し、ニューサイランは草なので、株が広がるだけで背は伸びない。 また、コルディリネには観葉植物もあるが、Cordyline fruticosa は寒さや高温時の直射日光に弱く、庭木には向かないので注意。 <基本データ> 学名: Cordyline australis別名:コルディリネ・オーストラリス、コルジリネ和名:ニオイシュロラン 科名:キジカクシ科属名:コルディリネ属原産地:ニュージーランド <参考記事> ●スタイリッシュな庭づくりに必須「コルディリネ・オーストラリス」 ズバリ、この品種がおすすめ!コルディリネ・オーストラリス‘トーベイダズラー’ Cordyline australis ‘Torbay Dazzler’。左写真の両サイドに植わっているのがニューサイラン。 斑入り品種で、明るくスタイリッシュな雰囲気があり、これからの庭木としておすすめ。日本で一般に流通するようになってから、まだ歴史は浅いが、我が家では7年ほど育てている。寒さにも暑さにも強いうえ、成長が比較的ゆるやかなのが日本の庭に向いている。 おすすめ⑥アカシア ミモザ(ギンヨウアカシア) アカシアは世界で約1,200種、オーストラリアだけで約700種あるといわれ、近年、日本にも多様なアカシアが流通している。いわゆる「ミモザ」と呼ばれる、ギンヨウアカシアが一般的だが、ほかにも最近はシルバーリーフの‘ブルーブッシュ’や、葉の細いフロリブンダなども人気だ。総じて成長が早くて大きくなるが、雪の重みや強風に弱いため、比較的、寿命が短い樹木である。花後の剪定で小型に保つのが長寿の秘訣だ。 <基本データ> 学名:Acacia和名:アカシア 英名:Acacia科名 :マメ科属名:アカシア属原産地:オーストラリア・クィーンズランド州 <参考記事> ●【ミモザ】庭に春を呼ぶ!育てやすい種類と挿し木・タネ播き・育て方 ●ミモザのスワッグを作ろう! 簡単にできる、春を告げる黄色のスワッグ ズバリ、この品種がおすすめ!パールアカシア Acacia podalyriifolia。別名ムクゲアカシア。 おすすめのポイントは、美しいシルバーリーフの色と形。最近、ユーカリポポラスが人気だが、ユーカリは大きくなりすぎるので、その代用も兼ねて、パールアカシアを庭木におすすめしたい。花はミモザとほぼ一緒。 おすすめ⑦ハーデンベルギア 最後のマストバイは、つる性のハーデンベルギア。つる性植物は、フェンスや壁に這わせたりして立体的に育てられるので、庭の表情を豊かにする。多くのつる性植物は落葉性で冬は寂しい姿になりがちだが、このハーデンベルギアは常緑性のため、冬も青々としているのが魅力。2月中旬から咲き始め、紫(または白)の花に覆われる姿は見事。 <基本データ> 学名:Hardenbergia violacea和名:ハーデンベルギア、コマチフジ英名:purple coral pea科名 :マメ科属名: ハーデンベルギア属原産地:オーストラリア(東海岸:クィーンズランド~タスマニア) <参考記事> ●「ハーデンベルギア」の魅力と育て方 ズバリ、この品種がおすすめ!ハーデンベルギア・パープル Hardenbergia violacea 白花もあるが、やはり春の華やかさを演出するにはパープルの花が咲く品種がイチ押し。 オージープランツの庭木おすすめ7選の育て方ポイント 今回セレクトした品種は、庭木として比較的育てやすく、基本的には、日が当たり、風通しがよく、水はけのよいところが適している。冬に北風が直接当たらない場所であれば育つが、地植えする際、植え穴を掘ったら、底に軽石を敷き、水はけをよくしておくのがポイント。植え付け時の土にも鹿沼・軽石・腐葉土などを混ぜて過湿にならない工夫をするとよい。地植えは、施肥は不要。特にヤマモガシ科のグレヴィレアは、リン酸に過敏で、与えすぎるとかえって枯れる原因になる。 番外編のおすすめオージープランツ庭木 今回は、日本の平均的な庭で育てやすい小型のオージープランツを7種セレクトしました。本来、ユーカリも入れたかったのですが、日本で入手しやすいユーカリは、レモンユーカリにしても、ポポラスにしても、マルバユーカリにしても、いずれも巨木化するので、今回は除外しました。ユーカリに興味がある方は、『日本に向く「ユーカリ」の育て方』も参考にしてください。
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育て方
【プロが伝授】「日本一ガーデニングを楽しむ男」がイチ押しのガーデニングの楽しみ6選
ガーデニング歴27年の幸せ体験 コロナ禍が4年目に突入し、ガーデニングが静かなブームだが、2017年から当サイト「ガーデンストーリー」に記事を書き続けて、今回の原稿が通算100本目になる。ガーデニングの趣味嗜好は百人百様だが、ほんの少しの工夫でガーデニングはもっと楽しめるようになるものだ。さまざまなガーデニングを経験した私から、そのアイデアをご紹介しよう。 私は、現在73歳。趣味でガーデニングを始めたのは45歳の時だった。オーストラリア、メルボルンに駐在していた5年間、住んでいた家は300坪の広い庭付きで、専属のガーデナーが隔週手入れに来てくれた。「庭っていいなあ~」と思ったのが興味をもつきっかけだったかもしれない。帰国してまもなく、猫の額ほどの庭付きのマイホームを購入。本格的にガーデニングを始めた。 それ以来、27年もガーデニングを続けたことになる。60歳でサラリーマンを定年退職し、ガーデニングの専門学校に通ってプロになり、早いもので12年が経った。アマチュアの趣味のガーデナーを15年、趣味+プロとして12年、ガーデニングを楽しんだことになる。 上/当時の庭写真。下左/ハワイにて。下右/ニュージーランドにて。 プロを目指したきっかけは、全国規模の2つの異なるガーデニングコンテストで2年連続グランプリを受賞したこと。賞品のハワイ旅行とニュージーランド旅行を満喫し、その他コンテストでも入賞したことで、ついその気になってしまった。 プロになってからは、個人宅のガーデンレッスンや庭のデザインを手掛け、日本庭園からオージーガーデンまで幅広く庭づくりを楽しませていただいた。 上左から時計回りに、サクラソウ展、椿展、ハナショウブ展、クリスマスローズ栽培。 さらに並行して8年間は、植物園に勤務して相談員をしながら、広い園内を自分の庭のごとく花壇を作ったり、寄せ植えを作ったりして楽しませていただいた。自宅のガーデニングでは叶わなかったであろう伝統園芸植物の「サクラソウ」「ハナショウブ」「ツバキ」などの品種保存や、クリスマスローズの促成栽培の研究もさせていただいた。振り返れば、恵まれた環境だった。 当サイトを中心に執筆活動を続けてきたことも手伝って、2021年には『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版社)を出版し、日本におけるオージープランツの栽培ハウツーを世に伝えることもできた。 ブログ「Alex’s Garden Party」 この執筆活動の原動力といえば、27年間、毎朝書き続けているブログ「Alex’s Garden Party」だ。塵も積もれば山となるというか、継続は力なのである。27年間の膨大な量の写真と文章は、私の宝だ。こんな具合で、自分は日本一ガーデニングを楽しんだ男だと自負している。 楽しむ基本は「チャレンジすること」、楽しみの幅を広げようじゃないか! 人生も園芸も失敗を恐れずチャレンジ! 園芸のみならず、人生を楽しむ基本は「チャレンジすること」だと思う。何か新しいことをするには、一歩を踏み出さないと始まらない。やはりチャレンジして成功すると楽しい! チャレンジというと大げさに聞こえるから、「試してみる」「やってみる」でよいと思う。例えば、ベランダや玄関先、空き地などに「お花があったらいいなぁ~」「ミニトマトやハーブが収穫できたらいいなぁ~」「クリスマスローズやバラ、オージープランツも育ててみたいなぁ〜」という願望はないだろうか。ガーデニング以外でも「ピアノが弾けるようになりたい!」と思えば、まずは「やってみる!」ことだ。何事も行動を起こさないと、何も始まらない。そこにも当然、失敗はある。 私のガーデニングのきっかけは、「オーストラリアの植物を日本で育ててみたい!」「オーストラリアの植物に囲まれて、当時の豊かなライフスタイルを再現したい!」というものだった。ユーカリの木の下でBBQをやり、オージーワインが飲みたい! そんな動機だったのだ。 約30年前というと、日本ではオージープランツは入手が難しく、またインターネットもなかった。ファックスを使って、現地の種苗業者とのやりとりに苦労したのを覚えている。 100種以上の種子を個人輸入したが、成功したのはほんの数種だった。 種子から育てたピンク花のユーカリ(左)と胞子から育てた木生シダ、ディクソニア。 それでも、種子を播いて数年が経ち、当時日本にはなかったピンク花のユーカリが咲いた時は感動だった。また、同時に輸入した木生シダのディクソニアの胞子が、最初は苔のような状態から、シダの葉が出てきた時も感動だった。あれから27年ほど経ち、すっかり木々は成長したが、あの時、育つかどうか分からないものの、オーストラリアの植物を輸入するというチャレンジをしていてよかったと、つくづく思うのである。あの時のチャレンジがあって、充実した楽しい今がある。 おすすめガーデニング①果樹や野菜にチャレンジ 僕がおすすめしてお客様が成功体験しているのが、花に加えて実のなる「レモンの木」や「ブルーベリー」、「ミニトマト」や「イチゴ」などの食べられる「楽しみの実感作り」だ。食べるという人間の本能に訴えるものは強力である。今も家庭菜園がブームだが、時流に適っていると思う。そして、私が、このレモンやミニトマトなどの栽培をおすすめする理由は、「育てて楽しむ」園芸の醍醐味を経験することで、その後の草花の栽培力が身につき、結果としてガーデニングがもっと楽しくなるからだ。 そして、じつはもう一つ理由がある。長年仕事をしていて気づいたのだが、夫婦で、あるいは家族でガーデニングをやっている家庭は、ガーデニングのレベルアップも早く、より楽しそうなのである。そして、旦那さんや、お子さんにガーデニングに興味を持ってもらうには、このレモンの木やミニトマトなど、口にできる実がなる植物が絶対強力なのである。 旦那さんの多くは、「すっぱい初恋の味」なのか、なぜかレモンに弱い。殿方をガーデニングに引きずり込むきっかけには「レモンの木」が有効なのである。今の時代に、男だ女だと言うと叱られるが、男は「薔薇やひらひらしたお花」より、果実や多肉植物、オージープランツなどのカッコイイ系が好みなのだ。それゆえ、夫婦でガーデニングを楽しむには、幅広い分野の植物にチャレンジすることをおすすめする。老後は、夫婦で共通の趣味としてガーデニングや家庭菜園を楽しめると、とっても幸せですよ。 おすすめガーデニング②増やして育てるガーデニングにチャレンジ! 私が長年ガーデニングをしてきて「楽しい!」と思った瞬間は、庭で採取した種子を播いて翌年に芽が出たとき。また、挿し木や取り木をして根が出てきたとき。株分けをして子株が育ったとき等々。「増やして育てる」という行為は、これまた人間の本能なのかもしれないと思ったりする。 我が家の庭は、すでに飽和状態なのに、貴重なオージープランツに花が咲くと、衝動がおさえられず、種子を採取して播いて増やしてしまう。挿し木に向くアジサイやキク、バラなどもつい増やしてしまう。育てた苗は、ガーデンレッスンのときに使用したり、知人に譲ったりしているが、珍しいものが多いからか、とても喜ばれる。歳を取ると他人が喜んでくれるのが嬉しい。 自分の好きな植物を増やして、誰かにプレゼントすることは、微力ではあるが、ガーデニングや園芸の確実な普及啓蒙活動だと思う。ただし、品種によっては増殖が禁止されているものもあるので注意が必要だ。 上/ホスタ(ギボウシ)の株分け。下/ニューサイランの株分け。 株分けできるニューサイランやホスタなども、鉢がパンパンになると株分けして増やしてしまう。 取り木したグレビレア。 ガーデンレッスンでも、ときどき挿し木や取り木、株分けの指導をさせていただくが、成功すると、とても喜んでくださる。誰でも植物を増やすことは、なぜか楽しいのだ。 ぜひ、増やす園芸にチャレンジして欲しい。 おすすめガーデニング③自分の庭は自分で剪定にチャレンジ ガーデニングの楽しみ方は多彩だが、簡単なのに多くの人が諦めてしまっているのが樹木の剪定だ。植木屋さんに頼むと数万円かかるが、松の木など、特殊なものを除けば、意外と簡単で楽しいのだ。私は専門学校で、ほんの数時間しか剪定の授業実習は受けていないが、自分の庭はもちろん、仕事でもやっている。 きちんと樹木ごとの剪定時期や方法を学習し、センスを磨けば問題ない。もちろん、熟練の植木屋さんよりスピードは落ちるが、自分の庭なら時間をかけてやればよいのだ。樹木の剪定や伐採はガーデニングとは異なる"格闘系”の体力を使う作業だが、それゆえに楽しい部分がある。ぜひ、男女問わずチャレンジしてほしい。 右、剪定後の地面を覆うものは切り落とした枝葉。結構な量、切り落としたことが分かる。 自分のセンスで、時間をかけて樹木を丁寧に美しい姿に仕上げるのは、本当に楽しいのだ。出来上がりは技量とセンスの結果なので、自分の「努力の結果」が正直に反映されて面白い。何事も、失敗を重ねると上達する。ただ、高所などの危険な作業は避けて、できる範囲で。私はもう歳なので、ハシゴを使用しないで剪定できる範囲に樹木をダウンサイジングしている。 おすすめガーデニング④ネットでガーデニングにチャレンジ 今更ではあるが、私がガーデニングを楽しむのを後押ししてくれたのが、インターネットだった。20年以上前は「インターネットガーデニング」の創成期だった。当時、インターネットはまだ普及しておらず、ネットでガーデニングのサイトを自分で作っている人はかなりマニアックで、ある意味、時代の最先端を行く、尖った人たちだった。 同時に英文サイトも作ったので、オーストラリアの人々とも交流ができた。今でも何人かとは繋がっているが、会社でガーデニングを話題にするサラリーマンなどいない時代。ネットで知り合った人たちとのコミュニティが楽しかった。ガーデニングという趣味は、案外孤独な趣味で、私自身はインターネットと共に成長できたと思う。 ブログはかれこれ22年ほど継続して更新していて、ほぼ毎朝、写真を撮ってアップしてきた。基本は、その日の朝、「感動した植物」の写真4枚と愛犬の写真1枚を撮り、文章を加えて、出勤前の忙しい時間に制限時間15分でやる習慣をつけた。 正直なところ、毎朝、感動する植物があるわけではない。しかし、感動を求める感性と、撮影技術は27年間で鍛えられたと感じている。ガーデニングは栽培力プラス感性やセンスが必要だが、いずれも努力で鍛えられるのである。日々、よりよいものを求め、より高きに挑戦することである。 参画した、オーストラリア大使館の庭。 27年間ネットで情報を発信し続けてよかったことといえば、メディアの目に留まり、テレビや雑誌に大変お世話になったことだろう。また、ネットを通じてオーストラリア大使館の庭づくりにも参画した。近年は、作庭やガーデンレッスンの問い合わせも、ほぼネット経由である。ネットなしでは今の自分はなかった。 近年、インスタやYouTubeにもチャレンジはしているが、昔ながらのブログが中心である。ブログは、すっかり老人のメディアになってしまい、現在の1日のアクセス数は約300人。最盛期の1/6程度である。しかし、20年以上継続してきたブログに今も訪れてくれる人がいて、役に立っているなら嬉しいものだ。これからも、量より質を保ちたいと思う。 ネットには園芸情報も溢れており、情報入手に苦労はない。ネットで珍しい植物も簡単に手に入る時代だ。だからこそ、質を求めなければいけないと思う。 おすすめガーデニング⑤コンテストにチャレンジ 2010年日本園芸協会ガーデニングコンテスト・ゴールドメダルの拙庭。 上級者やプロを目指す人におすすめしたいのは、ガーデニングやハンギング、寄せ植えなどのコンテストへのチャレンジである。参加することで自分の実力を知り、第三者に認められる機会にもなるだろう。私は「賞品に燃える」人間なのか、海外旅行がかかると必死になって、火事場の馬鹿力が出たようだ。最初は火事場の馬鹿力でも、その後は、馬鹿力は平常時であっても楽々出せるようになるものだ。自分自身、数々のコンテストを経験し、幸いほとんど入賞できたことが自信につながった。人間、必死になれば潜在能力が発揮できるのだ。 おすすめガーデニング⑥幅広い趣味にチャレンジし感性を育む 最後にもう一つ。私は、かつてある人に言われた言葉が忘れられない。もう一つの趣味のバイオリンで「趣味だと思っていると、いつまで経っても趣味だ。だが芸術だと思うと、求めるレベルが違って上達できる」と言われたのである。趣味ではなく芸術だと思い、求める目標レベルは常に上に置くということだ。 確かに! である。僕はその言葉で、「ガーデニングは芸術だ~」と確信したのである。 その後、なぜか楽器演奏とガーデニングが自分の中では、芸術を追求する、かなりの部分が共通した感性だと感じるようになり、相乗効果があるように感じている。バイオリン歴は30年になるが、自分のガーデニングの先生は、じつはバイオリンだったと感じているくらいだ。 ピアノも子どものころにやっていたが、やはり音楽などの情操教育で養った感性は、ガーデニングの感性を磨くのにとてもプラスになると感じている。下手の横好きで、燻製料理やそば打ちなどの料理も楽しんでいるが、小さなことでも「成功体験」すると、他のことにチャレンジしてみたくなるものだ。 人間の感性は、さまざまな経験を積むことで、より一層磨き上げられるものだ。 ガーデニングを趣味にして充実した人生を 私の人生を変え、充実した老後を送れているのはガーデニングのお陰だと思っている。そろそろ庭仕事によって、足腰が痛くなったりもする。それでも庭に出て、植物が生き生きと葉を広げ、花を咲かせていると、手が抜けないと励まされる。ガーデニングはまだまだやめられない。 昔は少なかったガーデニング用の植物も、本当に幅が広がり、あらゆる植物が手軽に入手できるようになった。また、気候変動に対応して耐暑性がある植物も、病害虫に負けない品種も続々登場している。一方、日本の伝統園芸植物も英国の園芸家がうらやむレベルの、素晴らしい世界がある。特に品種のネーミングは、当時の園芸家の知的レベルと感性の物凄さを感じさせる。 ガーデニングは、植物を育てるばかりでなく、文学や絵画、環境保全など、あらゆる事象につながっている。ぜひご紹介した「チャレンジ・ガーデニング」を一つでも試してもらいたい。
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クラフト
【クリスマススワッグ】おしゃれ花材「オージープランツ」で手作りする方法
花材に選ぶ「オージープランツ」が生きる土地、オーストラリアのクリスマス Bellelen/Shutterstock.com クリスマスといえば、ホワイトクリスマスとか寒い冬にやってくるものと当たり前に思っていますが、南半球ではクリスマスは真夏! 私もメルボルン駐在中は、サマーホリデーにあたるクリスマスやお正月は、子供たちと海岸に海水浴に行ってBBQをしていました。オーストラリアでもクリスマスは一大イベントで、家々ではクリスマスを祝い、クリスマスの飾りつけをします。 オーストラリアのパインツリー。taewafeel/Shutterstock.com クリスマスツリーといえばモミの木ですが、暖かいオーストラリアにはモミの木やコニファー類はなく、パインツリー(松の木)で代用するか、人工のモミの木を使うことが多かったと記憶しています。最近は日本でもオージープランツが人気で、寒い土地の植物に限らず、ユーカリをクリスマスリースやスワッグに使用していますよね。今年は、我が家の庭で育つ自家採取のオージープランツを使ってクリスマススワッグを作りました。 庭で育つオージープランツを使ってスワッグを作る まず、庭からドライにしても見栄えがするスワッグ作りに使用できそうな植物を箱いっぱいに集めました。 上写真は、庭のオージープランツです。左から、ユーカリ、グレヴィレア‘ムーンライト’、アカシア・ブアマニー。オージープランツは常緑でドライにしやすいので、庭で育てていればスワッグ作りの素材には困りません。 テーブルに花材を広げてみると、こんなバリエーションになります。中央のキングプロテアはドライフラワー、ピンクッションはアーティフィシャルを用意しました。素材を眺めて、完成イメージを想像します。ちなみに、キングプロテアの原産地は南アフリカですが、オーストラリアでは一般的に育てられている植物です。 まず、大きくしなやかな感じで広がっているグレヴィレア‘ムーンライト’を一番下に置きます。 次は葉が広くて量感があるユーカリです。これは、ユーカリ・シデロキシロン‘ロゼア’という品種です。葉の香りがとても素敵です。平たく置きます。 次はアカシア・ブアマニーを上に重ねます。この時期の葉の先端付近には、つぼみがたくさんついて、絶妙な色合いです。 再びユーカリを重ねますが、ピンクの花と実を生かすので、葉を減らして使用します。 次は、いよいよメインのキングプロテアとピンクッションをのせ、最後にグレヴィレア‘ロビンゴードン’を加えます。 これですべての花材がひとまとめになったので、根元にビニタイを巻いて仮留めします。本締めは麻ひもでもいいですが、今回は重量もある大型のスワッグなので、より強固にするためにワイヤーでしっかり留めました。 仕上げのリボン飾りを2パターンで作ってみました。選ぶリボンと飾りの鈴の違いだけでも、随分とイメージが変わりますね。 以上、オーストラリアンスワッグ作りでしたが、妻がメルボルンで作った思い出のクリスマスリースがあるので、ご紹介しましょう。 オーストラリアの素材で作ったリース リースを飾る実ものは、すべて当時住んでいたメルボルンの近所の公園で拾ったものを使いました。仕上げに、ニスを全体に塗って、防腐効果を高めておいたので、今も健在。 上写真:Tegan T/Shutterstock.com オーストラリアといえば、ユーカリが象徴的ですが、現地ではユーカリの実をガムナッツと呼び、リース飾りなどクラフト素材によく使用するようです。 定番花材のクリスマススワッグの作り方 オージープランツは最近、苗もドライフラワーも入手しやすくなってきました。しかしまだ、どこでも手軽に手に入るとはいえません。そこで、今年人気のナチュラル素材を使った、定番花材のクリスマススワッグを2つ目にご紹介します。 使用する植物は、右端のモミの木をメインに、コニファー(クジャク)、ユーカリ、コットン、シルバーグルニア、サンキライを用意しました。 次に、アクセントになるモチーフ飾りですが、こちらも自然素材にこだわりました。 リリーフラワー(中央)、松ぼっくり(ゴールド&ホワイト)、姫リンゴ、ドライオレンジです。そして、ゴールドのリボン2m、赤と緑のラッピングペーパー、麻ひも、ビニタイを用意します。 定番クリスマススワッグの作り方手順 ①まず、ベースとなるモミの木を置きます。長さ60cmの枝を使用しましたが、大きすぎるので50cmで切りました。枝を整えながら置きます。根元の葉は落としておきます。 ②次にコニファーを置き、モミの木の枝とバランスを取ります。 ③コットンの枝を置きます。向きが難しいですが、調整しながら置きます。向きの調整が難しい枝ぶりでしたら、表が見えなくなる実は切り取って、後で取り付ければよいでしょう。 ④ユーカリです。枝を追加するごとに全体のバランスを見ながら微調整してください。次にサンキライ、シルバーグルニアを順に重ねて置きます。 ⑤枝ものの組み合わせは終わりなので、仮留めとして、根元付近をビニタイで巻きます。そして本留めの前に、今一度バランス調整をしましょう。 ⑥本留めは、麻ひもでしっかり巻きます。太い輪ゴムでもOKです。右写真のような太いゴムを使用するときは輪にして巻くのではなく、枝先の一カ所に輪ゴムの端を掛け、2本取りの状態で伸ばして巻きつけ、最後に1本の枝に引っ掛けて留めます。これは、花屋さんで見る留め方です。 ⑦しっかり結べたら、枝の長さを切り揃えます。次は、飾りつけです。まずは仮置きをしてバランスを取り、針金で固定していきます。 ⑧松ぼっくりやリリーフラワーは、針金をU字にして、巻きつけ、固定します。 ⑨姫リンゴは、リンゴの軸に巻きつけます。ドライオレンジは異なる房の2カ所に針金を通して固定します。 ⑩そして、仕上げに包装します。まずは、2色が見えるように包装紙を少しずらして重ねておきます。その上にスワッグを置きます。 ⑪包装紙をバランスよく巻けたら、壁に掛けるための紐を兼ねて、包装紙ごと麻ひもで結んで固定します。最後に、リボンを蝶結びにして完成です。 今回使用したアクセントになる各パーツです。 左上から時計回りに、リリーフラワー、ドライオレンジ、金色に塗られた松ぼっくり、雪化粧のようにペイントされた松ぼっくり、サンキライとコットン、モミの木とコニファークジャク。 では皆さま、メリークリスマス!
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果樹
初心者でも簡単に自宅でどっさり収穫できる美味しい「温州ミカン」
野鳥も狙う⁉︎ 美味しい果物、ミカン 今年も庭のミカンの木に野鳥が集まるようになった。これは熟した証拠で、残りも早く収穫せねば! 我が家には、植えてから、かれこれ25年以上になるミカンの木がある。毎年、オレンジに色づいて自然の恵みを感じさせてくれる存在だ。庭にミカンの木を植えることをおすすめしたい。 自分が育てたミカンの木から、もぎ取ったばかりの果実の一房を口にしたときに広がる、甘酸っぱい快感は、至福そのものである。自分の庭で、大地や太陽の恵みを凝縮させた果実を口にするという行為は、自分も自然の中で生きている仲間であることを感じさせてくれるものだ。 果樹を育てるガーデニングの醍醐味 A3pfamily/Shutterstock.com ガーデニングは植物を育て、その美しい姿や花を楽しむことがメインだが、果実を食べるという楽しみもある。「花より団子」というが、見るより食べるという人間の本能に訴える楽しみは、万人に対し、なかなかに説得力があり実感が伴う。 とかくガーデニングというと、視覚で楽しむ花ばかりに話題がいきがちだが、果樹を植えて結実させて味わうということは、子どもや男性にも分かりやすい楽しみ方であり、一方では果実栽培という奥の深い世界もあり、おすすめのガーデニングだ。 ひと昔前は、庭にレモンの木が植わっているとお洒落感もあって人気だった。私もかつてガーデンストーリーにレモンの記事を執筆したことがある。もちろん、レモンの木の人気は息が長いのだが、コロナ禍も3年目になり、ガーデニング=お洒落なライフスタイルという捉え方が少し変化してきたように感じている。 果実が実る庭風景。左はレモン、右は温州ミカン。 おうち時間が増えてガーデニングブームになり、人気なのは実用的な野菜づくりや、果樹栽培だ。このところの物価高の波もその実用路線を後押しし、より実用的なものに、お洒落感も移行しているように感じる。そんな時流にぴったりなのが、温州ミカンだ。 果樹栽培25年で確信した育てやすさダントツ1位 私の果樹栽培歴も25年。その間に、柿、桃、梅、梨、巨峰など、いろいろ挑戦してきたが、木が大きくなりすぎたり、虫がついたり、病気になったり……。正直、果樹栽培は素人には難しいと実感したが、そのなかでも、ほぼ放っておいても毎年確実に収穫できているのが、レモンとミカンである。 ほとんど放置状態でも、こうして立派なミカンが収穫できる。 レモンも庭で採れるのは嬉しいが、そんなに大量には使い切れない。その点、ミカンは食べきれないほど収穫したとしても、不思議と食べきれてしまう。我が家は、この20年以上ミカンを買ったことがないほどだ。年金暮らしにとっては嬉しいことだ。 しかし、長年育てていると、デカいミカンを収穫してみたくなる。プロの農家は摘果をして、実の大きさを揃えたりしているが、正直、それは面倒なのでやっていない。だが毎年、1枝だけ摘果して大きなミカンづくりに挑戦している。 左/今年の1位は307g。右/過去最大記録の322g。 過去最高のビッグミカンの実績は322g。今年は307g。ちなみに、いただきモノのミカンで2Lサイズを測ったら148gだった。それでも、とてもビッグなのだ! 温州ミカンの成長を楽しむ四季 さて、ミカンは開花から熟するまで、どんな成長をするだろうか? それぞれに季節感があって、眺めていてウキウキするものだ。 まず、ミカンはどんな花が咲くでしょうか?「♪み~かんの花が咲いている~、思い出の道、丘の道・・・」という童謡があるが、これは5月中旬である。 tamu1500/shutterstock.com そして6月1日になると、緑色のピンポン玉のような実が見られる。まだ、赤ちゃんで可愛い。 7月24日。つややかな緑の果実が雨に濡れて美しい。 9月27日には、すっかりミカンらしくなってきた。 10月17日には、多少黄色く色づき始めた。毎年、子どもの頃、初めてミカンを食べるのは運動会のときだった。「酸っぱい!」と感じた記憶が蘇る。でも、この時期の酸っぱいミカンもくせになる味なのだ。 10月21日になると、かなり色づいて、木の枝先も多少枝垂れて存在感が出てくる。 孫も野鳥も愛犬もミカンを楽しむ11〜12月 10月27日、収穫には少し早いタイミングだが、孫が来たのでミカン狩り。孫は初めてのミカン狩りに大興奮! 子どもには果物の収穫はいい経験になるだろう。ついたくさん採ってしまった。 11月になると甘みも増してくる。 枝ごと豪快に切り落とし、部屋の飾りにした。爽やかな香り。 そして甘みが増してくると、鳥がやってくる。毎年、全部は収穫しないで、小鳥用に残しておく。 リビングから見えるテーブルにミカンを置いておくと、メジロが毎朝ブレックファストに来る。 ミカンが好きなのは、人間や野鳥だけではない。我が家の愛犬は歴代、甘いミカンが大好きだ。朝、散歩から帰って喉が渇いたら、ミカンを1個、木からもぎ取って、私と分けて食べる。犬も美味しいものは知っているのだ。 収穫量の安定のために、やるべき2つの作業 庭で自然の恵みをたっぷり受け、実ったみかんは格別に美味しい。何といっても、あまり手間をかけずに、ほとんど放置状態で、毎年実ってくれるのが有難い。きっと、もっと世話をしたら、これ以上に立派なミカンが収穫できるかもしれないが、現状で十分満足だ。 ただ、私が必ずやっていることが2つある。 【必須作業1】 1月下旬~2月上旬に、ミカンの木の周りの地面に溝を掘り、発酵油粕の寒肥を与える。これは効果的。 【必須作業2】 3~4月に、徒長したり密集した枝を落とす。上から見たらドーナツ状になるように、木全体に太陽と風が当たるようにする。これは、メルボルンで家に来ていたガーデナーさんから学んだレモンの木の剪定方法だが、この方法をミカンに応用している。 育て方の本には、いろいろ難しいことが書いてあるように感じるが、まあ果樹栽培が素人の私にもできるのはこの程度。それでも毎年、たくさん実がなるので、これで満足だ。 素人にもできるミカンの栽培、始めてみませんか?
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ガーデンデザイン
在日オーストラリア人のお庭改造に密着!【オージーガーデニングのすすめ】
オージーガーデニングの腕を振るう作庭 私は定年退職後、それまで趣味だったガーデニングを「仕事」にして、早12年近くになる。その期間は、植物園の相談員をしながら細々とオージーガーデンの作庭をしてきた。以前、オーストラリア大使館の「自然庭園」の庭づくりの手伝いをしたこともあったが、2022年春、東京郊外のテラスハウスに住む、在日オーストラリア人からオージーガーデンの作庭の依頼を受けたのだ。以前も在日オーストラリア人のガーデンレッスンは数件実施したことがあるが、作庭は初挑戦となる。 庭の施主は、私がかつて駐在したメルボルン郊外の出身の方ということもあり、意気投合し、とても楽しく仕事をさせていただいた。庭にカンガルーとコアラの置物を配した陽気なオージーガーデンが出来上がったので、ご紹介したいと思う。 なお、この庭のオリジナリティーに貢献してくれたカンガルーとコアラの置物は、施主様がコツコツと通販で買い集めたコレクション! 庭づくりは2021年秋にスタート 最初にお声がかかったのは、2021年の10月である。これから寒くなっていくという10月にオージープランツを植え付けるのは植物にとって好ましくないので、植え付け作業は暖かくなる春に実施することにした。それまでは既存の植物の中から不要なものを撤去し、来春に備えて伐採・伐根と整地をすることにした。10月に、さっそく私と施主様で一緒に作業をしたのだが、オーストラリアの男性はパワーがある。私の3倍くらいのスピードで、瞬く間に不要な植物を伐採・伐根してくれた。 オージーライフスタイルを実現する庭デザインとは そして春3月がやってきた。冬の間にきれいに整地を済ませていてくれていたので、穴を掘って軽石などで水はけをよくし、植え付けるだけだ。テラスハウスの庭はほぼ正方形の10坪程度だが、日当たりのよい恵まれた環境。オージープランツにはもってこいの庭だ。事前に植栽したい植物を打ち合わせして決めておいた。 施工にあたっては、庭に接するリビングからの眺めや、庭に出ても心地よくオーストラリアの爽やかな風が感じられることを大切にした。オーストラリアでは日常的な「オージーBBQとワイン」が楽しめる、オージーライフスタイルが実現する庭だ。 テラスハウスという条件のため、隣家との境界や目の前に建つ棟からの視線を遮り、プライバシーを確保するために、ある程度の高さに育つアカシアやユーカリ、メラレウカなどを周辺に配置した。 そして、リビングからはBBQが楽しめる芝生越しに、低木のバンクシアやグレヴィレアの花が眺められるように植栽計画を考えた。 さて、植物の植え付けだが、オージープランツは水はけがよいことが大事である。そのため、必ず植え穴の底に軽石を敷いてから植え付けるようにしている。 植え付ける時の用土は、種類によってブレンドを変えるのも丈夫に育てるためのコツだ。例えば、メラレウカ、ユーカリ、アカシアは庭土に腐葉土を3割程度混ぜ込むような普通の植木の用土同様でよいが、バンクシアやグレヴィレアは、腐葉土・軽石・鹿沼土を各々2割程度混ぜ込むようにしている。また、庭に植える場合には肥料は必要ない。 今回セレクトした植物たちは、どれも我が家で育つものばかり。 植えた植物リストは下記の通り。オージープランツを中心に16種を揃えた。 コーストバンクシア/カリステモン/グレヴィレア‘ピーチ&クリーム’/ジャカランダ/アカシアブルーブッシュ/木生羊歯ディクソニア/ドドナエア/コルディリネ・オーストラリス‘レッドスター’/メディカルティーツリー/シルバーティーツリー/ハーデンベルギア/ニューサイラン/アガパンサス/カンガルーポー/ウェストリンギア/フェスツカ・グラウカ 3月中旬に知人にも手伝ってもらい、丸1日で植え付けを完了することができた。そして芝を張り、バークを敷き詰めた。昨年の10月の状態から大きく変化を遂げた。 オーストラリアでは、広い芝生の庭は基本だ。そして一般家庭でも、公園、学校などの公共施設でも地面が露出していることは滅多にない。必ず芝生かウッドチップ、あるいはグラウンドカバープランツで表面を覆うので、今回もそのようにした。 オーストラリアの住宅事情と比べると、日本の住宅の庭は猫の額ほどでしかないが、それでも施主様は喜んでくれた。 庭づくり完了後のお土産には、懐かしいオージーミートパイをいただいた! 美味しかった。 華やかさを増す4月以降の庭 植栽を終えた1カ月後には、芝生も緑になった。バークを追加し、フランネルフラワーやハナカンザシなどを植えて、華やかで落ち着いた雰囲気になった。各コーナーの見所をご紹介しよう。 左からアカシアブルーブッシュ、白い花はフランネルフラワー、ニューサイランの明るい剣葉がアクセントとなって引き締め役に。 何といってもカンガルーの像が存在感大です。その右は、グレヴィレア‘ピーチ&クリーム’。下草にグラス類のフェスツカ・グラウカを植え、自然らしさを演出。 右手前のドドナエアの葉が4月はまだ銅色。その奥が、カリステモン、角地にはコルディリネ・レッドスターで引き締めた。 たくさんのカンガルーとコアラたちが、このオージーガーデンの立て役者だ。右がコーストバンクシア、その奥にジャカランダを植えたが、4月はまだ棒のような状態。手前にカンガルーポーやウエストリンギアも見える。 その後、ジャカランダとコーストバンクシアが開花した。 今回セレクトした植物を解説! それでは、今回植栽した植物について触れておきましょう。そのほとんどが、これまでに筆者が当サイトでご紹介してきた植物なので、それらも併せてご紹介します。 木にしがみつくコアラの横には、最近人気のコルディリネ・オーストラリスを植栽。 ●スタイリッシュな庭づくりに必須「コルディリネ・オーストラリス」 カンガルーがまるで動き出しそう⁈ 伸び上がる斑入りの葉が雰囲気を引き締めてくれるのがニューサイランです。 ●「ニューサイラン」スタイリッシュな植栽に不可欠な葉 グレヴィレア‘ピーチ&クリーム’はオレンジからグリーンのグラデーションが美しい四季咲き性で、真冬以外4〜11月に咲き続けるのでおすすめです。 ●人気上昇中のオージープランツ「グレヴィレア」 中央の小さなカンガルーを取り囲むように赤と黄色の花をつけているのは、カンガルーポーです。ピンク花もポピュラーになりました。 ●ダンディーな花が咲く宿根草「カンガルーポー」 バンクシアは、日本ではまだなかなか入手が難しく高価ですが、やはりオーストラリアの代表的な植物ですから、今回の庭に必須となりました。 ●これからの庭木「バンクシア」に注目! 育て方と種類をオージープランツ栽培の達人が伝授 写真左は、シルバーティーツリーと呼ばれていますが、メラレウカではなく、レプトスパルマンの仲間です。シルバーリーフがきれいな庭木です。 写真右は、最近人気のアカシアの仲間、アカシアブルーブッシュです。シルバーブルーの葉が魅力的。 ドドナエアは蒸し暑さにも比較的強く、寒さもマイナス5℃程度まで耐える常緑低木。関東以西では庭木としてもおすすめです。冬に銅葉になるのが魅力。 ●庭木や寄せ植えに活躍する「ドドナエア」 オーストラリア東海岸が原産のハーデンベルギアはつる性なので、フェンスに絡めて育てます。白花もありますが、今回は紫をチョイス。 ●「ハーデンベルギア」の魅力と育て方 ハナカンザシはコンパクトな株姿で、最近は寄せ植え用花材としても人気です。花はドライフラワーにもなります。地際付近の彩りとして活躍してくれるでしょう。 ●耐寒性もある春の花「ハナカンザシ」 花弁に細かい産毛が密生してフランネル生地のような優しい感触の花びらと、銀白色の葉が織りなすモダンアートのような雰囲気のフランネルフラワーは、オージープランツの代表品種です。 ●造形的でアートな花「フランネルフラワー」 そして、植え付けから半年経過した9月の庭では、植栽が猛暑に枯れることもなく、すくすくと見違えるほどに成長していて、ひと安心。日本の住宅事情であっても、故郷を身近に感じる陽気なオーストラリア人のオージーガーデン。とても楽しい庭づくりとなりました。 施主様は、この庭についてレポートを公開しています。異国で、故郷のオーストラリアの庭づくりを成し遂げて、喜んでいる様子が目に浮かびます。