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【プロが選ぶ】ドライガーデン向き植物“マストバイ”7種+草花7種

【プロが選ぶ】ドライガーデン向き植物“マストバイ”7種+草花7種

Chris Lawrence Travel/Shutterstock.com

酷暑や雨不足などで、近年特に注目が高まっているガーデンデザインのキーワードの一つ、ドライガーデン。乾燥に強く、見た目にクールで、たくましく育つ植物を選んで作られるドライガーデンは、ショップやレストランの店先、こだわった庭を目指す人に選ばれています。そんな人気のドライガーデンに潤いや季節感をプラスした、日本ならではのドライガーデンを提案するのは、ガーデニングプロデューサーの遠藤昭さん。オーストラリアの実例解説と日本風ドライガーデンにおすすめのベストバイ7種に加え、脇役の草花7種も教えていただきます。

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ドライガーデンとは?

ドライガーデン
Simone Hogan/Shutterstock.com

ドライガーデンが最近人気だ。一般にドライガーデンというと、北米のメキシコや合衆国西部の乾燥地帯に育つ植物を基本にした、スタイリッシュなデザインの庭を指す。しかし、じつは、日本の伝統的な庭園形式である枯山水や、オーストラリアの庭でいうとドライリバーと呼ばれるものもその一つである。

枯山水
枯山水の例。EWY Media/Shutterstock.com
ドライリバー
ドライリバーの例。Sheri Fresonke Harper/Shutterstock.com

あくまで私見だが、流行の「ドライガーデン」は、やや画一的な印象を受ける。せっかく日本では恵まれた気候のもと、たくさんの植物が育つ条件が整っているのに、あえて、荒野の砂漠にしか育たない植物に限定するのはもったいない。いろいろな植物を楽しんだほうが面白い。

私の庭づくりのコンセプトは個性と創造性なので、流行の「ドライガーデン」を、少し日本の気候に合う豊富な植物を使って発展させてみたいと思う。

オーストラリアのドライリバー

ドライリバー
オーストラリア大使館のドライリバー。

ドライリバーという庭デザインについては、私自身、オーストラリア大使館の庭づくりに参画した際に、大使館のガーデナーがデザインしたものを見て知ることになった。

ドライリバー

このとき、初めて、ドライリバーという造園手法を知った。ドライリバーとは、水の流れない乾いた川だ。そこに橋をかけ、ドライリバーの縁にはカンガルーポーや、グレヴィレア‘ロビンゴードン’を植えた。

ちょっと、日本の枯山水に近い発想かもしれない。

ドライガーデン

またメルボルンでは、長年、慢性的な水不足という深刻な事情から、散水の不要な「ドライガーデン」が以前から推奨されているので、ドライリバーは、ドライガーデンのいわば先輩格といえるだろう。今回は、単に流行のドライガーデンにとどまらない、季節感や潤いをも感じられる、日本風ドライガーデンを提案したいと思う。

メルボルンのドライガーデン実例

ロイヤル・ボタニカル・ガーデン(ビクトリア州王立植物園)
オーストラリア、メルボルンにあるロイヤル・ボタニカル・ガーデン(ビクトリア州王立植物園)。Javen/shutterstock.com

私がかつて5年間住んだメルボルンは庭園都市とも呼ばれ、緑豊かな街ではあるものの、じつは夏の水不足で、ドライガーデンがずいぶん前から推奨されていた。メルボルンの植物園の一つ、ロイヤル・ボタニカル・ガーデンでは、ドライガーデンの見本エリアがあった。そこに植わる植物を、まずは見てみよう。

ドライガーデン

手前に植えこまれた黄花が咲く茂みは、クリソセファラム(chrysocephalum apiculatum)という、乾燥に強い植物だ。ゴロゴロと岩や自然石が配置された奥には、ユッカやアガベが見られる。

ドライガーデン

グレーの石肌に色を添えている緑や銅葉は、リューゼツランや、アガベ・アテナータ、ニューサイラン、コルディリネなどだ。

ドライガーデン

小高い斜面地にユッカ・ロストラータやソテツなどが大きく育ち、手前にはオージープランツのウェストリンギア‘スモーキー’なども見える。

ドライガーデン

コルディリネ‘’レッドスター’と黒法師。このような植物は、街中の植栽としてもよく見かける。

メルボルンのフィッツロイ公園

メルボルンには数々の公園があるが、なかでもフィッツロイ公園は150年の歴史があり、各所に素敵な植栽がなされている。

メルボルンのフィッツロイ公園

そこにもドライガーデンのエリアがあり、白い化粧砂の地面に浮かび上がるように、アガべ・アテナータ、ニューサイラン、ユッカ・グロリオーサ、黒法師などが植っている。これらドライ系の植物を背景にして、マリーゴールドやケイトウが咲き、華やかな雰囲気になっている。

クランボンのボタニカル・ガーデン
クランボンのボタニカル・ガーデン。

ご紹介したメルボルンのロイヤル・ボタニカル・ガーデンとは別に、十数年前に、クランボンという郊外に新しいボタニカル・ガーデンをオープンさせた。植物園という割にはドライな風景だ。

クランボンのボタニカル・ガーデン
クランボンのボタニカル・ガーデン。
アガパンサス
アガパンサスも、メルボルンではよく見かける植物だ。

メルボルンのドライガーデンをダイジェストでご紹介した。今、日本で流行しているドライガーデンでもよく使われているアガベやユッカ類などは、ほぼ共通しているが、メルボルンでは草花と組み合わせて華やかで、潤いも感じさせている。

これは、日本でドライガーデンをつくる際のヒントになるだろう。

ドライガーデン

さて、「ドライガーデン」と呼んでいいのか判らないが、我が家は、ユッカやアガベ、コルディリネに加え、オージープランツのグレヴィレアや、南アフリカ原産のリュウカデンドロン、さらには、アガパンサス、ヘメロカリス、ジャカランダなどを植え込み、季節感と華やかさを表現している。

アガベ
季節によっては、鉢植えのアガベ系を寄せ鉢状態にしたりして楽しんでいる。

以上、オーストラリア大使館、メルボルン植物園、そして拙宅のドライガーデンをご紹介したが、上記に使用されている植物を7種と、それを引き立てる草花7種をご紹介したい。また、今回はドライガーデン用の植物としての紹介だが、日本の庭でも一般に育てられているものなので、あえて我が家に育っていることを示す写真を中心にご紹介したいと思う。

ドライガーデンのマストバイ7選

① ユッカ・ロストラータ

ユッカ・ロストラータ

ドライガーデンの定番とでもいうべき地位を確保した人気の植物だ。

耐寒性は強いが、地植えにする場合は根株の下に軽石を敷いて、水はけをよくしておくこと。もともとメキシコの乾燥地帯で育つ植物なので、日当たりのよい場所で育てて、過湿や多肥に要注意。

② アガベ・アテナータ

アガベ・アテナータ

あまりトゲトゲしておらず、優雅でカッコいい草姿。やや耐寒性が他のアガベに較べて劣るものの、神奈川・横浜では寒冷紗をかければ越冬する。一般的な草花とも相性がよい。

③ アガベ・アメリカーナ(斑入り)

アガベ・アメリカーナ(斑入り)

これもドライガーデンの代表格。古くから日本でも普及していて、耐寒性もあり丈夫。成長が早く、かなり大きくなる。葉先が鋭いので、通路にはみ出ないようにするなど、植え場所に注意が必要。斑入り種が明るい印象となる。

④ アガベ‘ハクセンコウ’

アガベ ハクセンコウ

丈夫で育てやすく、成長も早い。強い霜にあたると傷むので、寒冷紗で保護するほうが無難。地下茎で子株が増え、親株の周りに多数生えてくる。植えて3年で10株ほどになり、株分けができるのもお得。

アガベ ハクセンコウ
株分けしたアガベ‘ハクセンコウ’。

⑤ コルディリネ‘トーベイダズラー’

コルディリネ‘トーベイダズラー’

コルディリネはニュージーランド、オーストラリア原産。 バリバリのメキシコ原産系のアガベに比べると、葉の色もさまざまあって、優雅でエキゾチックな庭が演出できる。

写真の品種は、葉の縁に白いラインが入り、明るく都会的な印象だ。

参考記事/『スタイリッシュな庭づくりに必須「コルディリネ・オーストラリス」【オージーガーデニングのすすめ】

⑥ ニューサイラン‘レインボークィーン’

ニューサイラン‘レインボークィーン’

ニュージーランド原産でコルディリネに似ているが、樹木ではなく草なので、幹はできない。

ニューサイランにはさまざまな品種があるが、写真の‘レインボークィーン’は明るく華やかである。

参考記事/
「ニューサイラン」スタイリッシュな植栽に不可欠な葉物【オージーガーデニングのすすめ】

⑦ 黒法師

黒法師

ドライガーデンに向く植物はツンツンした葉が多いなかで、黒い花のような草姿は、カッコいい系ではありながらも、柔らかな印象を与えてくれる。

黒法師の花

春に黄色い花が咲き、季節感もある。強い霜を避けるために、冬は寒冷紗などで保護する。

参考サイト/『多肉植物の黒法師(クロホウシ)がカッコいい季節到来!

上記7種に共通する育て方のコツは原産地に学ぶことから考えると、メキシコとオーストラリアとで差はあるものの、いずれも日本に比べればどちらも乾燥地であることから、日当たりと水はけのよい土壌であることが必須条件になる。比較的耐寒性は強いが、強い霜にあたると傷むことがある。地植えにする場合は、植え付け前に根株の下に軽石を敷いて、水はけをよくしておくこと。

日本のドライガーデンに加えたい草花マストバイ7

上記で選んだ7種を主役として、日本の季節感や潤いを演出する脇役植物として、草花マストバイ7種をプラスαでご紹介しよう。これらも、乾燥に強く、ドライな環境下でも育つ植物たちだ。

① アガパンサス

アガパンサス

南アフリカ原産で、乾燥にも強く、一度植えれば毎年ブルーの花を梅雨時に咲かせてくれるので、ドライガーデン用の植物にもマッチするイチオシの植物だ。日照が十分でないと花数が減る点は注意。

参考記事/『長寿の宿根草「アガパンサス」【オージーガーデニングのすすめ】

② へメロカリス

ヘメロカリス

デイ・リリーとも呼ばれる、東アジア原産の球根植物。ニッコウキスゲなどの仲間だが、ヘメロカリスと呼ばれる品種群はアメリカで改良されて逆輸入されたもので、原種よりも華やかな花が多い。乾燥にも強く丈夫で、これも一度植えると毎年、6~7月に開花する。

参考記事/『令和に期待の花「ヘメロカリス」魅力と育て方

③ ローズマリー

ローズマリー
Maren Winter/Shutterstock.com

潤い感を出すために、香りがある植物で、花も楽しめ、乾燥に強いという条件を満たすのがローズマリーだ。一株あれば、料理にも使用できて、庭のある楽しみが増す。

④ ネリネ

ネリネ

花の少ない秋に長く咲いてくれる、別名ダイヤモンドリリーとも呼ばれる球根植物。ただ一つ、強い霜にはあてないようにすること。

⑤ オステオスペルマム

オステオスペルマム

春と秋に開花する南アフリカ原産の宿根草で、丈夫。日当たりと水はけのよい場所で育てる。

⑥ マリーゴールド

マリーゴールド

夏の暑さに強い定番の一年草。オレンジと黄色が元気の出るビタミンカラーだが、色合いを控えめにしたい場合はクリーム色がおすすめ。花がら摘みと施肥をしっかりすると、次々と秋まで咲き続ける。

マリーゴールド
控えめカラーのマリーゴールド。

⑦ ベラドンナリリー(アマリリス)

Zidan – Dailer/shutterstock.com

一般にアマリリスと呼ばれるのは、幅広い品種が含まれますが、ドライガーデンにおすすめしたいのは8~9月ごろ開花するホンアマリリス(Amaryllis belladonna)とも呼ばれる、ベラドンナリリー。

Tisha Razumovsky/shutterstock.com

南アフリカ原産で、乾燥に強い球根植物。花後に葉が伸びて越冬し、初夏に落葉する変わったライフサイクルで庭を彩ってくれる。

流行のドライガーデンにひと工夫プラスして、オリジナリティと創造性を発揮した、日本ならではのドライガーデンに挑戦してみよう!

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